説明

燃焼制御のための方法、システム、および装置

【課題】ベンチュリアセンブリを含むバーナにおける空燃比の制御方法が開示される。
【解決手段】ベンチュリは、空気入口と、集束部を備えた1次燃料入口と、集束部より下流にあるスロート部と、スロート部より下流にある分岐部と、出口と、集束部より下流かつ出口より上流に配置された2次ガス入口と、分岐部より下流にある管状部とを含み、2次ガス入口は管状部に形成されており、空燃比の制御方法は、燃料入口に燃料を導入するステップと、空気入口を通して吸込によって空気を受取るステップと、2次ガス入口を通してガスを供給するステップとを含み、2次ガス入口を通して供給されるガスの流量および含有量は、所望の空燃比を出口を通してもたらすように選択される。ヒータの燃焼方法、バーナ、炉、および燃焼制御システムも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
この明細書中に開示される実施例は、ガスバーナおよびそのようなガスバーナの燃焼に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を用いて空気をベンチュリ管を通して吸込み、予め混合された空気燃料混合物を導入し、この混合物が次に炉の中に進むバーナが知られている。ベンチュリアセンブリ、具体的にはベンチュリ管のスロート領域は、所望の燃料流に対して、吸込まれる空気の量が完全燃焼に必要な空気の理論量をわずかに超えるよう設計されている。完全燃焼に必要な空気は、燃料をCO2およびH2Oへと燃焼させるために必要な酸素を提供する空気流として定義される。典型的に、混合物の流れ方向を変更して炎の方向を制御するためおよび/またはバーナを出る十分な速度を起こしてフラッシュバックを防ぐために、ベンチュリアセンブリの下流には偏向器、キャップ、またはグリルアセンブリがある。フラッシュバックとは、燃焼反応(燃えること)の速度がバーナからの流出物の速度よりも速く、よって燃焼がバーナ自体の中へ後方に進み、燃焼の高温によるバーナセンブリの損傷をもたらす恐れがある現象である。
【0003】
米国特許第6,616,442号には、炉の床に位置するように設計され、輻射壁を垂直に上へ燃焼するためのバーナが開示されている。空気をベンチュリアセンブリに吸込む1次ノズルがあり、ベンチュリアセンブリの下流に位置するグリルは、フラッシュバックを防ぐために、炉に入る燃料空気混合物の速度を上げるように設計されている。ベンチュリアセンブリは、バーナ全体において燃焼されるべき燃料の一部のみが、必要な空気すべてを吸込むために用いられるよう設計されている。よって、ベンチュリアセンブリは、空気を多く含む(希薄な)予め混合された空気燃料の流出物を有する。燃料の残余分は、バーナの端縁に位置する2次ポートで加えられる。
【0004】
希薄予混合(lean premix:LPM)技術を組込んでいるバーナが知られている。LPM技術は、低NOxバーナにおいて用いられており、ベンチュリアセンブリを用いて空気を吸込む。この配置は、炉に入る希薄な(空気を多く含む)燃料混合物を形成するように設計されている。バーナに含まれる2次燃料ポートは、ベンチュリアセンブリの外側に位置し、理論燃焼を概ねわずかに超える状態に達するための追加の燃料を加える。なお、バーナのための燃料注入点の場所が炎の品質およびその炎のNOx生成を決定することは重要である。空気流の削減が所望される場合、1次ポートへの燃料が削減される。これは、より少ない空気を吸込むであろう。代替的には、ベンチュリの上流にあるダンパを用いて、ベンチュリへの空気の流れを阻害するであろう圧力降下を起こす。空気流のこの削減により、異なる空気燃料混合物がベンチュリアセンブリ流出物中に生じる。極端には、その時点で燃料が提供されず、空気は、炉自体の自然通風のみに基づきベンチュリを通って吸引される。極端に燃料が希薄な混合物(空気と予め混合された少量の燃料)と、2次ポートで燃焼される相当の燃料とで起こした炎は、不安定であるだろう。
【0005】
米国特許第6,607,376号には、炉の壁で燃焼するためのバーナが開示されている。このバーナは、ベンチュリスロートにある1次ポートを通る総燃料の流れによって空気流が中で生じるベンチュリアセンブリからなる。ベンチュリアセンブリは、燃料によって吸込まれた空気の量が、理論上をわずかに超える空気燃料混合物をもたらすよう設計されている。1次場所での燃料流およびダンパアセンブリは、空気流を変更するための手段である。ベンチュリを出る予め混合された空気燃料混合物は、次に壁バーナからの輻射流を促進するためのオリフィスを備えたキャップによって壁に沿って向けられる。
【0006】
米国特許第6,796,790号にも、炉の壁で燃焼するためのバーナが開示されている。説明された実施例において、1次燃料は、空気をベンチュリアセンブリを通して吸込むために用いられる。ベンチュリアセンブリは、燃料が1次燃料に対して過剰空気を提供するよう設計されている。ベンチュリアセンブリからの空気を多く含む(燃料が希薄な)流出物は、次に炎を炉の壁に沿って向けるオリフィスを備えたキャップを通して向けられる。しかしながらこの場合、追加の燃料はベンチュリアセンブリおよびキャップの外側に、炉の中に直接噴射される。この燃料は、空気を多く含む混合物がキャップアセンブリを出るとき、この混合物と混合し、バーナの近傍に結果として生じる空気燃料混合物は、理論上をわずかに超える状態である。
【0007】
理論燃焼は、燃料を二酸化炭素および水に完全に燃焼させる空気(または酸素)の量として定義される。これは、その燃料についての最大炎温度に対応する。典型的に、燃焼は、わずかに過剰な空気で運転され、典型的には10〜15%である。これにより、燃焼の制御が提供されるが、周囲を超える温度で炉を出るより多量の過剰空気によって生じるエネルギ損失が最小化される。燃焼が、理論上を下回る(燃料を多く含む)状態で運転される場合、燃やされていない燃料は、燃料ガス中に残って、エネルギ損失および汚染を表わす。燃焼が理論上をはるかに超えて運転される場合、システムを出る熱い過剰空気による著しいエネルギペナルティがある。
【0008】
熱NOx形成は、炎温度によって影響を受ける。最大炎温度は、理論燃焼の時点にある。これにより、最大熱NOxが形成されるであろう。空気を多く含む(理論上を超える)状態または燃料を多く含む(理論上未満)状態下での運転により、炎温度が、よってNOxが低減されるような技術が知られている。ある低NOxバーナは、ベンチュリからの希薄状態のために設計されていて、1次炎温度を低下させ、NOxを削減するが、次に2次燃料をバーナの上にある1次炎に噴射して(ステージングして)、全体として理論上をわずかに超える状態を与える。ステージングの最終結果は、炉内のより低温の燃料ガスが炎の燃焼中のガスと混合もするため、燃焼温度が低くなることである。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0106518号A1には、エチレン炉の炉床バーナが理論レベルを超える量の空気で運転されるバーナレイアウトおよび燃焼パターン配置が含まれている。過剰空気は、空気流を増加させることによってではなく、燃料を炉床バーナの2次ポートから除去し、次にその燃料を炉床バーナのちょうど上にあるヒータの壁を通して噴射することによって生み出される。これは、炉床バーナからの主炎の後ろに低圧域を生じさせることによって、炎を壁に引寄せる。1次ポートを通る燃料の流れは、吸込まれる空気の総量を依然として制御し、そのバーナについての空気流は、同じままである。
【0010】
炉床バーナか壁バーナかのいずれかのためのベンチュリアセンブリの設計において、非常に重要な特性は、燃料の体積発熱量および理論燃焼を得るために必要な空燃比である。エチレンプラントまたは精製所のためのヒータのための典型的な気体燃料は、メタンと水素とから主になる混合物である。この燃料は、理論燃焼に必要な酸素を供給するために燃料1ポンドあたり空気およそ20ポンドを必要とする。しかしながら、他の燃焼事例の中には、他の燃料がより望ましい選択肢を表わすものがあってもよい。1つのそのような燃料は、一酸化炭素(CO)と水素との混合物からなる合成ガスである。この混合物は、体積放熱量がより低く、燃料1ポンドあたり空気3ポンドオーダの、相当より少ない空気を理論燃焼に必要とする。体積放熱量は、燃料の体積あたりの完全燃焼から放出された熱として定義される。たとえば、燃料がCOを含む場合、炭素は、既に部分的に酸化されており(燃やされており)、よってCOがCO2へと燃やされたとき放出されるエネルギは、
その燃料が炭化水素種しか含まなかった場合よりも少ない。
【0011】
典型的なベンチュリアセンブリを備えたバーナが、所与の燃料、たとえばメタン水素混合物のために設計されている場合、そのバーナを体積放熱量が著しくより低い燃料、たとえば合成ガスで運転することは非常に難しい。メタン水素燃料と同じベンチュリスロート中への1次燃料の質量流量に対して、合成ガスは、等量の空気を吸込むであろう。これは、燃焼に必要なものよりも相当多い空気を表わすであろう。なぜなら、合成ガスが理論状態のために空燃比3を必要としたのと比較して、メタン水素混合物は、空燃比20を必要とするためである。よって、1つの気体燃料で動作するように設計されたバーナを備えた炉を、異なる空気流を必要とする著しく異なる燃料で効率的に運転することはできない。バーナが合成ガス燃料のために設計されている場合、万が一このバーナの設計対象の合成ガスが入手不可能になった場合、このバーナを、他の燃料を燃焼させるように適合させることは容易にはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,616,442号
