燃料電池
【課題】 高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】 燃料電池1は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体3と、締付け装置21とを具備する。締付け装置21を、燃料電池積層体3の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ22、及びこれらのアセンブリ22を互に近付くように締付けて単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段31により形成する。締付けアセンブリ22は、互に交叉して配置された第1の梁23と第2の梁26を備える。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁はその長手方向中央部に他方の梁が通された切欠き溝24を有する。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部23aと、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部23bとを有していることを特徴としている。
【解決手段】 燃料電池1は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体3と、締付け装置21とを具備する。締付け装置21を、燃料電池積層体3の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ22、及びこれらのアセンブリ22を互に近付くように締付けて単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段31により形成する。締付けアセンブリ22は、互に交叉して配置された第1の梁23と第2の梁26を備える。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁はその長手方向中央部に他方の梁が通された切欠き溝24を有する。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部23aと、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部23bとを有していることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体に、水素ガス等の燃料と空気等の酸化剤ガスを供給して、これらを電気化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して、外部に取出す発電装置である。燃料電池積層体の単位電池は、両面にアノード電極とカソード電極が設けられた固体高分子膜等からなる電解質膜を、その両側からセパレータで挟持してなる。セパレータは、電解質膜のアノード電極とカソード電極に接する燃料ガス流路溝及び酸化剤ガス流路溝等を有している。
【0003】
燃料電池は、単位電池の積層状態を保持するために締付け装置を備えている。締付け装置は、燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付け部材と、これらの部材を互に近付くように締付けた状態に保持するボルト・ナット等からなる締付け保持手段とで形成されている。
【0004】
締付け装置の締付け部材には、締付け保持手段により付与される締付け力で変形して反らない強度が要求されている。そのため、締付け部材を金属材又は絶縁材等で一体に製造された厚板状の構造物とした従来技術が知られている
燃料電池の用途は、例えば車載用の他、建物に付属する発電設備としての用途等が知られている。いずれの用途にしても、例えば燃料電池を設置する際等における取扱いを容易にするために、重量を低減することが要請されており、又、これと併せて製造コストの低減も要請されている。
【0005】
締付け部材が合成樹脂等の絶縁材で形成されている場合、この締付け部材が、締付け保持手段が付与する締付け力によって割れる可能性が考えられる。このため、締付け部材は金属製とすることが望ましい。
【0006】
しかし、金属製締付け部材が厚板状の一体構造物であると、その重さが必然的に増えることは否めないので、前記要請を満たす上では、厚板状の金属製締付け部材は適していない。更に、厚板状の一体構造物からなる締付け部材を作るには、所定の厚みを有した比較的面積が大きい金属板から不要部を切断や打ち抜き等の作業によって除くことが必要である。このため、一体構造物の厚板状金属製締付け部材は、製造の手間が掛かることに加えて、材料の無駄が多く、よって、製造コストを低減する上では改善の余地がある。
【0007】
更に、こうして製造された金属製締付け部材は、締付け力で変形しない程度の強度を確保する必要により、板厚が厚いので、この締付け部材を一対備えた燃料電池の重量が重くなることは避けられない。
【0008】
又、既述の要請を満たす上で、燃料電池が大形化することは、その設置スペースが増えるので、好ましくなく、この点についての改善も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−270066号公報
【特許文献2】特開2007−179992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の燃料電池は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体と、締付け装置とを具備する。締付け装置を、燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ、及びこれらのアセンブリを互に近付くように締付けて単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段により形成する。締付けアセンブリは、互に交叉して配置された第1の梁と第2の梁を備える。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁はその長手方向中央部に他方の梁が通された切欠き溝を有する。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有した構成であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1の燃料電池を示す平面図である。
【図3】図1の燃料電池をそのマニホルドを外した状態で示す斜視図である。
【図4】図1の燃料電池をそのマニホルドを外した状態で分解して示す斜視図である。
【図5】図1の燃料電池が備える締付けアセンブリを示す斜視図である。
【図6】図5の締付けアセンブリを分解し保護板とともに示す斜視図である。
【図7】図5の締付けアセンブリの交差部を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る燃料電池が備える締付けアセンブリを示す斜視図である。
【図9】図8の締付けアセンブリを分解し保護板とともに示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図11】第4実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、第1実施形態に係る燃料電池について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2中符号1は例えば外部マニホルド式の燃料電池を示している。図3及び図4に示すように燃料電池1は、燃料電池積層体3と、一対の集電板5と、一対の絶縁板7と、一対の保護板8と、少なくとも一個例えば複数具体的には四個のマニホルドつまり第1マニホルド11〜第4マニホルド14(図1及び図2参照)と、締付け装置21を備えている。
【0015】
燃料電池積層体3は複数の単位電池を積層してなり、その平面視形状は、四角形具体的には長方形である。各単位電池は、両面にアノード電極とカソード電極が設けられた固体高分子膜等からなる四角形の電解質膜を、その両側から電解質膜と同形のセパレータで挟持してなる。
【0016】
アノード電極とカソード電極は、多孔質カーボンペーパー等で形成されたガス拡散層と、固体高分子膜と接する面に形成された触媒層を有している。触媒層は、白金或いは白金化合物からなる。各単位電池は、そのアノード電極とカソード電極の夫々に水素ガス等の燃料と空気等の酸化剤が供給されることにより、電気化学反応により電気エネルギーを発生する。
【0017】
各セパレータは、ガス不透過性で導電性の部材からなる。例えば、各セパレータは、黒鉛板を切削加工して形成され、或いは、黒鉛粉末と樹脂の混合物をモールド加工して形成され、若しくは金属材料を加工しかつ表面に耐食性を付加すること等により形成されている。これらのセパレータは、電解質膜のアノード電極とカソード電極に接する燃料流路溝及び酸化剤流路溝等を有している。更に、第1実施形態では、燃料電池積層体3には冷却水流路溝が形成されたセパレータが使用されている。
【0018】
