説明

物品吊下げ具

【課題】扉体に取付けた物品吊下げ具の前後方向のガタを防止するとともに、扉体に取付け易く、且つ外れ難い構造の物品吊下げ具を提供する。
【解決手段】被取付体の端部に着脱自在に取付けられる物品吊下げ具であって、懸架体30と取付体40とからなり、取付体40は基部41の上端から一対の水平片42が延設され、水平片42の端部から下方に向かって垂下片43を延設し、垂下片43に対向して基部41の裏面下方から垂下片43との間隔を狭めるように上方に向かって一対の弾性片45が上方の水平片42の近傍まで延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キッチン収納部等の扉体上端部に懸架して、タオル、布巾、キッチン用品、或いは手元ゴミを入れるビニール袋などを吊下げて炊事作業を便利にする物品吊下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の物品吊下げ具は、物品収納部等の扉体上端部に収まる板厚の鉤状引掛部を形成して扉体上端部に懸架して取付けられるが、対応する扉の厚みが種類によってまちまちであるため、扉体の板厚と鉤状引掛部の湾曲幅の差厚を調整することが問題となっていた。
【0003】
この問題に対応するため、例えば、特許文献1では、背板と背板に対して直角に連設された天板と、この天板に対し鋭角、かつ、背板方向に向かって設けられる弾性変形可能な脚板とを一体に構成した吊下具が紹介され、また、特許文献2では、前面に吊下げフック機構を設け、背部に扉体の上端部に掛架する鉤状屈曲部を形成し、屈曲鉤片の対向面に介在物(被取付体)を鉤片側に押圧付勢する弧状板バネ機構を設定し、また、これを上下のバネ翼に分割し、分割したバネ翼の分割端面をリブによって連結して一体成形するようにした吊掛け具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−051057号公報
【特許文献2】特開2008−178429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、背板面と脚板の下端で扉体を挟持する構造であるため、扉体の板厚が薄い場合は扉体上部の前後方向に隙間が生じることにより吊下具上部が前後にガタツキ易く、さらに、吊下具を扉体に取付ける場合は背板と脚板を前後に開いた状態で扉体に挿入して取付ける必要があり取付け易さの点に問題があるとともに、フック部に吊下げた買物袋などを左右方向に引っ張ると吊下具が回転し外れ易いと言う問題があった。
また、特許文献2では、扉体背面に当接する屈曲鉤片と円弧状バネ板の上下で扉体を挟持するため、吊掛け具の前後方向の揺れは、バネで上下を押圧するため前後方向のガタは規制されるも、扉体への取付に際し円弧状バネ板の下部バネ板が突出しているため、該下部バネ板が扉体に引っ掛かり取付易さの点で問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、扉体に取付けた物品吊下げ具の前後方向のガタを防止しするとともに、扉体に取付け易く、且つ外れ難い構造の物品吊下げ具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被取付体の端部に着脱自在に取付けられる物品吊下げ具であって、懸架体と取付体とからなり、前記取付体は基部の上端から一対の水平片が延設され、該水平片の端部から下方に向かって垂下片を延設し、前記垂下片に対向して前記基部の裏面下方から垂下片との間隔を狭めるように上方に向かって一対の弾性片が上方の水平片の近傍まで延設されていることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、物品吊下げ具の基部の裏面下方から垂下片との間隔を狭めるように上方に向かって一対の弾性片が上方の水平片の近傍まで延設されているため、取付体の下端が最も広く構成され、扉等の被取付体の上部から下方に向けて押し込むことで物品吊下げ具を容易に被取付体に取付けることができる。また、弾性片が両側に一対設けられるため、被取付体上面を水平片の裏面に当接させ、被取付体を幅方向の前後両側で挟持しており、物品吊下げ具を左右方向に揺らしても被取付体から物品吊下げ具が外れにくくなっている。
【0009】
また更に、弾性片が上方ほど垂下片との間隔を狭めるよう構成されているため、被取付体を挟持する作用点は垂下片の内側面と弾性片上部に位置するため、物品吊下げ具の前後方向のガタが弾性片の弾性力で規制されるためガタツキ難く、基部下端も広げる方向への力が作用するため前後方向への回転も規制することができるとともに、例えば、ライン取手付き扉等のように被取付体の上端下方に手掛け部としての窪みがあっても問題なく確実に物品吊下げ具を取付けることができ、利用範囲の制限を少なくしている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明を技術的前提として、凸条が前記弾性片の上部垂下片側と前記垂下片の下端近傍の弾性片側に設けられており、前記基部の前面側の両端に一対の掛支体保持部を有し、該掛支体保持部の嵌合凹部に、懸架体の腕部内側に設けられた嵌合凸軸が嵌合可能に設けられ、両腕部を連結する掛支部を有する懸架体が着脱可能であることを特徴とするものである。
