説明

燃料電池スタック

【課題】燃料電池に外部荷重が付与された際、前記外部荷重を確実に受けることができ、前記燃料電池の損傷を可及的に抑制することを可能にする。
【解決手段】燃料電池スタック10は、複数の燃料電池14を備え、前記燃料電池14の積層方向両端には、第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bが配設される。燃料電池14には、積層方向に貫通する位置決め孔部58、60が設けられる一方、第1エンドプレート20aと第2エンドプレート20bとには、前記積層方向に延在し、各位置決め孔部58、60に一体に挿入されるノックピン62、64が配設される。位置決め孔部58、60の内壁面とノックピン62、64とは、外部荷重が付与された際、それぞれ互いに当接する少なくとも2つの支持平面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極を設けた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池の積層方向両端には、第1エンドプレート及び第2エンドプレートが設けられる燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータによって挟持した単位セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の単位セルを積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックでは、特に車載用として使用される際、相当に多数の単位セルを積層する必要がある。このため、各単位セル同士を正確に位置決めしなければならず、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池の組立方法が知られている。
【0004】
この組立方法は、図10に示すように、スタック1の加圧用の加圧板2にセル組立用位置決め穴3が穿設されており、前記位置決め穴3には、端面を面取りした長いPTFE製のノックピン4が直立状態で挿入されている。次に、位置決め穴3が穿設されたセル5は、順次、それぞれの位置決め穴3がノックピン4に嵌合して積層されることにより、スタック1が構成されている。その後、スタック1は、締め付け固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−134734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1では、円柱状のノックピン4が各セル5に設けられた円形状の位置決め穴3に一体に挿入されている。このため、特にスタック1が燃料電池電気自動車に搭載されている場合、衝突等により外部荷重(衝撃)が前記スタック1に付与された際、セル5の位置決め穴3を形成する内壁面とノックピン4とが点接触又は線接触し易い。従って、内壁面に集中荷重がかかってしまい、前記内壁面が破損するという問題がある。
【0007】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、燃料電池に外部荷重が付与された際、前記外部荷重を確実に受けることができ、前記燃料電池の損傷を可及的に抑制することが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極を設けた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池の積層方向両端には、第1エンドプレート及び第2エンドプレートが設けられる燃料電池スタックに関するものである。
【0009】
この燃料電池スタックでは、燃料電池には、積層方向に貫通する位置決め孔部が設けられる一方、第1エンドプレートと第2エンドプレートとには、前記積層方向に延在し、前記位置決め孔部に一体に挿入されるノックピンが配設されている。そして、位置決め孔部の内壁面とノックピンとは、外部荷重が付与された際、それぞれ互いに当接する少なくとも2つの支持平面を有している。
【0010】
また、この燃料電池スタックでは、燃料電池は、長方形状を有するとともに、位置決め孔部は、前記燃料電池の長辺方向両端側に設けられることが好ましい。
【0011】
さらに、この燃料電池スタックでは、少なくとも1つの支持平面同士は、面方向が鉛直方向に沿って配置されることが好ましい。
【0012】
さらにまた、この燃料電池スタックは、燃料電池車両に対して燃料電池の積層方向が車両幅方向に沿って搭載されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池スタックに外部荷重が付与された際、位置決め孔部の内壁面とノックピンとは、少なくとも2つの支持平面同士が当接することにより、前記外部荷重を受けることができる。従って、位置決め孔部の内壁面とノックピンとは、支持平面で外部荷重を受けるため、前記外部荷重を確実に受けることが可能になり、燃料電池の損傷を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックが搭載される燃料電池自動車の平面説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックを構成する燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池スタックを構成する第1セパレータの正面説明図である。
【図5】前記燃料電池スタックの位置決め構造を示す斜視説明図である。
【図6】前記燃料電池スタックを構成する位置決め孔部とノックピンとの説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの分解斜視説明図である。
【図8】前記燃料電池スタックの、図7中、VIII−VIII線断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックの位置決め構造の概略説明図である。
【図10】特許文献1に開示されている燃料電池の組立方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、燃料電池自動車12に搭載される。燃料電池スタック10は、複数の燃料電池14が、立位姿勢で燃料電池自動車12の走行方向(矢印A方向)に交差する車両幅方向(矢印B方向)に積層される。
