説明

燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法

【課題】流通ガスに含まれる測定対象の物質を適切に計測することができ、燃焼プラントを好適に運転することができる燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】反応物質を投入する投入手段、投入手段で投入された反応物質と、流通ガスに含まれる対象物質とを反応させる処理手段、流路を流れる流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を、流通ガスの流れ方向に直交する面の複数点で近赤外波長のレーザ光を用いて計測する濃度計測手段、及び、濃度計測手段で計測した複数点における測定対象物質の濃度に基づいて濃度分布を評価する評価手段、を含む少なくとも1つの流通ガス処理ユニットと、評価手段での評価結果に基づいて、前記投入手段の動作を制御する制御手段と、を有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等の物質を燃焼して、焼却する燃焼プラントの制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物等の物質を焼却する焼却炉の管路を流れるガス、つまり排ガス、燃焼ガス等の流通ガスには、窒素酸化物(Nox)、酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SO)、塩化水素(HCl)煤塵等の種々の物質が含まれている。そのため、焼却炉から排出される排ガスは、種々の処理を行い、各種物質を取り除き、低減させた後、大気に排出される。
【0003】
また、焼却炉から排出される流通ガスの成分を分析するため、また、流通ガスの処理を適切に行うため、流通ガスを分析する装置がある。例えば、流通ガスに含まれるCOの濃度を計測する方法としては、NDIR法による計測方法(例えば、「JIS B 7951、2004年版」に記載された大気中の一酸化炭素自動計測器を用いた計測)がある。また、流通ガスに含まれるNoの濃度を計測する方法としては、O励化学発光計測による計測方法(例えば、「JIS B 7953、2004年版」に記載された大気中の窒素酸化物自動計測器を用いた計測)がある。例えば、流通ガスに含まれる粉塵を計測する方法としては、「JIS Z 7151、2000年版」に記載された計測方法がある。また、流通ガスに含まれるHClの濃度を計測する方法としては、「JIS B 7984、2006年版」に記載された排ガス中の塩化水素自動計測器を用いた計測方法がある。また、流通ガスに含まれるアンモニア(NH)の濃度を計測する方法としては、「JIS K 0099、2004年版」に記載された排ガス中のアンモニア分析方法を用いた計測方法がある。
【0004】
また、管路内を流れる混合ガス(主に流通ガス)に含まれる特定物質の濃度計測方法としては、管路の所定経路に、レーザ光を通過させ、その入出力から測定対象の特定物質の濃度を計測する方法がある。例えば、本件出願人が出願した特許文献1には、測定対象とされるガス状物質に固有な吸収波長のレーザ光を発振する光源と、この光源から発振されるレーザ光の発振波長を少なくとも2つの異なる周波数で変調する手段と、この変調手段により変調されたレーザ光を前記ガス状物質が存在する測定領域に導く手段と、この測定領域において透過または反射または散乱したレーザ光を受光する受光手段と、この受光手段で受光した信号の中から変調された信号を周波数毎に順次それぞれ復調する複数の位相敏感検波器と、を具備することを特徴とするガス濃度計測装置が記載されている。
【0005】
また、焼却炉での各種処理を制御する方法としては、例えば、特許文献2には、処理前ガスのNox濃度と、処理後の排ガス中のアンモニア濃度と、排ガスのNox濃度と、排ガスの流量とを測定し、測定結果から処理前のNox流量と、処理後のNox濃度と、脱硝設備での脱硝率の実績、処理後の排ガス中のアンモニア濃度を算出し、算出した各値と目標値との偏差を算出し、その偏差から補正量を算出し、算出した補正量の少なくとも1つに基づいて補正Nox流量を算出し、算出した補正Nox流量に基づいて処理前排ガスに注入するアンモニア流量を制御する脱硝制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3342446号公報
【特許文献2】特開2005−169331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述したJISに記載された計測方法は、いずれも、流通ガスの一部をサンプリングガスとして捕集し、前処理を行った後に計測を行う。この前処理には、数10分から数時間という時間が必要となる。そのため、計測を開始してから、実際に値が計測されるまでに時間がかかるという問題がある。
【0008】
これに対して、特許文献1に記載の方法は、測定対象の物質の濃度を短時間で計測することができる。しかしながら、特許文献1に記載の装置を用いた場合でも、焼却炉内の配管を流れる流通ガスの測定対象の成分の濃度を正確に計測できない場合がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されているように、窒素酸化物の濃度、脱硝率及び処理後の排ガスのアンモニア濃度の少なくとも1つを用いて、窒素酸化物の流量の偏差を補正することでも、窒素酸化物を低減することはでき、アンモニアの量も調整することはできる。
【0010】
しかしながら、特許文献2のように、予め作成したマップで尿素の噴射量を調整した場合でも、運転状態によっては、窒素酸化物が漏れ出たり、アンモニアが漏れ出たりすることがあるという問題がある。また、アンモニアの濃度を計測する場合もアンモニアの濃度の計測結果に誤差があると、窒素酸化物が漏れ出たり、アンモニアが漏れ出たりする。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流通ガスに含まれる測定対象の物質を適切に計測することができ、燃焼プラントを好適に運転することができる燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、燃焼炉と、前記燃焼炉で物質を燃焼させて生成される流通ガスを流す流路とを備える燃焼プラントの反応動作を制御する燃焼プラント制御装置であって、前記流路内に反応物質を投入する投入手段、前記流通ガスの流れ方向において、前記投入手段の下流側に配置され、前記投入手段で投入された反応物質と、前記流通ガスに含まれる対象物質とを反応させる処理手段、前記流路を流れる流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を、前記流通ガスの流れ方向に直交する面の複数点で計測する濃度計測手段、及び、前記濃度計測手段で計測した複数点における測定対象物質の濃度に基づいて濃度分布を評価する評価手段、を含む少なくとも1つの流通ガス処理ユニットと、前記評価手段での評価結果に基づいて、前記投入手段の動作を制御する制御手段と、を有し、前記濃度計測手段は、前記測定対象物質の吸収波長を含み、かつ、近赤外波長域のレーザ光を出力する発光部と、前記流通ガスが流れるガス計測セル、前記ガス計測セルにレーザ光を入射させる光学系、前記発光部から入射され、前記ガス計測セルを通過したレーザ光を受光する受光部を含む少なくとも1つの計測ユニットと、前記発光部から出力したレーザ光の強度と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記ガス計測セルを流れる前記流通ガスの前記測定対象物質の濃度を算出する算出部とを有することを特徴とする。
【0013】
上記燃焼プラント制御装置を用いることで、測定対象の物質を短時間でかつより正確に算出することができ、より正確な制御を実行することができる。
【0014】
ここで、前記濃度計測手段は、互いに異なる測定点の濃度を計測する前記計測ユニットを複数有し、前記ガス計測セルが、前記流路であり、前記光学系が、他の前記光学系とは異なる位置に配置され、前記流路内にレーザ光を入射させ、前記受光部が、他の前記受光部とは異なる位置に配置され、前記流路を通過したレーザ光を受光することが好ましい。これにより、短時間で複数の測定点の濃度を計測できる。
【0015】
また、前記濃度計測手段は、一方の端部が前記流路内に配置され、他方の端部が前記計測セルと接続され、前記流路から流通ガスを捕集し、前記計測セルに供給するサンプリング配管、前記サンプリング配管の前記一方の端部の前記流路内における位置を検出する位置検出部、をさらに有し、前記サンプリング配管の前記一方の端部の流路内における位置を移動させることで、複数の測定点における前記測定対象物質の濃度を計測することが好ましい。これにより、より簡単な構成で複数の測定点での濃度の計測を行うことができる。
【0016】
また、前記濃度計測手段は、前記サンプリング配管の前記一方の端部の位置を移動させるサンプリング位置移動部をさらに有することが好ましい。これにより、自動で測定点を変更させることができる。
【0017】
また、前記濃度計測手段は、前記流路を構成する壁面に形成された、前記サンプリング配管を挿入する挿入口を少なくとも1箇所以上有することが好ましい。これにより、より多くの点を測定点とすることができる。また、サンプリング配管を簡単な構成にすることができる。
【0018】
また、前記濃度計測手段は、前記流通ガスの流れ方向において、前記処理手段の下流側に配置されていることが好ましい。これにより、反応後の測定対象物質の濃度を計測することができる。
【0019】
また、前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、燃焼処理ユニットであり、前記燃焼処理ユニットは、前記処理手段が、前記燃焼炉であり、前記反応物質が空気であり、前記投入手段が、前記燃焼炉に一次空気及び二次空気を供給する空気供給手段であり、前記測定対象物質が一酸化炭素であることが好ましい。これにより、燃焼炉による燃焼をより好適な条件とすることができる。
【0020】
また、前記燃焼処理ユニットは、前記濃度計測手段が、計測結果に基づいて流通ガスに含まれる煤塵の量の分布も計測し、前記評価手段は、前記濃度計測手段で計測した複数点における一酸化炭素の濃度に基づいて濃度分布を評価し、かつ、前記濃度計測手段で計測した複数点における煤塵の量に基づいて煤塵分布を評価し、前記制御手段は、前記一酸化炭素の濃度分布と、前記煤塵分布とに基づいて、前記空気供給手段から前記燃焼炉に供給する一次空気及び二次空気の量を調整することが好ましい。これにより、煤塵と一酸化炭素の発生をより好適に抑制することができる。
【0021】
また、前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、塩化水素処理ユニットであり、前記塩化水素処理ユニットは、前記処理手段が、集塵器であり、前記反応物質が消石灰であり、前記投入手段が、前記集塵器の上流の流路に消石灰を供給する消石灰供給手段であり、前記測定対象物質が塩化水素であることが好ましい。これにより、塩化水素をより好適に低減することができる。
【0022】
また、前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、窒素酸化物処理ユニットであり、前記窒素酸化物処理ユニットは、前記処理手段が、脱硝塔であり、前記反応物質がアンモニアであり、前記投入手段が、前記脱硝塔の上流の流路に窒素酸化物を還元する還元剤を供給する還元剤供給手段であり、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の少なくとも一方であることが好ましい。これにより、脱硝処理をより適切に実行することができる。
【0023】
また、前記窒素酸化物処理ユニットは、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の両方であることが好ましい。これにより、アンモニアの漏れを抑制しつつ、窒素酸化物を低減することができる。
