説明

燃料電池スタック

【課題】燃料電池の構造を複雑化せずに燃料電池内の水の排水性を確保し、燃料電池の小型化、低コスト化を可能とする燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】セル積層体12の端部に設けられる非発電部材14には、セル積層体12側の内側開口部及びセル積層体12側と反対側の外側開口部を有する貫通孔29が形成され、貫通孔29には前記外側開口部を閉止し、前記内側開口部を開放して、貫通孔29内に空間部32aを形成するシール部材30が配置され、前記空間部32aは、セル積層方向から見て反応ガス排出用マニホールド16から排水用マニホールド18に亘って形成され、反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18とを連通する連通路20となる燃料電池を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料ガス(水素)と酸化ガス(空気)との電気化学反応を利用して発電を行うセルを複数積層した燃料電池スタックが知られている。
【0003】
そして、これらの燃料電池スタックには、セルの積層方向に、燃料ガス、酸化ガスの反応ガスを各セルに供給するための反応ガス供給用マニホールド、反応ガスを燃料電池スタックから排出するための反応ガス排出用マニホールドが形成されている。
【0004】
ところで、従来では、燃料電池内の水の排水性を確保することを目的として、反応ガス排出用マニホールドの内部に、貯留した水を吸引する開口部を有する吸引部材を設置した燃料電池スタックが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、燃料電池内の水の排水性を確保することを目的として、反応ガス供給用マニホールドから流入する凝縮水を貯留する水溜まり部と、水溜まり部と反応ガス排出用マニホールドと連通して凝縮水を排水する排水流路とを備える燃料電池スタックが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−266925号公報
【特許文献2】特開2007−26856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の燃料電池スタックでは、燃料電池内の水の排水性を確保するために、吸引部材等の追加部材が必要であったり、加工が複雑であったりして、燃料電池の構造が複雑化する。その結果、大型化、高コスト化を招く虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、燃料電池の構造を複雑化せずに燃料電池内の水の排水性を確保し、燃料電池の小型化、低コスト化を可能とする燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のセルが積層されたセル積層体と、前記セル積層体の端部に設けられる非発電部材と、前記セル積層体に形成される反応ガス排出用マニホールドと、前記セル積層体に形成される排水用マニホールドと、前記非発電部材に形成され、前記反応ガス排出用マニホールドと、前記排水用マニホールドとを連通する連通路と、を備える燃料電池スタックであって、前記非発電部材には、前記セル積層体側の内側開口部及び前記セル積層体側と反対側の外側開口部を有する貫通孔が形成され、前記貫通孔には前記外側開口部を閉止し、前記内側開口部を開放して、前記貫通孔内に空間部を形成する閉塞部材が配置され、前記空間部は、セル積層方向から見て前記反応ガス排出用マニホールドから前記排水用マニホールドに亘って形成され、前記連通路となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料電池の構造を複雑化せずに燃料電池内の水の排水性を確保し、燃料電池の小型化、低コスト化を可能とする燃料電池スタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る燃料電池スタックの構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】(A)は、本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の一例を示す一部模式断面図であり、(B)は、(A)のセル積層方向(X方向)から見た連通路の構成を示す模式平面図である。
【図3】本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の他の一例を示す一部模式断面図である。
【図4】本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の他の一例を示す一部模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る燃料電池スタックの構成の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、燃料電池スタック1は、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行うセル10が複数積層されたセル積層体12と、セル積層方向の両端に、セル積層体12側から順に配置される、集電板としてのターミナルプレート、絶縁板としてのインシュレータ及びエンドプレート等の非発電部材14と、を備える。集電板には外部回路に接続される端子部15が設けられている。端子部15は、約10ナノメータの厚さの金めっきが施されている。なお、非発電部材14は、ターミナルプレート、インシュレータ及びエンドプレートのうち少なくともいずれか1つから構成されるものであればよい。ターミナルプレートの材質は、導電性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、アルミ等が挙げられる。
【0014】
