説明

牛の除角用焼烙ごて

【課題】月令によって大きさの異なる牛の角に対して、どのような大きさであっても使用部位を変えるだけで同じ焼烙ごての使用ができ、こて先を付替える必要がなく、作業性の向上を図れる。
【解決手段】ガス管3の先端に継手パイプ4を接続し、この継手パイプ4の先端を焼烙ごてに形成する牛の除角用焼烙ごてにおいて、こて先部5を牛の月令に対応する形状や焼烙面積を備える複数の形としてキャップ状体10、リング体11や先端が鋭角な止血部14に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳牛や肉牛の除角用焼烙ごてに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳牛飼育において、作業者の安全性、牛同士の闘争の防止、係留器具への係留作業の円滑化などを図るために、また、肉牛飼育においては、あたり(闘争時の角突きによる内出血)による肉牛販売利益損失の防止、ボス牛の出現防止による生産物の均一化などを図るために、牛の除角を行う必要がある。
【0003】
この除角の方法として、従来は例えば電気式半田ごて、炭火により加熱した鉄棒などを使用し、除角器により角を切除した後、その切口(傷口)を焼烙により止血し、角根部の神経、血管などの発育組織を壊死させて角の発育を停止させている。
【0004】
これら従来の方法では、電気式半田ごてを使用する場合は、電源を得られる場所、また、加熱した鉄棒による場合は炭火のおこせる場所と、作業場所が限定されたり、また、用具の運搬、準備にも手間取り、作業性がよくなかった。
【0005】
さらに、牛の角を焼烙するための専用の用具ではないため、使い勝手もよくなかった。
【0006】
そこで、かかる不都合を解消するものとして、携帯用ガスボンベのバーナーの先端に燃焼ガス誘導管を取り付け、この燃焼ガス誘導管の先端に、先端部を焼烙ごてに形成した筒体を取り付け、前記焼烙ごての内面を凹弧面状に形成した牛の除角用焼烙ごてがある(例えば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】実公平7−37492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記実公平7−37492号公報に記載の焼烙ごては、筒体の端部がそのままの形状でこて先となっているため、先端が平坦な円形で、焼烙するための面積も筒体の径により決定される円形の範囲内に限定される。
【0009】
一方、焼烙する牛の角は、月令により大きさが異なるが、前記のような焼烙部の面積が一定に限定されるものでは、月令により大きさの異なる牛の角に対して柔軟に対処できず、確実に焼烙出来ないこともある。
【0010】
そして、異なる大きさの角に対応するには、異なる形状、大きさのこて先を予め複数種類用意し、角の大きさに応じて異なるこて先をバーナーに取り付け替えしていたため、取付け替えに手間を要し作業性がよくなかった。
【0011】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、月令によって大きさの異なる牛の角に対して、どのような大きさであっても使用部位を変えるだけで同じ焼烙ごての使用ができ、こて先を付替える必要がなく、作業性の向上を図れる牛の除角用焼烙ごてを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するものとして、請求項1記載の発明は、ガス管の先端に継手パイプを接続し、この継手パイプの先端を焼烙ごてに形成する牛の除角用焼烙ごてにおいて、こて先部を牛の月令に対応する形状や焼烙面積を備える複数の形に形成したことを要旨とするものである。
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、こて先部の形状を牛の月令に対応する形状や焼烙面積を備える複数の形に形成したから、ひとつのこて先部で異なる月令の牛に対応でき、こて先部を牛の月令にあわせて変える必要がなく、作業性がよく、確実に焼烙できる。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記こて先部は、先端を閉塞したキャップ状に形成し、閉塞面の外側にリング体を取付けてリング面とリング内の凹部とをそれぞれ焼烙面に形成し、こて先部の基部に三角形状の止血用の座板を取り付け、この座板の鋭角先端部を止血部に形成したことを要旨とするものである。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、除角器を使用しない1ヶ月令までの角が生える前までの牛に対しては、凹部のくぼみを利用して角を包み込むようにして焼き、角が生え始めた牛に対しては、除角した後、切断面をリング面で焼烙し、10ヶ月令前後からの牛に対しては、除角後、面で焼くだけでは血が止りにくいので、座板の尖った鋭角先端部を使用して点で焼き止血する。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記止血用の座板の鋭角先端部はこて先部よりも上方に突出させ、こて先部の上面に鋭角先端部に供給する燃焼ガスのガス孔を形成したことを要旨とするものである。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、継手パイプの先端に形成されるこて先部の上面に、ガス孔を設けたから、ここから噴出する燃焼ガスがその後方に位置している鋭角先端部を加熱し、これにより鋭角先端部による点による止血が可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記ガス管は、携帯用ガスボンベのガス管であることを要旨とするものである。
【0019】
