説明

燃料電池ユニット

【課題】簡単且つ経済的な構成で、電解質膜・電極構造体及びセパレータを有する燃料電池ユニットを、確実に位置決め保持することができ、組み立て作業性を有効に向上させることを可能にする。
【解決手段】燃料電池10を構成する燃料電池ユニット12は、外周部に額縁部28が設けられる第1電解質膜・電極構造体14a、第1セパレータ16、外周部に額縁部28が設けられる第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20を備える。第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28には、複数の樹脂ピン部104aが一体成形される。各樹脂ピン部104aは、第1セパレータ16の孔部74a、第2電解質膜・電極構造体14bの孔部116a、第2セパレータ18の孔部98a及び第3セパレータ20の孔部48aに一体的に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極を設け、外周部に額縁状樹脂枠が設けられた長方形状の電解質膜・電極構造体と、長方形状のセパレータとが積層される燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータによって挟持している。この燃料電池は、通常、所定の数だけ積層されることにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
燃料電池では、通常、数十〜数百の燃料電池を積層して燃料電池スタックを構成している。その際、燃料電池自体及び前記燃料電池同士を正確に位置決めする必要があり、例えば、特許文献1に開示されている固体高分子電解質膜型燃料電池が知られている。
【0004】
この燃料電池は、図10に示すように、電解質層1Aの両面に、燃料電極1Bと酸化剤電極1Cが配設される燃料電池セル1を、セパレータ2A、2Bにより挟持して構成される単電池3を備えている。セパレータ2A及び2Bには、保持ピン挿入側保持孔4a及び止め輪挿入側保持孔4bが形成されるとともに、電解質層1Aには、これらに同軸的に孔部5が形成されている。
【0005】
保持ピン6は、保持ピン挿入側保持孔4a、孔部5及び止め輪挿入側保持孔4bに向かって挿入されるとともに、先端部には、止め輪7が装着されることにより、単電池3が一体的に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−12067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の単電池3では、セパレータ2A及び2Bに、それぞれ段付き形状の保持ピン挿入側保持孔4a及び止め輪挿入側保持孔4bが形成されている。従って、孔加工作業が相当に煩雑なものとなるとともに、部品点数が増大して製造コストが高騰するという問題がある。
【0008】
しかも、締結部材として、保持ピン6及び止め輪7が使用されているが、外部から衝撃荷重が付与された際、この衝撃荷重を確実に受け止めることができないおそれがある。このため、単電池3にせん断方向の荷重が付与されると、燃料電池セル1とセパレータ2A及び2Bとにせん断方向のずれが惹起し、シール性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、燃料電池ユニットを容易に位置決めして組み立て作業性を向上させるとともに、衝撃荷重を確実に保持することができ、シール性及び発電性を良好に確保することが可能な燃料電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極を設け、外周部に額縁状樹脂枠が設けられた長方形状の電解質膜・電極構造体と、長方形状のセパレータとが積層される燃料電池ユニットに関するものである。
【0011】
この燃料電池ユニットでは、少なくとも1つの電解質膜・電極構造体は、互いに対向する長辺側に、それぞれ複数の樹脂製凸状部が設けられる一方、セパレータを含む他の構成部材には、前記樹脂製凸状部が挿入される孔部が形成されている。
【0012】
そして、樹脂製凸状部は、孔部の内周面に隙間なく嵌合し且つ少なくとも1つの電解質膜・電極構造体及び他の構成部材を一体に結合している。
【0013】
また、この燃料電池ユニットでは、電解質膜・電極構造体及びセパレータには、それぞれ互いに対向する長辺側に、リビルトピン挿入用孔部が形成されることが好ましい。
【0014】
ここで、リビルトピンは、個別に用意されており、一旦組み立てた燃料電池ユニットを分解した後、使用不能になった樹脂製凸状部に代えて使用されるピンである。このリビルトピンは、電解質膜・電極構造体及びセパレータに設けられたリビルトピン挿入用孔部に挿入されることにより、燃料電池ユニットが、再度、組み立て可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る燃料電池ユニットでは、少なくとも1つの電解質膜・電極構造体の互いに対向する長辺側に、それぞれ複数の樹脂製凸状部が設けられている。各樹脂製凸状部は、他の構成部材に形成された各孔部の内周面に隙間なく一体に嵌合している。このため、長辺側から衝撃荷重が付与された際、電解質膜・電極構造体及びセパレータより前記衝撃荷重を確実に受けることができる。従って、各構成部材は、互いにせん断方向にずれることがなく、所望のシール性及び発電性を確保することが可能になる。
【0016】
