説明

燭台

【課題】 蝋燭の熱が外部へ伝導せず、また皿体が温まりやすく、蝋が燃え切り使用後はすぐに冷却され、さらに溶けた蝋が皿体から漏れるのを防ぐ燭台を提供する。
【解決手段】 皿体1と、皿体1から略垂直上向きに立設される芯部2と、皿体1を支持する台座6と、を備え、皿体1が、金属からなり、台座6が、皿体1を構成する金属よりも熱伝導率が低いセラミックスからなる燭台であり、蝋燭の熱が皿体1から外部へ伝導しにくい。また、皿体1の底面部5の厚さを、0.5mm〜1.5mmとすることで、皿体1の熱容量が小さくなり、蝋が燃え切りやすく使用後はすぐに冷却される。さらに、芯部2が、皿体1に形成される挿入穴3に挿入され、挿入穴3の周囲には、略垂直上向きに堤部4が設けられる構成とすることで、堤部4により、溶けた蝋がせき止められ、皿体1から漏れるのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝋燭を立てて火を点すための燭台に関する。
【背景技術】
【0002】
蝋燭を立てて火を点すための燭台は、かつては照明として用いられるものであったが、近年では仏具としての使用や、アロマキャンドルを点すための使用が一般的である。そしてとくに最近は、住宅事情により、仏壇などが小型化しており、そこに供える仏具としての燭台も小型のものが多く用いられている。また、アロマキャンドルを点す場合も、主に卓上で用いられるものであり、小型のものが好まれている。
【0003】
このような小型の燭台としては、従来、図7に示すものが一般に用いられている。この燭台は、溶けた蝋を受ける皿体101と、皿体101を支える台座106と、蝋燭Aを挿して立てるための芯部102を備える。台座106と芯部102とは一体に形成されており、芯部102の下端(台座106との境界部)にはネジ山が切られている。一方、皿体101の中央には接合孔103が設けられ、芯部102と対応するネジ山が切られており、接合孔103に芯部102がねじ込まれている。そして、これらが外容器111に載せられている。皿体、台座および芯部は金属製のものが一般的であり、外容器は金属製や陶器製のものが一般的である。
【0004】
しかしながら、このような従来の燭台には、以下のような問題があった。まず、皿体、芯部および台座は一般にすべて金属製であり、溶けた蝋の熱が、皿体や芯部から台座、さらに外容器へと伝導され、外容器が熱くなり、外容器を持って運ぶ際に火傷をしたり、外容器を設置した面を焦がしたりするおそれがあった。また、溶けた蝋が皿体と芯部のネジの隙間から漏れ、外容器内に蝋が溜まり、さらに外容器が加熱される原因となり、溜まった蝋に着火すると火災の原因ともなりえた。さらに、皿体と芯部をねじ込みにより接合する構成上、皿体はネジ山を切るためにある程度厚みが必要であり、皿体が温まりにくく、溜まった蝋が溶け残り、また一旦熱くなるとなかなか冷えない点も問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、蝋燭の熱が外部へ伝導せず、また皿体が温まりやすく、蝋が燃え切り使用後はすぐに冷却され、さらに溶けた蝋が皿体から漏れるのを防ぐ燭台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、皿体と、該皿体から略垂直上向きに立設される芯部と、前記皿体を支持する台座と、を備え、前記皿体が、金属からなり、前記台座が、前記皿体を構成する金属よりも熱伝導率が低いセラミックスからなることを特徴とする。皿体は、平板状で周縁部が立ち上がっており、溶けた蝋を溜めることができる。その平面形状は、円形、楕円形、多角形や、葉っぱや花びらの形を模したものなど、どのような形状であってもよい。芯部は、蝋燭を挿すためのものであり、垂直上方に向けて先鋭形状であることが望ましい。ただし、安全のため先端部には丸みをつけてもよい。芯部は必ずしも皿体の中心に位置していなくてもよいが、芯部に挿した蝋燭から溶け出す蝋が、確実に皿体の内側に流れ落ちるような位置になければならない。そして、台座が皿体を支持するとは、皿体が台座を介して接地しており、皿体が直接設置面やその他周縁の構造体に接することがない状態をいう。