説明

燃料電池スタック

【課題】簡単な構成で、外部からの荷重に対して燃料電池の横ずれを確実に阻止するとともに、スタック全体の小型化及び軽量化を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池スタック100を収容するボックス104は、側部パネル106a〜106dを有する。側部パネル106a〜106dの各連結部には、荷重受け部64に対応してガイド受け部110が設けられる。側部パネル106a、106d間及び側部パネル106c、106d間の連結部では、ボルト部材120が孔部118に挿入され、ナット部112に螺合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されてボックス内に収容される燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータによって挟持して構成されている。
【0003】
この種の燃料電池では、例えば、車載用として構成するために、通常、数十〜数百の燃料電池を積層してボックス内に収容する燃料電池スタックが採用されている。その際、燃料電池スタックでは、燃料電池の積層方向と交差する方向の衝撃(外部荷重)が付与される際、前記燃料電池に横ずれが惹起するおそれがある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池では、MEAをセパレータで挟んだ単セルを用意し、複数の単セル同士を接着剤により接着した多セル集合体とモジュール枠とから多セルモジュールが構成されている。そして、多セルモジュールのセル積層方向両端には、ターミナル、インシュレーター及びエンドプレートが配設された状態で、前記多セルモジュールの外側には、外部拘束部材を介装してケーシング(外側部材)が配設されている。さらに、ケーシングが、ボルト・ナットにより固定されることにより、燃料電池スタックが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−56814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術では、複数の単セルが接着剤により接着された多セル集合体を保持する複数のモジュール枠と、前記モジュール枠を受ける外部拘束部材と、前記外部拘束部材を受けるケーシングとを備えており、構造が相当に複雑化してしまう。
【0007】
しかも、燃料電池スタックの組み立て性が低下するとともに、排気や排水が困難になるという問題がある。その上、燃料電池スタック全体の外径寸法が大型化して容積が拡大するとともに、重量物となるという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、外部からの荷重、又は燃料電池自体の慣性力に対して前記燃料電池の横ずれを確実に阻止するとともに、簡単な構成で、スタック全体の小型化及び軽量化を図ることが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されてボックス内に収容される燃料電池スタックに関するものである。
【0010】
この燃料電池スタックは、燃料電池の外周部に設けられるとともに、セパレータの側部から外方に突出するガイド部と、前記ボックス内に突出して設けられ、前記ガイド部が当接して外部からの荷重を受けるガイド受け部とを備えている。
【0011】
また、ボックス内の少なくとも1つの角部には、セパレータの角部が当接することにより荷重を受ける受圧部が設けられることが好ましい。
【0012】
さらに、受圧部は、セパレータの角部形状に対応して湾曲乃至屈曲する支持形状部を備えることが好ましい。
【0013】
さらにまた、受圧部又はガイド受け部は、ボックスを構成するパネル部材同士を連結するための連結部を備えることが好ましい。
【0014】
また、連結部は、一方のパネル部材の端部に設けられ、燃料電池の積層方向に交差し且つパネル外面に沿う方向に突出する凸形状部と、前記一方のパネル部材に隣接する他方のパネル部材の端部に設けられ、前記凸形状部が挿入される凹形状部と、前記凸形状部が前記凹形状部に挿入された状態で、前記一方のパネル部材と前記他方のパネル部材とを一体に固定する受け部とを備えることが好ましい。
【0015】
さらに、一方のパネル部材は、第1の凸形状部と第1の凹形状部とを積層方向に沿って交互に設けるとともに、他方のパネル部材は、前記第1の凸形状部が挿入される第2の凹形状部と第1の凹形状部に挿入される第2の凸形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明に係る燃料電池スタックは、燃料電池の外周部に設けられるガイド部と、ボックス内に設けられ、前記ガイド部が当接して外部からの荷重を受けるとともに、前記燃料電池の積層方向に分割されるガイド受け部とを備えている。そして、ガイド受け部は、ボックスを構成するパネル部材同士を連結するための連結部を備えるとともに、前記連結部は、積層方向に分割された複数の受け部と、前記受け部を介装して前記パネル部材同士を固定する結合部材とを備えている。