【特許文献1】米国特許第6,607,376号
【特許文献1】米国特許第6,796,790号
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0106518号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
概要
異なる燃料種を用いて動作するように便利に適合させることができるバーナおよび燃焼システムを提供することは有用であるであろう。所与の燃料に対する空燃比の小さな変更を可能にするであろうバーナを提供することも有利であるだろう。さらに、単一の燃料を燃焼させているとき、燃料の切換および空燃費の制御の両方を可能にするであろう制御システムを提供することは有用であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの実施例は、上流空気入口と、1次噴射燃料入口を備えた集束部と、集束部より下流にあるスロート部と、スロート部より下流にある分岐部と、出口とを有するベンチュリアセンブリを含むバーナにおける空燃比の制御方法である。集束部より下流かつ出口より上流に2次ガス入口が配置されている。この方法は、1次噴射燃料入口に燃料を導入するステップと、空気入口を通して吸込によって空気を受取るステップと、2次ガス入口を通してガスを供給するステップとを含む。2次ガス入口を通して供給されるガスの流量および含有量は、所望の空燃比を出口を通してもたらすように選択される。
【0015】
燃料の発熱量は、通常約3725〜44710kJ/m(約100〜1200英国熱量単位/標準立方フィート)の範囲であるが、任意選択的に、より高いまたはより低い発熱量であり得る。たとえば、燃料は、高水素燃料などの高発熱量燃料または合成ガスなどの発熱量のより低い燃料であり得る。多くの場合、従来の燃料および合成ガスを交換可能に供給することができる。2次ガス入口を通して供給されるガスは、燃料、不活性ガスまたは燃料と不活性ガスとの組合せであり得る。
【0016】
ベンチュリアセンブリは、分岐部より下流に管状部を含むことがあり、2次ガス入口は、管状部に形成されている。場合によっては、2次ガス入口より下流で流れの方向と流速とのうち少なくとも1つを変更する。変更は、流れ抵抗構成部品でもって行なわれ得る。
【0017】
場合によっては、出口より下流に誘引通風器が含まれている。ダンパが含まれて、空気入口を通る空気の流量の追加的な制御を提供することもある。ダンパが含まれない場合もある。多くの場合、体積発熱量が約3725〜44710kJ/m(約100〜1200英国熱量単位/標準立方フィート)の範囲の燃料を交換可能に用いることができる。
【0018】
別の実施例は、上流空気入口と、1次噴射燃料入口を備えた集束部と、集束部より下流にあるスロート部と、スロート部より下流にある分岐部と、出口とを有するベンチュリアセンブリを含む少なくとも1つのバーナを有するヒータの燃焼方法である。集束部より下流かつ出口より上流に2次ガス入口が配置されている。この方法は、燃料入口に燃料を導入するステップを含み、この燃料は空気入口の中に空気を吸込み、この方法は、さらに2次ガス入口を通してガスを供給するステップを含み、選択された空燃比の空気と燃料との混合物が、出口を通ってベンチュリアセンブリを出る。
【0019】
特定の場合のベンチュリは、2次ガス入口より下流に位置決めされた抵抗構成部品を有する。燃料の発熱量が低いときなど、場合によっては、ヒータは、複数の炉床バーナと複数の壁バーナとを有し、この方法は、さらに低発熱量燃料の少なくとも一部を、炉床バーナに隣接する第1の場所とヒータの壁にありかつ壁バーナより下で炉床バーナより上にある第2の場所とのうち少なくとも1つに位置決めされた少なくとも1つの追加のポートを通して供給するステップを含む。
【0020】
もう1つの実施例は、空気入口と、1次噴射燃料入口を備えた集束部と、集束部より下流にあるスロート部と、スロート部より下流にある分岐部と、出口とを含むベンチュリアセンブリを含むバーナである。集束部より下流かつ出口より上流に2次ガス入口が位置決めされている。
【0021】
別の実施例は、空気入口と、1次噴射燃料入口を備えた集束部と、集束部より下流にあるスロート部と、スロート部より下流にある分岐部と、出口と、集束部より下流かつ出口より上流に配置された2次ガス入口とを含むベンチュリアセンブリを有するバーナアセンブリにおける空燃比を制御するための燃焼制御システムである。この燃焼制御システムは、1次噴射燃料入口での燃料入口流を制御するように構成された第1の流量制御装置と、2次ガス入口でのガス入口流を制御するための第2の流量制御装置とを含む。第1および第2の流量制御装置のうち少なくとも1つは、バルブまたは圧力調整器であることがある。場合によっては、空気入口流量の制御を支援するためのダンパが含まれている。
【0022】
さらに別の実施例は、炉床と、側壁と、空気入口と1次噴射燃料入口を備えた集束部と集束部より下流にあるスロート部とスロート部より下流にある分岐部と出口と集束部より下流かつ出口より上流に配置された2次ガス入口とを含むベンチュリアセンブリを含む少なくとも1つのバーナを備えたバーナアセンブリとを含む炉のための燃焼制御システムである。この燃焼制御システムは、1次噴射燃料入口への燃料入口流を制御するように構成された第1の流量制御装置と、2次ガス入口への入口流を制御するように構成された第2の流量制御装置とを含む。第1および第2の流量制御装置を通る流量は、燃料の組成、燃料の発熱量、バーナ出口での酸素含有量、およびベンチュリアセンブリを通る所望の空気流量のうち少なくとも1つに応じて変えられる。
【0023】
バーナアセンブリは、炉床または壁にある少なくとも第1の組のステージングされたバーナポートを含むことがあり、この燃焼制御システムは、さらに、第1の組のステージングされたバーナポートへの入口流を制御するように構成された追加の流量制御装置を含む。これに関連して、1「組」のステージングされたバーナポートは、単一のポートまたは複数のポートを含み得る。場合によっては、第1の組のステージングされたバーナポートに隣接する第2の組のステージングされたバーナポートでの低発熱量燃料の入口流を制御するように構成された第3の流量制御装置が含まれる。
【0024】
もう1つの実施例は、炉床と、側壁と、炉床燃料入口と第1の燃料入口と第2の燃料入口とを備えたベンチュリアセンブリを含むバーナとを含む炉のための燃焼制御システムである。この燃焼制御システムは、炉の燃焼後酸素含有量を決定するように構成された酸素分析構成部品を含む。酸素分析構成部品は、ベンチュリアセンブリの第1および第2の燃料入口への相対燃料流量を調節するために用いられる。
【0025】
さらに別の実施例は、炉床と、側壁と、炉燃料入口と補足的な燃料入口とを備えたバーナとを含む炉のための燃焼制御システムである。この燃焼制御システムは、燃料入口での燃料の発熱量がより低いかより高いかを判断するように構成された燃料分析構成部品を含む。燃料分析構成部品は、炉燃料入口と補足的な燃料入口とのうち少なくとも1つへの燃料の流量を制御するために用いられる。
【0026】
別の実施例は、複数の炉床バーナと、複数の壁バーナと、複数の炉床バーナおよび複数の壁バーナのうち少なくとも1つのための第1の組のステージングされたバーナポートと、第1の組に隣接する第2の組のステージングされたバーナポートとを含む炉であり、第1の組のステージングされたバーナポートのみが発熱量のより高い燃料で用いられ、第1の組のステージングされたバーナポートおよび第2の組のステージングされたバーナポートの両方が、発熱量のより低い燃料で用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ベンチュリアセンブリの例を概略的に示す図である。
【図2】炉のための炉床バーナの例を概略的に描く図である。
【図3】壁バーナの例を概略的に示す図である。
【図4】単一の燃料に対する空燃比制御を可能にする燃焼制御システムの例を概略的に示す図である。
【図5】体積発熱量が異なる2つの燃料を二者択一的に燃焼させることができる炉の運転と、その2つの燃料間の切換とを可能にする燃焼制御システムの例を概略的に示す図である。
【図6】燃料以外の2次ガスを用いる1つの実施例における、2次ポート流および下流抵抗が空気流に及ぼす影響を示す数値流体力学シミュレーションの結果を示す図である。
【図7】燃料以外の2次ガスを用いて空燃比として表現された、2次ポート流および下流抵抗が空気流に及ぼす影響を示す数値流体力学シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】燃料が2次ベンチュリポートで加えられたときの2次ポート流および下流抵抗が空気流量に及ぼす影響を示す数値流体力学シミュレーションの結果を示す図である。
【図9】燃料が2次ベンチュリポートに加えられたときの2次ポート流および下流抵抗が空燃比に及ぼす影響を示す数値流体力学シミュレーションの結果を示す図である。
【図10】下流ポートの場所が流入された空気に及ぼす影響を示す数値流体力学シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
