物質状態の視覚化教材装置
【課題】 温度が低くなって分子間力の影響が無視できないような物質状態でも分子モデルを用いて視覚化可能であり、気体・液体・固体などの物質状態を視覚化できる視覚化教材装置を提供する。
【解決手段】 壁面の少なくとも一部が透明な容器7と、容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデル8と、容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、分子モデルを容器内に打ち出し可能な稼働部5と、を有し、分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、稼働部は、分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、分子モデルの打ち出し速度に応じた分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【解決手段】 壁面の少なくとも一部が透明な容器7と、容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデル8と、容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、分子モデルを容器内に打ち出し可能な稼働部5と、を有し、分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、稼働部は、分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、分子モデルの打ち出し速度に応じた分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質状態の視覚化教材装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、現実には目に見えない分子の運動と同様の振る舞いを実体のある分子モデルにさせ、それを目で見えるようにして、気体、液体、固体などの物質状態を視覚化する視覚化教材装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体の状態方程式は、圧力をP、体積をV、温度T、nを分子のモル数とすると、次の式、すなわち、PV=nRTで表され、主として高等学校の物理や化学において学習するものであるが、理系大学生の専門基礎として学習することもあり、気体の性質を理解する上で、中心的位置を占めている。
生徒や学生にとって、状態方程式をあてはめた計算問題は比較的できるが、簡単な概念問題に状態方程式を応用することは困難である(例えば、非特許文献1参照)。これは、目に見えない気体について、圧力や温度の意味を理解しイメージすることが困難なことによると考えられる。
【0003】
従来より、ピンポン玉や鋼球を気体分子のモデルになぞらえた気体分子運動モデル実験器が、気体分子の運動のイメージを捉えることのできる教材として知られている(例えば、非特許文献2及び3参照)。ピンポン玉を用いた気体分子運動モデル実験器51を図13に示す。これは、回転歯車52によってピンポン玉53を弾き上げ、ガラス容器内で飛び跳ねるピンポン玉53を見ることができるようにしたもので、モーター54の回転数を変えることで、ピンポン玉53の動きが変わる。
【0004】
鋼球を用いた気体分子運動モデル実験器61を図14に示す。これは、ピストン62を往復運動させて、ピストン62とフローティングピストン63との間で動き回る鋼球64を透明な筒65を透して見ることができるようにしたもので、電圧を制御してピストン62の振動数を変えることで、鋼球64によって押し上げられるフローティングピストン63の高さが変わる。また、フローティングピストン63上にはおもりが載せられるようになっている。このモデル実験器は、ピストン62とフローティングピストン63の間の距離を気体の体積、フローティングピストン63とその上に載せるおもりの重さを気体の圧力、ピストンの振動数を気体の温度と、それぞれ、なぞらえることにより、気体の物理量の間の関係を示そうと試みたものである。しかし、この実験器では、一応の傾向はつかめるものの、ボイルの法則やシャルルの法則などの正確な関係をとらえることには成功していない(非特許文献3の解説参照)。この原因としては、ピストンの振動数を気体の温度と見なすことの理論的な誤りやこのモデル実験器では重力の影響が避けられないこと、すなわち、鋼球の分布がピストン側に多く上下で均一な分布をしないことやピストンによって打ち出された剛球はその速さが減速してフローティングピストン63に到達すること、などの技術的欠点が考えられる。ボイルの法則やシャルルの法則ほかの気体の状態方程式中に現れる物理量の間の種々の関係を正確にとらえるためには、これらの誤りや欠点を改善することが必要である。
【0005】
特許文献1は、上記問題点を解決し、気体の状態方程式を正確に再現した気体の状態方程式の視覚化教材装置であり、本発明者が先に特許出願したものである。特許文献1の視覚化教材装置によって、気体の状態方程式を正確に再現して視覚化できるが、あくまで気体の状態を視覚化できるのみであり、液体や固体の状態などは視覚化できない。
【特許文献1】特開2006−301174号公報
【非特許文献1】J.Chem.Edu,vol.77,No.2,p235−238(2000)
【非特許文献2】古川 千代男著「プロジェクトサイエンスシリーズ5 物質の原子論−生徒と創造する化学の授業−」(株)コロナ社、1989年5月10日、p.17−19
【非特許文献3】近角聰信・豊田博慈監修「新訂図解実験観察大辞典 物理」東京図書、1992年10月30日、p.105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温度が高く、気体分子の運動速度が高い時は、分子間力の影響は無視できるので特許文献1のような視覚化教材装置を用いれば気体分子の状態を視覚化できる。しかしながら、温度が低くなってきて分子の運動速度が低くなってくると、分子間力の影響を無視できなくなり、特許文献1のような視覚化教材装置では分子間力の影響を含めた物質状態の視覚化はできない。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、温度が低くなって分子間力の影響が無視できないような物質状態でも分子モデルを用いて視覚化可能であり、気体・液体・固体などの物質状態を視覚化できる視覚化教材装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
壁面の少なくとも一部が透明な容器と、
前記容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデルと、
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、前記分子モデルを前記容器内に打ち出し可能な稼働部と、を有し、
前記分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ前記複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、
前記稼働部は、前記分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、
前記分子モデルの打ち出し速度に応じた前記分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【0009】