【0017】
また、ボックス内の少なくとも1つの角部には、セパレータの角部が当接することにより荷重を受ける受圧部が設けられることが好ましい。
【0018】
さらに、受圧部は、セパレータの角部形状に対応して湾曲乃至屈曲する支持形状部を備えることが好ましい。
【0019】
さらにまた、一方のパネル部材の端部には、燃料電池の積層方向に交差し且つパネル外面に沿う方向に突出する凸形状部が設けられるとともに、前記一方のパネル部材に隣接する他方のパネル部材の端部には、前記凸形状部が挿入される凹形状部が設けられることが好ましい。
【0020】
また、一方のパネル部材は、第1の凸形状部と第1の凹形状部とを積層方向に沿って交互に設けるとともに、他方のパネル部材は、前記第1の凸形状部が挿入される第2の凹形状部と第1の凹形状部に挿入される第2の凸形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃料電池の積層方向に交差する方向から外部荷重が付与されると、前記燃料電池の外周部に設けられているガイド部が、ボックス内のガイド受け部に当接する。このため、外部荷重を良好に分散させることができ、燃料電池の局部面圧が低減されて前記燃料電池の損傷を有効に阻止することが可能になる。
【0022】
これにより、簡単な構成で、外部からの荷重に対して燃料電池の横ずれを確実に阻止するとともに、燃料電池スタック全体の小型化及び軽量化を図ることができる。しかも、部品数の削減が図られるため、組み立て作業性、換気性及び排水性の向上が容易に遂行可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックを構成する燃料電池ユニットの分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックの要部拡大断面図である。
【図4】前記燃料電池スタックの断面説明図である。
【図5】前記燃料電池スタックを構成するボックスの一部分解斜視説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図7】前記燃料電池スタックの断面説明図である。
【図8】前記燃料電池スタックを構成するボックスの一部分解斜視説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックの断面説明図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池スタックの断面説明図である。
【図12】前記燃料電池スタックを構成する側部パネルと受け部との分解斜視説明図である。
【図13】前記燃料電池スタックに外部荷重が付与された際の動作説明図である。
【図14】前記側部パネルと他の受け部との分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10の概略斜視説明図である。
【0025】
燃料電池スタック10は、複数の燃料電池ユニット12を矢印A方向に積層してボックス14内に収容している。ボックス14は、燃料電池ユニット12の積層方向両端に配置されるエンドプレート16a、16bと、前記燃料電池ユニット12の側部に配置される4枚の側部パネル(パネル部材)18a〜18dと、前記エンドプレート16a、16b及び前記側部パネル18a〜18dを互いに連結するヒンジ機構20とを備える。側部パネル18a〜18dは、ステンレス鋼(SUS304等)、その他の金属材又はカーボン材で構成される。
【0026】
図2に示すように、燃料電池ユニット12は、第1電解質膜(電解質)・電極構造体22a及び第2電解質膜・電極構造体22bと、第1セパレータ24、第2セパレータ26及び第3セパレータ28とを備える。第1セパレータ24及び第2セパレータ26の間で、第1電解質膜・電極構造体22aを挟持する一方、前記第2セパレータ26及び第3セパレータ28の間で、第2電解質膜・電極構造体22bを挟持する。
【0027】
第1〜第3セパレータ24、26及び28は、それぞれの四隅にR部(角部形状)29が形成される。なお、第1〜第3セパレータ24、26及び28は、金属セパレータで構成されているが、例えば、カーボンセパレータを採用してもよい。
【0028】
燃料電池ユニット12の長辺方向(図2中、矢印C方向)の一端縁部(上端縁部)には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔32aとが設けられる。
【0029】
