説明

物質コンポジット中の光制御用のサブ波長構造、装置及び方法

所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置が、薄膜中のアパーチャアレイ構造を含んで提供される。この構造は、第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを含む二つ以上のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを含み、第一のアパーチャのパラメータが第二のアパーチャのパラメータと異なる。ユニットセルは、所定の波長のオーダ又はそれ未満の周期で繰り返す。構造パラメータは、所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている。寸法、高さ、アパーチャを充填する物質の誘電率、形状、向きのうち少なくとも一つが適切な程度で異なるアパーチャを備えたユニットセルを構造化することによって、本装置を、偏光及び/又は波長フィルタリング、及び/又は光循環、ウィービング若しくはチャネリング用に構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[米国政府の権利]
米国国立科学財団(National Science Foundation)による“Advanced Silicon‐based Photodetectors Using Light Localization and Channeling”という名称のフェーズI中小企業技術革新制度(SBIR,Small Business Innovative Research)(契約番号0539541)の条件によるように、米国政府は、特許権者に他人に実施権を妥当な条件で与えることを限定的な状況下で要求する権利を含む一定の権利を、本発明に対して有する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年12月8日出願の米国仮出願第60/874037号の優先権を主張する国際出願PCT/US07/25351号の優先権を主張し、また、2008年9月8日出願の“Horizontally Distributed, Tandem Solar Cells Using Surface Plasmons and Resonant Cavity Mode”という名称の係属中の米国特許出願第61/191292号の優先権を主張し、これらの全内容は本願において参照として組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般的に、入射光学放射の増強された透過のためのサブ波長周期構造に係り、より詳細には、偏光調整能及び増強された透過を備えたサブ波長アパーチャアレイ構造及び格子構造であって、増強された透過、光のチャネリング、循環及びウィービング用の結合モード共鳴をサポートするように構成された幾何学的構造を有するものに関する。本発明は更に、このような構造を含む装置に関する。
【背景技術】
【0004】
二次元の周期的なホールアレイ及び一次元の周期的な透過格子構造の両方の周期パターン化金属構造において、透過の増強現象には強い関心が持たれている。図1を参照すると、透過の増強は、金属コンタクト12を有する周期的パターンの光学的に厚い格子構造10に光が入射する際に特定の条件で生じ得る既知の現象である。格子構造10に入射する電磁場16の代表的なポインティングベクトル20が、例として図1に示されている。
【0005】
透過の増強は、以下の式(1)で表されるように、コンタクト12を分離する溝14の面積(A)対入射光16が当たる構造10の全面積(A全体)の比よりも大きな透過率(T)で入射光16が透過する際に生じる:
T>A/A全体 (1)
従って、入射光16は金属コンタクト12付近にチャネリングされて(導かれて)、格子構造10の溝14を通過して、放射18が透過する。膜の全面積の数パーセントの面積しか有さない溝を備えた構造は、特定の波長、偏光状態、入射角において入射光の100%近くを透過させるということが分かっている。
【0006】
増強された光学透過は、様々な応用に対して適切にモデル化できれば、多様な光学装置における使用に対して利用可能な非常に有用な性質である。つい最近まで、この現象は、一次元の周期的な格子構造及び二次元の周期的なホールアレイの両方に対して、水平面指向表面プラズモン(HSP,horizontally oriented surface plasmon)、表面に平行な向きの表面プラズモンによるものであった。従って、これらの従来技術の透過増強型格子は、HSP結合を最適化するように設計された特定の構成に限られていた。
【0007】
例えば、Ebbesen他の特許文献1には、HSPモードに結合することによる光の透過の増強用の金属薄膜または薄い金属プレート中の薄型サブ波長アパーチャのアレイが開示されている。アレイの周期は、特定の波長範囲内で透過を増強するように選択される。特許文献1には更に、フォトリソグラフィ応用のためにアレイを用いて光をフィルタリング及び集光することができると開示されている。
【0008】
他の例として、Brownの特許文献2には、入射放射を局所的な表面プラズモン波に共鳴結合させるためのオプトエレクトロニクス装置が開示されている。この装置は、例えば、金属‐半導体‐金属(“MSM”,metal‐semiconductor‐metal)検出器であり、半導体基板上に、実質的に平坦で規則的な間隔の多数の薄型電極を含み、格子及び基板に沿って伝播するHSPモードを共鳴結合させる。
【0009】
入射する横磁場(TM,transverse‐magnetic)放射(格子素子(例えばワイヤ)に平行な向きの磁場を備えた電磁放射と定義される)のみがHSPに結合するということを当業者は理解されたい。従って、上述の又は他の従来技術のサブ波長透過増強型格子は、HSP結合を最適化するように設計された特定の構造に、つまりは、TM放射の透過を増強する格子に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5973316号明細書
【特許文献2】米国特許第5625729号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Crouse、Keshavareddy、“The role of optical and surface plasmon modes in enhanced transmission and applications”、Optics Express、2005年10月3日、第13巻、第20号、pp.7760−7771
【非特許文献2】Crouse、Keshavareddy、“Polarization independent enhanced optical transmission in one‐dimensional gratings and device applications”、Optics Express、2007年2月19日、第15巻、第4号、pp.1415−127
【非特許文献3】D.Crouse、“Numerical Modeling and Electromagnetic Resonant Modes in Complex Grating Structures and Optoelectronic Device Applications”、IEEE Trans.Electron Devices、2005年、第52巻、p.2365−2373
【非特許文献4】Alastair P.Hibbins他、Physical Review Letters、2006年、第96巻、p.257402
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、所定の偏光状態を選択的に透過させるように又はTM及び横電場(TE,transverse‐electric)放射の両方の透過を同時に増強するように調整可能な偏光調整可能透過増強型サブ波長格子及びアパーチャアレイ構造に関する。また、本発明は、キャビティモード(“CM”,cavity mode)をサポートする透過増強型サブ波長構造にも関する。CMとしては、入射放射の角度に応じて、光循環又は光ウィービング構造を生じさせるハイブリッドキャビティモードが挙げられる。本発明のサブ波長構造は、製造が容易であり、よって、偏光調整可能な透過が必要とされる装置への集積が容易である。従って、本発明は、本発明のサブ波長構造を含む装置にも関する。
【0013】
所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置は、薄膜中のアパーチャのアレイを備えた構造を含む。その構造は、所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている。その構造は、所定の波長における透過した所定の偏光状態の光循環又はウィービングを誘起するように構成されている。アパーチャのアレイは、所定の波長のオーダ又はそれ未満の周期で配置されている。
【0014】
所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置は、薄膜中のアパーチャアレイを備えた構造を含む。その構造は、少なくとも第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを含み、第一のアパーチャのパラメータは第二のアパーチャのパラメータと異なる。ユニットセルは、所定の波長のオーダ又はそれ未満の周期で繰り返している。その構造は、所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている。
【0015】
該構造は、その間に空気のスペーサ層を備えて、又は、光循環、チャネリング、ウィービング、又は本願で説明される他の増強された透過の効果を増強する物質で構成されたスペーサ層を備えて積層され得る。
【0016】
二つ以上の所定の波長バンド内で入射電磁放射の透過を増強するための装置は、薄膜中のアパーチャアレイを備えた構造を含む。その構造は、第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを含む二つ以上のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを含む。第一のアパーチャのパラメータは第二のアパーチャのパラメータと異なる。ユニットセルは、二つ以上の所定の波長のオーダ又はそれら未満の周期で繰り返している。その構造は、所定の波長バンド内で偏光されていない光に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている。その構造は、第一の所定の波長バンド内の光を各ユニットセルの第一のアパーチャにチャネリングさせて(導いて)、また、第二の所定の波長バンド内の光を各ユニットセルの第二のアパーチャにチャネリングさせるように更に構成されている。
【0017】
こうした装置は、太陽電池を含み、第一のアパーチャが第一の波長バンド内の光を強く吸収する半導体で充填されていて、第二のアパーチャが、第二の波長バンド内の光を強く吸収する半導体で充填されている。ユニットセルは、他の所定の波長バンドをチャネリング及び吸収するように最適化された更なるアパーチャを含み得る。
【0018】
以下で説明されるアパーチャアレイ構造又は格子構造は、光循環又はウィービング用に更に構成され得る。このようなアパーチャアレイ構造から形成可能な装置には、偏光子、波長フィルタ、波長感知チャネリング装置、光ストレージ、メモリ、制御装置、波長及び/又は偏光感知光検出器及び偏光センサが含まれる。
【0019】
また、本発明は、所定の偏光状態を選択的に透過させるように又はTM及び横電場(TE)放射の両方の透過を同時に増強するように調整可能な偏光調整可能透過増強型サブ波長(PETS,polarization‐tunable enhanced transmission sub‐wavelength)格子にも関する。また、本発明は、CMをサポートする構造を含む透過増強型サブ波長格子にも関する。CMとしては、入射放射の角度に応じて、光循環又は光ウィービング構造を生じさせるハイブリッドキャビティモードが含まれる。本発明の格子は有利に小さなフォームファクターを有し、製造が容易であり、よって、偏光調整可能な透過が必要とされる装置への集積が容易である。従って、本発明は、本発明のサブ波長格子のいずれかを含む装置にも関する。
【0020】
本発明の所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための格子は、入射電磁放射の横電場(TE)偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成された格子構造を含む。格子構造は、所定の波長以下の周期で配置された複数のワイヤと、複数のワイヤの隣接する各対の間の溝とを含む。溝は、ワイヤ間の幅と高さとを含み、溝は、1以上の誘電率を有する誘電体で充填されている。
【0021】
本発明の格子構造の一実施形態において、誘電率は1.2以上である。他の実施形態において、誘電率は2.0以上である。更に他の実施形態において、誘電率は10以上であり、好ましくは14以上である。
【0022】
本発明の格子構造は、少なくとも1から10以下の範囲の溝の幅対周期のアスペクト比を含み得る。
【0023】
本発明の格子構造は、高導電性物質製のワイヤを含み得て、アルミニウム、銀、金、銅、タングステンのうち一つ以上を含む。
【0024】
本発明の格子構造は、基板上に配置可能である。基板は、複数の層を含むことができて、好ましくは、少なくとも二つの層は異なる物質から成る。本発明の格子の基板は、シリカ、シリコン、二酸化シリコン、Ge、GaAs、InP、InAs、AlAs、GaN、InN、GaInN、GaAlAs、InSb、溶融シリカ、サファイア、石英、ガラス、BK7のうち一つ以上を含み得る。
【0025】
本発明の格子構造の溝の中の誘電体は、シリカ、シリコン、二酸化シリコン窒化シリコン、アルミナ、エラストマー、結晶性粉末、半導体、結晶五酸化二タンタル、多結晶五酸化二タンタル、結晶酸化ハフニウム、多結晶酸化ハフニウムのうち少なくとも一つを含み得る。
【0026】
本発明は更に、所定の波長における入射電磁放射の横電場(TE)偏光状態及び横磁場(TM)偏光状態に同時に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成された格子構造を含んだ、所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための格子を含む。格子構造は、所定の波長以下の周期で配置された複数のワイヤと、複数のワイヤの隣接する各対の間の溝とを含む。溝は、ワイヤ間の幅と高さとを含み、溝は、1以上の誘電率を有する誘電体で充填されている。
