説明

燃料電池スタック

【課題】膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備える燃料電池スタックにおいて、積層体を積層方向に締結するとともに、発電効率を向上させる。
【解決手段】燃料電池スタックは、複数の空気供給マニホールドと、複数の空気排出マニホールドとを備え、複数の空気供給マニホールド間の一部に、第1の締結部材を嵌合するための第1の切り欠き部を備え、複数の空気排出マニホールド間の一部に、第2の締結部材を嵌合するための第2の切り欠き部を備える。第1および第2の切り欠き部は、互いに対向しない位置に配置され、第1の切り欠き部を挟んで配置された2つの空気供給マニホールドの双方は、いずれか1つの空気排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置され、第2の切り欠き部を挟んで配置された2つの空気排出マニホールドの双方は、いずれか1つの空気供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備える燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガス(例えば、水素)と酸化剤ガス(例えば、酸素)との電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。この燃料電池には、電解質膜の両面にそれぞれガス拡散電極を接合してなる膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備えるものがある(以下、燃料電池スタックと呼ぶ)。
【0003】
このような燃料電池スタックでは、各膜電極接合体の外周部に、燃料電池スタックの外部から供給された反応ガスを、各膜電極接合体に分岐して供給するための反応ガス供給マニホールドや、各膜電極接合体で未消費の反応ガスであるオフガスを集合させて燃料電池スタックの外部に排出するためのオフガス排出マニホールドを備えている。そして、これらは、燃料電池スタックの形状によっては、それぞれ複数備えられる場合もある。また、燃料電池スタックでは、一般に、膜電極接合体内、および、膜電極接合体とセパレータとの接触抵抗を低減したり、燃料電池スタック内に流れる流体(燃料ガス、酸化剤ガス、冷却水)の漏洩を防止したりするために、積層方向に締結荷重が加えられ、締結部材によって締結される。
【0004】
そして、このような燃料電池スタックに関し、従来、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された燃料電池スタックは、燃料電池スタックの内部に、2つの反応ガス供給マニホールド、および、これらと膜電極接合体を挟んで対向する位置に形成された2つのオフガス排出マニホールドを備えている。そして、2つの反応ガス供給マニホールドの間、および、2つのオフガス排出マニホールドの間に、それぞれ貫通孔が設けられており、各貫通孔にそれぞれタイロッドを挿入して、燃料電池スタックを積層方向に締め付ける構造が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特表2005−524202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、2つの反応ガス供給マニホールド間、および、2つのオフガス排出マニホールド間に、それぞれ貫通孔が形成されているため、2つの反応ガス供給マニホールド間の距離、および、2つのオフガス排出マニホールド間の距離が、自ずと長くなり、膜電極接合体において、反応ガスが流れにくい領域が生じる場合があった。そして、この反応ガスが流れにくい領域では、発電が行われにくくなり、燃料電池スタックの発電効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備える燃料電池スタックにおいて、積層体を積層方向に締結するとともに、発電効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、以下の構成を採用した。本発明の燃料電池スタックは、膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備える燃料電池スタックであって、前記膜電極接合体の外周部の一部の領域に互いに隣接して配置され、前記燃料電池スタックの外部から供給された反応ガスを、複数の前記膜電極接合体に分岐して供給するための複数の反応ガス供給マニホールドと、前記膜電極接合体の外周部の一部の領域であって、前記膜電極接合体を挟んで前記複数の反応ガス供給マニホールドが配置された領域と対向する領域に互いに隣接して配置され、前記複数の膜電極接合体で未消費の反応ガスであるオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するための複数のオフガス排出マニホールドと、前記複数の反応ガス供給マニホールドの間のうちの少なくとも一部に配置され、前記複数の膜電極接合体、および、前記複数のセパレータを、積層方向に締結する第1の締結部材を設置するための第1の締結部材設置部と、前記複数のオフガス排出マニホールドの間のうちの少なくとも一部に配置され、前記複数の膜電極接合体、および、前記複数のセパレータを、積層方向に締結する第2の締結部材を設置するための第2の締結部材設置部と、を備え、前記第1の締結部材設置部は、前記複数のオフガス排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されており、前記第2の締結部材設置部は、前記複数の反応ガス供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されていることを要旨とする。
【0009】
本発明の燃料電池スタックでは、複数の反応ガス供給マニホールドのうちの少なくとも一部は、第1の締結部材設置部を挟んで配置される。また、複数のオフガス排出マニホールドのうちの少なくとも一部は、第2の締結部材設置部を挟んで配置される。したがって、第1の締結部材設置部を挟んで配置される2つの反応ガス供給マニホールド間の距離は、第1の締結部材設置部を挟まずに配置する場合よりも長くなる場合がある。また、第2の締結部材設置部を挟んで配置される2つのオフガス排出マニホールド間の距離は、第2の締結部材設置部を挟まずに配置する場合よりも長くなる場合がある。このため、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部を、膜電極接合を挟んで互いに対向する位置に配置すると、膜電極接合体において、第1の締結部材設置部と、第2の締結部材設置部とが対向する領域には、反応ガスが流れにくくなる領域が生じる場合がある。この場合、この膜電極接合体における反応ガスが流れにくくなる領域では、発電が行われにくくなり、燃料電池スタックにおける発電効率の低下を招く。
【0010】