しかも、専用の締結部材を個別に構成する必要がなく、部品点数が有効に削減されるとともに、設備費を削減することができる。これにより、簡単且つ経済的な構成で、電解質膜・電極構造体及びセパレータを有する燃料電池ユニットを、確実に位置決め保持するとともに、組み立て作業性を有効に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池ユニットの要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池ユニットが積層された燃料電池の、図1中、II−II線断面図である。
【図3】前記燃料電池ユニットを構成する第3セパレータの正面説明図である。
【図4】前記燃料電池ユニットを構成する第1セパレータの正面説明図である。
【図5】前記燃料電池ユニットを構成する第2セパレータの正面説明図である。
【図6】前記燃料電池ユニットを構成する第1電解質膜・電極構造体の正面説明図である。
【図7】前記燃料電池ユニットを構成する第2電解質膜・電極構造体の正面説明図である。
【図8】前記燃料電池ユニットの、図7中、VIII−VIII線断面図である。
【図9】前記燃料電池ユニットをリビルトピンにより一体化する際の断面説明図である。
【図10】特許文献1に開示されている燃料電池の分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、燃料電池10は、本発明の実施形態に係る燃料電池ユニット12を備えるとともに、複数の前記燃料電池ユニット12が水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層されてスタックが構成される。
【0019】
燃料電池ユニット12は、第1電解質膜・電極構造体(MEA)14a、第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体(MEA)14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20の順に積層される。第1電解質膜・電極構造体14a、第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20は、それぞれ長方形状を有しており、例えば、横長形状に配置される。
【0020】
第1セパレータ16、第2セパレータ18及び第3セパレータ20は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成される。第1セパレータ16、第2セパレータ18及び第3セパレータ20は、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状を有する。
【0021】
第2セパレータ18の外周部と第3セパレータ20の外周部とは、溶接、接着、ロウ付け又はかしめ等の接合手段により接合され、内部である冷却媒体流路52(後述する)が気密に密閉される。なお、第1セパレータ16、第2セパレータ18及び第3セパレータ20は、金属セパレータに換えて、カーボンセパレータ等を使用してもよい。
【0022】
第1電解質膜・電極構造体14a及び第2電解質膜・電極構造体14bは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜22と、前記固体高分子電解質膜22を挟持するアノード側電極24及びカソード側電極26とを備える(図2参照)。
【0023】
アノード側電極24及びカソード側電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜22の両面に形成される。
【0024】
固体高分子電解質膜22は、アノード側電極24及びカソード側電極26よりも大きな表面積に設定される。この固体高分子電解質膜22の外周端縁部には、樹脂製の額縁部(額縁状樹脂枠)28が、例えば、射出成形により一体成形される。樹脂材としては、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
【0025】
図1に示すように、額縁部28の矢印B方向の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔32bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0026】
額縁部28の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔34a及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0027】
第1セパレータ16、第2セパレータ18及び第3セパレータ20の外周部は、酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス出口連通孔32b、燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体出口連通孔34b及び酸化剤ガス出口連通孔30bの内側に配置される。
【0028】
図1及び図3に示すように、第3セパレータ20の第1電解質膜・電極構造体14aに対向する面20aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとを連通する第1酸化剤ガス流路36が形成される。第1酸化剤ガス流路36は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝を有するとともに、前記第1酸化剤ガス流路36の入口及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部38及び出口バッファ部40が設けられる。