【0027】
格子の一実施形態は、少なくとも80%のTE偏光状態及びTM偏光状態のそれぞれの透過効率を有する。
【0028】
本発明は更に、第一の所定の波長における入射電磁放射の横電場(TE)偏光状態に結合し透過を増強するための第一の所定の波長におけるTE励起キャビティモードを優先的にサポートし、第二の所定の波長における入射電磁放射の横磁場(TM)偏光状態に結合し透過を増強するための第二の所定の波長におけるTM励起キャビティモードを優先的にサポートするように構成された格子構造を含む格子を提供する。格子構造は、所定の波長以下の周期で配置された複数のワイヤと、複数のワイヤの隣接する各対の間の溝とを有する。溝はワイヤ間の幅と高さとを含む。格子構造は更に、第一の所定の波長におけるTM偏光状態を反射し、第二の所定の波長におけるTE偏光状態を反射するように構成されている。
【0029】
また、本発明は更に、所定の波長におけるTE偏光状態及びTM偏光状態に結合し透過を同時に増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成された格子構造を含んだ、所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための格子を提供する。格子構造は、一つの組の一番目のワイヤの前縁から隣の組の一番目のワイヤの前縁まで延伸する格子周期を含み、少なくとも二つのワイヤ及び二つの溝の組がその格子周期内に存在するようになっている。つまり、格子周期は、周期毎に二つの溝を含む。第一の溝は、各組の中の隣接する一対のワイヤ間に存在している。各第一の溝は、第一の格子パラメータの組と関連していて、第一の格子パラメータの組には、第一の溝の幅、第一の溝の誘電率、第一の溝の高さが含まれる。第二の溝は、ワイヤの各繰り返しの組の間に存在している。第二の溝も、第二の格子パラメータの組と関連していて、第二の格子パラメータの組には、第二の溝の幅、第二の溝の誘電率、第二の溝の高さが含まれる。
【0030】
一実施形態において、第一の格子パラメータの少なくとも一つは、重畳する透過スペクトルを有する隣接する溝のキャビティモードの生成を防止するのに十分な量だけ、対応する第二の格子パラメータと異なる。
【0031】
他の実施形態において、第一の幅は第二の幅とは異なり若しくは第一の誘電率が第二の誘電率とは異なり、又は、幅と誘電率の両方が、組み合わさって、重畳する透過スペクトルを有する隣接する溝のキャビティモードの生成を防止するのに十分な量だけ、異なる。
【0032】
本発明の金属‐半導体‐金属検出器は、所定の波長における透過TM及びTE偏光状態のそれぞれの強度を測定するためのセンサと、所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための格子とを含む。格子は、所定の波長におけるTE偏光状態及びTM偏光状態に結合し透過を同時に増強するためのキャビティモードを優先的にサポートし、また、第一の溝を介してTE偏光状態及び第二の溝を介してTM偏光状態を優先的に透過させるように構成された格子構造を含む。格子構造は、一つの組の一番目のワイヤの前縁から隣の組の一番目のワイヤの前縁まで延伸する格子周期を含み、少なくとも二つのワイヤ及び二つの溝の組が、その格子周期内に存在するようになる。つまり、格子周期は周期毎に二つの溝を含む。第一の溝は、各組の中の隣接する一対のワイヤ間に存在する。各第一の溝は、第一の格子パラメータの組と関連していて、第一の格子パラメータの組には、第一の溝の幅、第一の溝の誘電率、第一の溝の高さが含まれる。第二の溝は、ワイヤの各繰り返しの組の間に存在している。第二の溝も、第二の格子パラメータの組と関連していて、第二の格子パラメータの組には、第二の溝の幅、第二の溝の誘電率、第二の溝の高さが含まれる。
【0033】
本発明は更に、所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強し、所定の波長の透過した所定の偏光状態の光循環又は光ウィービングを誘起するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成された格子構造を含んだ、所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための格子を含む。格子構造は、格子周期毎に少なくとも二つの溝を有する格子周期を含み、少なくとも二つのワイヤの組が各周期内に存在し、格子周期は、一つの組の一番目のワイヤの前縁から隣の組の一番目のワイヤの前縁まで延伸する。格子構造は、各組内の隣接する一対のワイヤ間の第一の溝を含み、各第一の溝は、第一の格子パラメータの組と関連している。第一の格子パラメータの組には、第一の溝の幅、第一の誘電率を有する第一の溝の物質、第一の溝の高さが含まれる。第二の溝はワイヤの各隣接する組の間に存在し、第二の溝は、第二の格子パラメータの組と関連している。第二の格子パラメータの組には、第二の溝の幅、第二の誘電率を有する第二の溝の物質、第二の溝の幅が含まれる。
【0034】
一実施形態において、第一の格子パラメータのうち一つ以上は、重畳する透過スペクトルを有する隣接する溝のキャビティモードを生成するのに十分な量だけ、対応する第二の格子パラメータのうち一つ以上と異なる。
【0035】
他の実施形態において、第一の溝の誘電率は第二の溝の誘電率と異なり、第一の溝の幅は第二の溝の幅と異なる。
【0036】
本発明の光ストレージ装置は、本発明の光循環格子の一実施形態を含む。
【0037】
本発明は更に、波帯フィルタの製造方法を提供する。波帯フィルタは、所定の波長を含む波帯内の横磁場(TM)及び横電場(TE)偏光入射電磁放射の両方の透過を増強するように構成された格子構造と、その格子構造が配置される基板とを含む。格子構造は、溝の誘電率ε、格子周期Λ、溝の幅、溝の高さを有する。本方法は以下の段階を含む:
所定の波長未満であるΛ/nに等しい波長λにおいて一次回折が生じるように屈折率n及び格子周期Λを備えた基板を選択する段階;
少なくとも部分的に波帯内に存在しているTM及びTE偏光放射のそれぞれに対する透過曲線を生じさせる溝の幅、溝の高さ、溝の誘電率の初期値を選択する段階;
所定の波長におけるTM偏光状態の透過を増強するための最適な溝の高さを求めるために、溝の高さを初期値から反復的に変化させて、溝の高さの反復値におけるTM偏光状態の透過強度の最大値の波長を求める段階;
最適な溝の高さ及び溝の誘電率の初期値に対して、最適な溝の幅を得るために、TE偏光状態の透過強度の最大値が所定の波長におけるTM偏光状態の透過強度の最大値と一致するまで、溝の幅の値を初期値から変化させる段階;
溝の誘電率εの初期値、最適な溝の高さ、最適な溝の幅を有する格子構造を基板上に製造する段階。
【0038】
一実施形態において、本方法は更に、溝の幅で割った溝の高さとして定義されるアスペクト比を求めて、波帯の幅を調整し、所定の波長に対するTM及びTE偏光透過曲線を一致させるために、アスペクト比、溝の高さ及び溝の幅を変化させる段階を含む。
【0039】
結果として、本発明は、所定の偏光状態を選択的に透過させるように、又は、TM及び横電場(TE)放射の両方の透過を同時に増強するように調整可能である偏光調整可能透過増強型サブ波長(PETS)格子を提供する。一部実施形態において、PETS格子は更に、光の循環又はウィービング用に構成される。また、本発明は、キャビティモード(ハイブリッドキャビティモードを含む)をサポートする構造を含む透過増強型サブ波長格子、本発明のサブ波長格子を含む装置も提供する。このような装置としては、偏光子、波長フィルタ、光ストレージ、メモリ、制御装置、金属‐半導体‐金属光検出器、偏光センサが挙げられる。
【0040】
添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態について説明されるが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、他の多様な変形及び改良が本発明の範囲又は精神から逸脱せずに当業者によって行われ得るということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】周期毎に単一の溝の格子の断面を介した、光のチャネリングを表すポインティングベクトルを用いた透過の増強の一例である。
【図2】本発明の周期毎に単一の溝の格子構造の一実施形態の断面図である。
【図3】図2の実施形態の上面図である。
【図4】本発明の周期毎に単一の溝の格子の他の実施形態の三次元図である。
【図5A】所定の波長における所定の偏光状態の増強された透過のための本発明の格子構造の三つの異なる実施形態のうち一つの概略図である。
【図5B】所定の波長における所定の偏光状態の増強された透過のための本発明の格子構造の三つの異なる実施形態のうち一つの概略図である。
【図5C】所定の波長における所定の偏光状態の増強された透過のための本発明の格子構造の三つの異なる実施形態のうち一つの概略図である。
【図6】図5A〜図5Cの実施形態のいずれか一つ用に構成可能な本発明の格子構造の代表例の断面図である。
【図7】本発明の周期毎に単一の溝の格子構造の一実施形態に対して、TE及びTM偏光状態の異なる次数のモードの透過のピークの入射エネルギー及び溝の幅に対する依存性のグラフである。
【図8】所定の波長におけるTE及びTM偏光の両方の同時の増強された透過のための本発明の格子構造の一実施形態に対する透過率/反射率プロットである。
【図9】一つの所定の波長におけるTE偏光及び他の所定の波長におけるTM偏光の増強された透過のための本発明の格子構造の一実施形態に対する透過率/反射率プロットである。
【図10】所定の波長において最適化された波長フィルタとして使用される図5Cの格子構図の特定の実施形態に対する透過率/反射率プロットである。
【図11】所定の波長において最適化された波長フィルタとして使用される図5Cの格子構図の特定の実施形態に対する透過率/反射率プロットである。
【図12】所定の波長において最適化された波長フィルタとして使用される図5Cの格子構図の特定の実施形態に対する透過率/反射率プロットである。
【図13A】周期毎に二つ以上の溝を有する本発明の格子構造の一実施形態の断面図である。
【図13B】図13Aの格子構造のサブ格子構造に対するTE及びTM偏光状態の透過率プロットである。
【図14】図13Aの格子構造の他のサブ格子構造に対するTE及びTM偏光状態の透過率プロットである。
【図15】図13Aの格子構造の一実施形態に対するTE及びTM偏光状態の透過率プロットである。
【図16A】図15に対応する実施形態のTM偏光キャビティモード(CM)に対するSIBCモデル化磁場密度である。
【図16B】図15に対応する実施形態のTM偏光CMのポインティングベクトル図である。
【図17A】図15に対応する実施形態のTE偏光CMに対するSIBCモデル化磁場密度である。
【図17B】図15に対応する実施形態のTE偏光CMのポインティングベクトル図である。
【図18】本発明の格子構造の一実施形態を含む金属‐半導体‐金属装置の画像である。
【図19A】本発明による光循環をサポートするように構成された格子構造の一実施形態のポインティングベクトル図である。
【図19B】本発明による光循環をサポートするように構成された格子構造の一実施形態のポインティングベクトル図である。
【図20】本発明による光ウィービングをサポートするように構成された格子構造の一実施形態のポインティングベクトル図である。
【図21】本発明に従って形成された光ストレージ用装置の一実施形態の概略図である。
【図22】本発明に従って形成された層状格子構造の一実施形態の断面図である。
【図23】本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
【図24】格子構造を説明するために用いられる座標系の説明を提供する本発明に従って形成された格子構造の一実施形態の一部分の斜視図である。
【図25】本発明の格子構造の一実施形態に対する本発明の方法によるSIBCアルゴリズムを用いて導出されたTM偏光及びTE偏光CMの透過率のプロットである。
【図26】図25に対応する実施形態に対する本発明の方法に従って導出されたTM偏光CMの全ω‐k反射率及び透過率プロファイルのプロットである。
【図27】図25に対応する実施形態に対する本発明の方法に従って導出されたTE偏光CMの全ω‐k反射率及び透過率プロファイルのプロットである。
【図28】図25に対応する実施形態に対する本発明の方法に従って導出された25.188GHzのTM偏光及びTE偏光CMの磁場強度である。
【図29】図25に対応する実施形態に対する本発明の方法に従って導出された25.188GHzのTM偏光及びTE偏光CMの電場強度である。
【図30】図25〜図29によって説明されるモデル化格子構造に対応する本発明に従って形成された格子構造のサンプルに対して得られた実験透過率データの代表的なプロットである。
【図31】本発明に従って形成された格子構造の一実施形態の断面図である。
【図32】本発明の格子構造の一実施形態についてのTE偏光CMに対するω‐k反射率及び透過率プロファイルである。
【図33A】π共鳴をサポートする本発明の格子構造の他の実施形態についてのTE偏光CMに対するω‐k反射率及び透過率プロファイルである。
【図33B】図33Aに対応する実施形態のポインティングベクトル図である。
【図34A】本発明の格子構造の光循環実施形態のTEポインティングベクトル図である。
【図34B】本発明の格子構造の光循環実施形態のTMポインティングベクトル図である。
【図35】本発明に従って形成された格子構造の光ウィービング実施形態のポインティングベクトル図である。
【図36】本発明に従って形成されたアパーチャアレイ構造の一実施形態の概略的な上面図である。
【図37】図36のアパーチャアレイ構造の実施形態の断面図である。
【図38】本発明に従って形成されたアパーチャアレイ構造の層で構成されたアパーチャアレイ超構造の概略的な断面図である。
【図39】本発明に従って形成された太陽電池装置の概略的な斜視図である。
【図40】図39に示される装置の一つの太陽電池の断面図である。
【図41】図40の太陽電池の一つが配置されているキャビティ内に全ての光を集中させるように調整された光学キャビティモードのポインティングベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図2〜4を参照すると、本発明に従って形成されたサブ波長格子の一実施形態は、入射放射の所定の波長に対して所定の偏光状態の透過を増強する格子構造22を有する偏光調整可能透過増強型サブ波長(PETS,polarization‐tunable enhanced transmission sub‐wavelength)格子20を含む。格子構造22は、1以上の屈折率n(又は誘電率ε、ここで
【数1】

