片側開放型多重円筒磁気回路
【課題】NMRセンサーに必須のコイルを収納するためのスペースを十分に確保し、感度領域の均一性と広がり、磁場強度、探査深度を改善した片側開放型磁気回路を提供する。
【解決手段】片側開放型多重円筒磁気回路は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石2、3を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石2の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイル4を円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
【解決手段】片側開放型多重円筒磁気回路は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石2、3を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石2の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイル4を円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴に用いる片側開放型多重円筒磁気回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMRと略記)とは、磁石とコイルを用いて原子核の状態を測定する方法である。例えばコンクリート欠陥の評価においては、コンクリート中の空洞や亀裂中の水分子中の1H核(水素原子の原子核、プロトン)を測定する。このように、NMRは水分子を非破壊で直接的に計測できることを最大の特徴としており、弾性波や電気伝導度を用いた他の物理探査技術に比べて水の定量能力で抜きん出ている。
【0003】
片側開放型磁気回路は、特許文献1、2にも示されているように、コイルとともに、プロトンNMR表面スキャナーの心臓部分であるセンサーユニットを構成する。適切に構成された磁気回路は磁石表面から数cm離れた空間に、磁束密度が均一な領域を発生する。この領域を感度領域という。
プロトンNMR表面スキャナーは、大きな試料表面(例えば、岩盤や農産物等)をスキャンして、表面から数cm内部を屋外でしかも非破壊でリアルタイムにNMR分析できることを特徴とする。なお「NMR分析」とは、水素原子を含む物質の緩和や拡散過程を計測することであり、その生データを解析することによって、例えば、水や油の量、水素を含む流体の拡散係数、流体分子の運動特性を評価できる。
【0004】
また片側開放型磁気回路は、土木建設業における、水を含むコンクリートの養生過程や地盤・岩盤中の欠陥(亀裂など)の非破壊点検作業にも使える。
図16は、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで内部欠陥を測定する説明図である。
図16では、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナー101でコンクリート壁内部に隠れている、水で満たされた欠陥(空洞)102をスキャンして、水分子中の水素原子核の歳差運動を計測している。
また、農林水産業における、獣肉及び魚肉の肉質の非侵襲評価、例えば、図17に示すように、生牛内部を、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナー101でスキャンして牛肉の霜降り判定をしたり、マグロのトロの霜降り判定にも使える。
【0005】
図17は、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで肉質を測定する説明図である。
あるいは、石油井戸に装置をおろして、孔壁を核磁気共鳴(NMR)でスキャンして、深度ごとの地層の含油量を推定することにも使える(非特許文献1参照)。
【0006】
図18は、円筒磁石を用いた片側開放型磁気回路の基本構成図である。
図18に示すような従来の片側開放型磁気回路は、円筒軸方向にNSと着磁した円筒磁石103を用い、NMRセンサーの感度領域(磁束密度が均一な領域)のサイズが小さく、また磁束密度も弱い。そのため、水や脂肪に対する感度が悪く実用化において問題がある。その問題を解決する磁気回路構成(特許文献2参照)も図19に示されるように提案されてはいる。
【0007】
図19は、片側開放型磁気回路の円筒磁石に円筒軸方向に着磁した円柱磁石を追加した基本構成図である。図19は、図18の円筒磁石103の内部に円柱磁石104を配置した構成の片側開放型磁気回路である。
しかし、NMRセンサーに必須のコイル(特許文献1、3参照)を収納するためのスペースが不十分であり、また、導体である永久磁石の円筒磁石103と導体であるコイル(図示省略)の距離が接近しているためにコイルに流れる一次電流が原因でレンツの法則によって磁石に二次的に誘導される渦電流などの悪影響で十分な電力パワーをコイルから発振できない、という欠点があった(図5参照)。
【0008】
図20は、図19の片側開放型磁気回路の問題点を説明する断面図である。図20では、円筒磁石103の一端側の軸中心方向の内部に比較的薄い円柱磁石104を配置している。図中の円筒磁石103内の円柱磁石104下部の空間105は、コイル(図示省略)を配置する予定の領域であるが、電気伝導度の高い異物、即ち、円柱磁石104が配置されているので、磁石とコイル(図示省略)との距離が近すぎ、コイルに流れる一次電流が発生する高周波磁場が磁石に侵入することで二次的に磁石表面に発生するところの渦電流が一次電流のパワーを弱めてしまい結果的に核スピンを励起させるだけのエネルギーを十分得られずNMRシグナルが弱くなる。
【0009】
これらの従来例の問題点を解決するために、発明者らは、既に、図21および図22に示すように、円筒磁石103の内周に沿って、円筒軸に垂直な方向に磁化された角柱磁石106aおよび角柱磁石106bを複数個対称に配列することで、NMRセンサーに必須のコイル(図示省略)を収納するためのスペースを十分に作り、また渦電流などの悪影響がない片側開放型磁気回路を開発している(特許文献4参照)。
図21は、円筒磁石内に、軸中心部に空間を形成するように、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を1対追加配置した先行文献4の片側開放型磁気回路の構成図である。図21、22は、特許文献4の片側開放型磁気回路において、円筒磁石103内に、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石106a、106bを追加配置して構成される。
【0010】
図22は、図21の片側開放型磁気回路の効果を説明する説明図である。
図21の片側開放型磁気回路は、一対の角形磁石106a、106bの軸中心側空間107に磁石等の電気伝導度の高いものが存在しないので、この軸中心側空間107にコイル(図示省略)を配置しても図20の場合のような問題が発生しない。
しかし、この先行例では、円筒軸方向(z軸)に沿って、磁束密度のz成分(Bz)が、完全には円筒磁石の中心軸対称に成らないという問題が残った。
【特許文献1】特開平4−24588号公報
【特許文献2】米国特許第6489872号明細書
【特許文献3】米国特許第4590427号明細書
【特許文献4】特願2007−114796号
【非特許文献1】Dunn K.−J., Bergman D.J. and Latorraca G.A. 2002. Nuclear Magnetic Resonance Petrophysical and Logging Applications. Pergamon, New York.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、NMRセンサーに必須のコイルを収納するためのスペースを十分に確保し、感度領域の均一性と広がり、磁場強度、探査深度を改善した片側開放型磁気回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
具体的には、
片側開放型多重円筒磁気回路は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置する。
前記複数の円筒磁石を、前記主円筒磁石となる外側の第1円筒磁石と、内側の第2円筒磁石とする。
前記第1円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端近傍を接触するように配置する。
前記複数の円筒磁石を、外側の第1円筒磁石と、前記主円筒磁石となる内側の第2円筒磁石と、その第2円筒磁石のさらに内側の第3円筒磁石とする。
前記第1円筒磁石および前記第3円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端を微少間隔離間して配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。これにより、従来例と比べ、探査深度を延ばすことができ、また、発生磁束が均一な領域の広がりを大きくすることができる。
磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
本発明の片側開放型多重円筒磁気回路は、NMRセンサーに必須のコイルを収納するためのスペースを十分確保することができ、また渦電流などの悪影響がなく、完全に円筒磁石の中心軸対称な感度領域を生み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
以下、本発明の片側開放型多重円筒磁気回路を二重円筒磁気回路又は三重円筒磁気回路に構成する例について説明する。
(実施例1)
【0015】
図1は、本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の縦断面図である。図2は、本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の横断面図である。
図8(1)に示すように、片側開放型二重円筒磁気回路1は、外側の第1円筒磁石2と、この第1円筒磁石2内に一部が挿入配置される内側の第2円筒磁石3と、第1円筒磁石2内であって且つ第2円筒磁石3をZ軸方向に延長したときの内部空間内に配置される検出コイル4とからなる。第1円筒磁石2は主円筒磁石となる。第2円筒磁石3は、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石として構成する。
図8(1)において、第1円筒磁石の長さ方向をz軸方向とする。
第1円筒磁石2と第2円筒磁石3は、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3は第1円筒磁石の先端近傍にその先端近傍が接するように挿入配置される。
【0016】
検出コイルは、第2円筒磁石3の内側に収まる外径を有し、第1および第2円筒磁石2、3の軸中心に中心を会わせるように且つ第1および第2円筒磁石2、3が形成する内部空間内、即ち、第1円筒磁石2の内部空間内であった且つ第2円筒磁石3をz軸方向に延長したときの内部空間内にz軸と直交するように配置する。
端点5は、片側開放型二重円筒磁気回路1のz軸方向の端面の軸中心を意味する。端点5を含む端面のz軸方向上方(図1紙面において上方:第2円筒磁石3の磁化の方向と反対向き)が測定領域になる。
【0017】
図1の片側開放型二重円筒磁気回路1において、一番外側の第1円筒磁石2は、z軸方向の長さがe1、径方向の幅がa1、軸中心上の端点5からのz軸方向の離間距離はf、内径は2×(a2+a3)となっている。内側の第2円筒磁石3は、z軸方向の長さがe2、径方向の幅がa2、内径は2×a3となっている。この内径2×a3のゆったりしたスペースにコイル4を収納する。
【0018】
上記各部寸法a1:a2:a3:e1:e2:fの比率は、3.6:1.4:3.0:6.2:1.85:1.5となる。片側開放型二重円筒磁気回路1の実寸は、この比率を守る限りにおいて任意の値を採り得る。
主円筒磁石となる第1円筒磁石2と第2円筒磁石3は、z軸方向の長さの比が6.2:1.85で、径方向の幅の比が3.6:1.4となり、磁力の強さの比が1.42T:1.11Tとなる。
【0019】
図5に、図8(1)の磁気回路の磁路を略記した説明図を示す。図5では、軸中心から左半分の例を示し、右半分は省略する。
第2円筒磁石3の磁路は概略図示のようになる。第1円筒磁石2の中心のz軸寄りの磁路は、概略図示のように、N極端面からの立ち上がり部分が第2円筒磁石3の磁束に偏倚されて略垂直寄りに立ち上がり、続く部分が第2円筒磁石3の磁束に偏倚されて中心のz軸寄りを透り、続いて検出コイルと鎖交し、その後最短経路でS極端面に入るように形成される。
【0020】
このように、第2円筒磁石3は第1円筒磁石の先端近傍にその先端近傍が接するように挿入配置されるので、第1円筒磁石2の中心のz軸寄りの磁路は、端点5に近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
【0021】
図7に、図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図を示す。
図7の上記z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz(T:テスラ))の分布特性のサンプリングデータ値を下記表1に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表1】
【0022】
図7において、z=0cmの点は図8(1)の磁気回路の端点5であり、z>0に感度領域が現れる。z>0領域は図8(1)の端点5より上方(円筒磁石の軸方向であって且つ円筒磁石から離れる方向)の領域を意味する。0>z領域はその逆を意味する。
また、図7中、*印は磁化方向が図8(1)の円筒磁石の軸方向、即ちz軸に沿って正(図8(1)の端点5から上方向きの方向:図8(1)の第1円筒磁石2の矢印の方向)のときの第1円筒磁石2によるBzのデータであり、×印は磁化方向がz軸に沿って負(図8(1)の端点5から下方向きの方向:図8(1)の第2円筒磁石3の矢印の方向)のときの第2円筒磁石3によるBzのデータである。+印はこれら第1および第2円筒磁石2、3の特性を重ね合わせたときのBzのデータである。
【0023】
図8は、図7からz>0の部分だけを抜き出したBz特性を示す。これらの図から円筒磁石を合成すれば、Bz特性の増減がうまくキャンセルされてほぼ平坦な(空間微分がほぼゼロの)Bz値、すなわち均一度の高い磁場空間(感度領域)を形成できる。もう少し詳しく説明すると、体積の大きい外側の円筒磁石が発生する主磁場に対して、極性が逆向きの補助磁場を発生する内側の小さな磁石を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることができる。
【0024】
図9は、この二重円筒磁石による感度領域の中心(探査深度)におけるx軸又はy軸方向のBz特性である。x軸又はy軸方向においてもBzの増減がうまくキャンセルされる。ここでも、体積の大きい外側の円筒磁石が発生する主磁場に対して、極性が逆向きの補助磁場を発生する内側の小さな磁石を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることに成功している。
【0025】
図9の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表2に示す。なお、「y or x」(y又はx)はm(メータ)表記となっている。
【表2】
【0026】
(実施例2)
図3は、本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の縦断面図である。図4は、本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の横断面図である。
図3に示すように、片側開放型三重円筒磁気回路1aは、外側の第1円筒磁石2aと、この第1円筒磁石2aより半径方向で内側に配置される第2円筒磁石3aと、この第2円筒磁石3aより半径方向で内側に配置される第3円筒磁石6と、第2円筒磁石3a内であって且つ第3円筒磁石6をZ軸方向に延長したときの内部空間内に配置されるコイル4とからなる。第2円筒磁石3aは主円筒磁石となる。第1円筒磁石2aおよび第3円筒磁石6は、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石として構成する。
【0027】
図3において、第2円筒磁石3aの長さ方向をz軸方向とする。
第1円筒磁石2aと第2円筒磁石3aは、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3aは第1円筒磁石2aの先端近傍にその先端近傍が微少間隙を有するように離間して配置される。第1円筒磁石2aの内径と第2円筒磁石3aの外径は、互いに嵌合可能になるように、同じ径とする。
第2円筒磁石3aと第3円筒磁石6は、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3aは第3円筒磁石6の先端近傍にその先端近傍が微少間隙を有するように離間して配置される。第2円筒磁石3aの内径と第3円筒磁石6の外径は、互いに嵌合可能になるように、同じ径とする。
【0028】
検出コイルは、第3円筒磁石6の内側に収まる外径を有し、第1、第2および第3円筒磁石2a、3aおよび6の軸中心に中心を会わせるように且つ第2および第3円筒磁石3a、6が形成する内部空間内、即ち、第2円筒磁石3aの内部空間内であった且つ第3円筒磁石6をz軸方向に延長したときの内部空間内にz軸と直交するように配置する。
端点5aは、片側開放型三重円筒磁気回路1aのz軸方向の端面の軸中心を意味する。端点5aを含む端面のz軸方向上方(図3紙面において上方:第3円筒磁石6の磁化の方向と反対向き)が測定領域になる。
【0029】