【0024】
また、前記窒素酸化物処理ユニットは、還元剤がアンモニア水であることが好ましい。これにより、簡単な処理で還元剤を用いることができる。
【0025】
また、前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、上流窒素酸化物処理ユニットであり、前記上流窒素酸化物処理ユニットは、前記処理手段が、集塵器であり、前記反応物質がアンモニアであり、前記投入手段が、前記集塵器の上流の流路に窒素酸化物を還元する還元剤を供給する還元剤供給手段であり、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の少なくとも一方であることが好ましい。これにより、集塵器においても脱硝処理を行うことができる。
【0026】
また、前記上流窒素酸化物処理ユニットは、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の両方であることが好ましい。これにより、アンモニアの漏れを抑制しつつ、窒素酸化物を低減することができる。
【0027】
また、前記上流窒素酸化物処理ユニットは、還元剤がアンモニア水であることが好ましい。これにより、簡単な処理で還元剤を用いることができる。
【0028】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、燃焼炉と、前記燃焼炉で物質を燃焼させて生成される流通ガスを流す流路とを備える燃焼プラントに対し、投入手段により前記流路内に反応物質を投入し、前記流通ガスの流れ方向において前記投入手段の下流側に配置された反応手段で、前記投入手段で投入された反応物質と、前記流通ガスに含まれる対象物質とを反応させる反応動作を制御する燃焼プラント制御方法であって、前記流路を流れる流通ガスに対して、測定対象物質の吸収波長を含み、かつ、近赤外波長域のレーザ光を出力させ、第1流通ガスが流れる管路内を通過した前記レーザ光を受光し、出力したレーザ光の強度と、受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測する計測処理を前記流通ガスの流れ方向に直交する面の複数点で行う計測ステップと、前記計測ステップで計測した複数点での計測結果に基づいて、測定対象物質の分布を評価する評価ステップと、前記評価ステップでの評価結果に基づいて、前記投入手段の動作を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする。
【0029】
上記燃焼プラント制御方法を用いることで、測定対象の物質を短時間でかつより正確に算出することができ、より正確な制御を実行することができる。
【0030】
ここで、前記計測ステップは、前記反応手段を通過した流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測することが好ましい。これにより、反応した流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測することができ、より適切に制御を実行することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法は、測定対象の物質を短時間でかつより正確に算出することができ、より正確な制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の燃焼プラント制御装置を有するゴミ焼却プラントの一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すプラント制御装置の濃度計測手段の概略構成を示す模式図である。
【図3】図3は、図2に示す濃度計測手段の計測手段本体の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、プラント制御装置の動作を説明するフロー図である。
【図5】図5は、燃焼炉を流れる流通ガスの一酸化炭素濃度の分布の一例を示す説明図である。
【図6】図6は、プラント制御装置の濃度計測手段の他の例の概略構成を示す模式図である。
【図7】図7は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【図9】図9は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【図11】図11は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【図12】図12は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明にかかる燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、ゴミとしては、種々の廃棄物を対象とすることができる。また、ゴミ以外のものを焼却炉で焼却する焼却システムにも用いることができる。
【0034】
[実施形態1]
図1は、本発明の燃焼プラント制御装置を有するゴミ焼却プラントの一実施形態の概略構成を示す模式図である。図1に示すようにゴミ焼却プラント(燃焼プラント、廃棄物焼却システム)1は、基本的に、投入ホッパ2と、焼却炉3と、灰処理部4と、ボイラ5と、焼却減温塔6と、集塵器7と、脱硝塔8と、ファン9と、煙突10とを有する。また、ゴミ焼却プラント1は、さらに、空気量調整手段11と、濃度計測手段12と、減温水タンク13と、消石灰供給手段14と、活性炭貯留タンク15と、特反剤貯留タンク16と、押込ファン17と、アンモニア水供給手段18と、評価手段19と、制御手段20と、を有する。なお、本実施形態のゴミ焼却プラント1では、プラント制御装置21が、焼却炉3と、空気量調整手段11と、濃度計測手段12と、評価手段19と、制御手段20とで構成される。
【0035】
投入ホッパ2は、ゴミの投入部であり、クレーン等の搬送手段によりゴミの集積部から搬送されたゴミが投入される。投入ホッパ2は、焼却炉3と繋がっている。
【0036】
焼却炉3は、ゴミを燃焼させる燃焼機器であり、投入ホッパ2から投入されたゴミを燃焼させる。焼却炉3としては、ストーカ式焼却炉、流動床式焼却炉、バーナ式焼却炉等の種々の焼却炉を用いることができる。本実施形態は、焼却炉3としてストーカ式焼却炉を用いている。ここで、焼却炉3には、空気量調整手段11と、濃度計測手段12とが設けられている。なお、濃度計測手段12については、後ほど説明する。
【0037】
空気量調整手段11は、焼却炉3に一次空気と二次空気を供給する空気供給手段であり、送風機22、第1空気供給配管24、流量調整弁26、第2空気供給配管28、流量調整弁30、空気量制御手段32と、を有する。
【0038】
送風機22は、空気を送るブロワ、ファン等であり、第1空気供給配管24、第2空気供給配管28に空気を送る。なお、送風機22から第1空気供給配管24、第2空気供給配管28に送る空気の量、流速等は、空気量制御手段32の制御に基づいて調整すればよい。なお、本実施形態では、送風機22と接続している1本の配管が、第1空気供給配管24、第2空気供給配管28に分岐している。なお、配管の構成はこれに限定されない。
【0039】
第1空気供給配管24は、吹出口(送風機22と接続している端部とは反対側の端部)が焼却炉3に露出するように配置された配管であり、送風機22から供給された空気を吹出口から焼却炉3内に排出する。ここで、第1空気供給配管24の吹出口は、燃料炉3の底面近傍に設けられている。つまり、吹出口は、燃焼空気の移動経路(流れ方向)において、最上流に近い位置から焼却炉3内に空気(一次空気)を吹き出すように配置されている。また、第1空気供給配管24は、吹出口を焼却炉3に所定の間隔で複数配置することが好ましい。
【0040】
流量調整弁26は、第1空気供給配管24の流路に配置されており、第1空気供給配管24を流れる空気の量を調整する。これにより、流量調整弁26は、焼却炉3に供給する一次空気の量を調整する。
【0041】
第2空気供給配管28は、吹出口(送風機22と接続している端部とは反対側の端部)が焼却炉3に露出するように配置された配管であり、送風機22から供給された空気を吹出口から焼却炉3内に排出する。ここで、第2空気供給配管28の吹出口は、燃焼空気の移動経路(流れ方向)において、第1空気供給配管24の吹出口よりも下流側に配置されている。つまり、第2空気供給配管28は、第1空気供給配管24から空気(一次空気)が供給された流通ガスに空気(二次空気)を供給する。また、第2空気供給配管28も、吹出口を焼却炉3に所定の間隔で複数配置することが好ましい。
【0042】
流量調整弁30は、第2空気供給配管28の流路に配置されており、第2空気供給配管28を流れる空気の量を調整する。これにより、流量調整弁30は、焼却炉3に供給する二次空気の量を調整する。
【0043】
空気量制御手段32は、送風機22から供給する空気量、流速、流量調整弁26、30の開度を調整することで、焼却炉3に供給する一次空気、二次空気の流量、流速を調整、制御する。
【0044】
このように、焼却炉3には、燃焼領域に供給する空気の量を調整する空気量調整手段11が設けられており、投入ホッパ2から受け入れた廃棄物(ゴミ)を火格子上にて移送しながら、火格子の下方に位置する第1空気供給配管24より一次空気を導入し、火格子の上方に形成された一次燃焼室にて燃焼させ、さらに焼却炉本体の上方に位置する第2空気供給配管28より二次空気の導入により形成された二次燃焼室にて、一次燃焼室で発生した流通ガス中の未燃ガスを再燃焼させる。焼却炉3でゴミを燃焼させることで発生した燃焼灰は灰処理部4に送られ、流通ガスは配管によりボイラ5に送られる。
【0045】
灰処理部4は、焼却炉3でゴミが燃焼されることで生成される燃焼灰を回収する。ここで、灰処理部4は、回収した燃焼灰をそのまま廃棄するようにしてもよいが、例えば、回収した灰を、灰溶融炉で溶融し、溶融されて得られた溶融スラグを生成することが好ましい。このようにして、作成した溶融スラグは、路盤材、コンクリート用骨材、アスファルト混合用骨材等種々の用途に再生利用することができる。
【0046】
ボイラ5は、焼却炉3から排出される高温の流通ガスから熱を回収する。ボイラ5で熱を回収された流通ガスは、焼却減温塔6に送られる。
【0047】
焼却減温塔6は、減温水が貯留されている減温水タンク13と接続されており、ボイラ5から送られた流通ガスに減温水タンク13からの減温水を噴霧し、流通ガスを冷却する。焼却減温塔6で冷却された流通ガスは、集塵器7に送られる。
【0048】
ここで、焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管31aには、消石灰供給手段14、活性炭貯留タンク15、特反剤貯留タンク16、押込ファン17とが接続されている。消石灰供給手段14は、消石灰を貯留する消石灰貯留タンク36と、消石灰貯留タンク36に貯留されている消石灰を焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管31aに噴射する噴射手段38とを有する。消石灰供給手段14は、噴射手段38により消石灰貯留タンク36に貯留されている消石灰を搬送することで、消石灰を焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管31aに供給する。なお、噴射手段38としては、消石灰を搬送する各種機構を用いることができ、例えば、消石灰を空気の流れにより搬送するポンプを用いることができる。活性炭貯留タンク15は、活性炭を貯留するタンクであり、特反剤貯留タンク16は、特反剤を貯留するタンクである。また、押込ファン17は、活性炭貯留タンク15に貯留されている活性炭と、特反剤貯留タンク16に貯留されている特反剤とを、焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管31aに送る。焼却減温塔6から集塵器7に向けて流れる流通ガスに、消石灰、活性炭が供給されることで、流通ガスに含まれる有害物質が中和される。具体的には、消石灰により、流通ガス内の酸性ガス、例えばHCl、SOxを中和させることができ、活性炭により、流通ガス内のダイオキシン類を除去することができる。また、特反剤(珪藻土)を投入することで、濾布の目詰まりを抑制することができる。