燃料電池ユニット12の長辺方向の他端縁部(下端縁部)には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔32bと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bとが設けられる。
【0030】
燃料電池ユニット12の短辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体入口連通孔34aが設けられるとともに、前記燃料電池ユニット12の短辺方向の他端縁部には、冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体出口連通孔34bが設けられる。
【0031】
第1電解質膜・電極構造体22a及び第2電解質膜・電極構造体22bは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜36と、前記固体高分子電解質膜36を挟持するアノード側電極38及びカソード側電極40とを備える。
【0032】
アノード側電極38及びカソード側電極40は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜36の両面に形成される。
【0033】
第1セパレータ24の第1電解質膜・電極構造体22aに向かう面24aには、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス出口連通孔32bとを連通する第1燃料ガス流路42が形成される。この第1燃料ガス流路42は、例えば、矢印C方向に延在する複数の溝部により構成される。第1セパレータ24の面24bには、冷却媒体入口連通孔34aと冷却媒体出口連通孔34bとを連通する冷却媒体流路44が形成される。この冷却媒体流路44は、矢印B方向に延在する複数の溝部により構成される。
【0034】
第2セパレータ26の第1電解質膜・電極構造体22aに向かう面26aには、例えば、矢印C方向に延在する複数の溝部からなる第1酸化剤ガス流路46が設けられるとともに、この第1酸化剤ガス流路46は、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する。第2セパレータ26の第2電解質膜・電極構造体22bに向かう面26bには、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス出口連通孔32bとを連通する第2燃料ガス流路48が形成される。
【0035】
第3セパレータ28の第2電解質膜・電極構造体22bに向かう面28aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bと連通する第2酸化剤ガス流路50が設けられる。第3セパレータ28の面28bには、第1セパレータ24の面24bと重なり合って冷却媒体流路44が一体的に形成される。
【0036】
第1セパレータ24の面24a、24bには、この第1セパレータ24の外周端縁部を周回して第1シール部材52が一体成形される。第2セパレータ26の面26a、26bには、この第2セパレータ26の外周端縁部を周回して第2シール部材54が一体成形されるとともに、第3セパレータ28の面28a、28bには、この第3セパレータ28の外周端縁部を周回して第3シール部材56が一体成形される。
【0037】
図2に示すように、第1セパレータ24の外周部には、複数の樹脂製荷重受け部60が一体化される。各荷重受け部60には、孔部62a、62bが互いに並列して設けられる。
【0038】
第2セパレータ26及び第3セパレータ28には、それぞれ第1セパレータ24の各荷重受け部60と矢印A方向に重ね合う位置に対応して、複数の樹脂製荷重受け部64、66が一体化される。各荷重受け部64、66には、荷重受け部60の孔部62a、62bと矢印A方向に連通して孔部68a、68b及び70a、70bが形成される。
【0039】
図3に示すように、孔部62a、62bの直径は、孔部68a、68b及び70a、70bの直径よりも小径に設定されるとともに、荷重受け部60、64及び66の中、少なくとも前記荷重受け部64は、他の荷重受け部60、66よりも外方に突出する。この荷重受け部64は、後述するように、ボックス14を介して外部から付与される荷重(外部荷重)を受けるとともに、各燃料電池ユニット12の積層時にガイド機能を有する樹脂製ガイド部を構成する。
【0040】
なお、荷重受け部60、64及び66の全てが外方に突出して、全てにより荷重を受けるように構成してもよい。また、第2セパレータ26にのみ荷重受け部64を設け、第1セパレータ24及び第3セパレータ28に荷重受け部60、66を設けなくてもよい。
【0041】
積層方向に対して一つ置きに配置される燃料電池ユニット12では、孔部62a、68a及び70aに、接続部材、例えば、絶縁性樹脂クリップ72が挿入されるとともに、他の一つ置きに配置される燃料電池ユニット12では、各孔部62b、68b及び70bに、同様に接続部材である樹脂クリップ72が挿入される。
