説明

燃料電池

【課題】セル積層体の積層方向に直交する方向においてエンドプレートと押圧手段との位置合わせを可能とする。
【解決手段】セル積層体22の積層方向の外側に配置されたエンドプレート16と、セル積層体22のエンドプレート16側に設けられるとともに、エンドプレート16に対してセル積層体22の積層方向に沿って移動する荷重調整ネジ50でセル積層体22に与える圧縮荷重が調整される押圧手段27とを有し、荷重調整ネジ50と押圧手段27との係合部28,51が、エンドプレート16及び押圧手段27のうちの少なくともいずれか一方に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、特にその組み立て精度向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とした燃料電池自動車等が注目されている。
【0003】
このような燃料電池は、通常、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電するセルを所要数積層したセル積層体と、このセル積層体の積層方向の外側に配置されたエンドプレートと、このエンドプレートに対してセル積層体の積層方向に沿って移動する荷重調整ネジと、セル積層体のエンドプレート側に設けられるとともに、荷重調整ネジでセル積層体に与える圧縮荷重が調整される押圧手段(スプリングボックス、皿バネあるいはプレッシャプレート等)とを有する燃料電池スタックとして構成されている。
【0004】
このようなスタック構造の燃料電池において、エンドプレートに多角形状の貫通孔を形成し、この貫通孔に嵌合することで回転が規制された回転規制部材に荷重調整ネジを螺合させた構造のものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−171926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池には、荷重調整ネジ及び押圧手段に、互いに荷重調整ネジの径方向における位置を合わせて係合する係合部を設けたものがあるが、このような燃料電池においては、荷重調整ネジの径方向におけるエンドプレートと押圧手段との位置関係が係合部の係合で決められてしまうため、製造誤差等があった場合に、荷重調整ネジの径方向つまりセル積層体の積層方向に直交する方向(セル面内方向)でのエンドプレートと押圧手段との位置合わせが実質的に困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、セル積層体の積層方向に直交する方向においてエンドプレートと押圧手段との位置合わせが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池は、複数のセルが積層されてなるセル積層体と、前記セル積層体の積層方向の外側に配置されたエンドプレートと、前記エンドプレートに対して前記セル積層体の積層方向に沿って移動する荷重調整ネジと、前記セル積層体の前記エンドプレート側に設けられるとともに、前記荷重調整ネジで前記セル積層体に与える圧縮荷重が調整される押圧手段とを有する燃料電池において、前記荷重調整ネジ及び前記押圧手段の互いに前記荷重調整ネジの径方向における位置を合わせて係合する係合部が、前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能に設けられている。
【0008】
かかる構成とすることによって、エンドプレート及び押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して、荷重調整ネジ及び押圧手段の互いに位置を合わせて係合する係合部を荷重調整ネジの径方向に移動させれば、荷重調整ネジの径方向つまりセル積層体の積層方向に直交する方向においてエンドプレートと押圧手段との位置を合わせことができる。
【0009】
この場合、前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能で且つ360度以上の回転が規制された介在部材を設けるのが好ましい。
【0010】
また、前記荷重調整ネジが複数設けられている場合に、これら荷重調整ネジのそれぞれと前記押圧手段との各係合部が前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能に設けられているのが好ましい。
【0011】