【0049】
集塵器7は、配管31aを介して焼却減温塔6と接続されており、焼却減温塔6から該配管を31a通過した流通ガスが供給される。集塵器7は、流通ガス中に含まれる、流通ガスと消石灰との中和反応または流通ガスと活性炭との中和反応で得られた塩類、飛灰(煤塵)、酸性ガスを除去する。集塵器7で塩類、飛灰(煤塵)、酸性ガスを除去された流通ガスは、配管31bを通過して脱硝塔8に送られる。
【0050】
ここで、配管31bには、アンモニア水供給手段18が配置されている。アンモニア水供給手段18は、配管31b内にアンモニア水を供給する供給手段である。配管31bを流れる流通ガスは、アンモニア水供給手段18によりアンモニア水が供給された状態で、脱硝塔8に送られる。
【0051】
脱硝塔8は、配管31bを介して集塵器7と接続されており、集塵器7から配管31bを通過した流通ガスが供給される。脱硝塔8は、流通ガス中に含まれる窒素酸化物と、アンモニア水供給手段18から供給されたアンモニア水から生成したアンモニアとを反応させ、流通ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する。なお脱硝塔8の構成は特に限定されないが、内部に、アンモニアと窒素酸化物との反応を促進させる触媒を設けることが好ましい。このように触媒を設けることで、アンモニアと窒素酸化物との反応を促進させることができ、未反応のアンモニアや窒素酸化物が脱硝塔8から排出されることを抑制することができる。また、触媒としては、選択還元型触媒(SCR触媒)を用いることが好ましい。なお、本実施形態では、窒素酸化物と反応させる物質、つまり還元剤として、アンモニア水を用いたが、これには限定されない。還元剤としては、尿素水等のアンモニアを生成することができる物質を用いることができる。また、アンモニアに限定されず、窒素酸化物を還元する他の物質も用いることができる。
【0052】
脱硝塔8で窒素酸化物が除去された流通ガスは、ファン9により煙突10から外部に排出される。ゴミ焼却プラント1は、以上のようにして、ゴミを燃焼する。また、ゴミ焼却プラント1は、ゴミの燃焼により発生した流通ガスは、流通ガス中の有害物質を除去、低減した後、煙突10から排出する。
【0053】
評価手段19は、濃度計測手段12での計測結果に基づいて評価を行う。この点については、後述する。また、制御手段20は、ゴミ焼却プラント1の各部、例えば、空気量調整手段11、濃度計測手段12、消石灰供給手段14、押し込みファン17、アンモニア水供給手段18、評価手段19の動作を制御する。また、制御手段20は、プラント制御装置21の制御手段でもあり、評価手段19で算出された評価に基づいて、空気量調整手段11の動作を制御する。
【0054】
次に、濃度計測手段12及びプラント制御装置21について説明する。図2は、図1に示すゴミ焼却プラントの濃度計測手段の概略構成を示す模式図であり、図3は、図2に示す濃度計測手段の計測手段本体の概略構成を示すブロック図である。
【0055】
まず、濃度計測手段12の構成について説明する。濃度計測手段12は、焼却炉3の測定点にレーザ光(レーザ)を通過させる計測ユニット41と、計測ユニット41にレーザ光を供給し、受光したレーザ光の強度から計測値を算出する計測手段本体42とを有する。なお、濃度計測手段12は、焼却炉3の複数の測定点における一酸化炭素の濃度及び粉塵濃度(粉塵の量)を計測する。なお、濃度計測手段12は、流通ガスの流れ方向に直交する面における複数の点を測定点とする。
【0056】
計測ユニット41は、光ファイバ44と、光軸切替手段45と、複数の入光部48a〜48jと、複数の受光部50a〜50jと、受光信号切替手段52とを有する。
【0057】
光ファイバ44は、一方の端部が計測手段本体42と接続され、他方の端部が複数に分岐され、それぞれ入光部48a〜48jに連結されている。光ファイバ44は、計測手段本体42から出力されたレーザ光を入光部48a〜48jに案内する。つまり、光ファイバ44は、計測手段本体42から出力されたレーザ光を入光部48a〜48jの少なくとも1つに入射させる。なお、図2では、光ファイバ44を1本の線状の部材を途中で分岐させた構成としたが、光ファイバ44を複数の線状の部材として、計測手段本体42とそれぞれの入光部48a〜48jとが、別々の光ファイバで繋がっている構成としてもよい。
【0058】
光軸切替手段45は、光ファイバ44の経路上に配置され、計測手段本体42から出力されるレーザ光を入射させる複数の入光部48a〜48jを切り替える切替機構である。つまり、光軸切替手段45は、入光部48a〜48jの中から選択した入光部に計測手段本体42から出力されるレーザ光を入射させる。なお、光軸切替手段45の構成は、特に限定されず、光ファイバ44の分岐部に設け、分岐部で、レーザ光を伝達する光ファイバ44の分岐管と、レーザ光を伝達させない光ファイバ44の分岐管とを選択することで、一部の入光部のみにレーザ光を入射させることができる。また、光軸切替手段45は、光ファイバ44内における光の進行方向(経路)を調整することで、レーザ光が到達する入光部を切り替えるようにしてもよい。
【0059】
入光部48a〜48jは、焼却炉3の壁面に配置された光学系(ミラー、レンズ等)であり、光ファイバ44により案内されたレーザ光を焼却炉3の内部に入射させる。なお、入光部48a〜48jは、焼却炉3に入射させたレーザ光が、流通ガスの進行方向に直交する1つの面上、つまり同一面上を通過する位置に配置されている。なお、入光部48a〜48jは、同一平面上の異なる経路を通過する。本実施形態では、焼却炉3の断面が四角形形状であり、入光部48a〜48jは、隣接する2辺に一定間隔で5個ずつ配置されている。つまり、焼却炉3の一辺には、入光部48a、48b、48c、48d、48eの5つの入光部が、一定間隔で配置されおり、該一辺に隣接する一辺には、入光部48f、48g、48h、48i、48jの5つの入光部が、一定間隔で配置されている。
【0060】
受光部50a〜50jは、焼却炉3の内部を通過したレーザ光を受光する受光部である。受光部50a〜50jは、入光部48a〜48jから入射されたレーザ光が到達する焼却炉3の壁面に配置されている。ここで、本実施形態では、入光部48a〜48jは、配置された焼却炉3の壁面に直交する方向に入射させる。そのため、受光部50a〜50jは、それぞれ、入光部48a〜48jが配置されている辺に対面する辺に形成されている。つまり、入光部48aと、受光部50aとは、向かい会って配置されており、入光部48aから焼却炉3に入射されたレーザ光は、焼却炉3を通過した後、受光部50aに入射する。また、入光部48b〜入光部48jと、受光部50b〜受光部50jとも夫々、互いに対面して配置されており、入光部48b〜48jのそれぞれから焼却炉3に入射されたレーザ光も、焼却炉3を通過した後、対面した位置に配置された受光部50b〜50jに入射する。受光部50a〜50jは、例えば、フォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器を備え、光検出器によってレーザ光を受光し、その光の強度を検出する。受光部50a〜50jは、受光したレーザ光の強度を受光信号として、受光信号切替手段52を介して計測手段本体42に送る。
【0061】
受光信号切替手段52は、計測手段本体42に入力する受光信号を切り替える手段である。つまり、受光信号切替手段52は、受光部50a〜50jのうち、いずれの受光部から入力された受光信号を、計測手段本体42に入力するかを切り替える手段である。
【0062】
また、計測手段本体42は、図3に示すように、発光部62と、光源ドライバ64と、算出部66とを有する。発光部62は、測定対象の物質である一酸化炭素が吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子である。発光素子としては、例えばレーザーダイオード(LD)を用いることができる。発光部62は、発光させた光を光ファイバ44に入射させる。
【0063】
光源ドライバ64は、発光部62の駆動を制御する機能を有し、発光部62に供給する電流、電圧を調整することで、発光部62から出力されるレーザ光の波長、強度を調整する。
【0064】
算出部66は、受光部50a〜50jのいずれかで受光したレーザ光の強度の信号と、光源ドライバ64を駆動させている条件とに基づいて、測定対象の物質の濃度を算出する。具体的には、算出部66は、光源ドライバ64を駆動させている条件に基づいて、発光部62から出力され、焼却炉3に入射するレーザ光の強度を算出し、受光部50a〜50jの少なくとも1つで受光したレーザ光の強度と比較し、焼却炉3を流れる流通ガスに含まれる測定対象の物質(測定対象物質、一酸化炭素)の濃度を算出する。ここで、濃度計測手段12は、一酸化炭素の濃度を計測するために、発光部62から出力させるレーザ光の波長を一定波長範囲で変化させる。算出部66は、一定幅の波長の計測結果に基づいて、計測された値から値の変化量(つまり、測定対象の物質が光を吸収する吸収波長域における強度と、吸収波長域ではない波長域における強度との差分)に基づいて、濃度を計測する。また、算出部66は、一定幅の波長の計測結果に基づいて、計測された値から吸収が最も大きい波長を吸収波長として特定し、その波長の強度に基づいて濃度を計測することもできる。
【0065】
また、算出部66は、測定点(測定線)における煤塵の量も計測する。ここで、算出部66には、予め計測された粉塵が含まれていない場合における発光部の強度と受光部の強度との関係が記憶されている。算出部66は、測定対象の物質の濃度の計測時に、計測される測定対象の物質の吸収波長域以外の波長(測定対象の物質により吸収されていない波長域)の光の強度と、粉塵が含まれていない場合における発光部の強度と受光部の強度との関係とに基づいて、受光部での光の減少を計測し、計測結果に基づいて、粉塵濃度を計測する。つまり、算出部66は、焼却炉3の通過時に粉塵により減衰された光の強度を算出し、その減衰量から流通ガス中の粉塵濃度を計測する。なお、受光部で検出される光の強度と、粉塵濃度との関係は、計算によっても算出することはできるが、予め実験等で算出しておくことが好ましい。
【0066】
濃度計測手段12は、以上のような構成であり、発光部62から出力された近赤外波長域のレーザ光は、光ファイバ44及び光軸切替手段45を通過して入光部48a〜48jの少なくとも1つに入射される。入光部48a〜48jの少なくとも1つに入射されたレーザ光は、該当する入光部から焼却炉3内のそれぞれの経路を通過して、入射された入光部48a〜48jに対応する受光部50a〜50jに到達する。このとき、焼却炉3内の流通ガス中に測定対象の物質(一酸化炭素)が含まれていると、焼却炉3内を通過するレーザ光(の吸収波長成分)が測定対象の物質に吸収される。そのため、レーザ光は、流通ガス中の測定対象の物質の濃度によって、受光部50a〜50jに到達するレーザ光(の吸収波長成分)の出力が変化する。受光部50a〜50jは、受光したレーザ光を受光信号に変換し、受光信号切替手段52を介して、算出部66に出力する。また、光源ドライバ64は、発光部62から出力したレーザ光の強度を算出部66に出力する。算出部66は、発光部62から出力した光の強度と、受光信号から算出される強度とを比較し、その減少割合から焼却炉3内を流れる流通ガスの測定対象の物質の濃度を算出する。このように濃度計測手段12は、いわゆるTDLAS方式(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:可変波長ダイオードレーザー分光法)を用い、発光部62から出力したレーザ光の強度と、受光部で検出した受光信号とに基づいて焼却炉3内の所定位置、つまり、測定位置を通過する流通ガス中の測定対象の物質の濃度を、算出及び/または計測する。また、濃度計測手段12は、上述したように測定対象の物質の濃度とともに粉塵濃度も算出及び/または計測する。また、濃度計測手段12は、連続的に測定対象の物質の濃度、粉塵濃度を、算出及び/または計測する。