また、好ましくは以下の実施態様を有してもよい。
前記稼働部は、駆動源によって駆動される往復運動機構を介して側面と直交する方向に往復動可能な稼働底板であり、前記稼働底板には、その往復動によって前記分子モデルを前記容器内に打ち出すための突起が設けられている。
前記稼働底板の突起は三角突条であって、その長手方向が稼働底板の往復動方向と直交して所定間隔に設けられている。
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、該壁面に対して垂直方向に移動可能な圧力測定側壁部材をさらに有し、前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する。
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力を、バネで測定するようにした。圧力測定手段についてはバネに限定されるものではなく、例えば、ゴムなどの弾性体、ピストンシリンダを介した液柱などを用いてもよい。
【0010】
分子モデルの形状の実施態様としては球状があり、これが好ましいが、これに限られることはなく、立方体、正四面体、楕円体などの実施態様もある。
各分子モデルの磁石の個数や配置は自由に選択できる。モデルとする分子の分子間力の方向に応じて配置すると良い。
容器内の分子モデルのすべてが磁石を有する必要はなく、一部の分子モデルには鉄などの磁性体のみを取り付ける実施態様もある。
一部の分子モデルには磁石も磁性体も設けないようにする実施態様もある。このような構成にすることにより、異なる種類の分子(沸点や融点が異なる)が混在しているときの物質状態を視覚化できる。
大きさ、形状、色が異なる分子モデルを混在させる実施態様もある。このような構成にすることにより、種類の異なる分子の振る舞いを視覚化することができ、たとえば、異なる物質が混合していく過程などを視覚化できる。
容器の形状としては直方体または立方体のものを用いることができ、これが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分子モデルは内部または表面に磁石や磁性体が組み込まれており、磁石の結合力によって分子間力の影響を視覚化することができる。分子モデルの運動速度が高い(温度が高い)時は、磁石の結合力(分子間力)の影響はほとんど無いので、分子モデルは気体分子として振舞う。分子モデルの運動速度が低くなり(温度が下がり)、磁石の結合力(分子間力)の影響が無視できなくなってくると、分子モデルは緩やかな結合をして液体分子として振舞う。さらに、分子モデルの運動速度が低くなる(温度が下がる)と、分子モデルは磁石の結合力(分子間力)により動かなくなり、固体分子として振舞う。したがって、本発明の構成によって分子間力の影響を加味した物質状態の視覚化が可能である。
分子モデルの形状や磁石の配置を工夫することにより、物質ごとに異なる分子間力をより細かく視覚化することができ、固体化したときの結晶構造なども視覚化することもできる。また、圧力測定手段を設けることにより、気体から液体に変わるときに、圧力が気体の状態方程式から外れていくことも視覚化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろん本発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の物質状態の視覚化教材装置の一実施の形態を示す概略図である。図1に示される物質状態の視覚化教材装置1は、概略、底面と一側面が開放された透明カバー体2と、モーター3によって駆動されるクランク往復運動機構を介して側面と直交する方向(左右水平方向であって、図1の矢印Aで示す。)に往復動可能な稼働底板5と、透明カバー体2内で稼働底板5と同方向(左右水平方向であって、図1の矢印Bで示す。)に移動可能な圧力測定側壁部材6で構成される容器7に、高反発弾性の分子モデル8が収納可能とされ、稼働底板5には、その往復動によって収納された分子モデル8を容器7内に打ち出すための三角突条10が設けられており、稼働底板5より打ち出された分子モデル8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する構成のものである。図1では図示されていないが、分子モデル8の内部または表面には磁石が設けられている。
なお、本実施形態では圧力測定側壁部材6等の圧力測定手段が設けられているが、本発明は磁石を有する分子モデルを用いて物質状態を視覚化することを目的としており、これらの構成は必須のものではない。
【0014】
透明カバー体2は、透明で矩形板状の前面壁部材(図示せず)、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cが互いに直交するように組み合わされて一体化され、底面と左側面が開放されたもので、直方体状のものとなっている。右側面壁部材2cの下端縁は、前後面壁部材の下端縁より短くなっており、稼働底板5の左右への往復動に支障がないスペースが確保されている。透明カバー体2は、フレーム(図示せず)にネジ等で固定されている。
透明カバー体2を構成する前面壁部材、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cとしては、アクリル板が、透明性が高く、分子モデル8が衝突しても割れたり破損したりせず、しかも、反発性が良好であることから好ましい。アクリル板を使用する場合は、前面壁部材、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cを接着して透明カバー体2が製造される。本実施形態では透明カバー体としてアクリル板を用いているがこれに限られるものではなく、ガラス等を用いてもよい。
【0015】
稼働底板5の左右長さは、透明カバー体2の左右長さとほぼ同じか、やや長くされている。稼働底板5の前後幅は、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間隔とほぼ同じであって、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間に挟まれて、前後方向にぶれることなく規制され、左右に安定して往復動できるようになっている。そして、稼働底板5は、図示していないフレームに取り付けられた案内ローラによって支持されているが、これに限られるものではない。
【0016】
稼働底板に設けられた三角突条10は、その長手方向が稼働底板5の往復動方向と直交する前後方向に所定間隔をもって設けられ、その長さは、稼働底板5の前後方向の幅とほぼ同じである。三角突条10の左斜面は、稼働底板5が往動(左方に移動)する際に、分子モデル8を圧力測定側壁部材6に向けて打ち出す機能を果たし、右斜面は、稼働底板5が復動(右方に移動)する際に、分子モデル8を右側面壁部材2cに向けて打ち出す機能を果たすことになる。図2は、稼働底板5の三角突条10と分子モデル8の関係を示す説明図である。突条の断面形状としては、2等辺三角形が好ましく、頂角としては、80〜90゜である。このうち、頂角90゜の二等辺三角形がより好ましい。三角突条10の間隔Wは(三角突条の右斜面の基端とその右側にある三角突条の左斜面の基端との距離を示す。)、使用する分子モデル8の反発性にもよるが、分子モデル8の直径Dと同等かやや広め、一般に0.8〜1.5倍程度とすることが好ましい。三角突条の底辺の長さSは、分子モデル8の直径D