)を有し幅c26を有する複数の溝24と、所定の波長未満の中心間周期Λ32で配置され、溝の高さ30を規定する複数のワイヤ28とを含む。
【0043】
一実施形態では、図2〜図4に示されるように、格子構造は周期Λ32毎に単一の溝24を有する。
【0044】
格子構造22は、好ましくは基板36上に配置されているが、任意で基板物質内部に入れられていてもよく、特定の所定波長においてキャビティモード(cavity mode,“CM”)をサポートするように構造化されている。
【0045】
本発明の格子構造は、特定の所定波長において、好ましくはその所定波長を含む特定のバンド内において、キャビティモードをサポートするように最適化されている。当業者は、本願で提供される特定の格子構造の例は、対象としている特定の波長範囲に対して適切にスケーリングされた寸法を有することができ、ワイヤ、溝及び基板物質用に対応する適切な物質を含むことができるということを、当業者は認識されたい。
【0046】
特に、多様な実施形態において、本発明の格子構造はいずれも、1nmから400nmの間、400nmから700nmの間、7マイクロメートルから100マイクロメートルの間、100マイクロメートルから1mmの間、1mmから400mmの間の所定の波長において共鳴モードをサポートするように構成可能である。
【0047】
本発明のいずれの格子中の基板も、特定の応用に適した誘電体から構成可能であり、BK7等のガラス、シリカ、溶融シリカ、二酸化シリコン(SiO)、シリコン(Si)(結晶、多結晶、アモルファスを含む)、空気、サファイア、石英、又は一種以上の半導体の一つ又は複数を含む。半導体としては、III‐IV族及び三元化合物半導体が挙げられ、Ge(ゲルマニウム)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、アンチモン化インジウム(InSb)、ヒ化ガリウムインジウム(GaInAs)、窒化ガリウムインジウム(GaInN)、ヒ化ガリウムアルミニウム(GaAlAs)、テルル化水銀カドミウム(HgCdTe)が含まれる。
【0048】
基板は一層よりも多くの層を含むことができる。多層の各層は異なる物質から構成可能である。
【0049】
一実施形態では、基板は反射防止物質を含む。
【0050】
本願において、キャビティモード(CM)は、溝内部で周知のファブリ・ペロー共鳴条件を満たす格子構造の溝内で生じる共鳴モードである。CMは、入射する横電場(transverse‐electric,TE)偏光放射の導波モード(WG,waveguide)によって生じる共鳴モードを含み、また、入射する横磁場(TM)偏光放射の溝の壁上の垂直面指向表面プラズモン(VSP,vertically‐oriented surface plasmon)又はWGの何れかによって生じたモードを含む。本発明の光循環構造を考慮すると、“キャビティモード”との用語には、位相共鳴を誘起するハイブリッドキャビティモードも含まれる。
【0051】
TM偏光(p偏光)放射は、その磁場が格子ワイヤに平行になるように向けられた電磁放射と定義される。TE偏光(s偏光)放射は、その電場が格子ワイヤに平行になるように向けられた電磁放射である。
【0052】
本発明の透過増強型格子は、所定の波長において入射電磁放射の透過を増強するための“サブ波長”格子である。本願において、“サブ波長”とは、格子のワイヤの周期が所定の波長以下又は所定の波長のオーダにあり、ワイヤ間の間隔が所定の波長未満となることを意味する。
【0053】
本発明に従って形成される格子構造及び格子は、一つ以上の偏光状態の透過を増強し、多様な応用に対する格子装置が製造されるものであり、便宜上まとめて、“偏光調整可能透過増強型サブ波長”(“PETS”,polarization‐tunable enhanced transmission sub‐wavelength)格子構造及び格子と指称することにする。この頭字語の使用は、何ら本発明の格子構造を限定するものとして解釈されるものではない。
【0054】
本発明のワイヤ(コンタクトとも称される)は、所定の入射波長における所定の偏光状態の透過を増強するためのCMを優先的にサポートする格子構造を形成して、本発明の格子構造の実施形態を形成するための形状、サイズ、物質のものであり、そのための幾何学的パターンに配置され得る。例えば、所定の偏光状態、所定の波長及び所望の応用に応じて、ワイヤは、特定の格子構造の周期に対して1%〜95%の幅、及び、特定の周期構造の周期に対して1%〜1000%の高さを有するものであり得る。格子構造中の溝は、その周期に対して1%〜1000%の幅を有することが好ましい。
【0055】
本願において、高さ“h”とは、溝の高さを称し、好ましくは隣接するワイヤの高さに等しい。しかしながら、ワイヤを基板のリセス部分内に配置することも本発明の範囲内においては想定されており、ワイヤの高さが隣接する溝の高さよりも高くなり得る。このような場合、本願において、高さhは溝の高さである。また、異なる高さを有する複数の異なるワイヤを、周期毎に複数の溝の構造において提供することも想定される。このような場合、本願において、高さhは、隣接するワイヤのうちの一つに対応する溝の高さである。
【0056】
代わりに、本発明の格子構造を、(金属)薄膜中のホールのアレイから形成することができる。
【0057】
好ましくは、いずれの格子構造のワイヤもいずれかの高導電性金属を含みことができ、例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステンのうちの一種以上が含まれる。
【0058】
一実施形態において、各ワイヤは、長方形、正方形、台形等の四辺形断面を有する。ワイヤと基板の間の交差部は真っ直ぐなエッジとなるように形成されることが好ましいが、製造プロセス中に曲がった又は傾斜した境界が生じ得る。境界のこの僅かな曲率は、CMの励起には影響しないが、共鳴が生じるエネルギーをシフトし得る。このようなシフトは、格子構造のパラメータの最適化において考慮されることが好ましい。
【0059】
図4を参照すると、一実施形態において、格子構造22は、ワイヤ28及び溝24の上部に、所謂“スーパーストレート(superstrate)”層38として配置される、空気以外の物質を含むことができる。この層38は、パッシベーション又は保護層を含むことが好ましく、ガラス、酸化物(例えば、SiO)、ポリマー、プラスチック等の物質から構成され得る。
【0060】
好ましい実施形態において、溝24は、少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも2の誘電率εを有する誘電体で充填される。一実施形態において、物質の誘電率εは、2〜20に及ぶ。
【0061】
他の実施形態において、溝の中の物質の誘電率εは少なくとも10であり、好ましくは少なくとも14である。例えば、溝の中の物質は、結晶若しくは多結晶の五酸化二タンタル(ditantalum pentoxide)、又は、結晶若しくは多結晶の酸化ハフニウムであり得る。これらの“high‐K”物質(つまり高い誘電率を有する物質)は、本願で説明されるように、TE透過放射に対して特に有利である。
【0062】
溝は、空気で、又は、特定の応用に有用ないずれかの物質で充填可能である。一実施形態では、溝24は半導体で充填され、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)又は他のIII‐V族半導体化合物の一種以上が含まれる。また、溝は、シリカ、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、アルミナ、エラストマー、結晶性粉末の少なくとも一つでも充填可能である。
【0063】
また、本発明の格子構造又は格子はいずれも、所定の波長における及び特定の波帯内の入射電磁放射の所定の偏光状態を、格子構造又は格子内に局在化させるようにも構成可能である。
【0064】
本発明は、その一部において、既知の一次元(1D)サブ波長格子における透過の増強の原因であるモードを本発明者が正確にモデル化した努力の結果である。HSPを増強された光学放射(EOT,enhanced optical transmission)に対する主な原因として報告していた研究の過去の教示に反して、本発明者のCrouse及びKeshavareddyは、HSPは、このようなサブ波長格子における透過の強い抑制及び弱い増強の両方を起し得ることを発見し、非特許文献1(その全内容は参照として本願に組み込まれる)において報告した。本発明者は更に、その主要な効果が、透過の強力な抑制、及び、透過の増強現象に寄与し得る他の共鳴モードの透過増強特性との干渉であると考えられると報告した。
【0065】
最近、本発明者は、ラメラ格子構造中のキャビティモード(CM)が入射光の一つの又は全ての偏光に対する透過の増強を選択的に生じさせ得るということを、理論的に示すことができるようになった。更に、本発明者は、このようなCM結合格子構造の性質(例えば、バンド幅、電磁場プロファイル)、並びに、波長、入射角及び構造幾何学への依存性が、HSP誘起の透過の増強用に最適化された従来技術の格子のものとは顕著に異なることを発見した。
【0066】
透過の増強に対するサブ波長格子のパラメータ依存性の定式化については非特許文献2(その全内容は参照として本願に組み込まれる)において報告されている。
【0067】
特に、本発明者は、本願で定義されるキャビティモード(CM)(例えば、WGによって生じる共鳴モードや、ハイブリッドモード(キャビティ共鳴及び表面プラズモン共鳴の両方から構成される)のキャビティモード成分)が、TE放射(つまり金属ワイヤに平行に偏光した放射)のEOTにおいて主要な役割を果たすということを発見した。
【0068】
本発明者は、同様に、TM放射(つまり、ワイヤに垂直に偏光した放射)に対して、同様のキャビティ共鳴が見出され得ることを発見し、また、このような共鳴が本発明の格子構造の溝を介して光をチャネリングするのに役立ち、この偏光状態に対して増強された光学透過を達成することができることを発見した。
【0069】
つまり、本発明者は、格子構造が、溝内部でファブリ・ペロー条件を満たすモードに対応するキャビティモードを選択的にサポートするように調整可能であり、TM及びTE偏光放射の一方又は両方によって優先的に励起可能であることを発見した。本発明者は更に、特定の所定エネルギー又は波長におけるこれらのキャビティモードの励起が、溝を介するTM及びTE放射の一方又は両方の増強された透過を予想通りに提供可能であることを発見した。また、溝の高さ又は溝の誘電率が増大するにつれて、ピーク透過のエネルギー位置が低エネルギー側にシフトすることを発見した。
【0070】
このような偏光調整可能な増強された透過を提供するために本発明の格子構造を最適化する際において、驚くべきことに、本発明者は、TE及びTM偏光状態の両方に対する増強された透過のピークの調整における本質的な設計パラメータが、従来報告されていない、ワイヤ間の間隔又は溝の幅c26(例えば図2〜4を参照)であるということを発見した。所定の偏光及び固定された溝の高さ及び周期に対して、溝の幅を変更すると、溝のモードの数、EOTが生じるエネルギー、溝内部の電磁場分布が変化する。
【0071】
非常に狭い溝の開口部において生じたTM偏光CMに対して、共鳴的に増強された電磁場は、溝全体にわたって比較的一様であり、溝の幅が増大するにつれて、広い開口部に対する溝の壁に近接したままの高強度電磁場で場が再分布する。一方、TE偏光に対して、溝内部の電磁場は、溝の中心により集中しており、側壁上にはほとんど場が存在していない。溝の幅が増大するにつれて、より多くの共鳴モードが生じ始めて、高い場の強度のローブ内に場を再分布させる。
【0072】
このような特性及び格子構造のパラメータに対するCMの依存性は、本明細書で以下において詳述されるように、本発明に従って、所定の波長における所定の偏光状態(例えば、TE、TMまたはその両方)に結合するキャビティモードを選択的にサポートするように格子構造のパラメータを構成及び最適化することによって、偏光調整可能透過増強型サブ波長(PETS)格子構造を形成するために、利用される。
【0073】
図5Aを参照すると、本発明のPETS格子の一実施形態40は、所定の波長におけるTM偏光放射44の透過を増強し、TE偏光放射46を反射する格子構造42を含み、“TEパス”波長フィルタが提供される。
【0074】
図5Bを参照すると、本発明のPETS格子の他の実施形態48は、所定の波長におけるTE偏光放射52の透過を増強し、TM偏光放射54を反射する格子構造50を含み、“TMパス”波長フィルタが提供される。
【0075】
本発明のPETS格子の更に他の実施形態56が図5Cに概略的に示されており、所定の波長におけるTE偏光放射60及びTM偏光放射62の透過を同時に増強する格子構造58を含む。
【0076】
図5Aから図5Cに示されるPETS格子の各格子構造は、キャビティモードをサポートする一次元(1D)格子構造に形成された実質的に長方形の断面のワイヤを含むが、これについては図6を参照して以下において詳述する。図5A〜図5C及び図6に示される実施形態においては、格子構造は、周期毎に単一の溝を有する。
【0077】
図6の格子70は、周期76毎に一つの溝の構造78の中に配置された複数のワイヤ72を含み、所定の波長において所定の偏光状態の透過を増強するように構成されている。各溝は幅c80を有し、物質88(空気又は1より大きな屈折率k又は誘電率ε(ここでε=k)の物質であり得る)で充填される。各ワイヤ72は、溝の高さ82を規定し、幅w84を有し、金製である。図7〜図8を参照して示されている特定の例及びプロットに対しては、格子構造78は自立構造であると仮定されている。即ち、“基板”36は空気である。
【0078】
格子70の一実施形態において、周期Λ76は1.75マイクロメートルであり、高さh82は1マイクロメートルであり、シリコン、11.9の誘電率εを有する物質が溝74を充填している。PET格子をモデル化するための本発明の方法を用いて、図7に示されるような、TM偏光92及びTE偏光94に対する透過のピーク波長(エネルギー)90のプロットを、これらのパラメータを有する格子構造78の溝の幅96の関数として表すことができ、溝の幅を0.35マイクロメートルから0.66マイクロメートルまで変化させている。図7において、1st TM91、2nd TM92、3rd TM93の曲線はグリッドに平行に偏光した光によって格子が照射される際に生じる三つの異なる次数のキャビティモード共鳴に対応する。同様に、1st TE97、2nd TE98、3rd TE94の曲線は、グリッドに垂直に偏光した光によって格子が照射される際に生じる三つの異なる次数のキャビティモード共鳴に対応する。
【0079】
図7から見て取れるように、EOTが生じるピークは、TM偏光に対しては高エネルギー側に移り、TE偏光に対しては低エネルギー側に移る。また、選択された格子構造78の特定のパラメータに対して(1.75マイクロメートルのΛ76、1マイクロメートルの高さh82、11.9の溝のε)、0.5eV(λ=2.5μm)のエネルギー及び0.615マイクロメートルの溝の幅80が、二つの曲線92及び94の交点に対応していることも見て取れる。従って、図5Cに示されるように、2.5マイクロメートル(μm)の同一の所定の波長においてTE及びTM偏光の同時のEOTのためのCMをサポートする本発明の格子構造の一実施形態が、得られる。
【0080】
本発明の格子構造の一実施形態において、溝を充填する誘電体は、少なくとも10、好ましくは少なくとも14の誘電率εを有する。高誘電率を有する溝に対して、本発明の格子構造が、これを用いなかった場合に可能なものよりも低いエネルギーにおいてTE偏光の増強された透過を提供し; 励起されたTE偏光CMが存在しない格子内のTM偏光の透過を抑制し; 低エネルギー側においてTE偏光及びTM偏光CMの一致を可能にするということを、本発明者は見つけ出した。従って、TE及びTMの同時的な透過用に調整されている格子構造の好ましい実施形態は、少なくとも10、好ましくは少なくとも14の誘電率εを含む。
【0081】
図8は、本実施形態に対して、エネルギーの関数としてのTMのゼロ次の透過率100及びTEのゼロ次の透過率102の曲線のプロットを示す。TMの反射率104及びTEの反射率106の曲線も比較用にプロットされている。
【0082】
図8を参照すると、両方の偏光状態(50%TM、50%TE)からの寄与が等しい非偏光の入射光に対しては、入射光の94%が、基板86(図6)内に透過可能であると結論付けることができる。従って、本発明の方法を適用して、多様なオプトエレクトロニクス装置において、特に偏光無依存の放射の検出が必要とされる装置において、顕著な設計の改良をもたらすことができる。
【0083】
図6に示される格子構造78の一実施形態に戻ると、1.75マイクロメートルの周期Λ76と、1マイクロメートルの高さh82、溝74を充填するシリコン(11.9のε)を有していて、所定の波長におけるTE又はTM偏光放射のどちらかの透過を増強するために溝の幅c80を最適化することによって、格子構造78の一実施形態を得ることができる。特に、ゼロ次のTM偏光に対する透過のピークと、TE偏光に対する透過のディップ(凹み)とを溝の幅の関数としてプロットすることによって、最適な溝の幅(二つの曲線の交点)を得ることができ、図5Aに従って、所定の波長においてTM偏光放射44の透過を増強するPETS格子40が提供される。同様に、TE偏光の透過のピークと、TM偏光の透過のディップとをプロットすることによって、最適な溝の幅を決定することができ、図5Bに従って、所定の波長においてTE偏光放射44の透過を増強するためのPETS格子48が提供される。
【0084】
特定の一実施形態では、0.45マイクロメートルの溝の幅が選択される。図9は、放射の入射エネルギーの関数として、TE偏光放射の反射率110及び透過率112のプロットと、TM偏光放射の反射率113及び透過率114のプロットとを与える。図9から見て取れるように、これらのパラメータ(0.45マイクロメートルのc、1.75マイクロメートルのΛ76、1マイクロメートルの高さh82、溝74を充填するシリコン(11.9のε))を有する格子構造78は、3.729マイクロメートルの所定の波長(
【数2】

