説明

燃焼制御装置

【課題】スタートチェック完了前であっても種々の自己点検を行って異常の有無を知ることのできる小型化可能な燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】コイルへの印加電圧が動作電圧未満で第1接点に接触し、動作電圧以上で第2接点に接触する始動点検リレーK1と、始動点検リレーの第1接点に接続され、故障が存在しない場合に充電されるコンデンサC1と、コンデンサの放電経路を形成するように配置されたコイルに直列に接続された第1スイッチ素子Q1とを備え、起動信号に従って第1スイッチ素子をオフさせてコイルへの印加電圧を動作電圧未満にし、以って電源から始動点検リレーの第1接点を介してコンデンサを充電させ、所定時間の経過後に、起動信号に従って第1スイッチ素子をオンさせ、コンデンサを放電させてコイルへの印加電圧を動作電圧以上にし、以って始動点検リレーの接点を第2接点に切り替えることによりスタートチェック完了信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼装置を制御する燃焼制御装置に関し、特に起動時に自己を点検する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ、乾燥機、燃焼炉といった燃焼装置を制御する燃焼制御装置が知られている。この燃焼制御装置は、燃焼監視や安全遮断を行うためのプロテクトリレー(燃焼安全制御器)を備えている。プロテクトリレーは、常時開路接点を有する火炎検出リレーを備えており、この火炎検出リレーの接点は、パイロットバーナおよびメインバーナの火炎を検出する火炎検出器からの電気信号に応じて開閉する。火炎検出器は、火炎の有無を検出し、電気信号に変換してプロテクトリレーに送る。この電気信号を火炎検出信号またはフレーム電流と呼ぶ。
【0003】
パイロットバーナまたはメインバーナが燃焼している間は、火炎検出器からプロテクトリレーへフレーム電流が流れて火炎検出リレーの接点が閉成される。これにより、安全遮断弁の駆動部に電源が供給されて安全遮断弁が開に保持され、燃焼装置への燃料供給が行われる。一方、パイロットバーナおよびメインバーナの燃焼が停止して火炎が消えた場合は、火炎検出器からプロテクトリレーへ流れるフレーム電流が停止され、火炎検出リレーの接点が開放される。これにより、安全遮断弁の駆動部に対する電源の供給が停止されて安全遮断弁が閉止され、燃焼装置への燃料供給が停止される。
【0004】
このようなプロテクトリレーは、燃焼装置を安全に起動し、運転し、停止させるために、予め規定されたシーケンス(運転手順)を有する。プロテクトリレーは、燃焼装置の起動時の点火操作がなされる前段階において、例えば自己の故障の有無や火炎検出器の異常の有無(火炎検出信号と同等の信号である擬似火炎信号の有無)等を自己点検する。この自己点検は、起動信号をプロテクトリレーに与えて各部に電流を流し、正常に動作するかどうかを確認することにより行われる。この起動前の一連の自己点検を、「スタートチェック」という。そして、スタートチェックにおいて、正常であることが確認されると燃焼装置を起動し、もし何らかの異常があれば安全スイッチを作動させて燃焼装置の起動を阻止する。
【0005】
安全スイッチは、例えばバイメタル等から構成されており、スタートチェック時の通電量が異常に大きくなると熱変形し、機械的に安全遮断弁を閉じ、且つ、プロテクトリレーをロックアウトする。ロックアウトとは、安全スイッチが作動した後、リセットしないと再度起動できない状態にすることをいう。従来の燃焼制御装置では、安全スイッチが作動した後は、オペレータが安全であることを確保できた場合に、安全スイッチを手動でリセットするように構成されている。
【0006】
なお、関連する技術として、特許文献1は、実測による点火トランスの1次電流とフレーム電流の大きさから、スパークロッドの異常および点火トランスの異常を区別して診断可能にする燃焼制御装置を開示している。この燃焼制御装置は、燃焼装置のパイロットバーナに臨むスパークロッドに対し点火電流を供給する点火トランスと、パイロットバーナの火炎信号を検出する火炎検出器とを設けて、燃焼開始前のスパークチェックタイミング時に点火トランスに供給される1次電流およびスパークチェックタイミング時の火炎検出器の検出出力に基づくフレーム電流に基づいて、マイクロプロセッサに、スパークロッドまたは点火トランスの異常を検出させる。
【特許文献1】特開平8−145345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の燃焼制御装置では、機械的に動作する安全スイッチが採用されているので、プロテクトリレー自体が大型になるとともに、安全スイッチが作動した時は、オペレータが現場に出向いて手動でリセット操作を行う必要がある。そこで、安全スイッチが作動してもオペレータが現場に出向いて手動でリセット操作を行う必要がない小型化が可能なプロテクトリレーが望まれている。