図3の片側開放型三重円筒磁気回路1aにおいて、一番外側の第1円筒磁石2aは、z軸方向の長さがea1、径方向の幅がaa1、内径は2×(aa2+aa3+aa4)となっている。中央の第2円筒磁石3aは、z軸方向の長さがea2、径方向の幅がaa2、軸中心上の端点5aからのz軸方向の離間距離はfa、内径は2×(aa3+aa4)となっている。さらにその内側の第3円筒磁石6は、z軸方向の長さがea3、径方向の幅がaa3、内径は2×aa4となっている。この内径2×aa4のゆったりしたスペースに検出コイル4を収納する。
【0030】
上記各部寸法aa1:aa2:aa3:aa4:ea1:ea2:ea3:faの比率は、1.35:3.65:1.55:3.05:1.55:5.70:1.55:1.70となる。片側開放型三重円筒磁気回路1aの実寸は、この比率を守る限りにおいて任意の値を採り得る。
主円筒磁石となる第2円筒磁石3aと第3円筒磁石6は、z軸方向の長さの比が5.70:1.55で、径方向の幅の比が3.65:1.55となり、磁力の強さの比が1.11T :1.42Tとなる。
【0031】
図6に、図10(3)の磁気回路の磁路を略記した説明図を示す。図6では、軸中心から左半分の例を示し、右半分は省略する。
第3円筒磁石6の磁路は概略図示のようになる。第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、概略図示のように、N極端面からの立ち上がり部分が第3円筒磁石6の磁束に偏倚されて略垂直寄りに立ち上がり、続く部分が第3円筒磁石6の磁束に偏倚されて中心のz軸寄りを透り、続いて検出コイル4と鎖交し、その後最短経路でS極端面に入るように形成される。
このように、第3円筒磁石6は第2円筒磁石3aの先端近傍にその先端近傍が微少間隔離間するように配置されるので、第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、端点5に近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
【0032】
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
このように、第3円筒磁石6は第2円筒磁石3aの先端近傍にその先端近傍が所定間隔離間するように配置されるので、第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、端点5aに近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
【0033】
図10は、三重円筒磁石(図3、4)によるz軸方向の磁力線(Bz)の特性図を示す。z=0cmで磁気回路の端点5aとなり、z>0に感度領域が現れる。*印と□印は、磁化方向がz軸に沿って負の、寸法が違う2種類の円筒磁石によるBzのデータである。×印は、磁化方向がz軸に沿って正である円筒磁石によるBzのデータである。図3、4で示される、第1円筒磁石2aから*印がプロットされ、第3円筒磁石6から□印がプロットされる。第2円筒磁石3aからは×印がプロットされる。)図11は、図10からz>0の部分だけをクローズアップしたBzの特性図を示す。+印は、寸法が違う3種類の円筒磁石を合成した三重円筒磁気回路によるBzのデータである。
【0034】
この場合も二重円筒磁気回路の場合と同じように、Bzの増減がうまくキャンセルされて感度領域が形成される。図12は、この三重円筒磁石による探査深度におけるx又はy軸方向のBzの特性図であり、x又はy軸方向においてもBzの増減がうまくキャンセルされる。もう少し詳しく説明すると、体積の大きい中央の円筒磁石3a(×印)が発生する主磁場に対して、極性が逆方向の補助磁場を発生する最内側と最外側の小さな2つの円筒磁石2aおよび6(*印と□印)を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることができる。
【0035】
図10の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表3に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表3】
【0036】
上述の基本構成の実証には、(株)アドバンスト・サイエンス・ラボラトリーの有限要素法による3次元静磁場シミュレーション用ソフトAMaze(Magnum)を使用した。プロファイルのプロットにはgnuplot(ニュープロットは、2次元もしくは3次元のグラフを作成するためのコマンドラインアプリケーションソフトウェアである。)を使用した。片側開放型多重円筒磁気回路が図19や図21のものと遜色のない磁場均一度空間を作ることができることを以下説明する。
二重円筒磁気回路については、円筒軸方向に磁化された二つの円筒磁石を用いて、寸法や互いの位置関係を記載した磁気回路の具体的な構成の一例を、図1、2に示した。
【0037】
また、三重円筒磁気回路については、図3、図4に示した。
これらの構成は、円筒軸(z軸)対称な磁石ユニットである。円筒磁石の残留磁束密度は、1.11Tと1.42Tのネオジム磁石を使い分け、磁石以外の空間は真空の物性(透磁率等について)を与えた。
【0038】
比較のため、本発明に係る図1〜4の片側開放型多重円筒磁気回路に加えて、特許文献4のケースも参照する。
図23および図24から円柱磁石を除去すると特許文献4のケースとなり、角柱磁石を除去すると特許文献3のケースとなる。特許文献4のケースでの磁石のパラメータは、r1=15.5cm、t1=4cm、a1=20cm、r2=7cm、t2=7cm、a2=5cm、b2=5.4cm、c2(角柱磁石の1辺:c2=2*r2*Tan(π/n)で与えられる。nを指定すれば、c2も決まる。(図22参照))=4.5cm、n=10(角柱磁石の数)で与えられる。
【0039】
特許文献3のケースでの磁石パラメータは、r1=15.5cm、t1=4cm、a1=20cm、t3=20cm、a3=5cm、b3=7.5cmである。双方ともネオジム磁石の残留磁束密度は1.42Tである。
本発明の二重円筒磁石のケース(図1、2)においては、a1=8cm、a2=3cm、a3=7cm、e1=14cm、e2=4cm、f=3.6cm、であり、第1円筒磁石2の残留磁束密度は1.42Tで、第2円筒磁石3の残留磁束密度は1.11Tである。
【0040】
本発明の三重円筒磁石のケース(図3、4)においては、a1=3cm、a2=8cm、a3=3cm、a4=7cm、e1=3cm、e2=12.5cm、e3=3cm、f=3.2cm、であり、第1円筒磁石2aと第3円筒磁石6の残留磁束密度は1.11Tで、第2円筒磁石3aの残留磁束密度は1.42Tである。
総重量については、鉄の密度(7.5g/cm3)を用いると、特許文献4の磁石と特許文献3の磁石は77.9kg、本発明の二重円筒磁石は78.7kg、本発明の三重円筒磁石は77.8kgとなり、±0.6%程度に収まる。
図12の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表4に示す。なお、横軸「y or x」(y又はx)はm(メータ)表記となっている。
【0041】
【表4】
【0042】
図13に、z軸上(つまりx=y=0)における磁束密度(B)のz成分(すなわちBz)のラインプロファイル(1次元分布)を、4種類の磁気回路について図示した。
本発明の二重円筒磁石は+印、本発明の三重円筒磁石は×印、特許文献4の例は*印、特許文献3の例(中心磁石あり)は□印で示す。以下の説明に於いても各印の表示は同様とする。
NMRセンサーの感度領域(sweet spot)をBzの揺らぎが±1%以内の空間として定義し、その領域を楕円で図示した。z軸方向への感度領域の幅は4〜5.6cm、探査深度は5〜8cm、強度は50mT以上である。
本発明の三重円筒磁石では、Bzのプロファイルは台形をなし、その上辺が感度領域を形成する。
【0043】
図13の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表5に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表5】
【0044】
図14および図15は、感度領域付近のBzの直交3方向(x、y、z方向)の1次元分布(ラインプロファイル)で、NMRセンサーの感度領域(sweet spot)のサイズを矢印で図示した(横軸は感度領域の中心からの変位)。Bz値を感度領域の中心(探査深度の位置)における値で規格化し、縦軸の0.99〜1.01の範囲が感度領域の広がりを示す。図14および図15中の横軸の「Variety from center of sweet spot at z axis」は下記表6および表7で「z」として示す。
図14の上記Normalized(規格化された)Bz(無次元)特性のサンプリングデータ値を下記表6に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表6】