)に対して、図5Aに示されるようにTM偏光の透過を優先的の増強するように構成されている。同一の構成及び構造パラメータを有する格子70の他の実施形態では、構造78は、2.992マイクロメートルの所定の波長(
【数3】

)に対して、図5Bに示されるようにTE偏光の透過を増強するように構成される。
【0085】
従って、0.45マイクロメートルのc、1.75マイクロメートルのΛ76、1マイクロメートルの高さh82及び11.9のεというパラメータを有する格子構造78は、第一の所定の波長(この例では0.45マイクロメートル)においてTM偏光の増強された透過を提供し、第二の所定の波長(この例では3.729マイクロメートル)においてTE偏光の増強された透過を提供する格子構造を表してもいる。
【0086】
図9を参照すると、この構造のTE偏光放射115及びTM偏光放射116に対するピークの透過の線幅は顕著に異なってはいるが、対象としている応用に応じて、溝のアスペクト比(本願において溝の高さを溝の幅で割ったものとして定義される)を変更することによって、狭い又は広いピークを設計することが可能である。例えば、光検出器は一般的に広い透過ピークを必要とする一方で、波長フィルタは、それが波長セレクタまたはバンドパスフィルタとして使用されるかに応じて、狭い又は広い透過ピークを必要とし得る。
【0087】
好ましい実施形態においては、アスペクト比は少なくとも略1から略10未満の範囲である。
【0088】
本発明のPETS格子構造は、偏光子や波長フィルタを含む多数の装置応用に対して使用可能である。本発明に従って形成される偏光子や波長フィルタの好ましい実施形態としては、図2〜図4、図5A〜図5C及び図6を参照して説明されるような、周期毎に唯一つの溝を有するPETS格子構造が挙げられる。
【0089】
図5Cを参照して説明されるような、TE及びTM入射放射の両方を同時に透過させるように最適化された本発明のPETS格子構造から形成されたナローバンドフィルタの実施例が、図10〜図12に与えられている。
【0090】
特に、図10は、850ナノメートル(nm)におけるTM及びTE偏光の両方の増強された透過用に最適化された、本発明に従って形成されたナローバンド光波長フィルタの一実施形態に対して、波長122の関数としての規格化された強度120のプロットを与える。非偏光の入射放射に対する全透過率124及び全反射率126の曲線は、非偏光の95%が基板内に透過可能であることを示す。1Dの周期的な格子構造のこの実施形態において、図6を参照すると、ワイヤ72は金製であり、格子は、Λ=530nmの周期76を有し、ワイヤ72間の溝の間隔80はw=333nmであり、金属コンタクトによって規定される高さ82はh=490nmである。格子構造78はSiOの基板86の上面に配置されていて、ワイヤ間の空間は誘電体88(SiO)で充填されている。
【0091】
図11は、1330nmの通信波長におけるTM及びTE偏光の両方の増強された透過用に最適化された、本発明に従って形成されたナローバンド光波長フィルタの一実施形態に対して、波長132の関数としての規格化された強度130のプロットを与える。非偏光の入射放射に対する全透過率134及び全反射率136の曲線は、非偏光の82%が基板内に透過可能であることを示す。1Dの周期的な格子構造のこの実施形態において、図6を参照すると、ワイヤ72は金製であり、格子はΛ=850nmの周期76を有し、ワイヤ72間の溝の間隔80はw=260nmであり、金属コンタクトによって規定される高さ82はh=647nmである。格子構造78はSiOの基板86の上面に配置されていて、ワイヤ間の空間は誘電体88(シリコン)で充填されている。
【0092】
図12は、1550nmの通信波長におけるTM及びTE偏光の両方の増強された透過用に最適化された、本発明に従って形成されたナローバンド光波長フィルタの一実施形態に対して、波長137の関数としての規格化された強度133のプロットを与える。非偏光の入射放射に対する全透過率135及び全反射率138の曲線は、非偏光の82%が基板内に透過可能であることを示す。1Dの周期的な格子構造のこの実施形態において、図6を参照すると、ワイヤ72は金製であり、格子はΛ=910nmの周期76を有し、ワイヤ72間の溝の間隔80はw=270nmであり、金属コンタクトによって規定される高さ82はh=575nmである。格子構造78はSiOの基板86の上面に配置されていて、ワイヤ間の空間は誘電体88(シリコン)で充填されている。
【0093】
本願で説明されるような溝内部のCM生成をサポートするように構成された本発明のPETS格子構造は、波長、バンド幅及び偏光の高度な調整能を有し、低損失金属製のワイヤ並びに低損失誘電体製の溝及び基板物質を使用することで、入射光の所望の偏光成分の100%近くを透過させることができる。
【0094】
特に、所定の波長におけるTE又はTM偏光のいずれかの透過の増強用のPETS格子構造の一実施形態において、所定の波長における入射TE又はTM放射のそれぞれの少なくとも60%が透過する。
【0095】
所定の波長におけるTE又はTM偏光のいずれかの透過の増強用のPETS格子構造の他の実施形態において、所定の波長における入射TE又はTM放射のそれぞれの少なくとも80%が透過する。
【0096】
所定の波長におけるTE又はTM偏光のいずれかの透過の増強用のPETS格子構造の更に他の実施形態において、所定の波長における入射TE又はTM放射のそれぞれの少なくとも90%が透過する。
【0097】
所定の波長におけるTE又はTM偏光のいずれかの透過の増強用のPETS格子構造のまた他の実施形態において、所定の波長における入射TE又はTM放射のそれぞれの少なくとも95%が透過する。
【0098】
所定の波長におけるTE及びTM偏光の同時の透過の増強用のPETS格子構造の一実施形態において、所定の波長における入射TE及びTM放射の少なくとも60%が透過する。
【0099】
所定の波長におけるTE及びTM偏光の同時の透過の増強用のPETS格子構造の他の実施形態において、所定の波長における入射TE及びTM放射の少なくとも80%が透過する。
【0100】
所定の波長におけるTE及びTM偏光の同時の透過の増強用のPETS格子構造の更に他の実施形態において、所定の波長における入射TE及びTM放射の少なくとも90%が透過する。
【0101】
所定の波長におけるTE及びTM偏光の同時の透過の増強用のPETS格子構造のまた他の実施形態において、所定の波長における入射TE及びTM放射の少なくとも95%が透過する。
【0102】
図1〜図12を参照して上述した本発明の格子構造並びにその格子構造を組み込んだ偏光子及び波長フィルタ装置は、周期毎に一つの溝を有する格子構造を含むことが好ましい。図13Aを参照すると、本発明のPETS格子構造140の他の実施形態は、格子周期Λ142毎に二つ以上の溝を含む。この種の構造140は、ワイヤの繰り返しの組144のパターンを含み、組の中の各ワイヤが異なる特性を有することができる。即ち、一つの組144内の第一のワイヤ145が他の組の第一のワイヤ147と同一である等である。格子周期142は、格子周期毎に少なくとも二つの溝を有し、例えば、格子周期142は一つの組144の一つのワイヤの前縁146から、隣接する組150の対応するワイヤの前縁148まで延伸する。各組は、各組144内の隣接する一対のワイヤ間の少なくとも一つの第一の溝152(第一の幅c154及び第一の誘電率ε1溝によって規定される)と、一つの組144の最後のワイヤ160と次のワイヤの組150の隣接する一番目のワイヤ162との間の第二の溝156(第二の誘電率ε2溝及び第二の幅c158によって規定される)とを有する。
【0103】
ワイヤの組144は異なる物質、高さ及び/又は形状のワイヤのパターンから構成可能である。一実施形態において、溝は同一の物質から構成される。他の実施形態において、溝は異なる物質で充填される。
【0104】
好ましい実施形態の一つでは、格子構造140は、同一の所定の波長におけるTE偏光状態及びTM偏光状態に結合しこれらの透過を同時に増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成される。
【0105】
好ましくは、格子構造は、所定の波長において一組の溝(例えば、第一152の狭い方の溝)を介してTM偏光状態を優先的に透過させ、また、他の組の溝(例えば、第二156の広い方の溝)を介してTE偏光状態を優先的に透過させるように更に構成される。
【0106】
入射放射の偏光成分の単純な分離に対して望ましいこのような実施形態の一つにおいては、第一の溝の溝パラメータ(例えば、溝の幅、誘電率)の一つ以上が、透過スペクトル内で重畳するショルダー部を有する隣接CMの発生を防止するのに十分な量だけ、第二の溝のものとは異なる。一実施形態では、溝の幅のみが異なり、例えば図13Aの第一の溝の幅154及び第二の溝の幅158が異なる。驚くべきことに、本発明者は、このような重畳が、予想されるような増強された透過の波帯を広げるというよりはむしろ、一部の応用に対して望ましくない、第一及び第二の溝内に生じるCM間のハイブリッド結合モードを生じさせるということを発見した。しかしながら、更に他の実施形態に関して以下で説明するように、このハイブリッドCMは、特有の装置応用に対して、新規の所謂“循環モード”を生じさせるために有利に利用することができる。
【0107】
図13〜図15を参照すると、格子構造140の一実施形態は、一組の溝を介してTM偏光状態を、また、第二の組の溝を介してTE偏光状態を優先的に透過させるために、格子構造140の一周期142内の二つの異なる溝152及び156内のCMをサポートするように構成可能である。本実施形態は、二つの単純な周期毎に単一の溝のラメラ“サブ格子”の組み合わせとして説明可能であり、同一の周期142を有するが、異なる溝の幅及び/又は誘電率(c,ε1溝)、(c,ε2溝)を有する。具体的な例が図13〜図15に与えられている。図13Bは、Auワイヤ172、溝の幅174 c=0.6μm、高さ176 h=0.645μm、周期178 Λ=2.5μm、誘電率180 ε=22(これは近似的にTaの誘電率である)、基板及びスーパーストレートとして空気を備えた第一のサブ格子170に対するTM偏光の透過率166及びTE偏光の透過率168を示す。これらのパラメータは、TE偏光を選択的に透過させる所定のλ=5μmにおけるTE偏光CMを与える。
【0108】
このTE偏光モードは、以下の式(2)によって与えられる100%閉じ込められた(キャビティ内に)CMに対する公式に従って分かるn=m=1のモードに対応する:
【数4】

