説明

物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法、特定システム及び特定プログラム

【課題】流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設において実用的な時間で遮断範囲を特定する方法、システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】流路網又は通信網を画面上に表示する工程;指定された起点を流路網又は通信網に関連付けて記録する工程;起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定する工程;特定された遮断器を閉じることにより形成される、起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定する工程;流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録する工程;及び第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定する工程を含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道施設の水道管路等の物質供給施設における流路又は電話施設の通信網などの通信施設の工事等のために流路又はケーブルの遮断を行う場合において、その遮断範囲を特定する方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道施設等の供給施設や通信施設において、事故や工事等により一部の流路を遮断させる場合がある。このような遮断範囲の発生は極力控えたく、やむを得ず遮断する場合でも、その影響範囲(実際に遮断する範囲)を最小にするための努力が求められる。また、遮断範囲を正確にかつ迅速に特定することが求められる。したがって、例えば水道施設管理のための情報システム(GIS(地理情報システム)等を活用した施設情報データベース)では、迅速に断水範囲を特定するための仕組み(断水検索機能)が必須となっている。
【0003】
この断水検索機能は、一般に次のような工程により断水範囲を特定するものである。
(a)水道の管路網を画面上に表示する工程;
(b)指定された起点を管路網に関連付けて記録する工程;
(c)指定された起点を遮断状態とするために操作が必要となる管路網上の仕切弁(遮断器)を特定する工程;
(d)特定された遮断器を閉じることにより形成される、指定された起点を含んだ管路網上の閉範囲を遮断範囲として特定する工程。
【0004】
ところで、断水範囲は(d)工程において特定される範囲だけでなくその外部にも形成される場合がある。しかし、従来の断水検索においては、外部に形成される断水範囲を正確にかつ実用的な時間内で特定することは実質的に困難であった(当該従来技術に関する先行技術文献は特に見当たらない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設において実用的な時間で遮断範囲を正確に特定することができる方法、システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題に対応すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見が得られた。即ち、従来の水道施設管理のための情報システムで、閉じられる仕切弁に囲まれた閉範囲の外部の断水範囲を特定しようとする場合、上記(c)工程で特定された仕切弁から浄水場や配水池等の水供給のための最上流ポイントまでの経路を探索し、断水範囲の外部の水道管路網と最上流ポイントとの接続を確認し、この確認方法により最上流ポイントへの接続が確認できない外部の水道管路網を断水範囲として特定する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、このような確認方法においては、探索対象が複雑かつ多岐に分岐した流路網又は通信網の場合には、探索すべき経路が膨大となり、現在の一般的なPC(パーソナルコンピュータ)環境では、ハードウェアの性能や基本ソフトウェアの制約等により、実用的な時間で結果を取得できない。
【0008】
そこで、このような状況を解決するための工夫として、データ処理環境を高度化(例えば並列コンピューティング等の活用)することや、断水検索に最適化された探索用データベースを活用することが考えられる。このような工夫は、水道施設管理のための情報システムを、その基本的な部分から利用者が独自に構築する場合には、当該システムの一機能として盛り込むことも可能であると考えられる。
【0009】
しかしながら、現実的には、経済性、情報技術動向などに応じて、利用者は様々な既製品を組み合わせて調整することにより水道施設管理のための情報システムを実現している状況にあることから、前記のような専門特化した工夫は盛り込み難く、また、盛り込むことが可能であるとしても開発・運用コストの点で過剰な投資となり得る。
【0010】
そこで、例えば上記のような水道施設の場合では、浄水場、配水池等の水供給のための最上流ポイントの手前(下流側)において、それら最上流ポイントからの水の供給(給水)が保証されるものと認識される施設を、「絶対給水可能施設」に指定し、その「絶対給水可能施設」よりも上流については経路探索を不要とすることにより、探索の必要な経路数が激減し、実用的な時間で断水範囲を正確に特定できることを見出した。なお、この知見は水道施設以外にも適用できるものである。即ち、電話、電気、ガス、その他の流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲を特定する場合においても適用できる。
