説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池スタック内の各発電セルに反応ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、前記燃料電池スタック内に結露水が導入されることを阻止可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池スタック14とエゼクタ50との間に介装される流路ブロック90を備える。流路ブロック90は、ディフューザ100が挿入される入口120aと燃料ガス供給連通孔76aに連通する出口120bとを有し、略90°ずつ2回屈曲する屈曲連結流路120を設ける。ディフューザ100の噴射通路116の先方には、内壁面126が設けられており、前記噴射通路116と燃料ガス供給連通孔76aとは、積層方向に対して互いに位置をずらして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に反応ガスを導入するとともに、前記燃料電池スタックから排出される使用済み反応ガスを前記燃料電池スタックに戻すエゼクタとを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータによって挟持した発電セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の発電セルを積層することにより、燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
ところで、燃料電池では、水素ガス等の燃料ガスがアノード側電極に供給されるとともに、発電に使用されない未反応の燃料ガスを含む燃料オフガスが、前記燃料電池から排出されている。従って、経済性を考慮して燃料ガスの有効利用を図るため、燃料オフガスを、燃料ガスとしてアノード側電極に再度供給することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている燃料電池システムは、図12に示すように、水素供給装置1から燃料電池2(複数の発電セル2aの積層体)に水素を供給するための水素供給経路3と、前記燃料電池2から排出されるオフガスを前記水素供給経路3に合流させ、前記燃料電池2に再循環させるオフガス循環経路4と、オフガスを前記オフガス循環経路4に循環させるとともに、オフガスの循環量を制御可能であり、さらにオフガスを主供給水素に混合するエジェクタポンプ5と、前記エジェクタポンプ5の吐出圧を検出する圧力センサ6とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−95528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エジェクタポンプ5が燃料電池2の近傍に配置される際、前記エジェクタポンプ5から前記燃料電池2の水素供給連通孔内には、水素が高圧で吐出されるため、前記水素供給連通孔内に静圧分布が発生し易い。これにより、燃料電池2内では、特に水素入口側に位置する発電セル2aに対して水素が十分に供給されず、発電性能が低下するという問題がある。
【0007】
さらに、オフガス中には、燃料電池2の発電反応により生成される水が含まれており、温度低下によって水蒸気が凝縮して水滴が発生し易い。この水滴が燃料電池2内に導入されると、前記燃料電池2の発電性能を安定的に維持することが困難になるという問題がある。しかも、水蒸気は、水素の流れに乗ってオフガス循環経路4を循環するため、燃料電池2内への結露水の混入防止を図ることができないという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、燃料電池スタック内に積層されている各発電セルに対し、反応ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、前記燃料電池スタック内に結露水が導入されることを可及的に阻止することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の発電セルが水平方向に積層され、積層方向端部にエンドプレートが配設されるとともに、積層方向に沿って少なくとも燃料ガス又は酸化剤ガスである反応ガスを供給する反応ガス供給連通孔が設けられる燃料電池スタックと、前記エンドプレートに装着され、反応ガス噴出口から前記反応ガス供給連通孔に前記反応ガスを導入するとともに、前記燃料電池スタックから排出される使用済み反応ガスを、未使用の前記反応ガスに混合するために前記反応ガス噴出口に戻すエゼクタとを備える燃料電池システムに関するものである。
【0010】
この燃料電池システムでは、エゼクタの反応ガス噴出口とエンドプレートの反応ガス供給連通孔とが、積層方向に対して互いに位置をずらして配置されている。
【0011】
また、エゼクタの反応ガス噴出口は、エンドプレートの反応ガス供給連通孔より下方に配置されることが好ましい。
【0012】
さらに、エゼクタの反応ガス噴出口の先端部下方には、水排出口が設けられることが好ましい。
【0013】
さらにまた、エゼクタの反応ガス噴出口の前方には、上方向に向かってエンドプレートの反応ガス供給連通孔に連通する流路を形成するための内壁面が、反応ガスの噴出方向に直交し且つ上下方向に延在して設けられることが好ましい。
