説明

物理量センサの検査方法および物理量センサの製造方法

【課題】物理量センサに対応した個別の通信インタフェイスを用いることなく複数の物理量センサを区別すると共に複数の物理量センサを一括して検査する。
【解決手段】検査前に、複数の物理量センサ10のマイコン(フラッシュROM11)に、複数の物理量センサ10それぞれを区別する識別情報が含まれた検査用プログラムを書き込む。続いて、検査用プログラムが書き込まれた複数の物理量センサ10を同一の通信線40にそれぞれ接続する。また、通信線40を検査機器20に接続する。そして、検査機器20の指令によって検査用プログラムを実行させることで複数の物理量センサ10をそれぞれ検査する。この後、検査機器20によって、複数の物理量センサ10のマイコン(フラッシュROM11)にそれぞれ書き込まれた検査用プログラムを、物理量の検出に用いられる製品プログラムに書き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサの検査方法および物理量センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加速度やヨーレイト等の物理量を検出するための物理量センサを検査する検査機器が、例えば特許文献1で提案されている。
【0003】
物理量センサは、他の機器の要求に応じて、自身が検出した物理量のデータを出力する双方向通信機能を備えたデジタル通信式の装置である。このデジタル通信は、一つの通信線に複数の異なる機器を接続できるため、物理量センサを含むすべての機器には自身を示す識別番号が設定されており、当該識別番号が信号に含められて出力されるようになっている。この識別番号は他の機器に対して物理量センサの場合には「物理量センサ」を識別するための番号であるので、複数の物理量センサの製造時には各物理量センサにそれぞれ同じ識別番号が設定される。
【0004】
また、検査機器は、物理量センサの双方向通信機能を利用して物理量センサと通信を行うことにより、物理量センサの特性を例えば100台〜200台程度といった複数台単位で一括して検査する機能を備えた装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−20038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、製造時に複数の物理量センサにそれぞれ同じ識別番号が設定されるため、複数の物理量センサを同時に検査する場合、検査機器は受け取った信号がどの物理量センサのものであるかを区別することができない。このため、物理量センサにそれぞれ設定された同一の識別番号を個別の識別番号に変換するゲートウェイ機能を持った通信インタフェイスを、検査する物理量センサの数だけ用意する必要がある。図3に具体例を示す。
【0007】
図3は、通信インタフェイスを用いた検査システムの模式図である。この図に示されるように、検査対象である複数の物理量センサ50(以下、製品50という)が恒温槽51に配置されている。恒温槽51は製品50の温度特性を検査するための器具である。また、恒温槽51の外部には、各製品50に対して通信線52を介して一対一で接続される通信I/F53が複数設けられている。各通信I/F53は上記のゲートウェイ機能を有する通信インタフェイスである。そして、各通信I/F53が検査機器54に接続されている。
【0008】
このように、ゲートウェイ機能を有する通信I/F53を用いることで、複数の製品50から出力される信号に含まれる識別番号が各通信I/F53によってそれぞれ個別の識別番号に変換される。このため、検査機器54では複数の製品50の区別が可能になる。
【0009】
しかしながら、多数の製品50の検査を一括して行うので、製品50と同じ数の通信I/F53を用意しなければならない。したがって、同時に検査する製品50の数が増えると、検査設備が全体として大掛かりなものになってしまうという問題がある。
【0010】
なお、特許文献1では、検査時に通信方式を変更できるような検査用プログラムを製品50に内蔵し、リレー等の安価な切り替え器を使って通信線を切り替える方法も提案されている。しかし、物理量センサといった小規模なマイクロコンピュータを搭載した製品50は、製品50として機能するプログラムそのものが小規模であるため、当該プログラムと合わせて検査用プログラムを搭載することはコストの面から不利である。
【0011】
一方、通信I/F53を用いずに製品50と検査機器54を一対一で接続することも考えられる。しかし、製品50と検査機器54を一対一で接続するとなると、1つの通信線に多数の装置を並列に接続できるということや各々が時分割で通信できるというデジタル通信の特徴を生かすことができない。
【0012】
本発明は上記点に鑑み、物理量センサに対応した個別の通信インタフェイスを用いることなく複数の物理量センサを区別すると共に複数の物理量センサを一括して検査することができる物理量センサの検査方法および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物理量を検出する物理量センサ(10)にプログラムの書き換えが可能な記憶手段(11)が備えられており、複数の物理量センサ(10)を検査機器(20)によって検査する検査方法であって、以下の工程を行うことが特徴となっている。
【0014】