【0042】
各樹脂クリップ72は、首部72aが、第1セパレータ24に係止する一方、大径なフランジ部72bが、第3セパレータ28に当接することにより、第1セパレータ24、第2セパレータ26及び第3セパレータ28が、積層方向に一体に保持される。
【0043】
図4に示すように、ボックス14を構成する側部パネル18a〜18dには、それぞれ荷重受け部64に当接して、外部荷重を受けるためのガイド受け部80a〜80dが設けられる。ガイド受け部80a、80cは、荷重受け部64に対応して3ヶ所に設けられるとともに、ガイド受け部80b、80dは、前記荷重受け部64に対応して1ヶ所に配置される。ガイド受け部80a〜80dは、側部パネル18a〜18dの内面側に一体に膨出されるリブにより構成され、燃料電池ユニット12の積層方向(矢印A方向)に延在している(図1参照)。
【0044】
側部パネル18a〜18dの各連結部には、受圧部82が設けられる。図4及び図5に示すように、側部パネル18a、18dの連結部は、前記側部パネル18dの一方の立ち上がり部に、矢印A方向に所定間隔ずつ離間して配置されるボルト部材84を備える。各ボルト部材84は、側部パネル18dの立ち上がり部に対しスポット等の溶接によって固定されており、前記ボルト部材84のねじ部86は、前記側部パネル18dから外方に突出する。
【0045】
側部パネル18aの下端縁部には、ねじ部86を挿通するための孔部88が、矢印A方向に沿って所定の間隔ずつ離間して形成される。側部パネル18dの立ち上がり部には、ボルト部材84で分割されて樹脂製受け部90が貼り付けられる。なお、樹脂製受け部90に代えて、金属製受け部やゴム製受け部を用いてもよい。
【0046】
ボルト部材84のねじ部86は、側部パネル18aの孔部88に挿入される。この孔部88から外部に露呈するねじ部86の先端部には、ナット92が螺合されることにより、側部パネル18aと側部パネル18dとが連結される。側部パネル18a、18b間、側部パネル18b、18c間及び側部パネル18c、18d間の連結部は、上記の側部パネル18d、18a間の連結部と同様に構成されている。
【0047】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0048】
先ず、図1に示すように、燃料電池スタック10では、酸化剤ガス入口連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガス(空気)が供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔32aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、2つの冷却媒体入口連通孔34aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0049】
図2に示すように、酸化剤ガスは、燃料電池ユニット12の酸化剤ガス入口連通孔30aに供給されて矢印A方向に移動し、第2セパレータ26の第1酸化剤ガス流路46及び第3セパレータ28の第2酸化剤ガス流路50に導入される。第1酸化剤ガス流路46に導入された酸化剤ガスは、第1電解質膜・電極構造体22aのカソード側電極40に沿って移動する一方、第2酸化剤ガス流路50に導入された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体22bのカソード側電極40に沿って移動する。
【0050】
燃料ガスは、燃料電池ユニット12の燃料ガス入口連通孔32aから第1セパレータ24の第1燃料ガス流路42及び第2セパレータ26の第2燃料ガス流路48に導入される。このため、燃料ガスは、第1電解質膜・電極構造体22a及び第2電解質膜・電極構造体22bの各アノード側電極38に沿って移動する。
【0051】
従って、第1電解質膜・電極構造体22a及び第2電解質膜・電極構造体22bでは、各カソード側電極40に供給される酸化剤ガスと、各アノード側電極38に供給される燃料ガスとが、図示しない電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0052】
次いで、各カソード側電極40に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って流動した後、燃料電池スタック10から排出される。同様に、各アノード側電極38に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔32bに排出されて流動し、燃料電池スタック10から排出される。
【0053】