燃料電池1において各セパレータの外縁部から燃料流路溝と酸化剤流路溝に夫々導入された燃料ガス(例えば水素ガス)と酸化剤ガス(例えば空気)は、燃料流路溝と酸化剤流路溝を流通してアノード電極とカソード電極に供給される。これとともに、アノード電極とカソード電極で消費されなかった排ガス、及び電気化学反応により発生した水蒸気又は水は、燃料流路溝及び酸化剤流路溝を流通して各セパレータの外縁部から各流路溝の外部に排出される。更に、燃料電池積層体3のセパレータは既述のように冷却水流路溝を有しているので、この冷却水流路溝を流通する冷却水により、アノード電極とカソード電極での電気化学反応に伴い発生した熱は、燃料電池積層体3の外部に排出される。
【0019】
一対の集電板5は、導電性材料、例えば黒鉛のプレートからなる。これら導電板5の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。これら集電板5は、燃料電池積層体3の積厚方向の両端面、図3及び図4では燃料電池積層体3の上面及び下面に重なって夫々設置されている。集電板5には図示しない電流取出しケーブルが接続されている。燃料電池積層体3での電気化学反応により発生した電気エネルギーは、集電板5に集められ、ここから更に図示しない電力取出しケーブルを経由して燃料電池1の外部に取出される。
【0020】
一対の絶縁板7は、絶縁材料、例えば合成樹脂のプレートからなる。これら絶縁板7の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。これら絶縁板7は、燃料電池積層体3をその積厚方向に挟むように集電板5に重なって夫々設置されている。
【0021】
一対の保護板8は、絶縁板7より高強度の金属製例えば鋼板からなる。これら保護板8の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。このため、保護板8の平面視形状及び大きさは、集電板5及び絶縁板7の平面視形状及び大きさとも同じである。これら保護板8は、燃料電池積層体3をその積厚方向に挟むように絶縁板7に重なって夫々設置されている。保護板8は、燃料電池1の軽量化を促進するために薄板であることが好ましく、例えば、後述する梁を構成する鋼板の板厚以下の薄い鋼板で形成するとよい。また、保護板8は、燃料電池1の軽量化を促進するために樹脂製や補強材入りの樹脂製であってもよい。
【0022】
これら保護板8はその四周の縁(周縁)に図6等に示すように縁板部9を夫々有している。各縁板部9は図3及び図4に示すように集電板5から離れる方向に折り曲げられている。これとともに、保護板8の縁に沿って延びた縁板部9の長さは、この縁板部9が折り曲げられた保護板8の縁の長さより短い。連結孔として例えばねじ孔9aが各縁板部9の夫々に少なくとも一個設けられている。
【0023】
第1マニホルド11〜第4マニホルド14は、一側面が開口された箱型の構造物であって、その一側面開口を燃料電池積層体3の側面に臨ませて、燃料電池積層体3の各側面を覆って配設されている。
【0024】
これらのマニホルドの取付け構造を説明する。第1マニホルド11〜第4マニホルド14の夫々は、その両端部に図1に示すように取付け部15を夫々有している。取付け部15は、板状であり、その大きさは縁板部9の大きさに略等しく、図示しないボルト通孔を複数有している。第1マニホルド11〜第4マニホルド14は、その取付け部15を保護板8の縁板部9に重ね合わせて、連結具例えばボルト16を前記ボルト通孔に通してねじ孔9aにねじ込むことにより、夫々取付けられている。こうして取付けられた各マニホルドと燃料電池積層体3の側面との間には図示しないシール材が挟まれていて、燃料電池積層体3の側面とこれを覆ったマニホルドとの間の気水密が確保されている。
【0025】
図2に示すように第1マニホルド11と第2マニホルド12は、燃料電池積層体3の互に平行な一対の側面を覆って配置され、第3マニホルド13と第4マニホルド14は、燃料電池積層体3の互に平行な他の一対の側面を覆って配置されている。図1及び図2に示すように第1マニホルド11と第2マニホルド12の例えば二箇所にマニホルド配管17,18が夫々突出され、第3マニホルド13と第4マニホルド14の例えば一箇所にマニホルド配管19が夫々突出されている。これらのマニホルド配管17〜19は、いずれも燃料電池積層体3の積厚方向と平行で、かつ、例えば図1において上向きに設けられている。
【0026】
マニホルド配管17〜19は、燃料又は空気若しくは冷却水を導くもので、これらを流通して燃料又は空気若しくは冷却水が、燃料電池積層体3に供給され或いは燃料電池積層体3から排出される。尚、これらマニホルド配管17〜19の配置は、燃料電池積層体3での燃料流路溝、酸化剤流路溝、及び冷却水流路溝の配置等に応じて適宜変更可能であり、図示の配置に制約されない。
【0027】
次に、締付け装置21について説明する。この締付け装置21は、図3等に示すように一対の締付けアセンブリ22と複数の締付け保持手段31を具備している。
【0028】
図5及び図6等に示すように締付けアセンブリ22は、燃料電池積層体3を挟む構造物である複数の締付け部材具体的には第1の梁23、第2の梁26、及びレジスタンス部品29を組み合わせて形成されている。
【0029】
第1の梁23は、金属製例えば板厚が2mm程度の鋼板製であり、図3〜図6に示すように相対向した側壁部23aと、側壁間壁部23bを有して、例えば長手方向と直交する断面の形状が溝形をなしている。相対向した側壁部23aは、燃料電池積層体3が有した単位電池の積厚方向と平行であり、側壁間壁部23bは相対向した側壁部23aの例えば高さ方向一端にわたって一体に設けられている。このため、第1の梁23は、その長手方向両端が夫々開放されているとともに、相対向した側壁部23aの高さ方向他端間も開放されている。
【0030】
第1の梁23は燃料電池積層体3の積厚方向の端面の対角線の長さより長い。この第1の梁23はその長手方向中央部に切欠き溝24を有している。具体的には、側壁部23aの長手方向中央部に切欠き溝24が夫々形成されている。これら切欠き溝24は第1の梁23の幅方向(側壁部23aにわたる方向)に互に対向しているとともに、側壁部23aの高さ方向他端縁、言い換えれば、側壁間壁部23bと反対側の縁に開放されている。更に、図6に示すように切欠き溝24の幅W1は第1の梁23の幅W2より広い。又、側壁間壁部23bの長手方向両端部に夫々連結孔25が開けられている。
【0031】
第2の梁26は第1の梁23と同様な構成である。つまり、第2の梁26は、金属製例えば板厚が2mm程度の鋼板製であり、相対向した側壁部26aと、側壁間壁部26bを有して、例えば長手方向と直交する断面の形状が溝形をなしている。相対向した側壁部26aは、燃料電池積層体3が有した単位電池の積厚方向と平行であり、側壁間壁部26bは相対向した側壁部26aの例えば高さ方向一端にわたって一体に設けられている。このため、第2の梁26は、その長手方向両端が夫々開放されているとともに、相対向した側壁部26aの高さ方向他端間も開放されている。
【0032】
図6に示すように第2の梁26の高さ寸法H1は、第1の梁23の高さ寸法H2より低く、例えば切欠き溝24の開放端から奥端までの高さ、つまり、切欠き溝24の奥行き寸法H3(図6参照)に等しい。更に、第2の梁26の幅W2は、切欠き溝24の幅W1より狭い。
【0033】
第2の梁26は、第1の梁23と同じ長さで、その長手方向中央部に切欠き溝27を有している。具体的には、側壁部26aの長手方向中央部に切欠き溝27が夫々設けられている。これら切欠き溝27は第2の梁26の幅方向(側壁部26aにわたる方向)に互に対向しているとともに、側壁部26aの高さ方向他端縁、言い換えれば、側壁間壁部26bと反対側の縁に開放されている。更に、切欠き溝27の幅W3は第2の梁26の幅W2より広い。又、側壁間壁部26bの長手方向両端部に夫々連結孔28が開けられている。
【0034】
第1の梁23と第2の梁26は、それらを展開した形状に、平らな鋼板をプレス機械により打ち抜いた後、この打ち抜かれた板を同じプレス機械若しくは他のプレス機械を用いて折り曲げることにより形成される。尚、前記打ち抜きの際には、切欠き溝及びに連結孔に相当する部位が同時に打ち抜かれる。したがって、材料取りが良いとともに、簡易に第1の梁23と第2の梁26を製造可能である。
【0035】
これら第1の梁23と第2の梁26は互に交叉してX字形状に組み合わされている。具体的には、第2の梁26が第1の梁23の切欠き溝24に通されている。これにより、第1の梁23及び第2の梁26の長手方向に延びる開口が同じ高さとなるとともに、第2の梁26の側壁間壁部26bが第1の梁23に形成された切欠き溝24の奥端に接した状態に、第1の梁23と第2の梁26が組み合わされている。
【0036】
このように組み合わせる作業において、切欠き溝24の幅W1より第2の梁26の幅W2が狭いので、切欠き溝24の縁と第2の梁26の側壁部26aが競ることがなく、切欠き溝24に第2の梁26を容易に通すことが可能である。
【0037】
レジスタンス部品29はむく(言い換えれば、中実)の金属製例えば鋼材製のブロックからなり、以下の形状に制約されないが、材料取りを向上するために四角形、具体的には菱形(図7参照)をなしたブロックが採用されている。このレジスタンス部品29の平行な二辺の長さは切欠き溝24の幅W1に略等しく、他の平行な他の二辺の長さ切欠き溝27の幅W3に略等しい。更に、図6に示すようにレジスタンス部品29の厚みTは、第1の梁23及び第2の梁26をなした鋼板の板厚より厚く、かつ、切欠き溝27の奥行き寸法H4に略等しい。