さらに、前記押圧手段が、前記係合部として凹部又は凸部を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷重調整ネジ及び押圧手段の互いに荷重調整ネジの径方向における位置を合わせて係合する係合部が、エンドプレート及び押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して荷重調整ネジの径方向に移動可能であるため、荷重調整ネジの径方向つまりセル積層体の積層方向に直交する方向においてエンドプレートと押圧手段との位置合わせが可能となり、組み立て精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る燃料電池の第1実施形態を図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、燃料電池10を示すものである。この燃料電池10は、燃料電池自動車の車載発電システムや船舶、航空機、電車あるいは歩行ロボット等のあらゆる移動体用の発電システム、さらには、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システム等に適用可能であるが、具体的には自動車用となっている。
【0015】
燃料電池10は、燃料電池スタック11と、この燃料電池スタック11の外側を覆う合成樹脂等の絶縁材料からなるスタックケース12とを有している。なお、スタックケース12は、合成樹脂等の絶縁材料で被覆された金属からなる場合もある。
【0016】
燃料電池スタック11は、一対の矩形状のエンドプレート15,16同士を互いの外縁部同士をテンションプレート17で連結して外側部分が構成されており、これらエンドプレート15,16及びテンションプレート17は例えばジュラルミン等で形成されている。
【0017】
また、燃料電池スタック11は、一方のエンドプレート15の他方のエンドプレート16側に、一方のエンドプレート15側から順に、矩形状の絶縁プレート18、ターミナルプレート19及びカバープレート20が配置され、このカバープレート20の他方のエンドプレート16の側に、燃料ガス及び酸化ガスの供給を受けて発電する平面視矩形状のセル21を所要数積層してなるセル積層体22がセル21の積層方向をエンドプレート15,16同士を結ぶ方向にして配置されている。
【0018】
さらに、燃料電池スタック11は、セル積層体22の他方のエンドプレート16の側に、セル積層体22側から順に、矩形状のカバープレート24、ターミナルプレート25及び絶縁プレート26が配置され、この絶縁プレート26の他方のエンドプレート16側に、平面視矩形状のスプリングボックス(押圧手段)27が配置されている。
【0019】
スプリングボックス27には、図示略の複数のコイルスプリングが設けられており、これらのコイルスプリングを介して絶縁プレート26つまりセル積層体22を積層方向に押圧するようになっている。また、スプリングボックス27には、その所定の複数箇所、具体的には二箇所の位置に、球面状をなしてセル積層体22とは反対側に突出する凸部(係合部)28が形成されている。これらの凸部28はスプリングボックス27の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0020】
そして、第1実施形態においては、上記した他方のエンドプレート16が、図2にも示すように、テンションプレート17に連結される矩形状のエンドプレート本体30と、このエンドプレート本体30のテンションプレート17への連結位置よりも内側の範囲に設けられる所定の複数枚、具体的には二枚のストッパ(介在部材)31とで構成されている。
【0021】
エンドプレート本体30には、その長さ方向に所定の間隔をあけて複数の貫通穴32が厚さ方向に貫通して形成されている。これら貫通穴32,32は、同形状をなしており、それぞれ、スプリングボックス27とは反対側にあってスプリングボックス27とは反対側から見て円形状をなす挿入穴部33と、スプリングボックス27側にあって挿入穴部33より大径でスプリングボックス27側から見て円形状をなすように一定深さで凹む座ぐり穴部34と、これら挿入穴部33と座ぐり穴部34との境界位置にあって座ぐり穴部34側が大径となるテーパ状のテーパ穴部35とを有している。同じ一つの貫通穴32を構成する挿入穴部33、座ぐり穴部34及びテーパ穴部35は同軸をなしている。
【0022】
また、エンドプレート本体30には、各貫通穴32,32のそれぞれの座ぐり穴部34の底面34aに、挿入穴部33と平行に回転規制穴部36が形成されている。ここで、各回転規制穴部36は、軸線方向から見て円形状をなしており、いずれも、両挿入穴部33,33の中心を通る直線上に形成されている。
【0023】
複数のストッパ31,31は、同形状をなしており、それぞれ、内側に雌ネジ40が形成された円筒状のボス部41と、このボス部41の軸線方向の中間位置から全周にわたって半径方向外側に延出する略円板状のフランジ部42とを有している。フランジ部42が軸線方向の中間位置に形成されることで、ボス部41は、フランジ部42の軸線方向一側から突出する円筒部43とフランジ部42の軸線方向逆側から突出する円筒部44とを有している。
【0024】