ここで、n及びmは整数であり、
【数5】

は溝中の誘電体の屈折率である。
【0109】
図14を参照すると、全ての溝をc=0.3μmの幅184及びε=11.9(≒εシリコン)の誘電率186に変更し、残りの全てのパラメータを変更しない場合、図14に示される第二の“サブ格子”182が形成される。この第二の周期毎に単一の溝の格子は、TM偏光を選択的に透過させるλ=5μmにおけるTM偏光CM188(式(2)のn=1、m=0のモード)を有し、3〜9μmの波長範囲に対して、TE偏光の透過率はゼロである。
【0110】
図15を参照すると、これら二つの格子170及び182が組み合わせられて、格子毎に二つの溝を備えた格子構造190が形成され、Λ=2.5μmの一周期192内に、幅195 c=0.6μm及びε1溝=22を備えた一つの溝194と、幅198 c=0.3μm及びε2溝=11.9を備えた一つの溝196とが存在するようになり、その性能は予測可能である。このような格子構造の透過率は、後述の位相共鳴が生じない限りにおいて、近似的に、図13B及び図14に示される二つの成分の周期毎に単一の溝の格子の透過率の規格化された和である。図16A及び図16Bにそれぞれ場の密度204及びポインティングベクトルのプロット206によって示されるように、λ=5μmにおけるTM偏光は、狭い方の組の溝を介して透過する。図17A及び図17Bにそれぞれ場の密度208及びポインティングベクトルのプロット210によって示されるように、λ=5μmにおけるTE偏光202は、広い方の組の溝を介して透過する。格子構造が、相間相互作用が生じないように十分に間隔が離されたTM偏光及びTE偏光CMを優先的にサポートするように構成されている限りにおいて、成分の周期毎に単一の溝の格子の透過率の規格化された和は、TM及びTE偏光状態の両方の増強された透過及び分離に対して、本発明の周期毎に複数の溝の格子の一実施形態の透過率の良い近似を与える。
【0111】
所定の偏光状態の増強された透過及び分離に対する更なる周期毎に複数の溝の格子が、本発明の範囲内にあるものとして、想定される。このような実施形態として、周期毎に単一の溝のサブ格子構造を複数含む格子構造が挙げられ、各サブ格子構造に格子パラメータ(ワイヤの組成、基板物質、周期性、溝の幅、溝の誘電体、周期、ワイヤの高さ及び形状等が含まれる)が関連付けられ、少なくとも一つのサブ格子構造が、実質的な相関相互作用が関連するCM間に生じることなく増強された透過を生じさせるのに十分なように他のサブ格子構造と異なる。
【0112】
図18を参照すると、本発明に従って形成された装置の一実施形態において、所定の波長における入射ビームの強度及び偏光状態を測定する金属‐半導体‐金属光検出器(MSM‐PD,metal‐semiconductor‐metal photodetector)212は、本発明の周期毎に複数の溝の格子構造を含む。MSM‐PD212は、吸収性半導体基板216の上面に形成された格子構造214を含む。装置212は、交互にバイアスされるワイヤ(負にバイアスされるワイヤ220間に組み入れられた正にバイアスされるワイヤ218)を有する。この構造214は、周期222毎に三つの溝を有し、溝のうち二つ224は、全てに関して同一であり、TM偏光を選択的に透過させ、溝のうち一つ226は、TE偏光を選択的に透過させる。透過光は電子‐正孔対を発生させ、入射ビームのTM偏光及びTE偏光成分のそれぞれによる電流成分I及びIを発生させる。そして、読み出し集積回路(ROIC,readout integrated circitry)は、所定のI及びI+Iに対してIを計算可能である。所望であれば、追加の同一のTE偏光チャネリング溝を挿入可能であり、一組のコンタクトがTE偏光によって生じる電子‐正孔対のみを収集することが可能になる。
【0113】
図19A及び図19Bを参照すると、本発明の他の実施形態は、ハイブリッドCM又は“π”モードをサポートするように構成された周期毎に複数の溝232を有する格子構造230を含む。ハイブリッドCM又は“π”モードは、所謂位相共鳴に起因するものであり、所定の波長における所定の偏光状態の透過を優先的に増強し、また、図19A及び図19Bのポインティングベクトル図によって示されるように構造230を介する透過放射の所謂“光循環”234も生じさせる。
【0114】
本実施形態では、格子構造は周期毎に複数の溝を含む。周期内の各溝は、格子パラメータ(ワイヤの組成、基板物質、周期性、溝の幅、溝の誘電体、周期、ワイヤの高さ及び形状等が含まれる)を有するサブ格子構造に関連付けられているものとみなすことができる。少なくとも一つのサブ格子構造は、増強された透過及び光循環を生じさせるには十分であるが、相関相互作用が関連するCM間に生じることを妨げることがないように、他のサブ格子構造とは異なる。
【0115】
TM偏光πモードは従来技術において報告されていたが、TE偏光πモード及び光循環効果については報告されていなかった。例えば、図19Aを参照すると、光循環は、本願で説明されるように、入射光234が一組の溝236を介して透過し、その後、第二の組の好ましくは形状又は組成の異なる溝238を介して再透過する際に生じて、所定の波長、偏光及び入射角の光に対して高い正味の反射性がもたらされる。任意で、(金属)薄膜中のホールのアレイを用いることによって、同一の効果が達成可能である。
【0116】
本発明の光循環格子構造は、TM及びTE偏光入射光の一方又は両方の透過を増強し、また、光循環を生じさせるものを含む。図19Aは、ハイブリッドCMに対して最小の透過が生じる波長の直下の波長におけるTE偏光放射に対する循環放射のポインティングベクトル図248を示す。また、図19Bは、最小の透過が生じる波長にちょうど満たない波長におけるTE偏光放射に対する循環放射のポインティングベクトル図250を示し、循環方向にシフトが生じている。これらの光循環モードの更なる詳細については、以下の実施例のセクションの実施例3に与えられている。
【0117】
実施例3において、本発明に従って形成されTE偏光の増強された透過及び光循環用に構成された格子構造の一実施形態230は、周期232毎に二つの溝を有し、第一の溝の幅240はc=0.755マイクロメートルであり、第二の溝の幅242はc=0.735マイクロメートルであり、ε1溝=ε2溝=23である。ワイヤは金である。この構造は、入射光の垂直入射角におけるTEモード用の光循環構造である。
【0118】
実施例3で説明される格子構造の他の実施形態において、ε1溝がε2溝に等しくなく、ε1溝=25及びε2溝=21となるように溝の誘電体を変更する場合、垂直入射角の光に対して、TM偏光の増強された透過及び光循環が生じる。従って、本発明の光循環格子構造は、所定の波長におけるいずれかの所定の偏光状態の光循環用のハイブリッドCM又はπモードを生じさせるように構成可能である。
【0119】
図20を参照すると、光循環格子構造は、垂直ではない入射角において光ウィービング構造260となり得る。
【0120】
“光ウィービング”は、ゼロではない面内運動量(つまり、ワイヤの表面に平行な方向の運動量)を備えた入射電磁放射262が交互の溝264を曲がりくねって通り抜ける際に生じて、光がワイヤに平行に伝わるとワイヤ近傍に光を局在化させる。本発明の光ウィービング格子構造は、光検出器用に又は信号若しくはデータの伝播用に有用なものとなり得る。
【0121】
図21を参照すると、一実施形態において、本発明の光循環格子構造266を含む装置は、継続時間の短いパルス化された入射光信号270(つまり、過渡パルスであって、超高速パルスや、フェムト秒からマイクロ秒未満のオーダの継続時間を有するパルスが挙げられる)に対して使用されるように構成されて、光循環モード268は、光が溝(任意で好ましくは金属膜中のホールである)を介して格子中のワイヤ周辺を連続的に循環するようにさせる。光循環は、励起ビーム270が消滅した後でさえも持続する。その後、循環光を、上面又は下面のいずれかからのプローブビーム272によって格子構造266から放出させることが可能であり、反射されるプローブビームの一部と共に構造266から放射される放出信号ビーム274の制御可能な“停止”及び“放出”がもたらされる。格子構造266は、光ストレージ、メモリ、制御装置構造において使用されるように構成可能である。
【0122】
本発明の図22に示される格子構造の更に他の実施形態においては、本発明のいずれかの格子構造の例えば層282、284、286を組み合わせることが可能であり、基板を備えることも備えないこともでき、スペーサ層288及び290によって分離可能であり、例えば、所望の光循環モードを生じさせることができる。
【0123】
本願で説明される光循環モードを生じさせるように構成及び配置された薄膜(好ましくは金属)のホールアレイも本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0124】
[方法]
本発明のPETS格子構造のいずれかを調整するための方法の一実施形態は、以下の“実施例”のセクションの実施例1において説明されるような周知の表面インピーダンス境界条件(SIBC,surface impedance boundary condition)を利用する結合モードアルゴリズムを適用することを含む。
【0125】
実施例1では垂直入射放射を仮定しているが、本発明の格子構造は、特定の応用及び所望の結果に応じて、所定の入射角における増強された透過用に最適化されたものも含む。
【0126】
様々なパラメータ(ワイヤの組成、溝の物質の屈折率、基板物質、周期性、溝の幅及び高さを含む)は、所望の所定の波長及び所定のバンド幅に対する所望の偏光状態の増強された透過を有する格子構造用にパラメータを最適化するために、実施例1で説明されるように変更可能である。
【0127】
従って、本発明は、光学及び表面プラズモン共鳴効果を有効に用いて、偏光に依存しない増強された光学透過を達成するために、ワイヤ間の間隔、ピッチ及び向きを最適化する方法を含む。これらのパラメータは、本発明による好ましい波長、偏光及び入射角に従って最適化可能である。金属ワイヤによって規定される高さを、透過ピークに対する異なる線幅を達成するために更に最適化可能である。
【0128】
特に、本発明の方法の一実施形態では、近似として、CMが溝に完全に閉じ込められていると仮定する。溝に完全に閉じ込められたCMに対しては、その波長は以下の式(3)によって与えられる:
【数6】

ここで、n及びmは整数であり、
【数7】

は溝74中の誘電体88の屈折率である。
【0129】
CMが溝に完全に閉じ込められていなくとも、式(3)は、導波モードによって生じるCM及びTM偏光VSPによって生じるCMに対して近似的に正しい。更に重要なのは、本発明の格子構造の構造パラメータn、h及びcに対するCMの依存性が式(3)に固有のものであり、TM偏光(“p偏光”とも称される)及びTE偏光(“s偏光”とも称される)に対して許される最低値のmがそれぞれm=0、m=1である。この事実に起因して、最低次のTE偏光CMは、最低エネルギーのp偏光CMよりも高いエネルギーにおいて生じる。h/cの比に応じて、最低エネルギーのTE偏光CMよりも低いエネルギーを備えたTM偏光CMが多数存在し得て、異なる偏光に対する最低次のCM間において望ましくない大きな波長分離が生じる。
【0130】
構造パラメータ(例えば、溝の幅、高さ、溝の誘電率)に対するTE偏光及びTM偏光CMの全ての依存性に対するより完全な説明は、非特許文献2に与えられており、また、以下の実施例のセクションの実施例1にも与えられている。これらの依存性をまとめると、m=0モードが用いられる場合、TM偏光CMは、h及びεに対して強い依存性を有し、cに対して弱い依存性を有する。また、特にΛが、CMの波長に近い値の波長においてウッド・レイリー(Wood‐Rayleigh)異常(WR)又はHSPを生じさせるようなものである場合、TM偏光CMは、Λに対して強い依存性を有し得る。TE偏光CMはh、c及びεに対して強い依存性を有し、Λに対して弱い依存性を有する。これらのCMの基本的な特性及び構造依存性を念頭に置いて、(波長に関して)より低次のTE偏光CM及びTM偏光CMを調整するための方法の一実施形態を以下に与える。
【0131】
本発明の方法及び格子は、溝内に高屈折率(又はhigh‐k)誘電体を使用することを可能にし、これは以下の利点を有する。放射の入射ビームの最高度の透過を0次(“直線状”)透過ビーム内に達成するために、TM及びTE偏光の両方に対する透過増強CMは、1次回折の発現よりも低いエネルギーにおいて生じることが望ましい。
【数8】

の基板(例えば、ガラス、半導体等)の上に配置された本発明の格子構造に対しては、1次回折の発現は、λ1次=Λ/n基板の波長に対して起きる。空気以外の基板、現実的なアスペクト比(溝の高さ/幅)、互いに混み合わないTM偏光CM透過ピークを生じさせるのに十分小さなh(つまり、透過ピークのバンド幅が隣接ピークの波長分離の少なくとも二倍である)に対しては、基板のものと少なくとも同じ大きさの誘電率を有する溝内の物質が、1次回折の発現未満にTE偏光CMのエネルギーを低下させるのに典型的には望ましい。また、高屈折率誘電体(例えば、酸化ハフニウムや五酸化二タンタル等のhigh‐k誘電体)は、TM偏光CMが励起されていない際に、比較的幅の広いTE偏光透過溝(TM偏光透過溝の幅と比較して)を介するTM偏光透過を抑制する。
【0132】
従って、図23を参照すると、周期毎に単一の溝を備えた格子構造に入射するTE偏光及びTM偏光に対するCM生成透過増強ピークを調整及び位置合わせするための本発明の方法の一実施形態300は、以下の一連の段階を含む:
1.増強された透過が望まれる所定の波長よりも小さい波長において1次回折が発現するように格子周期Λを選択する段階302; 格子周期Λは、所定の波長未満になるようにも選択される。
2.以下の関係(上述したような)を用いて、近似的な所望の波長範囲においてTE偏光及びTM偏光CMを得るために、c、h及びεに対して初期値を選択する段階304。hが大きくなるほど、各偏光に対するCMは、より密接な間隔(波長に対して)になる。アスペクト比h/cが大きくなるほど、CMのQ値は高くなる。しかしながら、アスペクト比が大きくなり過ぎると、現実の金属に対して大きな吸収が生じる。重要な点は、TE偏光CMをサポートするのに十分幅広い溝は一般的に、TM偏光CMが励起されていない際においても、TM偏光を相当量透過させ得るという点である。この問題を回避する方法の一つは、以下の二点を行う高屈折率誘電体を用いることである:(1)
【数9】

の倍数で溝の有効幅及び高さを増加する、(2)TM偏光に対するインピーダンスを増加することによって、TM偏光CMが励起されていない際のTM偏光透過を減少させる。
3.所望の波長においてTM偏光CMをサポートするための最適な溝の高さhを得るために、初期値から溝の高さhを変更する段階306。
4.溝の幅cの最適値を得るために、TE偏光CMがTM偏光CMと位置合わせされるまで、初期値から溝の幅cを変更する段階308。この位置合わせは、例えば、図7に示されるように、波長及び溝の幅の関数としてピークTE及びピークTMをプロットすることによって、行うことができる。
【0133】
この方法によって形成される格子構造の一例が以下の実施例のセクションの実施例2に与えられている。
【0134】
本発明の方法に従って決定された最適化パラメータは、サブ波長格子を製造するために当業者に周知の適切な製造方法を用いて、本発明の格子構造を製造するために用いることができる。
【0135】
例えば、紫外、可視、近赤外、中赤外、遠赤外、超遠赤外の所定の波長における放射を増強するように最適化させた格子構造に対して、標準的な微細加工技術が使用可能である。このような製造方法は、熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリングによるワイヤ、溝及び基板物質(金属、酸化物、半導体等)の物理堆積や、化学気相堆積を含むことができる。
【0136】
本発明の格子構造は、湿式化学エッチング及び/又は反応性イオンエッチングや、イオンビームミリングに加えて、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、を用いて、生成可能である。超赤外よりも長い波長領域(テラヘルツ、マイクロ波領域等)において動作する構造に対しては、より安価な製造方法を使用することができ、コンピュータ数値制御(CNC,computer numerical control)微細ミリング機械が挙げられる。
【0137】
[実施例]
[実施例1]
本発明のもののようなラメラ格子の光学特性及び電磁特性を、表面インピーダンス境界条件(SIBC)近似を利用する結合モードアルゴリズムを用いて、本実施例においてモデル化する。この方法は、本願においてその全文が参照として組み込まれる非特許文献3において詳述されているので、ここでは簡単にまとめるだけに留める。図24を参照すると、この方法は、誘電体/金属界面における電場及び磁場の接線成分を関係付ける以下の近似を用いる:
【数10】

ここで、Z=1/n金属であり、n金属は金属の複素屈折率である。この近似は、金属の誘電率が隣接の誘電体よりもはるかに大きい場合に有効である(赤外及び可視スペクトル領域において大部分は正しい)。
【0138】
図24は、計算において用いられる座標系を定める。格子の単一の周期のみが示されている。計算において、上部層は空気であると仮定されている。
【0139】
電磁場は、以下の直交モードの線形結合として表される:
【数11】