【0038】
ここに、略等しいとは、寸法が一致している態様を含んでいるとともに、切欠き溝24又は切欠き溝27とレジスタンス部品29の四周との間に僅かな隙間が形成される寸法関係にある態様も含んでいる。後者の態様を採用した場合、高い寸法精度が厳密に要求されないので、製造が容易でそれに応じた製造コストの低減を図ることが可能である。
【0039】
レジスタンス部品29は切欠き溝24,27に夫々嵌合して第1の梁23と第2の梁26の交叉部に配設されている。レジスタンス部品29の互に平行な二辺は、切欠き溝24の互に平行な溝縁に接触して又は極小な隙間を設けて配置され、かつ、互に平行な他の二辺は、切欠き溝27の互に平行な溝縁に接触して又は極小な隙間を設けて配置されている。このように配設されたレジスタンス部品29の切欠き溝27の開放端側の側面の高さ位置と、側壁部23aの側壁間壁部23bと反対側の縁及び側壁部26aの側壁間壁部26bと反対側の縁の高さ位置とは、同じである。このレジスタンス部品29により、第1の梁23と第2の梁26とがX字形状に交差した組み合わせ状態が保持されている。
【0040】
この保持状態をより確実にするとともに、製造において高い寸法精度が要求されないようにし、かつ、レジスタンス部品29を第1の梁23及び第2の梁26と一体に取扱うことができるようにするために、実施形態1では、レジスタンス部品29と第1の梁23及び第2の梁26が溶接されている。
【0041】
つまり、図7に示すようにレジスタンス部品29の各角部は第1の梁23及び第2の梁26の交叉部から突出されているので、これら角部と第1の梁23の側壁部23a及び第2の梁26の側壁部26aとが、図7に示すように夫々溶接されている。図7中符号30は溶接ビードを示している。尚、溶接に代えてねじ止めによりレジスタンス部品29を第1の梁23及び第2の梁26に固定することも可能である。又、この固定を担う溶接等は省略しても良い。
【0042】
前記構成の一対の締付けアセンブリ22のうちの一方は、第1の梁23及び第2の梁26が燃料電池積層体3の対角線上に位置されるように一方の保護板8上に配設される。この配設により、一方の締付けアセンブリ22が有した第1の梁23の側壁部23aと、第2の梁26の側壁部26aの長手方向に延びる縁と、レジスタンス部品29とが、一方の保護板8に接触される。同様に、他方の締付けアセンブリ22は、第1の梁23及び第2の梁26が燃料電池積層体3の対角線上に位置されるように他方の保護板8上に配設される。この配設により、他方の締付けアセンブリ22が有した第1の梁23の側壁部23aと、第2の梁26の側壁部26aの長手方向に延びる縁と、レジスタンス部品29とが、他方の保護板8に接触される。
【0043】
燃料電池積層体3を積厚方向に見た場合に、以上のように配設された一対の締付けアセンブリ22の第1の梁23の長手方向の端部と第2の梁26の長手方向の端部の夫々は、燃料電池積層体3の四隅から突出されて、これらの端部に形成された連結孔25同士、及び連結孔28同士は、夫々燃料電池積層体3の積厚方向に対向される。
【0044】
更に、以上のように締付けアセンブリ22が配設されるに伴い、保護板8の縁板部9及び各マニホルド11〜14の取付け部15、及びマニホルド配管17〜19が、第1の梁23の側壁部23aと、これに対向した第2の梁26の側壁部27bとの間のスペースに配設される。
【0045】
各締付け保持手段31は、例えば図1及び図4等に示すように少なくとも両端部にねじ部32aを有した締付け軸32と、これに螺合される一対のナット33とからなる。締付け保持手段31は、燃料電池積層体3をその厚み方向から挟むように配設された一対の締付けアセンブリ22を連結して設けられている。
【0046】
即ち、締付け軸32は、燃料電池積層体3の四隅近傍に、この燃料電池積層体3の積厚方向と略平行に配置されている。この締付け軸32の両端部のねじ部32aは、燃料電池積層体3の積厚方向に相対向した第1の梁23の連結孔25又は第2の梁26の連結孔28に夫々貫通されていて、このねじ部32aにナット33が螺合されている。ナット33はその締付けにより、第1の梁23の側壁間壁部23b又は第2の梁26の側壁間壁部26bに着座する。
【0047】
したがって、以上のように一対の締付けアセンブリ22と組み合わされた各締付け保持手段31のナット33が夫々締付けられることにより、締付け装置21の組立てが完了する。これに伴い、各締付け保持手段31の締付け力が締付けアセンブリ22に波及するので、積厚方向の両側に集電板5及び絶縁板7が重なって配置された燃料電池積層体3に対して、一対の締付けアセンブリ22が互に近付けられるように燃料電池積層体3が締付けられ、この積層体が有した複数の単位電池が互いに密接した積層状態に保持される。
【0048】
燃料電池1は、締付けアセンブリ22を備え、かつ、このアセンブリのX字状に交叉された第1の梁23と第2の梁26が、鋼板を断面溝形状に折り曲げた構成であるので、中実の鋼材で第1と第2の梁が一体に形成された構成の締付けアセンブリと同程度の強度を確保できる。これにより、燃料電池積層体3に、所定の締付け力が付与され、締付け面圧が小さい箇所の発生が抑制されるに伴い、締付け面圧が小さい箇所での積層部材間の接触抵抗の増加に伴う発電効率の低下を抑制可能である。
【0049】
既述のように第1の梁23と第2の梁26が薄い鋼板を断面溝形状に折り曲げた構成であるので、これらの梁が中実の鋼材で形成された構成に比較して、一対の締付けアセンブリ22の重量が軽くなる。それに伴い、燃料電池1を軽量化できる。
【0050】
締付けアセンブリ22の第1の梁23と第2の梁26は、それらが組み合わされた形状で材料取りされるのではなく、個々に鋼板から材料取りされ折り曲げて作られているので、これら材料取りに伴う材料の無駄が少ない。加えて、厚い鋼板を切断又は切削して第1の梁23と第2の梁26が形成されたものではなく、薄い鋼材をプレス加工等で折り曲げて第1の梁23と第2の梁26を形成できる。このように締付けアセンブリ22を得る上での材料費の削減と製造費の低減が可能であることに伴い、締付けアセンブリ22のコストが低減されるので、燃料電池1のコストを低減することが可能である。なお、第1の梁23と第2の梁26は、樹脂製や補強材入りの樹脂製で中空の構造としてもよい。これにより、中実で形成された構成に比較して、締付けアセンブリ22の重量が軽くなり、それに伴い、燃料電池1を軽量化でき、材料の使用量も削減できる。
【0051】
締付けアセンブリ22の第1の梁23と第2の梁26は、第1の梁23が有した切欠き溝24に第2の梁26を通してX字状に組まれている。このため、第2の梁26を切欠き溝24がない第1の梁23に重ね合わせて、これらをX字状に組み合わせた構成と比較して、締付けアセンブリ22の高さ寸法を低くできる。これにより、燃料電池1の高さ寸法の大形化を抑制することが可能できる。
【0052】
以上説明したように実施形態1に係る燃料電池1によれば、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能である。
【0053】
更に、第1実施形態の燃料電池1が備える締付けアセンブリ22は、第1の梁23の切欠き溝24及び第2の梁26の切欠き溝27に夫々略密に嵌合されたレジスタンス部品29を有している。このため、切欠き溝24により第1の梁23の長手方向中央部の強度が低下しているにも拘らず、締付け保持手段31による締付け力で、切欠き溝24の幅W1及び切欠き溝27の幅W3が変わることを抑制できる。
【0054】
つまり、切欠き溝24が狭まるように第1の梁23が変形することをレジスタンス部品29で抑制できるとともに、切欠き溝27が狭まるように第2の梁26が変形することをレジスタンス部品29で抑制できる。したがって、締付け保持手段31により一対の締付けアセンブリ22に与えられる締付け力が、締付けアセンブリ22を介して有効に燃料電池積層体3に波及されるので、燃料電池積層体3の締付け面圧を均一化することが可能である。
【0055】
この場合、第1の梁23の相対向する側壁部23aの長手方向に延びる縁、第2の梁26の相対向する側壁部26aの長手方向に延びる縁、及びレジスタンス部品29が、ともに保護板8に押付けられて、締付け力が燃料電池積層体3に波及される。このため、既述のように第2の梁26を切欠き溝24がない第1の梁23に重ね合わせて、これらをX字状に組み合わせた構成の場合のように、第1の梁23の高さ寸法に応じて保護板8から離れた状態にある第2の梁26に加えられる締付け力を、燃料電池積層体3に波及させるための中継部品を要しないので、構成が単純である。
【0056】
前記構成の燃料電池1は、締付けアセンブリ22が接する保護板8を備えているので、締付けアセンブリ22の形状にならって、このアセンブリが保護板8に接触する箇所に応力が集中することが緩和される。これにより、絶縁板7及び集電板5が、締付け荷重による応力集中で損傷することを防止することが可能である。
【0057】
燃料電池1が備える保護板8は、四角形でその四辺の夫々に略直角に折り曲げられた縁板部9を有している。これら縁板部9によって保護板8が補強されているので、締付け荷重による保護板8の変形が抑制される。これに伴い、保護板8が薄い場合であっても、締付けアセンブリ22から波及される締付け荷重が保護板8全体に分散されて、燃料電池積層体3の前面に対して締付け面圧を均一化することが可能である。
