燃料電池用膜−電極アセンブリの製造方法及びこれを含む燃料電池システムの製造方法
【課題】経済的でありながら優れた触媒効率を有する触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関し、膜-電極アセンブリは高分子電解質膜の一方の面に配置される触媒層を含み、触媒層は白金及び遷移元素の合金触媒を含み、触媒は白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく0.45以下である。本発明の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法は、非常に優れた質量活性度を有する触媒を含み、燃料電池の性能を改善された燃料電池用膜-電極アセンブリを製造できる。
【解決手段】本発明は、燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関し、膜-電極アセンブリは高分子電解質膜の一方の面に配置される触媒層を含み、触媒層は白金及び遷移元素の合金触媒を含み、触媒は白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく0.45以下である。本発明の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法は、非常に優れた質量活性度を有する触媒を含み、燃料電池の性能を改善された燃料電池用膜-電極アセンブリを製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関し、より詳しくは優れた触媒活性を有する触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料の化学エネルギーが電気エネルギーに直接変換されて電流を生産できる電池のことで、燃料(水素またはメタノール)と酸化剤(酸素または空気)を電気化学反応させて生じるエネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電システムである。
【0003】
このような燃料電池は充電及び放電サイクルがなく外部からの燃料供給を受けて継続的に電流を生産する。
【0004】
燃料電池は、熱力学的効率の支配を受けないので、力学的エネルギーや燃料の燃焼による熱エネルギーを利用する発電機に比べて非常にエネルギー効率が高い。
【0005】
周知のように、燃料電池の化学反応では、水素と酸素の反応により水を生成する。現在、商用化されている燃料電池としては、高分子電解質型燃料電池またはリン酸型燃料電池の酸性電解質を使用するものがある。このような酸性電解質を使用する燃料電池の化学反応は、下記反応式1のように起こる。
【0006】
[反応式1]
カソード電極:O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O
アノード電極:H2 → 2H+ + 2e-
全体反応:2H2 + O2 → 2H2O
【0007】
つまり、燃料を供給する間、燃料(一般的には水素)をアノード電極に供給すると同時に酸化剤(一般的には空気)をカソード電極に供給して、アノード電極で燃料の酸化反応がおこり、エネルギーを発生するが、この時燃料の酸化反応は、触媒を使用するカソード電極の酸素還元反応、つまり、電子を発生することでおきるものである。
【0008】
したがって、燃料電池の効率を向上させるための一つのパラメータとして触媒の効率が重要であって、このような触媒としては電気化学反応において最も安定した白金(Pt)または他の貴金属などが主に用いられてきた。しかし、白金のような貴金属は高価であるため、燃料電池を商業的に利用することには大きな問題があった。
【0009】
したがって、白金のような貴金属に代わって合金系の触媒に関する様々な研究が進められ、例えば下記特許文献1にPt-Cr-Co、Pt-Crなどの合金触媒及び下記特許文献2にPt-Ga、Pt-Crなどの合金触媒に関する内容が記述されている。
【0010】
しかし、このような合金触媒の活性度が白金に比べて多少落ちることから、依然として白金のような貴金属に代わって燃料電池の効率を向上させる触媒に関する研究を引き続き行う必要があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,447,506号明細書
【特許文献2】米国特許第4,822,699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記の問題点を解決するため、経済的でありながら優れた触媒効率を有する触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池システムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的を達成するため、本発明では、高分子電解質膜の一方の面に配置された触媒層を含み、前記触媒層は白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法であって、前記合金触媒は白金の電子配列で、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点(空孔比)が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、高分子電解質膜;
前記高分子電解質膜の一方の面に位置して、触媒層がコーティングされたカソード電極を含む膜-電極アセンブリ;及び前記膜-電極アセンブリの前記一方の面に密着配置された流路チャネルを有するセパレータを含んで構成される単位セルを一つ以上含み、前記触媒層は、白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池システムの製造方法であって、前記合金触媒は、白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池システムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の原理に従って選択した燃料電池用触媒は、非常に優れた質量活性度質量活性度を示す効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒において、白金の電子配列の中、5dバンドオービタルのD-バンドオービタル空格子点と質量活性度を測定したグラフである。
