説明

燃料電池システム

【課題】施工省スペースを保ちつつ、可燃ガス等のインバータ装置側への流出もなく、組立作業スペースを小さくし、筺体縦方向を小さくし、安全性の高いコンパクトな構成とすること。
【解決手段】スタック10の上部のインバータ装置11との間の隔壁21に貫通口20を設け、この貫通口20を覆うことができる第1電力線14、第2電力線15の直径とほぼ同寸法の第1穴22、第2穴23を持つ遮蔽板24を設け、貫通口20は第1穴22、第2穴23の面積の和より大きくすることで、施工省スペース、可燃ガス等のインバータ装置11側への流出を抑えつつ、組立作業スペースを小さくし、安全性の高いコンパクトな構成とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電を行う燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システムはスタックの上部にインバータ装置を配置し、このインバータ装置とスタックを隔壁により分離し、万一スタック側から可燃ガス等が漏れてもインバータ装置側に可燃ガスが至らないようにすると同時に施工の省スペース化を行うものがある。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8、図9は、特許文献に記載された従来の燃料電池システムを示すものである。図8、図9に示すように、燃料電池本体1内にあるスタック2で発生した直流電力を交流電力に変換する高電圧回路を持つインバータ装置3が配置されている。また、スタック2の上部にインバータ装置3が位置し、このスタック2とインバータ装置3とを隔壁4で分離して、スタック2を隔壁4を介してインバータ装置3と対向させて設けられている。さらに、スタック2からのスタック出力線5を隔壁4に設けられた貫通穴6を通しインバータ装置3に接続し、万が一、スタック2側から可燃ガス等が漏れても、インバータ装置3側に可燃ガス等が至らず危険性をなくすと共に、施工の省スペース化を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/072284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、可燃ガス等がインバータ装置側に流出させないよう貫通穴をスタック出力線の直径とほぼ同直径とするが、この貫通穴は奥まって水平方向にあるため、燃料電池システムの組立時に、スタック出力線を貫通穴に通す際、非常に作業しづらく、スタックと隔壁の間に作業時手を入れる大きな組立作業スペースが必要で燃料電池本体の縦方向が大きくなるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、施工の省スペース化を実現し、かつ、可燃ガス等のインバータ装置側への流出も抑えつつ、燃料電池本体の縦方向を小さくすることで、安全性の高いコンパクトな燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電するスタックと、スタックが発電した直流電力を交流電力に変換するインバータ装置と、スタックが発電した直流電力をインバータ装置に供給するための第1電力線及び第2電力線と、スタックとインバータ装置とを収納する筺体と、スタックが収納されている第1空間とインバータ装置が収納されている第2空間との間に配置され、第1電力線及び第2電力線が挿通される貫通口が形成されている隔壁と、貫通口を第2空間側から覆うとともに、第1電力線及び第2電力線がそれぞれ挿通される第1穴及び第2穴を有している遮蔽板とを有しており、貫通口は、第1穴及び第2穴の面積の和より大きくなるように構成したものである。
【0008】
これによって、隔壁とは別体の遮蔽板は、燃料電池システムの組立時に奥まった水平方向ではなく、手前に移動できる。そのため、第1穴及び第2穴はスタック出力線すなわち
第1電力線及び第2電力線の直径とほぼ同寸法にしても、第1電力線および第2電力線を貫通口に容易に通すことができる。さらに、その後、遮蔽板で貫通口を覆うので、従来と同様に可燃ガス等がインバータ装置側に流れないようになると同時に、スタックと隔壁の間に手を入れずに第2空間側から第1及び第2電力線を取り出し通すことができる構成となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池システムによれば、従来と同様に施工の省スペース化を実現し、かつ、可燃ガス等のインバータ装置側への流出も抑えつつ、燃料電池システムの組立作業スペースを小さくでき、燃料電池システムの縦方向を小さくし安全性の高いコンパクトな構成とできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの正面及び平面構成図
【図3】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの要部斜視図
【図4】本発明の実施の形態2における燃焼電池システムの正面構成図
【図5】本発明の実施の形態2における燃焼電池システムの要部斜視図
【図6】本発明の実施の形態3における燃焼電池システムの要部斜視図
【図7】本発明の実施の形態4における燃焼電池システムの要部斜視図
【図8】従来の燃料電池システムの構成図