【0016】
図1及び図2に示すように、複数の燃料電池14の積層方向両端には、ターミナルプレート16a、16bと絶縁プレート18a、18bとを介装して第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bが配設される。第1エンドプレート20aの中央部からは、ターミナルプレート16aに接続された出力端子22aが延在する一方、第2エンドプレート20bの中央部からは、ターミナルプレート16bに接続された出力端子22bが延在する(図2参照)。
【0017】
第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bは、横長の長方形状を有するとともに、各辺間には、連結バー24が配置される。各連結バー24は、両端を第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bにボルト26を介して固定され、複数の積層された燃料電池14に積層方向(矢印B方向)の締め付け荷重を付与する。
【0018】
図3に示すように、燃料電池14は、横長の長方形状を有するとともに、電解質膜・電極構造体30が、第1セパレータ32及び第2セパレータ34に挟持される。第1セパレータ32及び第2セパレータ34は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、あるいはめっき処理鋼板等の金属セパレータやカーボンセパレータにより構成される。
【0019】
燃料電池14の矢印A方向(図3中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印B方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔36a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔38bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0020】
燃料電池14の矢印A方向の他端縁部には、矢印B方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔38a、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔36bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0021】
燃料電池14の矢印C方向の上端縁部には、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔40aが設けられるとともに、前記燃料電池14の矢印C方向の下端縁部には、前記冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔40bが設けられる。
【0022】
第1セパレータ32の電解質膜・電極構造体30に向かう面32aには、酸化剤ガス入口連通孔36aと酸化剤ガス出口連通孔36bとに連通する酸化剤ガス流路42が設けられる。
【0023】
第2セパレータ34の電解質膜・電極構造体30に向かう面34aには、燃料ガス入口連通孔38aと燃料ガス出口連通孔38bとに連通する燃料ガス流路44が設けられる。
【0024】
互いに隣接する燃料電池14を構成する第1セパレータ32の面32bと、第2セパレータ34の面34bとの間には、冷却媒体入口連通孔40aと冷却媒体出口連通孔40bとを連通する冷却媒体流路46が設けられる。
【0025】
第1セパレータ32及び第2セパレータ34には、それぞれシール部材48、50が、一体的又は個別に設けられる。シール部材48、50は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、フロロシリコンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材を使用する。
【0026】
電解質膜・電極構造体30は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜52と、前記固体高分子電解質膜52を挟持するカソード電極54及びアノード電極56とを備える。
【0027】
カソード電極54及びアノード電極56は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜52の両面に形成されている。
【0028】
燃料電池14の長辺方向両端側には、それぞれ矢印C方向略中間高さ位置に、積層方向に貫通する位置決め孔部58、60が設けられる。位置決め孔部58は、図4に示すように、鉛直方向に長尺な縦長開口部58aと、前記縦長開口部58aの高さ方向略中間部から水平方向内方に突出する横長開口部58bとを有する。縦長開口部58aは、面方向が鉛直方向に沿って配置される鉛直支持平面58avを有する一方、横長開口部58bは、面方向が水平方向に沿って配置される水平支持平面58bd、58buを有する。
【0029】
位置決め孔部60は、位置決め孔部58と同様に、鉛直方向に長尺な縦長開口部60aと、前記縦長開口部60aの高さ方向略中間部から水平方向内方に突出する横長開口部60bとを有する。縦長開口部60aは、面方向が鉛直方向に沿って配置される鉛直支持平面60avを有する一方、横長開口部60bは、面方向が水平方向に沿って配置される水平支持平面60bd、60buを有する。
【0030】
図5に示すように、第1エンドプレート20aと第2エンドプレート20bとには、積層方向に延在し、各位置決め孔部58、60に一体に挿入されるノックピン62、64が配設される。ノックピン62、64は、各位置決め孔部58、60内に隙間を設けて挿入されてもよく、又は、隙間なく嵌合してもよい。ノックピン62、64は、好ましくは、SUS(ステンレス)、アルミニウム、鉄、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂、カーボン等で形成される。
【0031】
ノックピン62は、図5及び図6に示すように、断面略ト型形状を有し、鉛直方向に延在する縦長部62aと、前記縦長部62aの高さ方向略中間部から水平方向内方に突出する横長部62bとを有する。縦長部62aは、面方向が鉛直方向に沿って配置される鉛直支持平面62avを有する一方、横長部62bは、面方向が水平方向に沿って配置される水平支持平面62bd、62buを有する。
【0032】
ノックピン64は、ノックピン62と同様に、断面略ト型形状を有し、鉛直方向に延在する縦長部64aと、前記縦長部64aの高さ方向略中間部から水平方向内方に突出する横長部64bとを有する。縦長部64aは、面方向が鉛直方向に沿って配置される鉛直支持平面64avを有する一方、横長部64bは、面方向が水平方向に沿って配置される水平支持平面64bd、64buを有する。
【0033】
図2に示すように、第1エンドプレート20aには、酸化剤ガス入口連通孔36a、酸化剤ガス出口連通孔36b、燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体入口連通孔40a及び冷却媒体出口連通孔40bが形成される。
【0034】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0035】
先ず、図3に示すように、酸化剤ガス入口連通孔36aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔38aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔40aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0036】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔36aから第1セパレータ32の酸化剤ガス流路42に導入される。酸化剤ガスは、矢印A方向に移動しながら、電解質膜・電極構造体30を構成するカソード電極54に供給される。
【0037】
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔38aから第2セパレータ34の燃料ガス流路44に導入される。この燃料ガスは、矢印A方向に移動しながら、電解質膜・電極構造体30を構成するアノード電極56に供給される。
【0038】
従って、電解質膜・電極構造体30では、カソード電極54に供給される酸化剤ガスと、アノード電極56に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0039】
次いで、カソード電極54に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔36bに沿って矢印B方向に排出される。一方、アノード電極56に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔38bに沿って矢印B方向に排出される。
【0040】
また、冷却媒体入口連通孔40aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ32及び第2セパレータ34間の冷却媒体流路46に導入された後、矢印C方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体30を冷却した後、冷却媒体出口連通孔40bから排出される。
【0041】
ところで、図1に示すように、燃料電池自動車12には、例えば、走行中に前後方向(矢印A方向)から衝撃が与えられる場合がある。このため、燃料電池スタック10には、矢印A方向に外部荷重が付与され、第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20b間に挟持されている複数の燃料電池14が、前記第1エンドプレート20a及び前記第2エンドプレート20bに対して矢印A方向に移動し易い。
【0042】
図6に示すように、燃料電池14が、第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bに対して矢印A1方向(走行方向前方)に移動すると、位置決め孔部58を構成する縦長開口部58aの鉛直支持平面58avは、ノックピン62を構成する縦長部62aの鉛直支持平面62avに当接する(図6中、実線参照)。
【0043】
さらに、燃料電池14は、反力により第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bに対して矢印A2方向(走行方向後方)に移動する。従って、位置決め孔部60を構成する縦長開口部60aの鉛直支持平面60avは、ノックピン64を構成する縦長部64aの鉛直支持平面64avに当接する(図6中、二点鎖線参照)。
【0044】
このように、第1の実施形態では、燃料電池14に矢印A方向の外部荷重が付与されると、位置決め孔部58の内壁面とノックピン62とが、鉛直支持平面58avと鉛直支持平面62avとで、すなわち、面接触で前記外部荷重を受けるとともに、位置決め孔部60の内壁面とノックピン64とが、鉛直支持平面60avと鉛直支持平面64avとで、すなわち、面接触で前記外部荷重を受けることができる。
【0045】
これにより、例えば、円柱形状のノックピンを使用して点接触又は線接触により外部荷重を受ける構成に比べ、位置決め孔部58、60の内壁面に集中荷重が付与されることがない。このため、燃料電池14の損傷を可及的に抑制することが可能になり、簡単な構成で、燃料電池スタック10を良好に保護することができるという効果が得られる。
【0046】
さらに、第1の実施形態では、燃料電池スタック10に上下方向の外部荷重が付与された際、位置決め孔部58の内壁面とノックピン62及び位置決め孔部60の内壁面とノックピン64とにより、面接触で前記外部荷重を良好に受けることが可能になる。
【0047】
すなわち、位置決め孔部58は、横長開口部58bを形成する水平支持平面58bd、58buを有する一方、ノックピン62は、横長部62bを構成する水平支持平面62bd、62buを有している。従って、燃料電池14が上方に移動した際、水平支持平面58bdと水平支持平面62bdとが面接触して外部荷重を受ける一方、前記燃料電池14が下方に移動した際、水平支持平面58buと水平支持平面62buとが面接触して外部荷重を受けることができる。