【0014】
また、内壁面には、反応ガス噴出口より上方に位置し且つエンドプレート側から流路に突出する突起部が形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、内壁面には、エゼクタの反応ガス噴出口の前方に位置して凹部が形成されることが好ましい。
【0016】
さらにまた、エンドプレートとエゼクタとの間には、流路ブロックが介装されるとともに、前記流路ブロックは、反応ガス噴出口に連通する入口及び反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した屈曲連結流路を備えることが好ましい。
【0017】
また、エンドプレートには、反応ガス噴出口に連通する入口及び反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した屈曲連結流路が設けられることが好ましい。
【0018】
さらに、エンドプレートには、エゼクタを装着するための樹脂製ジョイント部材が連結されることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明に係る燃料電池システムでは、エゼクタの反応ガス噴出口とエンドプレートの反応ガス供給連通孔とを繋ぐ屈曲連結流路を設け、前記屈曲連結流路は、下方にV字状に屈曲する屈曲部分を有している。
【0020】
また、エンドプレートとエゼクタとの間には、流路ブロックが介装されるとともに、前記流路ブロックは、反応ガス噴出口に連通する入口及び反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した屈曲連結流路を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エゼクタの反応ガス噴出口からエンドプレートの反応ガス供給連通孔に反応ガスが噴射される際、前記反応ガス噴出口と前記反応ガス供給連通孔との相対的な位置ずれによって、前記反応ガスの流速が低下されるとともに、前記反応ガス中の水分が結露水となって除去される。
【0022】
このため、反応ガスの流速が低下することにより反応ガス供給連通孔内での静圧分布が改善される一方、燃料電池スタック内に結露水が導入されることを可及的に阻止することができる。これにより、燃料電池スタック内に積層されている各発電セルに対し、反応ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、前記燃料電池スタックの発電性能を安定的に維持することが可能になる。
【0023】
また、本発明によれば、エゼクタの反応ガス噴出口とエンドプレートの反応ガス供給連通孔とを繋ぐ屈曲連結流路は、下方にV字状に屈曲する屈曲部分を有している。従って、反応ガスは、屈曲連結流路の屈曲部分で整流されるとともに、結露水が除去される。このため、燃料電池スタック内に積層されている各発電セルに対し、反応ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、前記燃料電池スタックの発電性能を安定的に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】前記燃料電池スタックを構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図5】前記燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る燃料電池システムの要部断面説明図である。
【図12】特許文献1に開示されている燃料電池システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10の概略構成図である。
【0026】
燃料電池システム10は、図示しない燃料電池車両に搭載されており、燃料電池スタック14と、前記燃料電池スタック14に冷却媒体を供給するための冷却媒体供給機構16と、前記燃料電池スタック14に酸化剤ガス(反応ガス)を供給するための酸化剤ガス供給機構18と、前記燃料電池スタック14に燃料ガス(反応ガス)を供給するための燃料ガス供給機構20とを備える。
【0027】
冷却媒体供給機構16は、ラジエータ24を備える。このラジエータ24には、冷媒用ポンプ26を介して冷却媒体供給配管28と、冷却媒体排出配管30とが接続される。
【0028】
酸化剤ガス供給機構18は、冷媒用ポンプ26に近接して配置される空気用ポンプ32を備える。この空気用ポンプ32に一端が接続される空気供給配管34は、加湿器36に他端が接続されるとともに、この加湿器36には、加湿空気供給配管38を介して燃料電池スタック14が接続される。燃料電池スタック14と加湿器36とには、使用済みの酸化剤ガス(以下、オフガスという)を加湿流体として供給するためのオフガス供給配管40が接続される。加湿器36では、オフガス供給配管40を介して供給されたオフガスの排出側に、背圧弁42が配設される。
【0029】
燃料ガス供給機構20は、燃料ガスとして水素ガスが貯留される燃料ガスタンク44を備える。この燃料ガスタンク44には、燃料ガスパイプ45の一端が接続され、前記燃料ガスパイプ45は、遮断弁46、レギュレータ48及びエゼクタ50を介して燃料電池スタック14に接続される。