この明細書中に説明される実施例は、合成ガスおよび従来の燃料源などの炉燃料を同じ炉内で二者択一的に燃焼させることができる柔軟性を提供する。開示される実施例は、万が一1次源に途絶が起きた場合、プラントが燃料源の間で簡単に切換えることを可能にする。実施例は、単一の燃料を用いるときまたは体積発熱量が大きく異なる燃料間で切換えるとき、炉への総燃焼用空気量を制御する能力および/または炉バーナと壁バーナとの間で分割される空気を簡単に調節する能力を向上もさせる。実施例は、エチレン炉での使用に特によく適しているが、他の種類の炉でも用いることができる。
【0029】
この明細書中で用いられる「流れ抵抗構成部品」は、バーナ出口にまたはその近傍に位置決めされた、流れを向けるおよび/または流速を変える装置を意味する。この明細書中で用いられる「燃料体積発熱量」は、その燃料の単位体積の完全燃焼に伴う放熱量を指す。この明細書中で用いられる「従来の燃料」は、炉に入るときに蒸気として存在するメタンと水素と高級炭化水素とを含む混合物を指す。従来の燃料の非限定的な例は、精製所もしくは石油化学燃料ガス、天然ガス、または水素を含む。この明細書中で用いられる「合成ガス」は、一酸化炭素と水素とを含む混合物として定義される。合成ガス燃料の非限定的な例は、石油コークス、減圧残油、石炭、または原油のガス化または部分酸化生成物を含む。
【0030】
大まかに言って、ダンパまたは他の装置の使用を必要とせずに空気流の制御を可能にする、またはダンパなどと共に拡張された制御を可能にする、バーナにおける空燃比の制御方法と、ヒータの燃焼方法と、バーナと、炉と、制御システムとが説明される。多くの場合、このバーナ、方法、および制御システムは、メタン/水素混合物および合成ガスの体積発熱量を含めて、多種多様な気体燃料体積発熱量を有する燃料を交換可能に用いることができる。通常、燃料の体積発熱量は、約3725〜44710kJ/m(約100〜1200英国熱量単位/標準立方フィート)の範囲であり、ほとんどの場合、約7450〜37250kJ/m(約200〜1000英国熱量単位/標準立方フィート)である。
【0031】
1つの実施例は、バーナの燃焼制御方法である。燃料または水蒸気などのガスを、予め混合された空気および燃料を含むベンチュリアセンブリの下流端部にある2次ガス入口を通して導入する。1次燃料ポートを通して供給される燃料と2次ガス入口へのガスとの相対量を同じ総燃料流で変化させることによって、炉中に排気される空気の流量を変化させることができる。よって、このシステムは、誘引通風器速度を変化させることのないまたはベンチュリ入口の上流にある空気流ダンパを用いることのない空燃比制御を可能にする。別の利点は、さまざまな抵抗構成部品または抵抗を調節可能な単一の構成部品をベンチュリ出口の近傍に含むことによって、流量制御範囲を変化させることができることである。バーナ流出物中の酸素を分析するための装置を含んで、空気流を求めることは、典型的である。
【0032】
別の実施例は、炉の燃焼制御方法である。この方法は、ベンチュリアセンブリおよび分岐部の下流ただし出口の上流にあるガス入口への1次ガス導入を包含する個々のバーナ制御システムを、追加の燃料ノズルおよび制御弁と組合せて、柔軟性を可能にする。そのようなシステムは、広範な体積発熱量燃料に対する燃焼制御を可能にするように構成することができ、天然ガスなどの従来の燃料から合成ガス燃料にわたるさまざまな燃料で動作するようバーナを設計するために特に有用である。
【0033】
別の実施例は、ベンチュリアセンブリを含むバーナである。このバーナは、このアセンブリの中かつ予め混合された空気‐燃料炉床バーナおよび/または壁バーナのベンチュリの分岐部の下流に、2次ガス入口を含む。2次ガス入口は、通常、噴射ポートである。場合によっては、2次ガス入口は、燃料をベンチュリアセンブリの軸に沿って向ける、ベンチュリの軸方向中心に位置するチップである。ベンチュリアセンブリは、空気入口と、1次燃料噴射点と、空気または別の適切な酸素含有ガスが吸込まれる集束部と、スロートと、圧力回復のための分岐または拡張部と、燃料空気混合物を炉筐体の中に放出するための出口とを含む。2次ガス入口は、スロートより下流かつ出口より上流に位置する。2次ガス入口で用いられるガスは、炉燃料か水蒸気または窒素などの不活性ガスかのいずれかであってもよい。多くの場合、流れ抵抗構成部品が、2次ガス入口より下流かつ出口より上流に含まれる。
【0034】
エチレン炉などで用いられる現在のバーナは、従来の燃料と合成ガスとの間の燃料量および空気量の大きな違いにより、従来の燃料と合成ガスとの間で切換えることができない。たとえば、合成ガスの同じ発熱は、従来のメタン/水素燃料の燃料量よりも5倍多い燃料量を必要とする。しかしながら、必要な空気量は30%少ない。従来の炉において、合成ガス運転のための大きさに作られた1組の燃料ポートは、従来の燃料を用いた運転のために必要な正しい量の空気を吸込まないであろう。よって、2つの別個のバーナ、または所与のバーナのための2組の内部構造物が、燃料切換を可能にするために必要となるであろう。一方の場合、これは著しい追加費用を表わし、他方においては、バーナ内部構造を切換えるために運転停止が必要となるであろう。どちらも望ましくない。対照的に、開示された実施例は、燃料を、吸込ポートから、集束部の下流ただし出口よりまたは含まれる場合は抵抗構成部品より上流にある2次ガスポートに切換えることによって、単一のバーナが両方の燃料を扱うことを可能にする。そのうえ、追加の燃料ポートを炉床バーナの2次チップ部に、壁バーナについては壁に含んで、体積放熱量がより低い燃料のための追加の燃料流を可能にすることができる。これらは、オンラインの燃料組成分析(たとえばウォッベ計)からの信号で作動させることができる。ベンチュリにある2次ガスポートの使用により、両方の種類の燃料について安定した炎を維持することが可能になる。それにより、合成ガス供給が突然失われた場合、従来の燃料の使用への継目のない移行も可能になり、逆もまた同様である。
【0035】
2次ガスポートは、従来の燃料量と比較して大幅に多い合成ガス燃料量の大部分を扱う大きさに作られているが、従来の燃料で用いることもできる。燃料吸込ポートおよびベンチュリアセンブリの2次ガスポートを適切に設計すること、および場合によっては2次ポートの下流に流れ抵抗構成部品を含むことによって、このシステムは、「流体弁」として動作して、合成燃料および従来の燃料のための燃焼制御を可能にし、燃料間の簡単な切換を提供する。
【0036】
スロート長および直径、分岐部の角度などを含めて、ベンチュリの設計に関連する変数は、すべて影響を及ぼし、空気流についての全体設計点を設定するために用いられる。次に、1次燃料噴射の2次燃料噴射に対する比および下流抵抗が、設計点の周りの制御範囲を規定するために用いられる。その上、ベンチュリアセンブリの長さ沿いにある、2次ガスが入る正確な点と、ガスが入る方向との両方は、任意の所与の状態下で吸込まれる空気の量に影響を及ぼす。
【0037】
この明細書中に説明される実施例の別の利点は、実施例は、2次ガス入口へのガス量およびガス種類を変化させることによって、総空気量および炉床バーナと壁バーナとの間で分割される空気を制御する能力を向上させることである。これは、任意の所与の燃料に対してである。従来のバーナにおいて、空気量は、入口空気プレナム中の空気ダンパ位置を調節することによって制御される。これは、不正確なことがあり、時間のかかる制御技術である。従来の技術を用いて、燃料は、ステージングされた燃料ポートからベンチュリスロートポートに切換えられて、空気を制御することができるが、これは炎形状を著しく変える恐れがあり、エチレン炉においては管金属温度および連続運転時間に悪影響を及ぼす。2次ガス入口の利点は、この新しいポートは、所与のバーナを通る空気流の制御を、そのバーナへの総燃料流の変更なしにかつダンパ位置または誘引通風器速度の変更を必要とせずに、促進することである。燃料をベンチュリにあるスロートと2次ポートとの間で移動させることによって、ベンチュリを通る総燃料流を変更せずに、よってプロセスへの入熱を変更することなく、ベンチュリを通して吸込まれる空気量を調節することができる。さらに、燃料は、バーナの燃焼域内の同じ地点で導入される。これは空気分割制御ならびに最大管金属温度および温度プロファイルの制御を提供しながら、炎形状への影響を最小化するであろう。加えて、燃料の代わりに不活性ガスを2次ガス入口に導入することによって、1次燃料流およびダンパ設定の変更なしに、かつバーナ炎形状に影響を与えることなく、総空気流量も調節することができる。
【0038】
ベンチュリアセンブリにある2次ガス入口のもう1つの利点は、この新しい入口は、エチレン炉の運転時、2つの似ていない燃料源間の迅速な移行を促進することである。従来の燃料と合成ガスとの発熱量が非常に異なるため、一定燃焼のために必要な合成ガス燃料量は、従来の燃料量のものよりも約5倍多い。しかしながら、合成ガスについて空気量は
、約30%少ない。ベンチュリにある2次ガスポートを使用することにより、両方の種類の燃料での運転が可能になる。なぜなら、同じ大きさの1次燃料噴射ポートおよびベンチュリスロートの幾何学的形状を用いて、正しい量の空気を吸込み得るためである。
【0039】
現在、空気入口通路中のダンパが用いられて、ヒータへの一定の入熱を維持して、一定のプロセス性能を維持しようとしながら、空気流を燃焼状態の変化または燃料ガス組成のわずかな変動に合わせる。燃焼性能は、通常、酸素含有量についての流出物炉筒ガスの分析によって監視され、操作者は、所与のレベルの酸素に制御しようとし、よって空燃比を制御する。ダンパは、手でおよび/または扱いにくくかつ小さな変化に敏感でない副軸と呼ばれる機械的なリンク機構を用いて調節される。場合によっては、新しいバーナを用いるとき、ダンパを持上げることができる。
【0040】