また、冷却媒体は、冷却媒体入口連通孔34aから燃料電池ユニット12間の冷却媒体流路44に導入された後、矢印B方向に沿って流動する。この冷却媒体は、第1電解質膜・電極構造体22a及び第2電解質膜・電極構造体22bを間引き冷却した後、冷却媒体出口連通孔34bを移動して燃料電池スタック10から排出される。
【0054】
ところで、燃料電池スタック10は、車載用として図示しない車両に搭載されており、その積層方向(矢印A方向)が車長方向に向かって配置されている。そして、燃料電池スタック10に対し、側方から外部荷重Fが付与されると(図3参照)、ボックス14内で燃料電池ユニット12が矢印B方向に移動する。
【0055】
その際、各燃料電池ユニット12では、第2セパレータ26の外周部に、外方に突出して荷重受け部64が設けられている。このため、外部荷重Fを介して各燃料電池ユニット12が、例えば、側部パネル18a側に移動すると、荷重受け部64は、前記側部パネル18aに設けられているガイド受け部80aに当接支持される(図4参照)。
【0056】
一方、側部パネル18aと側部パネル18b、18dとの連結部には、それぞれ受圧部82が設けられている。従って、各燃料電池ユニット12が側部パネル18a側に移動する際、各荷重受け部64がガイド受け部80aに当接支持されるとともに、前記燃料電池ユニット12の上下両方のR部29は、各受圧部82を構成する樹脂製受け部90に当接する。
【0057】
これにより、外部荷重Fは、荷重受け部64とガイド受け部80a及びR部29と樹脂製受け部90とによって受けられる。このため、外部荷重Fを良好に分散させることができ、各燃料電池ユニット12の局部面圧が低減されて前記燃料電池ユニット12の損傷を有効に阻止することが可能になる。
【0058】
従って、燃料電池スタック10では、外部加重Fに対して燃料電池ユニット12の横ずれを確実に阻止するとともに、簡単な構成で、前記燃料電池スタック10全体の小型化及び軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【0059】
しかも、燃料電池スタック10は、従来構成に比べて部品数の削減が容易に図られる。このため、燃料電池スタック10の組み立て作業性の他、この燃料電池スタック10内での換気性や排水性の向上が容易に遂行可能になる。
【0060】
なお、第1の実施形態では、燃料電池ユニット12が、2枚の電解質膜・電極構造体(第1及び第2電解質膜・電極構造体22a、22b)と3枚のセパレータ(第1〜第3セパレータ24、26及び28)とにより構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、1枚の電解質膜・電極構造体と2枚のセパレータとで燃料電池ユニットを構成してもよい。また、以下の第2の実施形態以降においても、同様である。
【0061】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック100の概略斜視説明図であり、図7は、前記燃料電池スタック100の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0062】
燃料電池スタック100は、複数の燃料電池ユニット102を矢印A方向に積層してボックス104内に収容している。ボックス104は、燃料電池ユニット102の側部に配置される4枚の側部パネル(パネル部材)106a〜106dを備える。側部パネル106a、106cは平板状に構成される一方、側部パネル106b、106dは、矢印B方向両端部に燃料電池ユニット102のR部29に対応して湾曲する受圧部108を設ける。この受圧部108は、断面円弧状の支持形状部を構成するとともに、R部29が当接することにより外部荷重を受ける機能を有する。
【0063】
図7に示すように、各燃料電池ユニット102は、矢印B方向両側部にそれぞれ2つの荷重受け部64を設けるとともに、矢印C方向両端(上端及び下端)には、それぞれ1つの荷重受け部64を設ける。
【0064】
ボックス104を構成する側部パネル106a〜106dの各連結部には、矢印B方向両端に配置される荷重受け部64に対応してガイド受け部110が設けられる。連結部の変形により衝撃荷重が吸収し易くなるからである。
【0065】
図8に示すように、側部パネル106a、106d間及び側部パネル106c、106d間の連結部は、前記側部パネル106a、106cに対し矢印A方向に沿って所定間隔ずつ離間して一体化されるナット部112と、各ナット部112間に2つずつ設けられるダボ、ピン又はバーリング等の突起部114とを備える。
【0066】
側部パネル106a、106cの下端部には、断面U字状に成形された樹脂製受け部116が装着される。樹脂製受け部116は、積層方向(矢印A方向)に分割されており、各樹脂製受け部116は、突起部114により抜け止めされる。なお、樹脂製受け部116に代えて、金属製受け部やゴム製受け部を用いてもよい。
【0067】