【0030】
燃料電池スタック14には、使用済みの燃料ガスが排出される排出燃料ガス配管52が接続される。この排出燃料ガス配管52は、リターン配管54を介してエゼクタ50に接続されるとともに、一部がパージ弁56を介して希釈ボックス58に連通する。希釈ボックス58には、例えば、燃料電池スタック14から排出される使用済みの酸化剤ガスが希釈エアとして導入される。
【0031】
燃料電池スタック14は、複数の発電セル60が水平方向(図2中、矢印A方向)に積層されるとともに、積層方向の両端には、図示しないが、ターミナルプレート及び絶縁プレートを介してエンドプレート62a、62bが配設される(図1参照)。燃料電池スタック14は、例えば、エンドプレート62a、62bを端板とするケーシング(図示せず)、又は前記エンドプレート62a、62b間を締結するタイロッド(図示せず)を備える。
【0032】
ターミナルプレートに電力取り出し端子63a、63bが設けられており、エンドプレート62a、62bから積層方向外方に前記電力取り出し端子63a、63bが突出する。電力取り出し端子63a、63bは、図示しない走行用モータや補機類に接続される。
【0033】
図2に示すように、各発電セル60は、電解質膜・電極構造体66と、前記電解質膜・電極構造体66を挟持する第1及び第2セパレータ68、70とを備えるとともに、縦長に構成される。なお、第1及び第2セパレータ68、70は、カーボンセパレータ又は金属セパレータで構成される。
【0034】
発電セル60の長辺方向(矢印C方向)の一端縁部(上端縁部)には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)72a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)76aが設けられる。
【0035】
発電セル60の長辺方向の他端縁部(下端縁部)には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔72b及び燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔76bが設けられる。
【0036】
発電セル60の短辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、冷却媒体を供給するための冷却媒体供給連通孔74aが設けられるとともに、前記発電セル60の短辺方向の他端縁部には、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔74bが設けられる。冷却媒体供給連通孔74a及び冷却媒体排出連通孔74bは、縦長形状に設定される。
【0037】
電解質膜・電極構造体66は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜78と、前記固体高分子電解質膜78を挟持するアノード側電極80及びカソード側電極82とを備える。
【0038】
第1セパレータ68の電解質膜・電極構造体66に向かう面68aには、燃料ガス供給連通孔76aと燃料ガス排出連通孔76bとを連通する燃料ガス流路84が形成される。この燃料ガス流路84は、例えば、矢印C方向に延在する溝部により構成される。第1セパレータ68の面68aとは反対の面68bには、冷却媒体供給連通孔74aと冷却媒体排出連通孔74bとを連通する冷却媒体流路86が形成される。この冷却媒体流路86は、矢印B方向に延在する溝部により構成される。
【0039】
第2セパレータ70の電解質膜・電極構造体66に向かう面70aには、例えば、矢印C方向に延在する溝部からなる酸化剤ガス流路88が設けられるとともに、この酸化剤ガス流路88は、酸化剤ガス供給連通孔72aと酸化剤ガス排出連通孔72bとに連通する。第2セパレータ70の面70aとは反対の面70bには、第1セパレータ68の面68bと重なり合って冷却媒体流路86が一体的に形成される。図示しないが、第1及び第2セパレータ68、70には、必要に応じてシール部材が設けられる。
【0040】
図3に示すように、エンドプレート62bには、マニホールド部材である流路ブロック90を介してエゼクタ50が装着される。エゼクタ50は、筒状の本体部94を備え、前記本体部94には、ノズル98及びディフューザ100が収容される。本体部94には、オフガス通路104が形成される。ノズル98は、燃料ガスパイプ45に連通する燃料ガス通路106を設け、この燃料ガス通路106は、前記ノズル98の先端に設けられる噴射口110からディフューザ100内に開放される。
【0041】
オフガス通路104は、リターン配管54に連通するとともに、ディフューザ100の外周に形成される孔部112を介して吸引室114に連通する。吸引室114は、先端側に向かって縮径した後、流れ方向下流に向かって連続的に拡径する噴射通路(反応ガス噴出口)116に連通する。
【0042】
ディフューザ100の先端は、本体部94の端部から突出し、流路ブロック90に設けられる屈曲連結流路120の入口120aに挿入される。屈曲連結流路120は、水平方向に略90゜ずつ2回屈曲しており、出口120bがエンドプレート62bの燃料ガス供給連通孔76aに連通する。ディフューザ100の先端と入口120aとの間、及び出口120bとエンドプレート62bの燃料ガス供給連通孔76aとの間には、それぞれシール部材124a、124bが介装される。
【0043】
エゼクタ50の噴射通路116は、屈曲連結流路120の入口120aに連通する一方、エンドプレート62bの燃料ガス供給連通孔76aは、前記屈曲連結流路120の出口120bに連通する。すなわち、エゼクタ50の噴射通路116とエンドプレート62bの燃料ガス供給連通孔76aとは、積層方向(矢印A方向)に対して互いに位置をずらして配置される。
【0044】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0045】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス供給機構18を構成する空気用ポンプ32が駆動され、酸化剤ガスである外部空気が吸引されて空気供給配管34に導入される。この空気は、空気供給配管34から加湿器36内に導入された後、加湿空気供給配管38に供給される。
【0046】
その際、オフガス供給配管40には、後述するように、反応に使用された酸化剤ガスであるオフガスが供給されている。このため、使用前の空気には、オフガス中に含まれる水分が移動し、この使用前の空気が加湿される。加湿された空気は、加湿空気供給配管38からエンドプレート62bを通って燃料電池スタック14内の酸化剤ガス供給連通孔72aに供給される。
【0047】
一方、燃料ガス供給機構20では、遮断弁46の開放作用下に、燃料ガスタンク44内の燃料ガス(水素ガス)がレギュレータ48で降圧された後、エゼクタ50からエンドプレート62bを通って燃料電池スタック14内の燃料ガス供給連通孔76aに導入される。
【0048】
さらに、冷却媒体供給機構16では、冷媒用ポンプ26の作用下に、冷却媒体供給配管28からエンドプレート62aを通って燃料電池スタック14内の冷却媒体供給連通孔74aに冷却媒体が導入される。
【0049】
図2に示すように、燃料電池スタック14内の各発電セル60に供給された空気は、酸化剤ガス供給連通孔72aから第2セパレータ70の酸化剤ガス流路88に導入され、電解質膜・電極構造体66のカソード側電極82に沿って移動する。一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔76aから第1セパレータ68の燃料ガス流路84に導入され、電解質膜・電極構造体66のアノード側電極80に沿って移動する。
【0050】
従って、各電解質膜・電極構造体66では、カソード側電極82に供給される空気中の酸素と、アノード側電極80に供給される燃料ガス(水素)とが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0051】
次いで、カソード側電極82に供給されて消費された空気は、酸化剤ガス排出連通孔72bに沿って流動した後、オフガスとしてエンドプレート62bからオフガス供給配管40に排出される(図1参照)。
【0052】
同様に、アノード側電極80に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔76bに排出されて流動し、排出燃料ガスとしてエンドプレート62bから排出燃料ガス配管52に排出される(図1参照)。排出燃料ガス配管52に排出された排出燃料ガスは、一部がリターン配管54を通ってエゼクタ50の吸引作用下に新たな燃料ガスに混在し、燃料電池スタック14内に供給される。残余の排出燃料ガスは、パージ弁56の開放作用下に希釈ボックス58に導入される。
【0053】
また、冷却媒体は、図2に示すように、冷却媒体供給連通孔74aから第1及び第2セパレータ68、70間の冷却媒体流路86に導入された後、矢印B方向に沿って流動する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体66を冷却した後、冷却媒体排出連通孔74bを移動してエンドプレート62aから冷却媒体排出配管30に排出される。この冷却媒体は、図1に示すように、ラジエータ24により冷却された後、冷媒用ポンプ26の作用下に冷却媒体供給配管28から燃料電池スタック14に供給される。
【0054】
この場合、第1の実施形態では、図3に示すように、燃料ガスパイプ45からノズル98の燃料ガス通路106に供給される燃料ガスは、前記ノズル98の先端に設けられている噴射口110からディフューザ100に噴射される。このため、吸引室114に負圧が発生し、リターン配管54からオフガス通路104を介してこの吸引室114に排出燃料ガスが吸引される。
【0055】
従って、ノズル98から噴射された燃料ガスに排出燃料ガスが混合され、この混合された燃料ガスは、ディフューザ100の噴射通路116から流路ブロック90の屈曲連結流路120に向かって吐出される。
【0056】
その際、屈曲連結流路120は、水平方向に略90゜ずつ2回屈曲している。これにより、入口120aに吐出された燃料ガスは、屈曲連結流路120の屈曲部を構成する内壁面126により流速が低下した後、出口120bからエンドプレート62bの燃料ガス供給連通孔76aに供給される。しかも、燃料ガスが内壁面126に吹き付けられることにより、前記燃料ガス中の水分が結露水となって除去される。