図面を参照して、まず図1を参照すると、ベンチュリアセンブリが示されており、10として一般的に示されている。ベンチュリアセンブリ10は、空気入口14と1次燃料入口16とを備えた上流集束部12を有する。集束部12の下流端部は、スロート18に接続されている。分岐部20は、スロート18の下流端部に接続されている。2次ガス入口22は、集束部12より下流に位置決めされている。図1に示される実施例において、2次燃料入口22は、分岐部20より下流かつ出口24より上流にある管状部23に配置されている。2次ガス入口22は、不活性ガスか追加の燃料かのいずれかを受取るように構成されている。2次燃料入口は、典型的に、ガスがベンチュリ中心線に沿って軸方向に供給されるよう配向された管である。2次ガス入口22に導入される流量および物質を調節することによって、ベンチュリアセンブリにおけるおよび出口24での空燃比を制御することができる。
【0041】
図2には、分解炉のための例示的な炉床バーナアセンブリ30が示されている。炉床バーナアセンブリは、一般的に耐火性タイルからなる。耐火性タイルは、バーナの金属内部構造物のためのハウジングを提供し、こういった金属部品のための熱遮蔽体として働く。タイル内は、燃料を噴射するため、空気およびまたは燃料流の方向を制御するため、ならびに乱流を制御して炎安定性を実現するための対策がなされている。図2には、ベンチュリアセンブリと燃料噴射ポートとからなる上述のような内部構造を備えたバーナタイル60が示されている。合計6本のベンチュリがこのバーナで用いられており、図2には、2本のベンチュリ32、33が示されている。並列に任意の数のベンチュリがあり得、典型的に約1から6本である。ベンチュリ32において、燃料は、集束部36にある1次燃料噴射ポート34を通して噴射される。このポートからの噴流により、燃焼空気を空気入口40を通してベンチュリアセンブリの中におよび集束部36にある環状空気入口42の中に吸込むベンチュリスロート38の中に、低圧力が生じる。燃料と空気とは、ベンチュリスロート38で混合し、分岐部42を通って炉のバーナタイル60に流れ込む。燃料と空気との混合物は、グリルなどの任意選択的な抵抗構成部品46を通過し、ベンチュリ出口48でベンチュリアセンブリ32を出る。出口48は、典型的にタイル60の上水平面を超えて突出しない。示されるような炉床バーナアセンブリは、2次段燃料ポート58と3次段燃料ポート56とも含む。これらのステージングされた燃料ポートは、典型的に、タイル筐体自体の範囲の外側に位置するが、タイルの端縁を通過する。ステージングされた燃料ポートは、タイル筐体の範囲を出る燃料と空気との混合物に対して燃料を角度をつけて噴射する。これらのポートを通過した燃料は、炉床バーナのための総燃料の一部であると考えられる。
【0042】
任意選択的な空気ダンパ50が含まれる場合、空気流は、空気ダンパ50の垂直位置を調節することによって部分的に手動で制御することができる。空気ダンパ50が含まれようと含まれまいと、空気流は、集束部より下流かつベンチュリ出口48より上流に位置決めされた少なくとも1つの2次ガス入口52を通しての燃料、不活性ガス、または燃料と不活性ガスとの混合物の噴射を通じてさらに制御される。
【0043】
図2において、2次ガス入口52は、ベンチュリアセンブリの分岐部42の下流端部にかつタイル49の表面より下に位置決めされている。これにより、アクセス可能な場所でのガスの便利な供給が可能になる。少なくとも1つの2次ガス入口52を含むことによって、追加の燃料または不活性ガスをこの場所でシステムに追加することができる。この入口は、たとえば、合成ガスに対してなど、用いられている燃料の空燃理論比が低いとき、または従来のメタン水素燃料など、用いられている燃料の空燃理論比が高いときに使用することができる。燃料の種類によっては、2次ガス入口は用いられないことがある。しかしながら、2次ガス入口は、単一のバーナにおいてさまざまな燃料種類に対応するために存在する。
【0044】
2次ガス入口52は、ベンチュリアセンブリの集束部36の下流の任意の場所に位置決めすることができ、通常分岐部42または分岐部42より下流の管部54に位置決めされている。2つ以上の2次ガス入口が単一のベンチュリに含まれ得る。場合によっては、2次ガス入口52は、分岐部42における圧力回復を乱さないようにするためにベンチュリ出口近くに位置決めされる。図2には示されていないが、2次ガス入口52に供給する管は、ベンチュリ流路の側壁を通って入り、上方へ曲がるであろう。
【0045】
抵抗構成部品46は、流れを向けるためまたはフラッシュバックを最小化するためだけでなく、変動する2次ポート流量下で圧力降下を提供することによって空気流の範囲を制御するための大きさにも作られている。圧力降下は、ベンチュリの下流の圧力に一定のベンチュリ吸込流で影響を与え、よって吸込まれた空気の流量に影響を与える。
【0046】
図3には、ベンチュリアセンブリ82を設けられた、分解炉のための壁バーナアセンブリ80の例が示されている。並列に任意の数のベンチュリがあり得る。典型的にエチレン炉において、各壁バーナは、1つのベンチュリアセンブリを有する。複数の壁バーナがエチレン炉の壁に位置し得る。ベンチュリ82において、燃料は、1次燃料ポート84を通して噴射され、燃焼空気は、空気入口88を通してベンチュリアセンブリに吸込まれる。燃料と空気とは、ベンチュリの中で混合し、オリフィス92を通って炉に流れ込む。この流れは、キャップ94をベンチュリ出口に使用することによって炉の壁に沿って放射状に向けられる。オリフィス92の大きさとキャップ94により生じる流れ方向の変更との組合せは、圧力降下を発生させる。この組合せは、流れの制御を、さらには混合物が炉に入るとき混合物の速度を上げてフラッシュバックを回避することも提供する。任意選択的な空気ダンパ96が含まれる場合、空気ダンパ96の垂直位置を調節することによって、空気流を部分的に手動制御することができる。空気ダンパ96が含まれようと含まれまいと、空気流は、集束部より下流に位置決めされた少なくとも1つの2次ガス入口98を通した燃料、不活性ガス、または燃料と不活性ガスとの混合物の噴射を通じてさらに制御される。図3において、2次ガス入口98は、分岐部に、炉壁99近くただし炉壁より上流に位置決めされている。少なくとも1つの2次ガス入口98を含むことによって、合成ガスなど、用いられている燃料が低い空燃比を必要とするとき、追加の燃料をこの場所でシステムに加えることができ、従来のメタン水素燃料など、用いられている燃料がより高い空燃比を必要とするとき、この場所で不活性ガスを加える(またはガスを加えない)ことができる。
【0047】
ベンチュリアセンブリ、バーナアセンブリおよび方法は、炉床および/または壁ベンチュリを通る空気量を制御できる柔軟性を提供して、以下の目的を達成する。
【0048】
(a)任意の種類の燃料に関して、炉床バーナと壁バーナとの両方における2次ガス入口の使用は、炉への一定の総燃料および空気量を維持しながら、壁バーナと炉床バーナとの間で分割される空気の変動を可能にする。炉床バーナへの一定の燃料量および壁バーナへの一定の燃料量も維持することができる。このレベルの制御は、最大管金属温度を制限するのに、および連続運転時間を延長するのに有用である。最大金属温度を低下させることは、炉床バーナにおける空燃比を高め、壁バーナにおける空燃比を低下させることによって、一定の燃焼で達成される。2次ガス入口の使用により、これを以下のように行なうことが可能になる。
【0049】
(1)炉床空気量を増加させるために、燃料は、炉床バーナの中のベンチュリアセンブリの2次ガス入口から炉床バーナのスロートポートへ分流される。1次噴射燃料の流れが大きいほど、ベンチュリ内の吸込が増加され、空気流が大きくなる。炉床ベンチュリのスロートへの増加された燃料は、2次ガスポートから来るため、炉床ベンチュリへの総燃料は変更されないままである。これは炎品質への影響を最小化する。
【0050】
(2)総空気量を一定に維持するため、逆が壁バーナにおいて行なわれ、すなわち燃料は、壁バーナベンチュリスロート1次噴射ポートから取除かれ、壁バーナベンチュリアセンブリにある2次ガス入口に移動される。これは、吸込まれる壁バーナ空気を削減し、壁バーナを通る総空気を削減し、総壁バーナ燃料を一定に保つ。最終的な効果は、炉床バーナにおける空気量を増加させ、壁バーナにおける空気量を減少させ、総空気を一定に維持することである。燃料については、炉床および壁バーナ燃料量は変更されない。これは、炎形状への影響と管金属温度への悪影響の可能性とを最小化する。
【0051】
b)燃料を移すことに代えて、窒素もしくは水蒸気などの不活性ガスまたは不活性ガスと燃料との混合物を2次ガスポートで用いることができる。抵抗および出口を通る全体的な流れ(空気+燃料+不活性ガス)を増加させることによって、ベンチュリにわたる圧力プロファイルが変更されるであろう。スロートの下流圧力が上昇され、よって一定の1次噴射吸込流のために、空気流が削減されるであろう。よって、総燃料量を変更することなく炉への総空気量を調節するように制御される。コンピュータシミュレーションでは、ベンチュリ出口に位置する抵抗構成部品の抵抗係数に応じて、2次ガスポートを通るガス流の増加は、ベンチュリを通る空気量を増加させるか減少させるかのいずれかであり得ることが示されている。よって、ベンチュリを、このポートを不可欠な部分として備え、所望の範囲にわたった空気流の変動を可能にするように設計することができる。これは、ダンパ位置設定を調節する必要なしに行なうことができる。これにより、ダンパのみを用いるものと比較して、システム調節の精度および効率が向上する。