図15の上記Normalized(規格化された)Bz(無次元)特性のサンプリングデータ値を下記表7に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表7】
【0045】
感度領域について、図13の*印と□印を見ると、探査深度は約6.4cmとなり、z軸方向に約5.6cmの幅(図14参照)をもち、図15が示しているようにx又はy方向には約8cmの広がりを見せている。これらは、公知特許を基にした計算結果である。
本発明の二重円筒磁気回路は、特許文献4の場合よりも探査深度が1.6cm程度深いが、感度領域の大きさは、z軸方向に1.6cm程度、x軸方向に3cm程度縮小する(図13〜22(15)参照)。
【0046】
本発明の三重円筒磁気回路では、探査深度は約5.2cmとなり、感度領域は、z軸方向で本発明の二重円筒磁気回路の場合と同じ幅(約4cm)となり、x軸方向で10cm以上の広がりを見せた(図13〜15参照)。この広がりは他のケースよりも特に優れた点である。
これらの円筒磁石回路における内部の空洞のサイズ(コイルを収納するためのスペースのサイズ)は半径7cmの円柱形であり、比較のため、全ての場合において同じ数値で磁場シミュレーションを行っている。
【0047】
本発明では、ほぼ同じ磁石総重量(±0.6%)という拘束条件の下で、本発明の二重円筒磁気回路は探査深度(約8cm)が公知の磁気回路よりも深くなったという意味で、公知の磁気回路よりも優れた性能を発揮できることがわかった。また同様に、本発明の三重円筒磁気回路は均一性の広がり(x方向の広がりが約10.6cm)が公知の磁気回路よりも大きくなったという意味で、公知の磁気回路よりも優れた性能を発揮できることがわかった。
【0048】
以上、本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置する構成としたので、従来例と比べ、探査深度を延ばすことができ、また、発生磁束が均一な領域の広がりを大きくすることができる。
また、磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
なお、上記実施例においては、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石を、1個又は2個とした例を説明したが、機能として、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように機能させることができる限りにおいて、前記補助円筒磁石を3個以上とすることができる。
また、各磁石、例えば第1〜第3円筒磁石を複数の磁石を磁気的に連結(N極とS極の磁気吸引力による)して構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る片側開放型磁気回路は、サンプルが大きくて固い、あるいは貴重であるがために破壊検査が困難なケースに適用できる。これを例示すると次のとおりである。
(1)油田のボーリング孔に入れて、孔壁をNMRでスキャンして、深度ごとの地層の含油量を推定する。
(2)生きた肉牛や生マグロの表面スキャンをして、価格を左右する脂肪交雑(霜降りの程度)を推定する。
(3)土木建設業における、水を含むコンクリートの養生過程の監視や地盤・岩盤中の欠陥(水を含む亀裂など)の非破壊点検作業にも使える。
(4)天然記念物や文化財の検査にも使える。例えば樹齢千年の桜の表面をスキャンしてプロトン緩和時間の大小で健康状態を診断する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の縦断面図である。
【図2】本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の横断面図である。
【図3】本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の縦断面図である。
【図4】本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の横断面図である。
【図5】図1の実施例1における透過磁束路の説明図である。
【図6】図2の実施例2における透過磁束路の説明図である。
【図7】図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図である。z=0cmは磁気回路の端点。
【図8】図7の要部詳細図であり、図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図9】図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z=8cm(探査深度の中心)におけるx又はy方向のBzの分布特性図である。
【図10】図3、図4の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図である。z=0cm は磁気回路の端点。
【図11】図10の要部詳細図であり、図3、図4の片側開放型三重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図12】図3、図4の片側開放型三重円筒磁気回路が作り出す、z=5.2cm(探査深度の中心)におけるx又はy方向のBzの分布特性図である。
【図13】本発明に係る片側開放型磁気回路がつくり出す静磁場の計算機シミュレーション結果で、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図14】本発明に係る片側開放型磁気回路のNMRセンサーとしての感度領域付近の磁場成分(Bz)のz方向の1次元分布特性図である。
【図15】本発明に係る片側開放型磁気回路のNMRセンサーとしての感度領域付近の磁場成分(Bz)のx、y方向の1次元分布特性図である。
【図16】片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで内部欠陥を測定する説明図である。
【図17】片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで肉質を測定する説明図である。
【図18】円筒磁石を用いた片側開放型磁気回路の基本構成図である。円筒軸方向にNSと着磁した円筒磁石を用いる。
【図19】片側開放型磁気回路の円筒磁石に円筒軸方向に着磁した円柱磁石を追加した基本構成図である。図19は、図18の円筒磁石の内部に円柱磁石を配置した構成の片側開放型磁気回路である。
【図20】図19の片側開放型磁気回路の問題点を説明する断面図である。図20では、円筒磁石の一端側の内部に比較的薄い円柱磁石を配置してある。図中の円筒磁石内の円柱磁石下部の空間は、コイルを配置する予定の領域であるが、電気伝導度の高い異物、即ち、円柱磁石が配置されているので、発生磁路が歪む問題が発生する。
【図21】円筒磁石内に、軸中心部に空間を形成するように、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を追加配置した先行文献4の片側開放型磁気回路の構成図である。図21は、先行文献の片側開放型磁気回路で、円筒磁石内に、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を追加配置して構成される。
【図22】図21の片側開放型磁気回路の効果を説明する説明図である。
【図23】先行文献4に係る片側開放型磁気回路の縦断面図である。
【図24】先行文献4に係る片側開放型磁気回路の横断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 片側開放型二重円筒磁気回路
1a 片側開放型三重円筒磁気回路
2、2a 第1円筒磁石
3、3a 第2円筒磁石
4 検出コイル
5 端点
6 第3円筒磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴に用いる片側開放型多重円筒磁気回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMRと略記)とは、磁石とコイルを用いて原子核の状態を測定する方法である。例えばコンクリート欠陥の評価においては、コンクリート中の空洞や亀裂中の水分子中の1H核(水素原子の原子核、プロトン)を測定する。このように、NMRは水分子を非破壊で直接的に計測できることを最大の特徴としており、弾性波や電気伝導度を用いた他の物理探査技術に比べて水の定量能力で抜きん出ている。
【0003】
片側開放型磁気回路は、特許文献1、2にも示されているように、コイルとともに、プロトンNMR表面スキャナーの心臓部分であるセンサーユニットを構成する。適切に構成された磁気回路は磁石表面から数cm離れた空間に、磁束密度が均一な領域を発生する。この領域を感度領域という。
プロトンNMR表面スキャナーは、大きな試料表面(例えば、岩盤や農産物等)をスキャンして、表面から数cm内部を屋外でしかも非破壊でリアルタイムにNMR分析できることを特徴とする。なお「NMR分析」とは、水素原子を含む物質の緩和や拡散過程を計測することであり、その生データを解析することによって、例えば、水や油の量、水素を含む流体の拡散係数、流体分子の運動特性を評価できる。