【0008】
また、従来のプロテクトリレーでは、スタートチェック完了前に例えばリレー等の故障といった異常があっても安全スイッチの作動によって電源供給が停止されてしまうため、異常である旨の出力を得ることができない。さらに、擬似火炎やUV異常などといった異常をスタートチェック中に検出する回路が特別に設けられていなかったので、このような異常もスタートチェック完了前において判別できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した要請に応えるとともに上述した問題を解消するためになされたものであり、燃焼装置が点火動作に入る前に該点火に先立って行われるスタートチェックが完了する前であっても種々の自己点検を行って異常の有無を知ることのできる小型化可能な燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る燃焼制御装置は、上記課題を達成するために、
コイルに印加される電圧が動作電圧未満である場合に第1接点に接触し、動作電圧以上になった場合に第2接点に接触する始動点検リレーと、
前記始動点検リレーの第1接点に接続され、故障が存在しない場合に充電されるコンデンサと、
前記コンデンサの放電経路を形成するように配置された前記始動点検リレーのコイルに直列に接続された第1スイッチ素子と、
燃焼装置を起動する前に自己を点検するスタートチェックを開始させるための起動信号に従って前記第1スイッチ素子をオフさせることにより前記始動点検リレーのコイルに印加される電圧を動作電圧未満にし、以って電源から前記始動点検リレーの第1接点を介して前記コンデンサを充電させ、所定時間の経過後に、前記起動信号に従って前記第1スイッチ素子をオンさせることにより前記コンデンサを放電させて前記始動点検リレーのコイルに印加される電圧を動作電圧以上にし、以って前記始動点検リレーの接点を第2接点に切り替えることによりスタートチェック完了信号をアクティブにする制御手段
を備えたことを特徴としている。
【0011】
このように、故障が存在しなければ、起動信号に従ってコンデンサを充電し、その後、所定時間の経過後にコンデンサを放電させることにより始動点検リレーの接点を第1接点から第2接点に切り替えてスタートチェック完了信号をアクティブにするが、故障が存在すれば、コンデンサが充電されないので、所定時間が経過してもコンデンサは放電されず、始動点検リレーの接点は第1接点から第2接点に切り替わらない。従って、スタートチェック完了信号はアクティブにならず、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。これにより、安全性が確保されている。
【0012】
また、第2の発明に係る燃焼制御装置は、第1の発明に係る燃焼制御装置において、
前記制御手段は、
接点が閉成することにより警報信号を出力する警報リレーと、
前記警報リレーのコイルに直列に接続され、前記起動信号に従ってオンした場合に前記警報リレーの接点が閉成されない大きさの電流を該警報リレーのコイルに流す第2スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子がオンすることにより発生される低レベルの電圧または前記第2スイッチ素子がオフすることにより発生される高レベルの電圧と所定の基準電圧とを比較し、該電圧が基準電圧より小さい場合に前記第1スイッチ素子をオフさせ、そうでない場合に前記第1スイッチ素子をオンさせるコンパレータ
を備えたことを特徴としている。
【0013】
このように、何らかの故障により第2スイッチ素子がオンされても低レベルの電圧が発生されなければ第1スイッチ素子はオンにされたままになる。その結果、コンデンサは充電されないので、所定時間が経過してもコンデンサは放電されず、始動点検リレーの接点は第1接点から第2接点に切り替わらない。従って、スタートチェック完了信号はアクティブにならず、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。これにより、安全性が確保されている。
【0014】
また、第3の発明に係る燃焼制御装置は、第1または第2の発明に係る燃焼制御装置において、
前記始動点検リレーの第1接点と前記コンデンサとの間に設けられ、火炎が検出された場合に接点が開放される第1火炎検出リレーと、
前記始動点検リレーの第2接点にコイルが接続され、接点が閉成されることにより点火が正常に完了したことを表すイグニッション完了信号を出力するイグニッショントライアルリレーと、
前記イグニッショントライアルリレーのコイルと接地との間に設けられ、火炎が検出された場合に接点が閉成される第2火炎検出リレー
をさらに備えたことを特徴としている。
【0015】