まず、検査前に、複数の物理量センサ(10)の記憶手段(11)に、複数の物理量センサ(10)それぞれを区別する識別情報が含まれた検査用プログラムを書き込む工程を行う。続いて、検査用プログラムが書き込まれた複数の物理量センサ(10)を同一の通信線(40)にそれぞれ接続すると共に通信線(40)を検査機器(20)に接続し、検査機器(20)の指令によって検査用プログラムを実行させることで複数の物理量センサ(10)をそれぞれ検査する検査工程を行う。検査工程の後、検査機器(20)によって、複数の物理量センサ(10)の記憶手段(11)にそれぞれ書き込まれた検査用プログラムを、物理量の検出に用いられる製品プログラムに書き換える工程を行うことを特徴とする。
【0015】
これによると、検査前に、複数の物理量センサ(10)それぞれを区別する識別情報を含んだ検査用プログラムを複数の物理量センサ(10)にそれぞれ与えているので、複数の物理量センサ(10)を同一の通信線(40)に接続したとしても検査機器(20)は複数の物理量センサ(10)を区別することができる。このため、検査機器(20)と物理量センサ(10)とを一対一で接続する必要もなく、物理量センサ(10)の数だけ通信インタフェイスを用意する必要もない。したがって、物理量センサ(10)に対応した個別の通信インタフェイスを用いることなく複数の物理量センサ(10)を区別することができると共に複数の物理量センサ(10)を一括して検査することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、書き換える工程では、複数の物理量センサ(10)を通信線(40)にそれぞれ接続した状態で、検査用プログラムを製品プログラムに書き換えることを特徴とする。
【0017】
これにより、検査用プログラムから製品プログラムへの書き換えを複数の物理量センサ(10)に対して同時に実施することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、検査工程では、複数の物理量センサ(10)を恒温槽(30)に配置して複数の物理量センサ(10)をそれぞれ検査することを特徴とする。
【0019】
これによると、恒温槽(30)に配置された複数の物理量センサ(10)から検査機器(20)への信号の取り出しを1本の通信線(40)で行うことができる。このため、検査機器(20)と恒温槽(30)との間の通信設備を簡素化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、書き換える工程の後、物理量センサ(10)を再起動することを特徴とする。これにより、製品プログラムが書き込まれた物理量センサ(10)を製品とし動作しているかを確認することができる。すなわち、何らかの原因によって書き換えが行われなかった製品は、検査時と同じ識別番号で通信を行うため、容易に検出が可能である。
【0021】
請求項5に記載の発明のように、検査工程では、通信線(40)としてCAN通信バスを用い、検査工程以降は検査機器(20)と複数の物理量センサ(10)との間でCAN通信を行うことができる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明のように、記憶手段(11)として、フラッシュROMを用いても良い。
【0023】
そして、請求項7に記載の発明のように、物理量センサ(10)は、加速度センサおよびヨーレートセンサの両方を搭載したセンサとすることができる。
【0024】
一方、請求項8に記載の発明のように、物理量センサ(10)は加速度センサであっても良いし、請求項9に記載の発明のように、物理量センサ(10)はヨーレートセンサであっても良い。
【0025】
請求項10に記載の発明では、記憶手段(11)を備えた前記複数の物理量センサ(10)を用意した後、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の検査方法を用いて複数の物理量センサ(10)を検査することにより製品プログラムを備えた物理量センサ(10)を製造することを特徴とする。
【0026】
これにより、物理量センサ(10)の数だけ通信インタフェイスを用いることなく複数の物理量センサ(10)を区別して一括で検査を行って複数の物理量センサ(10)を製造することができる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る検査システムのブロック図である。
【図2】検査用プログラムの内容を示したフローチャートである。
【図3】課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。本実施形態では、物理量を検出するための物理量センサを製造した後、物理量センサの検査を行い、所定の仕様を満たしたものを出荷する際に用いられる検査方法および製造方法について説明する。
【0030】
まず、物理量センサについて説明する。物理量センサは自動車等の車両に搭載されるデジタル通信式センサとして構成されている。具体的には、物理量センサは、物理量を検出するセンサチップと、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)と、を備えて構成されている。
【0031】
センサチップは、車両の加速度やヨーレイト等の物理量を検出する検出手段である。センサチップは、半導体基板の表面側に加速度センサやヨーレートセンサ等のセンサを構成する可動部や固定部等がMEMS技術によって形成されたものである。本実施形態では、センサチップは、加速度センサとヨーレートセンサとの両方を搭載している。
【0032】
