説明

燃料電池セルの組立装置および組立方法

【課題】膜電極接合体を第1および第2のセパレータプレートで挟持した燃料電池セルの組立において、複数の組立の工程部間のワークの搬送を簡素な構成で精度良く実現する。
【解決手段】各工程部では、少なくとも先頭の組立工程で用いられる第1の部材に設けられた少なくとも2つの基準穴に挿入され、複数の部材の積層方向に沿って延びる少なくとも2つの位置決めピンを基準として組立を実行する。搬送部では、各位置決めピンに設けられた支持部により各工程部で組み立てられたワークを積層方向の下側から支持しつつ、各位置決めピンに設けられた被把持部を把持して、各工程部で組み立てられたワークを、次の組立工程に対応する工程部に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルの組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルの組立工程には、大きく、ベース部材セット(ベース部材積層工程)、接着剤(シール剤)塗布工程、部材積層工程、接着剤硬化工程、回収工程があげられる。この燃料電池セルの組立に要する時間を短縮して量産性の向上を図る一つの手法として、各工程を分割し、各工程のみをそれぞれ実行する工程部の間で、前の工程部におけるその工程を終了したワークを次の工程部に搬送することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記従来技術の場合において、前の工程部でその工程を終了したワークを次の工程部に搬送する場合には、ワークの位置決めを精度良く行なう必要があるが、従来技術における搬送手段では、搬送手段が大掛かりな構造になってしまうため、搬送コストがかかる、という問題がある。
【0004】
ここで、各積層部材の位置決めを行う手法として、部材の基準穴に位置決ピンを挿入する手法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、ジグパレットやジグプレートを用いて複数のセルを同時に接着する手法も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
そして、上記特許文献1および2の技術を組み合わせて、ジグプレートやジグパレットに位置決めピンを立てておき、そこに、カソード側のセパレータ、膜電極接合体、ガス流路部等の部材を、順次積層し、アノード側のセパレータで挟み込んで、ジグプレートごとホットプレス装置に入れて、接着剤を硬化させる組立手法も提案されている。この組立手法における各工程を分割する場合には、各工程を実行する工程部間の搬送手法として、位置決めピンが立てられたジグプレート自体(以下、「位置決めジグプレート」と呼ぶ)を搬送ジグとして用いて実行することが考えられる。
【0006】
各工程を分割する場合に必要とする位置決めジグプレート数は、(工程数+ジグプレートを冷却するためのバッファ数+予備)となり、工程を分割すればするほど多くの位置決めジグプレートが必要となる。また、この位置決めジグプレートは、寸法管理すべき項目が、例えば、プレート平面度、ピン距離、ピン真直度、ピン径等と、非常に多くなる。さらに、先頭工程には位置決めジグプレートの検査工程を必要とする可能性もある。
【0007】
また、燃料電池セルの組立工程においては、シール剤である接着剤の硬化の工程が必要であるため加熱と冷却を繰り返す必要があり、位置決めジグプレートを用いる場合、特許文献1で示した場合のような大掛かりな搬送装置は必要ないが、温度変化に応じた寸法管理のためのメンテナンスコストが高くなる、という問題がある。
【0008】
また、位置決めジグプレートを用いた場合、上記したように、ホットプレス装置に、ジグプレートごと搭載するために、ジグプレートをも加熱することになり、余分な熱量が必要となるので、このホットプレス装置による接着工程の時間短縮のネックとなっている、という問題がある。また、加熱したジグプレートの冷却のための時間も必要であり、上記した冷却バッファが必要となる、という問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−286518号公報
【特許文献2】特開2007−242487号公報
【特許文献3】特開2003−234119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、燃料電池セルの組立において、複数の組立の工程部間のワークの搬送を簡素な構成で精度良く実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]