また、ストッパ31は、フランジ部42の軸線方向一側とここから突出する円筒部43との境界位置に、フランジ部42側が大径のテーパ部45が形成されており、フランジ部42の軸線方向逆側とここから突出する円筒部44との境界位置に、フランジ部42側が大径のテーパ部46が形成されている。同じ一つのストッパ31を構成するボス部41、フランジ部42、テーパ部45及びテーパ部46は同軸をなしている。ここで、フランジ部42を補強するために円筒部44から放射状にリブを形成しても良い。
【0025】
また、ストッパ31には、フランジ部42から軸線方向の円筒部43側にこれと平行に突出する円柱状の回転規制ピン部48が形成されている。ボス部41の中心と回転規制ピン部48の中心との距離は、エンドプレート本体30における貫通穴32の中心と回転規制穴部36の中心との距離と等しくされている。
【0026】
このようなストッパ31,31がそれぞれエンドプレート本体30に、ボス部41の一方の円筒部43を挿入穴部33に、テーパ部45をテーパ穴部35に、フランジ部42を座ぐり穴部34にそれぞれ挿入しつつ、回転規制ピン部48を回転規制穴部36に挿入することで、フランジ部42を座ぐり穴部34の底面34aに当接させることになるが、このとき、挿入穴部33が円筒部43よりも大径で、テーパ穴部35がテーパ部45よりも大径で、座ぐり穴部34がフランジ部42よりも大径で、回転規制穴部36が回転規制ピン部48よりも大径となっている。
【0027】
その結果、ストッパ31は、エンドプレート本体30に対して、雌ネジ40の径方向つまりこれに螺合する後述の荷重調整ネジ50の径方向に移動可能な遊びを有しており、しかも360度全ての径方向に移動可能となっている。その結果、これに螺合する荷重調整ネジ50も、エンドプレート16に対して径方向に移動可能となっており、しかも360度全ての径方向に移動可能となっている。
【0028】
各ストッパ31の雌ネジ40には上記した荷重調整ネジ50がそれぞれ螺合されており、これらの荷重調整ネジ50がそれぞれ、スプリングボックス27の一対一で対応する凸部28に当接する。ここで、荷重調整ネジ50には、凸部28と当接する側に、凸部28と荷重調整ネジ50の径方向における位置を合わせて係合する球面状の凹部(係合部)51が同軸に形成されており、凹部61とは反対側に六角ボルト等の工具を嵌合させる工具嵌合部52が同軸に形成されている。
【0029】
これら荷重調整ネジ50は、この工具嵌合部52に嵌合する工具を介して回転させられることで、エンドプレート16に対してその軸線方向、つまりセル積層体22の積層方向に沿って移動することになり、その結果、スプリングボックス27のセル積層体22への圧縮荷重を調整することになる。
【0030】
ここで、この荷重調整ネジ50の回転時に、ストッパ31も連れ回りしようとするが、その回転規制ピン部48がエンドプレート本体30の回転規制穴部36の内壁面に当接することでエンドプレート本体30に対する回転が規制されることになり、スプリングボックス27の荷重が高くなると、エンドプレート本体30の座ぐり穴部34の底面34aとフランジ部42との摩擦でも回転が規制されることになって、荷重調整ネジ50のみがエンドプレート本体30に対して回転する。
【0031】
また、スプリングボックス27による圧縮荷重が小さい状態では、荷重調整ネジ50の締め込みによる荷重のバランスで荷重調整ネジ50の球面状の凹部51とこれに係合するスプリングボックス27の球面状の凸部28とが自動的に調心され、この調心を可能とするようにエンドプレート本体30に対してストッパ31が互いの当接面で摺動しつつ荷重調整ネジ50とともに荷重調整ネジ50の径方向に移動することになる。
【0032】
言い換えれば、互いに荷重調整ネジ50の径方向における中心位置を合わせて係合する荷重調整ネジ50の凹部51とスプリングボックス27の凸部28とが、ストッパ31とともに、エンドプレート16に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能となっている。
【0033】
より具体的には、組み立て時に、エンドプレート16のエンドプレート本体30とスプリングボックス27とが位置基準(拘束位置)Xで位置を合わせた状態で荷重調整ネジ50が締め込まれることになるが、製造誤差等で荷重調整ネジ50の凹部51の位置とスプリングボックス27の凸部28の位置とが当初一致していなくても、荷重調整ネジ50がストッパ31とともにエンドプレート本体30に対し適宜摺動することで、エンドプレート本体30とスプリングボックス27とが位置を合わせた状態のまま荷重調整ネジ50がスプリングボックス27に対する位置を合わせることになる。
【0034】
このように荷重調整ネジ50が径方向に移動可能でなければ、エンドプレートとスプリングボックスとの位置がずれてしまうことになり、また、場合によっては複数の荷重調整ネジが対応するスプリングボックスの複数の凸部に適正に係合できなくなってしまうのであるが、このような事象を生じることがないのである。
【0035】