【0029】
第3セパレータ20の矢印B方向両端には、酸化剤ガス入口連通孔30a及び酸化剤ガス出口連通孔30bに対応して突出する突起部42a、42bが設けられる。突起部42aには、酸化剤ガス入口連通孔30aを第1酸化剤ガス流路36に連通する入口流路44aが波状に形成される一方、突起部42bには、酸化剤ガス出口連通孔30bを前記第1酸化剤ガス流路36に連通する出口流路44bが波状に形成される。
【0030】
第3セパレータ20の矢印C方向両端部には、矢印B方向に長尺形状を有して外方(矢印C方向)に突出する突出部46a、46bが形成される。突出部46aには、矢印B方向に沿って複数の孔部48aと複数のリビルトピン挿入用孔部50aとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。
【0031】
なお、2つの孔部48aと1つのリビルトピン挿入用孔部50aとを交互に配列してもよい。以下に説明する各孔部も、同様である。突出部46bには、同様に、矢印B方向に沿って複数の孔部48bと複数のリビルトピン挿入用孔部50bとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。
【0032】
第3セパレータ20の面20bには、冷却媒体入口連通孔34aと冷却媒体出口連通孔34bとを連通する冷却媒体流路52が形成される。この冷却媒体流路52は、第1酸化剤ガス流路36の裏面形状である。
【0033】
図4に示すように、第1セパレータ16の第1電解質膜・電極構造体14aに対向する面16aには、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス出口連通孔32bとを連通する第1燃料ガス流路54が形成される。第1燃料ガス流路54は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝を有する。第1燃料ガス流路54の入口及び出口近傍には、入口バッファ部56及び出口バッファ部58が設けられる。
【0034】
第1セパレータ16の矢印B方向両端には、燃料ガス入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔32bに対応して突出する突起部58a、58bと、酸化剤ガス入口連通孔30a及び酸化剤ガス出口連通孔30bに対応して突出する突起部60a、60bとが設けられる。面16aにおいて、突起部58aには、燃料ガス入口連通孔32aを第1燃料ガス流路54に連通する入口流路62aが波状に形成される一方、突起部58bには、燃料ガス出口連通孔32bを前記第1燃料ガス流路54に連通する出口流路62bが波状に形成される。
【0035】
図1に示すように、第1セパレータ16の第1電解質膜・電極構造体14bに対向する面16bには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとを連通する第2酸化剤ガス流路64が形成される。第2酸化剤ガス流路64は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝を有するとともに、前記第2酸化剤ガス流路64の入口及び出口近傍には、入口バッファ部66及び出口バッファ部68が設けられる。
【0036】
面16bにおいて、突起部60aには、酸化剤ガス入口連通孔30aを第2酸化剤ガス流路64に連通する入口流路70aに波状に形成される一方、突起部60bには、酸化剤ガス出口連通孔30bを前記第2酸化剤ガス流路64に連通する出口流路70bが波状に形成される。
【0037】
第1セパレータ16の矢印C方向両端部には、矢印B方向に長尺形状を有して外方(矢印C方向)に突出する外方に突出する突出部72a、72bが形成される。図4に示すように、突出部72aには、矢印B方向に沿って複数の孔部74aと複数のリビルトピン挿入用孔部76aとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。突出部72bには、同様に、矢印B方向に沿って複数の孔部74bと複数のリビルトピン挿入用孔部76bとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。
【0038】
図5に示すように、第2セパレータ18の第2電解質膜・電極構造体14bに対向する面18aには、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス出口連通孔32bとを連通する第2燃料ガス流路78が形成される。第2燃料ガス流路78は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝を有する。第2燃料ガス流路78の入口及び出口近傍には、入口バッファ部80及び出口バッファ部82が設けられる。
【0039】
第2セパレータ18の矢印B方向両端には、燃料ガス入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔32bに対応して突出する突起部84a、84bと、冷却媒体入口連通孔34a及び冷却媒体出口連通孔34bに対応して突出する突起部86a、86bとが設けられる。
【0040】