【0057】
このため、燃料ガスの流速が低下して燃料ガス供給連通孔76a内での静圧分布が改善される一方、燃料電池スタック14内に結露水が導入されることを可及的に阻止することができる。特に、燃料ガスが最も入り難いエゼクタ50側の発電セル60に対して、前記燃料ガスを確実に分配供給することが可能になる。
【0058】
従って、第1の実施形態では、燃料電池スタック14内に積層されている各発電セル60に対し、燃料ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、前記燃料電池スタック14の発電性能を安定的に維持することが可能になるという効果が得られる。
【0059】
なお、第1の実施形態では、反応ガスとして燃料電池スタック14に循環して供給される燃料ガスを用いて説明したが、これに限定されるものではなく、前記反応ガスとして酸化剤ガスを前記燃料電池スタック14に循環供給する場合にも適用可能である。特に、酸化剤ガスとして純酸素が使用される際には、好適である。また、以下に説明する第2の実施形態以降においても、同様である。
【0060】
さらにまた、第1の実施形態では、屈曲連結流路120が水平方向に略90°ずつ2回屈曲しているが、これに代えて、入口120aが上方で且つ出口120bが下方に位置するように上下方向に略90°ずつ2回屈曲するように構成してもよい。
【0061】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム140の概略構成図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態以降においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0062】
燃料電池スタック14には、燃料ガス排出連通孔76bに気液分離器142が連通しており、この気液分離器142には、流路ブロック144に接続されたドレン流路146が接続される。
【0063】
図5に示すように、流路ブロック144は、エンドプレート62bとエゼクタ50との間に介装されるとともに、屈曲連結流路148を設ける。屈曲連結流路148の入口148aには、ディフューザ100の先端が挿入されるとともに、前記屈曲連結流路148の出口148bは、燃料ガス供給連通孔76aに連通する。入口148aは、出口148bよりも下方に配置されており、噴射通路116は、燃料ガス供給連通孔76aより下方に配置される。
【0064】
流路ブロック144内には、噴射通路116の前方に位置し、上方向に向かって燃料ガス供給連通孔76aに連通する流路を形成するための内壁面150が、前記噴射通路116からの燃料ガス噴出方向に直交し且つ上下方向に延在して設けられる。噴射通路116の先端下方には、水排出口152が設けられ、前記水排出口152は、ドレン流路146に連通する。
【0065】
このように構成される第2の実施形態では、図5に示すように、屈曲連結流路148は、入口148aが出口148bよりも下方に配置されるとともに、鉛直上方向に略90°だけ屈曲している。このため、ディフューザ100の噴射通路116から屈曲連結流路148の入口148aに吐出された燃料ガスは、内壁面150により流速が低下した後、出口148bから燃料ガス供給連通孔76aに供給される。
【0066】
従って、燃料ガスの流速が低下し、燃料ガス供給連通孔76a内での静圧分布が改善される一方、内壁面150に付着した結露水は、水排出口152からドレン流路146を介して気液分離器142に排出される。これにより、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる他、流路ブロック144内に結露水が貯留されることがなく、排水性が一層向上するという利点が得られる。
【0067】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム160の要部断面説明図である。
【0068】
燃料電池システム160は、エンドプレート62bとエゼクタ50との間に介装される流路ブロック162を備える。流路ブロック162には、第2の実施形態と同様に、鉛直上方向に略90°だけ屈曲する屈曲連結流路148を設けるとともに、内壁面150には、噴射通路116の前方に位置して凹部164が形成される。
【0069】
このように構成される第3の実施形態では、噴射通路116から屈曲連結流路148に吐出された燃料ガスは、内壁面150の凹部164に吹き付けられ、流速が低下するとともに、前記凹部164に結露水が付着する。そして、この結露水は、凹部164から上方に移動することを確実に阻止され、水排出口152を介してドレン流路146に確実且つ円滑に排出されるという利点がある。
【0070】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池システム170の要部断面説明図である。
【0071】
燃料電池システム170は、エンドプレート62bとエゼクタ50との間に介装される流路ブロック172を備える。流路ブロック172は、上記の第3の実施形態と同様に、内壁面150に凹部164が形成されるとともに、前記凹部164の上方側には、屈曲連結流路148側に突出する突起部174が設けられる。