以上に述べた第1実施形態によれば、エンドプレート16に対して荷重調整ネジ50が径方向に移動可能であり、その結果、互いに荷重調整ネジ50の径方向における位置を合わせて係合する荷重調整ネジ50の凹部51とスプリングボックス27の凸部28とが、エンドプレート16に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能であるため、荷重調整ネジ50の径方向つまりセル積層体22の積層方向に直交する方向においてエンドプレート16とスプリングボックス27との位置合わせが可能となり、組み立て精度を向上できる。
【0036】
しかも、エンドプレート16に対してその一部を構成するストッパ31を荷重調整ネジ50の径方向に移動可能に設けているため、簡素な構造でエンドプレート16とスプリングボックス27との位置合わせが可能となる。加えて、エンドプレート16に対してストッパ31の回転が規制されているため、ストッパ31が荷重調整ネジ50と連れ回りしてしまうことはなく、良好に荷重調整ネジ50を軸線方向に移動させることができる。
【0037】
ここで、エンドプレート本体30に対してストッパ31が360度以上の回転が規制されていれば良く、言い換えれば360未満の範囲で回動を許容できる。勿論、360度近傍までの回動を許容する必要はなく、好ましくはエンドプレート本体30に対しストッパ31の上記摺動を可能とする最小限の回動を許容するのが良い。さらには、エンドプレート本体30に回転規制ピン部を形成し、ストッパ31のフランジ部42にこれを挿通させる回転規制穴部を形成しても良い。
【0038】
また、荷重調整ネジ50が複数設けられているが、互いに係合する荷重調整ネジ50の凹部51とスプリングボックス27の凸部28との組が、それぞれ、エンドプレート16に対して荷重調整ネジ50の径方向に個別に移動可能に設けられており、具体的には、複数の荷重調整ネジ50が、それぞれエンドプレート16に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能に設けられているため、上記のように、エンドプレート16とスプリングボックス27との位置を合わせた状態のまま複数の荷重調整ネジ50でスプリングボックス27の発生荷重を調整できる。
【0039】
さらに、荷重調整ネジ50には凹部51が形成され、スプリングボックス27には荷重調整ネジ50の凹部51と係合する凸部28が設けられているため、係合後はこれらの位置ずれが防止されることになり、スプリングボックス27に適正に荷重を発生させることができる。勿論、これとは逆に、荷重調整ネジ50に凸部を形成し、スプリングボックス27にこれに係合する凹部を形成しても良い。
【0040】
なお、上記第1実施形態では、エンドプレート16にストッパ31のフランジ部42よりも大径の座ぐり穴部34を形成し、この座ぐり穴部34内にストッパ31のフランジ部42を挿入したが、座ぐり穴部34を設けず、フランジ部42を直接エンドプレート16に当接させる構造としても良い。
【0041】
次に、本発明に係る燃料電池の第2実施形態を主に図3を参照しつつ第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し説明は略す。
【0042】
第2実施形態においては、第1実施形態のようにエンドプレート16に対し荷重調整ネジ50が径方向に移動可能に設けられているのではなく、スプリングボックス27に対し荷重調整ネジ50が径方向に移動可能に設けられている。
【0043】
つまり、まずエンドプレート16に直接複数、具体的には二箇所の雌ネジ40が形成されており、これら雌ネジ40,40にそれぞれ上記した荷重調整ネジ50が螺合されている。なお、エンドプレート16に直接雌ネジ40を形成するのではなく、別の部材に雌ネジ40を形成し、この部材をエンドプレート16に対し雌ネジ40の径方向に移動不可に取り付けても良い。
【0044】
他方、スプリングボックス27は、第1実施形態のスプリングボックスのエンドプレート16側に複数の同形状の収納凹部55を形成した形状のスプリングボックス本体56を有している。これら収納凹部55は、エンドプレート16側から見て円形状をなしており、その底面55aには中心から位置をずらして回転規制穴部57が中心軸線と平行に形成されている。各回転規制穴部57もエンドプレート16側から見て円形状をなしている。
【0045】
そして、スプリングボックス27は、各収納凹部55に収納される同形状の複数のストッパ(介在部材)60を有している。これらのストッパ60は円板状をなしており、エンドプレート16側の中心位置に第1実施形態と同様の凸部28が形成され、凸部28とは反対側に、中心からずれて円柱状の回転規制ピン部61が中心軸線と平行に形成されている。ストッパ60の中心から回転規制ピン部61の中心までの距離と、収納凹部55の中心から回転規制穴部57の中心までの距離とは等しくされている。
【0046】
第2実施形態においては、収納凹部55がストッパ60よりも大径で、回転規制穴部57が回転規制ピン部61よりも大径となっている。その結果、ストッパ60は、スプリングボックス本体56に対して、荷重調整ネジ50の径方向に移動可能な遊びを有しており、しかも360度全ての径方向に移動可能となっている。
【0047】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、組み立て時に、エンドプレート16とスプリングボックス27のスプリングボックス本体56とが位置を合わせた状態で荷重調整ネジ50が締め込まれることになるが、スプリングボックス27による圧縮荷重が小さい状態では、荷重調整ネジ50の締め込みによる荷重のバランスで荷重調整ネジ50の球面状の凹部51とこれに係合するスプリングボックス27の球面状の凸部28とが自動的に調心され、この調心を可能とするようにスプリングボックス本体56に対してストッパ60が摺動し荷重調整ネジ50の径方向に移動することになる。
【0048】
言い換えれば、互いに中心位置を合わせて係合する荷重調整ネジ50の凹部51とスプリングボックス27の凸部28とが、ストッパ60とともにスプリングボックス27のスプリングボックス本体56に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能となっている。よって、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
なお、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせても良い。つまり、荷重調整ネジ50とスプリングボックス27の互いに位置を合わせて係合する凹部51及び凸部28を、エンドプレート16及びスプリングボックス27の両方に対して荷重調整ネジ50の径方向に移動可能に設けても良い。ただし、エンドプレート16をエンドプレート本体30と移動可能なストッパ31とに分けて、エンドプレート16に対して、互いに係合する凹部51及び凸部28を移動させる第1実施形態が、製造コスト等の観点からより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る燃料電池の第1実施形態を示す正断面図である。
【図2】同実施形態のストッパ、エンドプレート及び荷重調整ネジを示す平面図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の第2実施形態を示す部分正断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…燃料電池、11…燃料電池スタック、16…エンドプレート、21…セル、22…セル積層体、27…スプリングボックス(押圧手段)、28…凸部(係合部)、30…エンドプレート本体、31…ストッパ(介在部材)、50…荷重調整ネジ、51…凹部(係合部)、60…ストッパ(介在部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが積層されてなるセル積層体と、前記セル積層体の積層方向の外側に配置されたエンドプレートと、前記エンドプレートに対して前記セル積層体の積層方向に沿って移動する荷重調整ネジと、前記セル積層体の前記エンドプレート側に設けられるとともに、前記荷重調整ネジで前記セル積層体に与える圧縮荷重が調整される押圧手段とを有する燃料電池において、
前記荷重調整ネジ及び前記押圧手段の互いに前記荷重調整ネジの径方向における位置を合わせて係合する係合部が、前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能に設けられている燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能で且つ360度以上の回転が規制された介在部材を設けた燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池において、
前記荷重調整ネジが複数設けられており、これら荷重調整ネジのそれぞれと前記押圧手段との前記各係合部が前記エンドプレート及び前記押圧手段のうちの少なくともいずれか一方に対して前記荷重調整ネジの径方向に移動可能に設けられている燃料電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池において、
前記押圧手段が、前記係合部として凹部又は凸部を有する燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−4307(P2008−4307A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170522(P2006−170522)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】