これにより、スタートチェック完了前に火炎が検出されるとコンデンサは充電されないので、所定時間が経過してもコンデンサは放電されず、始動点検リレーの接点は第1接点から第2接点に切り替わらない。従って、擬似火炎やUV異常などといった異常をスタートチェック完了前において判別できる。また、スタートチェック完了後に火炎が検出されるとスタートチェック完了信号はアクティブになるが、火炎が検出されないとスタートチェック完了信号はアクティブにならない。従って、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まず、これにより、安全性が確保されている。
【0016】
さらに、第4の発明に係る燃焼制御装置は、第2の発明に係る燃焼制御装置において、
前記起動信号によって前記第1スイッチ素子がオフにされてから前記所定時間の計時を開始し、該所定時間が経過したときに前記警報リレーのコイルに電源を供給し、以って接点を閉成させて警報信号を出力させるタイマをさらに備えたことを特徴としている。
【0017】
これにより、スタートチェック完了前であっても、起動信号が入力されてから所定時間が経過してもスタートチェック完了信号が出力されなければ警報信号が出力される。従って、スタートチェック完了前であっても何らかの故障が存在することをユーザに知らせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る燃焼制御装置によれば、スタートチェック完了前であっても種々の自己点検を行って異常の有無を知ることのできる小型化可能な燃焼制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置の構成を示す回路図である。この燃焼制御装置は、抵抗R1〜R6、コンデンサC1、トランジスタQ1およびQ2、コンパレータU1、リセットスイッチS1、始動点検リレーK1、警報リレーK2set、警報リセットリレーK2reset、第1火炎検出リレーK3a、第2火炎検出リレーK3b、イグニッショントライアルリレーK4、点火回路10およびタイマ20から構成されている。
【0021】
トランジスタQ1は本発明の第1スイッチ素子に対応する。このトランジスタQ1のコレクタは始動点検リレーK1のコイルの一方の端子に接続され、エミッタは接地され、ベースはコンパレータU1の出力端子に接続されている。始動点検リレーK1のコイルの他方の端子は、コンデンサC1、抵抗R1および抵抗R2の各一方の端子に接続されている。コンデンサC1の他方の端子は接地されている。抵抗R1の他方の端子は第1火炎検出リレーK3aの接点の端子bに接続されている。
【0022】
第1火炎検出リレーK3aおよび第2火炎検出リレーK3bは、トランスファ接点(c接点)構造を有する2極リレーから構成されており、それらの接点は、図示しない1つのコイルが駆動されることにより連動して作動する。具体的には、第1火炎検出リレーK3aの接点は、図示しない火炎検出器からの火炎検出信号が存在しない場合(コイルにフレーム電流が流れない場合)は端子bに接触し、火炎検出信号が存在する場合(コイルにフレーム電流が流れる場合)は開放端である端子aに接触する。この明細書では、第1火炎検出リレーK3aの接点が端子bに接触することを「接点が閉成される」と呼び、開放端である端子aに接触することを「接点が開放される」と呼ぶ。この第1火炎検出リレーK3aの接点の共通端子cは、始動点検リレーK1の接点の端子bに接続されている。
【0023】
同様に、第2火炎検出リレーK3bの接点は、火炎検出器からの火炎検出信号が存在しない場合は開放端である端子bに接触し、火炎検出信号が存在する場合は端子aに接触する。この明細書では、第2火炎検出リレーK3bの接点が端子bに接触することを「接点が閉成される」と呼び、開放端である端子aに接触することを「接点が開放される」と呼ぶ。この第2火炎検出リレーK3bの接点の共通端子cは接地されている。
【0024】
始動点検リレーK1はトランスファ接点(c接点)構造を有する。始動点検リレーK1の接点は、始動点検リレーK1のコイルに動作電圧(接点をオンするのに必要な電圧)が印加されない場合は端子bに接触し、始動点検リレーK1のコイルに動作電圧が印加された場合は端子aに接触する。この始動点検リレーK1の端子bは、本発明の第1接点に対応し、端子bは第2接点に対応する。始動点検リレーK1の接点の共通端子cは電源VDDに接続されている。始動点検リレーK1の接点の端子aに流れる信号を「スタートチェック完了信号」という。
【0025】
始動点検リレーK1の接点の端子aは、コンパレータU1の非反転入力端子(+)およびイグニッショントライアルリレーK4の一方の端子に接続されている。コンパレータU1の反転入力端子(−)には基準電圧Vrefが供給される。コンパレータU1の出力端子は、上述したように、トランジスタQ1のベースに接続されている。また、コンパレータU1の出力端子は、抵抗R6を介して電源VDDにプルアップされている。
【0026】
コンパレータU1の非反転入力端子(+)と始動点検リレーK1のコイルの他方の端子(始動点検リレーK1のコイルと抵抗R1との接続点)との間には抵抗R2が接続されている。また、コンパレータU1の非反転入力端子(+)は、抵抗R3を介して電源VDDに接続されるとともに、抵抗R4の一方の端子に接続されている。この抵抗R4の他方の端子は、警報リレーK2setのコイルの一方の端子に接続され、このコイルの他方の端子はトランジスタQ2のコレクタに接続されている。警報リレーK2setの接点(図示は省略)は、この警報リレーK2setのコイルに所定の動作電圧が印加されることにより閉成して警報信号を発生する。
【0027】
トランジスタQ2は本発明の第2スイッチ素子に対応する。このトランジスタQ2のエミッタは接地され、ベースは第2火炎検出リレーK3bの接点の端子aに接続されている。また、トランジスタQ2のベースには、イグニッショントライアルリレーK4のコイルの他方の端子、抵抗R5の一方の端子および点火回路10が接続されている。イグニッショントライアルリレーK4の接点(図示は省略)は、イグニッショントライアルリレーK4のコイルに所定の動作電圧が印加されることにより閉成され、「イグニッション完了信号」を発生する。抵抗R5の他方の端子は、警報リセットリレーK2resetのコイルを介して電源VDDに接続されるとともに、リセットスイッチS1を介して接地されている。
【0028】
警報リセットリレーK2resetの接点(図示は省略)は、この警報リセットリレーK2resetのコイルに所定の動作電圧が印加されることにより作動して警報信号の発生を停止させる。リセットスイッチS1は、押下によりオンするスイッチであり、このリセットスイッチS1がオンされることにより警報リセットリレーK2resetに電流が流れて所定の動作電圧が印加される。従って、ユーザは、リセットスイッチS1を押下することにより警報信号の発生を停止させることができる。
【0029】
点火回路10は、燃焼装置の起動時に、図2(a)に示すような、スタートチェックの開始およびイグニッショントライアルの開始を規定する起動信号を発生する。この点火回路10で発生された起動信号は、トランジスタQ2のベースに供給される。
【0030】
タイマ20は、点火回路10によって起動信号が発生されてからイグニッショントライアルが完了するまでの時間(図2に示す時刻T0から時刻T2までの時間)が経過しても始動点検リレーK1の接点が端子bに接触された状態から端子aに接触された状態に切り替わらない場合に、電源VDDを警報リレーK2setのコイルと抵抗R4との接続点に供給する。これにより、警報リレーK2setのコイルに電流が流れて、警報信号が発生される。
【0031】
次に、上記のように構成される本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置の動作を、図2に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0032】
まず、正常時の動作を説明する。点火回路10から、図2(a)に示すような、時刻T0で立ち上がる起動信号が出力されるとスタートチェックが開始される。すなわち、起動信号がHレベルになると、トランジスタQ2はオンする。これにより、電源VDDから抵抗R3、抵抗R4、警報リレーK2setのコイルおよびトランジスタQ2を順次経由して接地に電流が流れる。この際、警報リレーK2setのコイルに流れる電流は、抵抗R3および抵抗R4によって、警報リレーK2setの接点が閉成しないように制限されている。
【0033】
上記電源VDDから抵抗R3、抵抗R4、警報リレーK2setのコイルおよびトランジスタQ2を順次経由して接地に流れる電流によって、コンパレータU1の非反転入力端子(+)には、図2(b)に示すように、電源VDDの電圧を抵抗R3と抵抗R4とによって抵抗分割することにより得られる低レベル(以下、「Lレベル」という)の電圧が印加される。その結果、コンパレータU1の非反転入力端子(+)に印加される電圧は、反転入力端子(−)に印加されている基準電圧Vrefより低くなるので、コンパレータU1は、図2(c)に示すように、Lレベルの信号を出力する。このLレベルの信号がトランジスタQ1のベースに与えられることによって、図2(d)に示すように、トランジスタQ1はオフになる。その結果、コンデンサC1には、電源VDDから始動点検リレーK1の接点、第1火炎検出リレーK3aの接点および抵抗R1を順次経由して電流が流れ込み、コンデンサC1は徐々に充電される。
【0034】
この状態から所定時間が経過して時刻T1に至ると、点火回路10は、図2(a)に示すように、起動信号をLレベルに変化させる。時刻T0から時刻T1までの時間は、コンデンサC1の充電に十分な時間となるように予め定められている。起動信号がLレベルに変化することにより、トランジスタQ2のベースにはLレベルの信号が与えられるので、トランジスタQ2はオフする。その結果、電源VDDから抵抗R3、抵抗R4、警報リレーK2setのコイルおよびトランジスタQ2を順次経由して接地に流れている電流が遮断され、コンパレータU1の非反転入力端子(+)には、図2(b)に示すように、Hレベルの電圧が印加される。その結果、コンパレータU1の非反転入力端子(+)に印加される電圧は、反転入力端子(−)に印加されている基準電圧Vrefより高くなり、図2(c)に示すように、コンパレータU1はHレベルの信号を出力する。
【0035】
コンパレータU1から出力されるHレベルの信号がトランジスタQ1のベースに与えられることによりトランジスタQ1はオンする。その結果、コンデンサC1にチャージされている電荷は、始動点検リレーK1のコイルおよびトランジスタQ1を経由して放電され、始動点検リレーK1のコイルに電流が流れる。この始動点検リレーK1のコイルに流れる電流により、該コイルの動作電圧以上の電圧が印加され、始動点検リレーK1の接点は端子bに接触された状態から端子aに接触される状態に切り替えられる。その結果、図2(e)に示すように、スタートチェック完了信号がアクティブ(Hレベル)にされ、スタートチェックが完了する。
【0036】
スタートチェックが完了すると、次いで、イグニッショントライアルが実行される。イグニッショントライアルの期間は、起動信号によって規定される時刻T1から時刻T2までの期間であり、この期間に、パイロットバーナが点火される手順になっている。このイグニッショントライアルの期間に、図2(f)に示すように、図示しない火炎検出器から火炎を検出した旨を表すHレベルの火炎検出信号が出力されると、第1火炎検出リレーK3aおよび第2火炎検出リレーK3bの各接点は、端子bに接触された状態から端子aに接触される状態に切り替えられる。その結果、第2火炎検出リレーK3bの接点の端子aは接地され、その電位は、図2(h)に示すように、HレベルからLレベルに変化する。
【0037】
これにより、電源VDDから始動点検リレーK1の接点、イグニッショントライアルリレーK4のコイルおよび第2火炎検出リレーK3bを順次経由して接地へ電流が流れる。その結果、イグニッショントライアルリレーK4の接点(図示しない)が作動し、図2(g)に示すように、イグニッション完了信号が、図示しない制御回路によって起動信号の時刻T2に同期されてアクティブ(Hレベル)にされる。以上の動作によりイグニッショントライアルが完了し、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進む。
【0038】
なお、イグニッショントライアルの期間中に、火炎検出信号がHレベルにならなければ、点火回路10から、図2(a)に示すような、時刻T2で立ち上がる信号が出力される。これにより、トランジスタQ2はオンし、電源VDDから抵抗R3、抵抗R4、警報リレーK2setのコイルおよびトランジスタQ2を順次経由して接地に電流が流れる。これにより、コンパレータU1の出力がLレベルになり、トランジスタQ1はオフする。その結果、始動点検リレーK1のコイルに流れる電流は停止されるので、始動点検リレーK1の接点は、端子aに接触された状態から端子bに接触される状態に戻り、初期状態と同じ状態になる。この場合、イグニッション完了信号はアクティブにされないので、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まず、燃焼装置の起動は抑止される。また、この場合、イグニッショントライアルが完了するまでに始動点検リレーK1の接点が端子bに接触された状態から端子aに接触された状態に切り替わらないことになるので、タイマ20から警報リレーK2setのコイルと抵抗R4との接続点に電源VDDが供給されることにより、警報リレーK2setの接点が作動して警報信号を発生する。
【0039】
次に、異常時の動作を説明する。本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置では、如何なる故障が発生しても始動点検リレーK1の接点が端子aに接触された状態になってスタートチェック完了信号がアクティブになることを防ぎ、以って燃焼制御装置による起動シーケンスが次の段階に進むことを阻止するという思想に基づいて安全性を確保している。
【0040】
まず、抵抗R3または抵抗R4に故障がある場合について説明する。今、抵抗R4がオープン故障している場合を考える。この場合、コンパレータU1の非反転入力端子(+)には、電源VDDから抵抗R3を介してHレベルの信号が供給される。従って、コンパレータU1はHレベルの信号を出力し、トランジスタQ1はオンされる。その結果、電源VDDから始動点検リレーK1の接点、第1火炎検出リレーK3aの接点、抵抗R1、始動点検リレーK1のコイルおよびトランジスタQ1を順次経由して接地へ電流が流れる。この電流によって、始動点検リレーK1のコイルに動作電圧が印加されると、始動点検リレーK1の接点がオンし、スタートチェック完了信号がアクティブにされてしまう。
【0041】
そこで、電源VDDから始動点検リレーK1の接点、第1火炎検出リレーK3aの接点、抵抗R1、始動点検リレーK1のコイルおよびトランジスタQ1を順次経由して接地へ流れる電流を抵抗R1によって制限し、始動点検リレーK1のコイルに印加される電圧が動作電圧以下になるように、抵抗R1の抵抗値が設定されている。換言すれば、始動点検リレーK1の接点は、コンデンサC1の放電に起因する電圧がそのコイルに印加された場合にのみ端子aに接触される状態に変化するようになっている。従って、抵抗R4がオープン故障しても、始動点検リレーK1の接点は端子aに接触される状態に変化しないので、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。
【0042】
また、抵抗R3がオープン故障している場合は、コンパレータU1の非反転入力端子(+)には、電源VDDから始動点検リレーK1の接点、第1火炎検出リレーK3aの接点、抵抗R1および抵抗R2を経由してHレベルの信号が供給される。従って、上述した抵抗R4がオープン故障した場合と同様の動作により、抵抗R3がオープン故障しても、始動点検リレーK1の接点は端子aに接触される状態に変化しないので、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。
【0043】
また、抵抗R3および抵抗R4の少なくとも1つが短絡故障している場合は、スタートチェック期間において、警報リレーK2setのコイルに流れる電流を制限できなくなる。その結果、警報リレーK2setのコイルに印加される電圧が動作電圧以上になるので、警報リレーK2setの図示しない接点が閉成し、警報信号が発生される。従って、ユーザはスタートチェック完了前であっても、故障を知ることができる。
【0044】
この場合、コンパレータU1の出力が常にHレベルになるような故障モードであれば、トランジスタQ1は常にオンされているので、コンデンサC1に電荷がチャージされない。一方、コンパレータU1の出力が常にLレベルになるような故障モードであれば、トランジスタQ1は常にオフされているので、始動点検リレーK1のコイルには電流が流れない。従って、何れの場合であっても始動点検リレーK1の接点は端子aに接触される状態に変化しないので、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。
【0045】
次に、コンデンサC1へチャージが行われない故障が発生した時の動作を説明する。この原因としては、またはトランジスタQ1のショート故障が考えられる。この場合、始動点検リレーK1のコイルに放電電流が流れることはないので、始動点検リレーK1の接点は端子aに接触される状態に変化することはない。また、始動点検リレーK1のコイルの断線の場合も、始動点検リレーK1のコイルに放電電流が流れることはないので、始動点検リレーK1の接点は端子aに接触される状態に変化することはない。従って、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。
【0046】
次に、タイマ20が故障した時の動作を説明する。タイマ20が故障することにより、警報リレーK2setのコイルと抵抗R4との接続点に電源VDDが供給される状態になると、電源VDDからタイマ20、抵抗R4、抵抗R2、始動点検リレーK1のコイルおよびトランジスタQ1を順次経由して接地に電流が流れる可能性がある。この場合、始動点検リレーK1のコイルに、その接点をオンするのに必要な動作電圧が印加されると、始動点検リレーK1の接点がオンし、タイマ20が故障しているにも拘わらず、スタートチェック完了信号がアクティブにされてしまう。
【0047】
そこで、抵抗R2および抵抗R4の各抵抗値が下記式(1)を満足するように決定されている。これにより、タイマ20が故障しても始動点検リレーK1の接点はオンしないので、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。これにより、安全性が確保されている。
【0048】
【数1】

次に、スタートチェック完了前に、擬似火炎やUV異常が発生した場合の動作を説明する。スタートチェック完了前に、擬似火炎やUV異常が発生すると、第1火炎検出リレーK3aおよび第2火炎検出リレーK3bの各接点は、端子bに接触された状態から端子aに接触される状態に変化するので、コンデンサC1に電荷がチャージされることはない。従って、始動点検リレーK1の接点は、オンしないので、スタートチェック完了信号がアクティブにされることはなく、燃焼制御装置による起動シーケンスは次の段階に進まない。これにより、安全性が確保されている。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置によれば、安全スイッチとして機能する部分を電気回路によって構成したので、プロテクトリレーを小型化することができ、ひいては燃焼制御装置を小型化することができる。機械式の安全スイッチではないので、安全スイッチが作動した時には遠隔から電気的にリセット操作を行うように構成することができる。この構成によれば、オペレータが現場に出向いて手動でリセット操作を行う必要はない。
【0050】
また、スタートチェック完了前に例えばリレー等の故障といった異常が検出された場合であっても電源供給が停止されることはないので、スタートチェック完了前であっても異常である旨の出力を得ることができる。さらに、擬似火炎やUV異常などがスタートチェック完了前に発生しても、それを判別して燃焼制御装置による起動シーケンスが次の段階に進むのを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る燃焼制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0052】
R1〜R6 抵抗
C1 コンデンサ
Q1、Q2 トランジスタ
U1 コンパレータ
S1 リセットスイッチ
K1 始動点検リレー
K2set 警報リレー
K2reset 警報リセットリレー
K3a 第1火炎検出リレー
K3b 第2火炎検出リレー
K4 イグニッショントライアルリレー
10 点火回路
20 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに印加される電圧が動作電圧未満である場合に第1接点に接触し、動作電圧以上になった場合に第2接点に接触する始動点検リレーと、
前記始動点検リレーの第1接点に接続され、故障が存在しない場合に充電されるコンデンサと、
前記コンデンサの放電経路を形成するように配置された前記始動点検リレーのコイルに直列に接続された第1スイッチ素子と、
燃焼装置を起動する前に自己を点検するスタートチェックを開始させるための起動信号に従って前記第1スイッチ素子をオフさせることにより前記始動点検リレーのコイルに印加される電圧を動作電圧未満にし、以って電源から前記始動点検リレーの第1接点を介して前記コンデンサを充電させ、所定時間の経過後に、前記起動信号に従って前記第1スイッチ素子をオンさせることにより前記コンデンサを放電させて前記始動点検リレーのコイルに印加される電圧を動作電圧以上にし、以って前記始動点検リレーの接点を第2接点に切り替えることによりスタートチェック完了信号をアクティブにする制御手段
を備えたことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
接点が閉成することにより警報信号を出力する警報リレーと、
前記警報リレーのコイルに直列に接続され、前記起動信号に従ってオンした場合に前記警報リレーの接点が閉成されない大きさの電流を該警報リレーのコイルに流す第2スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子がオンすることにより発生される低レベルの電圧または前記第2スイッチ素子がオフすることにより発生される高レベルの電圧と所定の基準電圧とを比較し、該電圧が基準電圧より小さい場合に前記第1スイッチ素子をオフさせ、そうでない場合に前記第1スイッチ素子をオンさせるコンパレータ
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記始動点検リレーの第1接点と前記コンデンサとの間に設けられ、火炎が検出された場合に接点が開放される第1火炎検出リレーと、
前記始動点検リレーの第2接点にコイルが接続され、接点が閉成されることにより点火が正常に完了したことを表すイグニッション完了信号を出力するイグニッショントライアルリレーと、
前記イグニッショントライアルリレーのコイルと接地との間に設けられ、火炎が検出された場合に接点が閉成される第2火炎検出リレー
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記起動信号によって前記第1スイッチ素子がオフにされてから前記所定時間の計時を開始し、該所定時間が経過したときに前記警報リレーのコイルに電源を供給し、以って接点を閉成させて警報信号を出力させるタイマをさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の燃焼制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−242488(P2006−242488A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59779(P2005−59779)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】