そこで、本発明では、第1の締結部材設置部を、膜電極接合を挟んで複数のオフガス排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置するとともに、第2の締結部材設置部を、膜電極接合を挟んで複数の反応ガス供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置する。こうすることによって、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部を、互いに対向する位置に配置する場合と比較して、反応ガスが膜電極接合体の全体に流れやすくすることができる。したがって、膜電極接合体における有効発電面積を増加させ、発電効率を向上させることができる。つまり、本発明によって、燃料電池スタックにおいて、上記積層体を積層方向に締結するとともに、発電効率を向上させることができる。
【0011】
上記燃料電池スタックにおいて、前記第1の締結部材設置部と、前記第2の締結部材設置部とは、前記膜電極接合体を挟んで互いに対向しない位置に配置されており、前記複数の反応ガス供給マニホールドのうちの、前記第1の締結部材設置部を挟んで配置された2つの反応ガス供給マニホールドは、それぞれ、前記複数のオフガス排出マニホールドのうちのいずれかのオフガス排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されており、前記複数のオフガス排出マニホールドのうちの、前記第2の締結部材設置部を挟んで配置された2つのオフガス排出マニホールドは、それぞれ、前記複数の反応ガス供給マニホールドのうちのいずれかの反応ガス供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されているようにすることが好ましい。
【0012】
こうすることによって、さらに、反応ガスが膜電極接合体の全体に流れやすくすることができ、膜電極接合体における有効発電面積を増加させ、発電効率を向上させることができる。
【0013】
上記いずれかの燃料電池スタックにおいて、前記反応ガス供給マニホールドは、前記複数の膜電極接合体がそれぞれ備えるカソードに、前記酸化剤ガスとしての酸素を含む空気を分岐して供給するための空気供給マニホールドであり、前記オフガス排出マニホールドは、前記カソードで未消費のオフガスであるカソードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのカソードオフガス排出マニホールドであるものとすることが好ましい。なお、反応ガス供給マニホールドは、複数の膜電極接合体がそれぞれ備えるアノードに、燃料ガスとしての水素を分岐して供給するための水素供給マニホールドであり、オフガス排出マニホールドは、アノードで未消費のオフガスであるアノードオフガスを集合させて燃料電池スタックの外部に排出するためのアノードオフガス排出マニホールドであるものとしてもよい。
【0014】
一般に、燃料電池スタックでは、アノードには、燃料ガスとして、水素が供給され、カソードには、酸化剤ガスとして、酸素を含む空気が供給される。そして、空気に含まれる各分子は、水素の分子よりも大きいため、カソードにおける酸素は、アノードにおける水素と比較して、拡散しにくい。本発明によって、酸化剤ガスとしての空気をカソード全体に供給しやすくすることができるので、膜電極接合体における有効発電面積を増加させ、発電効率を向上させる効果が大きい。
【0015】
上記いずれかの燃料電池スタックにおいて、前記第1の締結部材設置部、および、前記第2の締結部材設置部のうちの少なくとも一方は、少なくとも前記セパレータに設けられた切り欠き部であるものとしてもよい。こうすることによって、第1の締結部材、および、第2の締結部材のうちの少なくとも一方を切り欠き部に嵌合させて、上記積層体を締結することができる。なお、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部のうちの少なくとも一方を、少なくともセパレータに設けられた貫通孔としてもよい。
【0016】
上記いずれかの燃料電池スタックにおいて、前記セパレータと前記膜電極接合体との間には、前記反応ガス供給マニホールドから前記オフガス排出マニホールドまで、前記反応ガス、および、前記オフガスが流れる多孔質部材が介装されているようにしてもよい。こうすることによって、多孔質部材全体にガスが流れやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.燃料電池スタックの構成:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。この燃料電池スタック100は、概ね、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に、それぞれアノード、および、カソードを接合した膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させたスタック構造を有している。本実施例では、電解質膜として、固体高分子膜を用いるものとした。電解質として、固体酸化物等、他の電解質を用いるものとしてもよい。また、本実施例では、セパレータは、後述するように、3層構造を有しており、セパレータ内には、アノードに供給すべき燃料ガスとしての水素の流路や、カソードに供給すべき酸化剤ガスとしての空気の流路や、冷却水の流路が形成されている。なお、燃料電池スタック100における膜電極接合体の積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
【0018】
燃料電池スタック100は、図示するように、一端から、エンドプレート10a、絶縁板20a、集電板30a、複数の燃料電池モジュール40、集電板30b、絶縁板20b、エンドプレート10bの順に積層することによって構成されている。本実施例では、これらは、それぞれ横長の略矩形形状を有している。積層された複数の燃料電池モジュール40は、本発明における積層体に相当する。そして、燃料電池スタック100内部には、水素や、空気や、冷却水を、それぞれ各膜電極接合体に分配して供給するための供給マニホールド(水素供給マニホールド、空気供給マニホールド、冷却水供給マニホールド)や、各膜電極接合体のアノードおよびカソードからそれぞれ排出されるアノードオフガスおよびカソードオフガスや、冷却水を集合させて燃料電池スタック100の外部に排出するための排出マニホールド(アノードオフガス排出マニホールド、カソードオフガス排出マニホールド、冷却水排出マニホールド)が形成されている。
【0019】