【0058】
更に、保護板8の縁板部9は、第1マニホルド11〜第4マニホルド14を支持するために利用されている。これにより、燃料電池積層体3の外側に配置される第1マニホルド11〜第4マニホルド14を取付ける構成を簡略にできる。
【0059】
図8及び図9は第2実施形態を示している。第2実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この第2実施形態の燃料電池では、締付けアセンブリ22の第2の梁26の構成等が、以下のように第1実施形態とは異なる。
【0061】
詳しくは、第2の梁26は長手方向に直交する断面が四角いむく(中実)の鋼材で作られていて、その長手方向中央部には切欠き溝は設けられていないとともに、連結孔28は第2の梁26を高さ方向に貫通して設けられている。第1の梁23の切欠き溝24の幅W1は、第2の梁26の幅W2と同じである。そのため、切欠き溝24を通って第1の梁23と交叉した第2の梁26の側面は、切欠き溝24の互に平行な縁24a(図9参照)に接している。この第2実施形態では、第1実施形態で採用したレジスタンス部品は省略されているとともに、第1の梁23と第2の梁26はその交叉部で溶接されていても良い。
【0062】
第2実施形態の燃料電池で、以上説明した以外の構成は図8及び図9に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第2実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ第1の梁23の採用による軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0063】
しかも、第2の梁26が中実であって、その側面が切欠き溝24の互に平行な縁24aに接しているので、締め付け保持手段31による締付け力で、第1の梁23が変形することを第2の梁26自体で実現できる。これにより、第1実施形態で採用したレジスタンス部品を省略できるので、第1実施形態の燃料電池と比較して部品点数及び組立て工数が少なくなり、それに伴って構成の単純化と更なるコストの低減を図ることが可能である。
【0064】
図10は第3実施形態を示している。第3実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0065】
この第3実施形態は、内部マニホルド式の燃料電池1とした点が第1実施形態とは異なる。
【0066】
第3実施形態で、燃料電池積層体3をなした各部材には複数の貫通孔(図示しない)が設けられていて、これら貫通孔は、セパレータに形成された燃料流路溝、又は酸化剤流路溝、或いは冷却水流路溝のいずれかに連続されている。更に、互に連通された各貫通孔がなす通路に連通する通孔(図示しない)が、集電板5、絶縁板7、及び保護板8の夫々設けられている。そして、集電板5、絶縁板7、保護板8のいずれかの通孔に、マニホルド配管17〜マニホルド配管19が接続されている。又、第3実施形態では、第1実施形態で採用した複数のマニホルドは省略されているとともに、保護板8の縁板部9に対して第1実施形態で採用したねじ孔(連結孔)は省略されている。
【0067】
第3実施形態の燃料電池1で、以上説明した以外の構成は図10に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0068】
しかも、内部マニホルド式の燃料電池であるので、第1実施形態で採用した複数のマニホルドを省略できるに伴い、更なる軽量化とコストの低減を図ることが可能である。
【0069】
図11は第4実施形態を示している。第4実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0070】
この第4実施形態は、内部マニホルド式の燃料電池1とした点が第1実施形態とは異なる。
【0071】
第4実施形態で、燃料電池積層体3の四隅に、この積層体の積厚方向に貫通する通孔(図示しない)が夫々設けられている。これらの通孔には締付け保持手段31の締付け軸32が通されている。これとともに、第1の梁23と第2の梁26は、燃料電池積層体3を平面視した場合の対角線と略等しい長さに形成されている。又、燃料電池積層体3をなした各部材には複数の貫通孔(図示しない)が設けられていて、これら貫通孔は、セパレータに形成された燃料流路溝、又は酸化剤流路溝、或いは冷却水流路溝のいずれかに連続されている。更に、互に連通された各貫通孔がなす通路に連通する通孔(図示しない)が、集電板5及び絶縁板7に夫々設けられている。又、第4実施形態では、第1実施形態で採用した一対の保護板は省略されている。そして、集電板5と絶縁板7のいずれかの通孔には、マニホルド配管17〜マニホルド配管19が接続されている。又、第4実施形態では、第1実施形態で採用した複数のマニホルドは省略されている。
【0072】
第4実施形態の燃料電池で、以上説明した以外の構成は図11に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第4実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0073】
しかも、内部マニホルド式の燃料電池1であるので、第1実施形態で採用した複数のマニホルドを省略できるに伴い、構成の単純化並びに軽量化とコストの低減を図ることが可能である。加えて、第1実施形態と比較して保護板8の省略と第1の梁23及び第2の梁26が短いことにより、更なる構成の単純化並びに軽量化とコストの低減を図ることが可能であるとともに、燃料電池1の高さ方向以外の小形化も図ることが可能である。
【0074】
以上説明した各実施形態は単なる例示であり、これらに実施を制約されるものではなく、各実施形態の特徴を組み合わせて実施することが可能であるとともに、これらの特徴を燃料電池の構成の一部分のみに適用して実施することも可能である。例えば、第2実施形態で説明した中実な構成の第2の梁26は、第3、第4の実施形態の第2の梁に適用可能である。
【0075】
又、例えば第1、第3、第4の実施形態で採用した第1の梁23及び第2の梁26、第2実施形態で採用した第1の梁23は、断面溝形状の鋼材に代えて、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有する構成であれば使用可能であり、例えば、長手方向に直交する方向の断面形状がH形断面又は中空の略四角形断面を有した鋼材を用いることも可能である。
【0076】
更に、締付けアセンブリは、第1の梁の長手方向中央部に、燃料電池積層体と反対体側に開放されて第2の梁が通る切欠き溝を設けるとともに、第2の梁の長手方向中央部に燃料電池積層体側に開放して第1の梁が通る切欠き溝を設けて、第1の梁と第2の梁をX字状に組み合わせた構成とすることもできる。この場合、各切欠き溝にレジスタンス部品を嵌合して、第1の梁に形成された切欠き溝の縁にこの溝に嵌合されたレジスタンス部品を溶接等により固定するとともに、第2の梁に形成された切欠き溝の縁にこの溝に嵌合された他のレジスタンス部品を溶接等により固定することで、締付け力で切欠き溝が互に開いて変形することがないように構成することが積層された単位電池相互間に所定の締付け面圧を確保する上で好ましい。
【符号の説明】
【0077】
1…燃料電池、3…燃料電池積層体、5…集電板、8…保護板、9…縁板部、9a…ねじ孔(連結孔)、11〜14…マニホルド、15…取付け部、16…ボルト(連結具)、21…締付け装置、22…締付けアセンブリ、23…第1の梁、23a…第1の梁の側壁部、23b…第1の梁の側壁間壁部、24…第1の梁の切欠き溝、W1…第1の梁の切欠き溝の幅、26…第2の梁、26a…第3の梁の側壁部、26b…第3の梁の側壁間壁部、27…第2の梁の切欠き溝、W3…第2の梁の切欠き溝の幅、29…レジスタンス部品、31…締付け保持手段
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体に、水素ガス等の燃料と空気等の酸化剤ガスを供給して、これらを電気化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して、外部に取出す発電装置である。燃料電池積層体の単位電池は、両面にアノード電極とカソード電極が設けられた固体高分子膜等からなる電解質膜を、その両側からセパレータで挟持してなる。セパレータは、電解質膜のアノード電極とカソード電極に接する燃料ガス流路溝及び酸化剤ガス流路溝等を有している。
【0003】
燃料電池は、単位電池の積層状態を保持するために締付け装置を備えている。締付け装置は、燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付け部材と、これらの部材を互に近付くように締付けた状態に保持するボルト・ナット等からなる締付け保持手段とで形成されている。
【0004】
締付け装置の締付け部材には、締付け保持手段により付与される締付け力で変形して反らない強度が要求されている。そのため、締付け部材を金属材又は絶縁材等で一体に製造された厚板状の構造物とした従来技術が知られている
燃料電池の用途は、例えば車載用の他、建物に付属する発電設備としての用途等が知られている。いずれの用途にしても、例えば燃料電池を設置する際等における取扱いを容易にするために、重量を低減することが要請されており、又、これと併せて製造コストの低減も要請されている。