側部パネル106dの矢印B方向両端部には、ナット部112の位置に対応して複数の孔部118が形成される。孔部118には、ボルト部材120が挿入されるとともに、このボルト部材120がナット部112に螺合する。
【0068】
このように構成される第2の実施形態では、燃料電池スタック100の側部側から外部荷重が付与されると、各燃料電池ユニット102は、例えば、側部パネル106a側に移動する。
【0069】
このため、先ず、各燃料電池ユニット102に設けられている荷重受け部64が、ガイド受け部110を構成する樹脂製受け部116に当接支持された後、R部29が側部パネル106b、106dの受圧部108に当接支持される。従って、燃料電池スタック100に側方から付与される外部荷重は、荷重受け部64と樹脂製受け部116及びR部29と受圧部108とにより良好に分散される。
【0070】
これにより、第2の実施形態では、燃料電池ユニット102の横ずれを確実に阻止するとともに、簡単な構成で、燃料電池スタック100全体の小型化及び軽量化を図ることができる等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
さらに、樹脂製受け部116は、積層方向である矢印A方向に沿って複数に分割構成されている。このため、燃料電池ユニット102が樹脂製受け部116に当接する際、この樹脂製受け部116が不要に破損することを抑制することが可能になる。
【0072】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック130の断面説明図である。なお、第2の実施形態に係る燃料電池スタック100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第4の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0073】
燃料電池スタック130は、複数の燃料電池ユニット102を積層してボックス132内に収容する。ボックス132は、側部パネル134a〜134dを備え、前記側部パネル134a、134cの内壁面には、荷重受け部64が当接するガイド受け部80a、80cが設けられる。側部パネル134b、134dの内壁面は、平滑化処理することにより、直接、荷重受け部64が摺接自在に配置される。
【0074】
側部パネル134a〜134dの各連結部136は、側部パネル134b、134dに一体に固着されるボルト部138を備える。ボルト部138は、側部パネル134a、134cを貫通して外部に露呈するとともに、前記ボルト部138の先端部にナット140が螺合する。
【0075】
このように構成される第3の実施形態では、燃料電池ユニット102とボックス132とは、荷重受け部64とガイド受け部80a、80c及びR部29と受圧部108によって外部荷重を分散させることができ、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタック150の概略斜視説明図であり、図11は、前記燃料電池スタック150の断面説明図である。
【0077】
燃料電池スタック150は、複数の燃料電池ユニット102を矢印A方向に積層してボックス152内に収容している。ボックス152は、燃料電池ユニット102の側部に配置される4枚の側部パネル(パネル部材)154a〜154dを備える。
【0078】
ボックス152を構成する側部パネル154a〜154dの各連結部には、矢印B方向両端に配置される荷重受け部64に対応してガイド受け部156が設けられる。
【0079】
側部パネル154a(一方のパネル部材)は、矢印C方向の両端面に、第1の凸形状部158aと第1の凹形状部160aとを、燃料電池ユニット102の積層方向(矢印A方向)に沿って交互に設ける。側部パネル154b(他方のパネル部材)は、第1の凸形状部158aが挿入される第2の凹形状部160bと、第1の凹形状部160aに挿入される第2の凸形状部158bとを、積層方向に沿って交互に設ける。
【0080】
側部パネル154a、154b間の連結部では、第1及び第2の凹形状部160a、160bに第1及び第2の凸形状部158a、158bが挿入された状態で、前記側部パネル154aと前記側部パネル154bとが、受け部162を介して一体に固定される。
【0081】
受け部162は、樹脂、金属又はゴムにより構成されており、積層方向に沿って複数に分割される。図12に示すように、側部パネル154aは、第1の凸形状部158aにボルト挿通用の孔部164aが設けられる一方、側部パネル154bの第2の凸形状部158bには、溶接用の孔部166が形成される。受け部162には、ボルト168が、かしめ、溶接、FSW(摩擦攪拌接合)、接着又は圧入等によって固定される。
【0082】