【0004】
また片側開放型磁気回路は、土木建設業における、水を含むコンクリートの養生過程や地盤・岩盤中の欠陥(亀裂など)の非破壊点検作業にも使える。
図16は、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで内部欠陥を測定する説明図である。
図16では、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナー101でコンクリート壁内部に隠れている、水で満たされた欠陥(空洞)102をスキャンして、水分子中の水素原子核の歳差運動を計測している。
また、農林水産業における、獣肉及び魚肉の肉質の非侵襲評価、例えば、図17に示すように、生牛内部を、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナー101でスキャンして牛肉の霜降り判定をしたり、マグロのトロの霜降り判定にも使える。
【0005】
図17は、片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで肉質を測定する説明図である。
あるいは、石油井戸に装置をおろして、孔壁を核磁気共鳴(NMR)でスキャンして、深度ごとの地層の含油量を推定することにも使える(非特許文献1参照)。
【0006】
図18は、円筒磁石を用いた片側開放型磁気回路の基本構成図である。
図18に示すような従来の片側開放型磁気回路は、円筒軸方向にNSと着磁した円筒磁石103を用い、NMRセンサーの感度領域(磁束密度が均一な領域)のサイズが小さく、また磁束密度も弱い。そのため、水や脂肪に対する感度が悪く実用化において問題がある。その問題を解決する磁気回路構成(特許文献2参照)も図19に示されるように提案されてはいる。
【0007】
図19は、片側開放型磁気回路の円筒磁石に円筒軸方向に着磁した円柱磁石を追加した基本構成図である。図19は、図18の円筒磁石103の内部に円柱磁石104を配置した構成の片側開放型磁気回路である。
しかし、NMRセンサーに必須のコイル(特許文献1、3参照)を収納するためのスペースが不十分であり、また、導体である永久磁石の円筒磁石103と導体であるコイル(図示省略)の距離が接近しているためにコイルに流れる一次電流が原因でレンツの法則によって磁石に二次的に誘導される渦電流などの悪影響で十分な電力パワーをコイルから発振できない、という欠点があった(図5参照)。
【0008】
図20は、図19の片側開放型磁気回路の問題点を説明する断面図である。図20では、円筒磁石103の一端側の軸中心方向の内部に比較的薄い円柱磁石104を配置している。図中の円筒磁石103内の円柱磁石104下部の空間105は、コイル(図示省略)を配置する予定の領域であるが、電気伝導度の高い異物、即ち、円柱磁石104が配置されているので、磁石とコイル(図示省略)との距離が近すぎ、コイルに流れる一次電流が発生する高周波磁場が磁石に侵入することで二次的に磁石表面に発生するところの渦電流が一次電流のパワーを弱めてしまい結果的に核スピンを励起させるだけのエネルギーを十分得られずNMRシグナルが弱くなる。
【0009】
これらの従来例の問題点を解決するために、発明者らは、既に、図21および図22に示すように、円筒磁石103の内周に沿って、円筒軸に垂直な方向に磁化された角柱磁石106aおよび角柱磁石106bを複数個対称に配列することで、NMRセンサーに必須のコイル(図示省略)を収納するためのスペースを十分に作り、また渦電流などの悪影響がない片側開放型磁気回路を開発している(特許文献4参照)。
図21は、円筒磁石内に、軸中心部に空間を形成するように、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を1対追加配置した先行文献4の片側開放型磁気回路の構成図である。図21、22は、特許文献4の片側開放型磁気回路において、円筒磁石103内に、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石106a、106bを追加配置して構成される。
【0010】
図22は、図21の片側開放型磁気回路の効果を説明する説明図である。
図21の片側開放型磁気回路は、一対の角形磁石106a、106bの軸中心側空間107に磁石等の電気伝導度の高いものが存在しないので、この軸中心側空間107にコイル(図示省略)を配置しても図20の場合のような問題が発生しない。
しかし、この先行例では、円筒軸方向(z軸)に沿って、磁束密度のz成分(Bz)が、完全には円筒磁石の中心軸対称に成らないという問題が残った。
【特許文献1】特開平4−24588号公報
【特許文献2】米国特許第6489872号明細書
【特許文献3】米国特許第4590427号明細書
【特許文献4】特願2007−114796号
【非特許文献1】Dunn K.−J., Bergman D.J. and Latorraca G.A. 2002. Nuclear Magnetic Resonance Petrophysical and Logging Applications. Pergamon, New York.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、NMRセンサーに必須のコイルを収納するためのスペースを十分に確保し、感度領域の均一性と広がり、磁場強度、探査深度を改善した片側開放型磁気回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
具体的には、
片側開放型多重円筒磁気回路は、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置する。
前記複数の円筒磁石を、前記主円筒磁石となる外側の第1円筒磁石と、内側の第2円筒磁石とする。
前記第1円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端近傍を接触するように配置する。
前記複数の円筒磁石を、外側の第1円筒磁石と、前記主円筒磁石となる内側の第2円筒磁石と、その第2円筒磁石のさらに内側の第3円筒磁石とする。
前記第1円筒磁石および前記第3円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端を微少間隔離間して配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。これにより、従来例と比べ、探査深度を延ばすことができ、また、発生磁束が均一な領域の広がりを大きくすることができる。
磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
本発明の片側開放型多重円筒磁気回路は、NMRセンサーに必須のコイルを収納するためのスペースを十分確保することができ、また渦電流などの悪影響がなく、完全に円筒磁石の中心軸対称な感度領域を生み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置した磁気回路で構成する。
磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
以下、本発明の片側開放型多重円筒磁気回路を二重円筒磁気回路又は三重円筒磁気回路に構成する例について説明する。
(実施例1)
【0015】
図1は、本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の縦断面図である。図2は、本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の横断面図である。
図8(1)に示すように、片側開放型二重円筒磁気回路1は、外側の第1円筒磁石2と、この第1円筒磁石2内に一部が挿入配置される内側の第2円筒磁石3と、第1円筒磁石2内であって且つ第2円筒磁石3をZ軸方向に延長したときの内部空間内に配置される検出コイル4とからなる。第1円筒磁石2は主円筒磁石となる。第2円筒磁石3は、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石として構成する。
図8(1)において、第1円筒磁石の長さ方向をz軸方向とする。
第1円筒磁石2と第2円筒磁石3は、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3は第1円筒磁石の先端近傍にその先端近傍が接するように挿入配置される。
【0016】
検出コイルは、第2円筒磁石3の内側に収まる外径を有し、第1および第2円筒磁石2、3の軸中心に中心を会わせるように且つ第1および第2円筒磁石2、3が形成する内部空間内、即ち、第1円筒磁石2の内部空間内であった且つ第2円筒磁石3をz軸方向に延長したときの内部空間内にz軸と直交するように配置する。
端点5は、片側開放型二重円筒磁気回路1のz軸方向の端面の軸中心を意味する。端点5を含む端面のz軸方向上方(図1紙面において上方:第2円筒磁石3の磁化の方向と反対向き)が測定領域になる。