の0.8〜1.0倍程度、高さHは0.40〜0.50倍程度が好ましい。分子モデルの直径に応じ、三角突条の大きさ及び稼働底板上での配置間隔は、透明枠体及び稼働底板をフレームから外して、調節可能である。三角突条の大きさ及び配置間隔の異なる稼働底板を複数備え、交換できるようにしておくのも好ましい。
稼働底板5、三角突条10の材質は、アクリル樹脂、木材、金属等が採用できる。また、稼働底板5の表面に潤滑剤を塗布しておいたり表面を潤滑加工しておく実施形態もあり、このようにすることにより、分子モデル8が三角突条10などに引っ掛かることを防止できる。
【0017】
クランク往復運動機構は、クランク板11と従動リンク12からなり、従動リンク12の一端は枢軸13で稼働底板5に連結され、他端はクランク板11の回転中心から偏心した位置に植設されたピン14で連結されている。モーター3の回転は、ベルト15によってモータープーリー16からクランク軸17に固定されたプーリー18に伝達され、クランク板11が回転することで、稼働底板5が往復動することになる。図示していないが、モーター3はフレームに取り付けられており、クランク軸17は、フレームに回転可能に軸支されている。
【0018】
クランク往復運動機構の振幅は、分子モデルの直径の1.5〜2.5倍程度が好ましい。クランク往復運動機構の振動数は、モーターの電圧を制御することで適宜決定される。
なお、スライダーに植設したピンを、ネジでクランク板の半径方向に摺動するようにして、稼働底板の振幅を自由に変更することができるようにしてもよい。
【0019】
圧力測定側壁部材6は、板状であって、その下端縁で移動台20の右端縁に固定されており、該移動台20の左端は起立板23の下端と接合されており、圧力測定側壁6、移動台20及び起立板23は一体化されている(これを受圧部ともいう)。
かかる構造において、圧力測定側壁材6は、透明カバー2内で運動する分子モデル(スーパーボール)が圧力測定壁に衝突したとき、可及的にその荷重を正しく測定機構に伝達するため、受圧部は分子モデル衝突による移動時の摩擦抵抗を可及的に減ずるために低摩擦機構によって支持される必要がある。低摩擦機構としては、例えば十分に磨き上げられた大理石板やエアレーションによって浮遊させた状態とするとか、極めて回転しやすいベアリング付車等によって支える必要がある。中でも最も簡単な手段は円筒、所謂コロなどによって支えるのが好ましい。そこで図1にあっては、移動台20とともに支持板21に設置された筒状のコロ22、22、22、22に支持され、左右に移動可能となっている。移動台20の左端縁には起立板23が固定されている。支持板21は、フレームに固定されている。
【0020】
圧力測定側壁部材6の前後幅は、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間隔とほぼ同じで、縦幅は、稼働底板5の左右の往復動に支障がない幅とされている。圧力測定側壁部材6、移動台20、起立板23によって圧力測定用枠24が形成される。圧力測定側壁部材6を、透明なアクリル板とすると、容器7内で運動する分子モデル8の動きを圧力測定側壁部材6側からも観察することができる。
【0021】
起立板23にはコイルバネ25の一端が係止されており、コイルバネ25の他端は、外部固定板26に係止されている。外部固定板26は、透明カバー体2に取着したガイドバー(図示せず)に沿って左右方向に移動可能とされるとともに、ネジでガイドバーの任意の位置に固定できるようになっている。フレームにガイドバーを設け、外部固定板を左右方向に移動可能としても良い。
【0022】
稼働底板5によって打ち出された分子モデル8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって発生する圧力は、コイルバネのバネ定数、伸び、圧力測定側壁部材の面積に基づき算出すればよい。
外部固定板26の位置を左右に変更することで、透明カバー体2、稼働底板5、圧力測定側壁部材6によって構成される容器7の体積を変更することができる。
また、起立板23とコイルバネ25との係止を解除し、圧力測定用枠24を左方に移動させて、圧力測定側壁部材6を透明カバー体2から抜き出し、分子モデル8の数を変更したり、直径の異なる分子モデル8と交換することができる。分子モデル8の交換等が終了したら、圧力測定用枠24を右方に移動させて、圧力測定側壁部材6を透明カバー体2内に挿入して元の位置に戻し、コイルバネ25を起立板23に係止すればよい。
【0023】
分子モデル8は、高反発弾性の球状のボールが使用される。ボールの反発性は、1mの高さから自由落下させた時、コンクリートで反発し65cm以上の高さにまで上昇するものであればよく、スーパーボールの商品名で市販されているものが使用できる。分子モデル8の大きさについては特に限定されないが数cm程度のものが良い。また、分子モデル8の形状は球状に限定されず、立方体、正四面体、楕円体などでも良い。
後述するように、分子モデル8の内部または表面には磁石が設けられている。
【0024】
図3及び図4は、分子モデル8の内部に磁石8aが組み込まれた例を示す図である。図3は球状の分子モデル8に磁石8aを組み込んだ例であり、図4は立方体状の分子モデル8に磁石8aを組み込んだ例である。図の例では、円筒状の磁石8aを組み込んでいるがこれに限られず、球状磁石やリング状磁石を組み込んでもよい。また、組み込む磁石の数も1個とは限らず、複数個を組み込んでも良い。磁石を分子モデル8の内部に組み込むことにより、分子モデル8の高反発弾性を維持しながら、分子モデル8間に結合力を発生させることができるという効果がある。
【0025】
図5及び図6は、分子モデル8の表面に磁石8aが組み込まれた例を示す図である。図5は直角2方向に磁石8aを組み込んだ例であり、図6は正四面体の各頂点方向である4方向に磁石8aを組み込んだ例である。磁石の数や取り付け方向はこれらに限られず、モデルとする分子の分子構造や分子間力の方向に応じて様々な実施形態が考えられる。また、全てを磁石にする必要はなく、一部を鉄などの磁性体にしてもよい。磁石を分子モデル8の表面に組み込むことにより、磁石の結合力がより強力になり、強い分子間力を表現できるという効果がある。
【0026】
磁石8aが組み込まれた分子モデル8を用いることにより、分子間力を加味した分子モデルの振る舞いを観察することができる。稼働底板5の速度が速くて分子モデル8の速度が速いときは、分子モデル8間の結合力の影響は無視できるので、本発明者の先の特許出願(特許文献1)に記載されているような気体分子の振る舞いを観察できる。稼働底板5の速度が遅くなり分子モデル8の速度が遅くなると、分子モデル8間の結合力の影響が強くなり分子モデル8同士が結合し始めて、特許文献1に記載された気体の状態方程式から外れて、液体の状態を観察できる。さらに、分子モデル8の速度を下げると、分子モデル8間の結合力により分子モデル8同士が結合して動かなくなり固体の状態を観察できる。稼働底板5をゆっくり動かしながら止めていくと、図7や図8に示されるような結晶状態の観察も可能である。
【0027】
以下、図面を用いて本実施形態の動作について説明する。
図9は、モーター3を起動していない初期状態であって、圧力測定用のコイルバネ25は未伸長状態にある。分子モデルであるスーパーボール8が容器7内に収納されている。