膜電極接合体を第1および第2のセパレータプレートで挟持した燃料電池セルの組立装置であって、複数の部材を順に積層して前記燃料電池セルを組み立てるための複数の組立工程に対応する複数の工程部と、各工程部の組立工程に従って組み立てられた各ワークを、それぞれ次の組立工程に対応する工程部に搬送する搬送部と、を備え、前記各工程部は、前記複数の部材のうち、少なくとも、先頭の組立工程で用いられる第1の部材に設けられた少なくとも2つの基準穴に挿入され、前記複数の部材の積層方向に沿って延びる少なくとも2つの位置決めピンを基準として、それぞれ、対応する組立工程を実行し、前記搬送部は、各位置決めピンに設けられた支持部により、前記各工程部で組み立てられたワークを前記積層方向の下側から支持しつつ、前記各位置決めピンに設けられた被把持部を把持することにより、前記各工程部で組み立てられたワークを、それぞれ、次の組立工程に対応する工程部に搬送することを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
この燃料電池セルの組立装置によれば、位置決めピンを搬送ジグとして用いて、前記各工程部で組み立てられたワークを、位置決めされた状態で、それぞれ、次の組立工程に対応する工程部に搬送することができるので、複数の組立工程間のワークの搬送を簡素な構成で精度良く実現することができる。
【0013】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記第1の部材は、前記第1および第2のセパレータプレートのいずれか一方であることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
この燃料電池セルの組立工程によれば、組立効率が良い。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記少なくとも2つの基準穴は、前記第1の部材の面内の中心に対して点対称で、かつ、前記中心からの間隔が大きくなるように配置されていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
この構成によれば、2つの位置決めピンで高精度な位置決めおよび安定なワークの搬送を実現することが可能である。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1項に記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記複数の工程部のうち、接着剤を塗布する工程に対応する工程部および前記複数の部材のうちのいずれかの部材を積層する工程に対応する工程部には、それぞれ、前記各位置決めピンを着脱可能に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
この構成によれば、各工程において、精度良く位置決めされた状態で各工程に対応する組立作業を実行することが可能である。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1項に記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記複数の工程部のうち、前記複数の部材を積層した積層体に対して積層方向の両側から加熱および加圧する工程に対応する工程部には、前記各位置決めピンの前記積層方向の両側の型部への接触を抑制する逃がし部が設けられていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
この構成によれば、位置決めピンへの加熱を抑制することができるので、無駄な加熱および冷却を低減することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池セルの組立装置や、燃料電池セルの組立方法等の種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例の燃料電池セルの組立装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】本実施例の組立装置によって組み立てられる燃料電池セルの組立工程の手順を示すフローチャートである。
【図3】各工程で組み立てたられるワークの状態を視覚的に示す説明図である。
【図4】Caセパレータの概略外形を他の部材が積層される側を上面として示す平面図である。
【図5】Caセパレータセット台について示す概略平面図である。
【図6】位置決めピンを第1基準点を中心として位置決めピンを鉛直方向に沿って固定するための固定手段の主要部分の一例を示す概略説明図である。
【図7】ワークを搬送するための搬送装置の一例について示す概略説明図である。
【図8】下側型プレートの逃がし溝部を拡大して具体的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施例:
図1は、本実施例の燃料電池セルの組立装置の構成を示す概略平面図である。図2は、本実施例の組立装置によって組み立てられる燃料電池セルの組立工程の手順を示すフローチャートである。また、図3は、各工程で組み立てたられるワークの状態を視覚的に示す説明図である。
【0020】
図1に示すように、本実施例の組立装置10は、Caセパレータセット工程部20と、接着剤塗布工程部30と、MEGA積層工程部40と、Anセパレータ積層工程部50と、ホットプレス工程部60と、回収工程部70と、を備える。各工程部は、搬送装置80の搬送レールに吊り下げられた搬送ロボット82が移動する搬送レール84の移動方向に沿って、順に配列されている。
【0021】
Caセパレータセット工程部20は、Caセパレータセット台21と、Caセパレータ準備台22と、位置決めピン準備台23と、位置決めピンセットロボット24と、Caセパレータセットロボット25により構成される。
【0022】
図4は、Caセパレータの概略外形を他の部材が積層される側を上面として示す平面図である。このCaセパレータ101は、略矩形状の平面を有しており、図中上下方向を長辺、左右方向を短辺とし示されている。部材左上端部に寸法の第1基準点SP1に対応する第1基準穴HR1が形成され、部材中心に対して点対称となる部材右下端部の位置に寸法の第2基準点SP2に対応する第2基準穴HR2が形成されている。第1基準穴HR1の中心(第1基準点SP1に対応する)と第2基準穴HR2の中心(第2基準点SP2に対応する)との長辺方向の長さLVおよび短辺方向の長さLW、さらには、対角線方向の長さLDに従うことにより、Caセパレータ101の面内に形成される種々の構造の位置や寸法、積層される他の部材同士の位置関係等を決定することができる。
【0023】
組み立て用のCaセパレータ101を載置するCaセパレータ準備台22(図1参照)は、Caセパレータセット台21の図中左横側に配列されている。そして、Caセパレータ準備台22には、あらかじめ、図1および図4に示したように、Caセパレータ101の上下方向が長辺方向で左右方向が短辺方向で、第1基準穴HR1が左上端部で第2基準穴HR2が右下端部となるようにして、順に積み重ねて載置されている。
【0024】
図5は、Caセパレータセット台について示す概略平面図である。Caセパレータセット台21には、その左上端部に、位置決めの第1基準点SP1を設定するための位置決めピン201を立てる第1基準位置決め部21R1が設けられており、その右下端部に、第2基準点SP2を設定するための位置決めピン201を立てる第2基準位置決め部21R2が設けられている。そして、第1基準位置決め部21R1には、第1基準点SP1を中心とする位置に、位置決めピン201を挿入し固定するためのセット孔HS1が設けられており、内部空間Asp1には、位置決めピン201を第1基準点SP1を中心として鉛直方向に沿って固定するための第1の固定手段ST1が設けられている。また、第2基準位置決め部21R2には、第2基準点SP2を中心とする位置に、位置決めピン201を挿入し固定するためのセット孔HS2が設けられており、内部空間Asp2には、位置決めピン201を第2基準点SP2を中心として鉛直方向に沿って固定するための第2の固定手段ST2が設けられている。
【0025】
図6は、位置決めピンを第1基準点SP1を中心として位置決めピン201を鉛直方向に沿って固定するための第1の固定手段ST1の主要部分の一例を示す概略説明図である。
【0026】
図6(A)は第1の固定手段ST1のうち、位置決めピン201を第1基準点SP1を通る鉛直方向基準線を中心として固定するチャック部CHKを、上方から見た概略平面図である。チャック部CHKは、第1基準点SPを通り鉛直方向に延びる基準線を中心として位置決めピン201が固定されるように、基準線の周方向に沿って等間隔に3方向に配置された3つのチャック部分CHK1〜CHK3で構成されている。図6(B)は、3つのチャック部分のうち第1のチャック部分CHK1を横方向から示す概略側面図である。図に示すように、位置決めピン201は、各部材の基準穴を挿入する挿入部分201rと、挿入された部材を支持する支持部201sと、3つのチャック部分CHK1〜CHK3によって固定される固定部分201cとで構成されている。なお、図示は省略されているが、挿入部分201sの上側部分は、後述する搬送ロボット82の把持部によって把持される被把持部となる。位置決めピン201のセット孔HS1は、固定部分201cが内部空間に突出し、挿入部分201rが上部に突出するような孔形状となっている。
【0027】
第1のチャック部分CHK1は、図示しないチャック部分可動機構により、支点CHK1fを中心として、作用面CHK1pが図の固定部分201c側へ移動して、固定部分201cを押さえつけて固定し、あるいは、作用面CHK1pが固定部分201cとは反対側へ移動して、固定部分201cの固定を開放するように動作する。第2および第3のチャック部CHK2,CHK3も同様に、第1のチャック部CHK1の動作に同調して同じ動きをする。これにより、チャック部CHKは、位置決めピン201を第1基準点SP1を通り鉛直方向に延びる基準線を中心として位置決めピン201を鉛直方向に沿って固定することができる。なお、固定手段ST2も固定手段ST1と全く同じ構造を有しており、位置決めピン201を第2基準点SP2を通り鉛直方向に延びる基準線を中心として位置決めピン201を鉛直方向に沿って固定することができる。
【0028】
なお、以下の接着剤塗布工程部30の接着剤塗布台31、MEGA積層工程部40のMEGA積層台41、Anセパレータ積層工程部50のAnセパレータ積層台51、回収工程部70の回収台71もCaセパレータセット台21と同様の構造を有しており、それぞれ、第1および第2の固定手段ST1,ST2を備えている。ホットプレス工程部60のホットプレス装置61については、後で説明する。
【0029】
位置決めピン準備台23には、位置決めピン201が鉛直方向に沿って縦向きに収納ケース210に収納されて載置されている。
【0030】
Caセパレータセット工程部20では、図2に示す2つのステップS101,S102が実行される。まず、ステップS101では、2つの位置決めピン201を、位置決めピンセットロボット24により、収納ケース210から取り出し、Caセパレータセット台21のセット孔HS1,HS2に挿入し、第1基準点SP1および第2基準点SP2を通る鉛直方向に沿った基準線が中心線となるように固定手段ST1,ST2によりセットする。なお、セット孔HS1,HS2に挿入される2つの位置決めピンはそれぞれ独立している。そして、スステップS102では、Caセパレータ準備台22に載置されているCaセパレータ101を、Caセパレータセットロボット25によりCaセパレータセット台21まで搬送し、Caセパレータ101の第1基準穴HR1が第1基準点SP1に対応する位置決めピン201に挿入され、第2基準穴HR2が第2基準点SP2に対応する位置決めピン201に挿入されるように載置する(ステップS102)。このとき、Caセパレータセット台21の上面には、複数の小さなエアー吸い込み孔が設けられており、図示しないコンプレッサーによって、Caセパレータ101は、台上にしっかりと吸いつけられる。これにより、図3(A)に示すように、Caセパレータ101を位置決めピン201の支持部201sに支えられるようにセットする。Caセパレータのセットのための各部の一連の動作は図示しないコントローラにより制御される。コントローラは、CPU,ROM,RAM等を含むコンピュータにより構成されており、あらかじめ用意された制御プログラムに従って制御される。
【0031】
次に、図2のステップS103では、図1に示すように、搬送ジグとしての2つの位置決めピン201に支持されたCaセパレータ101(以下、「ワークWK1」とも呼ぶ)を、搬送装置80の搬送ロボット82によって搬送レール84に沿って移動させて、接着剤塗布工程部30の接着剤塗布台31の上まで搬送する。そして、2つの位置決めピン201を、第1基準点SP1および第2基準点SP2の位置にセットする。このとき、接着剤塗布台31の上面にも、複数の小さなエアー吸い込み孔が設けられており、図示しないコンプレッサーによって、ワークWK1(Caセパレータ101)は、台上にしっかりと吸いつけられ、位置決めピン201の支持部201sに支えられるように、セットされる。なお、Caセパレータセット工程部20から接着剤塗布工程部30へのワークWK1の搬送およびセットに関する一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0032】
図7は、ワークを搬送するための搬送装置の一例について示す概略説明図である。図7(A)に示すように、搬送装置80は、各工程部の中心を配列方向に沿って延びる搬送レール84と、搬送レール84に吊るされた搬送レール84に沿って移動する搬送ロボット82と、で構成されている。図には、搬送装置80の下側に、Caセパレータセット台21と、接着剤塗布台31が配列された部分を示している。
【0033】
搬送ロボット82は、第1基準点SP1および第2基準点SP2にセットされている位置決めピン201に対応する位置に把持部RH1,RH2が設けられ、上下移動可能なハンド部82Aを有している。そして、このハンド部82Aを下げて、図7(B)に示すように、それぞれ対応する位置にある位置決めピン201の上部側(以下、「被把持部」とも呼ぶ)を拘束把持した後、持ち上げることにより、ワークWK1(Caセパレータ101)を位置決めピン201の支持部201sで支持しつつ、持ち上げることが可能である。ただし、この場合には、上記した第1および第2の固定手段ST1,ST2は、位置決めピン201を開放している。
【0034】
次に、搬送ロボット82は、図7(C)に示すように、位置決めピン201の被把持部を把持し、ワークWK1を支持して持ち上げたまま、搬送レール84に沿って接着剤塗布台31の上まで移動する。そして、接着剤塗布台31のセット孔HS1,HS2に、それぞれ対応する位置決めピン201が挿入されるように、搬送ロボット82のハンド部82Aを下げる。これにより、接着剤塗布台31上に、2つの位置決めピン201に支持されたワークWK1(Caセパレータ101)をセットすることができる。なお、このとき、上記した第1および第2の固定手段ST1,ST2は位置決めピン201を固定している。
【0035】
なお、搬送装置80による各工程部間におけるワークの搬送は上記した搬送方法と同様であるので、以下の説明ではその説明を省略する。
【0036】
図1の接着剤塗布工程部30は、接着剤塗布台31と、接着剤塗布装置32により構成される。この接着剤塗布工程部30では、図2に示すステップS104が実行される。すなわち、ステップS104では、図3(B)に示すように、接着剤塗布装置32によってシール剤としても機能する接着剤102を、接着剤塗布台31上にセットされたワークWK1であるCaセパレータ101上の塗布すべき箇所に塗布する。これにより、シール剤である接着剤102がCaセパレータ101に対して精度よく位置決めされて塗布される。なお、この接着剤102を塗布するための各部の一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0037】
次に、図2のステップS105では、搬送ジグとしての2つの位置決めピン201に支持され、接着剤が塗布されたCaセパレータ101(以下、「ワークWK2」とも呼ぶ)を、図1に示すように、搬送装置80の搬送ロボット82によって搬送レール84に沿って移動させて、MEGA積層工程部40のMEGA積層台41の上まで搬送する。そして、2つの位置決めピン201を、第1基準点SP1および第2基準点SP2の位置にセットする。このとき、MEGA積層台41の上面にも、複数の小さなエアー吸い込み孔が設けられており、図示しないコンプレッサーによって、ワークWK2(Caセパレータ101)は、台上にしっかりと吸いつけられ、位置決めピン201の支持部201sに支えられるように、セットされる。なお、接着剤塗布工程部30からMEGA積層工程部40へのワークWK2の搬送およびセットに関する一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0038】
図1のMEGA積層工程部40は、MEGA積層台41と、MEGA準備台42と、MEGA積層ロボット43により構成される。MEGA準備台42には、MEGA103が積み重ねて載置されている。MEGA103は、図示は省略するが、電解質膜の両面に触媒電極層を接合した一般的な膜電極接合体に、さらに、ガス拡散層を接合させた膜電極接合体を意味している。
【0039】
MEGA積層工程部40では、図2に示すステップS106が実行される。すなわち、ステップS106では、MEGA積層台41上にセットされたワークWK2のCaセパレータ101上の、MEGA103を載置する位置に、MEGA積層ロボット43により、MEGA準備台42に載置されているMEGA103を搬送し、図3(C)に示すように積層する。これにより、MEGA103が、Caセパレータ101、シール剤である接着剤102に対して精度よく位置決めされて積層される。
【0040】
次に、図2のステップS107では、搬送ジグとしての2つの位置決めピン201に支持され、MEGA103が積層されMEGA積層体(以下、「ワークWK3」とも呼ぶ)を、図1に示すように、搬送装置80の搬送ロボット82によって搬送レール84に沿って移動させて、Anセパレータ積層工程部50のAnセパレータ積層台51の上まで搬送する。そして、2つの位置決めピン201を、第1基準点SP1および第2基準点SP2の位置にセットする。このとき、このとき、Anセパレータ積層台51の上面にも、複数の小さなエアー吸い込み孔が設けられており、図示しないコンプレッサーによって、ワークWK3(Caセパレータ101)は、台上にしっかりと吸いつけられ、位置決めピン201の支持部201sに支えられるように、セットされる。なお、MEGA積層工程部40からAnセパレータ積層工程部50へのワークWK3の搬送およびセットに関する一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0041】
図1のAnセパレータ積層工程部50は、Anセパレータ積層台51と、Anセパレータ準備台52と、Anセパレータ積層ロボット53により構成される。Anセパレータ準備台52には、Anセパレータ104のMEGA103に接する側の面が上側となるように、かつ、Caセパレータ101とAnセパレータ104の短辺同士が向き合うようにして、上下および裏表反対向きに積み重ねて載置されている。
【0042】
Anセパレータ積層工程部50では、図2に示すステップS108が実行される。すなわち、ステップS108では、Anセパレータ積層台51上にセットされたワークWK3上に、ANセパレータ積層ロボット53により、Anセパレータ104の第1基準穴HR1が第1基準点SP1に対応する位置決めピン201に挿入され、第2基準穴HR2が第2基準点SP2に対応する位置決めピン201に挿入されるように、Anセパレータ104の上下および表裏を反転させて移動し、図7(D)に示すように積層する。これにより、Anセパレータ104が、Caセパレータ101、シール剤である接着剤102、および、MEGA103に対して精度よく位置決めされて積層される。なお、Anセパレータ積層工程部50におけるAnセパレータ104を積層するための各部の一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0043】
次に、図2のステップS109では、搬送ジグとしての2つの位置決めピン201に支持され、Anセパレータ104積層体(以下、「ワークWK4」とも呼ぶ)を、図1に示すように、搬送装置80の搬送ロボット82によって搬送レール84に沿って移動させて、ホットプレス工程部60のホットプレス装置61の下側型プレート61Lの上まで搬送する。そして、2つの位置決めピン201を、第1基準点SP1および第2基準点SP2の位置にセットする。このとき、下側型プレート61Lの上面にも、複数の小さなエアー吸い込み孔が設けられており、図示しないコンプレッサーによって、ワークWK4(Caセパレータ101)は、台上にしっかりと吸いつけられて、セットされる。なお、Anセパレータ積層工程部50からホットプレス工程部60へのワークWK4の搬送およびセットに関する一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0044】
図1のホットプレス工程部60は、ホットプレス装置61により構成される。このホットプレス装置61は、ワークをセットする下側型プレート61Lとワークの上に載せる上側型プレート61Uで構成される。
【0045】
ホットプレス工程部60では、図2に示すステップS110が実行される。すなわち、ステップS110では、ホットプレス装置61の下側型プレート61LにセットしたワークWK4上に図1の上側型プレート61Uをセットし、図3(E)に示すように、下側型プレート61Lおよび上側型プレート61Uの両側からワークWK4に対して加圧および加熱(ホットプレス)を実行する。これにより、シール剤である接着剤102を硬化させてワークWK4を構成していたCaセパレータ101、シール剤としての接着剤102、MEGA103、および、Anセパレータ103を全体的に貼り合わせて、ホットプレスされた積層体(以下、「ワークWK5」とも呼ぶ)を組み立てることができる。なお、このとき、図3(E)に示すように、位置決めピン201に対応する下側型プレート61Lおよび上側型プレート61Uの部分には、位置決めピンにプレートが接触して加熱するのを抑制するための逃がし溝部61Us,61Lsが設けられている。図8は、下側型プレートの逃がし溝部を拡大して具体的に示す説明図である。図に示すように、下側型プレート61Lは、台部61Lbと、その上方に配置された加熱プレート部61Lhとから構成されている。逃がし溝部61Lsは、位置決めピン201と加熱プレート部61Lhとの間に隙間ができるように、位置決めピン201の支持部201sの外径よりも大きな穴径で、加熱プレート部61Lhに設けられている。逃がし溝部61Ls内には、位置決めピン201を固定する固定部61Lfが、加熱プレート部61Lhに接触しないように、台部61Lb上に設けられている。従って、位置決めピン201が加熱プレート部61Lhに接触しないような構造となっているので、ワークWK4に対する加熱効率を向上させて、ホットプレス工程の効率化を図ることができる。なお、位置決めピン201を固定する固定部61Lfは、位置決めピン201が抜け落ちや倒れ等が発生しない場合には、必ずしも設ける必要はない。
【0046】
次に、図2のステップS111では、ホットプレス装置61の上側型プレート61Uをホットプレス積層体(ワークWK5)の上から取り除いた後、下側型プレート61LにセットされているワークWK5を、図1に示すように、搬送装置80の搬送ロボット82によって搬送レール84に沿って移動させて、回収工程部70の回収台71の上まで搬送する。そして、2つの位置決めピン201を、第1基準点SP1および第2基準点SP2の位置にセットする。なお、このワークWK5の搬送およびセットに関する一連の動作も、図示しないコントローラにより制御される。また、コントローラは、予め用意された制御プログラムによって制御される。