【図2】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例4乃至6及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例4乃至6及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例7の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例7の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例8の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例8の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例9の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例9の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施例による燃料電池システムの概略図である。
【図13】本発明の燃料電池システムのスタックの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、燃料電池の効率を向上するため用いる触媒の活性を、一層向上させると同時に経済的な触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムに関する。
【0018】
従来燃料電池用触媒に広く用いられた白金は値段が高いため、経済的な側面から白金の単位重量当り得られる電流、つまり、質量活性度質量活性度の概念が非常に重要であった。したがって、本発明で触媒の活性を向上させるということは質量活性度質量活性度を上げる意味である。
【0019】
一般的な燃料電池の反応において、カソード電極の酸素還元反応は、律速段階(rate-determining step: rds)として知られている。
【0020】
rds反応である酸素還元反応の詳細なメカニズムは、まだ明らかにされていないが、一般に酸素が白金表面に適当な力で吸着されている間、白金表面に水素が接近して既に吸着されている酸素と反応し、酸素が白金表面から脱落して水を生成するという説明が支配的である。
【0021】
本発明では、前記説明のように白金表面に酸素が吸着する吸着度が反応速度と関連があり、またこれは白金-酸素間の結合力と密接な関連があるという点に着目し、白金-酸素間の結合力を推定できる白金の電子配列を調節した。
【0022】
白金-酸素間の吸着モデルは、以下の式1乃至3に示すように様々なモデルが提案されて、いずれのモデルにおいても、白金-酸素結合力が反応メカニズムに影響を与えていることが分かる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0023】
白金-酸素間の結合力が、反応メカニズムに、どのようにして影響を与え、また、触媒活性と如何なる関連があるかについては、今まで明確に知られていなかったが、本発明者らは、白金-酸素間の結合力を推定できる白金の電子配列を調節した結果、触媒活性を最適化できるようになり、本発明を完成した。
【0024】
本発明の触媒は、白金と遷移元素の合金で構成されており、白金の安定した電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく0.45以下であり、より好ましくは0.34乃至0.41、さらに好ましくは0.36乃至0.39である。5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が前記範囲に属する場合、触媒活性が非常に優秀になる効果がある。
【0025】
このような5dバンドオービタルのD-バンド空格子点はXASを利用して測定する。それについて簡単に説明すると、白金のXASを測定して対照群とし、測定結果から、試料の第1ピークの面積と対照群面積の差を下記数式1によって求めた値が、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点である(A.N.Mansour、J.R.Katzer、J.Catal.、1984、89、464)。 ここで、空格子点とは、結晶の格子点にあるべき原子が、欠けて生じた空位(空席)のことである。
[数式1]
D-バンド空格子点(hj)全体、試料=(1.0+Fd)(hj)、対照群(reference)
Fd=(△A3+1.11△A2)/(A3+1.11A2)r
△A2=(A2s−A2r)
△A3=(A3s−A3r)
【0026】
A2とA3は、L2とL3吸収エッジでのピーク面積であり、sは試料、rは対照群の空格子点であり、r=0.3である。
【0027】
このようなD-バンド空格子点の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点は、一般に用いられる白金触媒(白金担持カーボン、Pt/Cと記す)の場合に0.3であり、遷移元素が合金化される場合には値が変わるため、本発明では合金化程度を調節してD-バンド空格子点の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点を望む値に調節した。
【0028】
このようなD-バンド空格子点の状態は、白金原子と遷移金属原子間の結合力により変わることから、白金格子構造に遷移金属が置換される過程での合金化程度によって変わることができる。
【0029】
つまり、白金と遷移金属の合金化程度は、合金方法によって変わることがあるが、それはPt/Cの種類、遷移金属前駆体の種類、前駆体溶媒の種類と濃度、合金方法、熱処理温度と時間、ガス条件などによって変わることができる。
【0030】
次に、本発明の白金と遷移元素の合金触媒製造方法について説明する。
まず、白金と遷移元素前駆体を混合する。この時、白金は当該分野で通常の担体に支持されたものを用いる方が好ましい。それは白金使用量を減少させることができるためである。担体としては、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素を用いることが可能で、アルミナ、シリカなどの無機物微粒子を使用することもできる。
【0031】
担体に担持される白金を使用する場合には、市販のものを使用することができ、また、担体に白金を担持して製造使用することもできる。
【0032】
担体に白金を担持する工程は、当該分野において広く知られている内容であるので、本明細書で詳細な説明を省略しても、これについては当該分野に従事する人々に容易に分かることである。
【0033】
前記遷移元素としてはNi、Cr、CoまたはFeが好ましく、前駆体としてはハロゲン化合物、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、アミン類などあらゆる形態の化合物を使用可能であるが、その中でハロゲン化合物を用いることが好ましい。
【0034】