燃料電池スタック1には、反応ガス排出用マニホールド16、排水用マニホールド18が、セル10の積層方向に形成されている。また、不図示であるが、反応ガス供給用マニホールド、冷却水用供給・排出マニホールド等もセル10の積層方向に形成されている。そして、非発電部材14には、連通路20が形成されている。連通路20を形成する部材については後述するが、連通路20は、反応ガス排出用マニホールド16の一方端と排水用マニホールド18の一方端とを連通するものである。
【0015】
反応ガス排出用マニホールド16の他方端(連通路20側と反対側)には、マニホールド径を小さくした絞り部22(オリフィス)が形成されている。また、排水用マニホールド18の他方端(連通路20側と反対側)には、反応ガス排出用マニホールド16に合流する合流部24が形成されている。ここで、図1に示す反応ガス排出用マニホールド16は、燃料ガス用排出マニホールド又は酸化ガス用排出マニホールドであり、排水用マニホールド18は、反応ガス排出用マニホールド16のうち、燃料ガス用排出マニホールド側、酸化ガス用マニホールド側の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0016】
このような燃料電池スタック1の反応ガス及び生成水の流れを、以下に説明する。まず、燃料ガスや酸化ガスが反応ガス供給用マニホールドを通り、各セル10に分配され、セル10の発電に利用される。そして、セル10から排出された燃料ガスや酸化ガス(オフガス)が反応ガス排出用マニホールド16を通り、燃料電池スタック1から排出される。また、セル10の発電時に生成する水は、主に排水用マニホールド18、合流部24を通り、燃料電池スタック1から排出される。ここで、反応ガスが反応ガス排出用マニホールド16の絞り部22を通ることによって、反応ガス排出用マニホールド16が負圧となるため、反応ガス排出用マニホールド16と連通する排水用マニホールド18も負圧となる。その結果、負圧となった排水用マニホールド18から水が排出され易くなるため、排水用マニホールド18内の水の排水性を向上させることができる。
【0017】
図2(A)は、本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の一例を示す一部模式断面図であり、図2(B)は、図2(A)のセル積層方向(X方向)から見た連通路の構成を示す模式平面図である。図での説明は省略するが、セル積層体12を構成するセル10は、電解質膜と、電解質膜を挟持する一対の電極(アノード極及びカソード極)とを備える膜−電極接合体と、膜−電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を備える。セパレータには、反応ガス供給用口、反応ガス排出用口、排水用口等が設けられ、各セパレータの反応ガス供給用口が連通することにより反応ガス供給用マニホールドが形成され、各セパレータの反応ガス排出用口が連通することにより反応ガス排出用マニホールド16が形成され、各セパレータの排水用口が連通することにより排水用マニホールド18等が形成される。そして、セル10間には、反応ガス排出用マニホールド16を周回するシール部材26及び排水用マニホールド18を周回するシール部材28が配置されている。
【0018】
図2に示すように、非発電部材14には、反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18が連通する連通路20が形成されている。連通路20の形成においては、非発電部材14のセル積層体12側の面を研削して凹部を形成し、その凹部を連通路20とすることも考えられるが、高い加工精度が要求され、コストが高くなる。そこで、本実施形態では、まず、金型加工、プレス加工等の打ち抜き成型によって非発電部材14に貫通孔29が形成される。このような貫通孔29の形成には高い加工精度が要求されず、容易に加工することができる。そして、閉塞部材としてのシール部材30が貫通孔29に嵌め込まれ、貫通孔29のセル積層体側と反対側(セル10と反対側)の外側開口部が閉止される。また、シール部材30のセル積層体側(セル10側)の面には凹部32が形成されており、この凹部32により、貫通孔29内に、貫通孔29のセル積層体側(セル10側)にある内側開口部が開放された空間部32aが形成される。この空間部32aが、反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18とを連通する連通路20となる。反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18とを連通させる連通路20を形成するためには、空間部32aは、図2(B)に示すように、セル積層方向から見て反応ガス排出用マニホールド16から排水用マニホールド18に亘って形成される必要がある。図2(B)では、空間部32aの上端が平面視において反応ガス排出用マニホールド16の上端と同じ位置にあり、空間部32aの下端が排水用マニホールド18の下端と同じ位置にあるが、これに制限されず、空間部32aの上端が平面視において反応ガス排出用マニホールド16の上端の内側(下方)又は外側(上方)に位置していてもよいし、空間部32aの下端が平面視において排水用マニホールドの下端の内側(上方)又は外側(下方)に位置していてもよい。なお、当然に理解されることであるが、貫通孔29もセル積層方向から見て反応ガス排出用マニホールド16から排水用マニホールド18に亘って形成される必要がある。
【0019】
シール部材30としては、例えば、硬化性ゴム等からなるガスケット、液状の硬化性樹脂等を硬化させたもの等が用いられる。硬化性ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。また、硬化性樹脂としては、例えば、液状エポキシ樹脂等が挙げられる。凹部32は、例えば、ガスケットの成形時、硬化性樹脂の硬化時等で金型成型されることにより形成される。
【0020】