そして、図示するように、エンドプレート10aの下側長辺の内側には、下側長辺に沿って、空気供給マニホールドを構成する3つの空気供給口12Ai,12Bi,12Ciが、互いに隣接して形成されている。また、エンドプレート10aの上側長辺の内側には、上側長辺に沿って、カソードオフガス排出マニホールドを構成する4つのカソードオフガス排出口12Ao,12Bo,12Co,12Doが、互いに隣接して形成されている。また、エンドプレート10aの左側短辺の内側には、水素供給マニホールドを構成する水素供給口14i、および、冷却水供給マニホールドを構成する冷却水供給口16iが、上下に互いに隣接して形成されている。また、エンドプレート10aの右側短辺には、冷却水排出マニホールドを構成する冷却水排出口16o、および、アノードオフガス排出マニホールドを構成するアノードオフガス排出口14oが、上下に互いに隣接して形成されている。
【0020】
水素供給口14iには、図示しない水素タンクから、燃料ガスとしての水素が供給され、燃料電池スタック100のアノードから排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス排出口14oから排出される。また、空気供給口12Ai,12Bi,12Ciには、図示しないエアコンプレッサによって圧縮された酸化剤ガスとしての酸素を含む空気がそれぞれ供給され、燃料電池スタック100のカソードから排出されるカソードオフガスは、カソードオフガス排出口12Ao,12Bo,12Coから排出される。また、冷却水供給口16iには、図示しないラジエータによって冷却され、ポンプによって加圧された冷却水が供給され、燃料電池スタック100の内部を流れて、冷却水排出口16oから排出されて循環する。
【0021】
燃料電池モジュール40は、膜電極接合体、および、シールガスケットを一体的に備えるユニットと、セパレータとによって構成されている。この燃料電池モジュール40については、後述する。
【0022】
エンドプレート10a,10bは、剛性を確保するために、鋼等の金属によって形成されている。また、絶縁板20a,20bは、ゴムや、樹脂等の絶縁性部材によって形成されている。また、集電板30a,30bは、緻密質カーボンや、銅板などのガス不透過な導電性部材によって形成されている。集電板30a,30bには、それぞれ出力端子32a,32bが設けられており、燃料電池スタック100で発電した電力を出力可能となっている。
【0023】
B.締結構造:
燃料電池スタック100において、複数の燃料電池モジュール40等は、スタック構造のいずれかの箇所における接触抵抗の増加による電池性能の低下を抑制したり、ガスの漏洩を防止したりするために、スタック構造の積層方向に所定の締結荷重が加えられた状態で締結されている。以下、燃料電池スタック100の締結構造について説明する。
【0024】
本実施例では、絶縁板20a,20b、集電板30a,30b、複数の燃料電池モジュール40の四隅に、それぞれ矩形形状を有する切り欠き部が設けられている。そして、これらは、各切り欠き部に四角柱状のロッド部材50を当接させ、スタック構造の積層方向に締結荷重を加えつつ、各ロッド部材50の両端部を、ボルト52によってエンドプレート10a,10bの四隅にそれぞれ固定することによって締結されている。上記積層方向から見た各切り欠き部の形状は、ロッド部材50の断面形状とほぼ同一形状である。したがって、各ロッド部材50は、エンドプレート10a,10bの四隅から突出しない。
【0025】
なお、燃料電池スタック100における上述した締結荷重は、例えば、エンドプレート10aと、絶縁板20aとの間や、エンドプレート10bと、絶縁板20bとの間にスペーサを挿入し、このスペーサの厚さを調節したり、絶縁板20a,20bの厚さを調節したりすることによって調整可能である。また、ロッド部材50の長さは、予め規定されているので、燃料電池スタック100の積層方向の長さは、上述した締結荷重の大きさに関わらず、一定となる。また、本実施例の燃料電池スタック100では、絶縁板20a,20b、集電板30a,30b、複数の燃料電池モジュール40の四隅に設けられた各切り欠き部に、それぞれロッド部材50を当接させることによって、それぞれの位置決めを行うことができる。
【0026】
さらに、本実施例の燃料電池スタック100では、エンドプレート10a,エンドプレート10b、絶縁板20a,20b、集電板30a,30b、複数の燃料電池モジュール40の上側の側面の中央部に切り欠き部(例えば、図示したエンドプレート10aにおける切り欠き部17a)が形成されている。また、エンドプレート10a,エンドプレート10b、絶縁板20a,20b、集電板30a,30b、複数の燃料電池モジュール40の下側の側面には、上側の側面に形成された切り欠き部と互いに対向しない位置に、2つの切り欠き部(例えば、図示したエンドプレート10aにおける切り欠き部18a,19a)が形成されている。なお、図示したように、エンドプレート10aにおける切り欠き部18a,19aは、それぞれカソードオフガス排出口12Bo,12Coと対向する位置に配置されており、また、エンドプレート10aにおける切り欠き部17aは、空気供給口12Biと対向する位置に配置されている。
【0027】
そして、燃料電池スタック100の上側の側面に形成された切り欠き部に、締結部材60を嵌合し、締結部材60の両端部を、それぞれエンドプレート10a,10bに、ボルト62によって固定するとともに、燃料電池スタック100の下側の側面に形成された2つの切り欠き部に、締結部材70,80をそれぞれ嵌合し、締結部材70,80の両端部を、それぞれエンドプレート10a,10bに、図示しないボルトによって固定する。こうすることによって、上述した締結荷重の反力によるエンドプレート10a,10bの湾曲変形を防止することができる。
【0028】
燃料電池スタック100の上側の側面に形成された切り欠き部の上記積層方向から見た形状は、締結部材60の断面形状とほぼ同一形状であり、燃料電池スタック100の下側の側面に形成された2つの切り欠き部の上記積層方向から見た形状は、それぞれ締結部材70,80の断面形状とほぼ同一形状である。したがって、締結部材60,70,80は、それぞれ燃料電池スタック100の側面から突出しない。燃料電池スタック100の下側の側面に形成された2つの切り欠き部、および、これらの切り欠き部に嵌合されて固定される締結部材70,80は、それぞれ本発明における第1の締結部材設置部、および、第1の締結部材に相当する。また、燃料電池スタック100の上側の側面に形成された切り欠き部、および、この切り欠き部に嵌合されて固定される締結部材60は、それぞれ本発明における第2の締結部材設置部、および、第2の締結部材に相当する。
【0029】
なお、ロッド部材50、および、締結部材60,70,80は、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成されている。そして、これらの表面には、各燃料電池モジュール40間、および、燃料電池モジュール40とエンドプレート10a,10bとの間の絶縁を確保するために、絶縁性を有する皮膜がコーティングされている。
【0030】
C.燃料電池モジュールの構成:
燃料電池スタック100を構成する各燃料電池モジュール40は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の周囲にシールガスケットを配置したユニット(以下、シールガスケット一体型MEAと呼ぶ)の両面を、後述するセパレータ41によって挟持することによって構成されている。なお、本実施例において、膜電極接合体は、電解質膜の一方の面に、カソードとして、触媒層、および、ガス拡散層が接合され、他方の面にアノードとして、触媒層、および、ガス拡散層が接合されたものである。以下、シールガスケット一体型MEA46、および、セパレータ41について説明する。
【0031】
C1.シールガスケット一体型MEA:
図2は、シールガスケット一体型MEA46の概略構造を示す説明図である。図2(a)に、シールガスケット一体型MEA46のカソード側から見た平面図を示した。また、図2(b)には、図2(a)におけるA−A断面図を示した。
【0032】
図2(a)に示したように、シールガスケット一体型MEA46は、略矩形形状を有しており、矩形形状を有するMEA461の周囲に、シリコーンゴムからなるシールガスケット460を一体形成したものである。MEA461は、図2(b)に示したように、電解質膜461mの両面に、それぞれカソード461c、および、アノード461aを接合したものである。そして、図2(a)に示したように、シールガスケット460の四隅には、それぞれ、先に説明したロッド部材50が当接する切り欠き部460cが形成されている。また、シールガスケット460の上側長辺の中央部であって、エンドプレート10aに形成された切り欠き部17aに対応する位置には、切り欠き部467が形成されている。また、シールガスケット460の下側長辺には、切り欠き部467と互いに対向しない位置であって、エンドプレート10aに形成された切り欠き部18a、および、切り欠き部19aにそれぞれ対応する位置に、2つの切り欠き部468,469が形成されている。なお、本実施例では、シールガスケット460として、シリコーンゴムを用いるものとしたが、これに限られず、ガス不透過性、弾力性、耐熱性を有する他の部材を用いるものとしてもよい。
【0033】
そして、シールガスケット460の下側長辺部のMEA461の近傍領域には、空気供給マニホールドを構成する空気供給用貫通孔462Ai,462Bi,462Ciが、シールガスケット460の下側長辺に沿って、互いに隣接して形成されている。シールガスケット460における空気供給用貫通孔462Ai,462Bi,462Ciの形成位置は、それぞれエンドプレート10aに形成された空気供給口12Ai,12Bi,12Ciの形成位置と対応している。なお、図示するように、切り欠き部468は、空気供給用貫通孔462Aiと、空気供給用貫通孔462Biとの間に形成されており、また、切り欠き部469は、空気供給用貫通孔462Biと、空気供給用貫通孔462Ciとの間に形成されている。
【0034】
また、シールガスケット460の上側長辺部のMEA461の近傍領域には、カソードオフガス排出マニホールドを構成するカソードオフガス排出用貫通孔462Ao,462Bo,462Co,462Doが、シールガスケット460の上側長辺に沿って、互いに隣接して形成されている。シールガスケット460におけるカソードオフガス排出用貫通孔462Ao,462Bo,462Co,462Doの形成位置は、それぞれカソードオフガス排出口12Ao,12Bo,12Co,12Doの形成位置と対応している。なお、図示するように、切り欠き部467は、カソードオフガス排出用貫通孔462Boと、カソードオフガス排出用貫通孔462Coとの間に形成されている。
【0035】
そして、シールガスケット一体型MEA46において、切り欠き部468を挟んで配置された空気供給用貫通孔462Aiと、空気供給用貫通孔462Bi、および、切り欠き部469を挟んで配置された空気供給用貫通孔462Biと、空気供給用貫通孔462Ciは、図示するように、それぞれ、カソードオフガス排出用貫通孔462Ao,462Bo,462Co,462Doの少なくとも一部と対向する位置に配置されている。また、切り欠き部467を挟んで配置されたカソードオフガス排出用貫通孔462Boと、カソードオフガス排出用貫通孔462Coは、図示するように、それぞれ、空気供給用貫通孔462Ai,462Bi,462Ciの少なくとも一部と対向する位置に配置されている。
【0036】
また、シールガスケット460の左側短辺部のMEA461の近傍領域には、水素供給マニホールドを構成する水素供給用貫通孔464iと、冷却水供給マニホールドを構成する冷却水供給用貫通孔466iとが、上下に配置して形成されている。シールガスケット460における水素供給用貫通孔464i、および、冷却水供給用貫通孔466iの形成位置は、それぞれエンドプレート10aに形成された水素供給口14i、および、冷却水供給口16iの形成位置と対応している。
【0037】
また、シールガスケット460の右側短辺部のMEA461の近傍領域には、冷却水排出マニホールドを構成する冷却水排出用貫通孔466oと、アノードオフガス排出マニホールドを構成するアノードオフガス排出用貫通孔464oとが、上下に配置して形成されている。シールガスケット460における冷却水排出用貫通孔466o、および、アノードオフガス排出用貫通孔464oの形成位置は、それぞれエンドプレート10aに形成された冷却水排出口16o、および、アノードオフガス排出口14oの形成位置と対応している。
【0038】
また、シールガスケット460における、上述した各貫通孔、および、MEA461の周囲には、図2(b)に示したように、シールガスケット460の両面にライン状の突起部を形成することによって、シールラインSLがそれぞれ形成されている。このシールラインSLによって、シールガスケット一体型MEA46と後述するセパレータ41とを積層したときに、上述した各貫通孔内を流れる水素や、空気や、冷却水、および、MEA461の表面を流れる水素や、空気の外部へ漏洩を抑制することができる。
【0039】
C2.セパレータ:
図3は、セパレータ41の構成部品の平面図である。本実施例におけるセパレータ41は、それぞれ複数の貫通孔が設けられた3枚の金属製の平板、すなわち、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44と、セパレータ41内に冷却水流路を形成するための冷却水流路形成部材45とから構成されている。そして、セパレータ41は、中間プレート43、および、冷却水流路形成部材45を、カソード対向プレート42と、アノード対向プレート44とによって挟み、これらをホットプレス接合することによって作製されている。本実施例では、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44とは、シールガスケット一体型MEA46と同一の略矩形形状を有するステンレス鋼製の平板を用いるものとした。また、冷却水流路形成部材45もステンレス鋼からなるものとした。カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44と、冷却水流路形成部材45として、ステンレス鋼の代わりに、チタンやアルミニウム等、他の金属製の平板を用いるものとしてもよい。また、中間プレート43として、樹脂製のプレートを用いるものとしてもよい。