図9の状態で、モーター3を起動させ、クランク運動機構を介して稼働底板5を往復動させると、容器7内に収納されたスーパーボール8が稼働底板5とともに動き始める。分子モデルのスーパーボールの動きが定常になったとき、その運動速度は稼働底板の往復動速度と等しいか又は少なくとも比較関係にあると見なし得る。往復動する稼働底板5の三角突条10によって左右斜め方向に打ち出される。スーパーボール8は高反発弾性であることから、容器2の透明カバー体2、圧力測定側壁部材6との衝突と稼働底板5の三角突条10による打ち出しが繰り返えされることで、あたかも、スーパーボール8が容器内で熱運動に似たランダムな運動をすることが実演でき、これを透明カバー体2を透してみることができる。スーパーボール8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって、圧力測定側壁部材6がコイルバネ25に抗して左方に移動することになる。コイルバネ25の伸びを測定して、圧力測定側壁部材6に作用する力Fを求め、力Fを圧力測定側壁部材6の面積で割ることにより圧力が算出できる。
モーター3の電圧を制御することで、稼働底板5の往復振動数を高くすることができ、突起によって打ち出されるスーパーボール8の運動速度が増加し、その結果、圧力が高まることが確認できる。また、モーター3の電圧を低くすることでスーパーボール8の運動速度が低下し、その結果、スーパーボール8同士が結合し始めて圧力が急速に低くなり、液体状態が確認できる。さらにモーター3の電圧を低くするとスーパーボール8同士が結合したまま動かなくなり、固体状態が確認できる。
【0028】
図10は、圧力測定側壁部材6の初期位置を図9におけるよりもやや左に移動させたものである。圧力測定側壁部材6の初期位置の変更は、外部固定板26を左にずらして、コイルバネに張力がかからない状態にセットすることで行えばよい。圧力測定側壁部材6の位置は、透明カバー体2の右側面壁部材2cからの距離を測定すれば良い。これに基づき容器の体積を算出できる。このように圧力測定側壁部材の初期位置を種々変更することで容器の体積を変えたり、稼働底板の振動数を変えたり、容器に収納するスーパーボールの数を変えたり、そのサイズを変えたりすることで、圧力測定側壁部材の受ける圧力、容器の体積、スーパーボールの数、サイズ等との相互関係が確認できる。また、以下のように物理量を評価することで、分子モデルの速度が高いときには気体の状態方程式を確認でき、速度が低くなると沸点や融点などを視覚的に確認できる。
n:スーパーボールの数
V:容器の体積
P:圧力測定側壁部材にかかる圧力
T:温度(スーパーボールの速度の2乗平均に比例する。)
従って、この発明の装置によれば、気体の状態方程式から導かれる種々の関係と同様、以下に示すような定量的関係を検証することができることになる。
すなわち、分子モデルの速度が高いときには、(a)温度及び分子数が一定の条件下での、圧力と体積の逆比例関係(ボイルの法則)、(b)圧力及び分子数が一定の条件下での、温度と体積の比例関係(シャルルの法則)、(c)体積及び分子数が一定の条件下での、温度と圧力の比例関係、(d)体積及び温度が一定の条件下での、分子数と圧力の比例関係等。また、分子モデルの速度が低いときには、(e)沸点、(f)融点など。
なお、コイルバネの選定は、スーパーボールの質量m、左右方向の速度v、数n、容器内の左右方向の長さL(圧力測定側壁部材の内面から右側面壁部材の内側面の距離)とすると、圧力測定側壁部材に作用する力Fが、下記の数式1で表されることをベースに行えばよい。
【数1】
【0029】
図11は、この発明の気体の状態方程式の視覚化教材装置の他の実施の形態を示す概念図である。この気体の状態方程式の視覚化教材装置31は、稼働底板5の往復動を偏心輪32によって行うようにしたものである。偏心輪32は、稼働底板5の下面に設けた突出部材33、33の間に挟まれており、偏心輪32の回転により、稼働底板5が往復動することになる。その他は、図1に示す気体の状態方程式の視覚化教材装置1と同様なことから同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0030】
図12は、この発明の気体の状態方程式の視覚化教材装置のさらに他の実施の形態を示す概念図である。この気体の状態方程式の視覚化教材装置41は、圧力測定手段としてロードセル42を使用したもので、ロードセル42は外部固定板43に設けられているものである。その他は、図1に示す気体の状態方程式の視覚化教材装置1と同様なことから同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の物質状態の視覚化教材装置の一例を示す概念図。
【図2】図1の装置における稼働底板の三角突条と分子モデルとの関係を示す説明図。
【図3】球状の分子モデルの内部に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図4】立方体状の分子モデルの内部に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図5】球状の分子モデルの表面に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図6】球状の分子モデルの表面に磁石を組み込んだ別の例を示す図。
【図7】球状の分子モデルが組み合わさって結晶構造(正12面体)を形成した例を示す図。
【図8】球状の分子モデルが組み合わさって結晶構造(ダイヤモンド構造)を形成した例を示す図。
【図9】図1に示す物質状態の視覚化教材装置の未稼働状態を示す概念図。
【図10】図1に示す物質状態の視覚化教材装置において、圧力測定側壁部材の位置を変更した場合の未稼働状態を示す概念図。
【図11】本発明の物質状態の視覚化教材装置の他の実施の形態を示す概念図。
【図12】本発明の気体の物質状態の視覚化教材装置のさらに他の実施の形態を示す概念図。
【図13】従来の気体分子運動モデル実験器の一例を示す説明図。
【図14】従来の気体分子運動モデル実験器の他例を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1:視覚化教材装置、 2:透明カバー体、 3:モーター、 5:稼働底板、 6:圧力測定側壁部材、 7:容器、 8:分子モデル、 8a:磁石、 10:三角突条、 11:クランク板、 12:従動リンク、 22:コロ、 25:コイルバネ、 26:外部固定板
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質状態の視覚化教材装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、現実には目に見えない分子の運動と同様の振る舞いを実体のある分子モデルにさせ、それを目で見えるようにして、気体、液体、固体などの物質状態を視覚化する視覚化教材装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体の状態方程式は、圧力をP、体積をV、温度T、nを分子のモル数とすると、次の式、すなわち、PV=nRTで表され、主として高等学校の物理や化学において学習するものであるが、理系大学生の専門基礎として学習することもあり、気体の性質を理解する上で、中心的位置を占めている。
生徒や学生にとって、状態方程式をあてはめた計算問題は比較的できるが、簡単な概念問題に状態方程式を応用することは困難である(例えば、非特許文献1参照)。これは、目に見えない気体について、圧力や温度の意味を理解しイメージすることが困難なことによると考えられる。
【0003】
従来より、ピンポン玉や鋼球を気体分子のモデルになぞらえた気体分子運動モデル実験器が、気体分子の運動のイメージを捉えることのできる教材として知られている(例えば、非特許文献2及び3参照)。ピンポン玉を用いた気体分子運動モデル実験器51を図13に示す。これは、回転歯車52によってピンポン玉53を弾き上げ、ガラス容器内で飛び跳ねるピンポン玉53を見ることができるようにしたもので、モーター54の回転数を変えることで、ピンポン玉53の動きが変わる。