【0052】
バーナのための新しい燃焼制御システムがこの明細書中に提供される。典型的に、1組のバーナのための燃料は、燃料流を、よって炉への入熱を制御する個々の流量制御装置を有しても有さなくてもよいヘッダシステムを通過する。気体燃料流は、典型的に、ヘッダの中の圧力を調節することによって制御され、よってバーナ中の小さな燃料オリフィスの抵抗にわたる流れが決定される。より低いヘッダ圧力は、より少ない流れに等しい。空気流は、ダンパ、誘引通風器速度によって、または正の圧力流をバーナに提供する送風機からの空気の流れの直接制御によって、または上記の組合せによって制御される。空気流制御の新しい技術がこの明細書中に説明される。
【0053】
ベンチュリアセンブリの1次燃料ポートへの燃料と2次ガスポートへの燃料との比は、ベンチュリを通る空気流の変更を可能にする。上述のように、これらの比を変更することによって、個々のバーナへの空気流を制御することができる。壁バーナと炉床バーナとの両方を備えた場合について、炉床バーナ1次噴射ポートへの燃料流量を増加させ、ベンチュリアセンブリにある2次ポートへの燃料流量は減少されて、よって炉床バーナによって排気される空気を増加させることができる。同様に、壁バーナの1次ポートへの燃料を減少させ、壁バーナベンチュリアセンブリにある2次ポートへの燃料が増加されて、よって
壁バーナによって排気される空気を削減することができる。全体として、全体燃料流または全体空気流を変更することなく、炉への一定の燃料流量で、炉床と壁との間で分割される空気流の比を変更することができる。
【0054】
炉バーナおよび壁バーナ間での空気流の分割を調節することなく、炉への総空気流を、増加または減少させるべき場合、一定の燃料流を維持するための2次ベンチュリアセンブリガス入口に対するその後の調節とともに、壁ベンチュリと炉ベンチュリとの両方にある1次噴射ポートへの流れを増加または減少させることができる。
【0055】
燃焼制御システムの1つの実施例において、第1および第2の流量制御装置を通る流量は、燃料の組成、燃料の発熱量、ヒータ出口での酸素含有量、およびベンチュリアセンブリを通る所望の空気流量のうち少なくとも1つに応じて変動する。
【0056】
図4には、単一の種類の燃料を燃焼させるように構成されたベンチュリアセンブリ102のための制御システム100が示されている。主燃料ライン150は、1次燃料ライン151と2次燃料ライン154とに分かれる。1次燃料ライン151は、流量制御弁160を有する。2次燃料ライン154は、流量制御弁162を有する。場合によっては、流量制御弁164を備えた不活性ガスライン156が流量制御装置162の下流で2次燃料ライン154と接続して、入口ライン158を形成し、この入口ラインは、燃料および/またはガスを2次ガス入口152で導入する。燃料制御システムは、従来の制御システム変数(開放口(ca)誘引通風器速度)と組合されて、より広範な制御を達成することができる。空燃比の制御は、圧力調整器または流量弁などの流量制御装置を用いて達成できるため、このシステムを、遠隔またはコンピュータ制御のために構成することができる。通風器の速度は、炉内の圧力(通風)を変化させて、よってベンチュリアセンブリにわたる圧力プロファイルを変更し、よってベンチュリアセンブリを通る空気の流れを変更するために用いることができる。これらの装置は、酸素濃度系などの空気流または空燃比の測定器具に応じて働く。
【0057】
図5は、発熱量が著しく異なる燃料を二者択一的に燃焼させるために構成された炉床バーナ202のための一般的に200として示された燃焼制御システムの例を概略的に示す図である。
【0058】
類似のシステムを壁バーナに対して用いることができる。このシステムは、発熱量が大きく異なる2つの燃料の制御された燃焼を可能にするように設計されている。このシステムは、ベンチュリ制御システムを、分析装置および発熱量のより低い燃料のより多い体積流量を扱う追加のチップの許容量と組合せる。チップは、燃料組成が変化するとオンになって、同じ入熱をより多い総体積流量で可能にする。図5に示されるように、第1の燃料は、燃料ライン204を通して供給される。第2の燃料は、第2の燃料ライン203を通して供給することができる。これらの燃料ラインは、通常、異なる種類の燃料を二者択一的に燃料ライン205に供給するために用いられる。燃料ライン205は、1次ベンチュリ噴射燃料ライン206と2次ベンチュリアセンブリガスライン208と、ベンチュリアセンブリの外側に位置する任意選択的な2次段チップ燃料ライン209と、2次段チップの第2の列のための任意選択的な燃料ライン210と、任意選択的な3次段チップ燃料ライン212と、任意選択的な1次壁安定化(wall stabilization:WS)チップ燃料ライン214と、任意選択的な2次壁ステージングチップ燃料ライン216とに燃料を供給する。場合によっては、不活性ガスが2次ベンチュリアセンブリガスライン208を通って不活性ガスライン220から供給される。ライン220は、流量制御装置221を使用する。
【0059】
制御システムは、1次燃料ライン206にある第1の流量制御弁222と、第2のガスライン208にある第2の流量制御弁224とを含む。上述のヘッダシステムへの総燃料流を制御する装置が、主燃料ライン205に位置する。これは、流量計、圧力調整器または他の類似の装置225であり得る。システムに供給されている燃料の発熱量を求める燃料組成または発熱量分析装置227も、燃料ライン205に位置する。比率制御または他の適切な技術による、ライン206および208を通る相対流量のコンピュータ化された制御により、空燃比の自動および高速調節が可能になる。この移行は、流出物中の燃料組成か酸素かのいずれかの分析に基づいて起こり得る。残っている酸素が少量ある(典型的には2%、10%の過剰空気を表わす)点まで流量を制御することが望ましい。
【0060】
ベンチュリ中のさまざまな場所での圧力は、ベンチュリに吸込まれる空気の流量を決定する。ライン207、209、212、213および214における燃料の流量は典型的に、より従来的な制御システムの一部であり、このシステムでは、流れは、ヘッダシステムの中の圧力とこれらのラインの中の燃料オリフィスの直径とによって設定され、または、流れは、ポートの大きさによって決定され得る。従来の制御システムにおいて、ライン206中の流れは、ヘッダ圧力によっても制御されるであろうし、制御装置を有さないであろう。この明細書中に開示されるシステムにおいて、ライン206および208は、上述のような流量制御装置222および224を使用する。ライン210は、流量制御装置228を使用する。ライン216は、流量制御装置230を使用する。2次段チップ(ライン210)および2次壁安定化チップ(ライン216)は、発熱量がより低い燃料の流れに対して用いられる。ヒータへの一定の入熱を維持するために、発熱量がより高い燃料に対するよりも大幅に大きな体積の燃料流が必要とされる。発熱量がより低い燃料の体積は、発熱量がより高い燃料に対するよりも4〜5倍も大きいことがある。広範な燃料体積発熱量について、このより多い体積流量に固定されたオリフィスを通過させるのに必要な圧力は、過大であるだろう。分析装置227は、ライン205における発熱量および/または燃料組成を連続的に監視する。そのような装置の例は、ウォッベ計である。分析装置227が低発熱量燃料を検知する場合、ライン210および216を、それぞれ、燃料組成に基づいて作動する電磁弁228、230またはこれらの均等物で開くことができる。従来のまたは発熱量のより高い燃料は、ライン209および214を用いるであろう。流れは、ヘッダ205の中の圧力によって設定されるであろう。発熱量のより低い燃料に対して、燃料弁228および230は、開かれるかもしれず、ヘッダ圧力はそこでの流れを制御するために用いられるかもしれない。流量面積(より多くのポート)を加えることによって、流れは、ヘッダ205の中での類似の圧力で、より大きくなり得る。なお、圧力調整器または他の適切な装置を、流量制御弁に代えて用いることができる。
【0061】
流量制御装置(たとえば流量制御弁または圧力調整器など)の使用を通じて、1次ベンチュリポートと下流の2次ベンチュリポートとの間の流量比を調節して、空気量制御を、よって空燃比の制御を行うことができる。ベンチュリアセンブリの2次ポートへの流れは、燃料の他にガスの使用の選択肢を含むことができる。なお、ヘッダ(ライン205か個々のライン206および208)の中の圧力が燃料噴射チップの中の固定されたオリフィスとともに燃料の流れを決定するため、圧力調整器は、好ましい装置である。
【0062】
1つの実施例において、図5の制御システムは、燃料ガス組成の著しい変化を検出することによって流量制御弁を作動させる。こういった差異は、燃料ガスの発熱量を決定するウォッベ計などの計器の使用によって「オンライン」で検出することができる。「新しい」燃料ガスの体積発熱量が、存在しているポートの幾何学的形状および流れに利用可能な圧力による制限があるようなものである場合、これらの追加のポート(2次段ポート位置または壁または火室内の他の場所にある)を開くことができ、追加の体積が火室に追加される。なお、燃料ポートの場所の変動があり得る。
【0063】