【0040】
図3(a)は、シールガスケット一体型MEA46のカソード側の面と当接するカソード対向プレート42の平面図である。図中の破線で囲った領域は、先に説明したシールガスケット一体型MEA46におけるMEA461に対応する領域を表している。
【0041】
図示するように、カソード対向プレート42の四隅には、シールガスケット一体型MEA46と同様に、それぞれ、先に説明したロッド部材50が当接する切り欠き部42cが形成されている。そして、カソード対向プレート42には、シールガスケット一体型MEA46に形成された各貫通孔と対応する位置に、空気供給マニホールドを構成する空気供給用貫通孔422Ai,422Bi,422Ciと、カソードオフガス排出マニホールドを構成するカソードオフガス排出用貫通孔422Ao,422Bo,422Co,422Doと、水素供給マニホールドを構成する水素供給用貫通孔424iと、冷却水供給マニホールドを構成する冷却水供給用貫通孔426iと、冷却水排出マニホールドを構成する冷却水排出用貫通孔426oと、アノードオフガス排出マニホールドを構成するアノードオフガス排出用貫通孔424oとが形成されている。これらの各貫通孔の形状は、シールガスケット一体型MEA46において、これらと対応する各貫通孔の形状と同じである。
【0042】
また、カソード対向プレート42の上側長辺の中央部であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部467に対応する位置には、切り欠き部427が形成されている。また、カソード対向プレート42の下側長辺には、切り欠き部427と互いに対向しない位置であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部468、および、切り欠き部469にそれぞれ対応する位置に、2つの切り欠き部428,429が形成されている。
【0043】
また、カソード対向プレート42には、図示するように、空気供給用貫通孔422Ai,422Bi,422Ci近傍のMEA461の下端部と対向する位置に配置された複数の空気供給口422hiと、カソードオフガス排出用貫通孔422Ao,422Bo,422Co,422Do近傍のMEA461の上端部と対向する位置に配置された複数のカソードオフガス排出口422hoとが形成されている。本実施例では、複数の空気供給口422hiと、複数のカソードオフガス排出口422hoとは、すべて直径が同一の円形であるものとした。
【0044】
図3(b)は、中間プレート43の平面図である。図中の破線で囲った領域は、先に説明したシールガスケット一体型MEA46におけるMEA461に対応する領域を表している。
【0045】
図示するように、中間プレート43の四隅には、シールガスケット一体型MEA46と同様に、それぞれ、先に説明したロッド部材50が当接する切り欠き部43cが形成されている。そして、中間プレート43には、シールガスケット一体型MEA46に形成された各貫通孔と対応する位置に、空気供給マニホールドを構成する空気供給用貫通孔432Ai,432Bi,432Ciと、カソードオフガス排出マニホールドを構成するカソードオフガス排出用貫通孔432Ao,432Bo,432Co,432Doと、水素供給マニホールドを構成する水素供給用貫通孔434iと、冷却水供給マニホールドを構成する冷却水供給用貫通孔436iと、冷却水排出マニホールドを構成する冷却水排出用貫通孔436oと、アノードオフガス排出マニホールドを構成するアノードオフガス排出用貫通孔434oとが形成されている。これらの各貫通孔の形状は、シールガスケット一体型MEA46において、これらと対応する各貫通孔の形状と同じである。
【0046】
また、中間プレート43の上側長辺の中央部であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部467に対応する位置には、切り欠き部437が形成されている。また、中間プレート43の下側長辺には、切り欠き部437と互いに対向しない位置であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部468、および、切り欠き部469にそれぞれ対応する位置に、2つの切り欠き部438,439が形成されている。
【0047】
また、中間プレート43において、空気供給用貫通孔432Ai,432Bi,432Ciには、これら空気供給用貫通孔432Ai,432Bi,432Ciから、カソード対向プレート42に形成された複数の空気供給口422hiに、それぞれ空気を流すための複数の空気供給用流路形成部432Aip,432Bip,432Cipが、それぞれ設けられている。また、カソードオフガス排出用貫通孔432Ao,432Bo,432Co,432Doには、カソード対向プレート42に形成された複数のカソードオフガス排出口422hoから、カソードオフガス排出用貫通孔432Ao,432Bo,432Co,432Doに、それぞれカソードオフガスを流すための複数のカソードオフガス排出用流路形成部432Aop,432Bop,432Cop,432Dopが、それぞれ設けられている。また、水素供給用貫通孔434iには、この水素供給用貫通孔434iから、後述するアノード対向プレート44に形成された複数の水素供給口444hiに、それぞれ水素を流すための複数の水素供給用流路形成部434ipが設けられている。また、アノードオフガス排出用貫通孔434oには、後述するアノード対向プレート44に形成された複数のアノードオフガス排出口444hoから、アノードオフガス排出用貫通孔434oに、アノードオフガスを流すための複数のアノードオフガス排出用流路形成部434opが設けられている。
【0048】
また、中間プレート43の、シールガスケット一体型MEA46におけるMEA461のほぼ全体に対応する領域には、冷却水供給用貫通孔436iと冷却水排出用貫通孔436oとを連結し、セパレータ41において、冷却水流路となる貫通孔である冷却水流動部435が形成されている。そして、この冷却水流動部435の内部には、詳細な図示は省略しているが、冷却水供給用貫通孔436iから冷却水排出用貫通孔436oへ、冷却水が流れるように形成された、連続矩形凹凸の断面形状を有する波板状の冷却水流路形成部材45が配置される。なお、冷却水流路形成部材45の厚さ方向の寸法は、中間プレート43の厚さと同じであり、セパレータ41の製造時には、中間プレート43とともに、カソード対向プレート42、および、アノード対向プレート44とホットプレス接合される。
【0049】
図3(c)は、シールガスケット一体型MEA46のアノード側の面と当接するアノード対向プレート44の平面図である。図中の破線で囲った領域は、先に説明したシールガスケット一体型MEA46におけるMEA461に対応する領域を表している。
【0050】