ただし、皿体と台座の間にさらに別部材を介していてもよい。台座の形状はとくに限定されず、椀状、筒状、環状、皿状など、皿体を安定して支持できるものであればどのようなものであってもよい。皿体を構成する金属は、どのような種類のものであってもよいが、熱伝導率の高いものが好ましく、また加工性なども考慮すると、真鍮や、アルミニウム、ステンレスなどが適する。また、セラミックスとは、陶磁器一般を指すものである。さらに、本発明の燭台は、椀状または皿状の外容器に載せて使用すると、持ち運びやすく、また転倒防止の効果もある。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、前記皿体の底面部の厚さが、0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする。皿体は、上記のとおり平板状で周縁部が立ち上がった形状である。底面部とは、皿体において周縁部を除いた平板部分を指す。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、前記芯部が、前記皿体に形成される挿入穴に挿入され、該挿入穴の周囲には、略垂直上向きに堤部が設けられることを特徴とする。芯部は皿体に形成される挿入穴に挿入され、立設している。挿入穴は、皿体を貫通していても、貫通していなくてもよい。そして、挿入穴の周囲に形成される堤部は、皿体の挿入穴周縁部が上方に立ち上がったものである。
【0009】
本発明のうち請求項4の発明は、前記芯部が、上向きに先鋭形状の蝋燭固定部を有し、前記挿入穴の直径が、前記蝋燭固定部に固定する蝋燭の下端に設けられる蝋燭穴の開口部の直径と略同一でありかつ前記蝋燭固定部の下端の直径よりも小さく、前記蝋燭固定部が、その先端から前記挿入穴に挿入されることを特徴とする。この場合、挿入穴は皿体を貫通している。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1の発明によれば、熱伝導率の低いセラミックスからなる台座により皿体を支持しているため、蝋燭の熱が皿体から外部へ伝導しにくく、燭台の設置面が加熱されることによる火傷や、設置面の損傷を防ぎ、安全性に優れた燭台を提供することができる。
【0011】
本発明のうち請求項2の発明によれば、皿体の底面部の厚さを0.5mm〜1.5mmと薄くすることで、皿体の熱容量が小さくなって温まりやすくなり、蝋が燃え切りやすく、使用後はすぐに冷却される。なお、厚さを0.5mmより薄くすると、構造的に弱くなってしまい実用に不向きであり、1.5mmより厚くすると、熱容量が大きくなってしまい、上記の効果が小さくなってしまう。
【0012】
本発明のうち請求項3の発明によれば、皿体に形成される挿入穴の周囲に堤部を設けることで、溶けた蝋がせき止められる。これにより、挿入穴が皿体を貫通している場合、芯部と貫通穴との隙間から蝋が漏れることを防ぐ。また、挿入穴が皿体を貫通していない場合でも、蝋が芯部と貫通穴の隙間に流れ込み、芯部と皿体が固着することを防ぐ。
【0013】
本発明のうち請求項4の発明によれば、皿体の挿入穴と蝋燭の蝋燭穴の大きさを略同一にし、先鋭形状の蝋燭固定部を挿入穴に挿入することで、蝋燭を蝋燭固定部に固定した際に、蝋燭の下端が皿体に接し、蝋燭を安定して立設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の燭台の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1は、本発明の燭台の第一実施形態の中心軸断面図であり、図2はその斜視図である。第一実施形態は、皿体1と、皿体1の中心に立設される芯部2と、皿体1を支持する台座6と、台座6を載せる外容器11と、を備える。皿体1は、平面形状が円形で、周縁部が立ち上がっており、底面部5の厚さは1mmである。ただし、小口部は意匠性を考慮してより厚く形成してもよい。また、その中心には、挿入穴3が貫通しており、挿入穴3の周縁が垂直上方に向けて立ち上がり、堤部4を形成している。