説明

燃焼施設を運転する方法

本発明は、高温ガスを生成するための少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナー、好ましくは発電プラントの特にガスタービンを有する燃焼施設を運転する方法に関する。この場合、燃焼器を希薄消炎限界の近くで運転する運転特性曲線が、バーナー群の段階比(BGVFett)の形態で決定され、対応する信号(PulsIst,Filter(t))に変換される。少なくとも1つの脈動の限界値(PulsGrenz)の上回り/下回りが、監視装置(3)によって評価され、1つの脈動の目標値(PulsSoll)が、この監視に応じて適応される。引き続き、評価された圧力の脈動(PulsIst,Filter(t))を適応された脈動の目標値(PulsSoll,adapt.)と比較し、1つの補正値ΔBGVをこの比較から算出し、最初に決定したバーナー群の段階比(BGVFett)が、この補正値(ΔBGV)によって補正される。これによって、燃焼施設の運転が、希薄消炎限界の近くで実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガスを生成するための少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナー、好ましくは発電プラント内の特にガスタービンを有する燃焼施設を運転する方法に関する。さらに本発明は、高温ガスを生成するための少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナーを有する燃焼施設に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼施設、例えばガスタービンは、通常は少なくとも1つのバーナーを有する少なくとも1つの燃焼器を有する。さらに、燃料供給設備が規則通りに設けられている。燃料が、この燃料供給設備によってバーナーに供給される。汚染物質の放出に対して守るべき限界値に関して常に強まっている規制を考慮して、バーナーを希薄消炎限界に可能な限り近づけることが試みられている。特に有害なNOの放出の発生が、このような希薄運転によって低減され得る。
【0003】
この場合、消炎限界を決定する影響パラメータが、ガスタービンの運転の間に変化する。このような影響パラメータは、例えば周囲温度,相対空気湿度,特に前方に接続された圧縮機の運転状態に依存する空気体積流量,実際に使用される燃料の組成等のような限界条件である。多くの場合、バーナーが、これらのバーナーの燃料供給に関して2つ又は多数のグループに区分されている。その結果、燃焼工程の段階比に影響し得る。一般にこの場合、両バーナー群又は多数のバーナー群に対する燃料供給が、上述した要因に応じて制御される。しかしながら、全ての重要なパラメータ及び特に全ての変化が、各時点に対して適切に考慮できないので、予め決定した燃料の段階比つまりバーナー群の段階比が、希薄消炎限界に対して一定な安全余裕で常に選択される。
【0004】
この安全余裕は、燃焼工程の安定性に異なって作用する個々の限界条件が変化した時でも、個々のバーナーの安定な運転が確保されることを保証しなければならない。安定な運転状態は、特に発電に利用される発電プラントで最も優先される。その結果、多くの場合、より大きい安全余裕が絶対に必要である。このため、NOのより高い放出を我慢しなければならない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第1 533 569号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することにある。本発明は、特許請求の範囲に記載されているようにこの課題に取り組んで冒頭で述べた種類の運転方法に対して改良された実施形を提供する。この実施形は、可能な限り希薄消炎限界に近い燃焼器の特に安定な運転を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、独立請求項に記載の方法,燃焼施設及び装置によって解決される。好適な実施形は、従属請求項の方法及び装置である。
【0007】
本発明は、燃焼器のバーナーに対する燃焼供給を燃焼器内で発生する圧力の脈動に応じて制御するという大まかな思想に基づく。この場合、この制御は、燃焼器内で発生して評価される圧力の脈動をプリセットされていて適応された脈動の目標値と比較することによって実現される。この場合、燃焼工程が、希薄消炎限界に近づくにつれて、圧力の脈動が増大するという認識を、本発明は利用する。それ故に最初に、燃焼器を希薄消炎限界の近くで運転する運転特性曲線が、バーナー群の段階比の形態で決定つまり算出され、同時に燃焼器内で発生する圧力の脈動が、測定され引き続きフィルター装置によって評価される。さらに、負荷に応じて決定されている1つの脈動の目標値及び少なくとも1つの脈動の限界値がプリセットされる。この場合、監視装置が、この脈動の限界値又はこれらの脈動の限界値の上回り/下回りを監視し、この監視に応じて脈動の目標値を適応させる。引き続き、燃焼器内で測定されて評価された圧力の脈動が、この適応させた脈動の目標値と比較され、これによって1つの補正値を算出する。最初に決定した運転特性曲線、すなわち燃料供給が、この補正値によって補正される。
