説明

燃料電池

【課題】膜電極接合体の均一な加圧を可能とするとともに、加工性の向上を可能とし、安定して十分な出力が得られる燃料電池を提供することを目的とする。
【解決手段】アノード13とカソード16との間に電解質膜17を挟持した構成の膜電極接合体2と、膜電極接合体のアノード側に配置されアノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構3と、膜電極接合体のカソード側に配置され折り曲げ加工によって燃料供給機構に締結されたカバープレート21と、膜電極接合体とカバープレートとの間に配置されカバープレートより高い剛性の剛性部材40と、を備えたことを特徴とする燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体燃料を用いた燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気(特に酸素)を供給するだけで発電することができ、燃料を補給することにより連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池は、小型化により携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムとなりえる。
【0003】
特に、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0004】
例えば、特許文献1によれば、燃料収容部のフランジ部に膜電極接合体を重ね、膜電極接合体の空気極側から金属製のカバープレートを取り付けるとともにカバープレートの周縁部を膜電極接合体の外周、フランジ部の外周及び背面周縁部に沿って折り曲げ、膜電極接合体及びフランジ部をカバープレートの周縁部で挟みつけることにより、燃料収容部を膜電極接合体に対して固定する構造が提案されている。
【0005】
また、特許文献2によれば、カバープレートの端部を折り曲げて燃料供給部にかしめる構造と、カバープレート及び燃料供給部を締結固定する構造とを組み合わせた構成が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3によれば、集電体を膜電極接合体に押し付ける押圧板として、燃料極支持板とフロントカバーとを備えた構成が開示されている。
【0007】
燃料電池において、発電性能を維持するためには、積層された複数のDMFC構成部品が全面にわたって均一且つ適度な圧力で加圧された状態で固定されている必要がある。
【0008】
固定手法として、ネジ止めあるいはリベット継手があるが、これらの手法を適用する場合には、ネジ類が貫通する貫通孔を確保する必要がある。このため、体積効率及び組立作業効率の観点から、燃料電池の全周にわたってこれらの手法を適用することは望ましくない。一方、板材を折り曲げ加工により締結する手法は、体積効率及び作業効率ともに適している。しかしながら、折り曲げ加工が可能な板材は剛性が低い。このため、膜電極接合体から離れる方向に膨らむような撓みが生じやすく、加圧が不十分となるとともに面内で圧力が不均一となり、発電性能の低下を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/120966号パンフレット
【特許文献2】特開2008−218054号公報
【特許文献3】特開2008−226486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、膜電極接合体の均一な加圧を可能とするとともに、加工性の向上を可能とし、安定して十分な出力が得られる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一態様によれば、
アノードとカソードとの間に電解質膜を挟持した構成の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記膜電極接合体のカソード側に配置され、折り曲げ加工によって前記燃料供給機構に締結されたカバープレートと、
前記膜電極接合体と前記カバープレートとの間に配置され、前記カバープレートより高い剛性の剛性部材と、
を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、膜電極接合体の均一な加圧を可能とするとともに、加工性の向上を可能とし、安定して十分な出力が得られる燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る燃料電池のカソード側の外観を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した燃料電池を第1方向に沿って切断した断面構造を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図1に示した燃料電池を第2方向に沿って切断した断面構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、図1に示した燃料電池に適用可能な燃料供給部を構成する容器の外観を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施例の燃料電池の概略断面図である。
【図6】図6は、比較例1の燃料電池の概略断面図である。
【図7】図7は、比較例2の燃料電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、この実施の形態に係る燃料電池(DMFC)1のカソード側の外観を示す平面図である。
【0016】
この燃料電池1は、矩形平板状に形成されている。図1に示す平面図では、燃料電池1は、長方形状であり、第1方向Xに沿って延びた一対の長辺L1及び長辺L2と、第1方向Xに直交する第2方向Yに沿って延びた一対の短辺S1及び短辺S2と、を有している。
【0017】
また、燃料電池1のカソード側の表面には、カバープレート21が配置されている。カバープレート21は、外観が略矩形状のものであり、例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている。このカバープレート21には、主として酸化剤である空気の取り込みを可能とする複数の開口部(貫通孔)21Aが形成されている。
【0018】
図2は、図1に示した燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を示す図であり、図3は、図1に示した燃料電池1を第2方向Yに沿って切断した断面を示す図である。
【0019】
燃料電池1は、起電部を構成する膜電極接合体(MEA)2、及び、膜電極接合体2に燃料を供給する燃料供給機構3を備えている。
【0020】
すなわち、膜電極接合体2は、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とが積層されたアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とが積層されたカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード13のアノード触媒層11とカソード16のカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17と、を備えて構成されている。このような膜電極接合体2は、集電体18によって挟持されている。
【0021】
この実施の形態においては、図3に示すように、膜電極接合体2は、単一の電解質膜17における一方の面17Aの上に間隔をおいて配置された複数のアノード13と、電解質膜17における他方の面17Bの上においてアノード13のそれぞれと間隔をおいて配置された複数のカソード16とを有している。
【0022】
これらのアノード13とカソード16との各組み合わせは、それぞれ電解質膜17を挟持し、単セルを構成している。ここでは、単セルのそれぞれは、同一平面上において、第1方向Xに沿って延在し、第2方向Yに間隔をおいて並んで配置されている。なお、膜電極接合体2の構造は、この例に限らず他の構造であっても良い。
【0023】
ここに示した例では、膜電極接合体2は、単一の電解質膜17の一方の面17Aの上に配置された4個のアノード131〜134と、電解質膜17の他方の面17Bに配置された4個のカソード161〜164と、を有している。アノード131とカソード161とがそれぞれ対向するように配置されており、1組の単セルを構成している。同様に、アノード132とカソード162とがそれぞれ対向するように配置され、アノード133とカソード163とがそれぞれ対向するように配置され、アノード134とカソード164とがそれぞれ対向するように配置されており、4組の単セルが同一平面上に配列されている。各単セルは、集電体18によって電気的に直列に接続されている。
【0024】
集電体18のアノード集電体A1はアノード131のアノードガス拡散層12に積層され、同様に、アノード集電体A2はアノード132のアノードガス拡散層12に積層され、アノード集電体A3はアノード133のアノードガス拡散層12に積層され、アノード集電体A4はアノード134のアノードガス拡散層12に積層されている。
【0025】
集電体18のカソード集電体Cはカソード161のカソードガス拡散層15に積層され、同様に、カソード集電体C2はカソード162のカソードガス拡散層15に積層され、カソード集電体C3はカソード163のカソードガス拡散層15に積層され、カソード集電体C4はカソード164のカソードガス拡散層15に積層されている。
【0026】
膜電極接合体2は、電解質膜17のアノード側及びカソード側にそれぞれ配置されたゴム製のOリング等のシール部材19によってシールされている。これにより、膜電極接合体2からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。
【0027】
膜電極接合体2のカソード16側には、絶縁材料によって形成された板状体20が配置されている。この板状体20は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体20は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カソード触媒層14への空気の取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。
【0028】
上述した膜電極接合体2のアノード13側には、燃料供給機構3が配置されている。つまり、膜電極接合体2は、アノード側に配置された燃料供給機構3とカソード側に配置されたカバープレート21との間に配置されている。
【0029】
燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード13に対して燃料を供給するように構成されているが、特に、特定の構成に限定されるものではない。以下に、燃料供給機構3の一例について説明する。
【0030】
燃料供給機構3は、向かい合う膜電極接合体2のアノード13の面方向に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料供給部3Xを備えている。この燃料供給部3Xは、箱状に形成された容器30及び容器30の底面35に配置された燃料分配板31を備えている。このような燃料供給機構3は、液体燃料を収容する燃料収容部4と流路5を介して接続されている。
【0031】
容器30については、後に詳細に説明するが、燃料を導入するための燃料導入口30Aが側壁36Aに形成されている。この燃料導入口30Aは、燃料収容部4に繋がる流路5に接続されている。
【0032】
燃料分配板31は、1つの燃料注入口32と、複数の燃料排出口33とを有しており、細管34のような燃料通路を介して燃料注入口32と各燃料排出口33とを接続した構成である。燃料注入口32は、燃料導入口30Aと直接接続されているが、他の燃料通路を介して接続されていても良い。の燃料排出口33は、膜電極接合体2のアノード13に対向している。
【0033】
燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料は、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料が収容される。
【0034】
さらに、燃料供給機構3において、燃料収容部4に繋がる流路5、あるいは、燃料導入口30Aと燃料注入口32との間の燃料通路には、ポンプ6が介在していても良い。ポンプ6は、燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給部3Xに液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。燃料供給部3Xから膜電極接合体2に供給された燃料は、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。
【0035】
ポンプ6の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能なものが好ましい。
【0036】
この実施の形態の燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ6を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。図1に示す燃料電池1は、例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
【0037】
また、燃料供給機構3において、ポンプ6と直列に燃料遮断バルブを配置してもよい。また、燃料収容部4や流路5には、燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを装着してもよい。
【0038】
上述したように、燃料供給部3Xから排出された燃料は、膜電極接合体2のアノード13に供給される。膜電極接合体2内において、燃料は、アノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
【0039】
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は、集電体18を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体18を経由してカソード16に導かれる。(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には、酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
【0040】
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせるとともに、膜電極接合体2の電極全体に均一に燃料を供給し、電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。
【0041】
図4は、燃料供給部3Xを構成する容器30の外観を示す斜視図である。容器30は、第1方向Xに長い長方形状の底面35と、この底面35の四方から立ち上がった側壁36A乃至36Dと、を有している。より具体的には、側壁36Aは、燃料電池1の短辺S1に沿って延在している。側壁36Bは、燃料電池1の短辺S2に沿って延在している。側壁36Cは、燃料電池1の長辺L1に沿って延在している。側壁36Dは、燃料電池1の長辺L2に沿って延在している。これらの側壁36A乃至36Dの高さは、実質的に同一である。
【0042】
側壁36Aの側面のほぼ中央(つまり、短辺S1の中点付近)には、燃料導入口30Aが形成されている。また、図4に示した例では、側壁36Aには、高さ方向に貫通した複数の貫通孔H1が形成されている。これらの貫通孔H1は、燃料導入口30Aを避けて形成されている。この燃料導入口30Aには、燃料収容部に繋がる流路が接続される。
【0043】
側壁36Bには、高さ方向に貫通した複数の貫通孔H2が形成されている。側壁36C及び側壁36Dは、側壁36A及び側壁36Bよりも小さな幅に形成され、貫通孔は形成されていない。
【0044】
このような容器30は、例えば樹脂材料を用いて成型することによって形成されている。
【0045】
この実施の形態においては、図2及び図3に示したように、燃料電池1は、膜電極接合体2とカバープレート21との間に配置された剛性部材40を備えている。この剛性部材40は、カバープレート21より高い剛性を有している。このような剛性部材40は、例えば平板状に形成され、膜電極接合体2の上に配置された板状体20に重ねられている。また、剛性部材40の周辺部は、容器30の側壁36A乃至36Dのそれぞれの上に重なっている。つまり、剛性部材40は、燃料供給機構3との間で膜電極接合体2を保持している。
【0046】
カバープレート21は、上述した容器30を備えた燃料供給機構3との間に膜電極接合体2を保持した剛性部材40に重なり、燃料供給機構3と締結されている。特に、燃料電池1の小型化あるいは組立作業性の改善を図る上では、カバープレート21は、燃料電池1の少なくとも1辺、もしくは、対向する2辺については、折り曲げ加工(カシメ)により燃料供給機構3と締結されることが望ましい。
【0047】
図4に示した容器30を適用する場合、燃料電池1の長辺L1及び長辺L2においては、カバープレート21は、折り曲げ加工により燃料供給機構3を構成する容器30と締結されている。つまり、長辺L1及び長辺L2に沿ったカバープレート21の端部は、膜電極接合体2の外周、容器30の側壁36C及び側壁36Dに沿ってそれぞれ折り曲げられ、さらに、容器30の背面側に折り曲げられる。
【0048】
また、短辺S1及び短辺S2においては、カバープレート21は、ネジ止めあるいはリベット継手などの手法により容器30と締結されている。つまり、短辺S1及び短辺S2に沿ったカバープレート21の端部は、容器30の側壁36A及び側壁36Bにそれぞれ重ねられ、貫通孔H1及びH2を利用して、ネジ止めまたはリベット継手により締結されている。なお、剛性部材40についても、容器30の側壁36A及び側壁36Bに重なる位置に貫通孔H1及びH2とそれぞれ連通する貫通孔が形成されており、ネジ止めまたはリベット継手によりカバープレート21とともに容器30に締結されている。