【0047】
図1の回収工程部70は、回収台71と、燃料電池セル載置台72と、位置決めピン回収台73と、燃料電池セル回収ロボット74と、位置決めピン回収ロボット75により構成される。燃料電池セル載置台72は、回収台71の図中右横側に配列されており、位置決めピン回収台73は、回収台71の図中上側に配列されており、位置決めピン回収台73には、収納ケース210が載置されている。
【0048】
回収工程部70では、図2に示すステップS112およびS113が実行される。まず、ステップS112では、回収台71にセットされたワークWK5、すなわち、組み立てられた燃料電池セル100を、燃料電池セル回収ロボット74によって、第1基準点SP1および第2基準点SP2に対応して立てられていた2つの位置決めピン201から抜き取って、燃料電池セル載置台72に載置する。そして、また、回収台71に立てられている2つの位置決めピン201を、回収台71から抜き取って回収し、収納ケース210に収納する。回収された位置決めピン201は、収納ケース210を、運搬装置90の搬送レール92を移動する搬送ロボット94によって、Caセパレータセット工程部20の位置決めピン準備台23側へ向けて搬送されることにより、再利用することができる。
【0049】
以上示したように、本実施例の燃料電池セルの組立装置10では、Caセパレータセット工程部20、接着剤塗布工程部30、MEGA積層工程部40、Anセパレータ積層工程部50、ホットプレス工程部60、および、回収工程部70に対応する各組立工程をそれぞれ独立して実行することにより、効率よく燃料電池セルの組み立てを実行することができる。
【0050】
そして、各組立工程部で組み立てられたワークの搬送を、位置決めピンを有するジグプレートを用いるのではなく、ワーク自身を支持可能な着脱可能な位置決めピンを搬送ジグとして用いることにより、実行することができるので、複数の組み立ての工程部間のワークの搬送を簡素な構成で精度良く実行することができる。
【0051】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0052】
(1)本実施例では、燃料電池セルの組み立て工程を、Caセパレータセット工程部20、接着剤塗布工程部30、MEGA積層工程部40、Anセパレータ積層工程部50、ホットプレス工程部60、および、回収工程部70とした場合を例に説明したが、これに限定するものではない。燃料電池セルの構成には、本実施例の構造のほか、セパレータとMEGAの間にガス流路を別途備える構造のものもある。このような燃料電池セルの場合には、これらの積層工程が追加される。すなわち、1つの燃料電池セルの組立工程を種々の工程に区分し、各工程を実行する工程部ごとに、それぞれで組み立てたワークを2つの位置決めピンで支持することにより、位置決めピン自体を搬送ジグとして用いるようにすれば、どのような組み立て工程であってもよい。
【0053】
(2)また、実施例においては、位置決めピンを部材の中心に対して対角線上に位置する2つのそれぞれ独立した位置決めピンを立てる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、3つ以上のそれぞれ独立した位置決めピンを用いるようにしてもよい。ただし、実施例のように、対角線上の最外端に2つの位置決めピンを設置すれば、最小数の位置決めピンにより安定で高精度な設定を実現可能である。
【0054】
(3)また、上記実施例では、固定手段として、3方向にチャック部分CHK1〜CHK3を有するチャック部を例に説明したが、これに限定するものではなく、基準点を通る鉛直線を中心として位置決めピンを鉛直方向に沿って固定することができる固定及び開放することが可能であれば、その構造に制限はない。
【0055】
(4)また、上記実施例では、各工程部を直線状に配列している場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。実行される工程の順番に対応して各工程部が配列されており、各工程部間を搬送装置が搬送する構造であれば、その構造に制限はない。ただし、直線状、あるいは、矩形状、円周状に配列した方が、効率はよい。
【符号の説明】
【0056】
10…組立装置
21R1…第1基準位置決め部
21R2…第2基準位置決め部
21…Caセパレータセット台
22…Caセパレータ準備台
23…位置決めピン準備台
24…位置決めピンセットロボット
25…Caセパレータセットロボット
30…接着剤塗布工程部
31…接着剤塗布台31
32…接着剤塗布装置