図示するように、アノード対向プレート44の四隅には、シールガスケット一体型MEA46と同様に、それぞれ、先に説明したロッド部材50が当接する切り欠き部44cが形成されている。そして、アノード対向プレート44には、シールガスケット一体型MEA46に形成された各貫通孔と対応する位置に、空気供給マニホールドを構成する空気供給用貫通孔442Ai,442Bi,442Ciと、カソードオフガス排出マニホールドを構成するカソードオフガス排出用貫通孔442Ao,442Bo,442Co,442Doと、水素供給マニホールドを構成する水素供給用貫通孔444iと、冷却水供給マニホールドを構成する冷却水供給用貫通孔446iと、冷却水排出マニホールドを構成する冷却水排出用貫通孔446oと、アノードオフガス排出マニホールドを構成するアノードオフガス排出用貫通孔444oとが形成されている。これらの各貫通孔の形状は、シールガスケット一体型MEA46において、これらと対応する各貫通孔の形状と同じである。
【0051】
また、アノード対向プレート44の上側長辺の中央部であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部467に対応する位置には、切り欠き部447が形成されている。また、アノード対向プレート44の下側長辺には、切り欠き部447と互いに対向しない位置であって、シールガスケット一体型MEA46に形成された切り欠き部468、および、切り欠き部469にそれぞれ対応する位置に、2つの切り欠き部448,449が形成されている。
【0052】
また、アノード対向プレート44には、図示するように、水素供給用貫通孔444i近傍のMEA461の左端部と対向する位置に配置された複数の水素供給口444hiと、アノードオフガス排出用貫通孔444o近傍のMEA461の右端部と対向する位置に配置された複数のアノードオフガス排出口444hoとが形成されている。本実施例では、複数の水素供給口444hiと、複数のアノードオフガス排出口444hoとは、すべて直径が同一の円形であるものとした。
【0053】
なお、本実施例の燃料電池モジュール40において、シールガスケット一体型MEA46とセパレータ41との積層時には、MEA461とセパレータ41との間に、水素供給マニホールドから供給された水素や、空気供給マニホールドから供給された空気を、MEA461のアノード461a、および、カソード461cに供給するためのガス流路を構成するガス流路層として、金属多孔体からなる金属多孔体層がそれぞれ介装される。ガス流路層として、金属多孔体の代わりに、カーボン等、導電性、および、ガス拡散性を有する他の部材を用いるようにしてもよい。
【0054】
図4は、セパレータ41の平面図である。このセパレータ41は、先に説明したように、中間プレート43の冷却水流動部435内に、冷却水流路形成部材45を配置して、カソード対向プレート42、および、アノード対向プレート44と、中間プレート43とを、ホットプレス接合することによって形成されている。ここでは、アノード対向プレート44側から見た様子を示した。
【0055】
C3.燃料電池モジュールの断面構造:
図5は、燃料電池モジュール40の断面構造を示す説明図である。セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA46とを積層させたときの、図4におけるA−A断面図を示した。
【0056】
シールガスケット一体型MEA46において、MEA461のアノード側の金属多孔体層47は、シールガスケット一体型MEA46と、セパレータ41とを積層させたときに、セパレータ41のアノード対向プレート44と当接するように配置されている。また、MEA461のカソード側の金属多孔体層47は、シールガスケット一体型MEA46と、セパレータ41とを積層させたときに、セパレータ41のカソード対向プレート42と当接するように配置されている。また、シールガスケット460に形成されたシールラインSLは、カソード対向プレート42、および、アノード対向プレート44と当接する。
【0057】
図中に矢印で示したように、燃料電池モジュール40において、アノード対向プレート44の空気供給用貫通孔442Biから供給された空気は、中間プレート43の空気供給用貫通孔432Biから分岐して、空気供給用流路形成部432Bipを通り、カソード対向プレート42の空気供給口422hiから、MEA461の表面に対して垂直な方向に供給される。そして、この空気は、カソード側の金属多孔体層47中、および、カソード461cの拡散層中を拡散しつつ流れ、カソード対向プレート42のカソードオフガス排出口422hoから、MEA461の表面に対して垂直な方向に排出され、中間プレート43のカソードオフガス排出用流路形成部432Cop、カソードオフガス排出用貫通孔432Coを通って、アノード対向プレート44のカソードオフガス排出用貫通孔442Coから排出される。
【0058】
なお、ここでは、燃料電池モジュール40において、MEA461のカソードに供給される空気の流れについてのみ示したが、MEA461のアノード461aに供給される水素の流れも同様である。
【0059】
C4.比較例、および、本実施例による効果:
図6は、比較例としての燃料電池スタック100Aの概略構成を示す斜視図である。この燃料電池スタック100Aの構成は、空気供給マニホールド、および、燃料電池スタック100Aの下側の側面に形成された切り欠き部の形成位置以外は、上記実施例の燃料電池スタック100の構成と同じである。以下、燃料電池スタック100Aについて、燃料電池スタック100と異なる部分についてのみ説明し、同じ部分については、説明を省略する。
【0060】
図示するように、燃料電池スタック100Aでは、エンドプレート10aの下側長辺の内側には、下側長辺に沿って、空気供給マニホールドを構成する4つの空気供給口12Ai,12Bi,12Ci,12Ciが、互いに隣接して形成されている。そして、これら4つの空気供給口12Ai,12Bi,12Ci,12Ciは、それぞれエンドプレート10aの上側長辺の内側に形成された空気排出口と互いに対向する位置に配置されている。また、空気供給口12Biと、空気供給口12Ciとの間、すなわち、切り欠き部17aと対向する位置に、切り欠き部18aが形成されている。なお、図示は省略しているが、燃料電池スタック100Aにおいて、燃料電池モジュール40を構成する各部材においても、空気供給口12Ai,12Bi,12Ci,12Ci、および、切り欠き部18aに対応する貫通孔、および、切り欠き部が形成されている。
【0061】
上述した比較例の燃料電池スタック100Aと、上記実施例の燃料電池スタック100とを比較した場合、上記実施例の燃料電池スタック100の発電効率の方が、比較例の燃料電池スタック100Aの発電効率よりも高くなるという効果がある。以下、この理由について説明する。
【0062】
図7は、燃料電池スタック100Aと、燃料電池スタック100との発電効率の違いを説明するための説明図である。図7(a)に、比較例の燃料電池スタック100Aにおけるシールガスケット一体型MEA46Aの平面図を示した。また、図7(b)に、上記実施例の燃料電池スタック100におけるシールガスケット一体型MEA46の平面図を示した。
