説明

燃料電池スタック

【課題】この発明は、排水性が向上された燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【解決手段】単位セル30は、アノードガス出口34に、撥水プレート36、およびワイヤ38が備えられている。多数の単位セル30が重ねられたときにアノードガス出口34が奥行方向にマニホールドを形成し、撥水プレート36はこのマニホールドに挿入される。ワイヤ38は、個々の単位セル30に取り付けられている。撥水プレート36は、表面に撥水加工が施されたプレートである。ワイヤ38は、親水性の表面を有するワイヤである。多数のワイヤ38が、マニホールド10の奥行方向に並ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2006−147503号公報に開示されているように、排水性向上用の構成を備えた燃料電池スタックが知られている。上記従来の燃料電池スタックは、マニホールド内に、吸水部材を備えている。この吸水部材によって、排水性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−213883号公報
【特許文献2】特開2005−243324号公報
【特許文献3】特開2001−118596号公報
【特許文献4】特開2006−260787号公報
【特許文献5】特開2006−147503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸水部材がその内部に吸水できる水量には限度がある。上記従来の燃料電池システムでは、吸水部材の吸水量が限界に達した場合、排水性能が低下してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、排水性が向上された燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池スタックであって、
それぞれが反応ガス流路を備えた、複数の単位セルと
それぞれの前記単位セルの前記反応ガス流路の出口と連通するマニホールドと、
前記マニホールドの内面を覆うように備えられた撥水部と、
前記出口と前記マニホールドとの連通箇所に備えられ、前記出口から前記撥水部へと延びる親水部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、単位セル内の水が親水部を経由してマニホールドへと移動し、さらに、撥水部がマニホールド内で水をはじく。これにより、単位セル内の水を、マニホールド下流へと円滑に排水することができる。その結果、燃料電池スタックの排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる燃料電池スタックを構成する単位セル30の平面図である。
【図2】図1のX部分を拡大した図である。
【図3】実施の形態1にかかる燃料電池スタックのマニホールドを模式的に示す斜視図である。
【図4】実施の形態1にかかる燃料電池スタックのマニホールドの内部を透視した斜視図である。
【図5】実施の形態1にかかる燃料電池スタックの製造方法を説明するための図である。
【図6】実施の形態1にかかる燃料電池スタックの製造方法を説明するための図である。
【図7】実施の形態1にかかる燃料電池スタックの製造方法を説明するための図である。
【図8】実施の形態1の変形例の構成を示す図である。
【図9】実施の形態1の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる燃料電池スタックを構成する単位セル30の平面図である。実施の形態1にかかる燃料電池スタックは、車両等の移動体用の燃料電池システムに好適である。単位セル30は、アノードガス入口32と、アノードガス出口34と、をそれぞれ有している。単位セル30は、アノードおよびカソードに、反応ガスつまり水素と空気の供給を受け、水素と酸素の電気化学的反応によって発電する。図1に点線矢印で模式的に示すように、単位セル30のアノード面内を水素が流れる。なお、便宜上、カソードの空気の流れも図示した。
【0010】
図2は、図1のX部分を拡大した図である。単位セル30は、アノードガス出口34に、コの字型にプレス加工された撥水プレート36、およびワイヤ38を備えている。図2に示すように、撥水プレート36のコの字状の口が、アノード面内の水素出口側を臨む向きに開いている。実際には、多数の単位セル30が重ねられたときにアノードガス出口34が連通して奥行方向にマニホールドが形成され、撥水プレート36がこのマニホールドに挿入される。ワイヤ38は、個々の単位セル30に取り付けられている。撥水プレート36は、表面に撥水加工が施されたプレートである。ワイヤ38は、親水性の表面を有するワイヤである。
【0011】