ボルト168の両側には、第2の凸形状部158bに設けられる孔部166に対応して凸部170が設けられる。凸部170は、受け部162が金属である場合には、例えば、プロジェクション溶接に用いられる一方、この受け部162が樹脂である場合には、位置決め用ダボとして機能する。受け部162の内面(燃料電池ユニット102側)の面には、R部172(又は、平坦部)が形成される。
【0083】
受け部162は、側部パネル154bの内側に配設されるとともに、凸部170が第2の凸形状部158bに形成された孔部166に挿入され、例えば、プロジェクション溶接される。このため、受け部162は、側部パネル154bに、予め固定される。
【0084】
側部パネル154aは、各第1の凸形状部158aが第2の凹形状部160bに挿入された状態で、各第1の凸形状部158aに形成された孔部164にボルト168が挿入される。そして、このボルト168にワッシャ174及びナット176が取り付けられることにより、側部パネル154aが側部パネル154bに一体に固定される。
【0085】
その際、側部パネル154a、154bの連結部は、平坦状に構成され、ボックス152の外表面に、例えば、側部パネル154aの端面角部が突出することがない。
【0086】
なお、側部パネル154b、154c間、側部パネル154c、154d間及び側部パネル154d、154a間の各連結部は、上記の側部パネル154a、154b間の連結部と同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照数字に符号b〜dを付して、その詳細な説明は省略する。
【0087】
このように構成される第4の実施形態では、側部パネル154a〜154dの各連結部は、ボックス152の外表面から外部に突出することがない。このため、例えば、ボックス152の外面に近接してハーネス等のラインが配置される際に、このラインの断線等を良好に回避することが可能になる。
【0088】
しかも、ボックス152全体の寸法を、可及的に燃料電池ユニット102の外形寸法に近似させることができる。従って、燃料電池スタック150全体の小型化を図るとともに、ボックス152全体の軽量化が可能になるという効果が得られる。
【0089】
さらに、受け部162は、積層方向(矢印A方向)に分割されるとともに、側部パネル154a〜154dの各連結部は、互いの端部同士を重ね合わせて接合することがない。これにより、図13に示すように、外部荷重Fが、燃料電池スタック150の側方から付与されたり、セパレータ(図示せず)の慣性力が前記外部荷重Fと同じ方向に付加された場合、複数の受け部162を介してパネル変形を吸収するとともに、例えば、側部パネル154aに部分的な応力集中が惹起することを良好に抑制することが可能になる。
【0090】
なお、第4の実施形態では、ガイド受け部156に適応しているが、例えば、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10を構成する受圧部82に適応することも可能である。
【0091】
また、受け部162に代えて、図14に示す樹脂製受け部180を用いることができる。この樹脂製受け部180は、中央部に金属製ナット部材182が、かしめ、圧入、はめ込み等によって埋設される。ナット部材182の両側には、樹脂クリップ184が装着される。樹脂クリップ184は、側部パネル154bの孔部166に挿入される一方、側部パネル154aの外部からワッシャ185を介装してボルト186が孔部164に挿入される。このボルト186がナット部材182に螺合されることにより、側部パネル154a、154bは、樹脂製受け部180を介して一体に固定される。
【0092】
なお、第1〜第4の実施形態では、セパレータ角部形状としてR部29を用いているが、このR部29に代えて略直線部を用いることができる。その際、受圧部108は、支持形状部として湾曲形状に代えて略直線形状に設定される。
【符号の説明】
【0093】
10、100、130、150…燃料電池スタック
12、102…燃料電池ユニット 14、104、132、152…ボックス 16a、16b…エンドプレート
18a〜18d、106a〜106d、134a〜134d、154a〜154d…側部パネル
20…ヒンジ機構 22a、22b…電解質膜・電極構造体
24、26、28…セパレータ 29、172…R部
36…固体高分子電解質膜 38…アノード側電極
40…カソード側電極 42、48…燃料ガス流路
44…冷却媒体流路 46、50…酸化剤ガス流路
60、64、66…荷重受け部 72…樹脂クリップ
80a〜80d、110、156…ガイド受け部
82、108…受圧部 84、120…ボルト部材
90、116、180…樹脂製受け部 92、140、176…ナット
112…ナット部 114…突起部
136…連結部 138…ボルト部
158a、158b…凸形状部 160a、160b…凹形状部
162…受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されてボックス内に収容される燃料電池スタックであって、