ここで、f(x,y)は、TM偏光又はTE偏光がモデル化されているかに応じて、磁場の
【数12】

成分又は電場の
【数13】

成分である。他の電場及び磁場成分は、マックスウェル方程式から導出される関係式を用いて得ることができる。また、α=ksinθ入射+nKであり、K=2π/d、
【数14】

であり、nは整数、dは構造の周期、θ入射は入射角、λは波長、εはi番目の領域の誘電率である。式(A1)及び(A3)において、モード展開において用いられる直交モードは、空気及び基板層中において平面波であり、以下の直交モードΦ(x,y)が溝内において用いられる:
Φ(x,y)=X(x)Y(y) (A5)
(x)=dsin(μx)+cos(μx) (A6)
(y)=aexp(iνy)+bexp(−iνy) (A7)
ここでμ及びνは以下の関係式に従う:
μ+ν=ε (A8)
【0140】
SIBC条件を溝の左側及び右側に適用すると、以下の式が得られる(各々):
【数15】

ここで、cは溝の幅であり、TM偏光に対してη=kεZ/iであり、TE偏光に対してη=k/iZである。上述の方法において最も本質的な段階は、式(A10)の解法である。この方法において、式(A10)のルートは、初期値から開始する積分によって見つかる。ルンゲ・クッタ法を用いて積分を行った。
【0141】
y=h/2及びy=−h/2における金属/誘電体界面におけるSIBC条件及び場の接線成分を一致させる境界条件を適用することによって、以下の式が得られる:
【数16】

ここで、γ空気=ε空気=1、γ=ε、γ基板=ε基板、TM偏光に対してη空気=kZ/i及びη基板=kε基板Z/i、γ空気=γ=γ基板=1、TE偏光に対してη空気=η基板=k/iZ、
【数17】

である。
【0142】
そして、式(A11)及び(A13)にX(x)を掛けて、領域0≦x≦cにわたって積分し、式(A12)及び(A14)に
【数18】

を掛けて、領域0≦x≦dにわたって積分すると、未知係数R、T、a及びbを決定するために用いられる以下の行列方程式が得られる:
MΨ=Ω (A15)
であり、
【数19】

である。ここで、行列φ、β、νは正方行列であり、上述のように定義されたφ、β、νによって与えられる主対角線に沿った非ゼロ成分を有する;G、N、J、Kは以下の成分を有する行列である:
【数20】

【0143】
電磁場展開に用いられたモードの数は大きく、解は収束した。上述の方法を用いて得られた結果は、溝の壁が完全に導電性であると仮定する他の方法を用いてチェックされた。これらの結果は事実上同一の結果をもたらし、SIBC近似を用いたTE偏光の解の収束性がTM偏光の解の収束性より悪くても、計算により正確な方法を用いた際には、TM偏光及びTE偏光の両方に対してのEOTを示す主要な結果は、正しいということを示す。
【0144】
式(A15)を用いて全ての未知係数を求めると、反射率(式A23においてi=空気)、透過率及び回折効率(式A23においてi=基板)を、外側に向かう伝播モードに対するポインティングベクトルの
【数21】