【0011】
即ち本発明は、以下の遮断範囲の特定方法、特定システム及び特定プログラムを提供するものである。
【0012】
[1]流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法であって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示する工程;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録する工程;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定する工程;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定する工程;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録する工程;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定する工程を含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法。
【0013】
[2]物質又は信号の供給を遮断している施設として指定された流路遮断施設を記録する工程を更に含み、前記(F)工程において、前記流路遮断施設より先の探索を中止する[1]に記載の物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法。
【0014】
[3]前記物質供給又は通信施設が水道施設である[1]又は[2]に記載の断水範囲の特定方法。
【0015】
[4]前記絶対供給可能施設として、任意の管径の管路を記録する[3]に記載の断水範囲の特定方法。
【0016】
[5]流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定システムであって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示する手段;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録する手段;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定する手段;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定する手段;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録する手段;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定する手段を含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定システム。
【0017】
[6]流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定プログラムであって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示するステップ;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録するステップ;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定するステップ;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定するステップ;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録するステップ;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定するステップを含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定プログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、遮断範囲を特定するに当たって、「絶対供給可能施設」という新たな概念を定義することにより、流路網又は通信網の最上流ポイントまでの経路探索を行う必要がなくなり、探索すべき経路を激減させることができる。したがって、本発明の方法を、施設管理のための情報システムの一機能(遮断検索機能)としてコンピュータ上で実施するような場合においても、遮断検索に特化した利用環境を必要とせず、現在の一般的なPC環境でも実用的な時間で結果を取得することができ、従来、実質的に不可能であった一般的なPC環境での遮断範囲の正確な検索を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の遮断範囲の特定方法、特定システム及び特定プログラムを水道施設における断水範囲の特定方法等を例にとり、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(A)工程又はステップ:
まず、図2に示すように、地理情報に関連付けて記録されている流路網又は通信網を画面上に表示する。水道施設の場合には、水道GISと呼ばれるシステムにより図2に示すように、地図データと地図上の水道管路を表示することができる。即ち、地理情報データに基づいて地図が表示され、水道施設データに基づいて管路網や仕切弁3(遮断器)等が地図上に表示される。従って、地理情報に関連付けて記録されている水道管路網を画面上に表示する手段としては、地理情報データ、管路網や仕切弁(遮断器)などを含む水道施設データ及びこれらを関連付けて表示させるGISが挙げられる(以下、これらを総称して水道GISという)。
【0021】
(B)工程又はステップ:
次に、指定された起点を管路網(流路網又は通信網)に関連付けて記録する。工事等のため断水状態としたい箇所を、図1の概念図に示すように、断水範囲(遮断範囲)特定のための起点1として水道管路網2上に指定(位置指定)すると、この起点1が水道管路網2に関連付けて記録される。そして、以降の工程においては、この起点1に基づいて断水範囲の特定がなされて行く。通常、この起点1となるのは、管路の破損等により工事が必要となった箇所などである。起点を記録する手段としては、マウスなどの画面上の位置を指定する手段とGISに通常付属する一般的な記録手段が挙げられる。
【0022】
(C)工程又はステップ:
次に、指定された起点1を断水状態(遮断状態)とするために操作が必要となる水道管路網2上の仕切弁(遮断器)を特定する。起点1を断水状態とするために操作が必要となる水道管路網2上の仕切弁とは、それらの仕切弁を操作して閉じた状態としたとき、起点1を含んだ水道管路網2上の閉範囲が形成されるような仕切弁であり、図1の例では、仕切弁3a、3b、3cがそれに該当する。
【0023】
仕切弁の具体的な特定方法としては、起点1から、当該起点1に通じる管路をそれぞれ遡って探索し、各管路上で起点1から最も近い位置にある仕切弁を見つけ出せばよい。仕切弁の特定は、地図上に水道管路網と仕切弁の位置が登録された水道GISの一般的な探索機能を利用することにより行うことができる。なお、それら見つけ出した仕切弁の中に、錆、腐食等により操作不可能な仕切弁が有った場合には、更にその弁の位置から上流側に遡って他の操作可能な仕切弁を見つけ出し、その仕切弁を前記操作不可能な仕切弁に代えて操作が必要な仕切弁とする。この場合は、操作不可能な仕切弁を、あらかじめ又はその都度特定し記録しておくことにより、操作不可能な仕切弁を無視して探索を継続させることができる。特定手段としては、上述のようにGISに通常付属する一般的な探索手段が挙げられる。
【0024】
(D)工程又はステップ:
次に、特定された仕切弁3a、3b、3cを閉じることにより形成される、起点1を含んだ水道管路網2上の閉管路網(閉範囲)を第1の断水範囲11(第1の遮断範囲)として特定する。この閉範囲である断水範囲11は、仕切弁3a、3b、3cを閉状態とすることにより、外部からの給水が遮断されるため、確実に断水状態となる。ここでの特定手段もGISに通常付属する一般的な探索手段が挙げられる。
【0025】
(E)工程又はステップ:
(E)工程又はステップは水供給のための最上流ポイント4a、4b、4cからの給水が保証されるものと認識される施設として指定される絶対給水可能施設5a、5b、5c(絶対供給可能施設)を記録する工程である。上記(A)〜(D)の工程又はステップは一連の工程又はステップとして行われるが、(E)工程又はステップは、後述する(F)工程又はステップの前であればどの段階で行われてもよい。供給のための最上流ポイントとは、具体的には、水道施設の場合、浄水場や配水池などを指す。絶対給水可能施設5a、5b、5cには、この最上流ポイント4a、4b、4cの下流側に存在し、一般的に給水が保証されるものと認識される施設が選ばれる。
【0026】
この絶対給水可能施設は、本発明に係る方法等の利用者(水道事業体等)が、経験工学的な基準に基づいた判断により任意に選定することができる。絶対給水可能施設の具体例としては、最上流ポイントに通じている任意の管径の管路を例示することができ、管径150mm以上の管路の中から任意の管径の管路を指定することが好ましい。通常、このような大管径の管路は、少々の地震等では破損しない程度に頑強に造られているので、余程のことがない限りは最上流ポイントとの接続状態が絶たれることは無いと考えられ、絶対給水可能施設として好適である。一般に、水道事業体等が運営する水道施設管理のための情報システムにおいては、当該水道事業体等が管理する地域の水道管路網に使用されている管路の情報(管径、管の種類等)等をデーターベースに登録しているので、そのデータベースを活用すれば、前記のような管路を容易に見つけ出し、絶対給水可能施設に指定することができる。
【0027】
なお、絶対給水可能施設に指定可能な施設は前記のような大管径の管路に限られるものではなく、その他にも、本発明に係る方法等の利用者が管理する地域の流路網又は通信網上に絶対供給可能施設となり得るような施設があれば、予めその情報をデータベースに記録しておくことができる。ここでの記録もGISに通常付属する一般的な記録手段を用いることができる。
【0028】
(F)工程又はステップ:
この工程又はステップは、(D)工程又はステップで特定された第1の断水範囲11の外部の水道管路網を探索し、(E)工程又はステップで指定された絶対給水可能施設5a、5b、5cへの接続が無い水道管路網を検出して第2の断水範囲(第2の遮断範囲)を特定する工程又はステップである。具体的には、(C)工程又はステップで特定された仕切弁3a、3b、3cから管路を遡って探索し、絶対給水可能施設5a、5b、5cとの接続の有無を調べる。図1の例では、まず、仕切弁3bから管路の末端部6までの水道管路網12が絶対給水可能施設5a、5b、5cに接続されていないものとして本工程又はステップで検出され、第2の断水範囲として特定される。また、仕切弁3cから流路を遡った位置には、閉状態となっている別の仕切弁7が存在しており、この仕切弁7によって、仕切弁3cから仕切弁7までの水道管路網13も絶対給水可能施設5cへの接続が絶たれているため、この水道管路網も絶対給水可能施設に接続されていないものとして本工程又はステップで検出され、第2の断水範囲として特定される。第2の断水範囲の特定も絶対給水可能施設が指定され記録されていれば上述の第1の断水範囲の特定と同様の手段を用いて容易に行うことができる。
【0029】
このようにして(D)工程又はステップで特定された第1の断水範囲11に追加して、水道管路網12及び13が第2の断水範囲として特定され、これにより完全な断水範囲を正確に特定することができる。
【0030】
以上のように、本発明の断水範囲の特定方法においては、完全な断水範囲を特定するに当たって、従来のように水供給のための最上流ポイントまでの経路探索を行う必要がなく、最上流ポイントより手前(下流側)の絶対給水可能施設まで経路探索すれば、完全な断水範囲を特定できるので、探索すべき経路を大幅に減少させることができる。
【0031】
なお、図1の閉状態となっている仕切弁7のように、絶対給水可能施設5cからの給水を遮断していると認識される施設が存在する場合には、その施設を流路遮断施設に指定して、これを記録し、(F)工程又はステップにおいて、管路を探索する際に流路遮断施設(仕切弁7)より先(上流側)の水道管路網については探索中止することが好ましい。こうすることにより、断水範囲特定のために探索すべき経路をより一層減少させることができる。
【0032】
一般に、水道事業体等が運営する水道施設管理のための情報システムにおいては、当該水道事業体等が管理する地域の水道管路網に使用されている仕切弁の情報(位置、開閉状態等)をデーターベースに登録しているので、例えば前記のように閉状態となっている仕切弁を流路遮断施設に指定しようとする場合には、そのデータベースを活用することにより、前記のような仕切弁を容易に見つけ出し、流路遮断施設施設に指定することができる。
【0033】
なお、流路遮断施設に指定可能な施設は前記のような閉状態となっている仕切弁に限られるものではなく、その他にも、本発明に係る方法等の利用者が管理する地域の流路網又は通信網上に流路遮断施設となり得るような施設があれば、予めその情報をデータベースに記録しておくことが望ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
GISを利用した水道施設管理のための情報システムに含まれる機能の一部(断水検索機能)として、PC上で本発明に係る断水範囲の特定方法を実行するためのシステムを構築し、実際に断水範囲の特定を行った。
【0036】
まず、図2に示す画面を表示させる。図2は、このシステムにおいて、断水検索の起点を指定するための画面である。この画面には、地図上における水道管路網やその付帯施設の配置が示されており、当該画面において、断水検索の起点1にしようとする工事箇所をマウス等により位置指定することによって、その起点1に通じる管路の探索が行われ、起点1(工事箇所)を断水状態とするために操作が必要となる水道管路網上の仕切弁3が特定される。
【0037】
図3は、絶対給水可能施設を指定するための画面であり、ここでは絶対給水可能施設になり得る候補として予め登録されている様々な施設の中から、管路を指定した状態を示している。また、図4は、図3で絶対給水可能施設に指定した管路について、更にその条件を指定するための画面であり、ここでは250mm以上(7777mm未満)の管径を条件として指定した状態を示している。
【0038】
図5は、流路遮断施設を指定するための画面であり、ここでは流路遮断施設になり得る候補として予め登録されている様々な施設の中から、仕切弁を指定した状態を示している。また、図6は、図5で流路遮断施設に指定した仕切弁について、更にその条件を指定するための画面であり、ここでは仕切弁がヘイ(閉)状態であることを条件として指定した状態を示している。
【0039】
以上のようにして、断水検索に必要な条件を各画面上で指定した後、図7に示す断水検索メニュー画面において、検索開始の指示を出した。その断水検索結果を画面表示したものが図8である。この図8において、太線で示しているのが、最初に特定された仕切弁3を操作して閉状態とすることで閉範囲となり、第1の断水範囲として特定された水道管路網であり、また、点線で示しているのが、検索の結果、絶対給水可能施設への接続が無いものとして検出された水道管路網であり、第2の断水範囲として特定された水道管路網である。これらの水道管路網を合わせたものが完全な断水範囲として特定される。
【0040】
このシステムを用いて、表1に示す条件で、実際の水道管路網3箇所(A、B、C)について、所定の位置を指定箇所(起点)として断水範囲の特定を行った。結果を表1に示す。なお、表1において従来の断水検索とは第1の断水範囲のみの検索を意味し、給水可能性判断を含めた断水検索とは第1および第2の断水範囲の検索を意味する。表1に示すように、本システムで第1及び第2の断水範囲を検索した場合には10〜70秒程度で正確な断水範囲の特定ができた。また、検索時間は、絶対給水可能施設までの距離よりも、検索範囲の管路分岐の数に依存することが示された。なお、本システムを用いず、従来の水道GISの検索システムのみで、第1及び第2の断水範囲の検索も試みたが、実質的に測定できる時間を超過し、時間の測定はできなかった。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明を水道施設を例に説明してきたが、本発明は水道施設だけでなく、電話、電気、ガスなどの流路網や通信網を有する施設の遮断範囲の特定に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る断水範囲の特定方法を説明するための概念図である。
【図2】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、断水検索の起点を指定するための画面を示す図である。