【0008】
この場合、フィルター装置には、記録された圧力の脈動信号の雑音を低減する任務がある。これによって、信号の特性が明らかに向上され得る。このように改良された信号の特性は、本発明の運転方法の能動的な制御工程に肯定的に作用する。この場合、フィルター装置が、重要な信号成分を増幅する一方で、邪魔な信号成分を減衰又は除去するように、このフィルター装置は特に構成され得る。この場合、信号の特性の向上は、増幅率KFilter及び時定数TFilterを使用することによって実現され得る。
【0009】
その他の方法と違って、本発明の方法は、閉ループ制御を有する。この閉ループ制御の場合、脈動の目標値が動的に適応される。したがって、燃焼器が、この方法によって安定に運転でき、それにもかかわらず希薄消炎限界の非常に近くで運転され得る。これによって、NOの放出が明らかに低下され得る。この場合、最近の燃焼器は、圧力の脈動を監視するセンサ系を規則にしたがって備えるという現状を、本発明の方法は利用する。その結果、このセンサ系が利用でき、これに応じて圧力の脈動の検出に関して本発明の方法を利用又は実現するための追加のコストが発生しない。
【0010】
特に好適な実施形によれば、負荷に依存する脈動の目標値がプリセットされる。特定の数の測定される圧力の脈動値が、1つの所定の期間内に予め決定した少なくとも1つの脈動の限界値を上回る/下回る時に、この目標値が、所定の大きさだけ引き下げられるか又は引き上げられる。所定の数の脈動値が、プリセットされている脈動の限界値の上方で発生した場合、脈動の目標値が、予め決定した大きさだけ引き下げられる。この場合、脈動の目標値が新たに適応されるまで、適応された脈動の目標値が、所定の期間に使用される。
【0011】
本発明の運転方法のその他の重要な特徴及び利点は、従属請求項,図面及びこれらの図面い基づく付随する図面の説明に記載されている。
【0012】
本発明の好適な実施の形態は、図面中に示されていて、以下の説明で詳しく述べる。この場合、同じ符号は、同じか又は類似か又は機能的に同じ要素に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
高温ガスを生成するための同様に図示しなかった少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナーを有する図示しなかった燃焼施設が、図1に応じて圧力の脈動PulsIst(t)を測定する測定装置1を有する。この測定装置1は、これらの圧力の脈動を好ましくは電気信号に変換し、フィルター装置2に転送する。この場合、このフィルター装置2は、測定される圧力の脈動PulsIst(t)に対応する信号を評価する。この場合、好ましくは重要な信号成分が増幅され、例えば雑音のような重要でない信号成分が最小限に低減される。フィルター装置2は、上述した信号を評価するために1次フィルタを有する。この1次フィルタは、測定装置1から来る信号を増幅率KFilterで増幅する。時定数TFilterが、信号の処理で定められ得る。この時定数TFilterは、測定装置1から入って来る圧力の脈動信号PulsIst(t)に時間要素を与える。燃焼施設の負荷の変化を考慮できるようにするため、2つの異なる増幅率KFilterつまり一定の負荷状況に対する増幅率及び過渡的な負荷状況に対するもう1つの増幅率を規定することが提唱されている。フィルター装置2によって評価された圧力の脈動信号PulsIst,Filter(t)が、評価/制御装置4に転送され、この評価/制御装置4内でつまりこの評価/制御装置4によって、適応した脈動の目標値PulsSoll,adapt.と比較される。
【0014】
この場合、適応した脈動の目標値PulsSoll,adapt.が、負荷に依存し、燃焼施設が可能な限り希薄に運転され得るようにしなければならない。これによって、NOの放出が低減され得る。この場合、適応した脈動の目標値PulsSoll,adapt.は、以下のように算出される:
最初に、脈動の目標値PulsSollが、相対負荷に応じて規定つまりプリセットされる。この予め規定された脈動の目標値PulsSollは、監視装置3によって監視され、同時に補正された脈動の目標値PulsSoll,adapt.が、この監視装置3の監視に応じて算出される。監視装置3が、測定されて得に濾波された圧力の脈動PulsIst(t)つまりPulsIst,Filter(t)を予め規定した脈動の目標値PulsSollと比較し、少なくとも1つの脈動の限界値PulsGrenzを上回るか又は下回る時に脈動の目標値PulsSollをこれに応じて引き上げるか又は引き下げて適応することによって、脈動の目標値PulsSollが適応される。したがって、プリセットされている脈動の目標値PulsSollを補正つまり適応するためには、所定の数の圧力の脈動値PulsIst(t)が、規定された1つの時間空間内に少なくとも予め決定した脈動の限界値PulsGrenzの上方又は下方に存在する必要がある。
【0015】
評価/制御装置4が、両入力値から、すなわち一方では測定されて濾波された圧力の脈動PulsIst,Filter及び他方では適応した脈動の目標値PulsSoll,adapt.から補正値ΔBGVを算出する。最初に規定したバーナー群の段階比BGVFett.、すなわち運転特性曲線が、補正値ΔBGVによって補正される。この場合、この補正値ΔBGVは、測定された濾波された圧力の脈動PulsIst,Filterを適応した脈動の目標値PulsSoll,adapt.と比較することによって算出される。この場合、評価/制御装置4は、例えば比例/積分制御器として又は純粋な比例制御器として又は純粋な積分制御器として構成でき、増幅率KPI及び時定数TTIによって動作する。この時定数TTIは、プリセットされている脈動の目標値PulsSollと同様に相対負荷に応じて規定されている。バーナー群の最初の段階比BGVFettが、補正値ΔBGVによって補正される。その結果、補正された新しい限界条件により良好に適合されたバーナー群の段階比BGVNeuが得られる。
【0016】
時間tに対して測定される圧力の脈動PulsIstが、図2にしたがってプロットされている。この場合、脈動の上方限界値PulsGrenz1及び脈動の下方限界値PulsGrenz2がプリセットされ得る。所定の数の脈動値PulsIst又はPulsFilterが、1つの所定の時間空間内に脈動の限界値PulsGrenz2を下回るか又は脈動の上方限界値PulsGrenz1を上回る時に、この上方限界値PulsGrenz1及び下方限界値PulsGrenz2は、上回るか下回る時に脈動の目標値PulsSollを監視装置3によって適応させる。したがってすなわち、PulsGrenz1とPulsGrenz2との間の領域が規定される。この領域内では、脈動の目標値PulsSollが適応されない。脈動の限界値PulsGrenzを上回る時及び下回る時に脈動の目標値PulsSollを適応させる脈動の限界値PulsGrenzだけが規定されていることも考えられる。このような実施形の場合、脈動の目標値PulsSollを適応させない領域が設けられていない。
【0017】
僅かな脈動値PulsIstが、より短い1つの時間空間内に脈動のより高い限界値の上方に存在する場合に脈動の目標値PulsSollを適応させる別の実施形も考えられる。この適応のため、したがって、1つの一定の期間内に脈動の上方限界値PulsGrenz1を上回る所定の数の脈動値PulsIstが必要であるか、又は、より短い期間内に脈動の上方限界値PulsGrenz1より高く位置している脈動の限界値の上方に存在する上述した所定の数より少ない数の脈動値PulsIstが必要である。これと同じことは、脈動の下方限界値PulsGrenz2に対して成立する。
【0018】
本発明の方法は、燃焼施設を希薄消炎限界の近くで運転すること及びこれによってNOの放出を明らかに低下させることを可能にする。しかしながら同時に、運転特性曲線つまりバーナー群の段階比(BGVFett)が、希薄消炎限界に対して一定の安全余裕で運転される。その結果、バーナーの安定した運転が保証される。しかしながらこの安全余裕は、説明した閉ループ制御の概念によって明らかに低減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の運転方法の可能なシーケンスを非常に概略的に示す。
【図2】圧力の脈動がプロットされているグラフである。
【符号の説明】
【0020】
1 測定装置
2 フィルター装置
3 監視装置
4 評価/制御装置
BGVFett バーナー群の段階比,運転特性曲線
BGVNeu 適応後のバーナー群の段階比
ΔBGV バーナー群の段階比の補正値
Filter フィルター装置2によって使用される増幅率
PI 評価/制御装置4によって使用される増幅率
Filter フィルター装置2によって使用される時定数
PI 評価/制御装置4によって使用される時定数
PulsGrenz 脈動の限界値
PulsGrenz1 脈動の上方限界値
PulsGrenz2 脈動の下方限界値
PulsIst 燃焼器内で測定される圧力の脈動
PulsSoll プリセットされている脈動の目標値
PulsIst,Filter 燃焼器内で測定されて引き続き濾波された圧力の脈動