【0005】
締付け部材が合成樹脂等の絶縁材で形成されている場合、この締付け部材が、締付け保持手段が付与する締付け力によって割れる可能性が考えられる。このため、締付け部材は金属製とすることが望ましい。
【0006】
しかし、金属製締付け部材が厚板状の一体構造物であると、その重さが必然的に増えることは否めないので、前記要請を満たす上では、厚板状の金属製締付け部材は適していない。更に、厚板状の一体構造物からなる締付け部材を作るには、所定の厚みを有した比較的面積が大きい金属板から不要部を切断や打ち抜き等の作業によって除くことが必要である。このため、一体構造物の厚板状金属製締付け部材は、製造の手間が掛かることに加えて、材料の無駄が多く、よって、製造コストを低減する上では改善の余地がある。
【0007】
更に、こうして製造された金属製締付け部材は、締付け力で変形しない程度の強度を確保する必要により、板厚が厚いので、この締付け部材を一対備えた燃料電池の重量が重くなることは避けられない。
【0008】
又、既述の要請を満たす上で、燃料電池が大形化することは、その設置スペースが増えるので、好ましくなく、この点についての改善も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−270066号公報
【特許文献2】特開2007−179992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の燃料電池は、複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体と、締付け装置とを具備する。締付け装置を、燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ、及びこれらのアセンブリを互に近付くように締付けて単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段により形成する。締付けアセンブリは、互に交叉して配置された第1の梁と第2の梁を備える。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁はその長手方向中央部に他方の梁が通された切欠き溝を有する。第1、第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有した構成であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1の燃料電池を示す平面図である。
【図3】図1の燃料電池をそのマニホルドを外した状態で示す斜視図である。
【図4】図1の燃料電池をそのマニホルドを外した状態で分解して示す斜視図である。
【図5】図1の燃料電池が備える締付けアセンブリを示す斜視図である。
【図6】図5の締付けアセンブリを分解し保護板とともに示す斜視図である。
【図7】図5の締付けアセンブリの交差部を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る燃料電池が備える締付けアセンブリを示す斜視図である。
【図9】図8の締付けアセンブリを分解し保護板とともに示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図11】第4実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、第1実施形態に係る燃料電池について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2中符号1は例えば外部マニホルド式の燃料電池を示している。図3及び図4に示すように燃料電池1は、燃料電池積層体3と、一対の集電板5と、一対の絶縁板7と、一対の保護板8と、少なくとも一個例えば複数具体的には四個のマニホルドつまり第1マニホルド11〜第4マニホルド14(図1及び図2参照)と、締付け装置21を備えている。
【0015】
燃料電池積層体3は複数の単位電池を積層してなり、その平面視形状は、四角形具体的には長方形である。各単位電池は、両面にアノード電極とカソード電極が設けられた固体高分子膜等からなる四角形の電解質膜を、その両側から電解質膜と同形のセパレータで挟持してなる。
【0016】
アノード電極とカソード電極は、多孔質カーボンペーパー等で形成されたガス拡散層と、固体高分子膜と接する面に形成された触媒層を有している。触媒層は、白金或いは白金化合物からなる。各単位電池は、そのアノード電極とカソード電極の夫々に水素ガス等の燃料と空気等の酸化剤が供給されることにより、電気化学反応により電気エネルギーを発生する。
【0017】
各セパレータは、ガス不透過性で導電性の部材からなる。例えば、各セパレータは、黒鉛板を切削加工して形成され、或いは、黒鉛粉末と樹脂の混合物をモールド加工して形成され、若しくは金属材料を加工しかつ表面に耐食性を付加すること等により形成されている。これらのセパレータは、電解質膜のアノード電極とカソード電極に接する燃料流路溝及び酸化剤流路溝等を有している。更に、第1実施形態では、燃料電池積層体3には冷却水流路溝が形成されたセパレータが使用されている。
【0018】
燃料電池1において各セパレータの外縁部から燃料流路溝と酸化剤流路溝に夫々導入された燃料ガス(例えば水素ガス)と酸化剤ガス(例えば空気)は、燃料流路溝と酸化剤流路溝を流通してアノード電極とカソード電極に供給される。これとともに、アノード電極とカソード電極で消費されなかった排ガス、及び電気化学反応により発生した水蒸気又は水は、燃料流路溝及び酸化剤流路溝を流通して各セパレータの外縁部から各流路溝の外部に排出される。更に、燃料電池積層体3のセパレータは既述のように冷却水流路溝を有しているので、この冷却水流路溝を流通する冷却水により、アノード電極とカソード電極での電気化学反応に伴い発生した熱は、燃料電池積層体3の外部に排出される。
【0019】
一対の集電板5は、導電性材料、例えば黒鉛のプレートからなる。これら導電板5の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。これら集電板5は、燃料電池積層体3の積厚方向の両端面、図3及び図4では燃料電池積層体3の上面及び下面に重なって夫々設置されている。集電板5には図示しない電流取出しケーブルが接続されている。燃料電池積層体3での電気化学反応により発生した電気エネルギーは、集電板5に集められ、ここから更に図示しない電力取出しケーブルを経由して燃料電池1の外部に取出される。
【0020】
一対の絶縁板7は、絶縁材料、例えば合成樹脂のプレートからなる。これら絶縁板7の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。これら絶縁板7は、燃料電池積層体3をその積厚方向に挟むように集電板5に重なって夫々設置されている。
【0021】
一対の保護板8は、絶縁板7より高強度の金属製例えば鋼板からなる。これら保護板8の平面視形状及び大きさは、燃料電池積層体3の平面視形状及び大きさと同じである。このため、保護板8の平面視形状及び大きさは、集電板5及び絶縁板7の平面視形状及び大きさとも同じである。これら保護板8は、燃料電池積層体3をその積厚方向に挟むように絶縁板7に重なって夫々設置されている。保護板8は、燃料電池1の軽量化を促進するために薄板であることが好ましく、例えば、後述する梁を構成する鋼板の板厚以下の薄い鋼板で形成するとよい。また、保護板8は、燃料電池1の軽量化を促進するために樹脂製や補強材入りの樹脂製であってもよい。
【0022】
これら保護板8はその四周の縁(周縁)に図6等に示すように縁板部9を夫々有している。各縁板部9は図3及び図4に示すように集電板5から離れる方向に折り曲げられている。これとともに、保護板8の縁に沿って延びた縁板部9の長さは、この縁板部9が折り曲げられた保護板8の縁の長さより短い。連結孔として例えばねじ孔9aが各縁板部9の夫々に少なくとも一個設けられている。
【0023】
第1マニホルド11〜第4マニホルド14は、一側面が開口された箱型の構造物であって、その一側面開口を燃料電池積層体3の側面に臨ませて、燃料電池積層体3の各側面を覆って配設されている。
【0024】
これらのマニホルドの取付け構造を説明する。第1マニホルド11〜第4マニホルド14の夫々は、その両端部に図1に示すように取付け部15を夫々有している。取付け部15は、板状であり、その大きさは縁板部9の大きさに略等しく、図示しないボルト通孔を複数有している。第1マニホルド11〜第4マニホルド14は、その取付け部15を保護板8の縁板部9に重ね合わせて、連結具例えばボルト16を前記ボルト通孔に通してねじ孔9aにねじ込むことにより、夫々取付けられている。こうして取付けられた各マニホルドと燃料電池積層体3の側面との間には図示しないシール材が挟まれていて、燃料電池積層体3の側面とこれを覆ったマニホルドとの間の気水密が確保されている。
【0025】
図2に示すように第1マニホルド11と第2マニホルド12は、燃料電池積層体3の互に平行な一対の側面を覆って配置され、第3マニホルド13と第4マニホルド14は、燃料電池積層体3の互に平行な他の一対の側面を覆って配置されている。図1及び図2に示すように第1マニホルド11と第2マニホルド12の例えば二箇所にマニホルド配管17,18が夫々突出され、第3マニホルド13と第4マニホルド14の例えば一箇所にマニホルド配管19が夫々突出されている。これらのマニホルド配管17〜19は、いずれも燃料電池積層体3の積厚方向と平行で、かつ、例えば図1において上向きに設けられている。