【0004】
鋼球を用いた気体分子運動モデル実験器61を図14に示す。これは、ピストン62を往復運動させて、ピストン62とフローティングピストン63との間で動き回る鋼球64を透明な筒65を透して見ることができるようにしたもので、電圧を制御してピストン62の振動数を変えることで、鋼球64によって押し上げられるフローティングピストン63の高さが変わる。また、フローティングピストン63上にはおもりが載せられるようになっている。このモデル実験器は、ピストン62とフローティングピストン63の間の距離を気体の体積、フローティングピストン63とその上に載せるおもりの重さを気体の圧力、ピストンの振動数を気体の温度と、それぞれ、なぞらえることにより、気体の物理量の間の関係を示そうと試みたものである。しかし、この実験器では、一応の傾向はつかめるものの、ボイルの法則やシャルルの法則などの正確な関係をとらえることには成功していない(非特許文献3の解説参照)。この原因としては、ピストンの振動数を気体の温度と見なすことの理論的な誤りやこのモデル実験器では重力の影響が避けられないこと、すなわち、鋼球の分布がピストン側に多く上下で均一な分布をしないことやピストンによって打ち出された剛球はその速さが減速してフローティングピストン63に到達すること、などの技術的欠点が考えられる。ボイルの法則やシャルルの法則ほかの気体の状態方程式中に現れる物理量の間の種々の関係を正確にとらえるためには、これらの誤りや欠点を改善することが必要である。
【0005】
特許文献1は、上記問題点を解決し、気体の状態方程式を正確に再現した気体の状態方程式の視覚化教材装置であり、本発明者が先に特許出願したものである。特許文献1の視覚化教材装置によって、気体の状態方程式を正確に再現して視覚化できるが、あくまで気体の状態を視覚化できるのみであり、液体や固体の状態などは視覚化できない。
【特許文献1】特開2006−301174号公報
【非特許文献1】J.Chem.Edu,vol.77,No.2,p235−238(2000)
【非特許文献2】古川 千代男著「プロジェクトサイエンスシリーズ5 物質の原子論−生徒と創造する化学の授業−」(株)コロナ社、1989年5月10日、p.17−19
【非特許文献3】近角聰信・豊田博慈監修「新訂図解実験観察大辞典 物理」東京図書、1992年10月30日、p.105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温度が高く、気体分子の運動速度が高い時は、分子間力の影響は無視できるので特許文献1のような視覚化教材装置を用いれば気体分子の状態を視覚化できる。しかしながら、温度が低くなってきて分子の運動速度が低くなってくると、分子間力の影響を無視できなくなり、特許文献1のような視覚化教材装置では分子間力の影響を含めた物質状態の視覚化はできない。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、温度が低くなって分子間力の影響が無視できないような物質状態でも分子モデルを用いて視覚化可能であり、気体・液体・固体などの物質状態を視覚化できる視覚化教材装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
壁面の少なくとも一部が透明な容器と、
前記容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデルと、
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、前記分子モデルを前記容器内に打ち出し可能な稼働部と、を有し、
前記分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ前記複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、
前記稼働部は、前記分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、
前記分子モデルの打ち出し速度に応じた前記分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【0009】
また、好ましくは以下の実施態様を有してもよい。
前記稼働部は、駆動源によって駆動される往復運動機構を介して側面と直交する方向に往復動可能な稼働底板であり、前記稼働底板には、その往復動によって前記分子モデルを前記容器内に打ち出すための突起が設けられている。
前記稼働底板の突起は三角突条であって、その長手方向が稼働底板の往復動方向と直交して所定間隔に設けられている。
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、該壁面に対して垂直方向に移動可能な圧力測定側壁部材をさらに有し、前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する。
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力を、バネで測定するようにした。圧力測定手段についてはバネに限定されるものではなく、例えば、ゴムなどの弾性体、ピストンシリンダを介した液柱などを用いてもよい。
【0010】
分子モデルの形状の実施態様としては球状があり、これが好ましいが、これに限られることはなく、立方体、正四面体、楕円体などの実施態様もある。
各分子モデルの磁石の個数や配置は自由に選択できる。モデルとする分子の分子間力の方向に応じて配置すると良い。
容器内の分子モデルのすべてが磁石を有する必要はなく、一部の分子モデルには鉄などの磁性体のみを取り付ける実施態様もある。
一部の分子モデルには磁石も磁性体も設けないようにする実施態様もある。このような構成にすることにより、異なる種類の分子(沸点や融点が異なる)が混在しているときの物質状態を視覚化できる。
大きさ、形状、色が異なる分子モデルを混在させる実施態様もある。このような構成にすることにより、種類の異なる分子の振る舞いを視覚化することができ、たとえば、異なる物質が混合していく過程などを視覚化できる。
容器の形状としては直方体または立方体のものを用いることができ、これが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分子モデルは内部または表面に磁石や磁性体が組み込まれており、磁石の結合力によって分子間力の影響を視覚化することができる。分子モデルの運動速度が高い(温度が高い)時は、磁石の結合力(分子間力)の影響はほとんど無いので、分子モデルは気体分子として振舞う。分子モデルの運動速度が低くなり(温度が下がり)、磁石の結合力(分子間力)の影響が無視できなくなってくると、分子モデルは緩やかな結合をして液体分子として振舞う。さらに、分子モデルの運動速度が低くなる(温度が下がる)と、分子モデルは磁石の結合力(分子間力)により動かなくなり、固体分子として振舞う。したがって、本発明の構成によって分子間力の影響を加味した物質状態の視覚化が可能である。
分子モデルの形状や磁石の配置を工夫することにより、物質ごとに異なる分子間力をより細かく視覚化することができ、固体化したときの結晶構造なども視覚化することもできる。また、圧力測定手段を設けることにより、気体から液体に変わるときに、圧力が気体の状態方程式から外れていくことも視覚化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろん本発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の物質状態の視覚化教材装置の一実施の形態を示す概略図である。図1に示される物質状態の視覚化教材装置1は、概略、底面と一側面が開放された透明カバー体2と、モーター3によって駆動されるクランク往復運動機構を介して側面と直交する方向(左右水平方向であって、図1の矢印Aで示す。)に往復動可能な稼働底板5と、透明カバー体2内で稼働底板5と同方向(左右水平方向であって、図1の矢印Bで示す。)に移動可能な圧力測定側壁部材6で構成される容器7に、高反発弾性の分子モデル8が収納可能とされ、稼働底板5には、その往復動によって収納された分子モデル8を容器7内に打ち出すための三角突条10が設けられており、稼働底板5より打ち出された分子モデル8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する構成のものである。図1では図示されていないが、分子モデル8の内部または表面には磁石が設けられている。
なお、本実施形態では圧力測定側壁部材6等の圧力測定手段が設けられているが、本発明は磁石を有する分子モデルを用いて物質状態を視覚化することを目的としており、これらの構成は必須のものではない。
【0014】
透明カバー体2は、透明で矩形板状の前面壁部材(図示せず)、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cが互いに直交するように組み合わされて一体化され、底面と左側面が開放されたもので、直方体状のものとなっている。右側面壁部材2cの下端縁は、前後面壁部材の下端縁より短くなっており、稼働底板5の左右への往復動に支障がないスペースが確保されている。透明カバー体2は、フレーム(図示せず)にネジ等で固定されている。
透明カバー体2を構成する前面壁部材、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cとしては、アクリル板が、透明性が高く、分子モデル8が衝突しても割れたり破損したりせず、しかも、反発性が良好であることから好ましい。アクリル板を使用する場合は、前面壁部材、上面壁部材2a、後面壁部材2b、右側面壁部材2cを接着して透明カバー体2が製造される。本実施形態では透明カバー体としてアクリル板を用いているがこれに限られるものではなく、ガラス等を用いてもよい。
【0015】
稼働底板5の左右長さは、透明カバー体2の左右長さとほぼ同じか、やや長くされている。稼働底板5の前後幅は、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間隔とほぼ同じであって、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間に挟まれて、前後方向にぶれることなく規制され、左右に安定して往復動できるようになっている。そして、稼働底板5は、図示していないフレームに取り付けられた案内ローラによって支持されているが、これに限られるものではない。
【0016】
稼働底板に設けられた三角突条10は、その長手方向が稼働底板5の往復動方向と直交する前後方向に所定間隔をもって設けられ、その長さは、稼働底板5の前後方向の幅とほぼ同じである。三角突条10の左斜面は、稼働底板5が往動(左方に移動)する際に、分子モデル8を圧力測定側壁部材6に向けて打ち出す機能を果たし、右斜面は、稼働底板5が復動(右方に移動)する際に、分子モデル8を右側面壁部材2cに向けて打ち出す機能を果たすことになる。図2は、稼働底板5の三角突条10と分子モデル8の関係を示す説明図である。突条の断面形状としては、2等辺三角形が好ましく、頂角としては、80〜90゜である。このうち、頂角90゜の二等辺三角形がより好ましい。三角突条10の間隔Wは(三角突条の右斜面の基端とその右側にある三角突条の左斜面の基端との距離を示す。)、使用する分子モデル8の反発性にもよるが、分子モデル8の直径Dと同等かやや広め、一般に0.8〜1.5倍程度とすることが好ましい。三角突条の底辺の長さSは、分子モデル8の直径D
の0.8〜1.0倍程度、高さHは0.40〜0.50倍程度が好ましい。分子モデルの直径に応じ、三角突条の大きさ及び稼働底板上での配置間隔は、透明枠体及び稼働底板をフレームから外して、調節可能である。三角突条の大きさ及び配置間隔の異なる稼働底板を複数備え、交換できるようにしておくのも好ましい。
稼働底板5、三角突条10の材質は、アクリル樹脂、木材、金属等が採用できる。また、稼働底板5の表面に潤滑剤を塗布しておいたり表面を潤滑加工しておく実施形態もあり、このようにすることにより、分子モデル8が三角突条10などに引っ掛かることを防止できる。
【0017】
クランク往復運動機構は、クランク板11と従動リンク12からなり、従動リンク12の一端は枢軸13で稼働底板5に連結され、他端はクランク板11の回転中心から偏心した位置に植設されたピン14で連結されている。モーター3の回転は、ベルト15によってモータープーリー16からクランク軸17に固定されたプーリー18に伝達され、クランク板11が回転することで、稼働底板5が往復動することになる。図示していないが、モーター3はフレームに取り付けられており、クランク軸17は、フレームに回転可能に軸支されている。
【0018】
クランク往復運動機構の振幅は、分子モデルの直径の1.5〜2.5倍程度が好ましい。クランク往復運動機構の振動数は、モーターの電圧を制御することで適宜決定される。
なお、スライダーに植設したピンを、ネジでクランク板の半径方向に摺動するようにして、稼働底板の振幅を自由に変更することができるようにしてもよい。
【0019】
圧力測定側壁部材6は、板状であって、その下端縁で移動台20の右端縁に固定されており、該移動台20の左端は起立板23の下端と接合されており、圧力測定側壁6、移動台20及び起立板23は一体化されている(これを受圧部ともいう)。
かかる構造において、圧力測定側壁材6は、透明カバー2内で運動する分子モデル(スーパーボール)が圧力測定壁に衝突したとき、可及的にその荷重を正しく測定機構に伝達するため、受圧部は分子モデル衝突による移動時の摩擦抵抗を可及的に減ずるために低摩擦機構によって支持される必要がある。低摩擦機構としては、例えば十分に磨き上げられた大理石板やエアレーションによって浮遊させた状態とするとか、極めて回転しやすいベアリング付車等によって支える必要がある。中でも最も簡単な手段は円筒、所謂コロなどによって支えるのが好ましい。そこで図1にあっては、移動台20とともに支持板21に設置された筒状のコロ22、22、22、22に支持され、左右に移動可能となっている。移動台20の左端縁には起立板23が固定されている。支持板21は、フレームに固定されている。
【0020】
圧力測定側壁部材6の前後幅は、透明カバー体2の前面壁部材と後面壁部材の間隔とほぼ同じで、縦幅は、稼働底板5の左右の往復動に支障がない幅とされている。圧力測定側壁部材6、移動台20、起立板23によって圧力測定用枠24が形成される。圧力測定側壁部材6を、透明なアクリル板とすると、容器7内で運動する分子モデル8の動きを圧力測定側壁部材6側からも観察することができる。
【0021】
起立板23にはコイルバネ25の一端が係止されており、コイルバネ25の他端は、外部固定板26に係止されている。外部固定板26は、透明カバー体2に取着したガイドバー(図示せず)に沿って左右方向に移動可能とされるとともに、ネジでガイドバーの任意の位置に固定できるようになっている。フレームにガイドバーを設け、外部固定板を左右方向に移動可能としても良い。