面18aにおいて、突起部84aには、燃料ガス入口連通孔32aを第2燃料ガス流路78に連通する入口流路88aが波状に形成される一方、突起部84bには、燃料ガス出口連通孔32bを前記第2燃料ガス流路78に連通する出口流路88bが波状に形成される。
【0041】
図1に示すように、面18bにおいて、突起部86aには、冷却媒体入口連通孔34aを冷却媒体流路52に連通する入口流路90aが波状に形成される一方、突起部86bには、冷却媒体出口連通孔34bを前記冷却媒体流路52に連通する出口流路90bが波状に形成される。
【0042】
面18bは、面18a側の第2燃料ガス流路78の裏面形状である。この面18bと第3セパレータ20の面20bとが重なり合うことにより、冷却媒体流路52が形成される。冷却媒体流路52の入口及び出口近傍には、入口バッファ部92及び出口バッファ部94が設けられる。
【0043】
図1及び図5に示すように、第2セパレータ18の矢印C方向両端には、矢印B方向に長尺形状を有して外方(矢印C方向)に突出する突出部96a、96bが形成される。突出部96aには、矢印B方向に沿って複数の孔部98aと複数のリビルトピン挿入用孔部100aとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。突出部96bには、同様に、矢印B方向に沿って複数の孔部98bと複数のリビルトピン挿入用孔部100bとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。
【0044】
図1に示すように、第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28には、第1シール部材102が一体成形される。第1シール部材102としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。なお、以下に説明する第2シール部材114は、同様の材料が使用される。
【0045】
この第1シール部材102は、図2に示すように、第3セパレータ20側の面に、前記第3セパレータ20の外周縁部を周回して摺接する第1シール部102aを有する。
【0046】
図2及び図6に示すように、第1シール部材102の第1セパレータ16側の面には、前記第1セパレータ16の外周部縁部を周回して摺接する第2シール部102bと、前記第1セパレータ16の外周部外方に位置し、隣接する第2電解質膜・電極構造体14bの額縁部28に摺接する第3シール部102cとが設けられる。
【0047】
図6に示すように、第3シール部102cは、第1電解質膜・電極構造体14aの矢印C方向両端側で、矢印B方向に比較的広範囲にわたって、それぞれ外方に迂回するように形成される。上方の第3シール部102cの迂回部と第2シール部102bとの間には、複数の樹脂ピン部(樹脂製凸状部)104aと複数のリビルトピン挿入用孔部106aとが、例えば、1つずつ交互に設けられる。下方の第3シール部102cの迂回部と第2シール部102bとの間には、複数の樹脂ピン部(樹脂製凸状部)104bと複数のリビルトピン挿入用孔部106bとが、例えば、1つずつ交互に設けられる。
【0048】
第1電解質膜・電極構造体14aの長辺側にのみ樹脂ピン部104a、104bを設けることにより、前記樹脂ピン部104a、104bの数を多く設定することができるとともに、短辺側に酸化剤ガス入口連通孔30a、酸化剤ガス出口連通孔30b、燃料ガス入口連通孔32a、燃料ガス出口連通孔32b、冷却媒体入口連通孔34a及び冷却媒体出口連通孔34bを配置するためのスペースを確保することが可能になる。
【0049】
樹脂ピン部104a、104bは、第3シール部102cの迂回部と第2シール部102bとの間に位置して、すなわち、二重シール(リビルトピン挿入用孔部106a、106bの周囲をシールすることができるシール)の間に位置して設けられる。樹脂ピン部104a、104bは、額縁部28と一体成形されるとともに、第2電解質膜・電極構造体14b側に突出する(図1参照)。
【0050】
第1電解膜・電極構造体14aの各長辺の両側には、樹脂製ガイド部材108aが額縁部28と一体成形される。なお、樹脂製ガイド部材108aは、額縁部28と別体に構成することもできる。樹脂製ガイド部材108aの外周端部110aには、前記外周端部110aから内方に離間する凹状の逃げ部112が形成される。
【0051】
図2及び図7に示すように、第2電解質膜・電極構造体14bの額縁部28には、第2シール部材114が一体成形される。この第2シール部材114は、第2セパレータ18側の面に、前記第2セパレータ18の外周縁部を周回して周接する第1シール部114aと、前記第2セパレータ18の外周部外方に位置し、隣接する第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28に周接する第2シール部114bとを有する。
【0052】
図7に示すように、第2シール部114bは、第2電解質膜・電極構造体14bの矢印C方向両端側で、矢印B方向に比較的広範囲にわたって、それぞれ外方に迂回するように形成される。上方の第2シール部114bの迂回部と第1シール部114aとの間には、複数の孔部116aと複数のリビルトピン挿入用孔部118aとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。下方の第2シール部114bの迂回部と第1シール部114aとの間には、複数の孔部116bと複数のリビルトピン挿入用孔部118bとが、例えば、1つずつ交互に貫通形成される。