【0026】
マニホルド配管17〜19は、燃料又は空気若しくは冷却水を導くもので、これらを流通して燃料又は空気若しくは冷却水が、燃料電池積層体3に供給され或いは燃料電池積層体3から排出される。尚、これらマニホルド配管17〜19の配置は、燃料電池積層体3での燃料流路溝、酸化剤流路溝、及び冷却水流路溝の配置等に応じて適宜変更可能であり、図示の配置に制約されない。
【0027】
次に、締付け装置21について説明する。この締付け装置21は、図3等に示すように一対の締付けアセンブリ22と複数の締付け保持手段31を具備している。
【0028】
図5及び図6等に示すように締付けアセンブリ22は、燃料電池積層体3を挟む構造物である複数の締付け部材具体的には第1の梁23、第2の梁26、及びレジスタンス部品29を組み合わせて形成されている。
【0029】
第1の梁23は、金属製例えば板厚が2mm程度の鋼板製であり、図3〜図6に示すように相対向した側壁部23aと、側壁間壁部23bを有して、例えば長手方向と直交する断面の形状が溝形をなしている。相対向した側壁部23aは、燃料電池積層体3が有した単位電池の積厚方向と平行であり、側壁間壁部23bは相対向した側壁部23aの例えば高さ方向一端にわたって一体に設けられている。このため、第1の梁23は、その長手方向両端が夫々開放されているとともに、相対向した側壁部23aの高さ方向他端間も開放されている。
【0030】
第1の梁23は燃料電池積層体3の積厚方向の端面の対角線の長さより長い。この第1の梁23はその長手方向中央部に切欠き溝24を有している。具体的には、側壁部23aの長手方向中央部に切欠き溝24が夫々形成されている。これら切欠き溝24は第1の梁23の幅方向(側壁部23aにわたる方向)に互に対向しているとともに、側壁部23aの高さ方向他端縁、言い換えれば、側壁間壁部23bと反対側の縁に開放されている。更に、図6に示すように切欠き溝24の幅W1は第1の梁23の幅W2より広い。又、側壁間壁部23bの長手方向両端部に夫々連結孔25が開けられている。
【0031】
第2の梁26は第1の梁23と同様な構成である。つまり、第2の梁26は、金属製例えば板厚が2mm程度の鋼板製であり、相対向した側壁部26aと、側壁間壁部26bを有して、例えば長手方向と直交する断面の形状が溝形をなしている。相対向した側壁部26aは、燃料電池積層体3が有した単位電池の積厚方向と平行であり、側壁間壁部26bは相対向した側壁部26aの例えば高さ方向一端にわたって一体に設けられている。このため、第2の梁26は、その長手方向両端が夫々開放されているとともに、相対向した側壁部26aの高さ方向他端間も開放されている。
【0032】
図6に示すように第2の梁26の高さ寸法H1は、第1の梁23の高さ寸法H2より低く、例えば切欠き溝24の開放端から奥端までの高さ、つまり、切欠き溝24の奥行き寸法H3(図6参照)に等しい。更に、第2の梁26の幅W2は、切欠き溝24の幅W1より狭い。
【0033】
第2の梁26は、第1の梁23と同じ長さで、その長手方向中央部に切欠き溝27を有している。具体的には、側壁部26aの長手方向中央部に切欠き溝27が夫々設けられている。これら切欠き溝27は第2の梁26の幅方向(側壁部26aにわたる方向)に互に対向しているとともに、側壁部26aの高さ方向他端縁、言い換えれば、側壁間壁部26bと反対側の縁に開放されている。更に、切欠き溝27の幅W3は第2の梁26の幅W2より広い。又、側壁間壁部26bの長手方向両端部に夫々連結孔28が開けられている。
【0034】
第1の梁23と第2の梁26は、それらを展開した形状に、平らな鋼板をプレス機械により打ち抜いた後、この打ち抜かれた板を同じプレス機械若しくは他のプレス機械を用いて折り曲げることにより形成される。尚、前記打ち抜きの際には、切欠き溝及びに連結孔に相当する部位が同時に打ち抜かれる。したがって、材料取りが良いとともに、簡易に第1の梁23と第2の梁26を製造可能である。
【0035】
これら第1の梁23と第2の梁26は互に交叉してX字形状に組み合わされている。具体的には、第2の梁26が第1の梁23の切欠き溝24に通されている。これにより、第1の梁23及び第2の梁26の長手方向に延びる開口が同じ高さとなるとともに、第2の梁26の側壁間壁部26bが第1の梁23に形成された切欠き溝24の奥端に接した状態に、第1の梁23と第2の梁26が組み合わされている。
【0036】
このように組み合わせる作業において、切欠き溝24の幅W1より第2の梁26の幅W2が狭いので、切欠き溝24の縁と第2の梁26の側壁部26aが競ることがなく、切欠き溝24に第2の梁26を容易に通すことが可能である。
【0037】
レジスタンス部品29はむく(言い換えれば、中実)の金属製例えば鋼材製のブロックからなり、以下の形状に制約されないが、材料取りを向上するために四角形、具体的には菱形(図7参照)をなしたブロックが採用されている。このレジスタンス部品29の平行な二辺の長さは切欠き溝24の幅W1に略等しく、他の平行な他の二辺の長さ切欠き溝27の幅W3に略等しい。更に、図6に示すようにレジスタンス部品29の厚みTは、第1の梁23及び第2の梁26をなした鋼板の板厚より厚く、かつ、切欠き溝27の奥行き寸法H4に略等しい。
【0038】
ここに、略等しいとは、寸法が一致している態様を含んでいるとともに、切欠き溝24又は切欠き溝27とレジスタンス部品29の四周との間に僅かな隙間が形成される寸法関係にある態様も含んでいる。後者の態様を採用した場合、高い寸法精度が厳密に要求されないので、製造が容易でそれに応じた製造コストの低減を図ることが可能である。
【0039】
レジスタンス部品29は切欠き溝24,27に夫々嵌合して第1の梁23と第2の梁26の交叉部に配設されている。レジスタンス部品29の互に平行な二辺は、切欠き溝24の互に平行な溝縁に接触して又は極小な隙間を設けて配置され、かつ、互に平行な他の二辺は、切欠き溝27の互に平行な溝縁に接触して又は極小な隙間を設けて配置されている。このように配設されたレジスタンス部品29の切欠き溝27の開放端側の側面の高さ位置と、側壁部23aの側壁間壁部23bと反対側の縁及び側壁部26aの側壁間壁部26bと反対側の縁の高さ位置とは、同じである。このレジスタンス部品29により、第1の梁23と第2の梁26とがX字形状に交差した組み合わせ状態が保持されている。
【0040】
この保持状態をより確実にするとともに、製造において高い寸法精度が要求されないようにし、かつ、レジスタンス部品29を第1の梁23及び第2の梁26と一体に取扱うことができるようにするために、実施形態1では、レジスタンス部品29と第1の梁23及び第2の梁26が溶接されている。
【0041】
つまり、図7に示すようにレジスタンス部品29の各角部は第1の梁23及び第2の梁26の交叉部から突出されているので、これら角部と第1の梁23の側壁部23a及び第2の梁26の側壁部26aとが、図7に示すように夫々溶接されている。図7中符号30は溶接ビードを示している。尚、溶接に代えてねじ止めによりレジスタンス部品29を第1の梁23及び第2の梁26に固定することも可能である。又、この固定を担う溶接等は省略しても良い。
【0042】
前記構成の一対の締付けアセンブリ22のうちの一方は、第1の梁23及び第2の梁26が燃料電池積層体3の対角線上に位置されるように一方の保護板8上に配設される。この配設により、一方の締付けアセンブリ22が有した第1の梁23の側壁部23aと、第2の梁26の側壁部26aの長手方向に延びる縁と、レジスタンス部品29とが、一方の保護板8に接触される。同様に、他方の締付けアセンブリ22は、第1の梁23及び第2の梁26が燃料電池積層体3の対角線上に位置されるように他方の保護板8上に配設される。この配設により、他方の締付けアセンブリ22が有した第1の梁23の側壁部23aと、第2の梁26の側壁部26aの長手方向に延びる縁と、レジスタンス部品29とが、他方の保護板8に接触される。
【0043】
燃料電池積層体3を積厚方向に見た場合に、以上のように配設された一対の締付けアセンブリ22の第1の梁23の長手方向の端部と第2の梁26の長手方向の端部の夫々は、燃料電池積層体3の四隅から突出されて、これらの端部に形成された連結孔25同士、及び連結孔28同士は、夫々燃料電池積層体3の積厚方向に対向される。
【0044】
更に、以上のように締付けアセンブリ22が配設されるに伴い、保護板8の縁板部9及び各マニホルド11〜14の取付け部15、及びマニホルド配管17〜19が、第1の梁23の側壁部23aと、これに対向した第2の梁26の側壁部27bとの間のスペースに配設される。
【0045】
各締付け保持手段31は、例えば図1及び図4等に示すように少なくとも両端部にねじ部32aを有した締付け軸32と、これに螺合される一対のナット33とからなる。締付け保持手段31は、燃料電池積層体3をその厚み方向から挟むように配設された一対の締付けアセンブリ22を連結して設けられている。
【0046】
即ち、締付け軸32は、燃料電池積層体3の四隅近傍に、この燃料電池積層体3の積厚方向と略平行に配置されている。この締付け軸32の両端部のねじ部32aは、燃料電池積層体3の積厚方向に相対向した第1の梁23の連結孔25又は第2の梁26の連結孔28に夫々貫通されていて、このねじ部32aにナット33が螺合されている。ナット33はその締付けにより、第1の梁23の側壁間壁部23b又は第2の梁26の側壁間壁部26bに着座する。
【0047】
したがって、以上のように一対の締付けアセンブリ22と組み合わされた各締付け保持手段31のナット33が夫々締付けられることにより、締付け装置21の組立てが完了する。これに伴い、各締付け保持手段31の締付け力が締付けアセンブリ22に波及するので、積厚方向の両側に集電板5及び絶縁板7が重なって配置された燃料電池積層体3に対して、一対の締付けアセンブリ22が互に近付けられるように燃料電池積層体3が締付けられ、この積層体が有した複数の単位電池が互いに密接した積層状態に保持される。
【0048】
燃料電池1は、締付けアセンブリ22を備え、かつ、このアセンブリのX字状に交叉された第1の梁23と第2の梁26が、鋼板を断面溝形状に折り曲げた構成であるので、中実の鋼材で第1と第2の梁が一体に形成された構成の締付けアセンブリと同程度の強度を確保できる。これにより、燃料電池積層体3に、所定の締付け力が付与され、締付け面圧が小さい箇所の発生が抑制されるに伴い、締付け面圧が小さい箇所での積層部材間の接触抵抗の増加に伴う発電効率の低下を抑制可能である。
【0049】
既述のように第1の梁23と第2の梁26が薄い鋼板を断面溝形状に折り曲げた構成であるので、これらの梁が中実の鋼材で形成された構成に比較して、一対の締付けアセンブリ22の重量が軽くなる。それに伴い、燃料電池1を軽量化できる。
【0050】
締付けアセンブリ22の第1の梁23と第2の梁26は、それらが組み合わされた形状で材料取りされるのではなく、個々に鋼板から材料取りされ折り曲げて作られているので、これら材料取りに伴う材料の無駄が少ない。加えて、厚い鋼板を切断又は切削して第1の梁23と第2の梁26が形成されたものではなく、薄い鋼材をプレス加工等で折り曲げて第1の梁23と第2の梁26を形成できる。このように締付けアセンブリ22を得る上での材料費の削減と製造費の低減が可能であることに伴い、締付けアセンブリ22のコストが低減されるので、燃料電池1のコストを低減することが可能である。なお、第1の梁23と第2の梁26は、樹脂製や補強材入りの樹脂製で中空の構造としてもよい。これにより、中実で形成された構成に比較して、締付けアセンブリ22の重量が軽くなり、それに伴い、燃料電池1を軽量化でき、材料の使用量も削減できる。
【0051】
締付けアセンブリ22の第1の梁23と第2の梁26は、第1の梁23が有した切欠き溝24に第2の梁26を通してX字状に組まれている。このため、第2の梁26を切欠き溝24がない第1の梁23に重ね合わせて、これらをX字状に組み合わせた構成と比較して、締付けアセンブリ22の高さ寸法を低くできる。これにより、燃料電池1の高さ寸法の大形化を抑制することが可能できる。
【0052】
以上説明したように実施形態1に係る燃料電池1によれば、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能である。
【0053】
更に、第1実施形態の燃料電池1が備える締付けアセンブリ22は、第1の梁23の切欠き溝24及び第2の梁26の切欠き溝27に夫々略密に嵌合されたレジスタンス部品29を有している。このため、切欠き溝24により第1の梁23の長手方向中央部の強度が低下しているにも拘らず、締付け保持手段31による締付け力で、切欠き溝24の幅W1及び切欠き溝27の幅W3が変わることを抑制できる。
【0054】
つまり、切欠き溝24が狭まるように第1の梁23が変形することをレジスタンス部品29で抑制できるとともに、切欠き溝27が狭まるように第2の梁26が変形することをレジスタンス部品29で抑制できる。したがって、締付け保持手段31により一対の締付けアセンブリ22に与えられる締付け力が、締付けアセンブリ22を介して有効に燃料電池積層体3に波及されるので、燃料電池積層体3の締付け面圧を均一化することが可能である。
【0055】
この場合、第1の梁23の相対向する側壁部23aの長手方向に延びる縁、第2の梁26の相対向する側壁部26aの長手方向に延びる縁、及びレジスタンス部品29が、ともに保護板8に押付けられて、締付け力が燃料電池積層体3に波及される。このため、既述のように第2の梁26を切欠き溝24がない第1の梁23に重ね合わせて、これらをX字状に組み合わせた構成の場合のように、第1の梁23の高さ寸法に応じて保護板8から離れた状態にある第2の梁26に加えられる締付け力を、燃料電池積層体3に波及させるための中継部品を要しないので、構成が単純である。
【0056】
前記構成の燃料電池1は、締付けアセンブリ22が接する保護板8を備えているので、締付けアセンブリ22の形状にならって、このアセンブリが保護板8に接触する箇所に応力が集中することが緩和される。これにより、絶縁板7及び集電板5が、締付け荷重による応力集中で損傷することを防止することが可能である。
【0057】
燃料電池1が備える保護板8は、四角形でその四辺の夫々に略直角に折り曲げられた縁板部9を有している。これら縁板部9によって保護板8が補強されているので、締付け荷重による保護板8の変形が抑制される。これに伴い、保護板8が薄い場合であっても、締付けアセンブリ22から波及される締付け荷重が保護板8全体に分散されて、燃料電池積層体3の前面に対して締付け面圧を均一化することが可能である。
【0058】
更に、保護板8の縁板部9は、第1マニホルド11〜第4マニホルド14を支持するために利用されている。これにより、燃料電池積層体3の外側に配置される第1マニホルド11〜第4マニホルド14を取付ける構成を簡略にできる。
【0059】
図8及び図9は第2実施形態を示している。第2実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この第2実施形態の燃料電池では、締付けアセンブリ22の第2の梁26の構成等が、以下のように第1実施形態とは異なる。
【0061】
詳しくは、第2の梁26は長手方向に直交する断面が四角いむく(中実)の鋼材で作られていて、その長手方向中央部には切欠き溝は設けられていないとともに、連結孔28は第2の梁26を高さ方向に貫通して設けられている。第1の梁23の切欠き溝24の幅W1は、第2の梁26の幅W2と同じである。そのため、切欠き溝24を通って第1の梁23と交叉した第2の梁26の側面は、切欠き溝24の互に平行な縁24a(図9参照)に接している。この第2実施形態では、第1実施形態で採用したレジスタンス部品は省略されているとともに、第1の梁23と第2の梁26はその交叉部で溶接されていても良い。
【0062】
第2実施形態の燃料電池で、以上説明した以外の構成は図8及び図9に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第2実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ第1の梁23の採用による軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0063】
しかも、第2の梁26が中実であって、その側面が切欠き溝24の互に平行な縁24aに接しているので、締め付け保持手段31による締付け力で、第1の梁23が変形することを第2の梁26自体で実現できる。これにより、第1実施形態で採用したレジスタンス部品を省略できるので、第1実施形態の燃料電池と比較して部品点数及び組立て工数が少なくなり、それに伴って構成の単純化と更なるコストの低減を図ることが可能である。
【0064】
図10は第3実施形態を示している。第3実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0065】
この第3実施形態は、内部マニホルド式の燃料電池1とした点が第1実施形態とは異なる。
【0066】
第3実施形態で、燃料電池積層体3をなした各部材には複数の貫通孔(図示しない)が設けられていて、これら貫通孔は、セパレータに形成された燃料流路溝、又は酸化剤流路溝、或いは冷却水流路溝のいずれかに連続されている。更に、互に連通された各貫通孔がなす通路に連通する通孔(図示しない)が、集電板5、絶縁板7、及び保護板8の夫々設けられている。そして、集電板5、絶縁板7、保護板8のいずれかの通孔に、マニホルド配管17〜マニホルド配管19が接続されている。又、第3実施形態では、第1実施形態で採用した複数のマニホルドは省略されているとともに、保護板8の縁板部9に対して第1実施形態で採用したねじ孔(連結孔)は省略されている。
【0067】
第3実施形態の燃料電池1で、以上説明した以外の構成は図10に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第3実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0068】
しかも、内部マニホルド式の燃料電池であるので、第1実施形態で採用した複数のマニホルドを省略できるに伴い、更なる軽量化とコストの低減を図ることが可能である。
【0069】