【0067】
さらに、濃度計測手段12は、光軸切替手段45及び受光信号切替手段52により、計測に使用する入光部48a〜48jと受光部50a〜50jとの組み合わせを切り替え、焼却炉3の同一面内の異なる測定点における測定対象の物質(一酸化炭素)の濃度と、粉塵濃度を計測する。濃度計測手段12は、計測した、各測定点の測定対象の物質(一酸化炭素)の濃度と、粉塵濃度を評価手段19に送る。
【0068】
評価手段19は、濃度計測手段12から送られてきた各測定点の測定対象の物質(一酸化炭素)の濃度と、粉塵濃度とに基づいて、測定領域(測定面)における、測定対象の物質(一酸化炭素)の濃度の分布と、粉塵濃度の分布を算出する。さらに、評価手段19は、算出した、測定対象の物質(一酸化炭素)の濃度の分布と、粉塵濃度の分布に基づいて評価を行い、評価結果を制御手段20に送る。なお、評価手段19は、評価結果として、分布情報をそのまま送ってもよいが、分布情報に基づいて算出した制御の要否や、重み付け情報を評価結果として送ってもよい。
【0069】
制御手段20は、上述したように、ゴミ焼却プラント1の各部、例えば、空気量調整手段11、濃度計測手段12、消石灰供給手段14、押し込みファン17、アンモニア水供給手段18、評価手段19の動作を制御する。また、制御手段20は、プラント制御装置21の制御手段でもあり、評価手段19で算出された評価に基づいて、空気量調整手段11の動作を制御する。
【0070】
次に、プラント制御装置21の動作を説明する。ここで、図4は、プラント制御装置の動作を説明するフロー図である。まず、プラント制御装置21は、ステップS12として、濃度計測手段12により、各測定点のCO濃度(一酸化炭素濃度)と、粉塵濃度を計測する。なお、CO濃度(一酸化炭素濃度)と、粉塵濃度の計測は、上述した方法で実行すればよい。また、濃度計測手段12は、計測に用いる入光部と受光部とを切り替えることで、複数の測定点における各計測値を計測することができる。濃度計測手段12は、各測定点における計測値の情報を評価手段19に送る。
【0071】
プラント制御装置21は、ステップS12で各計測点での計測を行ったら、ステップS14として、評価手段19により、濃度分布(CO濃度の濃度分布と、粉塵濃度の濃度分布)算出する。その後、プラント制御装置21は、ステップS16として、評価手段19により、濃度分布に基づいて、燃焼バランスを評価する。評価手段19は、ステップS16で燃焼バランスを評価したら、評価した結果を制御手段20に送る。その後、プラント制御装置21は、ステップS18として、制御手段20により、評価結果に基づいて、一次空気量、二次空気量を決定する。つまり、制御手段20は、評価結果に基づいて、一酸化炭素及び煤塵の排出をより減らせる一次空気量、二次空気量を算出する。制御手段20は、一次空気量、二次空気量を決定したら、決定した制御値を空気量制御手段32に送る。
【0072】
その後、プラント制御装置21は、ステップS20として、決定した制御値に基づいて、空気量制御手段32で制御を行い、一次空気量、二次空気量を調整する。つまり、空気量制御手段32により、送風機22の流量、流量調整弁26、30の開度を調整し、焼却炉3に供給される一次空気量、二次空気量を調整する。プラント制御装置21は、上記処理を繰り返すことで、測定領域における一酸化炭素濃度、煤塵濃度に基づいて、焼却炉3に供給する一次空気量、二次空気量を調整する。
【0073】
このように、ゴミ焼却プラント1、及び、プラント制御装置21は、濃度計測手段12として、測定対象の吸収波長域の近赤外波長域のレーザ光を照射し、当該測定対象の物質により吸収される強度を検出することで、短時間で、かつ、高い精度で測定対象物の濃度を計測することができる。さらに、近赤外波長域のレーザ光を用いる計測では、測定対象の物質以外の成分が混在した状態であっても、測定対象の物質の濃度を適切に測ることができる。つまり、測定対象の変換物以外の成分がノイズとなりにくくすることができる。また、前処理を行うことなく、計測が可能であるので、ゴミ焼却プラント1を流れる流通ガスを直接計測することができる。
【0074】
また、濃度計測手段12により、複数の測定点で測定を行うことで、より高い精度で、流通ガスの各濃度を計測することができる。ここで、図5は、燃焼炉を流れる流通ガスの一酸化炭素濃度の分布の一例を示す説明図である。なお、図5は、流通ガスの流れ方向に直交する面を示している。例えば、焼却炉3を流れる流通ガスの一酸化炭素の濃度は、図5に示すように、焼却炉3の位置(流通ガスの流れ方向に直交する面の位置)によって、大きく変化する。具体的には、図5に示す分布では、焼却炉3の4隅のうち1つの隅の近傍で濃度が高い領域があり、その領域の中心から離れるに従って濃度が低くなる分布となっている。また、濃度分布は、燃焼炉3で燃焼させる物質や、その状態に応じて変化する。このため、一点の計測では、適切な制御ができない場合がある。これに対して、ゴミ焼却プラント1、及び、プラント制御装置21は、濃度計測手段12により複数の測定点で、測定対象の物質の濃度を計測し、濃度の分布を算出し、それに基づいて、供給する流体の量(一次空気量、二次空気量)を調整している。以上より、ゴミ焼却プラント1、及び、プラント制御装置21は、より高い精度で流通ガスを分析することができ、その分析結果に基づいて制御を行うことができる。これにより、より適切な制御を行うことができ、一酸化炭素の濃度を抑制しつつ、煤塵の排出も抑制することができる。
【0075】
また、濃度計手段12として、測定対象の物質の吸収波長域の近赤外波長域のレーザ光を照射し、当該測定対象の物質により吸収される強度を検出する方式を用いることで、短時間で、かつ、高い精度で測定対象物の濃度を計測することが可能となる。これにより、複数点で計測を行った場合でも、短時間で濃度分布を算出することができ、高い応答性で制御を行うことができる。
【0076】
なお、プラント制御装置21は、本実施形態の計測に用いる入光部と受光部の組み合わせを順次切り替えることで、他の入光部と受光部による影響を受けることなく、濃度を計測することができ、精度を高くすることができる。なお、プラント制御装置21は、これに限定されず、複数の入光部と受光部の組み合わせで同時に計測を行うようにしてもよい。この場合は、計測時間をより短くすることができる。
【0077】
なお、焼却炉3は、レーザ光が入射する入射部(入光部に対応する位置)と出射する出射部(受光部に対応する位置)のみを、光を透過する材料で形成しても、焼却炉3の全体、または計測領域の外周の全面を、光を透過する材料で形成してもよい。また、焼却炉3内に少なくとも2枚の光学ミラーを設け、入射部から入射されたレーザ光を光学ミラーで多重反射させた後、出射部から出力させるようにしてもよい。このようにレーザ光を多重反射させることで、焼却炉3内のより多くの領域を通過させることができる。これにより、焼却炉3内を流れる流通ガスに濃度の分布の影響をより小さくすることができ、正確に濃度を検出することができる。
【0078】
ここで、複数の測定点で測定対象物質の濃度を計測する濃度計測手段は、上記構成に限定されない。ここで、図6は、プラント制御装置の濃度計測手段の他の例の概略構成を示す模式図である。図6に示す濃度計測手段112は、焼却炉3の測定点から流通ガスを捕集するサンプリング配管120と、サンプリング配管120を挿入する挿入口122と、サンプリング配管120を移動させる位置移動部124と、位置移動部124を案内するレール126と、サンプリング配管120の位置を検出する位置検出部126と、サンプリング配管120で捕集した流通ガスにレーザ光(レーザ)を通過させる計測ユニット141と、計測ユニット141にレーザ光を供給し、受光したレーザ光の強度から計測値を算出する計測手段本体42とを有する。なお、濃度計測手段112も、焼却炉3の複数の測定点における一酸化炭素の濃度及び粉塵濃度(粉塵の量)を計測する。なお、濃度計測手段112も、流通ガスの流れ方向に直交する面における複数の点を測定点とする。
【0079】
サンプリング配管120は、焼却炉3の内部に挿入可能な挿入管であり、一方の端部が焼却炉3の内部に配置され、他方の端部が、計測ユニット141と連結されている。なお、サンプリング配管120は、計測ユニット141との接続部がフレキシブルな材料で形成されており、変形、伸張可能な配管となっている。サンプリング配管120は、焼却炉3の内部に配置されている端部から流通ガスを吸引し、吸引した流通ガスを計測ユニット141に供給する。
【0080】
挿入口122は、焼却炉3にサンプリング配管120を挿入するための開口(焼却炉3の内部と外部とをつなげる連通口)であり、焼却炉3の壁面に形成されている。なお、挿入口122は、焼却炉3の壁面に複数形成されている。
【0081】
位置移動部124は、サンプリング配管120の位置を移動させる移動機構である。位置移動部124は、サンプリング配管120を挿入口122に対して伸縮方向、つまり、サンプリング配管120のうち焼却炉3に挿入されている部分の長さが延び縮みする方向に移動させる。さらに、位置移動部124は、サンプリング配管120を挿入する挿入口122を切り替えるために移動させる。つまり、位置移動部124は、サンプリング配管120を保持した状態で、焼却炉3の壁面に沿って配置されているレール126に沿って移動し、対面する位置に配置されている挿入口122を切り替えることで、サンプリング配管120を挿入する挿入口122を切り替える。位置移動部124で、サンプリング配管120の位置を移動させることで、サンプリング配管120が流通ガスを捕集(吸引)する焼却炉3上における位置、つまり測定領域内における測定点の位置を切り替えることができる。
【0082】
位置検出部128は、サンプリング配管120と位置移動部124との相対距離や、位置移動部124のレール126上における位置とに基づいて、サンプリング配管120の焼却炉3の内部に配置されている端部位置を検出する。位置検出部128は、検出した位置情報を評価手段119に送る。例えば、図6に示すように所定の挿入口122にサンプリング配管120が挿入されている場合は、位置検出部128は、その挿入量に基づいて、サンプリング配管120の先端が、測定点180aにあるか、測定点180bにあるか、測定点180cにあるかを検出し、その検出結果を評価手段119に送る。
【0083】
次に、計測ユニット141は、計測セル144と、光ファイバ146と、入光部148と、受光部150と、を有する。
【0084】
計測セル144は、基本的に主管152と、流入管154と、排出管156とを有する。主管152は、筒形状の部材であり、内部に流通ガスが流れる。主管152の筒形状の一方の端部(上面)には窓158が配置され、他方の端部(下面)には窓159が配置されている。つまり、主管152は、筒形状の上面と下面が、それぞれ窓158、窓159に塞がれた形状となっている。なお、窓158、159は、光を透過する部材、例えば、透明なガラス、樹脂等で構成されている。これにより、主管152は、窓158、159が設けられている両端部が、空気が流通しない状態で、かつ、光が透過できる状態となる。つまり、主管152の外部から内部に光を入射させ、主管152の内部から外部に光を射出させることができる。
【0085】
流入管154は、一方の端部がサンプリング配管120に接続されており、他方の端部が、主管152の側面(周面)の窓159側に接続されている。排出管156は、一方の端部が、主管152の側面(周面)の窓158側に接続され、他方の端部が、より下流側の配管と接続されている。計測セル144は、サンプリング配管120を介して流通ガスを流入管154から主管152に供給する。また、計測セル144は、主管152を流れた流通ガスを排出管156から外部に排出する。
【0086】
次に、光ファイバ146は、計測手段本体42から出力されるレーザ光を入光部148に案内する。なお、本実施形態では、光ファイバ146は、一方の端部が計測手段本体42にと接続され、他方の端部が1つの入光部148のみに接続している。計測手段本体42から出力されたレーザ光を入光部148に入射させる。入光部148も、窓158に配置された光学系(ミラー、レンズ等)であり、光ファイバ146により案内されたレーザ光を窓158から主管152の内部に入射させる。