【0022】
稼働底板5によって打ち出された分子モデル8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって発生する圧力は、コイルバネのバネ定数、伸び、圧力測定側壁部材の面積に基づき算出すればよい。
外部固定板26の位置を左右に変更することで、透明カバー体2、稼働底板5、圧力測定側壁部材6によって構成される容器7の体積を変更することができる。
また、起立板23とコイルバネ25との係止を解除し、圧力測定用枠24を左方に移動させて、圧力測定側壁部材6を透明カバー体2から抜き出し、分子モデル8の数を変更したり、直径の異なる分子モデル8と交換することができる。分子モデル8の交換等が終了したら、圧力測定用枠24を右方に移動させて、圧力測定側壁部材6を透明カバー体2内に挿入して元の位置に戻し、コイルバネ25を起立板23に係止すればよい。
【0023】
分子モデル8は、高反発弾性の球状のボールが使用される。ボールの反発性は、1mの高さから自由落下させた時、コンクリートで反発し65cm以上の高さにまで上昇するものであればよく、スーパーボールの商品名で市販されているものが使用できる。分子モデル8の大きさについては特に限定されないが数cm程度のものが良い。また、分子モデル8の形状は球状に限定されず、立方体、正四面体、楕円体などでも良い。
後述するように、分子モデル8の内部または表面には磁石が設けられている。
【0024】
図3及び図4は、分子モデル8の内部に磁石8aが組み込まれた例を示す図である。図3は球状の分子モデル8に磁石8aを組み込んだ例であり、図4は立方体状の分子モデル8に磁石8aを組み込んだ例である。図の例では、円筒状の磁石8aを組み込んでいるがこれに限られず、球状磁石やリング状磁石を組み込んでもよい。また、組み込む磁石の数も1個とは限らず、複数個を組み込んでも良い。磁石を分子モデル8の内部に組み込むことにより、分子モデル8の高反発弾性を維持しながら、分子モデル8間に結合力を発生させることができるという効果がある。
【0025】
図5及び図6は、分子モデル8の表面に磁石8aが組み込まれた例を示す図である。図5は直角2方向に磁石8aを組み込んだ例であり、図6は正四面体の各頂点方向である4方向に磁石8aを組み込んだ例である。磁石の数や取り付け方向はこれらに限られず、モデルとする分子の分子構造や分子間力の方向に応じて様々な実施形態が考えられる。また、全てを磁石にする必要はなく、一部を鉄などの磁性体にしてもよい。磁石を分子モデル8の表面に組み込むことにより、磁石の結合力がより強力になり、強い分子間力を表現できるという効果がある。
【0026】
磁石8aが組み込まれた分子モデル8を用いることにより、分子間力を加味した分子モデルの振る舞いを観察することができる。稼働底板5の速度が速くて分子モデル8の速度が速いときは、分子モデル8間の結合力の影響は無視できるので、本発明者の先の特許出願(特許文献1)に記載されているような気体分子の振る舞いを観察できる。稼働底板5の速度が遅くなり分子モデル8の速度が遅くなると、分子モデル8間の結合力の影響が強くなり分子モデル8同士が結合し始めて、特許文献1に記載された気体の状態方程式から外れて、液体の状態を観察できる。さらに、分子モデル8の速度を下げると、分子モデル8間の結合力により分子モデル8同士が結合して動かなくなり固体の状態を観察できる。稼働底板5をゆっくり動かしながら止めていくと、図7や図8に示されるような結晶状態の観察も可能である。
【0027】
以下、図面を用いて本実施形態の動作について説明する。
図9は、モーター3を起動していない初期状態であって、圧力測定用のコイルバネ25は未伸長状態にある。分子モデルであるスーパーボール8が容器7内に収納されている。
図9の状態で、モーター3を起動させ、クランク運動機構を介して稼働底板5を往復動させると、容器7内に収納されたスーパーボール8が稼働底板5とともに動き始める。分子モデルのスーパーボールの動きが定常になったとき、その運動速度は稼働底板の往復動速度と等しいか又は少なくとも比較関係にあると見なし得る。往復動する稼働底板5の三角突条10によって左右斜め方向に打ち出される。スーパーボール8は高反発弾性であることから、容器2の透明カバー体2、圧力測定側壁部材6との衝突と稼働底板5の三角突条10による打ち出しが繰り返えされることで、あたかも、スーパーボール8が容器内で熱運動に似たランダムな運動をすることが実演でき、これを透明カバー体2を透してみることができる。スーパーボール8が圧力測定側壁部材6に衝突することによって、圧力測定側壁部材6がコイルバネ25に抗して左方に移動することになる。コイルバネ25の伸びを測定して、圧力測定側壁部材6に作用する力Fを求め、力Fを圧力測定側壁部材6の面積で割ることにより圧力が算出できる。
モーター3の電圧を制御することで、稼働底板5の往復振動数を高くすることができ、突起によって打ち出されるスーパーボール8の運動速度が増加し、その結果、圧力が高まることが確認できる。また、モーター3の電圧を低くすることでスーパーボール8の運動速度が低下し、その結果、スーパーボール8同士が結合し始めて圧力が急速に低くなり、液体状態が確認できる。さらにモーター3の電圧を低くするとスーパーボール8同士が結合したまま動かなくなり、固体状態が確認できる。
【0028】
図10は、圧力測定側壁部材6の初期位置を図9におけるよりもやや左に移動させたものである。圧力測定側壁部材6の初期位置の変更は、外部固定板26を左にずらして、コイルバネに張力がかからない状態にセットすることで行えばよい。圧力測定側壁部材6の位置は、透明カバー体2の右側面壁部材2cからの距離を測定すれば良い。これに基づき容器の体積を算出できる。このように圧力測定側壁部材の初期位置を種々変更することで容器の体積を変えたり、稼働底板の振動数を変えたり、容器に収納するスーパーボールの数を変えたり、そのサイズを変えたりすることで、圧力測定側壁部材の受ける圧力、容器の体積、スーパーボールの数、サイズ等との相互関係が確認できる。また、以下のように物理量を評価することで、分子モデルの速度が高いときには気体の状態方程式を確認でき、速度が低くなると沸点や融点などを視覚的に確認できる。
n:スーパーボールの数
V:容器の体積
P:圧力測定側壁部材にかかる圧力
T:温度(スーパーボールの速度の2乗平均に比例する。)
従って、この発明の装置によれば、気体の状態方程式から導かれる種々の関係と同様、以下に示すような定量的関係を検証することができることになる。
すなわち、分子モデルの速度が高いときには、(a)温度及び分子数が一定の条件下での、圧力と体積の逆比例関係(ボイルの法則)、(b)圧力及び分子数が一定の条件下での、温度と体積の比例関係(シャルルの法則)、(c)体積及び分子数が一定の条件下での、温度と圧力の比例関係、(d)体積及び温度が一定の条件下での、分子数と圧力の比例関係等。また、分子モデルの速度が低いときには、(e)沸点、(f)融点など。
なお、コイルバネの選定は、スーパーボールの質量m、左右方向の速度v、数n、容器内の左右方向の長さL(圧力測定側壁部材の内面から右側面壁部材の内側面の距離)とすると、圧力測定側壁部材に作用する力Fが、下記の数式1で表されることをベースに行えばよい。
【数1】
【0029】