成分及び入射ビームの
【数22】

成分の比として計算することができる(規格化された入射ビーム及び上部層が空気と仮定):
【数23】

ここでΨ外側,nはR又はTのいずれかあり、θ外側,nは外側に向かう伝播モードの角度である。
【0145】
[実施例2]
図5C及び図6を参照すると、周期毎に単一の溝の格子構造58の一実施形態が、25.188GHzの所定の周波数(波長λ=11.91mm)におけるTE偏光及びTM偏光マイクロ波の両方の増強された透過用に製造された。格子構造は、Alコンタクト又はワイヤ(εAl=−10+i・10)、10.3428mmの周期、3.8211mmの溝の幅、6.045mmの厚さ、2.8の溝の誘電率、基板及びスーパーストレートとしての空気を有する。この単純な格子構造に対する実験結果は、本願で提供される数値モデル化アルゴリズム及びCM誘起の増強された透過の概念の正確性を立証することによって、これらのアルゴリズム及び概念を、例えば図22に示されるような周期毎に二つ以上の溝を有するより複雑な格子構造の設計においても用いることを可能にする。
【0146】
二つの数値モデル化法を用いて、それらの結果を比較して一致及び正確性を確かめた。方法の一つは、表面インピーダンス境界条件(SIBC)近似を用い、格子構造の幅広い範囲の光学特性の全てを高速計算することを可能にする。他の方法は、Ansoft社から市販されている有限要素法ソルバHFSS(登録商標)である。CM、HSP、VSP、WR、回折及び他の全ての光学効果は、これらが赤外(IR)及び可視スペクトル領域におけるものであるのでマイクロ波において生じるが、CM及び回折の特徴は、溝の高さ及び幅並びに格子のピッチ又は周期に対応する波長において生じるということには留意されたい。透過率(図25)、全ω‐k反射率及び透過率プロファイル(図26〜図29)、25.188GHzのTM偏光CM及びTE偏光CMのそれぞれの磁場及び電場強度がSIBCアルゴリズムを用いて得られた。垂直入射の透過率及び反射率は、HFSS(登録商標)を用いても得られ(その結果は簡単のため図示していない)、SIBCの結果と一致した。TM偏光CM及びTE偏光CMの特性については、非特許文献1及び非特許文献2においても議論されており、また、図26〜図29に見て取れるように、高い透過率、小さな入射角依存性、TM偏光CM及びWRの相互作用及び反交差(anti−crossing)が挙げられる。
【0147】
製造された装置は、11.91mmの所定の波長におけるTM及びTE偏光放射に同時に結合するキャビティモードを生じさせるように本願に与えられた方法に従って形成された。このようなミリメートルスケールの構造は、ナノスケールのものよりもはるかに安価で直ぐに製造することができ、適切な理論的構成概念のちょうど良い実験的実証を提供することができる。何故ならば、装置の性能に関与するWR及びCMモードの効果及び波長は、装置の寸法に全て一致するからである。例えば、ミリメートルスケールに対する周期的な特徴の場合、理論によって、増強された透過がマイクロ波スペクトル領域において観測されると予測される。IRからマイクロ波スペクトル領域に移ると、反射率及び透過率曲線間の唯一の違いは、マイクロ波における金属はほぼ完全な導体として振る舞うとして、HSP及びCM共鳴に対する僅かに高いエネルギー及び強度である; λ=31μmまでのマイクロ波に対して、及び、λ=31μmからλ=600nmの表形式データ26に対して、用いられるAlの誘電率はεAl=−10+i・10である。更に、可視又はIRにおいて行われる研究とは異なり、用いられる物質の誘電率の変化について心配する必要はない; 本質的に金属は完全に導電性であり、溝を充填する誘電体はこれらの波長において事実上、非分散性である。従って、より長い波長においてこのような原理の証明の研究を行うことは、非常に理にかなった方法である。
【0148】
実験サンプルは、一組の同一の溝(各溝の幅はc=3.82mmであり、Λ=10.34mmの周期で間隔が空けられ、厚さh=6.05mmのアルミニウム合金プレート全体にわたってミリングされて、略400mm×400mmの面積をカバーした)を機械加工することによって構築された。その後、空隙は、混合されて完全に真空排気されるまで真空下に放置されていたエラストマー(ダウコーニング(登録商標)のSylgard(登録商標)184シリコーン封止材)によって慎重に充填された。エラストマーの誘電率の実部はGHzの状況において略2.8である。標準ゲインホーンからの直線偏光マイクロ波放射を球状ミラーを用いてコリメートして、垂直入射でサンプルに当てた。連続波源は、18≦ν≦26.5GHz及び26.5≦ν≦40GHz(つまり、7.5≦λ≦16.7mm)のバンド内の周波数を掃いて(スイープして)、定位置アンテナに供給する。サンプルに当たる前に、入射ビームスポットを有効なサンプル領域に制限するために、入射ビームは広帯域マイクロ波吸収物質のアパーチャを通過した。更に、多数の格子周期に対する透過信号の平均を得るために、透過ビームは、第二のホーンアンテナ及び検出器に集中させられる前に、他の球状ミラーを用いて集められた。この構成において、入射ビーム及び検出ビームの両方の偏光は、各ホーンアンテナの中心軸周りの単純な回転を介して変更可能である。
【0149】
実験の透過率データが図30に示されており、入射偏光及び検出偏光の両方はTM偏光400又はTE偏光402のいずれかに対して設定され、サンプルが存在しない場合のスペクトルに対して規格化されている(それぞれ+と○)。図30に見て取れるように、実験の透過率は、数値モデル化によって得られた理論値404及び406と比較して実質的に減少している。しかしながら、小さな吸収成分(ポリマー及び不純物のデバイ誘電応答に関連する)を、モデル化で用いられるエラストマーの誘電率に含めてしまえば、モデル化曲線408及び410は実験曲線400及び402のそれぞれに非常に良く一致する。従って、実験データをモデル化の結果にフィッティングすることによって、製造された構造が、3.824mmの溝の幅及びε=2.75+i・0.0945の溝に対する誘電率を有するということがわかった。これらの誘電損失の強度は、結晶性粉末を代わりに用いることによって減少させることが可能である。
【0150】
[実施例3]
TM偏光入射光に対する位相共鳴が、周期毎に複数の溝を有する格子(組成、幾何学的形状又は向きが異なる)において生じ得ることが知られている。この種の構造においては、隣接する溝のTM偏光VSP‐CMが結合し得て、強度は等しいがπラジアンだけ位相の異なる場のプロファイルが生成される; このようなモードは、例えば、非特許文献4に記載されているように、πモード又は共鳴と呼ばれている。しかしながら、光循環については、いずれの偏光に対しても、今まで報告されていなかった。
【0151】
TE偏光に対して、金属/誘電体界面に垂直な電場成分は存在せず、従って、SP及びVSP‐CMは励起不可能である。しかしながら、本発明者は、WG‐CMが生じて、レイリー異常と共に、多数の増強された又は異常な光学効果(TM偏光πモードの性質と同様の性質を備えたTE偏光πモードが挙げられる)に関与していることを発見した。本発明によって形成される格子毎に複数の溝の構造の光循環及びウィービング効果が、s偏光及びp偏光入射光の両方に対して生じることを本発明者は発見した。
【0152】
本発明による光循環を誘起するためのハイブリッドCMをサポートするように構成された格子構造を実演するために、図31を参照して、二つの格子構造について議論する。これら二つの格子構造は、TM偏光(本願においてp偏光とも称される)及びTE偏光(本願においてs偏光とも称される)入射光の両方に対して、多数の異常光学特性を示す。第一の格子(格子1と指称する)は、幅c=0.745μm、高さh=1μm、誘電体ε=23、周期Λ=1.75μmの同一の溝を有し、ワイヤ用に金、スーパーストレート及び基板として空気を有する。図32に示されるように、この構造は、s偏光の増強された透過を生じさせる複数のWG‐CMバンドを示す(この構造はp偏光の増強された透過も示す(図示せず))。
【0153】
溝の幅に対して、他の全てのパラメータを変化させずに一つおきの溝がc=0.755μmの幅を有し残りの溝がc=0.735μmの幅を有するように、摂動を与えると、結果としての構造は、図31の周期毎に二つに溝の格子2となる。例えば、非特許文献1に記載されているバンドの折り畳み法を用いて、結果としてのフォトニックバンド及びプラズモンバンドの近似形状を構築することができる。s偏光に対しては、このようなバンドの折り畳みは必要ない。何故ならば、二つの異種の隣接する溝内の二つのWG‐CMが僅かに異なる共鳴周波数を有し、周期毎に単一の溝の格子内の各オリジナルバンドが互いに相互作用する二つのバンドに分裂するようになるという事実によって、WG‐CMバンドは十分に説明されるからである。
【0154】
図33Aは、s偏光WG‐CMが格子毎に単一の溝の構造に対して図32に示されるWG‐CMよりも複雑であることを表す全ω‐kダイアグラムを示し、各CMバンドは、0.24815eVのエネルギーにおいて透過の最小値を生じさせるs偏光πモードによって分離される二つのCMバンドに分裂されている。また、追加の回折モード及びCM/回折相互作用も生じている。
【0155】
s偏光及びp偏光πモードの間には多くの類似点といくつかの重要な相違点が存在する。図33Bのポインティングベクトル図は、p偏光πモードに対する隣接する溝のEの位相のπラジアンの差と同様の隣接する溝のHの位相のπラジアンの差を備えたs偏光πモードを示す。しかしながら、全てのs偏光バンドの分散は、p偏光フォトニックバンドの分散よりもはるかに小さい。他の重要な相違点は、SPが存在しないために、s偏光πモードは結合WG‐CMによって必ず生成されるものである点である。
【0156】
入射ビームは、一つおきの溝内のπラジアン位相がずれた場と直接結合することはできない。この事実により、π共鳴は常に、幅広い透過ピークのショルダー部に位置する。本発明者は、多数の周期毎に二つの溝の格子において、s偏光πモードが、p偏光πモードよりも透過ピークの中心部に近づく傾向にあることを観測した。この性質は、s偏光及びp偏光πモードを作り上げる異なる成分に起因するものである。本発明者は、s偏光πモードの成分は、僅かに異なる共鳴周波数を有する二つの非常に良く似た固有の放射WG‐CMであることを発見した。摂動を備えた交互の溝は、オリジナルWG‐CMバンドを、僅かに非対称なバンドである二つのバンドに単純に分裂させる。何故ならば、π共鳴は依然としてオリジナルWG‐CM透過ピークのショルダー部において生じなければならないからであるが、p偏光πモードのどちらか一方に対する二つの透過ピークよりは典型的により対称である。このより大きな対称性は、πモードによって生じる光循環に影響を与える。
【0157】
パワーフローを調べることによって、本発明者は、πモードによって生じる透過の最小値又はその近傍において、光が、二組の溝を介して高い透過率で透過するが、その後その周りを回り、隣接する溝を介して高い透過率で透過して、反射の最大値をもたらすことを発見した。πモードが、二つの結合s偏光WG‐CMから成るハイブリッドモードであることは明らかである。更に、透過の最小値において、これら二つの透過チャネル(二つの結合CMによって生成される)は、強度が同じであるが、反対に伝播する光の循環を生じさせて、溝内に高い場の強度がもたらされるが、各溝の上向きと下向きのパワーフローの量が等しいので正味ゼロのパワーフローが溝内にもたらされる。
【0158】
図34A及び図34Bはそれぞれ、透過の最小値の波長よりも僅かに小さい及び大きいエネルギーにおけるs偏光に対するポインティングベクトルプロファイルを示す。p偏光πモードであるか又はs偏光πモードであるかに応じて、二つの場合うちの一つが、π共鳴の透過の最小値の両側において生じる。しかしながら、両方の場合において、隣接する溝内の二つの結合CMによって生じる二つの透過チャネル間の競争が含まれる。s偏光に注目すると、より対称的なs偏光π共鳴の透過の最小値(p偏光πモードと比較してより対称的)の両側において、一組の溝に関連する一つの透過チャネルは、他の組の溝に関連する他の透過チャネルよりも弱くなる。従って、入射光に提示される二つの透過チャネルに対して、より多量のパワーは、弱い方の透過チャネル(つまり、他の組の溝)よりも強い方の透過チャネル(つまり、一組の溝)を介して透過する。
【0159】
しかしながら、弱い方の透過チャネルも、基板側に透過してしまった光に対して格子に戻る強力で有効な透過チャネルを提示するのには十分に強いものである。この弱い方の透過チャネルは、考えられる唯一のチャネルである。何故ならば、透過光が、180°曲がって、最初に透過したのと同じ溝を介して戻るということはないからである。このプロセスの最終結果は高い反射率ということになる。エネルギーが透過の最小値から徐々に遠ざかっていくと、弱い方の透過チャネルが強い方の透過チャネルを介して基板に透過した光を再透過させる量は徐々に減り、光循環の減少及び透過率の増大をもたらす。
【0160】
図35を参照すると、垂直ではない入射角について、光が構造を介して前後に曲がりくねって進みながら一方向に正味のパワーフローを有するので、この光循環は、特定の適用される格子パラメータに対して光ウィービングに転じる。周期毎に三つ以上の溝を備えた他の多数の構造は、本発明の範囲内にあり、周期毎に複数の溝の格子の複数の層を備えたものが挙げられ、光は、ますます複雑な方法で金属ワイヤの周りを曲がりくねって進み、循環する。
【0161】
増強されたTM若しくはTE又は同時に増強されたTM及びTE透過用のPETS格子、及び、光循環及びウィービング用に最適化されたものの特定の例を本願において説明したが、当業者は、本願で説明されるようなCMをサポートするように構成された格子構造の設計を最適化するために、多数の周知の方法を用いて、格子構造の一つ以上のパラメータを反復的に変更することができるということを認識されたい。結果として、本発明の範囲には、本願で説明されるような所定の波長においてCMをサポートするように構成されたサブ波長格子構造が含まれ、本願で説明された格子構造を最適化及び調整するための本発明の方法の実施形態に従って形成された格子構造が含まれ、“実施例”のセクションのものが含まれるということを理解されたい。
【0162】
また、本発明は、高効率の偏光及び波長依存構造を生じさせるように薄膜に形成されたサブ波長アパーチャアレイ構造も含み、一以上の所定の波長で入射する偏光された光を透過及び/又は反射する。こうしたユニットセル毎に複数のアパーチャのアレイを、本願で説明される方法に従って構造化することができ、以下の機能を行う: 偏光、波長フィルタリング、光チャネリング、光の局在化、光ウィービング及び循環。
【0163】
図36及び図37を参照すると、本発明のアパーチャアレイ構造418の一実施形態は、薄膜440に厚さ438で形成された繰り返しユニットセル420の二次元の周期的なアレイを含む。ユニットセル420は、三つのアパーチャのベース422を含む。アパーチャ424は、等しい直径d2 434を有する二つのアパーチャ425、426よりも大きな直径d1 432を有する。変位ベクトルv1 428及びv2 430はそれぞれ、大きなアパーチャ424からの二つのアパーチャ425、426のそれぞれの向き及び間隔を表す。ユニットセル420は、図37に示されるように、周期Λ436で繰り返す。アパーチャアレイ構造418は、アパーチャの三つのサブアレイを含むものとしても、便利に特徴付けられる。第一のサブアレイは全てアパーチャ424から形成される。同様に、第二及び第三のサブアレイはそれぞれ、アパーチャ425、426から形成される。サブアレイを形成するアパーチャは互いに同一であり、サブアレイを形成するアパーチャが同一の誘電体で充填可能であると、組成において同一である。アパーチャを充填する誘電体は、1以上で好ましくは40以下の誘電率を有し得る。
【0164】
本発明の高効率偏光ビームスプリッタは、基板上に堆積させたアパーチャアレイ構造418を含み、その基板は、本願で説明される適切な基板の単一層又は複数層を含み得る。一つ以上の所定の波長で動作可能なビームスプリッタを形成するように、各ユニットセル420のアパーチャは、寸法決め及び位置決めされて、アレイ構造418の周期が選択される。フィルタリング可能な波長の数は、一つのユニットセル420内のアパーチャの数並びに相対的な向き及び寸法に依存する。更に、アパーチャの形状を調節することによって、透過又は反射用に異なる偏光状態を選択することができる。これが、多数の異なる応用に対して有用なサブ波長アパーチャアレイ構造の性質である。
【0165】
従って、本発明のアパーチャアレイ構造は、波長フィルタとして、且つ、以下のいずれか一つ又は組み合わせとして構成可能である:横電場パス偏光子(吸収性偏光子又はビームスプリッティング偏光子のいずれか); 横磁場パス偏光子(吸収性偏光子又はビームスプリッティング偏光子のいずれか); 強度検出器; 個々の波長、複数の波長又は波長範囲用の位相検出器。
【0166】
同様に、波長及び/又は偏光感知光検出器が、本発明のアパーチャアレイ構造418の実施形態を含むことができる。光検出器は、単一又は複数の波長フィルタリング及び偏光の選択が可能である。アレイ構造のユニットセルの構成及び周期の選択が、検出される波長及び偏光状態を決める。ユニットセル内の同一の寸法、形状及び誘電体組成のアパーチャは、同一ユニットセル内の異なる形状又は組成のアパーチャを透過するものとは異なる波長及び/又は偏光を透過させることができる。
【0167】
本発明者は、ユニットセル内の少なくとも一つのアパーチャが、ユニットセル内の他のものと十分に異なるが、各アパーチャに関連するCM間に生じる相関相互作用を防止するには十分でない場合に、ユニットセル毎に二つ以上のアパーチャを有するアパーチャアレイ構造において、光循環が生じ、増強された透過が維持されるという予測されない結果を発見した。
【0168】
励起及び結合CMによる光循環は、従来技術においてはどのような周期構造に対しても示されていない。本発明者は、アパーチャアレイ内のCMがアパーチャ内のVSP又は導波モードによって生じることを発見した。更に、所定の入射角、波長及び偏光の入射光が、励起CMによって一組の同一のアパーチャ(第一のサブアレイ)を透過し、次に、第一の組のアパーチャとは異なるように適切に成形、位置決め、又は構成された同一のアパーチャの適切に構成された第二の組(第二のサブアレイ)を再透過して、本願で説明される方法による所定の波長、偏光及び入射角の光に対する高い正味の反射性をもたらすことができることを発見した。また、再透過光の一部を、第一のサブアレイアパーチャを介して方向転換させることもできる。また、同一のアパーチャアレイ構造が、適切に選択された入射角において光ウィービングを示すこともでき、上述のように、特に、光検出器用、及び、信号又はデータの伝播用に有用である。
【0169】
一つのサブアレイのアパーチャの以下のパラメータのうち一つ以上が、アパーチャアレイ構造の他のサブアレイのものとは異なり得る:寸法、アパーチャを充填する物質の誘電率、アパーチャの高さ(薄膜の厚さ)、形状、向き。また、本発明による励起CMモードの結合に影響を与えるように変更可能な他のパラメータも、本発明の範囲内にあるものと考慮される。
【0170】
サブアレイを形成するアパーチャは、適切な形状のものであり得て、円形、楕円形、正方形、ボウタイ型、八の字型が挙げられる。
【0171】
本発明のアパーチャアレイ構造の一つの繰り返しユニットセル内の各アパーチャの寸法は、好ましくは、アパーチャアレイ構造の周期Λの少なくとも0.25%である。アパーチャの累積的な寸法は95%もの高さになり得る。寸法は、円形アパーチャの直径、矩形の長さ及び幅、楕円の長軸及び短軸等を称する。
【0172】
アパーチャの高さ438、又はアパーチャを取り囲む薄膜の厚さは、周期Λの0.05%〜1000%になり得る。
【0173】
変位ベクトルの大きさ、ユニットセル内の隣接する二つのアパーチャ間の距離は、増強された光学透過又は光循環が望まれる最小の波長の1%から増強された光学透過が望まれる最大の波長の95%の範囲内にあり得る。
【0174】
アパーチャアレイ構造の周期Λは、1mm〜400mmのオーダであり、また、入射放射の波長のオーダ又はそれ未満であり、動作波長は1mm〜400mmの範囲内にある。
【0175】
結果物のアパーチャアレイにおいて共鳴キャビティモードの生じる波長が、所定の動作波長レジメのいずれかの部分に集中するような適切な因子によって、アレイの寸法が決められ得るということを当業者は認識されたい:例えば、周期Λは、1nm〜400nmの電磁スペクトルの深紫外及び紫外領域等における動作に対して1nmから400nmのオーダである。
【0176】
本発明のアパーチャアレイ構造の薄膜は、好ましくは金属であり、例えば、金、銀、アルミニウム、銅、プラチナ、タングステン、チタン、ハフニウム、タンタル、ランタン、鉛、錫、鉄、これらの金属の合金のうち一以上である。
【0177】
本発明のアパーチャアレイ構造は適切な基板上に配置され得て、その適切な基板は、シリコン(多結晶又はアモルファスも含む)、ゲルマニウム、シリカ、溶融シリカ、二酸化シリコン、石英、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、ヒ化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウムインジウム、ヒ化ガリウムアルミニウム、アンチモン化インジウム、テルル化水銀カドミウム、テルル化水銀、テルル化サファイアカドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、ガラス、エラストマー、ポリマー、結晶性粉末、又は他の適切な誘電体、酸化物若しくは半導体を含む。
【0178】
サブアレイ中のアパーチャを充填する誘電体は、適切な物質を含み得て(または空気以外にはなにもない)、シリカ、酸化シリコン、二酸化シリコン、多結晶シリコン、酸化ハフニウム、本願において基板及び薄膜物質として挙げられたものを含む他の適切な物質、又はこれらの合金が挙げられる。