【0017】
図1の片側開放型二重円筒磁気回路1において、一番外側の第1円筒磁石2は、z軸方向の長さがe1、径方向の幅がa1、軸中心上の端点5からのz軸方向の離間距離はf、内径は2×(a2+a3)となっている。内側の第2円筒磁石3は、z軸方向の長さがe2、径方向の幅がa2、内径は2×a3となっている。この内径2×a3のゆったりしたスペースにコイル4を収納する。
【0018】
上記各部寸法a1:a2:a3:e1:e2:fの比率は、3.6:1.4:3.0:6.2:1.85:1.5となる。片側開放型二重円筒磁気回路1の実寸は、この比率を守る限りにおいて任意の値を採り得る。
主円筒磁石となる第1円筒磁石2と第2円筒磁石3は、z軸方向の長さの比が6.2:1.85で、径方向の幅の比が3.6:1.4となり、磁力の強さの比が1.42T:1.11Tとなる。
【0019】
図5に、図8(1)の磁気回路の磁路を略記した説明図を示す。図5では、軸中心から左半分の例を示し、右半分は省略する。
第2円筒磁石3の磁路は概略図示のようになる。第1円筒磁石2の中心のz軸寄りの磁路は、概略図示のように、N極端面からの立ち上がり部分が第2円筒磁石3の磁束に偏倚されて略垂直寄りに立ち上がり、続く部分が第2円筒磁石3の磁束に偏倚されて中心のz軸寄りを透り、続いて検出コイルと鎖交し、その後最短経路でS極端面に入るように形成される。
【0020】
このように、第2円筒磁石3は第1円筒磁石の先端近傍にその先端近傍が接するように挿入配置されるので、第1円筒磁石2の中心のz軸寄りの磁路は、端点5に近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
【0021】
図7に、図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図を示す。
図7の上記z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz(T:テスラ))の分布特性のサンプリングデータ値を下記表1に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表1】
【0022】
図7において、z=0cmの点は図8(1)の磁気回路の端点5であり、z>0に感度領域が現れる。z>0領域は図8(1)の端点5より上方(円筒磁石の軸方向であって且つ円筒磁石から離れる方向)の領域を意味する。0>z領域はその逆を意味する。
また、図7中、*印は磁化方向が図8(1)の円筒磁石の軸方向、即ちz軸に沿って正(図8(1)の端点5から上方向きの方向:図8(1)の第1円筒磁石2の矢印の方向)のときの第1円筒磁石2によるBzのデータであり、×印は磁化方向がz軸に沿って負(図8(1)の端点5から下方向きの方向:図8(1)の第2円筒磁石3の矢印の方向)のときの第2円筒磁石3によるBzのデータである。+印はこれら第1および第2円筒磁石2、3の特性を重ね合わせたときのBzのデータである。
【0023】
図8は、図7からz>0の部分だけを抜き出したBz特性を示す。これらの図から円筒磁石を合成すれば、Bz特性の増減がうまくキャンセルされてほぼ平坦な(空間微分がほぼゼロの)Bz値、すなわち均一度の高い磁場空間(感度領域)を形成できる。もう少し詳しく説明すると、体積の大きい外側の円筒磁石が発生する主磁場に対して、極性が逆向きの補助磁場を発生する内側の小さな磁石を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることができる。
【0024】
図9は、この二重円筒磁石による感度領域の中心(探査深度)におけるx軸又はy軸方向のBz特性である。x軸又はy軸方向においてもBzの増減がうまくキャンセルされる。ここでも、体積の大きい外側の円筒磁石が発生する主磁場に対して、極性が逆向きの補助磁場を発生する内側の小さな磁石を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることに成功している。
【0025】
図9の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表2に示す。なお、「y or x」(y又はx)はm(メータ)表記となっている。
【表2】
【0026】
(実施例2)
図3は、本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の縦断面図である。図4は、本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の横断面図である。
図3に示すように、片側開放型三重円筒磁気回路1aは、外側の第1円筒磁石2aと、この第1円筒磁石2aより半径方向で内側に配置される第2円筒磁石3aと、この第2円筒磁石3aより半径方向で内側に配置される第3円筒磁石6と、第2円筒磁石3a内であって且つ第3円筒磁石6をZ軸方向に延長したときの内部空間内に配置されるコイル4とからなる。第2円筒磁石3aは主円筒磁石となる。第1円筒磁石2aおよび第3円筒磁石6は、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石として構成する。
【0027】
図3において、第2円筒磁石3aの長さ方向をz軸方向とする。
第1円筒磁石2aと第2円筒磁石3aは、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3aは第1円筒磁石2aの先端近傍にその先端近傍が微少間隙を有するように離間して配置される。第1円筒磁石2aの内径と第2円筒磁石3aの外径は、互いに嵌合可能になるように、同じ径とする。
第2円筒磁石3aと第3円筒磁石6は、それらのZ軸に沿って逆向きに着磁されている。第2円筒磁石3aは第3円筒磁石6の先端近傍にその先端近傍が微少間隙を有するように離間して配置される。第2円筒磁石3aの内径と第3円筒磁石6の外径は、互いに嵌合可能になるように、同じ径とする。
【0028】
検出コイルは、第3円筒磁石6の内側に収まる外径を有し、第1、第2および第3円筒磁石2a、3aおよび6の軸中心に中心を会わせるように且つ第2および第3円筒磁石3a、6が形成する内部空間内、即ち、第2円筒磁石3aの内部空間内であった且つ第3円筒磁石6をz軸方向に延長したときの内部空間内にz軸と直交するように配置する。
端点5aは、片側開放型三重円筒磁気回路1aのz軸方向の端面の軸中心を意味する。端点5aを含む端面のz軸方向上方(図3紙面において上方:第3円筒磁石6の磁化の方向と反対向き)が測定領域になる。
【0029】
図3の片側開放型三重円筒磁気回路1aにおいて、一番外側の第1円筒磁石2aは、z軸方向の長さがea1、径方向の幅がaa1、内径は2×(aa2+aa3+aa4)となっている。中央の第2円筒磁石3aは、z軸方向の長さがea2、径方向の幅がaa2、軸中心上の端点5aからのz軸方向の離間距離はfa、内径は2×(aa3+aa4)となっている。さらにその内側の第3円筒磁石6は、z軸方向の長さがea3、径方向の幅がaa3、内径は2×aa4となっている。この内径2×aa4のゆったりしたスペースに検出コイル4を収納する。
【0030】
上記各部寸法aa1:aa2:aa3:aa4:ea1:ea2:ea3:faの比率は、1.35:3.65:1.55:3.05:1.55:5.70:1.55:1.70となる。片側開放型三重円筒磁気回路1aの実寸は、この比率を守る限りにおいて任意の値を採り得る。
主円筒磁石となる第2円筒磁石3aと第3円筒磁石6は、z軸方向の長さの比が5.70:1.55で、径方向の幅の比が3.65:1.55となり、磁力の強さの比が1.11T :1.42Tとなる。
【0031】
図6に、図10(3)の磁気回路の磁路を略記した説明図を示す。図6では、軸中心から左半分の例を示し、右半分は省略する。
第3円筒磁石6の磁路は概略図示のようになる。第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、概略図示のように、N極端面からの立ち上がり部分が第3円筒磁石6の磁束に偏倚されて略垂直寄りに立ち上がり、続く部分が第3円筒磁石6の磁束に偏倚されて中心のz軸寄りを透り、続いて検出コイル4と鎖交し、その後最短経路でS極端面に入るように形成される。
このように、第3円筒磁石6は第2円筒磁石3aの先端近傍にその先端近傍が微少間隔離間するように配置されるので、第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、端点5に近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
【0032】
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
このように、第3円筒磁石6は第2円筒磁石3aの先端近傍にその先端近傍が所定間隔離間するように配置されるので、第2円筒磁石3aの中心のz軸寄りの磁路は、端点5aに近い測定領域に、比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができる。
この結果、測定用の磁束は比較的均等な間隔で、z軸方向に比較的長い経路で磁束を発生させることができるので、従来にはない測定感度と測定領域を得ることができる。
【0033】
図10は、三重円筒磁石(図3、4)によるz軸方向の磁力線(Bz)の特性図を示す。z=0cmで磁気回路の端点5aとなり、z>0に感度領域が現れる。*印と□印は、磁化方向がz軸に沿って負の、寸法が違う2種類の円筒磁石によるBzのデータである。×印は、磁化方向がz軸に沿って正である円筒磁石によるBzのデータである。図3、4で示される、第1円筒磁石2aから*印がプロットされ、第3円筒磁石6から□印がプロットされる。第2円筒磁石3aからは×印がプロットされる。)図11は、図10からz>0の部分だけをクローズアップしたBzの特性図を示す。+印は、寸法が違う3種類の円筒磁石を合成した三重円筒磁気回路によるBzのデータである。
【0034】
この場合も二重円筒磁気回路の場合と同じように、Bzの増減がうまくキャンセルされて感度領域が形成される。図12は、この三重円筒磁石による探査深度におけるx又はy軸方向のBzの特性図であり、x又はy軸方向においてもBzの増減がうまくキャンセルされる。もう少し詳しく説明すると、体積の大きい中央の円筒磁石3a(×印)が発生する主磁場に対して、極性が逆方向の補助磁場を発生する最内側と最外側の小さな2つの円筒磁石2aおよび6(*印と□印)を加えることで、主磁場の凸凹を補助磁場の凹凸で抑制して、磁場の均一度を高める効果を発現させることができる。
【0035】
図10の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表3に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表3】
【0036】
上述の基本構成の実証には、(株)アドバンスト・サイエンス・ラボラトリーの有限要素法による3次元静磁場シミュレーション用ソフトAMaze(Magnum)を使用した。プロファイルのプロットにはgnuplot(ニュープロットは、2次元もしくは3次元のグラフを作成するためのコマンドラインアプリケーションソフトウェアである。)を使用した。片側開放型多重円筒磁気回路が図19や図21のものと遜色のない磁場均一度空間を作ることができることを以下説明する。
二重円筒磁気回路については、円筒軸方向に磁化された二つの円筒磁石を用いて、寸法や互いの位置関係を記載した磁気回路の具体的な構成の一例を、図1、2に示した。
【0037】
また、三重円筒磁気回路については、図3、図4に示した。
これらの構成は、円筒軸(z軸)対称な磁石ユニットである。円筒磁石の残留磁束密度は、1.11Tと1.42Tのネオジム磁石を使い分け、磁石以外の空間は真空の物性(透磁率等について)を与えた。
【0038】
比較のため、本発明に係る図1〜4の片側開放型多重円筒磁気回路に加えて、特許文献4のケースも参照する。
図23および図24から円柱磁石を除去すると特許文献4のケースとなり、角柱磁石を除去すると特許文献3のケースとなる。特許文献4のケースでの磁石のパラメータは、r1=15.5cm、t1=4cm、a1=20cm、r2=7cm、t2=7cm、a2=5cm、b2=5.4cm、c2(角柱磁石の1辺:c2=2*r2*Tan(π/n)で与えられる。nを指定すれば、c2も決まる。(図22参照))=4.5cm、n=10(角柱磁石の数)で与えられる。
【0039】
特許文献3のケースでの磁石パラメータは、r1=15.5cm、t1=4cm、a1=20cm、t3=20cm、a3=5cm、b3=7.5cmである。双方ともネオジム磁石の残留磁束密度は1.42Tである。
本発明の二重円筒磁石のケース(図1、2)においては、a1=8cm、a2=3cm、a3=7cm、e1=14cm、e2=4cm、f=3.6cm、であり、第1円筒磁石2の残留磁束密度は1.42Tで、第2円筒磁石3の残留磁束密度は1.11Tである。
【0040】
本発明の三重円筒磁石のケース(図3、4)においては、a1=3cm、a2=8cm、a3=3cm、a4=7cm、e1=3cm、e2=12.5cm、e3=3cm、f=3.2cm、であり、第1円筒磁石2aと第3円筒磁石6の残留磁束密度は1.11Tで、第2円筒磁石3aの残留磁束密度は1.42Tである。
総重量については、鉄の密度(7.5g/cm3)を用いると、特許文献4の磁石と特許文献3の磁石は77.9kg、本発明の二重円筒磁石は78.7kg、本発明の三重円筒磁石は77.8kgとなり、±0.6%程度に収まる。
図12の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表4に示す。なお、横軸「y or x」(y又はx)はm(メータ)表記となっている。
【0041】
【表4】
【0042】
図13に、z軸上(つまりx=y=0)における磁束密度(B)のz成分(すなわちBz)のラインプロファイル(1次元分布)を、4種類の磁気回路について図示した。
本発明の二重円筒磁石は+印、本発明の三重円筒磁石は×印、特許文献4の例は*印、特許文献3の例(中心磁石あり)は□印で示す。以下の説明に於いても各印の表示は同様とする。
NMRセンサーの感度領域(sweet spot)をBzの揺らぎが±1%以内の空間として定義し、その領域を楕円で図示した。z軸方向への感度領域の幅は4〜5.6cm、探査深度は5〜8cm、強度は50mT以上である。
本発明の三重円筒磁石では、Bzのプロファイルは台形をなし、その上辺が感度領域を形成する。
【0043】
図13の上記Bz(T:テスラ)特性のサンプリングデータ値を下記表5に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表5】
【0044】
図14および図15は、感度領域付近のBzの直交3方向(x、y、z方向)の1次元分布(ラインプロファイル)で、NMRセンサーの感度領域(sweet spot)のサイズを矢印で図示した(横軸は感度領域の中心からの変位)。Bz値を感度領域の中心(探査深度の位置)における値で規格化し、縦軸の0.99〜1.01の範囲が感度領域の広がりを示す。図14および図15中の横軸の「Variety from center of sweet spot at z axis」は下記表6および表7で「z」として示す。
図14の上記Normalized(規格化された)Bz(無次元)特性のサンプリングデータ値を下記表6に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表6】
図15の上記Normalized(規格化された)Bz(無次元)特性のサンプリングデータ値を下記表7に示す。なお、zはm(メータ)表記となっている。
【表7】
【0045】
感度領域について、図13の*印と□印を見ると、探査深度は約6.4cmとなり、z軸方向に約5.6cmの幅(図14参照)をもち、図15が示しているようにx又はy方向には約8cmの広がりを見せている。これらは、公知特許を基にした計算結果である。
本発明の二重円筒磁気回路は、特許文献4の場合よりも探査深度が1.6cm程度深いが、感度領域の大きさは、z軸方向に1.6cm程度、x軸方向に3cm程度縮小する(図13〜22(15)参照)。
【0046】
本発明の三重円筒磁気回路では、探査深度は約5.2cmとなり、感度領域は、z軸方向で本発明の二重円筒磁気回路の場合と同じ幅(約4cm)となり、x軸方向で10cm以上の広がりを見せた(図13〜15参照)。この広がりは他のケースよりも特に優れた点である。
これらの円筒磁石回路における内部の空洞のサイズ(コイルを収納するためのスペースのサイズ)は半径7cmの円柱形であり、比較のため、全ての場合において同じ数値で磁場シミュレーションを行っている。
【0047】
本発明では、ほぼ同じ磁石総重量(±0.6%)という拘束条件の下で、本発明の二重円筒磁気回路は探査深度(約8cm)が公知の磁気回路よりも深くなったという意味で、公知の磁気回路よりも優れた性能を発揮できることがわかった。また同様に、本発明の三重円筒磁気回路は均一性の広がり(x方向の広がりが約10.6cm)が公知の磁気回路よりも大きくなったという意味で、公知の磁気回路よりも優れた性能を発揮できることがわかった。
【0048】
以上、本発明に係る片側開放型多重円筒磁気回路の基本構成は、図1〜4に示すように、軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置する構成としたので、従来例と比べ、探査深度を延ばすことができ、また、発生磁束が均一な領域の広がりを大きくすることができる。
また、磁石をすべて円筒磁石としたので、最小径の円筒磁石の内側に検出コイルを収納する収納スペースを確保することができる。
また、最小径の円筒磁石の内側には、検出コイル以外の、図5(18)に示したような異物がないので、コイルの検出機能に影響を与えるようなことが防止できる。