芯部2は、上方に向けて先鋭形状である蝋燭固定部21と、蝋燭固定部21の下端から下方へ延出される接合部22と、からなる。接合部22は棒状で、周囲にはネジ山が切られている。台座6は、椀形で下方に開口した形状である。その上面(椀の底部分)は、平面状に形成され、中心に取付孔61が設けられる。皿体1は、台座6の上に、挿入穴3と取付孔61とが連通するように設置され、芯部2の接合部22が、挿入穴3および取付孔61に挿入される。蝋燭固定部21の下端が堤部4の上端に係止され、接合部22の下端からワッシャ72を介してナット71をねじ込むことで、芯部2と、皿体1および台座6が結合される。そして、一体となった皿体1、芯部2および台座6は、椀形の外容器11に載せられ、使用される(図2では、外容器を省略している)。なお、皿体1および芯部2は真鍮からなり、台座6は真鍮より熱伝導率の低いセラミックスからなる。
【0015】
図3は、第一実施形態の燭台の使用状態の説明図である。芯部2が蝋燭Aの蝋燭穴a1に挿入され、火が点されている。この際、熱伝導率の低いセラミックスからなる台座6により皿体1を支持しているため、蝋燭の熱が皿体1から外容器11へ伝導しにくく、外容器11に触れても火傷をすることがない。また、皿体1の底面部5が薄く形成されており、熱容量が小さく、温まりやすいため、溜まった蝋も燃え切りやすい。また、使用後はすぐに冷えるため、安全である。さらに、蝋が溶け出し、皿体1に溜まるが、蝋は堤部4によりせき止められ、挿入穴3から流出することはない。
【0016】
図4は、本発明の燭台の第二実施形態の中心軸断面図である。第二実施形態は、皿体1と、皿体1の中心に立設される芯部2と、皿体1を、芯部2を介して支持する台座6と、台座6を載せる外容器11と、を備える。皿体1は、蝋燭固定部21を挿入穴3に挿入し、蝋燭固定部21の外径と挿入穴3の内径が一致する箇所において嵌め合い固定される。また、蝋燭固定部21の下端から下方へ延出される接合部22の周囲にはネジ山が切られ、円柱形状の台座6に直接ねじ込まれている。ここで、挿入穴3の直径は蝋燭Aの下端に設けられる蝋燭穴a1の開口部の直径と略同一に形成されており、蝋燭Aの蝋燭穴a1に蝋燭固定部21を挿入すると、皿体1の位置と蝋燭Aの下端の位置が一致する。この際、堤部4を充分に薄く形成すると、図4(a)に示すように、蝋燭Aの蝋燭穴a1内に堤部4が収まり、蝋燭Aの下端が皿体1の底面部5と接する(図面においては、便宜上堤部4がある程度の厚みを有している)。一方、堤部4を肉厚に形成すると、図4(b)に示すように、蝋燭Aの下端が皿体1の堤部4と接する。何れにせよ、蝋燭Aの下端が皿体1により支持され、蝋燭Aをより安定に立設させることができる。そして、このように構成した場合でも、第一実施形態と同様、熱伝導率の低いセラミックスからなる台座6により皿体1を支持しているため、蝋燭の熱が皿体1から外容器11へ伝導しにくく、外容器11に触れても火傷をすることがない。また、底面部5の厚さが薄いので、皿体1が温まりやすいため、蝋が燃え切りやすく、使用後はすぐに冷却される。さらに、堤部4により溶けた蝋がせき止められ、挿入穴3から溶けた蝋が漏れることがない。
【0017】
図5は、本発明の燭台の第三実施形態の中心軸断面図である。第三実施形態も、第一実施形態と同様、皿体1と、皿体1の中心に立設される芯部2と、皿体1を支持する台座6と、台座6を載せる外容器11と、を備える。皿体1および芯部2の形状は、第一実施形態と同様であるが、芯部2は皿体1のみと結合されており、皿体1が環状の台座6の上に載置される。そして、外容器11が段部12を有しており、台座6が段部12に係止される。このように構成した場合でも、第一・第二実施形態と同様、熱伝導率の低いセラミックスからなる台座6により皿体1を支持しているため、蝋燭の熱が皿体1から外容器11へ伝導しにくく、外容器11に触れても火傷をすることがない。また、底面部5の厚さが薄いので、皿体1が温まりやすいため、蝋が燃え切りやすく、使用後はすぐに冷却される。さらに、堤部4により溶けた蝋がせき止められ、挿入穴3から溶けた蝋が漏れることがない。