【0048】
同様に、位置決め孔部60は、横長開口部60bを形成する水平支持平面60bd、60buを有する一方、ノックピン64は、横長部64bを構成する水平支持平面64bd、64buを有している。これにより、燃料電池14が上方に移動した際、水平支持平面60bdと水平支持平面64bdとが面接触して外部荷重を受ける一方、前記燃料電池14が下方に移動した際、水平支持平面60buと水平支持平面64buとが面接触して外部荷重を受けることが可能になる。
【0049】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック80の分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
燃料電池スタック80は、燃料電池81を構成する金属セパレータ82と電解質膜・電極構造体84とが交互に積層される。図8に示すように、電解質膜・電極構造体84を構成する固体高分子電解質膜52は、カソード電極54及びアノード電極56と同一の表面積、又はこれらよりも大きな表面積に設定される。固体高分子電解質膜52の外周端部には、樹脂製の額縁部(額縁状枠部材)86が、例えば、射出成形により一体成形される。樹脂材としては、例えば、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
【0051】
図7に示すように、額縁部86は、横長形状を有するとともに、長辺側の一端縁部(矢印A方向一端側)には、矢印B方向に互いに連通して、燃料ガス入口連通孔38a、位置決め孔部58及び酸化剤ガス出口連通孔36bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。額縁部86の長辺側の他端縁部(矢印A方向他端側)には、矢印B方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔36a、位置決め孔部60及び燃料ガス出口連通孔38bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0052】
金属セパレータ82の外周端部は、酸化剤ガス入口連通孔36a、冷却媒体入口連通孔40a、燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体出口連通孔40b、酸化剤ガス出口連通孔36b及び位置決め孔部58、60の内側に配置される。
【0053】
金属セパレータ82は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した薄板状の金属板により構成される。金属セパレータ82は、例えば、単一の金属板を折り返して形成される。金属セパレータ82の両面には、電解質膜・電極構造体84のアノード電極56に対向するアノードセパレータ面88と、前記電解質膜・電極構造体84のカソード電極54に対向するカソードセパレータ面90とを有する。
【0054】
金属セパレータ82のアノードセパレータ面88には、波形状にプレス加工して断面凹凸形状を有する燃料ガス流路44が形成される。燃料ガス流路44は、矢印A方向に波形状を有して延在する。
【0055】
金属セパレータ82のカソードセパレータ面90に、波形状にプレス加工して断面凹凸形状を有する酸化剤ガス流路42が形成される。酸化剤ガス流路42は、矢印A方向に波形状を有して延在する。カソードセパレータ面90には、上下両側に、それぞれ複数の冷却媒体供給孔部92aと冷却媒体排出孔部92bとが形成される。金属セパレータ82の内部には、冷却媒体供給孔部92a及び冷却媒体排出孔部92bに連通して冷却媒体を矢印C方向に流通させる冷却媒体流路46が形成される。冷却媒体流路46は、燃料ガス流路44の裏面形状と酸化剤ガス流路42の裏面形状との重なり形状(それぞれの流路形状が逆位相である)により構成される。
【0056】
額縁部86の両面には、シール部材94が設けられる(図8参照)。シール部材94は、カソード電極54側の面に、酸化剤ガス入口連通孔36a及び酸化剤ガス出口連通孔36bを酸化剤ガス流路42に連通する。シール部材94は、アノード電極56側の面に、燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bを燃料ガス流路44に連通する。
【0057】
燃料電池81は、矢印B方向に複数積層されるとともに、図示しないエンドプレート間に締め付け保持される。各燃料電池81の位置決め孔部58、60には、ノックピン62、64が一体に挿入される。
【0058】
このように構成される燃料電池スタック80では、図7に示すように、酸化剤ガス入口連通孔36aに供給された酸化剤ガスは、金属セパレータ82の酸化剤ガス流路42に供給される。酸化剤ガスは、電解質膜・電極構造体84のカソード電極54に沿って矢印A方向に流通した後、酸化剤ガス出口連通孔36bに排出される。
【0059】
一方、燃料ガス入口連通孔38aに供給された燃料ガスは、金属セパレータ82の燃料ガス流路44に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路44に沿って矢印A方向に流通した後、燃料ガス出口連通孔38bに排出される。
【0060】
従って、電解質膜・電極構造体84では、カソード電極54に供給される酸化剤ガスと、アノード電極56に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0061】
また、冷却媒体入口連通孔40aに供給された冷却媒体は、金属セパレータ82を構成するカソードセパレータ面90に形成されている複数の冷却媒体供給孔部92aから前記金属セパレータ82の内部に導入される。
【0062】
金属セパレータ82の内部には、冷却媒体流路46が形成されている。このため、冷却媒体は、冷却媒体流路46に沿って矢印C方向に流通した後、複数の冷却媒体排出孔部92bから冷却媒体出口連通孔40bに排出される。
【0063】