前記燃料電池の外周部に設けられるとともに、前記セパレータの側部から外方に突出するガイド部と、
前記ボックス内に突出して設けられ、前記ガイド部が当接して外部からの荷重を受けるガイド受け部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記ボックス内の少なくとも1つの角部には、前記セパレータの角部が当接することにより前記荷重を受ける受圧部が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池スタックにおいて、前記受圧部は、前記セパレータの角部形状に対応して湾曲乃至屈曲する支持形状部を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料電池スタックにおいて、前記受圧部又は前記ガイド受け部は、前記ボックスを構成するパネル部材同士を連結するための連結部を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池スタックにおいて、前記連結部は、一方のパネル部材の端部に設けられ、前記燃料電池の積層方向に交差し且つパネル外面に沿う方向に突出する凸形状部と、
前記一方のパネル部材に隣接する他方のパネル部材の端部に設けられ、前記凸形状部が挿入される凹形状部と、
前記凸形状部が前記凹形状部に挿入された状態で、前記一方のパネル部材と前記他方のパネル部材とを一体に固定する受け部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池スタックにおいて、前記一方のパネル部材は、第1の凸形状部と第1の凹形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けるとともに、
前記他方のパネル部材は、前記第1の凸形状部が挿入される第2の凹形状部と第1の凹形状部に挿入される第2の凸形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項7】
電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されてボックス内に収容される燃料電池スタックであって、
前記燃料電池の外周部に設けられるガイド部と、
前記ボックス内に設けられ、前記ガイド部が当接して外部からの荷重を受けるとともに、前記燃料電池の積層方向に分割されるガイド受け部と、
を備え、
前記ガイド受け部は、前記ボックスを構成するパネル部材同士を連結するための連結部を備えるとともに、
前記連結部は、前記積層方向に分割された複数の受け部と、
前記受け部を介装して前記パネル部材同士を固定する結合部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項7記載の燃料電池スタックにおいて、前記ボックス内の少なくとも1つの角部には、前記セパレータの角部が当接することにより前記荷重を受ける受圧部が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池スタックにおいて、前記受圧部は、前記セパレータの角部形状に対応して湾曲乃至屈曲する支持形状部を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項10】
請求項8記載の燃料電池スタックにおいて、一方のパネル部材の端部には、前記燃料電池の積層方向に交差し且つパネル外面に沿う方向に突出する凸形状部が設けられるとともに、
前記一方のパネル部材に隣接する他方のパネル部材の端部には、前記凸形状部が挿入される凹形状部が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項11】
請求項10記載の燃料電池スタックにおいて、前記一方のパネル部材は、第1の凸形状部と第1の凹形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けるとともに、
前記他方のパネル部材は、前記第1の凸形状部が挿入される第2の凹形状部と第1の凹形状部に挿入される第2の凸形状部とを前記積層方向に沿って交互に設けることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−77581(P2013−77581A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12776(P2013−12776)
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2008−127490(P2008−127490)の分割
【原出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】