【0063】
比較例の燃料電池スタック100Aでは、図7(a)に示したように、切り欠き部467と、切り欠き部468とが、互いに対向して配置されており、これらを挟んで隣接して配置された2つのカソードオフガス排出マニホールド(例えば、図示したカソードオフガス排出用貫通孔462Bo,462Co)と、2つの空気供給マニホールド(例えば、図示した空気供給用貫通孔462Bi,462Ci)とが、互いに対向して配置されている。このため、上述した2つのカソードオフガス排出マニホールド間の距離、および、2つの空気供給マニホールド間の距離は、比較的長くなり、MEA461において、空気は、図中に破線矢印で示したように流れ、切り欠き部467と切り欠き部468との間の領域Rには、空気が流れにくくなり、この領域Rは、発電に有効に利用されない。
【0064】
これに対し、上記実施例の燃料電池スタック100では、図7(b)に示したように、切り欠き部467と、切り欠き部468,469とが、互いに対向しない位置に配置されており、切り欠き部468を挟んで配置された2つの空気供給マニホールド(例えば、図示した空気供給用貫通孔462Ai,462Bi)、および、切り欠き部469を挟んで配置された空気供給マニホールド(例えば、図示した空気供給用貫通孔462Bi,462Ci)は、それぞれ、4つのカソードオフガス排出マニホールド(例えば、図示したカソードオフガス排出用貫通孔462Ao,462Bo,462Co,462Do)の少なくとも一部と対向する位置に配置されている。また、切り欠き部467を挟んで配置された2つのカソードオフガス排出マニホールド(例えば、図示したカソードオフガス排出用貫通孔462Bo,462Co)は、それぞれ、4つの空気供給マニホールド(例えば、図示した空気供給用貫通孔462Ai,462Bi,462Ci)の少なくとも一部と対向する位置に配置されている。したがって、MEA461において、空気は、図中に破線矢印で示したように流れ、空気が流れにくくなる領域は生じにくくなる。この結果、MEA461のほぼ全体で発電を行うことが可能となり、MEA461における有効発電面積を増加させ、発電効率を向上させることができる。
【0065】
D.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0066】
D1.変形例1:
上記実施例では、燃料電池スタック100の下側の側面に形成された切り欠き部(第1の締結部材設置部)、および、締結部材(第1の締結部材)の数をそれぞれ2つとし、上側の側面に形成された切り欠き部(第2の締結部材設置部)、および、締結部材(第2の締結部材)の数をそれぞれ1つとしたが、本発明は、これに限られない。第1の締結部材設置部、第1の締結部材、および、第2の締結部材設置部、第2の締結部材の数は、それぞれ任意に設定可能である。
【0067】
また、上記実施例では、空気供給マニホールドの数を3つとし、カソードオフガス排出マニホールドの数を4つとしたが、本発明は、これに限られない。空気供給マニホールド、および、カソードオフガス排出マニホールの数は、それぞれ第1の締結部材設置部、第1の締結部材の数、および、第2の締結部材設置部、第2の締結部材の数を考慮して、任意に設定可能である。
【0068】
D2.変形例2:
上記実施例では、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部として、第1の切り欠き部、および、第2の切り欠き部を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。例えば、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部を、それぞれ貫通孔としてもよい。この場合、締結部材としては、例えば、ボルト、および、ナットを用いるようにすればよい。
【0069】
D3.変形例3:
上記実施例では、本発明における第1の締結部材設置部、および、第1の締結部材と、第2の締結部材設置部、および、第2の締結部材の配置と、複数の反応ガス供給マニホールド、および、複数のオフガス排出マニホールドの配置を、空気供給マニホールド、および、カソードオフガス排出マニホールドに適用した場合について説明したが、本発明は、これに限られない。本発明を、水素供給マニホールド、および、アノードオフガス排出マニホールドに適用するようにしてもよい。また、本発明を、空気供給マニホールドと、カソードオフガス排出マニホールド、および、水素供給マニホールドと、アノードオフガス排出マニホールドの双方に適用するようにしてもよい。
【0070】
D4.変形例4:
上記実施例では、エンドプレート10a,10bにも、第1の切り欠き部、および、第2の切り欠き部が形成されているものとしたが、本発明は、これに限られない。エンドプレート10a,10bには、第1の締結部材設置部、および、第2の締結部材設置部を形成しないものとしてもよい。この場合、締結部材60,70,80は、ロッド部材50と同様に、スタック構造の積層方向に、ボルトによってエンドプレート10a,10bにそれぞれ固定するようにすればよい。
【0071】
D5.変形例5:
上記実施例では、エンドプレート10aに空気供給口12Ai,12Bi,12Ciと、カソードオフガス排出口12Ao,12Bo,12Co,12Doとを形成するものとしたが、いずれか一方をエンドプレート10bに形成するものとしてもよい。水素供給口14iと、アノードオフガス排出口14o、および、冷却水供給口16iと、冷却水排出口16oについても同様である。
【0072】
D6.変形例6:
上記実施例では、燃料電池スタック100を構成する部材は、それぞれ略矩形形状であるものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明を、互いに対向する第1の側面と第2の側面とを有する多角形形状の積層部材を積層した燃料電池スタックに適用してもよい。
【0073】
D7.変形例7:
上記実施例では、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44との3枚の平板を接合することによって構成したセパレータ41を用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。例えば、導電性を有するブロック状の部材に、水素や、空気や、冷却水を流すための流路を形成したセパレータを用いるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。
【図2】シールガスケット一体型MEA46の概略構造を示す説明図である。
【図3】セパレータ41の構成部品の平面図である。
【図4】セパレータ41の平面図である。
【図5】燃料電池モジュール40の断面構造を示す説明図である。
【図6】変形例としての燃料電池スタック100Aの概略構成を示す斜視図である。