40…MEGA積層工程部
41…MEGA積層台
42…MEGA準備台
43…MEGA積層ロボット
50…Anセパレータ積層工程部
51…Anセパレータ積層台
52…Anセパレータ準備台
53…ANセパレータ積層ロボット
60…ホットプレス工程部
61…ホットプレス装置
61L…下側型プレート
61U…上側型プレート
61Us,61Ls…逃がし溝部
61Lb…台部
61Lh…加熱プレート部
61Lf…固定部
70…回収工程部
71…回収台
72…燃料電池セル載置台
73…位置決めピン回収台
74…燃料電池セル回収ロボット
75…位置決めピン回収ロボット
80…搬送装置
82…搬送ロボット
82A…ハンド部
84…搬送レール
90…運搬装置
92…搬送レール
94…搬送ロボット
100…燃料電池セル
101…Caセパレータ
102…接着剤
103…MEGA
104…Anセパレータ
201…位置決めピン
201c…固定部分
201r…挿入部分
201s…支持部
210…収納ケース
Asp1…内部空間
Asp2…内部空間
CHK…チャック部
CHK1〜3…チャック部分
CHK1f…支点
CHK1p…作用面
RH1,2…把持部
WK1〜5…ワーク
SP1…第1基準点
SP2…第2基準点
HR1…第1基準穴
HR2…第2基準穴
HS1…セット孔
HS2…セット孔
ST1…固定手段
ST2…固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を第1および第2のセパレータプレートで挟持した燃料電池セルの組立装置であって、
複数の部材を順に積層して前記燃料電池セルを組み立てるための複数の組立工程に対応する複数の工程部と、
各工程部の組立工程に従って組み立てられた各ワークを、それぞれ次の組立工程に対応する工程部に搬送する搬送部と、を備え、
前記各工程部は、前記複数の部材のうち、少なくとも、先頭の組立工程で用いられる第1の部材に設けられた少なくとも2つの基準穴に挿入され、前記複数の部材の積層方向に沿って延びる少なくとも2つの位置決めピンを基準として、それぞれ、対応する組立工程を実行し、
前記搬送部は、各位置決めピンに設けられた支持部により、前記各工程部で組み立てられたワークを前記積層方向の下側から支持しつつ、前記各位置決めピンに設けられた被把持部を把持することにより、前記各工程部で組み立てられたワークを、それぞれ、次の組立工程に対応する工程部に搬送する
ことを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記第1の部材は、前記第1および第2のセパレータプレートのいずれか一方であることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記少なくとも2つの基準穴は、前記第1の部材の面内の中心に対して点対称で、かつ、前記中心からの間隔が大きくなるように配置されていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記複数の工程部のうち、接着剤を塗布する工程に対応する工程部および前記複数の部材のうちのいずれかの部材を積層する工程に対応する工程部には、それぞれ、前記各位置決めピンを着脱可能に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池セルの組立装置であって、
前記複数の工程部のうち、前記複数の部材を積層した積層体に対して積層方向の両側から加熱および加圧する工程に対応する工程部には、前記各位置決めピンの前記積層方向の両側の型部への接触を抑制する逃がし部が設けられていることを特徴とする燃料電池セルの組立装置。
【請求項6】
燃料電池セルの組立方法であって、
複数の工程部により、複数の部材を順に積層して前記燃料電池セルを組み立てるための複数の組立工程と、
各組立工程に従って組み立てられた各ワークを、それぞれ次の組立工程に対応する工程部に搬送する搬送工程と、を備え、
前記各工程部に対応する組立工程は、前記複数の部材のうち、少なくとも、先頭の組立工程で用いられる第1の部材に設けられた少なくとも2つの基準穴に挿入され、前記複数の部材の積層方向に沿って延びる少なくとも2つの位置決めピンを基準として、それぞれ、実行され、
前記搬送工程は、各位置決めピンに設けられた支持部により、前記各工程部で組み立てられたワークを前記積層方向の下側から支持しつつ、前記各位置決めピンに設けられた被把持部を把持することにより、前記各工程部で組み立てられたワークを、それぞれ、次の組立工程に対応する工程部に搬送する
ことを特徴とする燃料電池セルの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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