【0072】
これにより、第4の実施形態では、噴射通路116から屈曲連結流路148に吐出された燃料ガスは、凹部164により減速されるとともに、結露水がこの凹部164に除去される。その際、特に突起部174を介して結露水が燃料ガス供給連通孔76a側に移動することを確実に阻止することができる。
【0073】
図8は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池システム180の要部断面説明図である。
【0074】
燃料電池システム180は、エンドプレート62bとエゼクタ50との間に介装される流路ブロック182を備える。流路ブロック182は、内壁面150に噴射通路116より上方に位置して屈曲連結流路148側に突出する突起部184が形成される。
【0075】
従って、第5の実施形態では、噴射通路116から屈曲連結流路148に吐出された燃料ガスは、内壁面150により減速されるとともに、この内壁面150に結露水が付着する。その際、結露水が上方に移動することを突起部184により確実に阻止することができ、燃料ガス供給連通孔76aに結露水が導入されることを確実に阻止することが可能になる。
【0076】
図9は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池システム190の要部断面説明図である。
【0077】
燃料電池システム190は、エンドプレート62bとエゼクタ50との間に介装される流路ブロック192を備える。流路ブロック192には、噴射通路116と燃料ガス供給連通孔76aとを繋ぐ屈曲連結流路194を備える。この屈曲連結流路194は、下方にV字状に屈曲するとともに、入口194aにディフューザ100が挿入される一方、出口194bに燃料ガス供給連通孔76aが連通する。屈曲連結流路194のV字状の下端部側には、水排出口152を介してドレン流路146が連通する。
【0078】
このように構成される第6の実施形態では、噴射通路116から屈曲連結流路194に吐出された燃料ガスは、この屈曲連結流路194の形状に沿って移動することにより流速が低下するとともに、水分が結露水として除去される。このため、燃料電池スタック14内の各発電セル60に燃料ガスを均一且つ確実に分配供給するとともに、結露水の浸入を阻止して発電性能を安定的に維持することが可能になる。
【0079】
図10は、本発明の第7の実施形態に係る燃料電池システム200の概略構成図である。
【0080】
燃料電池システム200は、ドレン流路146に接続されるドレン弁202を備え、前記ドレン弁202の出口側が希釈ボックス58に接続される。従って、第7の実施形態では、ドレン流路146に排出される結露水は、ドレン弁202の切り換え作用下に希釈ボックス58に排出される。
【0081】
図11は、本発明の第8の実施形態に係る燃料電池システム210の要部断面説明図である。
【0082】
燃料電池システム210は、エンドプレート62bに代えてエンドプレート212を備える。エンドプレート212には、エゼクタ50の噴射通路116に連通する入口214a及び燃料ガス供給連通孔76aに連通する出口214bを有した屈曲連結流路214が設けられる。この屈曲連結流路214には、噴射通路116の前方に位置して凹部164が形成されるとともに、前記凹部164の上方側には噴射通路116側に突出する突起部174が設けられる。
【0083】
エンドプレート212には、エゼクタ50を装着するための樹脂製ジョイント部材216が連結される。
【0084】
このように構成される第8の実施形態では、エゼクタ50が樹脂製ジョイント部材216を介してエンドプレート212に直接装着されている。このため、燃料電池システム210全体の軽量化及びコストの削減が容易に図られるという効果が得られる。
【0085】
さらに、エンドプレート212には、屈曲連結流路214が形成されるとともに、この屈曲連結流路214に突起部174が設けられている。従って、部品点数の削減及び製造コストの削減が可能になり、しかも組み立て工数の低減も図られる。
【0086】
さらにまた、エゼクタ50とエンドプレート212とは、樹脂製ジョイント部材216を介して連結されている。これにより、樹脂製ジョイント部材216自体が傾くことによって、エゼクタ50とエンドプレート212との相対位置合わせが容易になり、装着性が向上する。
【0087】
なお、第8の実施形態では、図示しないが、樹脂製ジョイント部材216は、水排出口を介してドレン流路に連通するように構成してもよい(第2の実施形態参照)。
【符号の説明】
【0088】
10、140、160、170、180、190、200、210…燃料電池システム
14…燃料電池スタック 16…冷却媒体供給機構
18…酸化剤ガス供給機構 20…燃料ガス供給機構
28…冷却媒体供給配管 30…冷却媒体排出配管
34…空気供給配管 36…加湿器
38…加湿空気供給配管 40…オフガス供給配管
44…燃料ガスタンク 45…燃料ガスパイプ
50…エゼクタ 52…排出燃料ガス配管
54…リターン配管 60…発電セル
62a、62b、212…エンドプレート
66…電解質膜・電極構造体 68、70…セパレータ
72a…酸化剤ガス供給連通孔 72b…酸化剤ガス排出連通孔
74a…冷却媒体供給連通孔 74b…冷却媒体排出連通孔