【0087】
受光部150は、計測セル144の主管152の内部を通過し、窓159から出力されたレーザ光を受光する受光部である。受光部150は、受光したレーザ光の強度を受光信号として、計測手段本体142に送る。
【0088】
濃度計測手段112は、レーザ光を通過させる領域を流通ガスが流れている焼却炉3から、サンプリングした流通ガスが流れている主管152にしたが、濃度計測手段12と同様に、測定対象の物質(一酸化炭素)を吸収する赤外波長域のレーザ光を用いて、その吸収を計測することで、一酸化炭素の濃度を計測することができる。
【0089】
なお、評価手段119は、濃度計測手段112の計測装置本体42で算出される濃度の情報と、位置検出部128で検出される位置情報とを対応付けることで、濃度の分布を算出することができる。
【0090】
また、濃度計測手段112のように、焼却炉3からサンプリング配管120で流通ガスを捕集し、濃度を計測する方法を用いた場合でも、サンプリング配管120を位置移動部124で移動させることで、複数の測定点で濃度を計測することができる。このように、複数の測定点で濃度を計測し、その結果に基づいて、評価手段119と制御手段20により上述と同様の制御を行うことができる。
【0091】
また、このようにサンプリングする場合であっても、フィルタや、除湿の工程をなくすまたは少なくすることができ、サンプリング配管120で流通ガスを吸引してから、計測を行い、計測結果を算出するまでの時間を短時間にすることができる。つまり、計測の時間遅れを少なくすることができる。これにより、応答性を高くすることができる。なお、本実施形態の場合は、レーザ光を案内する機構を簡単にすることができるが、流通ガスをサンプリングする時間や、サンプリング配管120を移動させる時間が必要になるため、濃度計測手段12に比べると応答性は低下する。
【0092】
なお、上記実施形態では、正確に制御することができ、また手間を少なくできるため、サンプリング配管120を自動で移動できるようにしたが、手動で移動させる構成としてもよい。この場合も位置検出部128で位置を検出することで、濃度分布を算出することができる。また、上記実施形態では、サンプリング配管120を一本としたが、複数本設ける構成としてもよい。サンプリング配管120を複数本設ける場合は、濃度を検出する機構を複数設ける構成としてもよいし、計測セルに流入させる管路を切り替える構成としてもよい。
【0093】
なお、上記実施形態では、測定対象の物質を一酸化炭素、煤塵濃度の両方としたが、一酸化酸素濃度のみを検出して、その結果に基づいて空気量調整手段11の動作を制御してもよい。また、測定対象の物質、測定する位置、また、制御対象は、これに限定されない。プラント制御装置は、ゴミ焼却プラント(燃焼プラント)に供給される種々の流体を制御対象とすることができる。つまり、プラント制御装置は、燃焼プラントに供給され、流通ガスと反応する種々の流体を制御対象とすることができる。また、測定対象も流通ガスに含まれる種々の成分とすることができるが、基本的には、制御対象により、流通ガスの流路内に供給される反応物質と、流通ガスに含まれ反応物質と反応する対象物質との反応の状態を判定することができる物質を計測対象とする。以下、図7から図12を用いて、本発明の他の実施形態について説明する。
【0094】
[実施形態2]
図7は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。図7に示すゴミ焼却プラント201は、プラント制御装置202の構成を除いて他の構成は、ゴミ焼却プラント1と同様である。そこで、ゴミ焼却プラント1と同様の構成については、同様の符号を付し、その説明を省略する。以下、ゴミ焼却プラント201に特有の点を重点的ついて説明する。図7に示すようにゴミ焼却プラント201は、基本的に、投入ホッパ2と、焼却炉3と、灰処理部4と、ボイラ5と、焼却減温塔6と、集塵器7と、脱硝塔8と、ファン9と、煙突10とを有する。また、ゴミ焼却プラント201は、さらに、空気量調整手段11と、減温水タンク13と、消石灰供給手段14と、活性炭貯留タンク15と、特反剤貯留タンク16と、押込ファン17と、アンモニア水供給手段18と、濃度計測手段212と、評価手段219と、制御手段220と、を有する。なお、本実施形態のゴミ焼却プラント201では、プラント制御装置202が、集塵器7と、消石灰供給手段14と、濃度計測手段212と、評価手段219と、制御手段220とで構成される。なお、本実施形態では、集塵器7が処理手段となる。
【0095】
濃度計測手段212は、測定位置が焼却炉3から配管31bとなり、測定対象の物質が流通ガスに含まれる一酸化炭素及び煤塵に変えて、流通ガスに含まれる塩化水素(HCl)となる。このため、濃度計測手段212は、発光部として、測定対象の物質である塩化水素が吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を用いる。なお、濃度計測手段212は、上述した濃度計測手段12と同様の構成で、いわゆるTDLAS方式を用いて、複数の測定点における測定物質(塩化水素)の濃度を計測し、計測結果を評価手段219に送る。なお、濃度計測手段212には、図2に示す構成または図6に示す構成等、種々の構成を用いることができる。
【0096】
評価手段219は、濃度計測手段212から送られてきた各測定点の測定対象の物質(塩化水素)の濃度に基づいて、測定領域(測定面)における、測定対象の物質(塩化水素)の濃度の分布を算出する。さらに、評価手段219は、算出した、測定対象の物質(塩化水素)の濃度の分布に基づいて評価を行い、評価結果を制御手段220に送る。
【0097】
制御手段220は、ゴミ焼却プラント201の各部、例えば、空気量調整手段11、濃度計測手段212、消石灰供給手段14、押込ファン17、アンモニア水供給手段18、評価手段219の動作を制御する。また、制御手段220は、プラント制御装置202の制御手段でもあり、評価手段219で算出された評価に基づいて、消石灰供給手段14の動作を制御する。
【0098】
次に、プラント制御装置202の動作を説明する。ここで、図8は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。なお、図8に示すフロー図は、噴射手段38から噴射する消石灰の量により塩化水素濃度を調整する場合である。まず、プラント制御装置202は、ステップS102として、濃度計測手段212により、各測定点の塩化水素濃度を計測する。なお、塩化水素濃度の計測は、上述した方法で実行すればよい。また、濃度計測手段212は、計測に用いる入光部と受光部とを切り替えることで、または、サンプリング配管の位置を調整することで、複数の測定点における各計測値を計測することができる。濃度計測手段212は、各測定点における計測値の情報を評価手段219に送る。
【0099】
プラント制御装置202は、ステップS102で各計測点での計測を行ったら、ステップS104として、評価手段219により、濃度分布(塩化水素濃度の濃度分布)を算出する。その後、プラント制御装置202は、ステップS106として、評価手段219により、濃度分布に基づいて、分布バランスを評価する。評価手段219は、ステップS106で分布バランスを評価したら、評価した結果を制御手段220に送る。なお、分布バランスとしては、濃度分布の情報をそのまま用いてもよいが、種々の指標に加工してもよい。
【0100】
プラント制御装置202は、評価結果が制御手段220に送られたら、制御手段220により、ステップS112として、評価された塩化水素濃度が上限目標値よりも大きいかを判定する。なお、評価結果と比較する目標値は、予め設定されている数値である。なお、条件によって変動する数値を用いることもできる。制御手段220は、ステップS112で計測された塩化水素濃度が上限目標値よりも大きい(Yes)と判定したら、ステップS114に進み、現状設定されている消石灰噴射量を一定量増加させる。つまり、噴射手段38から噴射される消石灰の量を一定量多くする。その後、制御手段220は、ステップS120に進む。
【0101】
また、ステップS112で、制御手段220が評価された塩化水素濃度が上限目標値以下である(No)と判定したら、ステップS116に進み、評価(計測)された塩化水素濃度が下限目標値よりも小さいかを判定する。制御手段220は、ステップS116で、評価された塩化水素濃度が下限目標値よりも小さい(Yes)と判定したら、ステップS118に進み、現状設定されている消石灰噴射量を一定量低減させる。つまり、噴射手段38から噴射される消石灰の量を一定量少なくする。その後、制御手段220は、ステップS120に進む。また、制御手段220は、ステップS116で、評価された塩化水素濃度が下限目標値以上である(No)と判定したら、ステップS120に進む。
【0102】
制御手段220は、ステップS120で、流通ガスの排出が停止しているか(つまり、ゴミ焼却システム201が停止しているか)を判定する。制御手段220は、ステップS20で、流通ガスの排出が停止していない(No)と判定したらステップS102に進み、上述した処理を繰り返す。他方、制御手段220は、ステップS120で、流通ガスの排出が停止している(Yes)と判定したら処理を終了する。
【0103】
プラント制御装置202は、このようにして、噴射手段38の消石灰噴射量を制御する。なお、上記制御では、消石灰噴射量を一定量増加、低減させたが、これに限定されない。例えば、塩化水素濃度が下限目標値以下の場合は、消石灰噴射量を維持するようにしてもよい。また、消石灰噴射量は、噴射回数で調整しても、1回の噴射量で調整してもよい。また、塩化水素濃度の上限目標値と下限の目標値とは、異なる値としてもよい。つまり、ステップS112で使用される上限の目標値とステップS116で使用される下限の目標値を異なる目標値としてもよい。塩化水素濃度の上限の目標値と下限の目標値とを異なる値とすることで、消石灰噴射量を変化させない塩化水素濃度の範囲を一定の濃度範囲とすることができる。なお、塩化水素濃度の上限の目標値と下限の目標値とを同一の値としてもよい。
【0104】
なお、制御手段220は、測定位置における塩化水素濃度の上限目標値及び/または下限目標値を、焼却炉3の運転条件によって変化させても、運転条件にかかわらず一定としてもよい。運転条件によって、上限目標値及び/または下限目標値を変化させた場合は、流通ガス中に含まれる窒素酸化物の量の増減に対応して消石灰の噴射量を制御することができ、窒素酸化物をより適切に低減することができ、測定位置の塩化水素濃度を目標値に近い値に維持することができる。なお、上限目標値及び/または下限目標値を一定にして、上限目標値及び/または下限目標値と運転条件との関係から消石灰の噴射量、噴射タイミングを制御する場合も同様である。また、塩化水素濃度の上限目標値及び/または下限目標値を運転条件にかかわらず一定とした場合は、運転条件を検出する必要がなくなり、測定手段を少なくすることができ、ゴミ焼却プラント(プラント制御装置)の装置構成を簡単にすることができる。また条件に応じて目標値を算出する必要が無くなるため、制御が簡単になる。
【0105】
ゴミ焼却プラント201及びプラント制御装置202は、以上のような構成であり、焼却炉3で生成され、各部を通過した流通ガスは、噴射手段38で消石灰が噴射された後、集塵器7を通過する。その後、流通ガスは、濃度計測手段212が配置された領域を流れる。その際、濃度計測手段212は、流通ガスの塩化水素濃度を計測する。その後、流通ガスは、脱硝塔8を通過した後、煙突10から外部に排出される。なお、プラント制御装置202は、上述したように、濃度計測手段212での計測結果に基づいて噴射手段38による消石灰の噴射を制御する。
【0106】