【0018】
図6は、本発明の燭台の第四実施形態の中心軸断面図である。第四実施形態も、第一実施形態と同様、皿体1と、皿体1の中心に立設される芯部2と、皿体1を支持する台座6と、台座6を載せる外容器11と、を備える。本実施形態では、皿体1の挿入穴3が貫通しておらず、その内周にネジ山が切られている。そして芯部2の接合部22にも対応するネジ山が切られており、ねじ込まれることで、皿体1と芯部2とが直接結合している。台座6は皿状であり、さらに外容器11も皿状で、全体の高さが低く構成されている。このように構成することで、堤部4により溶けた蝋がせき止められ、蝋が芯部2と挿入穴3の隙間に流れ込み、芯部2と皿体1が固着することを防ぐ。また、熱伝導率の低いセラミックスからなる台座6により皿体1を支持しているため、蝋燭の熱が皿体1から外容器11へ伝導しにくい点や、底面部5の厚さが薄いので、皿体1が温まりやすいため、蝋が燃え切りやすく、使用後はすぐに冷却される点は、第一・第二・第三実施形態と同様である。
【0019】
本発明の燭台は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、皿体の平面形状は、要件を満たすものであれば、円形、楕円形、多角形や、葉っぱや花びらの形を模したものなど、意匠性も考慮して自由に選択できる。芯部や台座の形状についても同様である。また、皿体と芯部の結合方法は、螺合や嵌合など、使用中に外れることのない方法であれば、どのようなものでもよい。さらに、使用時に外容器は必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の燭台の第一実施形態の中心軸断面図。
【図2】第一実施形態の斜視図。
【図3】第一実施形態の使用状態を示す説明図。
【図4】第二実施形態の中心軸断面図。
【図5】第三実施形態の中心軸断面図。
【図6】第四実施形態の中心軸断面図。
【図7】従来の燭台の使用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 皿体
2 芯部
3 挿入穴
4 堤部
5 底面部
6 台座
21 蝋燭固定部
A 蝋燭
a1 蝋燭穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿体(1)と、該皿体(1)から略垂直上向きに立設される芯部(2)と、前記皿体(1)を支持する台座(6)と、を備え、前記皿体(1)が、金属からなり、前記台座(6)が、前記皿体(1)を構成する金属よりも熱伝導率が低いセラミックスからなることを特徴とする燭台。
【請求項2】
前記皿体(1)の底面部(5)の厚さが、0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする請求項1記載の燭台。
【請求項3】
前記芯部(2)が、前記皿体(1)に形成される挿入穴(3)に挿入され、該挿入穴(3)の周囲には、略垂直上向きに堤部(4)が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の燭台。
【請求項4】
前記芯部(2)が、上向きに先鋭形状の蝋燭固定部(21)を有し、前記挿入穴(3)の直径が、前記蝋燭固定部(21)に固定する蝋燭(A)の下端に設けられる蝋燭穴(a1)の開口部の直径と略同一でありかつ前記蝋燭固定部(21)の下端の直径よりも小さく、前記蝋燭固定部(21)が、その先端から前記挿入穴(3)に挿入されることを特徴とする請求項3記載の燭台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212001(P2009−212001A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55317(P2008−55317)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(595014907)株式会社本保 (2)
【出願人】(502318216)株式会社能作 (9)
【Fターム(参考)】