説明

燃料電池

【課題】燃料電池スタックに外部の物が接触してショートしても、高電圧で電流が流れることを抑制する。
【解決手段】燃料電池10であって、複数の単セル110と、前記単セルを挟み込むエンドプレート200と、を有する積層体100と、前記積層体100の側面部に配置される絶縁体400と、を備え、前記絶縁体400は、前記積層体側に突き出た突起410を有しており、前記積層体100は、前記突起410を挟んだ状態で締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックの積層方向の側面部にガスマニホールドを備える燃料電池が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−251490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の燃料電池では、燃料電池スタックを形成した後に、燃料電池スタックの上部にガスマニホールドを取り付ける構成になっている。この燃料電池スタックを分解する際には、ガスマニホールドを取り外し、その後燃料電池スタックを分解する。ガスマニホールドを取り外した時点では、燃料電池スタックは、単セルが直列に接続されたまま剥き出しになる。この状態で燃料電池スタックに外部の物が接触してショートすると、高電圧で電流が流れる恐れがあった。この問題は、外部マニホールドを有する燃料電池に限らず、他の構成の燃料電池においても、燃料電池を分解する際に生じ得る問題である。
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決し、燃料電池を分解する際に外部から燃料電池スタックに接触しても、高電圧で電流が流れることを抑制することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池であって、複数の単セルと、前記単セルを挟み込むエンドプレートと、を有する積層体と、前記積層体の側面部に配置される絶縁体と、を備え、前記絶縁体は、前記積層体側に突き出た突起を有しており、前記積層体は、前記突起を挟んだ状態で締結されている、燃料電池。
この適用例によれば、突起を挟み込んだ状態から外さない限り絶縁体を取り外すことが出来ないので、燃料電池を分解する際に外部から燃料電池スタックに接触することを抑制できる。その結果、高電圧で電流が流れることを抑制することを可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載の燃料電池において、前記突起は、前記単セルと、前記エンドプレートと、の間に挟まれている、燃料電池。
この適用例によれば、突起は、単セルとエンドプレートの間に配置されるので、エンドプレート間を締結することにより、容易に絶縁体を支持することが可能となる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または、適用例2に記載の燃料電池において、前記絶縁体は、前記単セルにガスを分配するための外部マニホールドの一部を用いて形成されている、燃料電池。
この適用例によれば、外部マニホールドを有する燃料電池では、外部マニホールドを絶縁体として機能させることにより、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0010】
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれかに記載の燃料電池において、さらに、前記単セルと、前記エンドプレートとを締結するためのテンションロッドを備え、前記テンションロッドは、前記突起を貫通している、燃料電池。
この適用例によれば、テンションロッドを抜かない限り絶縁体を取り外すことが出来ない。そして、テンションロッドを抜いたときには、燃料電池は単セルに分離する。したがって、単セルが積層した燃料電池スタックに接触することを抑制できる。
【0011】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池の他、燃料電池の製造方法等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】外部マニホールドを備える燃料電池の外観を示す説明図である。
【図2】燃料電池を図1に示すx方向から見た説明図である。
【図3】燃料電池を図2に示す3A−3A切断線で切ったときの断面の一部を示す説明図である。
【図4】変形例を示す説明図である。
【図5】他の変形例を示す説明図である。
【図6】突起の形状の変形例を示す説明図である。
【図7】テンションロッドが突起を貫通する構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、外部マニホールドを備える燃料電池の外観を示す説明図である。燃料電池10は、燃料電池スタック100と、エンドプレート200と、固定プレート300と、外部マニホールド400と、を備える。エンドプレート200は、燃料電池スタック100の単セル(図示せず)の積層方向(図面x方向)の両端に配置されている。固定プレート300は、燃料電池スタック100のy方向の両端に配置されている。燃料電池スタック100の上方(図面z方向)には、外部マニホールド400が配置されている。すなわち、燃料電池スタック100は、水平方向(x方向及びy方向)を、エンドプレート200と、固定プレート300とにより囲われて、上方(z方向)を外部マニホールド400により覆われている。なお、図1では、これらの部品を結合するためのボルト等は記載が省略されている。
【0014】
図2は、燃料電池を図1に示すx方向から見た説明図である。x方向からは、エンドプレート200と、外部マニホールド400が見えており、燃料電池スタック100や固定プレート300は見えない状態にある。図2は、図1で図示を省略していた、テンションロッド220と、取付ボルト420とを示している。テンションロッド220は、燃料電池スタック100(図1)の単セル(図示せず)と、エンドプレート200とを締結するため用いられている。取付ボルト420は、外部マニホールド400と固定プレート300とを接合する時に用いられている。
【0015】
図3は、燃料電池を、図2に示す3A−3A切断線で切ったときの断面の一部を示す説明図である。燃料電池スタック100は、単セル110が複数積層されている。単セル110の積層方向(x方向)外側には、集電板120が配置されている。そして、集電板120の外側には、エンドプレート200が配置されている。テンションロッド220は、エンドプレート200、集電板120、単セル110を貫いて、エンドプレート200、集電板120、単セル110を締結している。
【0016】
外部マニホールド400は、例えば樹脂で形成されており、中空の略直方体形状を有している。そして、外部マニホールド400の燃料電池スタック100側は開いている。そのため、外部マニホールド400と、燃料電池スタック100との間に空間450が形成されている。空間450には、空気が供給される。なお、空間450への空気導入部については、記載が省略されている。この空気導入部は、外部マニホールド400の頂部に接続されていてもよい。単セル110の空間450側には、孔(図示せず)が開いており、空間450からこの孔を通って各単セル110に空気(O)が供給される。