【図9】従来の燃料電池システムの要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電するスタックと、スタックが発電した直流電力を交流電力に変換するインバータ装置と、スタックが発電した直流電力をインバータ装置に供給するための第1及び第2電力線と、スタックとインバータ装置とを収納する筺体と、スタックが収納されている第1空間とインバータ装置が収納されている第2空間との間に配置され、第1及び第2電力線が挿通される貫通口が形成されている隔壁と、貫通口を第2空間側から覆うとともに、前記第1及び第2電力線がそれぞれ挿通される第1及び第2穴を有している遮蔽板とを有しており、前記貫通口は、前記第1及び第2穴の面積の和より大きくなるように構成した燃料電池システムである。この構成により、スタックの第1及び第2電力線を隔壁の貫通口に容易に通すことができ、隔壁とは別体の遮蔽板は、従来のように組立時奥まった水平方向ではなく、手前に移動できるため、その第1及び第2穴は第1及び第2電力線の直径とほぼ同寸法にしても第1電力線、第2電力線を容易に挿通でき、その後、遮蔽板で貫通口を覆うので、第1及び第2電力線と隔壁の間に隙間がなく、可燃ガス等がインバータ装置側に流れないようになると同時に、スタックと隔壁の間に手を入れずに第2空間側から第1及び第2電力線を取り出し挿通すことができる構成とできる。
【0012】
また、第1及び第2電力線はそれぞれスタックの第1接続部及び第2接続部と、インバータ装置の第3接続部及び第4接続部とに接続しており、第1接続部と第2接続部とを結ぶ直線と平行な貫通口の第1幅は、第1接続部と第2接続部との間の距離より小さく、第3接続部と第4接続部との間の距離より大きくなるように構成してもよい。この構成により、さらに第1及び第2電力線の隔壁の貫通口への挿通性を増すことができる。
【0013】
さらに、隔壁は、水平方向に配置されているとともに貫通口が形成されている第1隔壁を有し、貫通口は、第1隔壁の中央部に実質的に矩形で形成され、第1幅に垂直な第2幅は、第1電力線の直径の複数倍の大きさになるように構成してもよい。この構成により、さらに第1及び第2電力線の隔壁の貫通性を増すことができる。
【0014】
また、隔壁は、水平方向に配置されているとともに貫通口が形成されていることにより実質的にU字状に形成されている第1隔壁を有しているように構成してもよい。この構成により、第1及び第2電力線を挿通するのではなく、横方向からのスライド動作で隔壁にセットでき、作業性を大幅に向上することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムを示す外観斜視図であり、図2は本発明の第1の実施の形態における燃料システムの正面及び平面構成図を示すものであり、図3は第1の実施の形態における燃料電池システムの要部斜視図である。
【0017】
図1、図2、図3において、筺体7内に水素リッチな燃料ガスを生成する改質器8と、酸化剤ガスを生成する酸化剤供給装置9とがあり、この改質器8と酸化剤供給装置9からスタック10へ燃料ガス及び酸化剤ガスが搬送されている。一方、スタック10から発電された直流電力を交流電力に変換するインバータ装置11がスタック10の上部にあり、スタック10の両端に+極の第1接続部12、−局の第2接続部13があり、この第1接続部12からスタック10からの直流電力をインバータ装置11に供給する+側の第1電力線14、第2接続部13から−側の第2電力線15が設けられ、第1接続部12と第2接続部13間の距離より小さい距離間となる+極の第3接続部16と−極の第4接続部17がインバータ装置11に設けられ、第1接続部12と第3接続部16が第1電力線14で結線され、第2接続部13と第4接続部17が第2電力線15で結線されている。スタック10が収納されている第1空間18とインバータ装置11が収納されている第2空間19には第1電力線14と第2電力線15が挿通される貫通口20をもつ隔壁21が配置され、この貫通口20を覆うことができ、第1電力線14と第2電力線15がそれぞれ挿通される第1電力線、第2電力線とほぼ同径の第1穴22と第2穴23を有した遮蔽板24があり、貫通口20は第1穴22及び第2穴23の面積の和より大きくしている。
【0018】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0019】
まず、都市ガスやプロパンガスなどの原料ガスが改質器8に搬送され、水素リッチな燃料ガスをスタック10に導くとともに、酸化剤ガス供給装置9から発電に適した酸化剤ガス(例えば、酸素を含んでいる空気)がスタック10に導かれる。そしてスタック10の発電が行われるが、この発電で生じた直流電力は、インバータ装置11に供給され家庭で使用できる交流電力に変換される。この基本動作において、スタック10が収納されている第1空間18とインバータ装置11が収納されている第2空間19の間にある隔壁21の貫通口20にスタック10からの第1電力線14と第2電力線15を挿通して、その後、貫通口20を覆うことができる別体の遮蔽板24があるため、従来のように組立時奥まった水平方向ではなく、この遮蔽板24は手前aに移動でき、第1電力線14を挿通する第1穴22、第2電力線15を挿通する第2穴23はそれぞれ第1電力線14、第2電力線15の直径とほぼ同じ大きさにしても容易に組立作業できる。
【0020】
また、貫通口20の面積は第1穴22と第2穴23の和より大きいため、第1電力線14、第2電力線15を第2空間19側から挿通取り出しでき、スタック10と隔壁21の間に手を入れずに組立作業でき、スタック10とインバータ装置11との間の組立作業スペースも小さくできる。
【0021】
以上のように、本発明の形態においては、従来と同様に施工省スペース、可燃ガス等の
インバータ装置11側への流出を抑えつつ、筺体7の縦方向すなわち燃料電池システムの縦方向も小さくでき、安全性の高いコンパクトな構成とできる。
【0022】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における燃料電池システムを示す正面構成図であり、図5は第2の実施の形態における燃料電池システムの要部斜視図である。
【0023】
図4、図5において、スタック10の第1接続部12と第2接続部13とを結ぶ直線と平行な隔壁21の貫通口20の第1幅25は第1接続部12と第2接続部13との間の距離より小さく、インバータ装置11の第3接続部16と第4接続部17との距離より大きく構成されている。