この明細書中で開示された種類の流体弁型システムの使用を通じた空気流の制御により、空気流を制御するために現在用いられるダンパまたは誘引通風器を断続的に調節する必要性が最小化される。典型的な炉内に存在する多くのバーナにあるダンパの制御は、扱いにくくかつ外部制御に容易に修正可能でない副軸の使用を伴う。副軸は、壁バーナに簡単には使用することができない。ヒータにおける空燃比のこの外部からの制御(個々のダンパに対する特定の調節によって過剰空気および個々の炎パターンを管理することによって、炉全体の効率を制御するために用いられる)は、燃料流装置(圧力または流れ)を外部から制御することによって単純化することができる。
【0064】
もう1つの実施例は、複数の炉床バーナと、複数の壁バーナと、炉床バーナのための第1の組の2次段チップと、炉床バーナのための第2の組の2次段チップとを含む炉である。第1の組の2次段チップのみが発熱量のより高い燃料で用いられ、第1の組の2次段チップおよび第2の組の2次段チップの両方が発熱量のより低い燃料で用いられる。多くの場合、炉床バーナは、高発熱量燃料と低発熱量燃料とで交換可能に動作するように構成されている。炉の全体性能は、プロセス性能についての分析装置と、炉の排気筒の中の酸素および他の燃料ガス構成要素の分析とによって監視されるであろう。たとえば、プロセス性能が、プロセス効率(process duty)を高めるまたは低下させることを必要とする場合、ヘッダの中の総燃料圧力は、上昇または低下されて、より多くの燃料を提供し得る。これに応じて、ベンチュリアセンブリにおける1次入口と2次入口との燃焼比は、調節されて、炉全体の最適性能のために炉内の指定された酸素レベル(わずかに過剰)を維持するのに必要な空気流より多いまたはより少ない空気流を提供し得る。
【0065】
以下の例は、開示された実施例のある局面を説明するために含まれるが、開示の範囲を限定することを意図するのもではない。
【0066】
例1
ベンチュリバーナアセンブリを用いる炉床バーナと壁バーナとの両方を使用する炉に対して、数値流体力学(computational fluid dynamics:CFD)シミュレーションを行ない、可変量の燃料を1次ポートを通しておよび2次ガスポートを通して噴射した。すべての例に対してのCFDシミュレーションは、Fluent社から購入可能なソフトウェアパッケージであるFluent(登録商標)を用いて行なわれた。他のソフトウェアパッケージを使用して、この明細書中に説明された結果を再現することができる。1組の炉床バーナのは、計12本のベンチュリアセンブリを有し、壁バーナは、計18本のベンチュリアセンブリを有した。壁バーナのためのベンチュリアセンブリは、壁バーナのためのものよりも流れの容量が大きかった。燃料は、体積発熱量がより高い燃料で、878kJ(832英国熱量単位)であった。ベンチュリ出口に抵抗構成部品は含まれなかった。アセンブリを通る空気流および加熱コイルの最大管金属温度が計算された。結果を以下に表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より分かるように、燃料が炉床および壁バーナベンチュリアセンブリのための1次ベンチュリポートから2次ベンチュリポートに移ると、炉床バーナからの空気流は、増加し、壁バーナからの空気流は減少する。炉床バーナにある2次段チップへの燃料は変化しないままである。また表1に示されるように、2次ポートを用いて炉床および/または壁燃料を移すことによって、空気が壁バーナから炉床バーナに移動されると、最大管金属温度は低下した。
【0069】
例2
出口にグリルを備えたベンチュリアセンブリに対してCFDシミュレーションが行なわれ、ガスの2次ポート流を変化させた。用いたガスは、水蒸気であった。1次噴射燃料の流れは一定であった。吸込まれた空気量を、2次ポートを通る水蒸気量とグリル抵抗係数との関数として求めた。結果を図6および図7に示す。
【0070】
図6に示されるように、ベンチュリの下流端部を通る圧力降下は、抵抗構成部品の抵抗係数に依存した。抵抗係数Cは、流れの速度ヘッドによって除算された抵抗構成部品にかかる圧力降下として定義される。これは以下の方程式に示される。
【0071】
ΔP=CρV2、式中Pは、ΔPは圧力降下であり、ρはガス密度であり、Vはガス速度である。
【0072】
流れ構成部品が含まれなかったとき、抵抗係数Cは0となり、ベンチュリの空気入口に吸込まれる空気の流量は、2次ガスポートを通る水蒸気量が増加するにつれて増加した。これは、水蒸気の導入が空気燃料混合物の速度を上げることによって、ベンチュリのスロート中の圧力を低下させたためである。バーナを通した全体圧力降下は同じまま(周囲から内側炉圧力)であったため、圧力が低いほど、スロート中の圧力は、より大きな空気吸込流量をもたらした。
【0073】
流れ抵抗構成部品の抵抗係数が570であったとき、ベンチュリに吸込まれる空気の流量は、2次ガスポートの中への水蒸気量が増加するとき、ほぼ同じままであった。なぜなら、抵抗構成部品にかかる圧力降下が、ベンチュリのスロート中の空気流の増加から生じるベンチュリの分岐部中のより高い上流圧力によって補償されたためである。流れ抵抗構成部品の抵抗係数が1000であったとき、ベンチュリの空気入口に吸込まれる空気の流量は、2次ガスポートの中への流量が増加するにつれ減少した。なぜなら、抵抗構成部品にかかるより大きな圧力降下を補償するために、より高い圧力(より低速度)がベンチュリの分岐部で必要とされたためである。
【0074】
図7には、図6と同じデータのプロットが示されているが、空燃比がY軸に示されている。このグラフは、ベンチュリの下流端部で水蒸気などの不活性ガスを導入することによって、空燃比を制御することができることを示す。
【0075】
例3
ベンチュリアセンブリの制御のCFDシミュレーションが行なわれ、総燃料を一定に維持しながら、ベンチュリ中のガスからなる2次ポート流を変化させた。これは、炉への入熱が一定な状態で達成することができる流量制御を表わす。用いられたガスは、発熱量がより低い燃料である。吸込まれた空気量は、2次ポートを通して供給された総燃料の割合と、スロートの直径Dと、グリル抵抗係数との関数として求められた。結果を図8に示す。
【0076】
図8から分かるように、総燃料の割合が1次から2次チップに変更されるにつれ、考慮された範囲にわたって空気流はおよそ30%変動した。ベンチュリ直径および流れ抵抗の大きさの設計変数は、この制御範囲を数多くの異なる絶対空気流量に移動させるように調節することができる。
【0077】
図9は、これらの結果を空燃比の観点から示す。抵抗係数Cが0であろうと570であろうと、空燃比はベンチュリの下流端部への総燃料の割合が低下するにつれて上昇した。
【0078】
より大きな割合の燃料を1次噴射点に移すことによって、より多くの空気が吸込まれ、空燃比が上昇した。これは、空燃比を所与の燃料についてヒータへの一定の入熱で制御することができることを示す。
【0079】
例4
すべての燃料入口に固定されたオリフィスを備えた燃料噴射ポートを含む単一の燃焼システムを用いて従来の高体積発熱量燃料と合成ガス低体積発熱量燃料との両方を同じシステム上で燃焼させることの実現可能性を決定するために、CFDシミュレーションが実行された。従来の燃料は、90mol%CH、10mol%Hであった。合成ガスは、43.6mol%CO、37.1mol%H、および19mol%COであった。燃焼速度は、237百万kJ(225百万英国熱量単位/時LHV(lower heating value:低位発熱量))であった。事例4Aは従来の燃料を用い、事例4Bは合成ガスを用いた。
【0080】
事例は炉の半分を表わす多バーナモデルにおいて実行された。炉床バーナは、フラッシュバックを防ぐグリル抵抗を備えた図1のベンチュリアセンブリを組込んだ。壁バーナは、図1のベンチュリアセンブリを使用した。壁バーナは、1次スロート燃料が加えられた平面に多孔質のジャンプを含んだ。これは、燃料噴射点の上流にあるダンパの使用をシミュレートした。
【0081】
プロセス流体は、ヒータの輻射域にすべての事例について等価な状態で入った。炉は、壁安定化チップ(2列−図5中のライン214および216参照)と2列の2次段チップ(内側および外側−図5中のライン209および210参照)との両方を使用した。このシミュレーションの結果を表2に示す。
【0082】
事例4A、従来の燃料について、システムをステージングされたチップの2次列および2次壁燃料チップへのバルブが閉じた状態で運転した。この燃料の発熱量は、より高いため、体積流量は少なく、これらは不要である。炉床バーナは、ベンチュリアセンブリの1次噴射ポートには燃料があり2次ポートには燃料がない状態で動作した。よってライン208にあるバルブ(図5)は閉じられた。炉全体に対する空燃比は、19.36であった。この比は、9.3%の過剰空気を表わす。炉床バーナは、21.57の混合空燃比で動作した。壁バーナも、ベンチュリアセンブリの1次噴射ポートには燃料があり、2次ポートには燃料がない状態で動作した。炎を安定化し、炎を壁に押付けるための1次壁安定化チップ(WS)を通して燃焼された少量の燃料があった。壁バーナも、ベンチュリアセンブリを通過した空気および燃料のみを考慮して、理論上をわずかに超える空燃比で運転した。炉床バーナにある2次段チップの内側列への流れはあったが、2次段チップの外側列への流れはなかった。ヘッダ(図5中のライン205)の中の圧力は、これらのオリフィスについて所望の燃料量に達するように272kPaG(39.5psig)であるように決定された。
【0083】