【図7】燃料電池スタック100Aと燃料電池スタック100との発電効率の違いを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0075】
100,100A…燃料電池スタック
10a,10b…エンドプレート
12Ai,12Bi,12Ci,12Di…空気供給口
12Ao,12Bo,12Co,12Do…カソードオフガス排出口
14i…水素供給口
14o…アノードオフガス排出口
16i…冷却水供給口
16o…冷却水排出口
17a,18a,19a…切り欠き部
20a,20b…絶縁板
30a,30b…集電板
32a,32b…出力端子
40…燃料電池モジュール
41…セパレータ
42…カソード対向プレート
42c…切り欠き部
422Ai,422Bi,422Ci…空気供給用貫通孔
422Ao,422Bo,422Co…カソードオフガス排出用貫通孔
422hi…空気供給口
422ho…カソードオフガス排出口
424i…水素供給用貫通孔
424o…アノードオフガス排出用貫通孔
426i…冷却水供給用貫通孔
426o…冷却水排出用貫通孔
427,428,429…切り欠き部
43…中間プレート
43c…切り欠き部
432Ai,432Bi,432Ci…空気供給用貫通孔
432Aip,432Bip,432Cip…空気供給用流路形成部
432Ao,432Bo,432Co,432Do…カソードオフガス排出用貫通孔
432Aop,432Bop,432Cop,432Dop…カソードオフガス排出用流路形成部
434i…水素供給用貫通孔
434ip…水素供給用流路形成部
434o…アノードオフガス排出用貫通孔
434op…アノードオフガス排出用流路形成部
435…冷却水流動部
436i…冷却水供給用貫通孔
436o…冷却水排出用貫通孔
437,438,439…切り欠き部
44…アノード対向プレート
44c…切り欠き部
442Ai,442Bi,442Ci…空気供給用貫通孔
442Ao,442Bo,442Co,442Do…カソードオフガス排出用貫通孔
444i…水素供給用貫通孔
444o…アノードオフガス排出用貫通孔
444hi…水素供給口
444ho…アノードオフガス排出口
446i…冷却水供給用貫通孔
446o…冷却水排出用貫通孔
447,448,449…切り欠き部
45…冷却水流路形成部材
46,46A…シールガスケット一体型MEA
460…シールガスケット
460c…切り欠き部
461…MEA
461m…電解質膜
461a…アノード
461c…カソード
462Ai,462Bi,462Ci…空気供給用貫通孔
462Ao,462Bo,462Co,462Do…カソードオフガス排出用貫通孔
464i…水素供給用貫通孔
464o…アノードオフガス排出用貫通孔
466i…冷却水供給用貫通孔
466o…冷却水排出用貫通孔
467,468,469…切り欠き部
47…金属多孔体層
50…ロッド部材
52…ボルト
60…締結部材
62…ボルト
70,80…締結部材
SL…シールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を、セパレータを介在させて、複数積層させた積層体を備える燃料電池スタックであって、
前記膜電極接合体の外周部の一部の領域に互いに隣接して配置され、前記燃料電池スタックの外部から供給された反応ガスを、複数の前記膜電極接合体に分岐して供給するための複数の反応ガス供給マニホールドと、
前記膜電極接合体の外周部の一部の領域であって、前記膜電極接合体を挟んで前記複数の反応ガス供給マニホールドが配置された領域と対向する領域に互いに隣接して配置され、前記複数の膜電極接合体で未消費の反応ガスであるオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するための複数のオフガス排出マニホールドと、
前記複数の反応ガス供給マニホールドの間のうちの少なくとも一部に配置され、前記複数の膜電極接合体、および、前記複数のセパレータを、積層方向に締結する第1の締結部材を設置するための第1の締結部材設置部と、
前記複数のオフガス排出マニホールドの間のうちの少なくとも一部に配置され、前記複数の膜電極接合体、および、前記複数のセパレータを、積層方向に締結する第2の締結部材を設置するための第2の締結部材設置部と、を備え、
前記第1の締結部材設置部は、前記複数のオフガス排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されており、
前記第2の締結部材設置部は、前記複数の反応ガス供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されている、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックであって、
前記第1の締結部材設置部と、前記第2の締結部材設置部とは、前記膜電極接合体を挟んで互いに対向しない位置に配置されており、
前記複数の反応ガス供給マニホールドのうちの、前記第1の締結部材設置部を挟んで配置された2つの反応ガス供給マニホールドの双方は、前記複数のオフガス排出マニホールドのうちのいずれか1つのオフガス排出マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されており、
前記複数のオフガス排出マニホールドのうちの、前記第2の締結部材設置部を挟んで配置された2つのオフガス排出マニホールドの双方は、前記複数の反応ガス供給マニホールドのうちのいずれか1つの反応ガス供給マニホールドの少なくとも一部と対向する位置に配置されている、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池スタックであって、
前記反応ガス供給マニホールドは、前記複数の膜電極接合体がそれぞれ備えるカソードに、前記酸化剤ガスとしての酸素を含む空気を分岐して供給するための空気供給マニホールドであり、
前記オフガス排出マニホールドは、前記カソードで未消費のオフガスであるカソードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのカソードオフガス排出マニホールドである、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、
前記第1の締結部材設置部、および、前記第2の締結部材設置部のうちの少なくとも一方は、少なくとも前記セパレータに設けられた切り欠き部である、燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、
前記セパレータと前記膜電極接合体との間には、前記反応ガス供給マニホールドから前記オフガス排出マニホールドまで、前記反応ガス、および、前記オフガスが流れる多孔質部材が介装されている、燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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