この発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、凸条が弾性片の上部垂下片側と垂下片の下端近傍の弾性片側に設けられ被取付体を線接触で押圧挟持するため、更に左右方向に回転し難くガタツキにくいとともに、掛支部を有する懸架体が着脱可能に設けてあるため、布巾やタオルなどを掛支部に吊るし易く、掛支部を外して水洗いできる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明を技術的前提とし、前記嵌合凸軸には回り止め突起と、前記嵌合凹部には回り止め凹みが設けられており、取付体に対して懸架体が所定位置で回転停止させることができることを特徴とするものである。
この発明によれば、請求項1及び請求項2の発明の効果に加え、取付体に対して懸架体が所定位置で回転停止させることができ、懸架体を被取付体に対して直角方向の前面側に停止させてタオルなどを掛支部に掛けてその後上又は下側に懸架体を回転させておくことができるため、物品の吊下げが容易にできるとともに、通常時は倒しておけば被取付体の前方方向へ物品吊下げ具が突き出さず、前面を炊事などで移動する人との衝突を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の物品吊下げ具を扉上端に取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1の物品吊下げ具の分解斜視図である。
【図3】図3の物品吊下げ具を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図4】被取付体に取付けた時の挟持力を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の物品吊下げ具をキッチンに使用した一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る物品吊下げ具の実施形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る物品吊下げ具につき、図1ないし図5を参照して説明する。尚、実施例では、図1、図5における紙面左下方側を被取付体7又はキッチン台1の前面側(正面側)とし、紙面右上方側を裏面側(後面側)として説明する。
【0015】
図5の符号1は、厨房に配置されるキッチン台1であり、このキッチン台1のカウンター2の面上には、加熱機器4、シンク5、蛇口6等が設けられるとともに、キッチン台1の側周面の一部である正面には、シンク部分を前面から隠す幕板7aや収納部である開き戸扉3及び引出し9が設けられている。各引出しの正面側には、該引出し9の収納部をキッチン台1の本体内部から引出し自在とするための開口を閉塞可能な扉体7や、開き戸扉3である扉体7が取付けられており、引出し9の各扉の上部には、扉体7の左右方向の全幅に渡って延びるライン取手7bが配置されている。このライン取手7bは、側面視で正面側が開口された略コ字形状を成している。
【0016】
これら引出し9のうち、最上段の引出し9における扉体7の上端縁部には、物品の一例であるタオル8を保持する本発明の一実施例である物品吊下げ具10が取付けられている。このタオル8は、長手方向を4つ折り(2つ折り以上)に折り畳まれた状態で物品吊下げ具10の開口部18に挿入させて吊下げられている。上段の引出し9における扉体7には、図1に示すように、扉体7の上端部にライン取手7bが幅方向に設けられており、使用者がライン取手7bに手を掛けて引くことで引出し9を開くことができる。
【0017】
本実施例の物品吊下げ具10は、図1乃至図3に示すように、扉体7の上端のライン取手7bを前後から挟み込んで引出し扉体7上端に取り付けるための取付体40と、タオル8を吊下げ可能な懸架体30とから構成されている。取付体40及び懸架体30はそれぞれ硬質樹脂製の一体成形品であり、それらを組み立てて物品吊下げ具10として構成される。
【0018】
取付体40は、図2に示す如く、基部41の前側両端に突設された掛支体保持部44と、基部41の上端両端の後方に延設された一対の水平片42と、水平片42の端部から下方に向かって延設された垂下片43と、基部41の裏面下方から垂下片43との間隔を狭めるように上方に向かって延設された一対の湾曲形状の弾性片45から構成されており、弾性片45の上端は水平片42との間で隙間を有し、基部41との間も弾性片45の上端が基部41側に押圧弾性可能に所定距離の隙間を設けて構成されている。
【0019】
図1に示す如く、取付体40の被取付体7である扉体7への取付けは、基部41と水平片42と垂下片43からなる側面視で鉤形状の下方開口部分を扉体7の上端に押し込むことで取付けでき、基部41下端から垂下片側上方に延設された弾性片45と垂下片43で扉体7を挟持させて取付けられる。
【0020】
また、一対の弾性片45の上部で垂下片側と、一対の垂下片43の下部で弾性片側には、水平方向に直線状の凸条431、451がそれぞれ設けられ、扉体7に物品吊下げ具10を取り付けた場合に、それぞれの凸条431、451の先端部分が扉体7の表裏面に当接し、複数の線接触にて扉体7を挟持し接触抵抗を大きくして、物品吊下げ具10の左右方向の回転力や上方への引張力に対して回転しにくく且つ抜け難くしている。
【0021】
図4に物品吊下げ具10の取付体40がライン取手7b付き扉体7を挟持して取付けられた場合の扉体7にかかる力と取付体40にかかる力について断面模式図で示す。