利用可能なときは、発熱量がより低い合成ガス燃料を使用することが経済的に有利である。合成ガスの分子量は高いが、体積ベースでの発熱量は低い。組成計は、これらの差異を検知し、以下の変更を行なうことができる。2次段チップの外側列および壁安定化チップの第2の列へのバルブが開かれて、より多い体積流量を可能にする(図5にあるバルブ228および230)。次にヒータは、(所望される場合コンピュータ制御によって)図5中の主ヘッダライン205中の圧力を調節(して総燃料導入量を制御)することによって平衡を保たれ、図5中のベンチュリアセンブリライン206および208にある1次ポートの流れと2次ポートの流れとの比は、バルブ(図5中の222および224)を調節することによって調節される。平衡の取れた流れを、事例4Bとして示す。なお、炉床バーナと壁バーナとの両方について2次ベンチュリポートで相当の流れ増加があったことは重要である。合成ガス事例については、必要とされる少量の空気は、炉通風のみを介して達成することができるため、壁バーナのための1次チップ噴射流は、停止された。2次段チップに相当の量の流れが起こり、追加の壁安定化燃料流のほとんどは、2次壁安定化チップを通る。ヘッダの中の圧力は、241kPaG(34.9psig)であるように決定された。空気ダンパ位置または誘引通風機速度の変更は不要であった。
【0084】
プロセス状態は同一のままであった。コイル出口温度(性能を示す)は、本質的に1095Kで一定である。炉出口における酸素含有量は、等価である(排気筒中で1.86対2.0%O2)。なお、さらなるわずかなトリミングが常に可能である。
【0085】
この例は、ベンチュリアセンブリシステムが制御下でハードウェアの変更を必要とせずにかつプロセスの性能に影響を及ぼすことなしに、1つの燃料から別の燃料へ切換えることができる能力を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
例5
CFDシミュレーションを、従来の燃料と合成ガスとの両方を用いて実行した。この場合、抵抗キャップが壁バーナに加えられて、流れをこれらのバーナから壁に沿って向けた。この壁抵抗を合成ガス流体積とともに加えることによって、空気流量が低下した。結果を以下に表3に、抵抗なしの事例4Aおよび4Bを抵抗事例5Aおよび5Bと比較して示す。
【0088】
【表3】

【0089】
表3に示すように、キャップを壁バーナに加えて流れを壁に沿って向けると、システムにかかる圧力降下を増大させることによって、等価な1次ベンチュリポート流での壁バーナ空気流が減少した。これを補償するために、ヘッダの中の圧力が、高発熱量燃料についてはわずかにのみ上昇し、しかし低発熱量燃料についてはその大幅に多い体積流量241kPaGから434kPaG(34.9psigから63psig)により相当上昇した。このベンチュリアセンブリにかかるより高い圧力降下による壁バーナからの空気の損失は、より多くの空気が炉床バーナによって供給されることを必要とした。示されるように、炉床バーナに対する1次燃料噴射は、0.216から0.432kg/秒に増加し、下流ポートへの流れは0.538から0.322kg/秒に減少した。これにより、炉床空気流が3.79から5.115kg/秒に増加した。ヒータへの総空気は、各燃料についてそれぞれ本質的に一定のままであった。
【0090】
抵抗を加えることにより、ベンチュリアセンブリの制御範囲が変化したが、すべての事例において、空気ダンパ位置および/または誘引通風器速度を変更する必要なしに、安定した運転および一定のプロセス性能が達成された。なお、キャップを壁バーナに加えることは、設計上の選択であり、オンラインで変更されるべき変数ではない。
【0091】
例6
図1のベンチュリアセンブリ10に示されるようにベンチュリのスロート部、分岐部、分岐部より下流の直線部を含めて、さまざまな場所で2次燃料を加えることの効果を示すためにCFDシミュレーションを実行した。結果を表4および図10に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
表4中のデータより分かるように、2次ガス噴射点は、ベンチュリの集束部より下流の任意の場所であり得る。しかしながら、制御範囲および反応は、場所と空気、燃料および2次ガスの入口燃料量とによって異なるであろう。
【0094】
上記に開示されたおよび他の特徴および機能の変形またはその代替を望ましく組合せて、多くの他の異なるシステムまたは用途にしてもよいことが理解されるであろう。また、後に当業者によってさまざまな現在予見されないまたは予期されない代替、変形、変更、または改良がそれになされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
10 ベンチュリアセンブリ、12 上流集束部、14 空気入口、16 1次燃料入口、18 スロート、20 分岐部、22 2次燃料入口、23 管状部、24 出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチュリアセンブリを含むバーナにおける空燃比の制御方法であって、前記方法は、
ベンチュリアセンブリ内で空気と燃料を混合することを含み、前記ベンチュリアセンブリは、
上流空気入口と、
1次噴射燃料入口を備えた集束部と、
前記集束部より下流にあるスロート部と、
前記スロート部より下流にある分岐部と、
出口と、
前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口と、
前記分岐部より下流にある管状部とを含み、前記2次ガス入口は前記管状部に形成されており、
前記混合することは、
前記1次噴射燃料入口に燃料を導入するステップと、
前記空気入口を通して吸込によって空気を受取るステップと、
前記2次ガス入口を通してガスを供給するステップと、
前記出口を通る空燃比を調節するように前記2次ガス入口を通して供給される前記ガスの流量および含有量を調節するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記燃料の発熱量は、3725kJ/mから44710kJ/mの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料は、従来の燃料または合成ガスであって、前記従来の燃料および合成ガスを、交換可能に供給することができる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2次ガス入口を通して供給される前記ガスは、燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2次ガス入口を通して供給される前記ガスは、不活性ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記2次ガス入口を通して燃料および不活性ガスが交換可能に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記2次ガス入口を通して燃料と不活性ガスとの混合物が供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記2次ガス入口より下流で流れ方向と流速とのうち少なくとも1つを変更するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記流れ方向と流速とのうち少なくとも1つを変更するステップは、流れ抵抗構成部品でもって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記バーナは炉床バーナである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バーナは壁バーナである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記出口より下流に誘引通風器が含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ベンチュリアセンブリの上流にダンパが含まれていて、前記空気入口を通る空気の流量の追加的な制御を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
体積発熱量が3725kJ/mから44710kJ/mの範囲の燃料を交換可能に用いることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ベンチュリアセンブリを含む少なくともう一つのバーナを有するヒータの燃焼方法であって、前記方法は、
ベンチュリアセンブリ内で空気と燃料を混合することを含み、前記ベンチュリアセンブリは、
上流空気入口と、
1次噴射燃料入口を備えた集束部と、
前記集束部より下流にあるスロート部と、
前記スロート部より下流にある分岐部と、
出口と、
前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口と、
前記分岐部より下流にある管状部を含み、前記2次ガス入口は前記管状部に形成されており、
前記混合することは、
前記1次噴射燃料入口に燃料を導入するステップを備え、前記燃料は前記空気入口の中に空気を吸込ませ、さらに前記2次ガス入口を通してガスを供給するステップを備え、選択された空燃比の空気と燃料との混合物が、前記出口を通って前記ベンチュリアセンブリを出る、方法。
【請求項16】