プラント制御装置202は、濃度計測手段212により、濃度計測手段12と同様の計測方法で、塩化水素濃度を検出することで、短時間で正確に、かつ連続的に流通ガス中の塩化水素濃度の分布を計測することができる。これにより、流通ガスに含まれる塩化水素の濃度を分布に基づいて制御ができるため、より正確に消石灰の噴射の制御を行うことができる。さらに、計測開始から計測結果の算出までの時間を短くすることができ、計測の時間遅れを短い時間にすることができ、より正確に消石灰の噴射の制御を行うことができる。つまりタイムラグをより小さくできるため、条件等が変化し、塩化水素の濃度、排出量が変化した場合も迅速に対応することが可能となる。これにより、集塵器7に混入する消石灰の量をより少なくすることができ、消石灰の消費量を少なくすることができる。また、濃度計測手段212の計測結果に基づいて、煙突10から排出される流通ガス中の塩化水素濃度を算出することで、一定以上の濃度の塩化水素が外部に排出されることを抑制することができる。
【0107】
[実施形態3]
図9は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。図9に示すゴミ焼却プラント301は、プラント制御装置302の構成を除いて他の構成は、ゴミ焼却プラント1と同様である。そこで、ゴミ焼却プラント1と同様の構成については、同様の符号を付し、その説明を省略する。以下、ゴミ焼却プラント301に特有の点を重点的に説明する。図9に示すようにゴミ焼却プラント301は、基本的に、投入ホッパ2と、焼却炉3と、灰処理部4と、ボイラ5と、焼却減温塔6と、集塵器7と、脱硝塔8と、ファン9と、煙突10とを有する。また、ゴミ焼却プラント301は、さらに、空気量調整手段11と、減温水タンク13と、消石灰供給手段14と、活性炭貯留タンク15と、特反剤貯留タンク16と、押込ファン17と、アンモニア水供給手段18と、濃度計測手段312と、評価手段319と、制御手段320と、を有する。なお、本実施形態のゴミ焼却プラント301では、プラント制御装置302が、脱硝塔8と、アンモニア水供給手段18と、濃度計測手段312と、評価手段319と、制御手段320とで構成される。なお、本実施形態では、脱硝塔8が処理手段となる。
【0108】
濃度計測手段312は、測定位置が焼却炉3から脱硝塔8の下流側となり、測定対象の物質が流通ガスに含まれる一酸化炭素及び煤塵に変えて、流通ガスに含まれるアンモニア(NH)となる。このため、濃度計測手段312は、発光部として、測定対象の物質であるアンモニアが吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を用いる。なお、濃度計測手段312は、上述した濃度計測手段12と同様の構成で、いわゆるTDLAS方式を用いて、複数の測定点における測定物質(アンモニア)の濃度を計測し、計測結果を評価手段319に送る。なお、濃度計測手段312には、図2に示す構成または図6に示す構成等、種々の構成を用いることができる。
【0109】
評価手段319は、濃度計測手段312から送られてきた各測定点の測定対象の物質(アンモニア)の濃度に基づいて、測定領域(測定面)における、測定対象の物質(アンモニア)の濃度の分布を算出する。さらに、評価手段319は、算出した、測定対象の物質(アンモニア)の濃度の分布に基づいて評価を行い、評価結果を制御手段320に送る。
【0110】
制御手段320は、ゴミ焼却プラント301の各部、例えば、空気量調整手段11、濃度計測手段312、消石灰供給手段14、押し込みファン17、アンモニア水供給手段18、評価手段319の動作を制御する。また、制御手段320は、プラント制御装置302の制御手段でもあり、評価手段319で算出された評価に基づいて、アンモニア水供給手段18の動作を制御する。
【0111】
制御手段320は、濃度計測手段312の検出結果に基づいて、アンモニア水供給手段18から噴射するアンモニア水の量及び噴射するタイミングをPID制御により制御する。具体的には、アンモニア濃度が所定値よりも低い場合は、一度に噴射するアンモニア水の量を多くしたり、アンモニア水を噴射する間隔を短くしたりする。また、アンモニア濃度が所定値よりも高い場合は、一度に噴射するアンモニア水の量を少なくしたり、アンモニア水を噴射する間隔を長くしたりする。
【0112】
次に、プラント制御装置302の動作を説明する。ここで、図10は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。なお、図10に示すフロー図は、噴射手段3から噴射する消石灰の量によりアンモニア濃度を調整する場合である。まず、プラント制御装置302は、ステップS202として、濃度計測手段312により、各測定点のアンモニア濃度を計測する。なお、アンモニア濃度の計測は、上述した方法で実行すればよい。また、濃度計測手段312は、計測に用いる入光部と受光部とを切り替えることで、または、サンプリング配管の位置を調整することで、複数の測定点における各計測値を計測することができる。濃度計測手段312は、各測定点における計測値の情報を評価手段319に送る。
【0113】
プラント制御装置302は、ステップS202で各計測点での計測を行ったら、ステップS204として、評価手段319により、濃度分布(アンモニア濃度の濃度分布)を算出する。その後、プラント制御装置302は、ステップS206として、評価手段319により、濃度分布に基づいて、分布バランスを評価する。評価手段319は、ステップS206で分布バランスを評価したら、評価した結果を制御手段320に送る。なお、分布バランスとしては、濃度分布の情報をそのまま用いてもよいが、種々の指標に加工してもよい。
【0114】
次に、プラント制御装置302の制御手段320は、評価結果のアンモニア濃度が制御手段320に入力されたら、ステップS212として、評価(計測)されたアンモニア濃度が上限目標値よりも大きいかを判定する。制御手段320は、ステップS212で計測されたアンモニア濃度が上限目標値よりも大きい(Yes)と判定したら、ステップS214に進み、現状設定されているアンモニア水噴射量(供給量)を一定量低減する。つまり、アンモニア水供給手段18から噴射されるアンモニア水の量を一定量少なくする。その後、制御手段320は、ステップS220に進む。
【0115】
また、ステップS212で、制御手段320が計測されたアンモニア濃度が上限目標値以下である(No)と判定したら、ステップS216に進み、計測されたアンモニア濃度が目標値よりも小さいかを判定する。制御手段320は、ステップS216で、計測されたアンモニア濃度が下限目標値よりも小さい(Yes)と判定したら、ステップS218に進み、現状設定されているアンモニア水噴射量(供給量)を一定量増加させる。つまり、アンモニア水供給手段18から噴射されるアンモニア水の量を一定量多くする。その後、制御手段320は、ステップS220に進む。また、制御手段320は、ステップS216で、計測されたアンモニア濃度が下限目標値以上である(No)と判定したら、ステップS220に進む。
【0116】
制御手段320は、ステップS220で、流通ガスの排出が停止しているか(つまり、ゴミ焼却プラント301が停止しているか)を判定する。制御手段320は、ステップS220で、流通ガスの排出が停止していない(No)と判定したらステップS202に進み、上述した処理を繰り返す。他方、制御手段320は、ステップS220で、流通ガスの排出が停止している(Yes)と判定したら処理を終了する。
【0117】
プラント制御装置202は、このようにして、アンモニア水供給手段18のアンモニア水噴射量を制御する。なお、上記制御では、アンモニア水供給量を一定量増加、低減させたが、これに限定されない。例えば、アンモニア濃度が下限目標値以下の場合は、アンモニア水供給量を予め設定した基準値としてもよく、アンモニア濃度が上限目標値以上の場合は、アンモニア水供給量を0にするようにしてもよい。また、アンモニア水供給量は、噴射回数で調整しても、1回の噴射量で調整してもよい。また、アンモニア濃度の上限目標値と下限目標値とは、異なる値としてもよいし、同じ値としてもよい。つまり、ステップS212で使用される上限目標値とステップS216で使用される下限目標値を異なる目標値としてもよい。アンモニア濃度の上限目標値と下限目標値とを異なる値とすることで、アンモニア水供給量を変化させないアンモニア濃度の範囲を一定の濃度範囲とすることができる。
【0118】
ゴミ焼却プラント301及びプラント制御装置302は、以上のような構成であり、焼却炉3で生成された流通ガスは、各部で不純物が除去された後、配管31bに供給される。配管31bに供給された流通ガスは、アンモニア水供給手段18からアンモニア水が噴射された後、アンモニア水及びアンモニア水から生成されたアンモニアとともに脱硝塔8を通過する。流通ガスは、アンモニアとともに脱硝塔8を通過することで、流通ガスに含まれる窒素酸化物とアンモニアとが反応し、窒素酸化物が低減される。その後、流通ガスは、煙突10からから大気中に排出される。ここで、プラント制御装置302は、上述したように、脱硝塔8を通過した流通ガスのアンモニア濃度を濃度計測手段312により計測し、その計測結果に基づいて、アンモニア水供給手段18が噴射するアンモニア水の量、噴射タイミングを制御している。
【0119】
プラント制御装置302は、脱硝塔8を通過した流通ガスのアンモニア濃度を計測し、その結果に応じてアンモニア水の噴射量を制御している。このように、脱硝塔8を通過したアンモニア濃度に基づいて、アンモニア水の噴射量を制御することで、アンモニアと窒素酸化物の反応状態に即してアンモニア水の噴射量を制御することができる。
【0120】
プラント制御装置302は、濃度計測手段312により、濃度計測手段12と同様の計測方法で、アンモニア濃度を検出することで、短時間で正確に、かつ連続的に流通ガス中のアンモニア濃度の分布を計測することができる。これにより、流通ガスに含まれるアンモニアの濃度を分布に基づいて制御ができるため、より正確にアンモニアの噴射の制御を行うことができる。さらに、計測開始から計測結果の算出までの時間を短くすることができ、計測の時間遅れを短い時間にすることができ、より正確にアンモニアの噴射量の制御を行うことができる。つまりタイムラグをより小さくできるため、条件等が変化し、アンモニアの濃度、排出量が変化した場合も迅速に対応することが可能となる。これにより、脱硝塔8による脱硝処理をより好適に制御することができる。
【0121】
なお、ゴミ焼却プラント301は、上述したようにアンモニアが漏れ出ることを抑制できるが、大気中に漏れ出るアンモニアをより低減するために、脱硝塔8よりも下流側にアンモニアを酸化する酸化触媒を設けることが好ましい。なお、酸化触媒を設けても、脱硝塔8は、上述したように、アンモニアが漏れ出る量を低減できているため、従来よりも酸化触媒をより小型化することができる。これにより、脱硝塔8の装置構成をより簡単にすることができ、重量も軽くすることができる。さらに、アンモニアを酸化することで発生する窒素酸化物を低減することができる。
【0122】
また、制御手段320は、測定位置におけるアンモニア濃度の目標値を、焼却炉3の運転条件によって変化させても、運転条件にかかわらず一定としてもよい。運転条件によって、目標値を変化させた場合は、流通ガス中に含まれる窒素酸化物の量の増減に対応してアンモニア水の噴射量を制御することができ、窒素酸化物をより適切に低減することができ、測定位置のアンモニア濃度を目標値に近い値に維持することができる。なお、目標値を一定にして、目標値と運転条件との関係からアンモニア水の噴射量、噴射タイミングを制御する場合も同様である。また、アンモニア濃度の目標値を運転条件にかかわらず一定とした場合は、運転条件を検出する必要がなくなり、測定手段を少なくすることができ、脱硝塔の装置構成を簡単にすることができる。また条件に応じて目標値を算出する必要が無くなるため、制御が簡単になる。また、アンモニアが漏れることを抑制することができる。
【0123】
なお、脱硝塔には、尿素SCR触媒としてゼオライト系の触媒を用いることが好ましい。これにより、流通ガスが高温であっても、触媒として適切に機能させることができる。また、ゼオライト系は、アンモニアの吸着量が多く、また温度や触媒劣化によって性能が変化するためマップ等による制御は困難であるが、本発明のように、脱硝塔8を通過した流通ガスのアンモニア濃度を計測し、その計測結果に基づいてアンモニア水噴射量(供給量)を制御することで、脱硝塔8の触媒として、SCR触媒(選択還元型触媒)のゼオライト系の触媒を用いた場合でも、アンモニアが漏れ出ることを抑制することができる。