なお、上記実施例においては、主円筒磁石より軸方向の長さが短い補助円筒磁石を、1個又は2個とした例を説明したが、機能として、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束を感度領域で均一性と広がりを有するように機能させることができる限りにおいて、前記補助円筒磁石を3個以上とすることができる。
また、各磁石、例えば第1〜第3円筒磁石を複数の磁石を磁気的に連結(N極とS極の磁気吸引力による)して構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る片側開放型磁気回路は、サンプルが大きくて固い、あるいは貴重であるがために破壊検査が困難なケースに適用できる。これを例示すると次のとおりである。
(1)油田のボーリング孔に入れて、孔壁をNMRでスキャンして、深度ごとの地層の含油量を推定する。
(2)生きた肉牛や生マグロの表面スキャンをして、価格を左右する脂肪交雑(霜降りの程度)を推定する。
(3)土木建設業における、水を含むコンクリートの養生過程の監視や地盤・岩盤中の欠陥(水を含む亀裂など)の非破壊点検作業にも使える。
(4)天然記念物や文化財の検査にも使える。例えば樹齢千年の桜の表面をスキャンしてプロトン緩和時間の大小で健康状態を診断する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の縦断面図である。
【図2】本発明に係る片側開放型二重円筒磁気回路の実施例1の横断面図である。
【図3】本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の縦断面図である。
【図4】本発明に係る片側開放型三重円筒磁気回路の実施例2の横断面図である。
【図5】図1の実施例1における透過磁束路の説明図である。
【図6】図2の実施例2における透過磁束路の説明図である。
【図7】図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図である。z=0cmは磁気回路の端点。
【図8】図7の要部詳細図であり、図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図9】図1、図2の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z=8cm(探査深度の中心)におけるx又はy方向のBzの分布特性図である。
【図10】図3、図4の片側開放型二重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)の分布特性図である。z=0cm は磁気回路の端点。
【図11】図10の要部詳細図であり、図3、図4の片側開放型三重円筒磁気回路が作り出す、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図12】図3、図4の片側開放型三重円筒磁気回路が作り出す、z=5.2cm(探査深度の中心)におけるx又はy方向のBzの分布特性図である。
【図13】本発明に係る片側開放型磁気回路がつくり出す静磁場の計算機シミュレーション結果で、z軸上における、磁束密度ベクトル場のz方向成分(Bz)(z>0cm)の分布特性図である。
【図14】本発明に係る片側開放型磁気回路のNMRセンサーとしての感度領域付近の磁場成分(Bz)のz方向の1次元分布特性図である。
【図15】本発明に係る片側開放型磁気回路のNMRセンサーとしての感度領域付近の磁場成分(Bz)のx、y方向の1次元分布特性図である。
【図16】片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで内部欠陥を測定する説明図である。
【図17】片側開放型磁気回路を用いた核磁気共鳴(NMR)表面スキャナーで肉質を測定する説明図である。
【図18】円筒磁石を用いた片側開放型磁気回路の基本構成図である。円筒軸方向にNSと着磁した円筒磁石を用いる。
【図19】片側開放型磁気回路の円筒磁石に円筒軸方向に着磁した円柱磁石を追加した基本構成図である。図19は、図18の円筒磁石の内部に円柱磁石を配置した構成の片側開放型磁気回路である。
【図20】図19の片側開放型磁気回路の問題点を説明する断面図である。図20では、円筒磁石の一端側の内部に比較的薄い円柱磁石を配置してある。図中の円筒磁石内の円柱磁石下部の空間は、コイルを配置する予定の領域であるが、電気伝導度の高い異物、即ち、円柱磁石が配置されているので、発生磁路が歪む問題が発生する。
【図21】円筒磁石内に、軸中心部に空間を形成するように、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を追加配置した先行文献4の片側開放型磁気回路の構成図である。図21は、先行文献の片側開放型磁気回路で、円筒磁石内に、円筒軸に垂直な方向に磁化された角形磁石を追加配置して構成される。
【図22】図21の片側開放型磁気回路の効果を説明する説明図である。
【図23】先行文献4に係る片側開放型磁気回路の縦断面図である。
【図24】先行文献4に係る片側開放型磁気回路の横断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 片側開放型二重円筒磁気回路
1a 片側開放型三重円筒磁気回路
2、2a 第1円筒磁石
3、3a 第2円筒磁石
4 検出コイル
5 端点
6 第3円筒磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置するようにしたことを特徴とする片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項2】
前記複数の円筒磁石を、前記主円筒磁石となる外側の第1円筒磁石と、内側の第2円筒磁石としたことを特徴とする請求項1記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項3】
前記第1円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端近傍を接触するように配置したことを特徴とする請求項2記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項4】
前記複数の円筒磁石を、外側の第1円筒磁石と、前記主円筒磁石となる内側の第2円筒磁石と、その第2円筒磁石のさらに内側の第3円筒磁石としたことを特徴とする請求項1記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項5】
前記第1円筒磁石および前記第3円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端を微少間隔離間して配置したことを特徴とする請求項4記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項1】
軸方向の長さおよび径が相互に異なり、円筒軸(z軸)方向に磁化されている複数の円筒磁石を、磁化方向が隣接するもの同士で反転するように、且つ、主円筒磁石の磁束を部分的に主円筒磁石の軸方向に変異させると共に測定領域を透過する磁束が感度領域で均一性と広がりを有するように配置し、最小径の円筒磁石の内側に収まる外径の検出コイルを円筒磁石の軸中心に中心を会わせるように且つ前記複数の円筒磁石が形成する内部空間内に配置するようにしたことを特徴とする片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項2】
前記複数の円筒磁石を、前記主円筒磁石となる外側の第1円筒磁石と、内側の第2円筒磁石としたことを特徴とする請求項1記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項3】
前記第1円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端近傍を接触するように配置したことを特徴とする請求項2記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項4】
前記複数の円筒磁石を、外側の第1円筒磁石と、前記主円筒磁石となる内側の第2円筒磁石と、その第2円筒磁石のさらに内側の第3円筒磁石としたことを特徴とする請求項1記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【請求項5】
前記第1円筒磁石および前記第3円筒磁石と前記第2円筒磁石の対向する軸方向の先端を微少間隔離間して配置したことを特徴とする請求項4記載の片側開放型多重円筒磁気回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−60438(P2010−60438A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226606(P2008−226606)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
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