遷移元素前駆体は液状で使用して、この時の溶媒としては水、またはメタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコールを用いることができる。白金と遷移元素前駆体の混合比率は、(Pt:遷移元素)のモル比率を1:1乃至3:1にするのが好ましい。(Pt:遷移元素)のモル比率が、前記範囲内に収まらない場合には合金化が起こらない。
【0035】
好ましい混合工程は、液状遷移元素前駆体を担体に担持された白金に一滴ずつ滴下する方法である。
【0036】
この混合工程以降に、超音波洗浄で分散させて、約110℃で約1時間乾燥する乾燥工程を実施するのが好ましい。
【0037】
得られた混合物は500℃乃至1500℃、より好ましくは700乃至1100℃で熱処理を行い、白金と遷移元素の合金触媒を製造する。
【0038】
この熱処理温度が500℃より低い場合には合金化され難く、1500℃より高い場合には遷移金属の溶融温度に近づいて、不安定化するので、正確な比率の合金を製造し難いため、好ましくない。
【0039】
熱処理工程は還元雰囲気で実施することが好ましい。熱処理時の還元雰囲気は水素ガス、窒素ガスまたは水素と窒素の混合ガスを用いることができる。
【0040】
本発明による白金と遷移元素の合金触媒は、リン酸型燃料電池または高分子電解質型燃料電池などの酸を電解質とする燃料電池に有効利用できる。
【0041】
本発明の燃料電池システムは、電解質膜と、本発明の触媒層が形成されるカソード及びアノード電極を含む。
【0042】
カソード電極、アノード電極は、カーボンペーパ、カーボン布、カーボン不織布などの炭素基材に両電極用の触媒層が形成されたものである。両電極用の触媒は、共に本発明の白金系触媒を用いてもよいが、本発明の触媒はカソード触媒として使用されることが好ましい。
【0043】
炭素基材は、電気化学反応時の反応ガスを触媒層に拡散する役割をするので、ガス拡散層と呼ばれることもある。
【0044】
電解質膜の両側に配置されるアノード電極とカソード電極は、膜-電極アセンブリを形成し、膜-電極アセンブリの両側に流路チャネルが形成される導電性セパレータが配置され、単位セルを構成する。
【0045】
流路チャネルには、水素供給管に接続されてアノード電極に接する水素チャネルと、空気供給管に接続されてカソード電極に接する空気チャネルがあり、両チャネルを1枚のセパレータの表裏両面に形成してもよいが、2枚の別セパレータに形成して、両セパレータを背中合わせに組立てても良い。
【0046】
このような単位セルを少なくとも一つ以上積層してスタックを形成し、このスタックに燃料を供給する燃料供給源と酸素を供給する酸素供給源を連結して燃料電池システムを製造する。
【0047】
図12は本発明の燃料電池システム100の全体構成を示す概略図であり、図13は本発明の燃料電池システムのスタック130を示す分解斜視図である。
【0048】
図12と図13を参照すると、本発明の燃料電池システム100は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部110;混合燃料を改質して水素気体を発生する改質部120;燃料電池用触媒を含み、改質部から供給される水素気体が外部空気と電気化学反応を起こして電気エネルギーを発生するスタック130;及び外部空気を改質部120及びスタック130に供給する空気供給部140を含む。
【0049】
また、本発明の燃料電池システムのスタック130は、改質部120から供給される水素気体と、空気供給部から供給される外部空気の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セル131を備える。
【0050】
各々の単位セル131は、電気を発生する単位を意味し、水素気体と空気中の酸素を酸化/還元させる膜-電極アセンブリ132と、水素気体と空気を膜-電極アセンブリ132に供給するセパレータ133を含む。
【0051】
セパレータ133は、膜-電極アセンブリ132を中心に、その両側に配置される。この時、スタック130の最も外側に各々位置するセパレータを、特に端板133aと称することもある。
【0052】
膜-電極アセンブリ132は、両側面をなしているアノード電極とカソード電極の間に電解質膜を介した構造を有する。
【0053】
アノード電極は、セパレータ133を通して水素気体の供給を受ける部分で、酸化反応によって水素気体を電子と水素イオンに分離させる触媒層と、 水素ガスの円滑な移動のための気体拡散層で構成される。
【0054】
また、カソード電極は、セパレータ133を通して空気の供給を受ける部分で、還元反応によって空気中の酸素を吸着する白金系触媒層と、 酸素ガスの円滑な移動のため気体拡散層で構成される。
【0055】
そして、電解質膜は、厚さ50〜200μmの固体ポリマー電解質であって、アノード電極の触媒層で生成された水素イオンをカソード電極の触媒層に移動させるイオン交換の機能を有する。
【0056】
また、前記セパレータの中で一方の端板133aには、改質器から供給される水素気体を注入するためのパイプ状の第1供給管133a1と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管133a2が備えられ、他方の端板133aには複数の単位セル131で最終的に未反応になった残留水素気体を外部に排出するための第1排出管133a3と、単位セル131で最終的に未反応になった残留空気及び反応生成物である水分を外部に排出するための第2排出管133a4が備わる。
【0057】
以上の説明は本発明の1例にすぎず、本発明の燃料電池システムが、図12または図13の構成に限定されるものではない。
【0058】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明が下記の実施例に限られるわけではない。
[実施例1]
市販の炭素担体に担持された白金触媒(Pt/C:Johnson mattheyCo.製、炭素担体質量に対して白金が10重量%含まれている)にNiCl2(Aldrich扱い、無水品、純度99%)水溶液を含浸させ、Pt:Niのモル比を3:1にした。得られた含浸生成物を700℃で熱処理してPt-Ni合金触媒を製造した。
[実施例2]
熱処理温度を900℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同一条件で実施した。
[実施例3]
熱処理温度を1100℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同一条件で実施した。
[比較例1]
市販の白金触媒(Pt/C:Johnson matthey Co.製、10重量%)を無修正で使用した。
【0059】