扉体7を挟む力は、扉厚みが弾性片45を手前側に押圧する弾性力で決まり、弾性片上部凸条451の挟持方向の力f1と垂下片上端ライン取手7b裏面当接部の挟持方向の力f2の和となるため、取付体40は扉体7を前後方向に均一に狭持し前後方向のガタが防止される。
【0022】
物品吊下げ具10の手前側への回転力に対しては、弾性片45の延設部である基部41下端に、弾性片を押し広げた反力F3が外向きに働くことにより手前側への回動を抑制する。また逆に後方への回転力に対しては垂下片下部の凸条431が扉体裏面に当接するため、垂下片43の撓み力F4の反力が働き、後方への回転を抑制するため、前後方向の物品吊下げ具10の回転に対しても取付体40が扉体7から外れることはない。そして、本実施例のライン取手7bのように前面に窪みがある扉体7であっても確実に物品吊下げ具10を取付けることが可能となっている。
【0023】
次に物品吊下げ具10の懸架体30について説明する。懸架体30は、取付体40の基部41両端に延設された一対の掛支体保持部44を介して取付体40に脱着される。両掛支体保持部44は、外側に嵌合凹部46を設け、該嵌合凹部46に懸架体30の腕部32先端側に設けられた嵌合凸軸33を嵌め込むことで懸架体30を取付体40に組み付けることができる。懸架体30は、両腕部32の反嵌合凸軸側に両腕部32を連結する掛支部31が延設されており、両腕部32と掛支部31とで囲まれる開口部18にタオル8等を通して吊下げることができるように構成されている。
【0024】
両掛支体保持部44の外側に設けられた嵌合凹部46及び懸架体30の両腕部32の内側に設けられた嵌合凸軸33には、円周方向で同じ間隔に、嵌合凹部46には回り止め凹み47と嵌合凸軸33には回り止め突起34が設けられており、懸架体30を手前上下方向に回転させた場合に、回り止め凹部に回り止め突起34が係止されて所定位置で回転停止できる構成とされている。本実施例では90度ピッチで回り止め凹部と回り止め突起34を設けているため、懸架体30は前方方向と上及び下方向で停止させてタオル8等を吊下げることができる。
【0025】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0026】
本実施例では、取付体40と懸架体30を硬質樹脂製の一体成形品で、それらを着脱可能に構成した実施例で示したが、取付体40と懸架体30を一体成形してもよく、懸架体部分を図示しないが上に開いた鉤状の形状体にすれば、買い物用のナイロン袋などワッパ部分を吊下げやすく、また、部分的に取付体40を金属製など他の材質で構成してもよい。
【0027】
また、実施例では弾性片45を垂下片側に突状の湾曲弾性片45で図示したが、単純な平板形状の弾性片45であってもよく、基部41から上方に離れるに従って垂下片側との距離が狭まり扉体7を挟み込ませる形状のものであれば、特に形状は限定しない。また、水平片42や垂下片43も矩形平板形状で図示した実施例を示したが、垂下片43の下端を円弧状にしたり、垂下片下端の凸条431も該円弧に併せて湾曲させたり、短い凸状を複数設けても良く、実施例とは違ったデザイン的に優れた形状であれば、更に良い。
【符号の説明】
【0028】
1 キッチン台
2 カウンター(天板)
3 開き戸扉
4 加熱機器
5 シンク
6 蛇口(水栓)
7 扉体(被取付体)
7a 幕板
7b ライン取手
8 タオル
9 引出し
10 物品吊下げ具
18 開口部
30 懸架体
31 掛支部
32 腕部
33 嵌合凸軸
34 回り止め突起
40 取付体
41 基部
42 水平片
43 垂下片
431 凸条
44 掛支体保持部
45 弾性片
451 凸条
46 嵌合凹部
47 回り止め凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体(7)の端部に着脱自在に取付けられる物品吊下げ具であって、懸架体(30)と取付体(40)とからなり、前記取付体(40)は基部(41)の上端から一対の水平片(42)が延設され、該水平片(42)の端部から下方に向かって垂下片(43)を延設し、前記垂下片(43)に対向して前記基部(41)の裏面下方から垂下片(43)との間隔を狭めるように上方に向かって一対の弾性片(45)が上方の水平片(42)の近傍まで延設されていることを特徴とする物品吊下げ具。
【請求項2】
凸条(431、451)が前記弾性片(45)の上部垂下片側と前記垂下片(43)の下端近傍の弾性片側に設けられており、前記基部(41)の前面側の両端に一対の掛支体保持部(44)を有し、該掛支体保持部(44)の嵌合凹部(46)に、懸架体(30)の腕部(32)内側に設けられた嵌合凸軸(33)が嵌合可能に設けられ、両腕部(32)を連結する掛支部(31)を有する懸架体(30)が着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の物品吊下げ具。
【請求項3】
前記嵌合凸軸(33)には回り止め突起(34)と、前記嵌合凹部(46)には回り止め凹み(47)が設けられており、取付体(40)に対して懸架体(30)が所定位置で回転停止させることができることを特徴とする請求項2に記載の物品吊下げ具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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