この場合、第2の実施形態では、燃料電池81に外部荷重が付与されると、位置決め孔部58の内壁面とノックピン62とが、平面同士を当接させて前記外部荷重を受ける一方、位置決め孔部60の内壁面とノックピン64とが、平面同士を当接させて前記外部荷重を受けることができる。これにより、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
なお、第1及び第2の実施形態では、断面略ト型形状を有するノックピン62、64及び位置決め孔部58、60を採用しているが、これに限定されるものではない。少なくとも2つの平面同士が当接することにより、外部荷重を受けることができる構成であればよく、種々の形状を選択することができる。
【0065】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック100の位置決め構造の概略説明図である。
【0066】
燃料電池スタック100は、複数の長方形状を有する燃料電池102を積層しており、前記燃料電池102の長辺方向両端側には、開口断面矩形状の位置決め孔部104、106が設けられる。位置決め孔部104は、鉛直支持平面104vr、104vlと、水平支持平面104hd、104huとを有する。位置決め孔部106は、鉛直支持平面106vr、106vlと、水平支持平面106hd、106huとを有する。
【0067】
各位置決め孔部104、106には、断面略H型形状を有するノックピン108、110が一体に挿入される。ノックピン108は、一対の縦長部108aと、前記縦長部108aの高さ方向略中間部同士を連結する横長部108bとを有する。各縦長部108aは、鉛直支持平面108avと水平支持平面108ad、108auとを有する。ノックピン110は、一対の縦長部110aと、前記縦長部110aの高さ方向略中間部同士を連結する横長部110bとを有する。各縦長部110aは、鉛直支持平面110avと水平支持平面110ad、110auとを有する。
【0068】
このように構成される第3の実施形態では、燃料電池スタック100に矢印A方向の外部荷重が付与された際、ノックピン108側では、縦長部108aの鉛直支持平面108avが位置決め孔部104の鉛直支持平面104vr又は104vlに面接触し、前記外部荷重を受けることができる。一方、ノックピン110側では、縦長部110aの鉛直支持平面110avが位置決め孔部106の鉛直支持平面106vr又は106vlに面接触し、前記外部荷重を受けることが可能になる。
【0069】
また、燃料電池スタック100に矢印C方向の外部荷重が付与された際、ノックピン108側では、縦長部108aの水平支持平面108adが位置決め孔部104の水平支持平面104hdに、又は水平支持平面108auが水平支持平面104huに面接触し、前記外部荷重を受けることができる。一方、ノックピン110側では、縦長部110aの水平支持平面110adが位置決め孔部106の水平支持平面106hdに、又は水平支持平面110auが水平支持平面106huに面接触し、前記外部荷重を受けることが可能になる。
【0070】
これにより、位置決め孔部104、106及びノックピン108、110が採用されても、位置決め孔部58、60及びノックピン62、64を用いる上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0071】
10、80、100…燃料電池スタック 12…燃料電池自動車
14、81、102…燃料電池 20a、20b…エンドプレート
30、84…電解質膜・電極構造体 32、34…セパレータ
36a…酸化剤ガス入口連通孔 36b…酸化剤ガス出口連通孔
38a…燃料ガス入口連通孔 38b…燃料ガス出口連通孔
40a…冷却媒体入口連通孔 40b…冷却媒体出口連通孔
42…酸化剤ガス流路 44…燃料ガス流路
46…冷却媒体流路 52…固体高分子電解質膜
54…カソード電極 56…アノード電極
58、60、104、106…位置決め孔部
58av、60av、62av、64av、104vl、104vr、106vl、106vr、108av、110av…鉛直支持平面
58bd、58bu、60bd、60bu、62bd、62bu、64bd、64bu、104hd、104hu、106hd、106hu、108ad、108au、110ad、110au…水平支持平面
62、64、108、110…ノックピン
82…金属セパレータ 86…額縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極を設けた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池の積層方向両端には、第1エンドプレート及び第2エンドプレートが設けられる燃料電池スタックであって、
前記燃料電池には、積層方向に貫通する位置決め孔部が設けられる一方、
前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとには、前記積層方向に延在し、前記位置決め孔部に一体に挿入されるノックピンが配設され、
前記位置決め孔部の内壁面と前記ノックピンとは、外部荷重が付与された際、それぞれ互いに当接する少なくとも2つの支持平面を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記燃料電池は、長方形状を有するとともに、
前記位置決め孔部は、前記燃料電池の長辺方向両端側に設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、少なくとも1つの前記支持平面同士は、面方向が鉛直方向に沿って配置されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記燃料電池スタックは、燃料電池車両に対して前記燃料電池の積層方向が車両幅方向に沿って搭載されることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98154(P2013−98154A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243283(P2011−243283)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】