低発熱量燃料と高発熱量燃料とを交換可能に用いることができる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ガスは燃料を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ガスは不活性ガスを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ベンチュリアセンブリは、前記2次ガス入口より下流に位置決めされた抵抗構成部品を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒータは複数の炉床バーナと複数の壁バーナとを有し、前記燃料は発熱量が低く、前記低発熱量燃料の少なくとも一部を、前記炉床バーナに隣接する第1の場所と前記ヒータの壁にありかつ前記壁バーナより下で前記炉床バーナより上にある第2の場所とのうち少なくとも1つに位置決めされた少なくとも1つの追加のポートを通して供給するステップをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
空気入口と、
1次噴射燃料入口を備えた集束部と、
前記集束部より下流にあるスロート部と、
前記スロート部より下流にある分岐部と、
出口と、
前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口と、
前記分岐部より下流にある管状部を含み、前記2次ガス入口は前記管状部に形成されているベンチュリアセンブリを備えるバーナ。
【請求項22】
前記2次ガス入口より下流に配置された抵抗構成部品をさらに備える、請求項21に記載のバーナ。
【請求項23】
前記抵抗構成部品は、前記出口の近傍に配置されている、請求項22に記載のバーナ。
【請求項24】
前記バーナは炉床バーナである、請求項21に記載のバーナ。
【請求項25】
前記バーナは壁バーナである、請求項21に記載のバーナ。
【請求項26】
前記ベンチュリアセンブリの上流に配置されたダンパをさらに備える、請求項21に記載のバーナ。
【請求項27】
前記2次ガス入口は、燃料と不活性ガスとのうち少なくとも1つの供給ラインに接続されるように構成されている、請求項21に記載のバーナ。
【請求項28】
前記2次ガス入口は、燃料供給ラインと不活性ガス供給ラインとの両方に接続されるように構成されている、請求項21に記載のバーナ。
【請求項29】
前記抵抗構成部品は、流れ方向と流速とのうち少なくとも1つを変更する、請求項22に記載のバーナ。
【請求項30】
前記バーナは、前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口を有する複数のベンチュリアセンブリを備える、請求項21に記載のバーナ。
【請求項31】
少なくとも一つのベンチュリアセンブリを含むバーナアセンブリ内の空燃比を制御するための燃焼制御システムであって、
前記ベンチュリアセンブリは、
空気入口と、
1次噴射燃料入口を備えた集束部と、
前記集束部より下流にあるスロート部と、
前記スロート部より下流にある分岐部と、
出口と、
前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口と、
前記分岐部より下流にある管状部を含み、前記2次ガス入口は前記管状部に形成されており、
前記燃焼制御システムは、
前記1次噴射燃料入口での燃料入口流を制御するように構成された第1の流量制御装置と、
前記2次ガス入口へのガス入口流を制御するように構成された第2の流量制御装置と、
前記燃料入口での前記燃料の発熱量がより低いかより高いかを判断するように構成された燃料分析構成部品とを備える、燃焼制御システム。
【請求項32】
前記第1および第2の流量制御装置のうち少なくとも1つは、バルブである、請求項31に記載の燃焼制御システム。
【請求項33】
前記第1および第2の流量制御装置のうち少なくとも1つは、圧力調整器である、請求項31に記載の燃焼制御システム。
【請求項34】
前記空気入口流量の制御を支援するためのダンパをさらに備える、請求項31に記載の燃焼制御システム。
【請求項35】
炉床と、側壁と、ベンチュリアセンブリを含む少なくとも一つのバーナを備えたバーナアセンブリとを含む炉のための燃焼制御システムであって、前記ベンチュリアセンブリは空気入口と、1次噴射燃料入口を備えた集束部と、前記集束部より下流にあるスロート部と、前記スロート部より下流にある分岐部と、出口と、前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次ガス入口とを含み、
前記ベンチュリアセンブリは前記分岐部より下流にある管状部をさらに含み、前記2次ガス入口は前記管状部に形成されており、
前記燃焼制御システムは、
前記1次噴射燃料入口への燃料入口流を制御するように構成された第1の流量制御装置と、
前記2次ガス入口への入口流を制御するように構成された第2の流量制御装置とを備える、燃焼制御システム。
【請求項36】
前記第1および第2の流量制御装置を通る流量は、前記燃料の組成、前記燃料の発熱量、ヒータの前記出口での酸素含有量、および前記ベンチュリアセンブリを通る所望の空気流量のうち少なくとも1つに応じて変えられる、請求項35に記載の燃焼制御システム。
【請求項37】
炉床と壁とのうち少なくとも1つにある第1の組のステージングされたバーナポートと、前記第1の組のステージングされたバーナポートへの入口流を制御するように構成された第2の流量制御装置とをさらに備える、請求項36に記載の燃焼制御システム。
【請求項38】
前記第1の組のステージングされたバーナポートに隣接する第2の組のステージングされたバーナポートへの低発熱燃料の入口流を制御するように構成された第3の流量制御装置をさらに備える、請求項37に記載の燃焼制御システム。
【請求項39】
前記1次噴射燃料入口に供給されている前記燃料の組成と発熱量とのうち少なくとも1つを求めるように構成された燃料分析構成部品をさらに備える、請求項36に記載の燃焼制御システム。
【請求項40】
前記第1および第2の燃料制御装置は、前記燃料分析構成部品によって制御される、請求項39に記載の燃焼制御システム。
【請求項41】
炉床と、側壁と、炉燃料入口と、ベンチュリアセンブリを含むバーナとを備えた炉のための燃焼制御システムであって、前記ベンチュリアセンブリは空気入口と、1次燃料入口を備えた集束部と、前記集束部より下流にあるスロート部と、前記スロート部より下流にある分岐部と、出口と、前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次燃料入口とを含み、前記ベンチュリアセンブリは前記分岐部より下流にある管状部をさらに含み、前記2次燃料入口は前記管状部に形成されており、
前記燃焼制御システムは前記炉の燃焼後酸素含有量を求めるように構成された酸素分析構成部品を備え、前記酸素分析構成部品は前記ベンチュリアセンブリの前記1次および2次の燃料入口への相対燃料流量を調節するために用いられる、炉のための燃焼制御システム。
【請求項42】
炉床と、側壁と、バーナとを含む炉のための燃焼制御システムであって、前記バーナはベンチュリアセンブリを含み、前記ベンチュリアセンブリは、空気入口と、1次燃料入口を備えた集束部と、前記集束部より下流にあるスロート部と、前記スロート部より下流にある分岐部と、出口と、前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次燃料入口とを含み、前記ベンチュリアセンブリは前記分岐部より下流にある管状部をさらに含み、前記2次燃料入口は前記管状部に形成されており、
前記燃料入口での前記燃料の発熱量がより低いかより高いかを判断するように構成された燃料分析構成部品を備え、前記燃料分析構成部品は、前記1次燃料入口と前記2次燃料入口とのうち少なくとも1つへの燃料の流量を制御するために用いられる、炉のための燃焼制御システム。
【請求項43】
複数の炉床バーナと、複数の壁バーナと、前記複数の炉床バーナと前記複数の壁バーナとのうち少なくとも一方のための第1の組のステージングされたバーナポートと、前記第1の組に隣接する第2の組のステージングされたバーナポートとを備える炉であって、
前記第1の組のステージングされたバーナポートのみが発熱量のより高い燃料で用いられ、前記第1の組と前記第2の組のステージングされたバーナポートの両方が発熱量のより低い燃料で用いられ、
前記炉床バーナと前記壁バーナの少なくとも一つはベンチュリアセンブリを含み、前記ベンチュリアセンブリは、空気入口と、1次燃料入口を備えた集束部と、前記集束部より下流にあるスロート部と、前記スロート部より下流にある分岐部と、出口と、前記集束部より下流かつ前記出口より上流に配置された2次燃料入口とを含み、前記ベンチュリアセンブリは前記分岐部より下流にある管状部をさらに含み、前記2次燃料入口は前記管状部に形成されている、炉。
【請求項44】
前記炉床バーナおよび前記壁バーナは、発熱量のより高い燃料および発熱量のより低い燃料で交換可能に動作するように構成されている、請求項43に記載の炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−215383(P2012−215383A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180791(P2012−180791)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2010−518217(P2010−518217)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508055995)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】LUMMUS TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】