請求項4記載の本発明によれば、前記作用に加えて、携帯用ガスバーナーを使用することで、作業場所が限定されずに作業性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように本発明の牛の除角用焼烙ごては、ひとつのこて先部を牛の月令に対応する形状や焼烙面積を備える複数の形に形成したから、月令によって大きさの異なる牛の角に対して、どのような大きさであっても使用部位を変えるだけで同じ焼烙ごての使用ができ、こて先を付替える必要がなく、作業性の向上を図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面について本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す全体斜視図、図2は同上要部である継手パイプおよびこて先部の一部切欠いた側面図、図3は同上要部であるこて先部の正面図で、図中1は市販のカセットコンロ用ボンベなど、周知の携帯用ガスボンベを示し、このガスボンベ1には図1に示すように上部のボンベホルダー2を介してガス管3が接続され、その先端に図2に示す継手パイプ4が接続され、さらにその先端にこて先部5が接続される。
【0022】
継手パイプ4は、ボンベ側のパイプ4aとこて先部5側のパイプ4bとで構成され、こて先部5側のパイプ4bには周囲に複数の開口孔6が適宜間隔で穿設され、両パイプ4a,4bの境界には鍔状の返り火避け7が取付けてある。
【0023】
こて先部5は、図2および図4、図5にも示すこて先8と止血用の座板9との組合せで構成され、こて先8は、円筒状の部材の先端を閉塞したキャップ状体10と、このキャップ状体10の先端の閉塞面の外側に取付けたリング体11とで構成され、リング体11のリング面11aとリング内の凹部11bとをそれぞれ焼烙面に形成した。
【0024】
止血用の座板9は、前記こて先8の基部に取付けられ、パイプ4bへの結合用の筒体9aとその前側に配設される正面三角形状の板体9bとで形成され、板体9bには筒体9aに連通する開口13が中央に形成してある。
【0025】
板体9bの上端は60度の角度の鋭角先端部とし、これを止血部14とする。
【0026】
前記筒体9aの径はキャップ状体10の筒の径よりも小さく形成し、開口13がキャップ状体10の筒体の内側に位置するようにこて先8と座板9とを組合わせ、板体9bは底辺部がキャップ状体10の筒体の開口の内側に位置し、かつ、鋭角先端部である止血部14がキャップ状体10よりも上方に突出するように組合わせる。
【0027】
図2、図4において、符号12はキャップ状体10に設けた、鋭角先端部に供給する燃焼ガスのガス孔を示す。
【0028】
次に使用法について説明する。ガスボンベ1のガス管3にはボンベホルダー2を介してガスが供給されており、このガスに着火すれば、燃焼ガスはパイプ4a,4bを通ってこて先部5に送られ、キャップ状体10およびリング体11が内側から加熱される。
【0029】
そこで、焼烙する対象の牛が、除角器を使用しない1ヶ月令までの角が生える前までの牛の場合は、リング体11の凹部11bのくぼみを利用してこの凹部11b内に角を差し入れ、角を包み込むようにして焼く。
【0030】
また、角が生え始めた牛に対しては、除角した後、角の切断面をリング面11aで焼烙し、10ヶ月令前後からの牛に対しては、除角後、リング体11によって面で焼くだけでは血が止りにくいので、座板9の尖った鋭角先端部である止血部14を使用して点で焼き止血する。
【0031】
止血部14による止血は、図2に示すようにパイプ4a,4b側から供給される燃焼ガスが開口13を通過してガス孔12から上方に吹出すから、この熱で止血部14が加熱されることで、確実に行える。
【0032】
そして、キャップ状体10の内側に供給された燃焼ガスはキャップ状体11の後部でその円形の開口と三角形状の板体9bとの間に形成される隙間を通って外部に排出される。
【0033】
排出される燃焼ガスはボンベ側1に向って吐出するが、パイプ4a,4bの境界部に返り火避け7が設けてあるから、ボンベ1の加熱を防止でき、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す要部であるこて先部の一部切欠いた側面図である。
【図3】本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す要部であるこて先部の正面図である。
【図4】本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す要部であるこて先の正面図である。
【図5】本発明の牛の除角用焼烙ごての実施形態を示す要部である止血用座板の正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ガスボンベ 2 ボンベホルダー
3 ガス管 4 継手パイプ
4a,4b パイプ
5 こて先部 6 開口孔
7 返り火避け 8 こて先
9 座板 9a 筒体
9b 板体 10 キャップ状体
11 リング体 11a リング面
11b 凹部 12 ガス孔
13 開口 14 止血部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス管の先端に継手パイプを接続し、この継手パイプの先端を焼烙ごてに形成する牛の除角用焼烙ごてにおいて、こて先部を牛の月令に対応する形状や焼烙面積を備える複数の形に形成したことを特徴とする牛の除角用焼烙ごて。
【請求項2】
前記こて先部は、先端を閉塞したキャップ状に形成し、閉塞面の外側にリング体を取付けてリング面とリング内の凹部とをそれぞれ焼烙面に形成し、こて先部の基部に三角形状の止血用の座板を取り付け、この座板の鋭角先端部を止血部に形成した請求項1記載の牛の除角用焼烙ごて。
【請求項3】
前記止血用の座板の鋭角先端部はこて先部よりも上方に突出させ、こて先部の上面に鋭角先端部に供給する燃焼ガスのガス孔を形成した請求項2記載の牛の除角用焼烙ごて。
【請求項4】
前記ガス管は、携帯用ガスボンベのガス管である請求項1から請求項3のいずれかに記載の牛の除角用焼烙ごて。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−275015(P2007−275015A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108732(P2006−108732)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(390019703)株式会社ワンタッチ畜産資材研究所 (12)