実施例1乃至3及び比較例1の触媒は、大体30乃至150Åの粒子サイズを有することが分かった。
【0060】
実施例1乃至3及び比較例1によって製造された触媒をローリング法で炭素不織布に付着させて電極を製造し、水素基準電極対比900mvでの電流密度(質量活性度質量活性度)を、半電池で測定した。その結果を下記表1及び図1に示す。
【0061】
また、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点の測定結果も下記表1及び図1に示す。5dバンドオービタルのD-バンド空格子点は、実施例1乃至実施例3及び比較例1によって製造された触媒のXASを測定して、図2(L2エッジ)及び図3(L3エッジ)に示すスペクトルを得られ、試料の第1ピークの面積と対照群面積の差を数式1によって求めた。
【0062】
L2及びL3とは、原子核の周囲を取り巻く電子軌道群(殻)の中で、主量子数が2のL電子殻を電子軌道単位でさらに区分して、内側からL1、L2、L3という形式で示したもので、L電子殻の1番目、2番目、3番目の副殻を意味する。
【表1】
【0063】
表1で、白金の質量活性度質量活性度は、半電池テストを通して得られた電流値を触媒(Pt-Ni)重量で割り算した値である。
【0064】
また、Pt3/(Ni700℃)はPt:Niのモル比が3:1、熱処理温度が700℃であることを示す。
【0065】
表1及び図3に示したように、実施例1乃至3の触媒の質量活性度質量活性度が比較例1の質量活性度質量活性度より優れていることが分かり、特に実施例2乃至3の触媒は比較例1の質量活性度質量活性度のほぼ2倍を越える非常に優れた活性度を示すことが分かる。
[実施例4]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例1と同一条件で実施した。
[実施例5]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例2と同一条件で実施した。
[実施例6]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例3と同一条件で実施した。
【0066】
実施例4乃至6及び比較例1によって製造された触媒のXASを測定して、その結果を図4(L2エッジ)及び図5(L3エッジ)に示す。測定結果が図1に示した結果と類似しているので、実施例4乃至6の触媒の質量活性度質量活性度も優れていると予測できる。
[実施例7]
遷移元素をNiの代わりにCoに変更したことを除いて、実施例3と同一条件で実施した。
[実施例8]
遷移元素をNiの代わりにCrで変更したことを除いて、前記実施例3と同一条件で実施した。
[実施例9]
遷移元素をNiの代わりにFeに変更したことを除いて、前記実施例2と同一条件で実施した。
【0067】
実施例7によって製造された触媒のXASの測定結果を図6(L2エッジ)及び図7(L3エッジ)に示し、前記実施例8によって製造された触媒のXASを測定して、その結果を図8(L2エッジ)及び図9(L3エッジ)に示す。
【0068】
また、実施例9によって製造された触媒のXASの測定結果を図10(L2エッジ)及び図11(Lエエッジ)に示す。
【0069】
測定結果が図1に示された結果と類似しているので、実施例7乃至9の触媒質量活性度も優れていると予測できる。
【0070】
従って、本発明で用いた燃料電池用触媒は、非常に優れた質量活性度を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0071】
100 燃料電池システム
110 燃料供給部
120 改質部
130 スタック
131 単位セル
132 膜-電極アセンブリ
133 セパレータ
133a 端板
133a1 第1供給管
133a2 第2供給管
133a3 第1排出管
133a4 第2排出管
140 空気供給部
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関し、より詳しくは優れた触媒活性を有する触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料の化学エネルギーが電気エネルギーに直接変換されて電流を生産できる電池のことで、燃料(水素またはメタノール)と酸化剤(酸素または空気)を電気化学反応させて生じるエネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電システムである。
【0003】
このような燃料電池は充電及び放電サイクルがなく外部からの燃料供給を受けて継続的に電流を生産する。
【0004】
燃料電池は、熱力学的効率の支配を受けないので、力学的エネルギーや燃料の燃焼による熱エネルギーを利用する発電機に比べて非常にエネルギー効率が高い。
【0005】
周知のように、燃料電池の化学反応では、水素と酸素の反応により水を生成する。現在、商用化されている燃料電池としては、高分子電解質型燃料電池またはリン酸型燃料電池の酸性電解質を使用するものがある。このような酸性電解質を使用する燃料電池の化学反応は、下記反応式1のように起こる。
【0006】
[反応式1]
カソード電極:O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O
アノード電極:H2 → 2H+ + 2e-
全体反応:2H2 + O2 → 2H2O
【0007】
つまり、燃料を供給する間、燃料(一般的には水素)をアノード電極に供給すると同時に酸化剤(一般的には空気)をカソード電極に供給して、アノード電極で燃料の酸化反応がおこり、エネルギーを発生するが、この時燃料の酸化反応は、触媒を使用するカソード電極の酸素還元反応、つまり、電子を発生することでおきるものである。
【0008】
したがって、燃料電池の効率を向上させるための一つのパラメータとして触媒の効率が重要であって、このような触媒としては電気化学反応において最も安定した白金(Pt)または他の貴金属などが主に用いられてきた。しかし、白金のような貴金属は高価であるため、燃料電池を商業的に利用することには大きな問題があった。
【0009】
したがって、白金のような貴金属に代わって合金系の触媒に関する様々な研究が進められ、例えば下記特許文献1にPt-Cr-Co、Pt-Crなどの合金触媒及び下記特許文献2にPt-Ga、Pt-Crなどの合金触媒に関する内容が記述されている。
【0010】
しかし、このような合金触媒の活性度が白金に比べて多少落ちることから、依然として白金のような貴金属に代わって燃料電池の効率を向上させる触媒に関する研究を引き続き行う必要があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,447,506号明細書
【特許文献2】米国特許第4,822,699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記の問題点を解決するため、経済的でありながら優れた触媒効率を有する触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池システムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的を達成するため、本発明では、高分子電解質膜の一方の面に配置された触媒層を含み、前記触媒層は白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法であって、前記合金触媒は白金の電子配列で、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点(空孔比)が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、高分子電解質膜;
前記高分子電解質膜の一方の面に位置して、触媒層がコーティングされたカソード電極を含む膜-電極アセンブリ;及び前記膜-電極アセンブリの前記一方の面に密着配置された流路チャネルを有するセパレータを含んで構成される単位セルを一つ以上含み、前記触媒層は、白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池システムの製造方法であって、前記合金触媒は、白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池システムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の原理に従って選択した燃料電池用触媒は、非常に優れた質量活性度質量活性度を示す効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒において、白金の電子配列の中、5dバンドオービタルのD-バンドオービタル空格子点と質量活性度を測定したグラフである。
【図2】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1乃至3及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例4乃至6及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例4乃至6及び比較例1の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例7の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例7の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例8の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例8の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例9の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例9の燃料電池用触媒のXASを測定し、L2エッジでの吸収結果を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施例による燃料電池システムの概略図である。
【図13】本発明の燃料電池システムのスタックの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、燃料電池の効率を向上するため用いる触媒の活性を、一層向上させると同時に経済的な触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリ及びこれを含む燃料電池システムに関する。
【0018】
従来燃料電池用触媒に広く用いられた白金は値段が高いため、経済的な側面から白金の単位重量当り得られる電流、つまり、質量活性度質量活性度の概念が非常に重要であった。したがって、本発明で触媒の活性を向上させるということは質量活性度質量活性度を上げる意味である。
【0019】
一般的な燃料電池の反応において、カソード電極の酸素還元反応は、律速段階(rate-determining step: rds)として知られている。
【0020】
rds反応である酸素還元反応の詳細なメカニズムは、まだ明らかにされていないが、一般に酸素が白金表面に適当な力で吸着されている間、白金表面に水素が接近して既に吸着されている酸素と反応し、酸素が白金表面から脱落して水を生成するという説明が支配的である。
【0021】
本発明では、前記説明のように白金表面に酸素が吸着する吸着度が反応速度と関連があり、またこれは白金-酸素間の結合力と密接な関連があるという点に着目し、白金-酸素間の結合力を推定できる白金の電子配列を調節した。
【0022】
白金-酸素間の吸着モデルは、以下の式1乃至3に示すように様々なモデルが提案されて、いずれのモデルにおいても、白金-酸素結合力が反応メカニズムに影響を与えていることが分かる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0023】
白金-酸素間の結合力が、反応メカニズムに、どのようにして影響を与え、また、触媒活性と如何なる関連があるかについては、今まで明確に知られていなかったが、本発明者らは、白金-酸素間の結合力を推定できる白金の電子配列を調節した結果、触媒活性を最適化できるようになり、本発明を完成した。
【0024】
本発明の触媒は、白金と遷移元素の合金で構成されており、白金の安定した電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく0.45以下であり、より好ましくは0.34乃至0.41、さらに好ましくは0.36乃至0.39である。5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が前記範囲に属する場合、触媒活性が非常に優秀になる効果がある。
【0025】
このような5dバンドオービタルのD-バンド空格子点はXASを利用して測定する。それについて簡単に説明すると、白金のXASを測定して対照群とし、測定結果から、試料の第1ピークの面積と対照群面積の差を下記数式1によって求めた値が、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点である(A.N.Mansour、J.R.Katzer、J.Catal.、1984、89、464)。 ここで、空格子点とは、結晶の格子点にあるべき原子が、欠けて生じた空位(空席)のことである。
[数式1]
D-バンド空格子点(hj)全体、試料=(1.0+Fd)(hj)、対照群(reference)
Fd=(△A3+1.11△A2)/(A3+1.11A2)r
△A2=(A2s−A2r)
△A3=(A3s−A3r)
【0026】
A2とA3は、L2とL3吸収エッジでのピーク面積であり、sは試料、rは対照群の空格子点であり、r=0.3である。
【0027】
このようなD-バンド空格子点の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点は、一般に用いられる白金触媒(白金担持カーボン、Pt/Cと記す)の場合に0.3であり、遷移元素が合金化される場合には値が変わるため、本発明では合金化程度を調節してD-バンド空格子点の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点を望む値に調節した。
【0028】
このようなD-バンド空格子点の状態は、白金原子と遷移金属原子間の結合力により変わることから、白金格子構造に遷移金属が置換される過程での合金化程度によって変わることができる。
【0029】
つまり、白金と遷移金属の合金化程度は、合金方法によって変わることがあるが、それはPt/Cの種類、遷移金属前駆体の種類、前駆体溶媒の種類と濃度、合金方法、熱処理温度と時間、ガス条件などによって変わることができる。
【0030】
次に、本発明の白金と遷移元素の合金触媒製造方法について説明する。
まず、白金と遷移元素前駆体を混合する。この時、白金は当該分野で通常の担体に支持されたものを用いる方が好ましい。それは白金使用量を減少させることができるためである。担体としては、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素を用いることが可能で、アルミナ、シリカなどの無機物微粒子を使用することもできる。
【0031】
担体に担持される白金を使用する場合には、市販のものを使用することができ、また、担体に白金を担持して製造使用することもできる。
【0032】
担体に白金を担持する工程は、当該分野において広く知られている内容であるので、本明細書で詳細な説明を省略しても、これについては当該分野に従事する人々に容易に分かることである。
【0033】
前記遷移元素としてはNi、Cr、CoまたはFeが好ましく、前駆体としてはハロゲン化合物、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、アミン類などあらゆる形態の化合物を使用可能であるが、その中でハロゲン化合物を用いることが好ましい。
【0034】
遷移元素前駆体は液状で使用して、この時の溶媒としては水、またはメタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコールを用いることができる。白金と遷移元素前駆体の混合比率は、(Pt:遷移元素)のモル比率を1:1乃至3:1にするのが好ましい。(Pt:遷移元素)のモル比率が、前記範囲内に収まらない場合には合金化が起こらない。
【0035】
好ましい混合工程は、液状遷移元素前駆体を担体に担持された白金に一滴ずつ滴下する方法である。
【0036】
この混合工程以降に、超音波洗浄で分散させて、約110℃で約1時間乾燥する乾燥工程を実施するのが好ましい。
【0037】
得られた混合物は500℃乃至1500℃、より好ましくは700乃至1100℃で熱処理を行い、白金と遷移元素の合金触媒を製造する。
【0038】
この熱処理温度が500℃より低い場合には合金化され難く、1500℃より高い場合には遷移金属の溶融温度に近づいて、不安定化するので、正確な比率の合金を製造し難いため、好ましくない。
【0039】
熱処理工程は還元雰囲気で実施することが好ましい。熱処理時の還元雰囲気は水素ガス、窒素ガスまたは水素と窒素の混合ガスを用いることができる。
【0040】
本発明による白金と遷移元素の合金触媒は、リン酸型燃料電池または高分子電解質型燃料電池などの酸を電解質とする燃料電池に有効利用できる。
【0041】
本発明の燃料電池システムは、電解質膜と、本発明の触媒層が形成されるカソード及びアノード電極を含む。
【0042】
カソード電極、アノード電極は、カーボンペーパ、カーボン布、カーボン不織布などの炭素基材に両電極用の触媒層が形成されたものである。両電極用の触媒は、共に本発明の白金系触媒を用いてもよいが、本発明の触媒はカソード触媒として使用されることが好ましい。
【0043】
炭素基材は、電気化学反応時の反応ガスを触媒層に拡散する役割をするので、ガス拡散層と呼ばれることもある。
【0044】
電解質膜の両側に配置されるアノード電極とカソード電極は、膜-電極アセンブリを形成し、膜-電極アセンブリの両側に流路チャネルが形成される導電性セパレータが配置され、単位セルを構成する。
【0045】
流路チャネルには、水素供給管に接続されてアノード電極に接する水素チャネルと、空気供給管に接続されてカソード電極に接する空気チャネルがあり、両チャネルを1枚のセパレータの表裏両面に形成してもよいが、2枚の別セパレータに形成して、両セパレータを背中合わせに組立てても良い。
【0046】
このような単位セルを少なくとも一つ以上積層してスタックを形成し、このスタックに燃料を供給する燃料供給源と酸素を供給する酸素供給源を連結して燃料電池システムを製造する。
【0047】
図12は本発明の燃料電池システム100の全体構成を示す概略図であり、図13は本発明の燃料電池システムのスタック130を示す分解斜視図である。
【0048】
図12と図13を参照すると、本発明の燃料電池システム100は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部110;混合燃料を改質して水素気体を発生する改質部120;燃料電池用触媒を含み、改質部から供給される水素気体が外部空気と電気化学反応を起こして電気エネルギーを発生するスタック130;及び外部空気を改質部120及びスタック130に供給する空気供給部140を含む。
【0049】
また、本発明の燃料電池システムのスタック130は、改質部120から供給される水素気体と、空気供給部から供給される外部空気の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セル131を備える。
【0050】
各々の単位セル131は、電気を発生する単位を意味し、水素気体と空気中の酸素を酸化/還元させる膜-電極アセンブリ132と、水素気体と空気を膜-電極アセンブリ132に供給するセパレータ133を含む。
【0051】
セパレータ133は、膜-電極アセンブリ132を中心に、その両側に配置される。この時、スタック130の最も外側に各々位置するセパレータを、特に端板133aと称することもある。
【0052】
膜-電極アセンブリ132は、両側面をなしているアノード電極とカソード電極の間に電解質膜を介した構造を有する。
【0053】
アノード電極は、セパレータ133を通して水素気体の供給を受ける部分で、酸化反応によって水素気体を電子と水素イオンに分離させる触媒層と、 水素ガスの円滑な移動のための気体拡散層で構成される。
【0054】
また、カソード電極は、セパレータ133を通して空気の供給を受ける部分で、還元反応によって空気中の酸素を吸着する白金系触媒層と、 酸素ガスの円滑な移動のため気体拡散層で構成される。
【0055】
そして、電解質膜は、厚さ50〜200μmの固体ポリマー電解質であって、アノード電極の触媒層で生成された水素イオンをカソード電極の触媒層に移動させるイオン交換の機能を有する。
【0056】
また、前記セパレータの中で一方の端板133aには、改質器から供給される水素気体を注入するためのパイプ状の第1供給管133a1と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管133a2が備えられ、他方の端板133aには複数の単位セル131で最終的に未反応になった残留水素気体を外部に排出するための第1排出管133a3と、単位セル131で最終的に未反応になった残留空気及び反応生成物である水分を外部に排出するための第2排出管133a4が備わる。
【0057】
以上の説明は本発明の1例にすぎず、本発明の燃料電池システムが、図12または図13の構成に限定されるものではない。
【0058】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明が下記の実施例に限られるわけではない。
[実施例1]
市販の炭素担体に担持された白金触媒(Pt/C:Johnson mattheyCo.製、炭素担体質量に対して白金が10重量%含まれている)にNiCl2(Aldrich扱い、無水品、純度99%)水溶液を含浸させ、Pt:Niのモル比を3:1にした。得られた含浸生成物を700℃で熱処理してPt-Ni合金触媒を製造した。
[実施例2]
熱処理温度を900℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同一条件で実施した。
[実施例3]
熱処理温度を1100℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同一条件で実施した。
[比較例1]
市販の白金触媒(Pt/C:Johnson matthey Co.製、10重量%)を無修正で使用した。
【0059】
実施例1乃至3及び比較例1の触媒は、大体30乃至150Åの粒子サイズを有することが分かった。
【0060】
実施例1乃至3及び比較例1によって製造された触媒をローリング法で炭素不織布に付着させて電極を製造し、水素基準電極対比900mvでの電流密度(質量活性度質量活性度)を、半電池で測定した。その結果を下記表1及び図1に示す。
【0061】
また、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点の測定結果も下記表1及び図1に示す。5dバンドオービタルのD-バンド空格子点は、実施例1乃至実施例3及び比較例1によって製造された触媒のXASを測定して、図2(L2エッジ)及び図3(L3エッジ)に示すスペクトルを得られ、試料の第1ピークの面積と対照群面積の差を数式1によって求めた。
【0062】
L2及びL3とは、原子核の周囲を取り巻く電子軌道群(殻)の中で、主量子数が2のL電子殻を電子軌道単位でさらに区分して、内側からL1、L2、L3という形式で示したもので、L電子殻の1番目、2番目、3番目の副殻を意味する。
【表1】
【0063】
表1で、白金の質量活性度質量活性度は、半電池テストを通して得られた電流値を触媒(Pt-Ni)重量で割り算した値である。
【0064】
また、Pt3/(Ni700℃)はPt:Niのモル比が3:1、熱処理温度が700℃であることを示す。
【0065】
表1及び図3に示したように、実施例1乃至3の触媒の質量活性度質量活性度が比較例1の質量活性度質量活性度より優れていることが分かり、特に実施例2乃至3の触媒は比較例1の質量活性度質量活性度のほぼ2倍を越える非常に優れた活性度を示すことが分かる。
[実施例4]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例1と同一条件で実施した。
[実施例5]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例2と同一条件で実施した。
[実施例6]
Pt:Niのモル比を1:1に変更したことを除いて、実施例3と同一条件で実施した。
【0066】
実施例4乃至6及び比較例1によって製造された触媒のXASを測定して、その結果を図4(L2エッジ)及び図5(L3エッジ)に示す。測定結果が図1に示した結果と類似しているので、実施例4乃至6の触媒の質量活性度質量活性度も優れていると予測できる。
[実施例7]
遷移元素をNiの代わりにCoに変更したことを除いて、実施例3と同一条件で実施した。
[実施例8]
遷移元素をNiの代わりにCrで変更したことを除いて、前記実施例3と同一条件で実施した。
[実施例9]
遷移元素をNiの代わりにFeに変更したことを除いて、前記実施例2と同一条件で実施した。
【0067】
実施例7によって製造された触媒のXASの測定結果を図6(L2エッジ)及び図7(L3エッジ)に示し、前記実施例8によって製造された触媒のXASを測定して、その結果を図8(L2エッジ)及び図9(L3エッジ)に示す。
【0068】
また、実施例9によって製造された触媒のXASの測定結果を図10(L2エッジ)及び図11(Lエエッジ)に示す。
【0069】
測定結果が図1に示された結果と類似しているので、実施例7乃至9の触媒質量活性度も優れていると予測できる。
【0070】
従って、本発明で用いた燃料電池用触媒は、非常に優れた質量活性度を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0071】
100 燃料電池システム
110 燃料供給部
120 改質部
130 スタック
131 単位セル
132 膜-電極アセンブリ
133 セパレータ
133a 端板
133a1 第1供給管
133a2 第2供給管
133a3 第1排出管
133a4 第2排出管
140 空気供給部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜の一方の面に配置された触媒層を含み、
前記触媒層は白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法であって、
前記合金触媒は白金の電子配列で、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点(空孔比)が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記白金の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が、0.34乃至0.41であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記遷移元素が、Ni、Cr、Co及びFeからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項4】
前記白金と遷移元素の合金触媒は、白金と遷移元素前駆体の混合比率を、白金と遷移元素のモル比が1:1乃至3:1になるように混合して得られた混合物を700℃乃至1100℃で熱処理して製造されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項5】
前記白金は、担体に担持されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項6】
高分子電解質膜;
前記高分子電解質膜の一方の面に位置して、触媒層がコーティングされたカソード電極を含む膜-電極アセンブリ;及び
前記膜-電極アセンブリの前記一方の面に密着配置された流路チャネルを有するセパレータを含んで構成される単位セルを一つ以上含み、
前記触媒層は、白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池システムの製造方法であって、
前記合金触媒は、白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池システムの製造方法。
【請求項7】
前記白金の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.34乃至0.41であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項8】
前記遷移元素が、Ni、Cr、Co及びFeからなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項9】
前記白金と遷移元素の合金触媒は、白金と遷移元素前駆体の混合比率を、白金と遷移元素のモル比が1:1乃至3:1になるように混合して;得られた混合物を700℃乃至1100℃で熱処理して製造されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項10】
前記白金は、担体に担持されることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項1】
高分子電解質膜の一方の面に配置された触媒層を含み、
前記触媒層は白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法であって、
前記合金触媒は白金の電子配列で、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点(空孔比)が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記白金の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が、0.34乃至0.41であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記遷移元素が、Ni、Cr、Co及びFeからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項4】
前記白金と遷移元素の合金触媒は、白金と遷移元素前駆体の混合比率を、白金と遷移元素のモル比が1:1乃至3:1になるように混合して得られた混合物を700℃乃至1100℃で熱処理して製造されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項5】
前記白金は、担体に担持されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池用膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項6】
高分子電解質膜;
前記高分子電解質膜の一方の面に位置して、触媒層がコーティングされたカソード電極を含む膜-電極アセンブリ;及び
前記膜-電極アセンブリの前記一方の面に密着配置された流路チャネルを有するセパレータを含んで構成される単位セルを一つ以上含み、
前記触媒層は、白金と遷移元素の合金触媒を含む燃料電池システムの製造方法であって、
前記合金触媒は、白金の電子配列において、5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.3より大きく、0.45以下となるように調整されることを特徴とする燃料電池システムの製造方法。
【請求項7】
前記白金の5dバンドオービタルのD-バンド空格子点が0.34乃至0.41であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項8】
前記遷移元素が、Ni、Cr、Co及びFeからなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項9】
前記白金と遷移元素の合金触媒は、白金と遷移元素前駆体の混合比率を、白金と遷移元素のモル比が1:1乃至3:1になるように混合して;得られた混合物を700℃乃至1100℃で熱処理して製造されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システムの製造方法。
【請求項10】
前記白金は、担体に担持されることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−117381(P2009−117381A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14695(P2009−14695)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2005−124269(P2005−124269)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2005−124269(P2005−124269)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
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