【0179】
また、本発明のアパーチャアレイ構造は、その上にパッシベーション又は保護層も含み得る。保護層は、ポリマー、プラスチック、酸化物、ガラスのうち一つ以上を含む適切な物質を含み得る。
【0180】
図38を参照すると、所謂アパーチャアレイ“超構造(superstructure)”450は、本発明の同一又は異なるアパーチャアレイ(例えば452、454、456)を幾つでも層状にすることによって形成され得る。このような超構造は、例えば別々の偏光状態及び複数の波長の増強された光学透過及び光循環を達成するためにアパーチャアレイ構造の複数の層を備えて構成可能であることには留意されたい。複数の波長又は特定の波長に対するあらゆる偏光又は特定の偏光の光は、増強された透過、光のチャネリング、光の循環及び光の局在化を経ることができる。
【0181】
層状構造452、454、456は、互いに相対的な向きにされ得る。層状構造は、空気、パターン化又はパターン化されていないスペーサ層458及び460の組み合わせによって分離され得て、所定の波長、偏光状態及び入射角における光の循環、光のチャネリング、又は増強された透過を生じさせるのに適した誘電体を備え得る。誘電体は、結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウム、ヒ化ガリウムアルミニウム、リン化インジウム、アンチモン化インジウム、リン化アンチモン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウムインジウム、シリカ、ボロシリケートガラス、テルル化水銀カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、又は他の半導体、酸化物、ポリマー若しくはプラスチック物質を含み得る。
【0182】
本願で議論されているように、本発明に従って形成される構造は、一つの所定の波長及び/又は偏光における入射光を一つのアパーチャサブアレイ(又は格子)内に優先的にチャネリングさせて(導いて)、他の所定の波長における入射光を第二のアパーチャサブアレイ内に優先的にチャネリングさせるように構成可能である。この波長及び/又は偏光の空間的分離及び局在化集中は、焦点面アレイや、波長範囲による入射放射の効率的な分離から恩恵を受ける他の応用等の応用に対して特に有用であることを認識されたい。
【0183】
図39を参照すると、低コスト太陽電池装置500が、本発明に従って形成される。太陽電池装置500は、個々の太陽電池が形成されるアパーチャ又はコラム状キャビティのアレイを含む。アパーチャは、繰り返しユニットセルとして構造化されて、各ユニットセル510は四つの異なるアパーチャを有する。従って、四つの異なるアパーチャサブアレイが形成される。アパーチャアレイは、表面プラズモン又は光学キャビティモードを励起して、第一の波長バンドの偏光されていない入射光を(第一のサブアレイの)第一のアパーチャ512内に、第二の波長バンドのものを(第二のサブアレイの)第二のアパーチャ514内に、第三の波長バンドのものを(第三のサブアレイの)第三のアパーチャ516内に、第四の波長バンドのものを(第四のサブアレイの)第四のアパーチャ内に優先的にチャネリングさせるように本願で説明される方法に従って、構造化される。好ましくは、異なる複数の波長バンドは、略250nmから2500nmの全てをカバーする。
【0184】
各サブアレイによってサポートされる波長バンドに応じて、各サブアレイのアパーチャ内の太陽電池は、その同一の波長バンド内の太陽光放射を効率的に吸収する物質から構成された従来の単一接合太陽電池である。
【0185】
太陽電池は適切な物質から構成され得て、シリコン(p型、n型、真性)、III‐V族半導体及びそれらの合金(つまり、三元及び四元化合物III‐V族半導体)、II‐VI半導体及びそれらの合金(つまり、三元及び四元化合物II‐VI族半導体)や、他の物質が挙げられる。
【0186】
本発明の太陽電池装置は、従来技術のタンデム型太陽電池のように垂直に積層されるよりはむしろ、単一の層にわたって水平に分布する複数の異なる単一接合太陽電池を備える。本装置の顕著な利点の一つは、半導体太陽電池の組を製造するのに化学浴堆積法等の電気化学的堆積法を使用することができる点である。こうした電気化学法は、分子ビームエピタキシー、有機金属化学気相堆積等の他の製造方法よりも実質的に安価であり得る。
【0187】
図39を再び参照すると、一つのユニットセル510は、本願においてコラム状キャビティと指称される四つの異なるアパーチャ512、514、516及び518を含み、その中に太陽電池が配置される。キャビティは、金属膜に形成されて、50ナノメートルから5マイクロメートルの深さ(膜の厚さ)を有する。
【0188】
キャビティを取り囲む金属のコラム520は好ましくは、オープンスペース又は充填されたスペース560によって互いに分離される。金属コラムは、適切な導電体を含み得て、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、タングステン、錫又は鉛が挙げられる。
【0189】
各コラムは、50ナノメートルから100センチメートルの断面長さ、及び50ナノメートルから10マイクロメートルの幅を有する。
【0190】
太陽電池を含むキャビティのアレイ全体は、基板530の上に配置され得る。基板は、リジッドな又はフレキシブルな物質であり得て、例えばガラス、石英、溶融シリカ、シリコン、プラスチック、他のポリマー物質、他の物質である。基板は50ナノメートルから10センチメートルの厚さを有し得る。
【0191】
各キャビティは、異なる目的(接着の促進、電気的接触を含む)を果たす一つ以上の層540の上にも配置可能である。例えば、このような層を、接着促進体、電気コンタクトとして追加して、構造中の物質の有害な反応や混合を排除し得て、又は他の目的で追加し得る。その層は、0.1ナノメートルから1センチメートルの間の厚さのものであり得て、プラチナ、チタン、タンタル、アルミニウム、クロム、二酸化シリコン、多結晶シリコン、窒化シリコン、銅、又は他の導電体や絶縁体で構成され得る。
【0192】
アパーチャを画定するコラム状キャビティ512、514、516、518は、適切な形状のものであり得て、シリンダー状、楕円状、矩形、正方形が挙げられ、特定の波長範囲内において透過のチャネリング及び増強用に構成され得る。
【0193】
キャビティは、50ナノメートルから5マイクロメートルの範囲の幅(つまり、シリンダー状キャビティの場合の直径、楕円状キャビティの場合の長軸及び短軸、矩形又は正方形のキャビティの場合の幅、溝の場合の幅)を有する。キャビティの寸法は、キャビティの壁上に表面プラズモンを生じさせるように、又は別の領域からキャビティ内に(特定の波長バンドの)光を吸い出す光渦として機能するキャビティ内の光学キャビティモードを生じさせるように選択される。この効果を生じさせるのに表面プラズモン又は光学キャビティモードが使用されるのか、キャビティ内の物質、キャビティのベースの物質に応じて、本願で説明される方法に従って、寸法は変化し得る。例えば、シリンダー状キャビティの半径及び深さの両方が、50ナノメートルから5マイクロメートルの範囲内にあり得る。
【0194】
他の実施形態では、本発明の太陽電池装置は、本願で説明されるような格子構造を備えて構成され得て、その溝が、適切な波長感知物質で構成された太陽電池で充填されている。
【0195】
図40を参照すると、一つの太陽電池の単一の吸収性キャビティ570は、下部電気コンタクト580、吸収性半導体590、ウィンドウ半導体610及び第二の電気コンタクト611で構成されている。
【0196】
金属、絶縁体、ポリマー、又は他の物質の追加の層612を、多様な目的に対してキャビティの壁の上に配置することができる。例えば、酸化物、ポリマー、金属、絶縁体、又は他の物質の層が、キャビティの壁の上に、全体的に又は部分的に存在して、電気絶縁、電気化学的堆積用の化学的前駆体を含む多様な目的を果たし、キャビティモードのサポートに役立つ導電性を提供し、又は他の目的を果たす。層は、0.1ナノメートルから5マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0197】
キャビティ及び表面プラズモンモードの結合によって誘起される光のチャネリング又は渦効果は、吸収性ウェルにおける強い光の集中を生じさせて、別々の波長バンドの光の30%〜100%が、小体積の太陽電池物質内にチャネリングされて吸収される結果となり得る。
【0198】
図41は、図40のコラム状キャビティ内に全ての光が集中するように調整されている光学キャビティモード613のポインティングベクトル図である。矢印がポインティングベクトル614である。また、等高線図616は、キャビティ内の電場分布を示す。これらは、如何にして光が太陽電池内にチャネリングされて吸収されるのかを示す。
【0199】
添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、他の多数の変更及び修正も、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、当業者によって達成可能であるということは理解されたい。
【符号の説明】
【0200】
10 格子構造
12 金属コンタクト
14 溝
16 入射電磁場
18 透過放射
20 PETS格子
22 格子構造
24 溝
26 溝の幅
28 ワイヤ
30 溝の高さ
32 中心間周期
418 アパーチャアレイ構造
420 繰り返しユニットセル
422 アパーチャのベース
424 第一のサブアレイのアパーチャ
425 第二のサブアレイのアパーチャ
426 第三のサブアレイのアパーチャ
428、430 変位ベクトル
436 周期Λ
438 薄膜の厚さ
440 薄膜
444 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置であって、
薄膜中のアパーチャのアレイを備えた構造を備え、前記構造が、前記所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されていて、また、前記構造が、前記所定の波長における透過した所定の偏光状態の光循環又はウィービングを誘起するように構成されていて、
前記アパーチャのアレイが、前記所定の波長以下の周期で配置されている、装置。
【請求項2】
前記薄膜が金属薄膜を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記薄膜が、アルミニウム、銀、金、銅、タングステンのうち一つを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記構造が基板の上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記基板が、シリカ、シリコン、二酸化シリコン、Ge、GaAs、InP、InAs、AlAs、GaN、InN、GaInN、GaAlAs、InSb、溶融シリカ、サファイア、石英、ガラス、BK7のうち少なくとも一つを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置を備えた光ストレージ装置。
【請求項7】
前記アパーチャが、1よりも大きな誘電率を有する誘電体で充填されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置であって、
薄膜中のアパーチャアレイを備えた構造を備え、前記構造が、第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを含む二つ以上のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを備え、前記第一のアパーチャのパラメータが前記第二のアパーチャのパラメータと異なり、前記ユニットセルが、前記所定の波長のオーダ又は前記所定の波長未満の周期で繰り返していて、
前記構造が、前記所定の波長における所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている、装置。
【請求項9】
前記第二のアパーチャのパラメータとは異なる前記第一のアパーチャのパラメータが、寸法、高さ、前記アパーチャを充填する物質の誘電率、形状、向きのうち少なくとも一つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
各繰り返しユニットセルの第一のアパーチャが、1よりも大きな誘電率を有する誘電体で充填されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記誘電率が40未満である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各繰り返しユニットセルの第一のアパーチャが、シリカ、酸化シリコン、二酸化シリコン、多結晶シリコン、酸化ハフニウムのうち一つで充填されている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記構造が基板の上に配置されていて、前記基板が、シリコン、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、ゲルマニウム、シリカ、溶融シリカ、二酸化シリコン、石英、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、ヒ化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウムインジウム、ヒ化ガリウムアルミニウム、アンチモン化インジウム、テルル化水銀カドミウム、テルル化水銀、テルル化サファイアカドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、ガラス、エラストマー、ポリマー、結晶性粉末、他の適切な誘電体、酸化物、半導体のうち少なくとも一つを備えている、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
偏光ビームスプリッタとして使用されるように構成されている請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記所定の波長及び第二の所定の波長に対する偏光ビームスプリッタとして使用されるように構成されていて、前記第一のアパーチャが、前記所定の波長における光を優先的に透過させるように前記ユニットセル内に寸法決め及び位置決めされていて、前記第二のアパーチャが、前記第二の所定の波長における光を優先的に透過させるように前記ユニットセル内に寸法決め及び位置決めされている、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
請求項12に記載の装置を備えた波長及び偏光感知光検出器。
【請求項17】
前記構造が、前記所定の波長における透過した所定の偏光状態の光循環又はウィービングを誘起するためのキャビティモードを優先的にサポートするように更に構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項18】
前記第一のアパーチャ及び前記第二のアパーチャのうち少なくとも一方の形状が、円形、楕円形、正方形、ボウタイ型、八の字型のうち一つである、請求項8に記載の装置。
【請求項19】
前記第一のアパーチャ及び前記第二のアパーチャのうち少なくとも一方の寸法が、前記アパーチャアレイの周期の少なくとも0.25%である、請求項8に記載の装置。
【請求項20】
前記第一のアパーチャ及び前記第二のアパーチャのうち少なくとも一方の高さが、前記周期の0.05%以上であり、且つ、前記周期の1000%未満である、請求項8に記載の装置。
【請求項21】
前記薄膜が、金、銀、アルミニウム。銅、プラチナ、タングステン、チタン、ハフニウム、タンタル、ランタン、鉛、錫、鉄、これらの金属の合金のうち少なくとも一つを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項22】
前記構造の上に配置されたパッシベーション層を更に備えた請求項8に記載の装置。
【請求項23】
前記パッシベーション層が、ポリマー、プラスチック、酸化物、ガラスのうち一つ以上を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記所定の波長を含む波長範囲の透過を増強するように更に構成されていて、前記ユニットセルが、前記第一のアパーチャと前記第二のアパーチャとの間の距離を含み、前記距離が、前記波長範囲の最短の波長の1%から前記波長範囲の最長の波長の95%までの間である、請求項8に記載の装置。
【請求項25】
第一の所定の波長及び第二の所定の波長における入射電磁放射の透過を増強するための装置であって、
第一の薄膜中の第一のアパーチャアレイを備えた第一の構造と、
第二の薄膜中の第二のアパーチャアレイを備えた第二の構造と、
前記第一の構造と前記第二の構造との間に配置されたスペーサ層とを備え、
前記第一の構造が、第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを含む二つ以上のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを備え、前記第一のアパーチャのパラメータが、前記第二のアパーチャのパラメータと異なり、前記ユニットセルが、前記第一の所定の波長のオーダ又は前記第一の所定の波長未満の第一の周期で繰り返していて、
前記第一の構造が、前記第一の所定の波長における第一の所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されていて、
前記第二の構造が、第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを含む二つ以上のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを備え、前記第一のアパーチャのパラメータが、前記第二のアパーチャのパラメータと異なり、前記ユニットセルが、前記第二の所定の波長のオーダ又は前記第二の所定の波長未満の第二の周期で繰り返していて、
前記第二の構造が、前記第二の所定の波長における第二の所定の偏光状態に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートするように構成されている、装置。
【請求項26】
前記スペーサ層が、半導体、酸化物、ポリマー、プラスチック物質のうち少なくとも一つを備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記半導体が、結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウム、ヒ化ガリウムアルミニウム、リン化インジウム、アンチモン化インジウム、リン化アンチモン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウムインジウム、シリカ、ボロシリケートガラス、テルル化水銀カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウムのうち少なくとも一つを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記第一の構造、前記第二の構造及び前記スペーサ層が、少なくとも一つの所定の入射角に対して、前記第一及び第二の所定の波長、前記第一及び第二の所定の偏光状態における光の循環、ウィービング又はチャネリングを誘起するように更に構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
少なくとも第一及び第二の所定の波長バンド内における入射電磁放射の透過を増強し、前記第一及び第二の所定の波長バンドに応じて前記入射電磁放射を空間的に分離するための装置であって、
薄膜内にアパーチャアレイを備えた構造を備え、前記構造が、少なくとも第一のアパーチャ及び第二のアパーチャを有する繰り返しユニットセルを備え、前記第一のアパーチャのパラメータが前記第二のアパーチャのパラメータと異なり、前記ユニットセルが、少なくとも前記第一及び第二の所定の波長バンドのオーダ又は前記第一及び第二の所定の波長バンド未満の周期で繰り返していて、
前記構造が、前記第一の所定の波長バンド内における入射電磁放射に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートし、前記第一の所定の波長バンド内の入射電磁放射を前記第一のアパーチャ内に優先的にチャネリングするように構成されていて、
前記構造が、前記第二の所定の波長バンド内における入射電磁放射に結合し透過を増強するためのキャビティモードを優先的にサポートし、前記第二の所定の波長バンド内の入射電磁放射を前記第二のアパーチャ内に優先的にチャネリングするように構成されている、装置。
【請求項30】
太陽電池装置として使用されるように構成されていて、前記薄膜が導電性薄膜であり、前記第一のアパーチャが、前記第一の所定の波長バンド内の入射電磁放射を効率的に吸収する第一の半導体で充填されていて、前記第二のアパーチャが、前記第二の所定の波長バンド内の入射電磁放射を効率的に吸収する第二の半導体で充填されている、請求項29に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公表番号】特表2011−509418(P2011−509418A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538106(P2010−538106)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/086149
【国際公開番号】WO2009/076395
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【Fターム(参考)】