マイコンは、センサチップから入力した信号をA/D変換処理、演算処理、増幅処理等する機能や処理した信号を外部に出力する機能を有する制御手段である。このようなマイコンは、所定の処理を実行するためのCPU、RAM、フラッシュROM、A/D変換器、通信ドライバ等を備えて構成されている。
【0033】
フラッシュROMはデータ(プログラム)の書き換えが可能な記憶手段であり、データを保存するための多数の記憶領域を備えている。全記憶領域のうちの一部がBOOT領域とされ、BOOT領域以外の記憶領域がアプリ領域とされる。そして、BOOT領域にはマイコンの起動時にアプリ領域に記憶されたプログラムを実行させる起動プログラム等が記憶されている。また、アプリ領域には、物理量の検出に用いられる製品プログラムが記憶されている。したがって、マイコンは製品プログラムに従って動作する。
【0034】
後述するが、この製品プログラムは物理量センサの検査後にフラッシュROMに書き込まれたプログラムであり、物理量センサの製造段階ではフラッシュROMには製品プログラムではなく、物理量センサを検査するための検査用プログラムが書き込まれている。
【0035】
通信ドライバは、他の機器(ECU)の要求に応じてマイコンで処理された信号を例えば車内LANにて他の機器に出力するための通信手段である。通信方式としては、例えばCAN等のシリアル通信が採用される。以上が物理量センサの構成である。
【0036】
次に、上記の物理量センサを製造して出荷する前に物理量センサが所定の仕様を満たすかを検査する検査方法について説明する。以下では複数の物理量センサの温度特性を同時に検査する場合について説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る検査システムのブロック図である。なお、図1では物理量センサ10を「製品」と記してある。
【0038】
まず、上述の物理量センサ10を複数製造する。そして、物理量センサ10の検査前に、複数の物理量センサ10のフラッシュROM11に検査用プログラムをそれぞれ書き込む。検査用プログラムには、複数の物理量センサ10それぞれを区別するためのユニークな識別情報が含まれている。このため、複数の物理量センサ10を識別できる通信が可能となる。ユニークな識別情報は、例えば物理量センサ10に内蔵されているセンサチップに書き込まれているID等の識別番号である。
【0039】
続いて、図1に示されるように、検査用プログラムを書き込んだ複数の物理量センサ10を検査機器20で検査する。検査機器20は、物理量センサ10を例えば100台〜200台程度といった複数台単位でまとめて検査する機能を有する装置である。また、検査機器20は、複数の物理量センサ10に対して例えばCAN通信を行う。検査機器20は、汎用的なパーソナルコンピュータをベースとして構成されている。
【0040】
そして、検査機器20で物理量センサ10の温度特性を検査するため、複数の物理量センサ10を恒温槽30に配置する。恒温槽30は物理量センサ10の温度特性を検査するための器具であり、恒温槽30の内部の温度を所定の温度範囲内で変化させることができる器具である。また、恒温槽30内の複数の物理量センサ10の通信端子を同一の通信線40にそれぞれ接続する。そして、その通信線40を検査機器20に接続する。通信線40は、例えばCAN通信バスである。これにより、検査工程以降は検査機器20と複数の物理量センサ10との間でCAN通信を行うこととなる。
【0041】
このように、複数の物理量センサ10を恒温槽30に配置した状態で検査する場合、恒温槽30内で各物理量センサ10の通信端子を並列に接続しているので、恒温槽30の内部から各物理量センサ10の信号を1本の通信線40で取り出すことができる。
【0042】
この後、検査機器20と複数の物理量センサ10とを1本の通信線40で並列に接続した状態で検査機器20の指令によって各物理量センサ10の検査用プログラムを実行させる。これにより、複数の物理量センサ10をそれぞれ検査する検査工程を行う。検査中は、各物理量センサ10が時分割で通信を行い、検査機器20は各物理量センサ10のデータを取り込んで検査を実施する。例えば、検査機器20は、物理量センサ10から送られてきたデータが所定の仕様を満たすか否かの判定を行う。
【0043】
また、物理量センサ10の製造時に内蔵のマイコン(フラッシュROM11)に書き込んだ検査用プログラムによって、検査中は、各物理量センサ10はユニークな通信識別番号を用いて通信を行う。このため、複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続しても検査機器20は各物理量センサ10が送信するデータを区別することができる。
【0044】
全ての検査が終了した後、複数の物理量センサ10を通信線40にそれぞれ接続した状態で、検査機器20によって、複数の物理量センサ10のマイコン(フラッシュROM11)にそれぞれ書き込まれた検査用プログラムを製品プログラムに書き換える。
【0045】
このプログラムの書換処理について図2を参照して説明する。図2は物理量センサ10に記憶された検査用プログラムの内容を示したフローチャートである。図2に示されるフローチャートは、検査用プログラムが書き込まれたマイコンが起動するとスタートする。
【0046】
ステップ100では、検査用プログラムを製品プログラムに書き換えるための書換コマンドを検査機器20から受信したか否かが判定される。本ステップで書換コマンドが受信されないと判定されると、ステップ110に進む。
【0047】