図3は、実施の形態1にかかる燃料電池スタックのマニホールド10を模式的に示す斜視図である。マニホールド10は、多数の単位セル30が重ねられたときアノードガス出口34が奥行方向に連通することにより形成される。マニホールド10には、既述したように、コの字状に折り曲げられた撥水プレート36が配置されている。撥水プレート36は、マニホールド10の長さとほぼ同じ程度に、奥行方向に長い。これにより、マニホールド10における、アノードオフガスが流入してくる部位(つまり単位セル30のアノードガス流路とマニホールド10との連通部分)を除く3面が、撥水プレート36によって覆われる。図4は、実施の形態1にかかる燃料電池スタックのマニホールド10の内部を透視した斜視図である。個々の単位セル30のアノードガス出口34に、それぞれ、ワイヤ38が備えられている。よって、多数のワイヤ38が、マニホールド10の奥行方向に並ぶ。
【0012】
[実施の形態1の作用効果]
実施の形態1によれば、単位セル30内の水が、親水性のワイヤ38を経由して、マニホールド10へと積極的に排出される。さらに、マニホールド10内で、撥水プレート36が水をはじく。これにより、単位セル30内の水が、アノードオフガスの流れに乗って、マニホールド10下流へと円滑に排水される。このように、実施の形態1によれば、親水機能と撥水機能とが、マニホールド10内で効果的に使い分けられている。その結果、燃料電池スタックの排水性を向上させることができる。
【0013】
また、実施の形態1によれば、単位セル30内の水がマニホールド10へと排出され、撥水プレート36を経由してそのまま排出されていく。従って、例えば、特開2006−147503号公報のように吸水部材を用いる場合に比して、燃料電池スタック内の水量を少なく抑えることができる。水量が増えれば、燃料電池スタックの重量も増加する。燃料電池車両等の移動体にとっては、こういった重量増は避けたい。また、氷点下時の凍結のおそれがあることを考えると、燃料電池スタック内部の水量(特に停止時の残存水量)が多くなることは好ましくない。実施の形態1によれば、燃料電池スタックの重量増や凍結のおそれを回避しつつ、排水性を向上することができる。
【0014】
また、実施の形態1によれば、図2に示すように、マニホールド10内面全域をほぼ覆うように撥水プレート36が位置している。これにより、排水性向上とともに、マニホールド10の管摩擦係数を低くすることができる。その結果、システム効率の向上という効果もある。
【0015】
[実施の形態1の製造方法]
図5乃至7は、実施の形態1にかかる燃料電池スタックの製造方法を説明するための図である。先ず、図5に示すように、ワイヤ38を単位セル30に接着する。ワイヤ38を接着した単位セル30を、燃料電池スタックに必要な枚数だけ準備する。一方、図6(a)に示すように、表面を撥水加工した撥水プレート36を準備し、図6(b)に示すようにプレス加工により撥水プレート36をコの字状にする。次いで、図7に示すように、ワイヤ38を接着した単位セル30を複数枚重ねて燃料電池スタックを構成し、コの字状の撥水プレート36を挿入する。以上により、実施の形態1にかかる燃料電池スタックを製造することができる。
【0016】
尚、上述した実施の形態1では、単位セル30が、前記第1の発明における「単位セル」に、マニホールド10が、前記第1の発明における「マニホールド」に、撥水プレート36が、前記第1の発明における「撥水部」に、ワイヤ38が、前記第1の発明における「親水部」に、それぞれ相当している。
【0017】
[実施の形態1の変形例]
図8は、実施の形態1の第1変形例の構成を示す図である。第1変形例では、ワイヤ56が、単位セル30のアノードガス流路の内部まで侵入する程度に長い。
【0018】
図9は、実施の形態1の第2変形例の構成を示す図である。ワイヤ70は、一端70aは親水度が相対的に高く、他端70bの側にいくほど親水度が低くなっている。ワイヤ70をワイヤ38のように単位セル30に取り付けて用いることにより、毛細管現象によって単位セル30からの排水性が促進される。
【0019】
なお、実施の形態1では、親水性を有する部材であるワイヤを使って、単位セル30からの水排出を促進した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。ワイヤ以外にも、親水性を有するように構成された糸を使ってもよい。
【0020】
また、必ずしも、親水性を有する部材を別に準備しなくともよい。単位セル30のアノードガス出口34近傍部位に、表面処理を施すことにより、親水性を付与しても良い。
【符号の説明】
【0021】
10 マニホールド
30 単位セル
32 アノードガス入口
34 アノードガス出口
36 撥水プレート
38 ワイヤ
56 ワイヤ
70 ワイヤ
70a ワイヤの一端
70b ワイヤの他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが反応ガス流路を備えた、複数の単位セルと
それぞれの前記単位セルの前記反応ガス流路の出口と連通するマニホールドと、
前記マニホールドの内面を覆うように備えられた撥水部と、
前記出口と前記マニホールドとの連通箇所に備えられ、前記出口から前記撥水部へと延びる親水部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−251112(P2010−251112A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99135(P2009−99135)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】