【0053】
第1セパレータ16の孔部74a、第2電解質膜・電極構造体14bの孔部116a、第2セパレータ18の孔部98a及び第3セパレータ20の孔部48aは、同一直径で且つ同一個数に設定される。第1セパレータ16の孔部74b、第2電解質膜・電極構造体14bの孔部116b、第2セパレータ18の孔部98b及び第3セパレータ20の孔部48bは、同一直径で且つ同一個数に設定される。
【0054】
第1電解質膜・電極構造体14aのリビルトピン挿入用孔部106a、第1セパレータ16のリビルトピン挿入用孔部76a、第2電解質膜・電極構造体14bのリビルトピン挿入用孔部118a、第2セパレータ18のリビルトピン挿入用孔部100a及び第3セパレータ20のリビルトピン挿入用孔部50aは、同一直径で且つ同一個数に設定される。
【0055】
第1電解質膜・電極構造体14aのリビルトピン挿入用孔部106b、第1セパレータ16のリビルトピン挿入用孔部76b、第2電解質膜・電極構造体14bのリビルトピン挿入用孔部118b、第2セパレータ18のリビルトピン挿入用孔部100b及び第3セパレータ20のリビルトピン挿入用孔部50bは、同一直径で且つ同一個数に設定される。
【0056】
図7に示すように、第2電解質膜・電極構造体14bの額縁部28には、樹脂製ガイド部材108bが一体成形される。樹脂製ガイド部材108bは、外周端部110bを設けるとともに、この外周端部110bは、第1電解質膜・電極構造体14aの樹脂製ガイド部材108aに設けられた逃げ部112から外方に露呈している(図6参照)。
【0057】
図8に示すように、第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28に設けられている複数の樹脂ピン部104aは、第1セパレータ16の孔部74a、第2電解質膜・電極構造体14bの孔部116a、第2セパレータ18の孔部98a及び第3セパレータ20の孔部48aに一体に挿入される。
【0058】
樹脂ピン部104aの先端は、溶着ダイを構成する溶着チップ120により成形される。この溶着チップ120は、所定温度に加熱される成形面120aを有するとともに、前記成形面120aには、略円錐状に突出するかしめ機能部122が形成される。
【0059】
溶着チップ120は、所定温度に加熱された状態で、樹脂ピン部104aの先端に押圧される。このため、溶着チップ120の成形面120aを介して所定の形状、例えば、大径な頭部124が形成されるとともに、かしめ機能部122を介してかしめ凹部126が形成される。
【0060】
従って、樹脂ピン部104aは、軸方向に押し潰されるように変形し、すなわち、径方向外方に膨出し、各孔部74a、116a、98a及び48aの内周面に隙間なく一体に嵌合している。なお、樹脂ピン部104bは、上記の樹脂ピン部104aと同様である。
【0061】
第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20は、第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28と樹脂ピン部104a、104bの頭部124との間で、保持されている。
【0062】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0063】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aに供給された酸素含有ガス等の酸化剤ガスは、第3セパレータ20の突起部42aに形成されている入口流路44aを介して第1酸化剤ガス流路36に供給される。同様に、酸化剤ガスは、第1セパレータ16の突起部60aに形成されている入口流路70aを介して第2酸化剤ガス流路64に供給される。
【0064】
第1酸化剤ガス流路36を流通した酸化剤ガスは、第3セパレータ20の突起部42bに形成されている出口流路44bから酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。同様に、第2酸化剤ガス流路64を流通した酸化剤ガスは、第1セパレータ16の突起部60bに形成されている出口流路70bから酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0065】
一方、燃料ガス入口連通孔32aに供給された水素含有ガス等の燃料ガスは、第1セパレータ16の突起部58aに形成されている入口流路62aから第1燃料ガス流路54に供給される。同様に、燃料ガスは、第2セパレータ18の突起部84aに形成されている入口流路88aから第2燃料ガス流路78に供給される。
【0066】
第1燃料ガス流路54を流通した燃料ガスは、第1セパレータ16の突起部58bに形成されている出口流路62bから燃料ガス出口連通孔32bに排出される。同様に、第2燃料ガス流路78を流通した燃料ガスは、第2セパレータ18の突起部84bに形成されている出口流路88bから燃料ガス出口連通孔32bに排出される。
【0067】
また、冷却媒体入口連通孔34aに供給された純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体は、第2セパレータ18の突起部86aに形成されている入口流路90aから冷却媒体流路52に供給される。この冷却媒体は、冷却媒体流路52を流通した後、突起部86bに形成されている出口流路90bから冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0068】