【0124】
また、上記実施形態では、アンモニア水供給手段18から噴射するアンモニア水の量を制御したが、本発明はこれに限定されず、アンモニア水の噴射量に加えてまたは代えて、尿素水を噴射するようにしてもよい。また、アンモニア水、尿素水、アンモニアガスのいずれかを供給するようにしてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、濃度計測手段312により、アンモニア濃度のみを計測し、脱硝塔8を通過した流通ガスのアンモニア濃度のみからアンモニア水供給量を制御したが、本発明はこれに限定されない。例えば、濃度計測手段312は、アンモニアに加え、窒素酸化物(No、例えば、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素)の濃度を計測し、計測した窒素酸化物の濃度にも基づいて、アンモニア水の噴射量を制御するようにしてもよい。
【0126】
なお、この場合、濃度計測手段312は、発光部として、アンモニアが吸収する赤外波長域のレーザ光(アンモニアの吸収波長がある波長域のレーザ光)を発光する発光素子に加え、測定対象となる、窒素酸化物(一酸化窒素、二酸化窒素及び亜酸化窒素の少なくとも1つ)が吸収する赤外波長域のレーザ光を出力する発光素子を用いて、各測定点における窒素酸化物の濃度を計測する。また、濃度計測手段312は、測定する物質毎に、計測ユニット等を設け、異なる測定経度で計測してもよいが、発光素子を順次切り替えることで、1つの計測ユニット等で、つまり、同一の測定経路で計測を行うようにしてもよい。
【0127】
また、評価手段319は、アンモニア濃度の濃度分布と、窒素酸化物の濃度分布の両方を評価し、評価結果を制御手段320に送る。
【0128】
制御手段320は、評価手段319から送られる流通ガスのアンモニア濃度の評価結果が目標値以下となり、流通ガスの窒素酸化物濃度が目標値以下となるようにアンモニア水噴射量を設定する。また、制御手段320は、評価手段319から送られる流通ガスの窒素酸化物濃度に基づいて、流通ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化するために必要なアンモニアの量を算出する。以下、図11を用いて、制御方法の一例について詳細に説明する。図11は、プラント制御装置の動作の一例を示すフロー図である。なお、図11に示すフロー図では、脱硝塔8を通過した流通ガス中のアンモニア濃度と窒素酸化物濃度が最適となるようにアンモニア水噴射量を制御する制御方法である。
【0129】
まず、プラント制御装置302は、ステップS222として、濃度計測手段312により、各測定点のアンモニア濃度及びNo濃度(窒素酸化物濃度)を計測する。なお、アンモニア濃度及びNo濃度(窒素酸化物濃度)の計測は、上述した方法で実行すればよい。また、濃度計測手段312は、計測に用いる入光部と受光部とを切り替えることで、または、サンプリング配管の位置を調整することで、複数の測定点における各計測値を計測することができる。濃度計測手段312は、各測定点における計測値の情報を評価手段319に送る。
【0130】
プラント制御装置302は、ステップS222で各計測点での計測を行ったら、ステップS224として、評価手段319により、濃度分布(アンモニア濃度及びNo濃度(窒素酸化物濃度)の濃度分布)を算出する。その後、プラント制御装置302は、ステップS226として、評価手段319により、濃度分布に基づいて、分布バランスを評価する。評価手段319は、ステップS226で分布バランスを評価したら、評価した結果を制御手段320に送る。なお、分布バランスとしては、濃度分布の情報をそのまま用いてもよいが、種々の指標に加工してもよい。
【0131】
次に、プラント制御装置302の制御手段320は、ステップS230として、評価結果のアンモニア濃度が上限目標値よりも大きいかを判定する。制御手段320は、ステップS230でアンモニア濃度が上限目標値よりも大きい(Yes)と判定したら、ステップS232に進み、評価結果の窒素酸化物(Nox)濃度は、下限目標値よりも小さいかを判定する。
【0132】
制御手段320は、ステップS232で、評価結果の窒素酸化物(Nox)濃度は、下限目標値よりも小さい(Yes)と判定したら、ステップS238として、現状設定されているアンモニア水噴射量を一定量低減する。つまり、アンモニア水供給手段18から供給されるアンモニア水の量を一定量少なくする。その後、制御手段320は、ステップS244に進む。他方、制御手段320は、ステップS232で、評価された窒素酸化物(Nox)濃度は、下限目標値以上である(No)と判定したら、ステップS236として、回復処理を行う。ここで、回復処理とは、脱硝塔8の触媒能力を回復させる処理であり、例えば、脱硝塔8の触媒を加熱する処理である。なお、触媒を加熱する手段としては、例えば、ヒータを用いることができる。また、配管31bに加温手段を設け、流通ガスの温度を高温にするようにしてもよい。このように、アンモニア濃度と窒素酸化物濃度の両方が目標値以上の場合は、脱硝塔8の触媒としての能力が低下しており、アンモニアと窒素酸化物の反応が適切に起きていないと判定して、回復処理をすることで、脱硝塔8でアンモニアと窒素酸化物との反応が好適に発生するようにすることができる。制御手段320は、ステップS236で回復処理をおこなったら、ステップS244に進む。
【0133】
次に、制御手段320は、ステップS230で評価されたアンモニア濃度が上限目標値以下である(No)と判定したら、ステップS234として、窒素酸化物(Nox)濃度が上限目標値よりも大きいかを判定する。制御手段320は、ステップS234で、窒素酸化物濃度が上限目標値よりも大きい(Yes)と判定したら、ステップS240に進み、アンモニア濃度が下限目標値よりも小さいかを判定する。他方、制御手段320は、ステップS234で、窒素酸化物濃度が上限目標値以下である(No)と判定したら、窒素酸化物濃度及びアンモニア濃度がともに目標値以下となるため、アンモニア水噴射量を調整することなく、ステップS244に進む。次に、制御手段320は、ステップS240で、アンモニア濃度が下限目標値よりも小さい(Yes)と判定したら、ステップS242に進み、現状設定されているアンモニア水噴射量を一定量増加させる。つまり、アンモニア水供給手段18から供給されるアンモニア水の量を一定量多くする。その後、制御手段320は、ステップS244に進む。他方、制御手段320は、ステップS240で、アンモニア濃度が下限目標値以上である(No)と判定したら、ステップS244に進む。このようにステップS240でアンモニア濃度が下限目標値以上の場合は、窒素酸化物濃度が上限目標値以上の場合であってもアンモニアの量を増加させないことで、煙突10から排出される流通ガス中のアンモニアを少なくすることができる。
【0134】
制御手段320は、ステップS244で、流通ガスの排出が停止しているか(つまり、ゴミ焼却プラント301が停止しているか)を判定する。制御手段320は、ステップS244で流通ガスの排出が停止していない(No)と判定したらステップS222に進み、上述した処理を繰り返す。他方、制御手段320は、ステップS244で、流通ガスの排出が停止している(Yes)と判定したら処理を終了する。
【0135】
以上のようにして、制御手段320は、アンモニア水供給手段18のアンモニア水噴射量を制御する。なお、上記制御も、アンモニア水噴射量を一定量増加、低減させたが、上述した制御と同様にこれには限定されない。また、アンモニア濃度の上限の目標値と下限の目標値とも、異なる値としてもよい。また、上記制御では、ステップS236で回復処理を行ったが、通知手段により、ユーザに脱硝塔8の触媒を交換する必要があることを通知するようにしてもよい。ここで、通知手段としては、メッセージを表示するディスプレイや、音声で知らせる音声出力装置を用いることができる。
【0136】
このように、アンモニアに加え、窒素酸化物の濃度分布も計測することで、アンモニア水供給手段18をより好適に制御することができ、脱硝塔8における窒素酸化物の還元をより好適に行うことができる。
【0137】
[実施形態4]
図12は、ゴミ焼却プラントの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。図12に示すゴミ焼却プラント401は、還元剤貯留タンク450及び噴射手段452を設けた点、及び、プラント制御装置402の構成を除いて他の構成は、ゴミ焼却プラント1と同様である。そこで、ゴミ焼却プラント1と同様の構成については、同様の符号を付し、その説明を省略する。以下、ゴミ焼却プラント401に特有の点を重点的に説明する。図12に示すようにゴミ焼却プラント401は、基本的に、投入ホッパ2と、焼却炉3と、灰処理部4と、ボイラ5と、焼却減温塔6と、集塵器7と、脱硝塔8と、ファン9と、煙突10とを有する。また、ゴミ焼却プラント401は、さらに、空気量調整手段11と、減温水タンク13と、消石灰供給手段14と、活性炭貯留タンク15と、特反剤貯留タンク16と、押込ファン17と、アンモニア水供給手段18と、濃度計測手段412と、評価手段419と、制御手段420と、還元剤貯留タンク450と、噴射手段452と、を有する。なお、本実施形態のゴミ焼却プラント401では、プラント制御装置402が、集塵器7、濃度計測手段412と、評価手段419と、制御手段420と、還元剤貯留タンク450と、噴射手段452と、で構成される。なお、本実施形態では、脱硝塔8が処理手段となる。
【0138】
還元剤貯留タンク450は、窒素酸化物等を還元するアンモニア系物質(アンモニア水、尿素水)が貯留されている。噴射手段452は、還元剤貯留タンク450に貯留されている還元剤を焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管31aに噴射する。
【0139】
濃度計測手段412は、測定位置が焼却炉3から配管31bとなり、測定対象の物質が流通ガスに含まれる一酸化炭素及び煤塵に変えて、流通ガスに含まれるアンモニア(NH)となる。このため、濃度計測手段412は、発光部として、測定対象の物質であるアンモニアが吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を用いる。なお、濃度計測手段412は、上述した濃度計測手段12と同様の構成で、いわゆるTDLAS方式を用いて、複数の測定点における測定物質(アンモニア)の濃度を計測し、計測結果を評価手段419に送る。なお、濃度計測手段412には、図2に示す構成または図6に示す構成等、種々の構成を用いることができる。
【0140】
評価手段419は、濃度計測手段412から送られてきた各測定点の測定対象の物質(アンモニア)の濃度に基づいて、測定領域(測定面)における、測定対象の物質(アンモニア)の濃度の分布を算出する。さらに、評価手段419は、算出した、測定対象の物質(アンモニア)の濃度の分布に基づいて評価を行い、評価結果を制御手段420に送る。
【0141】
制御手段420は、ゴミ焼却プラント401の各部、例えば、空気量調整手段11、濃度計測手段12、消石灰供給手段14、押し込みファン17、アンモニア水供給手段18、評価手段419、噴射手段452の動作を制御する。また、制御手段420は、プラント制御装置402の制御手段でもあり、評価手段419で算出された評価に基づいて、噴射手段452の動作を制御する。
【0142】
制御手段420は、濃度計測手段412の検出結果に基づいて、還元剤貯留タンク450及び噴射手段452から配管31aに噴射するアンモニア水の量及び噴射するタイミングをPID制御により制御する。具体的には、アンモニア濃度が所定値よりも低い場合は、一度に噴射するアンモニア水の量を多くしたり、アンモニア水を噴射する間隔を短くしたりする。また、アンモニア濃度が所定値よりも高い場合は、一度に噴射するアンモニア水の量を少なくしたり、アンモニア水を噴射する間隔を長くしたりする。なお、具体的な制御方法は、上述した図10の方法を用いることができる。