【図3】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、絶対給水可能施設を指定するための画面を示す図である。
【図4】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、絶対給水可能施設の条件を指定するための画面を示す図である。
【図5】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、流路遮断施設を指定するための画面を示す図である。
【図6】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、流路遮断施設の条件を指定するための画面を示す図である。
【図7】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、断水検索を開始するためのメニュー画面を示す図である。
【図8】実施例で使用した断水範囲特定のためのシステムにおいて、断水検索の結果を表示した画面を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…起点、2…水道管路網、3,3a,3b,3c…仕切弁、4a,4b,4c…最上流ポイント、5a,5b,5c…絶対給水可能施設、6…末端部、7…閉状態の仕切弁(流路遮断施設)、11…第1の断水範囲、12…水道管路網、13…水道管路網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法であって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示する工程;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録する工程;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定する工程;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定する工程;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録する工程;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定する工程を含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法。
【請求項2】
物質又は信号の供給を遮断している施設として指定された流路遮断施設を記録する工程を更に含み、前記(F)工程において、前記流路遮断施設より先の探索を中止する請求項1に記載の物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法。
【請求項3】
前記物質供給又は通信施設が水道施設である請求項1又は2に記載の物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定方法。
【請求項4】
前記絶対供給可能施設として、任意の管径の管路を記録する請求項3に記載の断水範囲の特定方法。
【請求項5】
流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定システムであって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示する手段;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録する手段;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定する手段;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定する手段;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録する手段;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定する手段を含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定システム。
【請求項6】
流路網又は通信網を備える物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定プログラムであって、
(A)前記流路網又は通信網を画面上に表示するステップ;
(B)指定された起点を前記流路網又は通信網に関連付けて記録するステップ;
(C)前記起点を遮断状態とするために操作が必要となる流路網又は通信網上の遮断器を特定するステップ;
(D)特定された前記遮断器を閉じることにより形成される、前記起点を含んだ流路網又は通信網上の閉範囲を第1の遮断範囲として特定するステップ;
(E)流路網又は通信網の最上流ポイントからの物質又は信号の供給が保証される施設として指定された絶対供給可能施設を記録するステップ;及び
(F)前記第1の遮断範囲の外部の流路網又は通信網を探索し、前記絶対供給可能施設への接続が無い流路網又は通信網を第2の遮断範囲として特定するステップを含む物質供給又は通信施設における遮断範囲の特定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−183255(P2006−183255A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375363(P2004−375363)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【出願人】(503056610)株式会社ジオプラン (6)