【0049】
このような構成によれば、比較的剛性が低い材料つまり折り曲げ加工が容易な材料を用いてカバープレート21を形成し、カバープレート21よりも剛性が高い材料を用いて剛性部材40を形成している。そして、剛性部材40によって燃料供給機構3との間に積層された複数のDMFCの構成部品を保持した状態で、剛性部材40を覆うようにカバープレート21を取り付け、カバープレート21の端部を折り曲げ加工により燃料供給機構3と締結している。
【0050】
これにより、剛性部材40は、カバープレート21により適度に加圧される。このため、剛性部材40は、膜電極接合体2を含むDMFC構成部品を全面にわたって均一且つ適度な圧力で加圧する。カバープレート21が燃料供給機構3に締結されているため、剛性部材40による加圧状態が維持される。
【0051】
したがって、締結のための加工性の向上を可能としつつ、膜電極接合体2を均一且つ適度に加圧することができる。このため、安定して十分な出力が得られる燃料電池1を提供できる。また、たとえカバープレート21が折り曲げ加工によってその中央部付近が剛性部材40から離間する方向に撓んだとしても、カバープレート21の周辺部で剛性部材40を押圧している限り、剛性部材40によって均一且つ適度に膜電極接合体2を加圧した状態を維持することができる。
【0052】
なお、カバープレート21は、少なくとも一辺で容器30に対して折り曲げ加工により締結されることが望ましく、燃料電池1の4辺について、折り曲げ加工により燃料供給機構3に締結しても良い。
【0053】
また、折り曲げ加工が困難な構成、あるいは、折り曲げ加工よりも締結強度を必要とする場合には、カバープレート21は、少なくとも一辺で容器30に対して、ネジ止めまたはリベット継手により締結されても良い。
【0054】
上述した剛性部材40は、カバープレート21の開口部21Aに連通した開口部(貫通孔)40Aを有している。開口部40Aは、開口部21Aと略同一の形状で且つ同一の間隔で形成されている。
【0055】
このような構成によれば、剛性部材40の開口部40A及びカバープレート21の開口部21Aにより、燃料電池1のカソード側の通気性が確保されている。このため、発電に必要な酸素の取り込み及び発電に伴って生成されたガスの排出が阻害されず、燃料電池1の発電に適した環境に維持することが可能となる。
【0056】
上述した燃料供給機構3は、その剛性がカバープレート21より高くなるように形成されている。ここでは、燃料供給機構3のうち、剛性部材40との間で膜電極接合体2を含むDMFC構成部品を挟持する燃料分配板31及び容器30を合わせた総合的な剛性がカバープレート21よりも高くなるように形成されている。
【0057】
すなわち、例えば燃料分配板31及び容器30の剛性が低い場合には、カバープレート21との締結により撓んでしまうおそれがある。つまり、膜電極接合体2を含むDMFC構成部品は、相互を密着した状態を維持する必要があり、比較的剛性の高い一対の部材で面状に挟持することが望ましい。したがって、剛性部材40のみならず、燃料供給機構3の剛性もカバープレート21より高いことが望ましい。
【0058】
上述した剛性部材40は、単一の板材によって構成されている。ここでは、例えば、剛性部材40は、比較的厚板のステンレス鋼(SUS)によって形成されているが、これに限定されるものではない。
【0059】
なお、剛性部材40は、2枚以上の板材を積層することによって構成されても良い。すなわち、比較的低剛性の薄い板材を複数枚積層した構成においても、剛性部材40として総合的な剛性がカバープレート21よりも高く形成されていれば良い。
【0060】
なお、ここでの剛性とは、以下の方法によって定義されるものである。
【0061】
まず、剛性部材およびカバープレートの端部(端部から平面方向他端までの距離の10%以下の位置)を固定し、それらの平面における中央部をそれぞれ押下し、中央部が1mm変位するのに要した荷重を測定する。その1mm変位するのに要した荷重が大きい方が剛性が高いと判断される。なお、カバープレートの端部が折り曲げられている場合には、折り曲げられた部分を端部とする。
【0062】
一例として、カバープレート21と剛性部材40とが同一材料例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている場合、厚いほど剛性が高いため、剛性部材40は、カバープレート21よりも厚く形成されている。
【0063】
剛性部材40として必要な剛性を確保する上で、剛性部材40の厚さは、0.5mm以上であることが望ましい。このような厚さの剛性部材40を適用した場合、カバープレート21の厚さや剛性にかかわらず、剛性部材40自身の変形が抑制され、面内で均一且つ適度な圧力でDMFC構成部品を加圧することが可能となる。
【0064】
一方で、剛性部材40の厚さが厚すぎると、燃料電池1の重量が増加し、また、燃料電池1の厚さも増してしまう。このため、剛性部材40の厚さは、1.0mm以下であることが望ましい。総合すると、剛性部材40の厚さは、0.6mm〜0.8mmの範囲であることがより望ましい。
【0065】
(実施例)
実施例として、図5に示すように、容器30に収容した膜電極接合体2のカソード16側に板状体20を配置し、さらにこの板状体20の上に剛性部材40を配置した。この剛性部材40は、ステンレス鋼によって形成されており、その厚さは0.7mmとした。
【0066】
剛性部材40及び容器30を覆うようにカバープレート21を配置した。このカバープレート21は、折り曲げ加工により容器30に締結した。このようなカバープレート21は、ステンレス鋼によって形成されており、その厚さは0.3mmとした。
【0067】
使用した剛性部材40及びカバープレート21の剛性について既述の方法によって確認した。その結果、カバープレート21の中央部を1mm変位させるのに要した荷重を1とした場合、剛性部材40の中央部を1mm変位させるのに要した荷重は4であった。
【0068】
このような実施例においては、カバープレート21の折り曲げ加工が容易にでき、しかも、折り曲げ加工後においてカバープレート21および剛性部材40により膜電極接合体2を均一に加圧することができた。
【0069】
比較例1として、図6に示すように、容器30に収容した膜電極接合体2のカソード16側に板状体20を配置し、さらにこの板状体20の上にカバープレート21を配置した。このカバープレート21は、ステンレス鋼によって形成されており、その厚さは1.0mmとした。また、このカバープレート21の剛性を記述の方法によって確認した結果、実施例で使用した厚さ0.3mmのカバープレートの中央部を1mm変位させるのに要した荷重を1とした場合、比較例1のカバープレート21の中央部を1mm変位させるのに要した荷重は6であった。
【0070】
このような比較例1においては、高い剛性が得られるものの、折り曲げ加工が困難となり、カバープレート21と容器30との締結ができなかった。当然のことながら、膜電極接合体2を均一に加圧することができなかった。
【0071】
比較例2として、図7に示すように、容器30に収容した膜電極接合体2のカソード16側に板状体20を配置し、さらにこの板状体20の上に実施例で使用したカバープレート21を配置した。このカバープレート21は、ステンレス鋼によって形成されており、その厚さは0.3mmとした。
【0072】
このような比較例2においては、折り曲げ加工が容易にでき、カバープレート21と容器30との締結ができたものの、カバープレート21の剛性が不十分であり、折り曲げ加工の後、膜電極接合体2から離間する方向に撓んでしまった。当然のことながら、膜電極接合体2を均一に加圧することができなかった。
【0073】
以上説明したように、この実施の形態によれば、膜電極接合体の均一な加圧を可能とするとともに、加工性の向上を可能とし、安定して十分な出力が得られる燃料電池を提供できる。
【0074】
上述した実施形態の燃料電池1は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料供給部3Xは、特に燃料濃度が濃い場合に有効である。このため、実施形態の燃料電池1は、濃度が80wt%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。したがって、実施形態は、メタノール濃度が80wt%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池1に好適である。
【0075】
さらに、上述した実施形態は、本発明をセミパッシブ型の燃料電池1に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、内部気化型の純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。
【0076】
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したりする等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…燃料電池
2…膜電極接合体 3…燃料供給機構 3X…燃料供給部
13…アノード 16…カソード 17…電解質膜
18…集電体
21…カバープレート
30…容器 30A…燃料導入口
36A乃至D…側壁
40…剛性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソードとの間に電解質膜を挟持した構成の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記膜電極接合体のカソード側に配置され、折り曲げ加工によって前記燃料供給機構に締結されたカバープレートと、
前記膜電極接合体と前記カバープレートとの間に配置され、前記カバープレートより高い剛性の剛性部材と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記燃料供給機構の剛性は、前記カバープレートより高いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記剛性部材は、単一の板材によって構成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記剛性部材は、2枚以上の板材を積層することによって構成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記剛性部材は、前記カバープレートと同一材料によって形成され、前記カバープレートよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記剛性部材の厚さは、0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記剛性部材の厚さは、1.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記燃料供給機構は、箱状に形成された容器を備え、
前記カバープレートは、少なくとも一辺で前記容器に対して折り曲げ加工により締結されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記カバープレートは、少なくとも一辺で前記容器に対して、ネジ止めまたはリベット継手により締結されたことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記剛性部材及び前記カバープレートは、互いに連通した貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−170733(P2010−170733A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10268(P2009−10268)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】