図3は、本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の他の一例を示す一部模式断面図である。図3に示す燃料電池スタック2において、図2に示す燃料電池スタック1と同様の構成については同一の符号を付している。図3に示す燃料電池スタック2は、非発電部材14とセル積層体12との間に、セル10を構成するセパレータと同様の材質等から構成されるセパレータ部材34が配置されている。このセパレータ部材34は、通常、セル積層体12を冷却するための冷却水流路(不図示)を形成するために設けられるものである。非発電部材14とセル積層体12との間に配置されるセパレータ部材34は、セル10に用いられるセパレータ同様に、反応ガス供給用口、反応ガス排出用口、排水用口等が形成される。セパレータ部材34の反応ガス供給用口、反応ガス排出用口、排水用口等の形状や大きさは、セル10に用いられるセパレータに形成される反応ガス供給用口、反応ガス排出用口、排水用口等の形状や大きさと異なるものであってもよいし同じでもよいが、いずれにしろ、セパレータ部材34に形成される各口とセパレータに形成される各口とが連通していればよい。すなわち、セパレータ部材34に形成される反応ガス供給用口は、反応ガス供給用マニホールドに連通し、セパレータ部材34に形成される反応ガス排出用口は、反応ガス排出用マニホールド16に連通し、セパレータ部材34に形成される排水用口は、排水用マニホールド18に連通する。
【0021】
図3に示すセパレータ部材34は、反応ガス排出用口と排水用口とが連通した連通路20aが形成された構造となっている。そして、この構造により、非発電部材14(セパレータ部材も含まれる)に形成される連通路20の幅を拡大することが可能となる。
【0022】
また、セパレータ部材34(非発電部材14)とその他の非発電部材14との間にシール部材30aを配置して、セパレータ部材34と非発電部材14との間をシールすることが望ましい。これにより、セパレータ部材34と非発電部材14との間に水が侵入することを防ぐことができるため、非発電部材14の腐食を抑制することが可能となる。セパレータ部材34(非発電部材14)とその他の非発電部材14との間に配置されるシール部材30aと、非発電部材14の貫通孔29を塞ぐシール部材30とは一体形成されたものであってもよいし、別体であってもよい。なお、セパレータ部材34とセル10との間もシール部材30bによりシールされている。
【0023】
図4は、本実施形態に係る燃料電池スタックの連通路の構成の他の一例を示す一部模式断面図である。図4に示す燃料電池スタック3において、図2に示す燃料電池スタック1と同様の構成については同一の符号を付している。図4に示すように、非発電部材14には、反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18が連通する連通路20が形成されている。本実施形態では、金型加工、プレス加工等によって非発電部材14を打ち抜き成型して貫通孔29が形成され、その貫通孔29は、セル積層体12と反対側から閉塞部材としての板部材36によって塞がれる。すなわち、貫通孔29のセル積層体側と反対側(セル10と反対側)の外側開口部が閉止され、貫通孔29内に、貫通孔29のセル積層体側(セル10側)にある内側開口部が開放された空間部36aが形成される。この空間部36aが、反応ガス排出用マニホールド16と排水用マニホールド18とを連通する連通路20となる。
【0024】
板部材36を非発電部材に固定する方法としては、例えば、板部材36と非発電部材14との間に接着剤を塗布して両者を接着させたり、ボルト等を用いて両者を締結させたりする方法等が挙げられる。さらに、板部材36と非発電部材14との間に水が侵入することを防止するために、板部材36と非発電部材14とにより形成される角部にシール部材38を配置したり接着剤を塗布したりすることが望ましい。
【0025】
板部材36としては、耐食性を有する材質から構成されることが望ましく、例えば、ステンレス等の耐食性の高い金属板やポリプロピレン等の樹脂板等が挙げられる。
【0026】
以上、非発電部材に加工が容易な貫通孔を形成した上で、その貫通孔をシール部材や板部材等の閉塞部材で塞ぐと共に、貫通孔内に形成される空間部を反応ガス排出マニホールドと排水マニホールドとを連通する連通路とすることにより、燃料電池の構造を複雑化せずに燃料電池内の水の排水性を確保し、燃料電池の小型化、低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1〜3 燃料電池スタック、10 セル、12 セル積層体、14 非発電部材、15端子部、16 反応ガス排出用マニホールド、18 排水用マニホールド、20 連通路、20a 連通路、22 絞り部、24 合流部、26,28,30,30a,30b,38 シール部材、29 貫通孔、32 凹部、32a,36a 空間部、34 セパレータ部材、36 板部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが積層されたセル積層体と、前記セル積層体の端部に設けられる非発電部材と、前記セル積層体に形成される反応ガス排出用マニホールドと、前記セル積層体に形成される排水用マニホールドと、前記非発電部材に形成され、前記反応ガス排出用マニホールドと、前記排水用マニホールドとを連通する連通路と、を備える燃料電池スタックであって、
前記非発電部材には、前記セル積層体側の内側開口部及び前記セル積層体側と反対側の外側開口部を有する貫通孔が形成され、
前記貫通孔には前記外側開口部を閉止し、前記内側開口部を開放して、前記貫通孔内に空間部を形成する閉塞部材が配置され、
前記空間部は、セル積層方向から見て前記反応ガス排出用マニホールドから前記排水用マニホールドに亘って形成され、前記連通路となることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4321(P2013−4321A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134569(P2011−134569)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】