【0017】
外部マニホールド400のx方向の両端の外縁部には、燃料電池スタック100側に突き出た突起410が形成されている。なお、外部マニホールド400は上述したように、樹脂で形成されており、突起410は、外部マニホールド400を射出成形するときに容易に形成することが可能である。突起410は、単セル110と、集電板120との間に挟み込まれている。そして、テンションロッド220は、突起410を挟み込んだ状態で、エンドプレート200、集電板120、単セル110(燃料電池スタック100)を締結している。ここで、テンションロッド220を緩め、燃料電池スタック100の締結を解除しないと、外部マニホールド400が取り外せないように構成されている。ただし、この実施例では、テンションロッド220は、突起410を貫通しておらず、突起410の無い部分に挿通されている。
【0018】
燃料電池では起電力の低い単セル110を多数直列に接続し、高電圧を発生させている。すなわち、テンションロッド220により複数の単セル110を挟み込んだ両端のエンドプレート200にテンションが付与され、これらの単セル110が直列に接続されることで燃料電池スタック100が形成されると、この燃料電池スタック100により高電圧を発生させることが可能である。一方、テンションロッド220による締結が解除され、エンドプレート200により複数の単セル110を挟み込むテンションが付与されなくなると、単セル110が各々分離され、直列に接続されなくなるため、高電圧が発生しなくなる。
【0019】
本実施例によれば、テンションロッド220により燃料電池スタック100が形成された状態では、外部マニホールド400が燃料電池スタック100を覆っているため、燃料電池スタック100に外部の物が触れることはなくショートする恐れがない。一方、テンションロッド220による締結が解除された状態では、外部マニホールド400が外れるので、単セル110(燃料電池スタック100)に外部の物が触れる可能性はある。しかし、外部の物が触れてショートしても、起電力が低いため、発生する電圧は低い。したがって、本実施例によれば、燃料電池スタック100に外部の物が接触してショートしても、高電圧で電流が流れることを抑制することが可能となる。
【0020】
図4は、変形例を示す説明図である。図3に示した本実施例では、突起410は、単セル110と集電板120との間に挟まれているが、図4(A)に示すように、突起410は、集電板120とエンドプレート200の間に挟まれていてもよい。また、図4(B)に示すように、突起410はエンドプレート200の外側にあってもよい。
【0021】
図5は、他の変形例を示す説明図である。図3に示した本実施例では、突起410は、外部マニホールド400に形成されているが、図5に示すように外部マニホールド400とは別の絶縁板600を燃料電池スタック100の上面に配置し、絶縁板600に突起610を設ける構成にしてもよい。なお、絶縁板600を設ける場合であっても突起610の位置は、図4(A)、(B)に示すように、様々な位置に形成することが可能である。なお、外部マニホールド400に突起410を設ける方が、部品点数を削減できる点で好ましい。なお、図5に示す変形例は、外部マニホールドを備えない、内部マニホールド型の燃料電池にも適用することが可能である。
【0022】
なお、上記実施例や変形例では、外部マニホールド400に設けられた突起410や絶縁板600に設けられた突起610が1つの場合を示しているが、突起410や610は複数あってもよい。複数の突起を設けることによって、支持強度を高めることが可能となる。
【0023】
図6は、突起の形状の変形例を示す説明図である。図6(A)に示すように、突起410の形状としては、テーパー形状を有していてもよい。また、図6(B)に示すように、突起410が湾曲形状を有していてもよい。変形例では、外部マニホールド400を図面の上方に引き上げる際、テーパー形状部あるいは、湾曲形状部が集電板120をエンドプレート120方向に押す。その結果、単セル110とエンドプレート200との分離が容易となる。このように、突起410の形状としては、矩形形状以外の他様々な形状が採用可能である。
【0024】
本発明に係る燃料電池においては、テンションロッド220が突起410を貫通する構成、突起410を貫通しない構成のいずれも取り得ることができる。テンションロッド220が突起410を貫通する構成の一例を図7に示す。図7に示すように、テンションロッド220が突起410を貫通する場合には、テンションロッド220を抜かない限り外部マニホールド400や絶縁板600を取り外すことが出来ない。そして、テンションロッド220を抜いた場合には、燃料電池スタック100は、単セル110に分離する。したがって、燃料電池を分解する際に外部から単セル110が積層した燃料電池スタック100に接触することを抑制できる。その結果、高電圧で電流が流れることを抑制することを可能となる。
【0025】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0026】
10…燃料電池
100…燃料電池スタック
110…単セル
120…集電板
200…エンドプレート
220…テンションロッド
300…固定プレート
400…外部マニホールド
410…突起
420…取付ボルト
450…空間
600…絶縁板
610…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
複数の単セルと、前記単セルを挟み込むエンドプレートと、を有する積層体と、
前記積層体の側面部に配置される絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体は、前記積層体側に突き出た突起を有しており、
前記積層体は、前記突起を挟んだ状態で締結されている、燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記突起は、前記単セルと、前記エンドプレートと、の間に挟まれている、燃料電池。
【請求項3】
請求項1または、請求項2に記載の燃料電池において、前記絶縁体は、前記単セルにガスを分配するための外部マニホールドの一部を用いて形成されている、燃料電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料電池において、さらに、
前記単セルと、前記エンドプレートとを締結するためのテンションロッドを備え、
前記テンションロッドは、前記突起を貫通している、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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