図11は第4実施形態を示している。第4実施形態は以下説明する構成が第1実施形態とは相違しており、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一ないしは同様の機能を奏する構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0070】
この第4実施形態は、内部マニホルド式の燃料電池1とした点が第1実施形態とは異なる。
【0071】
第4実施形態で、燃料電池積層体3の四隅に、この積層体の積厚方向に貫通する通孔(図示しない)が夫々設けられている。これらの通孔には締付け保持手段31の締付け軸32が通されている。これとともに、第1の梁23と第2の梁26は、燃料電池積層体3を平面視した場合の対角線と略等しい長さに形成されている。又、燃料電池積層体3をなした各部材には複数の貫通孔(図示しない)が設けられていて、これら貫通孔は、セパレータに形成された燃料流路溝、又は酸化剤流路溝、或いは冷却水流路溝のいずれかに連続されている。更に、互に連通された各貫通孔がなす通路に連通する通孔(図示しない)が、集電板5及び絶縁板7に夫々設けられている。又、第4実施形態では、第1実施形態で採用した一対の保護板は省略されている。そして、集電板5と絶縁板7のいずれかの通孔には、マニホルド配管17〜マニホルド配管19が接続されている。又、第4実施形態では、第1実施形態で採用した複数のマニホルドは省略されている。
【0072】
第4実施形態の燃料電池で、以上説明した以外の構成は図11に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。したがって、この第4実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により前記課題が解決されて、高さ方向の大形化を抑制しつつ軽量化とコストの低減が可能な燃料電池を提供することが可能である。
【0073】
しかも、内部マニホルド式の燃料電池1であるので、第1実施形態で採用した複数のマニホルドを省略できるに伴い、構成の単純化並びに軽量化とコストの低減を図ることが可能である。加えて、第1実施形態と比較して保護板8の省略と第1の梁23及び第2の梁26が短いことにより、更なる構成の単純化並びに軽量化とコストの低減を図ることが可能であるとともに、燃料電池1の高さ方向以外の小形化も図ることが可能である。
【0074】
以上説明した各実施形態は単なる例示であり、これらに実施を制約されるものではなく、各実施形態の特徴を組み合わせて実施することが可能であるとともに、これらの特徴を燃料電池の構成の一部分のみに適用して実施することも可能である。例えば、第2実施形態で説明した中実な構成の第2の梁26は、第3、第4の実施形態の第2の梁に適用可能である。
【0075】
又、例えば第1、第3、第4の実施形態で採用した第1の梁23及び第2の梁26、第2実施形態で採用した第1の梁23は、断面溝形状の鋼材に代えて、単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有する構成であれば使用可能であり、例えば、長手方向に直交する方向の断面形状がH形断面又は中空の略四角形断面を有した鋼材を用いることも可能である。
【0076】
更に、締付けアセンブリは、第1の梁の長手方向中央部に、燃料電池積層体と反対体側に開放されて第2の梁が通る切欠き溝を設けるとともに、第2の梁の長手方向中央部に燃料電池積層体側に開放して第1の梁が通る切欠き溝を設けて、第1の梁と第2の梁をX字状に組み合わせた構成とすることもできる。この場合、各切欠き溝にレジスタンス部品を嵌合して、第1の梁に形成された切欠き溝の縁にこの溝に嵌合されたレジスタンス部品を溶接等により固定するとともに、第2の梁に形成された切欠き溝の縁にこの溝に嵌合された他のレジスタンス部品を溶接等により固定することで、締付け力で切欠き溝が互に開いて変形することがないように構成することが積層された単位電池相互間に所定の締付け面圧を確保する上で好ましい。
【符号の説明】
【0077】
1…燃料電池、3…燃料電池積層体、5…集電板、8…保護板、9…縁板部、9a…ねじ孔(連結孔)、11〜14…マニホルド、15…取付け部、16…ボルト(連結具)、21…締付け装置、22…締付けアセンブリ、23…第1の梁、23a…第1の梁の側壁部、23b…第1の梁の側壁間壁部、24…第1の梁の切欠き溝、W1…第1の梁の切欠き溝の幅、26…第2の梁、26a…第3の梁の側壁部、26b…第3の梁の側壁間壁部、27…第2の梁の切欠き溝、W3…第2の梁の切欠き溝の幅、29…レジスタンス部品、31…締付け保持手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体と、
この燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ、及びこれらのアセンブリを互に近付くように締付けて前記単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段とで形成された締付け装置と、を具備する燃料電池であって、
前記締付けアセンブリが、互に交叉して配置された第1の梁と第2の梁とを備え、
前記第1の梁と第2の梁のうちの少なくとも一方の梁がその長手方向中央部に切欠き溝を有していて、この切欠き溝に他方の梁が通されているとともに、
前記第1の梁と第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、前記単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有していることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記締付けアセンブリが、前記第1の梁と第2の梁との交叉部に配設されたレジスタンス部品を、更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記燃料電池積層体の積厚方向の端面上に集電板とこれに積層された絶縁板が配設されているとともに、前記絶縁板と前記締付けアセンブリとの間に保護板が挟まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記保護板が、前記集電板と略同形状で、かつ、前記保護板の周縁に前記集電板から離れる方向に折り曲げられて前記第1の梁と第2の梁の相対向した側面間に配設された縁板部を有していることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
両端部に取付け部を夫々有したマニホルドを更に備え、前記取付け部を前記燃料電池積層体の積厚方向の両側に夫々配設された前記保護板が有した前記縁板部に連結して、前記マニホルドが前記燃料電池積層体の側面を覆って配設されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項1】
複数の単位電池を積層してなる燃料電池積層体と、
この燃料電池積層体の積厚方向両側に夫々配設された一対の締付けアセンブリ、及びこれらのアセンブリを互に近付くように締付けて前記単位電池の積層状態を保持する締付け保持手段とで形成された締付け装置と、を具備する燃料電池であって、
前記締付けアセンブリが、互に交叉して配置された第1の梁と第2の梁とを備え、
前記第1の梁と第2の梁のうちの少なくとも一方の梁がその長手方向中央部に切欠き溝を有していて、この切欠き溝に他方の梁が通されているとともに、
前記第1の梁と第2の梁のうちの少なくとも一方の梁が、前記単位電池の積厚方向と平行でかつ相対向した側壁部と、これら側壁部にわたって一体に設けられた側壁間壁部とを有していることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記締付けアセンブリが、前記第1の梁と第2の梁との交叉部に配設されたレジスタンス部品を、更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記燃料電池積層体の積厚方向の端面上に集電板とこれに積層された絶縁板が配設されているとともに、前記絶縁板と前記締付けアセンブリとの間に保護板が挟まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記保護板が、前記集電板と略同形状で、かつ、前記保護板の周縁に前記集電板から離れる方向に折り曲げられて前記第1の梁と第2の梁の相対向した側面間に配設された縁板部を有していることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
両端部に取付け部を夫々有したマニホルドを更に備え、前記取付け部を前記燃料電池積層体の積厚方向の両側に夫々配設された前記保護板が有した前記縁板部に連結して、前記マニホルドが前記燃料電池積層体の側面を覆って配設されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−256540(P2012−256540A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129348(P2011−129348)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
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