図11は、この発明の気体の状態方程式の視覚化教材装置の他の実施の形態を示す概念図である。この気体の状態方程式の視覚化教材装置31は、稼働底板5の往復動を偏心輪32によって行うようにしたものである。偏心輪32は、稼働底板5の下面に設けた突出部材33、33の間に挟まれており、偏心輪32の回転により、稼働底板5が往復動することになる。その他は、図1に示す気体の状態方程式の視覚化教材装置1と同様なことから同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0030】
図12は、この発明の気体の状態方程式の視覚化教材装置のさらに他の実施の形態を示す概念図である。この気体の状態方程式の視覚化教材装置41は、圧力測定手段としてロードセル42を使用したもので、ロードセル42は外部固定板43に設けられているものである。その他は、図1に示す気体の状態方程式の視覚化教材装置1と同様なことから同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の物質状態の視覚化教材装置の一例を示す概念図。
【図2】図1の装置における稼働底板の三角突条と分子モデルとの関係を示す説明図。
【図3】球状の分子モデルの内部に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図4】立方体状の分子モデルの内部に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図5】球状の分子モデルの表面に磁石を組み込んだ例を示す図。
【図6】球状の分子モデルの表面に磁石を組み込んだ別の例を示す図。
【図7】球状の分子モデルが組み合わさって結晶構造(正12面体)を形成した例を示す図。
【図8】球状の分子モデルが組み合わさって結晶構造(ダイヤモンド構造)を形成した例を示す図。
【図9】図1に示す物質状態の視覚化教材装置の未稼働状態を示す概念図。
【図10】図1に示す物質状態の視覚化教材装置において、圧力測定側壁部材の位置を変更した場合の未稼働状態を示す概念図。
【図11】本発明の物質状態の視覚化教材装置の他の実施の形態を示す概念図。
【図12】本発明の気体の物質状態の視覚化教材装置のさらに他の実施の形態を示す概念図。
【図13】従来の気体分子運動モデル実験器の一例を示す説明図。
【図14】従来の気体分子運動モデル実験器の他例を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1:視覚化教材装置、 2:透明カバー体、 3:モーター、 5:稼働底板、 6:圧力測定側壁部材、 7:容器、 8:分子モデル、 8a:磁石、 10:三角突条、 11:クランク板、 12:従動リンク、 22:コロ、 25:コイルバネ、 26:外部固定板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の少なくとも一部が透明な容器と、
前記容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデルと、
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、前記分子モデルを前記容器内に打ち出し可能な稼働部と、を有し、
前記分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ前記複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、
前記稼働部は、前記分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、
前記分子モデルの打ち出し速度に応じた前記分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【請求項2】
前記稼働部は、駆動源によって駆動される往復運動機構を介して側面と直交する方向に往復動可能な稼働底板であり、
前記稼働底板には、その往復動によって前記分子モデルを前記容器内に打ち出すための突起が設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項3】
前記稼働底板の突起は三角突条であって、その長手方向が稼働底板の往復動方向と直交して所定間隔に設けられている、ことを特徴とする請求項2記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項4】
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、該壁面に対して垂直方向に移動可能な圧力測定側壁部材をさらに有し、
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項5】
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力を、バネで測定するようにした、ことを特徴とする請求項4記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項1】
壁面の少なくとも一部が透明な容器と、
前記容器内に収納され、視覚可能な複数の分子モデルと、
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、前記分子モデルを前記容器内に打ち出し可能な稼働部と、を有し、
前記分子モデルは高反発弾性の物質からなり、かつ前記複数の分子モデルのうち少なくとも一部は、該分子モデルの内部または表面に、1つまたは複数の磁石が組み込まれており、
前記稼働部は、前記分子モデルの打ち出し速度を調節可能であり、
前記分子モデルの打ち出し速度に応じた前記分子モデルの動きにより物質状態を視覚化する、ことを特徴とする物質状態の視覚化教材装置。
【請求項2】
前記稼働部は、駆動源によって駆動される往復運動機構を介して側面と直交する方向に往復動可能な稼働底板であり、
前記稼働底板には、その往復動によって前記分子モデルを前記容器内に打ち出すための突起が設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項3】
前記稼働底板の突起は三角突条であって、その長手方向が稼働底板の往復動方向と直交して所定間隔に設けられている、ことを特徴とする請求項2記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項4】
前記容器の少なくとも一部の壁面に設けられ、該壁面に対して垂直方向に移動可能な圧力測定側壁部材をさらに有し、
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力の測定手段を具備する、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の物質状態の視覚化教材装置。
【請求項5】
前記稼働部より打ち出された分子モデルが前記圧力測定側壁部材に衝突することによって発生する圧力を、バネで測定するようにした、ことを特徴とする請求項4記載の物質状態の視覚化教材装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−109709(P2009−109709A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281404(P2007−281404)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】
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