ステップ110では、検査用通信出力を行う。すなわち、物理量センサ10が検出した検査のための物理量のデータを検査機器20に出力する。この場合、各物理量センサ10はそれぞれ異なる通信識別番号を用いて通信を行う。そして、ステップ100に戻り、書換コマンドを受信しない限り、ステップ100およびステップ110を繰り返す。つまり、検査を続ける。
【0048】
一方、ステップ100で書換コマンドを検査機器20から受信したと判定されると、物理量センサ10はプログラムを書き換えるモードに移行し、ステップ120に進む。そして、ステップ120では、検査機器20から通信によって送信された製品プログラムを受信して、フラッシュROM11に記憶された検査用プログラムを製品プログラムに書き換える。この場合、検査用プログラムをフラッシュROM11から完全に消去する。
【0049】
この後、ステップ130では、マイコンがリセット(再起動)される。こうして、物理量センサ10は最終製品と同じ機能となり、製品プログラムが書き込まれた物理量センサ10は製品として使用可能となる。そして、何らかの原因によってプログラムの書き換えが行われなかった製品は、検査時と同じ識別番号で通信を行うため、容易に検出することができる。
【0050】
以上のようにして、複数の物理量センサ10に記憶された検査用プログラムを製品プログラムに書き換えた後、恒温槽30から物理量センサ10を取り出す。製品プログラムにはECU等の他の機器に対して「物理量センサ10」を識別するための識別番号(ID)が設定されている。したがって、物理量センサ10に記憶された検査用プログラムが製品プログラムに書き換えられると、各物理量センサ10にそれぞれ同じ識別番号が設定される。そして、検査機器20の検査結果に基づいて、仕様を満たさない物理量センサ10は出荷されず、仕様を満たした物理量センサ10は出荷される。
【0051】
また、上記の検査方法は物理量センサ10を製造する際の一つの製造工程であると言える。すなわち、フラッシュROM11を備えた複数の物理量センサ10を製造した後、複数の物理量センサ10に対する検査用プログラムの書き込み、検査、検査後に検査用プログラムから製品プログラムへの書き換えを行う。これにより、最終的に製品プログラムを備えた物理量センサ10を製造することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、物理量センサ10を製造した後、検査前に、予め物理量センサ10のマイコン(フラッシュROM11)に複数の物理量センサ10それぞれを区別する識別情報を含んだ検査用プログラムを記憶させている。また、検査後にその検査用プログラムを製品プログラムに書き換えることが特徴となっている。
【0053】
このように、検査前に各物理量センサ10を区別する識別情報を含んだ検査用プログラムを各物理量センサ10に記憶させているので、複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続したとしても検査機器20は複数の物理量センサ10を区別することができる。すなわち、検査において複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続して検査を行うことができる。
【0054】
このように、複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続して検査を行うことができるので、従来のように一対一で検査機器20と物理量センサ10とを接続する必要がなく、物理量センサ10の数だけ通信インタフェイスを用意する必要もない。したがって、物理量センサ10に対応した個別の通信インタフェイスを用いることなく複数の物理量センサ10を区別し、さらに複数の物理量センサ10を一括して検査することができる。
【0055】
また、検査用プログラムから製品プログラムへの書き換えの際には、複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続した状態で行っているので、複数の物理量センサ10に対して同時にプログラムの書き換えを実施することができる。
【0056】
そして、恒温槽30に配置された複数の物理量センサ10を共通の通信線40に接続しているので、恒温槽30の内部から外部への通信線40の取り出しが大掛かりなものにはならず、検査機器20と恒温槽30との間の通信設備を簡素化することができる。つまり、物理量センサ10に対応した個別の通信インタフェイスを複数用意しなくても良いので、検査システムの構成を簡素化することができる。
【0057】
さらに、複数の物理量センサ10を同一の通信線40に接続した状態でそれぞれ各物理量センサ10の検査を行っているので、リレー等のスイッチによって検査機器20と複数の物理量センサ10のいずれかを切り替える必要はない。特に、CAN通信では定期的な通信ができなくなると、物理量センサ10がフェールセーフモードに移行して通信不能となる。しかし、本実施形態ではスイッチを用いた切り替えを行わないので、物理量センサ10がフェールセーフモードに移行してしまうことはない。
【0058】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、フラッシュROMが特許請求の範囲の「記憶手段」に対応する。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態で示された検査システムは一例であり、上記で示した内容に限定されることなく、本発明の特徴を含んだ他の構成とすることもできる。例えば、通信方法としてCAN通信を例に説明したが、通信方法はこれに限らず、物理量センサ10を通信線に接続して通信できるバス通信であれば良い。また、検査用プログラムや製品プログラムが書き込まれる記憶手段はフラッシュROM11に限らず、書き換え可能な他のメモリ等を用いても良い。
【0060】
上記実施形態では、複数の物理量センサ10を恒温槽30に配置して温度特性の検査を行うことを説明したが、検査内容は温度特性の検査に限られない。複数の物理量センサ10を恒温槽30に配置せずに常温で電気的な検査を行っても良い。
【0061】
上記実施形態では、検査方法の一工程として検査前に物理量センサ10のフラッシュROM11に検査用プログラムを書き込む工程を行っていた。しかしながら、検査方法の一工程として検査前に検査用プログラムが書き込まれた物理量センサ10を用意する工程を採用しても良い。この用意する工程の後、検査を実施することとなる。
【0062】
そして、上記実施形態では、物理量センサ10は加速度センサおよびヨーレートセンサの両方を搭載したセンサであったが、これは物理量センサ10の一例である。したがって、物理量センサ10は加速度センサであっても良いし、物理量センサ10はヨーレートセンサであっても良い。
【0063】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
【符号の説明】
【0064】
10 物理量センサ
11 フラッシュROM(記憶手段)
20 検査機器
30 恒温槽
40 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出する物理量センサ(10)にプログラムの書き換えが可能な記憶手段(11)が備えられており、複数の物理量センサ(10)を検査機器(20)によって検査する検査方法であって、
検査前に、前記複数の物理量センサ(10)の記憶手段(11)に、前記複数の物理量センサ(10)それぞれを区別する識別情報が含まれた検査用プログラムを書き込む工程と、
前記検査用プログラムが書き込まれた前記複数の物理量センサ(10)を同一の通信線(40)にそれぞれ接続すると共に前記通信線(40)を前記検査機器(20)に接続し、前記検査機器(20)の指令によって前記検査用プログラムを実行させることで前記複数の物理量センサ(10)をそれぞれ検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記検査機器(20)によって、前記複数の物理量センサ(10)の記憶手段(11)にそれぞれ書き込まれた前記検査用プログラムを、前記物理量の検出に用いられる製品プログラムに書き換える工程と、を含んでいることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記書き換える工程では、前記複数の物理量センサ(10)を前記通信線(40)にそれぞれ接続した状態で、前記検査用プログラムを前記製品プログラムに書き換えることを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記検査工程では、前記複数の物理量センサ(10)を恒温槽(30)に配置して前記複数の物理量センサ(10)をそれぞれ検査することを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記書き換える工程の後、前記物理量センサ(10)を再起動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項5】
前記検査工程では、前記通信線(40)としてCAN通信バスを用い、
前記検査工程以降は前記検査機器(20)と前記複数の物理量センサ(10)との間でCAN通信を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項6】
前記記憶手段(11)として、フラッシュROMを用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項7】
前記物理量センサ(10)は、加速度センサおよびヨーレートセンサの両方を搭載したセンサであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項8】
前記物理量センサ(10)は、加速度センサであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項9】
前記物理量センサ(10)は、ヨーレートセンサであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検査方法。
【請求項10】
前記記憶手段(11)を備えた前記複数の物理量センサ(10)を用意した後、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の検査方法を用いて前記複数の物理量センサ(10)を検査することにより前記製品プログラムを備えた物理量センサ(10)を製造することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−88231(P2012−88231A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236485(P2010−236485)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)