【0143】
以上のように、集塵器7の上流からアンモニア水等の還元剤を供給し、集塵器7で還元剤と、流通ガスに含まれる成分(窒素酸化物等)とを反応させる場合でも、濃度計測手段412を用いて制御を行うことで、上述と同様の効果を得ることができる。
【0144】
なお、ゴミ焼却プラント401及びプラント制御装置402の場合も、ゴミ焼却プラント301及びプラント制御装置302と同様に、アンモニアに加え、窒素酸化物を計測し、その結果に基づいて、制御を行うようにしてもよい。
【0145】
ここで、本発明は上記実施形態にも限定されず、種々の形態とすることができる。例えば、各実施形態を組み合わせてもよい。例えば、実施形態1から実施形態4に記載の各プラント制御装置を組み合わせて、夫々の処理対象を処理するようにしてもよい。このように組み合わせることで、焼却炉3、集塵器7、脱硝塔8等の夫々の位置で、好適な制御を行うことができ、流通ガスをより浄化することができる。また、効率よく燃焼プラントを稼動させることができる。また、燃焼プラントとしては、上述したように種々の構成を用いることができるが、廃棄物焼却プラントに用いることが好ましい。廃棄物焼却プラントのように流通ガスの流路(ダクト)の径が大きい装置に用いることで、より好適な効果を得ることができる。
【0146】
また、上記実施形態では、いずれも、反応が終了した後の物質の濃度を計測して、制御を行ったが、本発明はこれに限定されず、流通ガスに含まれる対象物質の濃度を計測し、その下流で、対象物質を処理する反応物質を流路内に供給するようにしてもよい。例えば、脱硝塔8の上流で、窒素酸化物の濃度を計測し、その結果に基づいて、アンモニア水供給手段(還元剤供給手段)から供給するアンモニア水(還元剤)の量を調整するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上のように、本発明にかかる燃焼プラント制御装置及び燃焼プラント制御方法は、燃焼プラントを流れる流通ガスの浄化に有用である。
【符号の説明】
【0148】
1 ゴミ焼却プラント
2 投入ホッパ
3 焼却炉
4 灰処理部
5 ボイラ
6 焼却減温塔
7 集塵器
8 脱硝塔
9 ファン
10 煙突
11 空気量調整手段
12、112 濃度計測手段
13 減温水タンク
14 消石灰供給手段
15 活性炭貯留タンク
16 特反剤貯留タンク
17 押込ファン
18 アンモニア水供給手段
19 評価手段
20 制御手段
21 プラント制御装置
22 送風機
24 第1空気供給配管
26、30 流量調整弁
28 第2空気供給配管
32 空気量制御手段
36 消石灰貯留タンク
38 噴射手段
42 計測手段本体
44 光ファイバ
45 光軸切替手段
48a〜48j 入光部
50a〜50j 受光部
52 受光信号切替手段
62 発光部
64 光源ドライバ
66 算出部
120 サンプリング配管
122 挿入口
124 位置移動部
126 レール
128 位置検出部
144 計測セル
146 光ファイバ
148 入光部
150 受光部
152 主管
154 流入管
156 排出管
158、159 窓


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉と、前記燃焼炉で物質を燃焼させて生成される流通ガスを流す流路とを備える燃焼プラントの反応動作を制御する燃焼プラント制御装置であって、
前記流路内に反応物質を投入する投入手段、前記流通ガスの流れ方向において、前記投入手段の下流側に配置され、前記投入手段で投入された反応物質と、前記流通ガスに含まれる対象物質とを反応させる処理手段、前記流路を流れる流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を、前記流通ガスの流れ方向に直交する面の複数点で計測する濃度計測手段、及び、前記濃度計測手段で計測した複数点における測定対象物質の濃度に基づいて濃度分布を評価する評価手段、を含む少なくとも1つの流通ガス処理ユニットと、
前記評価手段での評価結果に基づいて、前記投入手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記濃度計測手段は、前記測定対象物質の吸収波長を含み、かつ、近赤外波長域のレーザ光を出力する発光部と、
前記流通ガスが流れるガス計測セル、前記ガス計測セルにレーザ光を入射させる光学系、前記発光部から入射され、前記ガス計測セルを通過したレーザ光を受光する受光部を含む少なくとも1つの計測ユニットと、
前記発光部から出力したレーザ光の強度と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記ガス計測セルを流れる前記流通ガスの前記測定対象物質の濃度を算出する算出部とを有することを特徴とする燃焼プラント制御装置。
【請求項2】
前記濃度計測手段は、互いに異なる測定点の濃度を計測する前記計測ユニットを複数有し、
前記ガス計測セルが、前記流路であり、
前記光学系が、他の前記光学系とは異なる位置に配置され、前記流路内にレーザ光を入射させ、
前記受光部が、他の前記受光部とは異なる位置に配置され、前記流路を通過したレーザ光を受光することを特徴とする請求項1に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項3】
前記濃度計測手段は、一方の端部が前記流路内に配置され、他方の端部が前記計測セルと接続され、前記流路から流通ガスを捕集し、前記計測セルに供給するサンプリング配管、
前記サンプリング配管の前記一方の端部の前記流路内における位置を検出する位置検出部、をさらに有し、
前記サンプリング配管の前記一方の端部の流路内における位置を移動させることで、複数の測定点における前記測定対象物質の濃度を計測することを特徴とする請求項1に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項4】
前記濃度計測手段は、前記サンプリング配管の前記一方の端部の位置を移動させるサンプリング位置移動部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項5】
前記濃度計測手段は、前記流路を構成する壁面に形成された、前記サンプリング配管を挿入する挿入口を少なくとも1箇所以上有することを特徴とする請求項3または4に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項6】
前記濃度計測手段は、前記流通ガスの流れ方向において、前記処理手段の下流側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項7】
前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、燃焼処理ユニットであり、
前記燃焼処理ユニットは、前記処理手段が、前記燃焼炉であり、
前記反応物質が空気であり、
前記投入手段が、前記燃焼炉に一次空気及び二次空気を供給する空気供給手段であり、
前記測定対象物質が一酸化炭素であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項8】
前記燃焼処理ユニットは、前記濃度計測手段が、計測結果に基づいて流通ガスに含まれる煤塵の量の分布も計測し、
前記評価手段は、前記濃度計測手段で計測した複数点における一酸化炭素の濃度に基づいて濃度分布を評価し、かつ、前記濃度計測手段で計測した複数点における煤塵の量に基づいて煤塵分布を評価し、
前記制御手段は、前記一酸化炭素の濃度分布と、前記煤塵分布とに基づいて、前記空気供給手段から前記燃焼炉に供給する一次空気及び二次空気の量を調整することを特徴とする請求項7に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項9】
前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、塩化水素処理ユニットであり、
前記塩化水素処理ユニットは、前記処理手段が、集塵器であり、
前記反応物質が消石灰であり、
前記投入手段が、前記集塵器の上流の流路に消石灰を供給する消石灰供給手段であり、
前記測定対象物質が塩化水素であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項10】
前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、窒素酸化物処理ユニットであり、
前記窒素酸化物処理ユニットは、前記処理手段が、脱硝塔であり、
前記反応物質がアンモニアであり、
前記投入手段が、前記脱硝塔の上流の流路に窒素酸化物を還元する還元剤を供給する還元剤供給手段であり、
前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項11】
前記窒素酸化物処理ユニットは、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の両方であることを特徴とする請求項10に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項12】
前記窒素酸化物処理ユニットは、還元剤がアンモニア水であることを特徴とする請求項10または11に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項13】
前記流通ガス処理ユニットの少なくとも1つは、上流窒素酸化物処理ユニットであり、
前記上流窒素酸化物処理ユニットは、前記処理手段が、集塵器であり、
前記反応物質がアンモニアであり、
前記投入手段が、前記集塵器の上流の流路に窒素酸化物を還元する還元剤を供給する還元剤供給手段であり、
前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項14】
前記上流窒素酸化物処理ユニットは、前記測定対象物質がアンモニア及び窒素酸化物の両方であることを特徴とする請求項13に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項15】
前記上流窒素酸化物処理ユニットは、還元剤がアンモニア水であることを特徴とする請求項13または14に記載の燃焼プラント制御装置。
【請求項16】
燃焼炉と、前記燃焼炉で物質を燃焼させて生成される流通ガスを流す流路とを備える燃焼プラントに対し、投入手段により前記流路内に反応物質を投入し、前記流通ガスの流れ方向において前記投入手段の下流側に配置された反応手段で、前記投入手段で投入された反応物質と、前記流通ガスに含まれる対象物質とを反応させる反応動作を制御する燃焼プラント制御方法であって、
前記流路を流れる流通ガスに対して、測定対象物質の吸収波長を含み、かつ、近赤外波長域のレーザ光を出力させ、第1流通ガスが流れる管路内を通過した前記レーザ光を受光し、出力したレーザ光の強度と、受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測する計測処理を前記流通ガスの流れ方向に直交する面の複数点で行う計測ステップと、
前記計測ステップで計測した複数点での計測結果に基づいて、測定対象物質の分布を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に基づいて、前記投入手段の動作を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする燃焼プラント制御方法。
【請求項17】
前記計測ステップは、前記反応手段を通過した流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測することを特徴とする請求項16に記載の燃焼プラント制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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