【0024】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
第1接続部12、第2接続部13からの第1電力線14、第2電力線15は第3接続部16、第4接続部17へ導かれるが、その時、第1電力線14と第2電力線15が直線的にスムーズに引き回しできる。
【0026】
以上のように、本発明の形態においてはさらに第1電力線14及び第2電力線15の隔壁21の貫通口20への挿通性を増すことができる。
【0027】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態における燃料電池システムの要部斜視図である。
【0028】
図6において、実質的に矩形で形成されている貫通口20の第1幅25に垂直な第2幅26は第1電力線14及び第2電力線15の直径の複数倍の大きさになるように構成されている。
【0029】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0030】
第1接続部12、第2接続部13からの第1電力線14、第2電力線15は第3接続部16、第4接続部17へ導かれるが、その時、第2幅26が大きくなり第2空間19側から第1電力線14及び第2電力線15を取り出す作業性が向上する。
【0031】
以上のように、本発明の形態においてはさらに第1電力線14及び第2電力線15の隔壁の貫通口20への挿通性を増すことができる。
【0032】
(実施の形態4)
図7は、本発明の第4の実施の形態における燃料電池システムの要部斜視図である。
【0033】
図7において、隔壁21は、水平方向に配置されているとともに貫通口20が形成されていることにより実質的にU字状に形成されている第1隔壁30を有している。
【0034】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0035】
第1接続部12、第2接続部13からの第1電力線14、第2電力線15は第3接続部16、第4接続部17へ導かれるが、その時、第1電力線14及び第2電力線15を挿通するのではなく、横方向からのスライド動作で隔壁21にセットすることができる。
【0036】
以上のように、本発明の形態においては横方向からのスライド動作で隔壁21にセット
でき、作業性を大幅に向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる燃料電池システムは、隔壁と電力線との間からの可燃ガス等の漏れを防止し、組み立て作業性を向上させる構成であるので、燃料電池システムの各配線構成等にも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
7 筺体
2、10 スタック
3、11 インバータ装置
12 第1接続部
13 第2接続部
14 第1電力線
15 第2電力線
16 第3接続部
17 第4接続部
18 第1空間
19 第2空間
20 貫通口
4、21 隔壁
22 第1穴
23 第2穴
24 遮蔽板
30 第1隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電を行う燃料電池システムであって、
燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電するスタックと、
前記スタックが発電した直流電力を交流電力に変換するインバータ装置と、
前記スタックが発電した直流電力を前記インバータ装置に供給するための第1電力線及び第2電力線と、
前記スタックと前記インバータ装置とを収納する筺体と、
前記スタックが収納されている第1空間と前記インバータ装置が収納されている第2空間との間に配置され、前記第1電力線及び前記第2電力線が挿通される貫通口が形成されている隔壁と、
前記貫通口を前記第2空間側から覆うとともに、前記第1電力線及び前記第2電力線がそれぞれ挿通される第1及び第2穴を有している遮蔽板と、
を有しており、
前記貫通口は、前記第1及び第2穴の面積の和より大きくなるように構成されている、燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1及び前記第2電力線は、それぞれ前記スタックの第1接続部及び第2接続部と、前記インバータ装置の第3接続部及び第4接続部とに接続しており、
前記第1接続部と前記第2接続部とを結ぶ直線と平行な前記貫通口の第1幅は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の距離より小さく、前記第3接続部と前記第4接続部との間の距離より大きくなるように構成されている、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記隔壁は、水平方向に配置されているとともに前記貫通口が形成されている第1隔壁を有し、前記貫通口は、前記第1隔壁の中央部に実質的に矩形で形成され、前記第1幅に垂直な第2幅は、前記第1電力線の直径の複数倍の大きさになるように構成されている、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記隔壁は、水平方向に配置されているとともに前記貫通口が形成されていることにより実質的にU字状に形成されている第1隔壁を有している、
請求項1または2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−195257(P2012−195257A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60203(P2011−60203)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】