76a…燃料ガス供給連通孔 76b…燃料ガス排出連通孔
78…固体高分子電解質膜 80…アノード側電極
82…カソード側電極 84…燃料ガス流路
86…冷却媒体流路 88…酸化剤ガス流路
90、144、162、172、182、192…流路ブロック
94…本体部 98…ノズル
100…ディフューザ 104…オフガス通路
116…噴射通路
120、148、194、214…屈曲連結流路
120a、148a、194a、214a…入口
120b、148b、194b、214b…出口
126、150…内壁面 142…気液分離器
146…ドレン流路 152…水排出口
164…凹部 174、184…突起部
202…ドレン弁 216…樹脂製ジョイント部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電セルが水平方向に積層され、積層方向端部にエンドプレートが配設されるとともに、積層方向に沿って少なくとも燃料ガス又は酸化剤ガスである反応ガスを供給する反応ガス供給連通孔が設けられる燃料電池スタックと、
前記エンドプレートに装着され、反応ガス噴出口から前記反応ガス供給連通孔に前記反応ガスを導入するとともに、前記燃料電池スタックから排出される使用済み反応ガスを、未使用の前記反応ガスに混合するために前記反応ガス噴出口に戻すエゼクタと、
を備える燃料電池システムであって、
前記エゼクタの前記反応ガス噴出口と前記エンドプレートの前記反応ガス供給連通孔とは、前記積層方向に対して互いに位置をずらして配置されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記エゼクタの前記反応ガス噴出口は、前記エンドプレートの前記反応ガス供給連通孔より下方に配置されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、前記エゼクタの前記反応ガス噴出口の先端部下方には、水排出口が設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料電池システムにおいて、前記エゼクタの前記反応ガス噴出口の前方には、上方向に向かって前記エンドプレートの前記反応ガス供給連通孔に連通する流路を形成するための内壁面が、前記反応ガスの噴出方向に直交し且つ上下方向に延在して設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記内壁面には、前記反応ガス噴出口より上方に位置し且つ前記エンドプレート側から前記流路に突出する突起部が形成されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項4又は5記載の燃料電池システムにおいて、前記内壁面には、前記エゼクタの前記反応ガス噴出口の前方に位置して凹部が形成されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記エンドプレートと前記エゼクタとの間には、流路ブロックが介装されるとともに、
前記流路ブロックは、前記反応ガス噴出口に連通する入口及び前記反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した屈曲連結流路を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記エンドプレートには、前記反応ガス噴出口に連通する入口及び前記反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した屈曲連結流路が設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池システムにおいて、前記エンドプレートには、前記エゼクタを装着するための樹脂製ジョイント部材が連結されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
複数の発電セルが水平方向に積層され、積層方向端部にエンドプレートが配設されるとともに、積層方向に沿って少なくとも燃料ガス又は酸化剤ガスである反応ガスを供給する反応ガス供給連通孔が設けられる燃料電池スタックと、
前記エンドプレートに装着され、反応ガス噴出口から前記反応ガス供給連通孔に前記反応ガスを導入するとともに、前記燃料電池スタックから排出される使用済み反応ガスを、未使用の前記反応ガスに混合するために前記反応ガス噴出口に戻すエゼクタと、
を備える燃料電池システムであって、
前記エゼクタの前記反応ガス噴出口と前記エンドプレートの前記反応ガス供給連通孔とを繋ぐ屈曲連結流路を設け、
前記屈曲連結流路は、下方にV字状に屈曲する屈曲部分を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項10記載の燃料電池システムにおいて、前記エンドプレートと前記エゼクタとの間には、流路ブロックが介装されるとともに、
前記流路ブロックは、前記反応ガス噴出口に連通する入口及び前記反応ガス供給連通孔に連通する出口を有した前記屈曲連結流路を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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