この場合、本実施形態では、第1電解質膜・電極構造体14aの額縁部28には、矢印B方向に配列して複数の樹脂ピン部104a、104bが一体成形されている。各樹脂ピン部104a、104bは、他の構成部材である第1セパレータ16の孔部74a、74b、第2電解質膜・電極構造体14bの孔部116a、116b、第2セパレータ18の孔部98a、98b及び第3セパレータ20の孔部48a、48bにそれぞれ一体的に挿入された後、溶着処理により大径な頭部124及びかしめ凹部126が形成されている。
【0069】
従って、各樹脂ピン部104a、104bは、他の構成部材に形成された各孔部74a、74b、116a、116b、98a、98b及び48a、48bの各内周面に隙間なく一体に嵌合している。このため、燃料電池ユニット12は、長辺側から衝撃荷重が付与された際、前記衝撃荷重を確実に受けることができる。
【0070】
これにより、燃料電池ユニット12の構成部材(第1電解質膜・電極構造体14a、第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20)同士がせん断方向にずれることがなく、所望のシール性及び発電性を確保することが可能になるという効果が得られる。
【0071】
しかも、専用の締結部材を個別に構成する必要がなく、部品点数が有効に削減されるとともに、設備費を削減することができる。従って、簡単且つ経済的な構成で、第1電解質膜・電極構造体14a、第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20を有する燃料電池ユニット12を、確実に位置決め保持することが可能になり、組み立て作業性を有効に向上させることができる。
【0072】
このため、複数の燃料電池ユニット12が積層される燃料電池10(燃料電池スタック)の製造工程の簡素化を図るとともに、前記燃料電池ユニット12及び前記燃料電池10の組み立て作業性が良好に向上するという効果が得られる。
【0073】
次に、組み立て後の燃料電池10が、故障等による部品交換や解析等のために分解される際には、先ず、各樹脂ピン部104a、104bが破断されて各燃料電池ユニット12が互いに分離される。一方、個別に構成されているリビルトピン130a、130bが用意される。
【0074】
そして、図9に示すように、リビルトピン130a、130bは、第1電解質膜・電極構造体14a、第1セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体14b、第2セパレータ18及び第3セパレータ20の各リビルトピン挿入用孔部106a、106b、76a、76b、118a、118b、100a、100b及び50a、50bに一体に挿入されて溶着処理される。これにより、燃料電池ユニット12が再度組み立てられる。
【0075】
なお、本実施形態では、燃料電池ユニット12は、2枚のMEAと3枚のセパレータとにより構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、1枚のMEAと2枚のセパレータとにより構成される燃料電池ユニットや、3枚のMEAと4枚のセパレータとにより構成される燃料電池ユニット等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…燃料電池 12…燃料電池ユニット
14a、14b…電解質膜・電極構造体 16、18、20…セパレータ
22…固体高分子電解質膜 24…アノード側電極
26…カソード側電極 28…額縁部
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…燃料ガス入口連通孔 32b…燃料ガス出口連通孔
34a…冷却媒体入口連通孔 34b…冷却媒体出口連通孔
36、64…酸化剤ガス流路
46a、46b、72a、72b、96a、96b…突出部
48a、48b、50a、50b、74a、74b、76a、76b、98a、98b、100a、100b、106a、106b、116a、116b、118a、118b…孔部
52…冷却媒体流路 54、78…燃料ガス流路
102、114…シール部材 104a、104b…樹脂ピン部
130a、130b…リビルトピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極を設け、外周部に額縁状樹脂枠が設けられた長方形状の電解質膜・電極構造体と、長方形状のセパレータとが積層される燃料電池ユニットであって、
少なくとも1つの前記電解質膜・電極構造体は、互いに対向する長辺側に、それぞれ複数の樹脂製凸状部が設けられる一方、
前記セパレータを含む他の構成部材には、前記樹脂製凸状部が挿入される孔部が形成され、
前記樹脂製凸状部は、前記孔部の内周面に隙間なく嵌合し且つ少なくとも1つの前記電解質膜・電極構造体及び前記他の構成部材を一体に結合することを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池ユニットにおいて、前記電解質膜・電極構造体及び前記セパレータには、それぞれ互いに対向する長辺側に、リビルトピン挿入用孔部が形成されることを特徴とする燃料電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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