PulsSoll,adapt. 適応つまり補正された脈動の目標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガスを生成するための少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナー、好ましくは発電プラントの特にガスタービンを有する燃焼施設を運転する方法において、
−この場合、前記燃焼器を希薄消炎限界の近くで運転する運転特性曲線が、バーナー群の段階比(BGVFett)の形態で決定され、
−この場合、圧力の脈動(PulsIst(t))が、前記燃焼器内で測定され、対応する信号に変換され、
−この場合、少なくとも1つの脈動の限界値(PulsGrenz)の上回り/下回りが監視され、1つの脈動の目標値(PulsSoll)が適応され、
−この場合、測定される圧力の脈動(PulsIst(t))に対応する信号が、フィルター装置(2)によって評価され、
−この場合、評価された圧力の脈動(PulsIst,Filter(t))が、適応された脈動の目標値(PulsSoll,adapt.)と比較され、1つの補正値(ΔBGV)が、この比較から算出され、最初に決定した前記バーナー群の段階比(BGVFett)が、この補正値(ΔBGV)によって補正される方法。
【請求項2】
−前記補正値(ΔBGV)は、増幅率(KPI)及び/又は時定数(TPI)に応じて算出され、及び/又は
−前記脈動の目標値(PulsSoll)及び/又は前記増幅率(KPI)及び/又は前記時定数(TPI)は、負荷に依存し、及び/又は
−異なる増幅率(KPI)及び/又は時定数(TPI)が、一定の負荷状況及び/又は過渡的な負荷状況に対して考慮されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
負荷に依存する脈動の目標値(PulsSoll)がプリセットされ、特定の数の測定される圧力の脈動値が、1つの所定の期間内に予め決定した前記脈動の限界値(PulsGrenz)を上回る/下回る時に、この目標値が、所定の大きさだけ引き下げられるか又は引き上げられることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、閉ループ制御として構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
高温ガスを生成するための少なくとも1つの燃焼器及び少なくとも1つのバーナーを有する燃焼施設、特にガスタービン、好ましくは発電プラントにおいて、
−この場合、前記燃焼器を希薄消炎限界の近くで運転する運転特性曲線が、バーナー群の段階比(BGVFett)の形態で決定され、
−圧力の脈動(PulsIst(t))を測定する測定装置(1)を有し、
−監視装置(3)を有し、この監視装置(3)は、少なくとも1つの脈動の限界値(PulsGrenz)の上回り/下回りを監視し、この監視に応じて1つの脈動の目標値(PulsSoll)が適応し、
−フィルター装置(2)を有し、このフィルター装置(2)は、測定される圧力の脈動(PulsIst(t))に対応する信号を評価し、
−評価/制御装置(4)を有し、この評価制御装置(4)は、評価された圧力の脈動(PulsIst,Filter(t))を適応された脈動の目標値(PulsSoll,adapt.)と比較し、1つの補正値(ΔBGV)をこの比較から算出し、最初に決定した前記バーナー群の段階比(BGVFett)が、この補正値(ΔBGV)によって補正される方法。
【請求項6】
前記フィルター装置(2)は、1次フィルタを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
特定の数の測定される脈動値が、1つの所定の期間内に前記脈動の限界値(PulsGrenz)を上回る/下回る時に、前記監視装置(3)が、前記脈動の目標値(PulsSoll)を所定の大きさだけ引き下げるか又は引き上げることによって、前記監視装置(3)が、前記脈動の目標値(PulsSoll)を適応させるように、この監視装置(3)は構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記評価/制御装置(4)は、比例/積分制御器(PI制御器)として又は比例制御器(P制御器)として又は積分制御器(I制御器)として構成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−523207(P2009−523207A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549795(P2008−549795)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068662
【国際公開番号】WO2007/087907
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland