説明

物質送達用涙点インプラントおよび物質送達方法

眼の疾患および疾病を処置する物質送達涙点プラグ装置および関連方法。この装置のいくつかの実施形態により、眼の前面に広がる涙および/または他の液体内への物質の溶解が最大限に促進されて、他の経路の通過による物質のロスが最小限に抑えられながら、角膜もしくは眼球の前面への物質の送達または角膜もしくは眼球の前面を介しての物質の送達が最大限に強化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、出願日2008年12月19日の米国仮特許出願第61/139,456号に対する優先権を主張し、同出願の開示内容全体を、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般には、医療装置および医療方法に関し、より詳細には、治療用または診断用物質を送達するためのインプラント可能装置ならびにこうした装置を作製および使用する関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
鼻涙管系とは、小規模なドレナージ網を形成する一連の開口および管であり、眼からの涙は、このドレナージ網を通過して鼻腔中に排出されことがある。眼の表面に集まる涙は、眼瞼の縁に沿って鼻に向かって流れ、そこで、涙点(すなわち、上位(superior)涙点および下位(inferior)涙点)と呼ばれる小さな開口を通過し、次いで涙小管と呼ばれる管に入り込む。涙は、涙小管中を流れて、涙嚢と呼ばれる構造中に入る。次いで、涙嚢中に蓄積する涙は、そこから排出され、鼻涙管と呼ばれる管を通過し鼻腔に入る。
【0004】
大人の場合、各涙点は、直径約0.3mmである。上位涙点および下位涙点は、それぞれ、上側眼瞼のへりおよび下側眼瞼のへりの内側面内に位置する。各涙点は、涙乳頭と呼ばれる隆起体の上部に存在する。
【0005】
各涙点を通過した後、涙は、涙小管の最初の垂直セグメント中に流れる。こうした垂直セグメントは、通常は長さ約2mmである。次いで、涙は、長さ約8mmの涙小管の水平セグメント中を流れる。各涙小管の垂直セグメントと水平セグメントとの角度は、約90°である。ほとんどの個体で、涙小管の各水平セグメントは、共通の涙小管を形成するように併合され、そして共通の涙小管は涙嚢に通じる。
【0006】
涙点プラグとは、涙点に挿入可能な小型プラグである。涙点プラグは、眼から涙が流出することを妨げることにより、したがって、眼を覆う涙液膜の厚さを増大させることにより眼球乾燥症候群を処置するために最初は使用されていた。より最近では、薬剤溶出涙点プラグが、眼の特定の疾患の処置のための薬剤送達インプラントとしての使用向けに提案されてきている。たとえば、ある臨床研究では、開放隅角緑内障または高眼圧症の処置のために、物質溶出涙点プラグを使用して、ラタノプロスト、プロスタグランジン類似体をヒトの眼の前区に送達させることができることが実証されている。EyeNet Magazine,News in Review,23ページ(2008年10月)。
【0007】
緑内障を処置するのに使用する薬剤ならびに角膜障害を処置するのに使用する薬剤は、眼の前面に局所的に送達するのが最も効果的である。
【0008】
したがって、当技術分野では、角膜表面への薬剤および/または他の物質の送達を最大限化する改良された涙点プラグが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ヒトまたは動物対象の眼の涙点内にインプラント可能で、治療または診断物質を眼または身体の他のエリアに送達させるのに使用可能なインプラント可能物質送達装置を提供する。さらに、本発明は、本発明のインプラント可能物質送達装置を使用することにより様々な疾患を処置する方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、ヒトまたは動物対象の眼の涙点内にインプラント可能な複数の物質送達装置が提供される。これら装置は、一般に、(A)プラグ・ボディおよびプラグ・ボディ内に形成された物質挿入部-支持キャビティを有する涙点プラグと、(B)遠位端および近位端を有する物質溶出コアからなる、またはこれを備える物質挿入部とを備え、(C)物質挿入部が、涙点プラグの物質挿入部-支持キャビティ(receiving cavity)内に配置され、これにより、装置が眼の涙点にインプラントされると、物質溶出コアの近位端における第1の涙-溶出位置が、眼の前面に広まる涙および/または他の液体(fluid)にさらされ、したがって、物質が、第1の涙-溶出位置から、眼の前面に広まる涙および/または他の液体中に溶出し、物質溶出コア上の更なる少なくとも1つの涙-溶出位置も、目の前面に広まる涙および/または他の液体にさらされ、したがって、物質が、この更なる少なくとも1つの涙-溶出位置からも、眼の前面に広まる涙および/または他の液体中に溶出する。いくつかの実施形態では、涙および/または他の液体が物質コアに隣接するエリア内に流入することを可能にするために、1つまたは複数のチャネルが形成されており、これにより、更なる涙-溶出位置を作り出している。こうしたチャネルを含んだいくつかの実施形態では、装置の全体または一部分が、顔面筋の動きに応答してチャネルが撓むことまたは膨張/収縮することを可能にする弾性または可撓性材料から形成され、こうすることにより、涙および/または他の液体がチャネルに入る動きおよびチャネルから出る動き(たとえば、回転)を容易にするポンプ式効果(pumping-like effect)が作り出されることがある。いくつかの実施形態では、物質コアの一部分(たとえば、遠位端)を、上記の物質に対して実質的に不浸透性にすることがあり、これにより、所望の涙-溶出位置から物質が溶出することを可能にしている間に、物質コアのその部分を通過する物質はほとんど存在しないかまたは全く存在しない。また、いくつかの実施形態では、涙点プラグ・ボディの全体または一部分を、上記の物質に対して実質的に不浸透性にして、物質が所望の涙-溶出位置から溶出することが可能になされている間に、物質が涙点プラグを通過して不要に拡散することを阻止または排除することができる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、前述の性質を有するインプラント可能物質送達装置を使用する複数の方法が提供される。これらの方法では、病気または疾患の診断または処置のために、あるいは実験動物モデルを作り出すこと等の実験的目的のために、ヒト対象またはヒト以外の動物対象の眼の涙点内に物質送達装置をインプラントして物質を送達させるが、上記の実験動物モデルにおいては、インプラントされた物質送達装置が、実験室での研究および/または考えられる処置のテストを目的とする病理状態を作り出す物質を投与するのに使用される。本発明の装置および方法は、特に、眼の前面に広がる涙および/または他の液体を介して物質を眼の前面に送達させるのに適している。したがって、本発明の装置および方法は、眼の前面に局所的に投与された治療的に有効な量の物質が広まることとなる角膜、結膜、強膜、前眼房、前房隅角、小柱網、シュレム管、シュレム管から出るコレクタ経路(collector channel)、または眼の中の他の解剖学的構造に影響を及ぼす病気および疾患を処置する際に、特別の効用を有することができる。
【0012】
本発明の更なる側面、目的、応用例、要素、詳細および細目が、以下の詳細な説明および例を読むことにより当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヒトの眼および関連涙排水系の図であって、本発明の物質送達装置が下位つまり下部涙点内にインプラントされた様を示す図である。
【図1A】図1の領域1Aの拡大図である。
【図1B】図1に示す眼の角膜を覆った涙液膜の図である。
【図2】本発明の物質送達装置の第1の実施形態の分解側面図である。
【図2A】図2の物質送達装置の物質挿入部構成部品を完全に組み立てたものの斜視図である。
【図2B】図2の物質送達装置の部分上面図である。
【図3】本発明の物質送達装置の第2の実施形態の分解側面図である。
【図3A】図3の物質送達装置の物質挿入部構成部品を完全に組み立てたものの斜視図である。
【図3B】図3の物質送達装置の部分上面図である。
【図4】本発明の物質送達装置の第3の実施形態の分解側面図である。
【図4A】図4の物質送達装置の涙点プラグ構成部品の上面図である。
【図4B】図4の物質送達装置の物質挿入部構成部品を完全に組み立てたものの斜視図である。
【図4C】図4の物質送達装置の部分上面図である。
【図5】本発明の物質送達装置の第4の実施形態の分解側面図である。
【図5A】図5の物質送達装置の部分上面図である。
【図6】本発明の物質送達装置の第5の実施形態の分解側面図である。
【図6A】図6の物質送達装置の物質挿入部構成部品を部分的に分解し、部分的に組み立てたものの斜視図である。
【図6B】図6の物質送達装置の物質挿入部構成部品を完全に組み立てたものの斜視図である。
【図7】本発明の物質送達装置において使用可能な涙点プラグ構成部品の一代替形態の側面図を部分的に切り取った図であって、涙点プラグのうち挿入される物質を囲む領域にコーティング(部分的に切り取って図示している)を施して、涙点プラグのその部分を物質が通過することを防止または阻止する様を示す図である。
【図8A】本発明の物質送達装置の涙点プラグ構成部品の一代替構成の斜視図である。
【図8B】本発明の物質送達装置の涙点プラグ構成部品の他の代替構成の斜視図である。
【図8C】本発明の物質送達装置の涙点プラグ構成部品の他の代替構成の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明およびこれが参照する添付の図面は、本発明の実施例または実施形態のいくつかを記載したものであり、必ずしも全ての記載が意図されたものではない。記載している実施形態は、全ての点において、限定ではなく例示としてのみ考慮するものである。この詳細な説明および添付の図面の内容は、本発明の範囲をどんな形にも限定しない。
【0015】
以下の同時係属中の米国特許出願およびPCT国際特許出願それぞれの開示内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0016】
【表1】

【0017】
定義:本明細書では、以下の語および/または句を次のように定義する。
「物質」という用語には、化学物質、薬剤、治療薬、診断薬、生物製剤、放射性薬、造影剤、染料、潤滑剤および栄養素等(ただし、これらに限定されない)の診断物質、治療物質、栄養物質および美容物質が含まれる。これら診断物質、治療物質、栄養物質および美容物質には、上の表中に示すとともに参照により本明細書に組み込んだ出願のいずれかに示されたものが含まれるが、これらに限定されない。
「対象」という用語には、治療処置、予防処置もしくは診断処置を受ける患者および患畜、ならびに、特定の物質の効果を研究もしくは観察するために、または病気もしくは疾患についての動物モデルの場合のようにこうした病気もしくは疾患を誘発させるために実験目的でこの特定の物質が投与されるヒトもしくは動物の実験対象を含めた、ヒトおよび他の動物の対象が含まれる。
「他の液体(other fluid(s))」という用語には、体液または涙以外の液体(たとえば、組織液または間質液、粘液分泌物、脂質分泌物等)ならびに外的由来の液体(たとえば、人工涙、薬用または非薬用点眼液、洗眼液、洗浄液等)が含まれる。
【0018】
添付の図面ならびに以下の詳細な説明および例は、本発明の例または実施形態のいくつかを図示、説明したものであり、必ずしも全ての図示、説明が意図されたものではない。記載している実施例および実施形態は、全ての点において、限定ではなく例示としてのみ考慮するものである。この詳細な説明および添付の図面の内容は、本発明の範囲をどんな形にも限定しない。図2〜6は、装置の構成部品についての例示としてみなされるものであり、それら装置を作製するプロセスの図解としてみなされることが意図されてはない。この詳細な説明および添付の図面の内容は、本発明の範囲をどんな形にも限定しない。
【0019】
図1は、ヒトの眼の解剖学的構造および関連涙管系の図である。この議論の目的には、上部小管UCおよび下部小管LCと呼ばれる上部および下部涙管ならびに涙嚢LSからなる後者に重点を置くことで十分である。上部小管UCは、上位すなわち上部涙点アパーチャUP内で終端し、下部小管LCは、下位すなわち下部涙点アパーチャLP内で終端する。涙点アパーチャUP、LPは、サイズ約0.3mmの円形またはやや卵形の開口であり、かなり密度が高く相対的に無血管性である深さ約1mmの結合環の組織に囲まれている。涙点アパーチャUP、LPは、それぞれ小管UCまたはLCの概ね垂直なセグメント中に通じている。各小管UC、LCは、通常サイズの約3倍にこれら小管を拡張することを可能にする弾性組織に囲まれた層状扁平上皮により裏打ちされた直径約0.5mmの管である。涙は、小管UCおよびLC中を流れ、涙嚢LSに入る。次いで、涙嚢LS中に蓄積する涙は、そこから排出され、鼻涙管NLDと呼ばれる管を通過し鼻腔に入る。
【0020】
図1では、本発明の物質送達装置10の一実施形態を、下部涙点アパーチャLPおよび下部小管LC中で図示のように実施している。
【0021】
図1Bは、ヒトの眼の角膜Cの前面上の典型的な涙液膜TFを示す。この涙液膜TFは、3つの層、すなわち、内部粘液層ML、外部脂質層LL、およびこれら2つの層の間の水層ALからなる。
【0022】
図2〜2Bは、本発明の物質送達装置10の第1の実施形態を示す。この実施形態では、物質送達装置10は、涙点プラグ構成部品12および物質挿入部構成部品11を備える。涙点プラグ12は、細長ボディ部分18および物質挿入部支持部分20を有する。涙点プラグは、先の表に示すとともに、参照により本明細書に組み込んだ出願に記載されるような任意の適当な非生分解性材料、部分的に生分解性の材料、または完全に生分解性の材料で形成することができる。涙点プラグ12を形成することのできる材料の例には、エラストマ、シリコーン、親水性ポリマー、親水性シリコーン、ポリウレタン、アクリル、ポリビニルアルコール、ヒドロゲル、ポリウレタンヒドロゲル、固体ヒドロゲル、シリコーン/ポリウレタン共重合体、シリコーン/ポリ(エチレングリコール共重合体、シリコーン/2ヒドロキシエチルメタクリラート共重合体(HCMA)および他が含まれるが、これらに限定されない。物質挿入部支持部分20内に物質挿入部支持キャビティ24が形成され、物質挿入部支持キャビティ24の口すなわち開口の周りで、フランジ22が任意選択で延在する。物質挿入部11は、シース14および物質コア16を備える。本実施形態または本明細書に記載する任意の他の実施形態の物質コア16は、治療物質または診断物質と組み合わせた、あるいはこれを加えたポリマーや他の適当な材料等のマトリックス材料を含む。具体的なマトリックス材料、治療/診断物質、および物質コア16を作製する方法は、上の表に示すとともに参照により本明細書に組み込んだ出願中で十分に記載されている。物質コア16のマトリックスを形成することのできる材料の具体的な例の1つはシリコーンエラストマである(たとえば、Nusil MED6385、Nusil Technology,L.L.C.、カリフォルニア州カーピンテリア)。シース14は、物質コア16が挿入されるルーメンを有する。本実施形態では、シース14の外面に細長溝つまりチャネル29が形成されるように、シース14の側壁に波形が付けられている。本実施形態および後に記載のその他の実施形態のシース14は、物質に対して実質的に不浸透性である材料(たとえば、ポリイミド、ポリエチレン、またはポリエチレンテレフタレート(PET))で形成されるが、シース14の側壁内に各チャネル29に沿ってアパーチャ28が形成される。図2Aおよび2Bに示すように、物質コアを、シース14のルーメン内に配置して、物質挿入部11を形成する。次いで、物質挿入部11を、遠位端を先にして涙点プラグ12の物質挿入部支持キャビティ24に挿入する。図1および1Aに示すように、装置10を下位つまり下部涙点LPに挿入し、これにより、涙点プラグ12の細長ボディ部分18が、下位つまり下部小管LPの水平部分に入り、物質挿入部支持部分20が、下位つまり下部小管LCの垂直部分に入り、フランジ22が、下位つまり下部涙点アパーチャLPの周りで延在する。涙および/または他の液体が、チャネル29に入ることができ、物質が、アパーチャ28を通って、チャネル29に入ってきた涙および/または他の液体内に溶出することができる。また、物質コア16の近位端PEが涙および/または他の液体にさらされ、これにより、薬剤も、物質コア16の近位端から眼の中の涙および/または他の液体内に溶出することができる。任意選択で、チャネル29が日常の顔面筋の動き(たとえば、瞬き、眼の開け閉め、眼を細めること等)に応答して撓むこと(たとえば、圧縮および減圧すること)ができるように、装置を可撓性材料から構築することができ、これにより、涙および/または他の流体をチャネルから出したりチャネルに入れたりするポンプ作用を作り出し、したがって、チャネル内での涙および/または他の液体の回転が増加し、角膜Cまたは眼の前面を覆う涙液膜TFおよび/または他の液体中の物質の濃度が増大する。これは、顔の筋肉の日常の動きに応答してチャネル29を撓ませることまたは圧縮、減圧させるのに十分な可撓性を有する材料で装置10の全体または一部分を形成することにより達成することができる。こうした材料の例には、シリコーンエラストマ、ヒドロゲル、および、一般にソフトコンタクトレンズの構築に使用される種類の親水性ポリマーを含む他のエラストマが含まれるが、これらに限定されない。また、任意選択で、物質コア11の遠位端を通って物質が失われないように、物質挿入部11の遠位端の全体または一部分を、物質に対して実質的に不浸透性にすることもできる。このことは、たとえば、物質コア16の遠位端DEにシール(seal)17(たとえば、物質不浸透性キャップまたはコーティング)を置くことにより達成することができる。本実施形態または本明細書に記載の任意の他の実施形態では、こうしたシール17は、シアノアクリレート(たとえば、LoctiteTM 4305等のUV硬化性シアノアクリレート、Henkel Corporation、ドイツ、デュッセルドルフ)、又は、たとえば、パリレン(ポリキシリレンポリマー)、金属性コーティング(たとえば、更に抗菌活性をもたらす銀ベースのコーティング)、ポリイミド、不浸透性シリコーン、(ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の)サーモプラスチック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または他の低浸透性ポリマー等の、物質に対して実質的に不浸透性である適当な他の材料から形成することができる。
【0023】
図2〜2Bでは、外側壁面と同様に内側ルミナル(luminal)壁が溝を有するように波形を付けた側壁を有するシース14を示している。本実施形態では、物質コア16は、シース14に挿入された時に、図面のようにシースのルーメンを実質的にふさぐように、押出し成形、ダイカット、加圧形成、または他の方法で対応する形状(たとえば、星様形状)にすることができる。ただし、シース14を構築する代替的形態も考えられることが理解されるであろう。たとえば、シース14の外面内のみに縦方向溝を押出し形成またはカットすることがあり、内側のルーメンは、溝のない円形の内壁を有することがある。こうした代替実施形態では、単純な円筒状の物質コア16を、シース14のルーメンを実質的にふさぐようにそのルーメンに挿入することができる。
【0024】
この装置10ならびに本明細書に記載のその他の実施形態10a、10b、10cおよび10dの構成部品は、任意の適当な材料で形成することができる。いくつかの実施形態では、こうした装置が生分解性であることがある。他の実施形態では、こうした装置が非生分解性であることがある。涙点プラグ12、シース14および物質コア16の構築に使用することのできる材料ならびに物質コア16に含有させることのできる特定の薬剤および他の物質の例が、上の表に示すとともに参照により本明細書に組み込んだ出願に記載されている。
【0025】
図3〜3Bは、本発明の物質送達装置10aの第2の実施形態を示す。本実施形態では、涙点プラグ構成部品12は、図2に示し、先に説明したものと同一である。ただし、本実施形態では、物質挿入部11aが、円筒状の物質コア16aと組み合わせた円形の内側ルミナル壁を有するシース30(たとえば、チューブ)を備える。第1の実施形態の物質コア16について先で説明したように、物質コア16は、治療または診断物質と組み合わせた、またはこれを加えたポリマーマトリックス(たとえば、シリコーンエラストマ)を含むことがある。シース30の外面内のみに、矩形溝形状の縦方向チャネル32をカット(たとえばレーザカット)、押出し成形または他の方法で形成し、これにより、内側ルーメン壁の断面を実質的に円形に維持することが可能になる。シース30は、物質に対して実質的に不浸透性である材料(たとえば、ポリイミド、ポリエチレン、PET等)で形成される。シース30の壁を貫通させて各縦方向チャネル32内に、アパーチャ34を形成する。図3Aおよび3Bに示すように、シース30の円形のルーメンに円筒状の物質コア16aを挿入して、物質挿入部11aを形成する。次いで、物質挿入部11aを、涙点プラグ12の物質挿入部支持キャビティ24に遠位端を先にして挿入する。装置10を下位つまり下部涙点LPに挿入することができ、これにより、涙点プラグ12の細長ボディ部分18が、下位つまり下部小管LPの水平部分に入り、物質挿入部支持部分20が、下位つまり下部小管LCの垂直部分に入り、フランジ22が、図1および1Aと同様に下位つまり下部涙点アパーチャLPの周りで延在する。次いで、涙および/または他の液体が、チャネル32に入ることができ、物質が、アパーチャ34を通って、チャネル32に入ってきた涙および/または他の液体内に溶出することができる。また、その他の実施形態と同様に、物質コア16aの近位端PEがむき出しになり、涙および/または他の液体にさらされ、これにより、薬剤も、物質コア16aの近位端から眼の中の涙および/または他の液体内に溶出することができる。任意選択で、チャネル32が日常の顔面筋の動き(たとえば、瞬き、眼の開け閉め、眼を細めること等)に応答して撓むこと(たとえば、圧縮および減圧すること)ができるように、装置を可撓性材料から構築することができ、これにより、涙および/または他の流体をチャネル32から出したりチャネル32に入れたりするポンプ作用を作り出し、したがって、チャネル内での涙および/または他の液体の回転すなわち交換が増加し、眼の角膜Cを覆う涙液膜TF中の物質の濃度が増大する。また、任意選択で、物質コア11aの遠位端を通って物質が失われないように、物質挿入部11aの遠位端の全体または一部分を、物質に対して実質的に不浸透性にすることもできる。このことは、たとえば、物質コア16aの遠位端DEに上記の任意選択のシール17(たとえば、物質不浸透性キャップまたはコーティング)を存在させることにより達成することができる。
【0026】
図4〜4Cは、本発明の物質送達装置10bの第3の実施形態を示す。この装置10bでは、物質挿入部支持部分20aが円ではなく多角形の断面の物質挿入部支持キャビティ24aを有するという点で、涙点プラグ12aが、図2および3の実施形態で使用される涙点プラグ12と異なる。物質挿入部11bは、アパーチャ42が側壁を貫通して形成された円筒状の物質不浸透性シース40と、円筒状シース40内に位置する円筒状の物質挿入部16aとを備える。上で説明したように、物質挿入部16aの遠位端DEを通過して物質が溶出ことを阻止するために、物質挿入部16aの遠位端DEにシール17(たとえば、物質不浸透性キャップまたは物質不浸透性コーティング)を任意選択で設けることができる。図4Cに示すように、円筒状の物質挿入部11bを多角形物質挿入部支持キャビティ24aに挿入すると、チャネル27が開いた状態に維持され、これにより、涙および/または他の液体がチャネル27に流れ込むことができる。アパーチャ42は好ましくは行状に配置され、物質挿入部11bは物質挿入部支持キャビティ24a内で回転可能に向きを定められ、これにより、アパーチャ42の行がチャネル27に隣接し、したがって、物質コア16aからの物質が、アパーチャを通過して、チャネル27に入る涙および/または他の液体内に溶出することができる。チャネル27に対するアパーチャ42の位置合わせを行うための物質挿入部11bのこのような回転による精密な方向付けを容易にするために、物質挿入部11aの近位端にマーカ41を提供して、アパーチャ42の行のいくつかまたは全ての位置を示すことができる。次いで、装置の組立て中にこうしたマーカ41を使用して、アパーチャ42がチャネル27に隣接することを確実にし、これにより、チャネル27内の涙および/または他の液体内への物質の溶出を容易にすることができる。その他の実施形態と同様に、チャネル27の壁が日常の顔面筋の動き(たとえば、瞬き、眼の開け閉め、眼を細めること等)に応答して撓むこと(たとえば、圧縮および減圧すること)を可能にするように、涙点プラグ12aの物質挿入部支持部分20aの壁の一部分または全体を上述のように可撓性材料から構築することができ、これにより、涙および/または他の液体をチャネル27から出したりチャネル27に入れたりするポンプ作用を作り出し、したがって、チャネル内での涙および/または他の液体の回転すなわち交換が増加し、眼の角膜Cを覆う涙液膜TF中の物質の濃度が増大する。また、物質挿入部11bの外面と物質挿入部支持キャビティ24aの内部側壁との間に1つまたは複数のチャネルまたはスペーサが存在するように、断面を多角形にするのではなく、物質挿入部支持キャビティ24aの壁にうねまたは溝を付けることができる、物質挿入部支持キャビティ24aの壁を卵形にすることのできる、あるいは物質挿入部支持キャビティ24aの壁に、表面分裂形状、スペーサまたはスタンドオフを設けることのできる装置に、本実施形態の様々な代替設計がなりうることが理解されるはずである。
【0027】
いくつかの応用例では、上述の物質挿入部11、11a、11bのシース部分14、30、40を除去し、物質挿入部11、11a、11bを、物質コア16、16aのみから、または実質的に物質コア16、16aのみから構成することができる。いくつかのこうした実施形態では、物質コア16、16aの外面内、または、これに隣接する、涙点プラグ12、12aの物質挿入部支持キャビティ24、24aの内壁内に、所望の溝、窪みまたは他のチャネルをカットまたは直接形成することができる。この概念は、図5〜5Aに示す物質送達装置10cの第4の実施形態に示す。本実施形態では、周囲のシースなしで、物質コア16aのみからなる物質挿入部11cと併用して図4の涙点プラグ12aを使用する。上で説明したように、物質コア16aの遠位端DEを通過して物質が溶出ことを阻止するために、物質コア16aの遠位端DEにシール17(たとえば、物質不浸透性キャップまたは物質不浸透性コーティング)を任意選択で設けることができる。図5Aに示すように、円筒状の物質コア16aを多角形物質挿入部支持キャビティ24aに挿入すると、チャネル27が開いた状態に維持され、これにより、涙および/または他の液体が、チャネル27に流れ込むことができ、シースに囲まれていない物質コア16aからの薬剤が、チャネル27に入る涙および/または他の液体中に溶出することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、物質挿入部が、複数のシースを組み込むことがあり、涙/液体フロー・チャネルが、これらのシース間に形成される。たとえば、図6〜6Bは、本発明の物質送達装置10dの第5の実施形態を示す。この装置10dでは、涙点プラグ12は、図2および3に示すとともに上で説明したものと同一であり、物質挿入部11dは、断面が正方形の物質コア16bと、断面が正方形の内部シース50と、断面が円形の外部シース54とを備える。他の実施形態の物質コア16、16aについて上で説明したよういに、この物質コア16bは、所望の治療物質または診断物質と組み合わせた、あるいはこれを加えたマトリックス材料で形成される。内部シース50および外部シース52は、物質に対して実質的に不浸透性である1つまたは複数の材料(たとえば、ポリイミド)で形成される。図示のように、内部シース50の側壁内にアパーチャ52を形成する。内部シース50のルーメン内に物質コア16bを配置して、ルーメン内を実質的にふさぐ。(物質コア16bが内部に配置された)内部シース50を外部シース54のルーメンに挿入し、これにより、本実施形態向けの物質挿入部11dが形成される。内部シース50の断面が正方形で、外部シース54の断面が円形なので、内部シース50の外面と外部シース54の内側ルミナル面との間で、内部シース50の側面に沿って開チャネル56が延在する。物質挿入部11dを、涙点プラグ12の物質挿入部支持キャビティ24に挿入する。物質コア16bの近位端PEは露出されたままであり、したがって、涙点内にインプラントされると、物質コア16bの近位端から物質が、涙点のエリア内に蓄積した涙および/または他の液体内に溶出することができる。さらに、このようにインプラントすると、涙および/または他の液体が、チャネル56に入ることができ、物質が、物質コア16bからアパーチャ52を通過して、チャネル56に入った涙および/または他の液体内に溶出することができる。その他の実施形態に関連して説明したように、チャネル56の壁が日常の顔面筋の動き(たとえば、瞬き、眼の開け閉め、眼を細めること等)に応答して撓むこと(たとえば、圧縮および減圧すること)を可能にするように、涙点プラグ12の物質挿入部支持部分20の壁の一部分もしくは全体、外部シース54の一部分もしくは全体、および/または内部シース50の一部分もしくは全体を上述のように可撓性材料から構築することができ、これにより、涙および/または他の液体をチャネル27から出したりチャネル27に入れたりするポンプ作用を作り出す。チャネル内での涙および/または他の液体のこうした回転すなわち交換により、眼の角膜Cを覆う涙液膜TF中の物質の濃度が増大する。
【0029】
治療物質または診断物質を眼の角膜に送達させること、または眼の角膜を介して送達させることが所望される応用例では、他の経路の通過による(装置をインプラントした涙点および/または小管LCを囲む組織への直接吸収(本明細書では概して「管周囲組織吸収」と称す)や、鼻涙管系を介した鼻内への排液等の)物質の不適当なロスを阻止するか、またはこれを最低限に抑えながら、眼の角膜を覆った涙液膜TF中で物質を溶解させることが望ましい。物質のこうしたロスを制限または阻止する方法の1つは、物質が涙点プラグ12、12aの壁を通過して拡散することができないように、またはこれを通過することができないように、涙点プラグ12、12aの全体または一部分を物質に対して不浸透性にすることである。このことは、涙点プラグ12、12aがシリコーン、または物質が通過することができる他の材料で形成された実施形態で特に重要であることがある。この点に関して、図7は、細長いボディ部分18および物質挿入部支持部分20bを有する改変涙点プラグ12bを示す。物質挿入部支持部分20bの構成は、上で説明した物質挿入部支持部分20、20aのどちらの構成と同じでもよい。しかし、この実施形態では、物質挿入部支持部分20bの側壁の外面にコーティング60が塗布されている。こうしたコーティングは、涙点プラグ12bの他の部分、または涙点プラグ12bの全体に塗布することもできる。このコーティング60は、涙点プラグの物質挿入部支持部分20b内に配置された物質挿入部から溶出されるどんな物質に対しても不浸透性の材料である。これにより、物質挿入部支持部分20bの側壁(または涙点プラグ12bのうちコーティング60が存在する任意の他の部分)を物質が通過することが防止される。このコーティング60が存在することにより、物質が管周囲組織吸収または鼻涙管系を介した排液を被る可能性を、こうした形態の物質の吸収/ロスが望ましくない応用例において制限することができる。このコーティング60により、涙液膜TF中に分散または溶解し、したがって、涙液膜を介して眼の前面に送達される物質の量を最大限に増やすこともできる。特に、本願出願人らは、涙点プラグ12bがシリコーンで形成され、物質挿入部が緑内障の処置向けのラタノプロストを含有している実施形態では、このラタノプロストのいくらかが涙点プラグ12の壁を通過するかまたは通過して拡散し、これにより、管周囲組織吸収または鼻涙管系を介した排液によって失われることがあると判断している。ラタノプロストは眼の角膜を介して眼の前眼房内に吸収されるように角膜に局所的に送達される時に緑内障の処置に対して最も効果的であるので、このことは問題である。しかし、物質不浸透性コーティング60を、物質挿入部支持部分20bの外面および/または涙点プラグ12bの他の部分に塗布すると、涙点プラグ12bからの拡散またはそこを通過することによるラタノプロストのロスが実質的に防止される。こうしたコーティング60は、たとえば、シアノアクリレート(たとえば、LoctiteTM 4305等のUV硬化性シアノアクリレート、Henkel Corporation、ドイツ、デュッセルドルフ)等の任意の適当な材料、または、たとえば、パリレン(ポリキシリレンポリマー)、金属性コーティング(たとえば、更に抗菌活性をもたらす銀ベースのコーティング)、ポリイミド、不浸透性シリコーン、(ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の)サーモプラスチック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または他の低浸透性ポリマー等の、実質的に物質に対して不浸透性の適当な他の材料から形成することができる。
【0030】
先に記載した本発明の各実施形態では、細長ボディ部分19が物質挿入部支持部分20、20a、20bに対して直角に延在した「L」型の涙点プラグ12、12a、12bが一般に利用される。しかし、他の涙点プラグ構成および設計と併用して本発明を使用することもできることが理解されるであろう。これらの構成および設計の多くが、小管LCの水平部分内には達さない。先に記載した涙点プラグの代わりに使用することのできるいくつかの代替涙点プラグ12c、12dおよび12eの例ならびに先の表に示すとともに参照により本明細書に組み込んだ特許出願に開示された他の涙点プラグを、図8A、8Bおよび8Cに示す。
【0031】
先の表に示すとともに参照により本明細書に組み込んだ出願で詳細に記載された多様な疾患を処置するために、本発明の装置および方法を使用することができる。具体的には、本発明の装置および方法は、眼の前面に局所的に投与された治療的に有効な量の物質が広まることとなる角膜、結膜、強膜、前眼房、小柱網、シュレム管、シュレム管から出るコレクタ経路、または眼の中の他の解剖学的構造(たとえば、前区の構造体)に影響を及ぼす眼疾患を処置するために、眼の前面に所望の物質を送達させることに使用することができる。本発明の装置および方法を使用することにより送達される治療物質で処置することのできる眼疾患の非限定的例には、緑内障、高眼圧症、角膜障害、ドライアイ、アレルギー、感染症、炎症および疼痛が含まれる。
【0032】
さらに、本発明の特定の例または実施形態を参照して上で本発明を説明してきたが、本発明の意図した趣旨および範囲から逸脱することなく、これらの例および実施形態に対して様々な追加、削除、変更および改変を行うことができることが理解されるであろう。たとえば、1つの実施形態または例の任意の要素または特性を、他の実施形態または例に組み込んでしまうと、またはこれとともに使用してしまうと、その実施形態または例がその用途に対して不適当になるということが特に明記されない限り、1つの実施形態または例の任意の要素または特性を、他の実施形態または例に組み込むことまたはこれとともに使用することができる。また、方法またはプロセスのステップを特定の順番で説明または記載している場合、特に明記しない限り、または、こうすることによりこの方法またはプロセスが意図された目的に対して実行不可能にならない限り、こうしたステップの順番は変更することができる。全ての合理的な追加事項、削除事項、修正事項および変更事項は、記載した例および実施形態の均等物とみなされ、添付の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象または動物対象の眼の涙点内にインプラント可能な物質送達装置であって、
プラグ・ボディおよび前記プラグ・ボディ内に形成された物質挿入部-支持キャビティを備える涙点プラグと、
遠位端および近位端を有する物質溶出コアからなる、またはこれを備える物質挿入部と
を備え、
前記物質挿入部が、前記涙点プラグの前記物質挿入部-支持キャビティ内に位置し、したがって、前記装置が前記眼の涙点内にインプラントされると、
a)前記物質溶出コアの近位端における第1の涙-溶出位置が、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体にさらされ、これにより、前記物質が、前記第1の涙-溶出位置から、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体内に溶出し、
b)前記物質溶出コア上の少なくとも1つの更なる涙-溶出位置も、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体にさらされ、これにより、前記物質が、前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置からも、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体内に溶出する、
物質送達装置。
【請求項2】
前記第1の涙-溶出位置が、前記物質溶出コアの前記近位端の全体を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記物質が前記物質溶出コアの前記遠位端から溶出することが実質的に防止されるように、前記物質溶出コアの前記遠位端の少なくとも一部分が、前記物質に対して不浸透性である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記物質挿入部-支持キャビティが、少なくとも1つの側壁を有し、
前記物質挿入部が前記キャビティに挿入されると、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体が入ることのできる少なくとも1つのチャネルが形成されるように、前記物質挿入部および前記キャビティの側壁が互いに相対的に構成され、
前記物質溶出コア上の前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置が、前記少なくとも1つのチャネルに隣接する、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記物質挿入部の側面内に少なくとも1つのチャネルが形成され、したがって、涙および/または他の液体が前記チャネルに入ることができ、
前記物質溶出コア上の前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置が、前記少なくとも1つのチャネルに隣接する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記物質挿入部-支持キャビティの側壁内に少なくとも1つのチャネルが形成され、したがって、涙および/または他の液体が、前記チャネルに入ることができ、
前記物質溶出コア上の前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置が、前記少なくとも1つのチャネルに隣接する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記物質溶出コアが、いくらかの量の前記物質と組み合わせたポリマーマトリックスを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが、シリコーンを含む、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記物質溶出コアの前記遠位端にシールが置かれる、
請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記シールが、いくらかの量のシーラントまたは接着材料を含む、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記シーラントまたは接着材料が、エチルシアノアクリレートを含む、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記物質挿入部が、本質的に前記物質溶出コアからなる、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記物質挿入部が、前記物質溶出コアからなる、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記物質挿入部が、前記物質溶出コアをシース部材と組み合わせて備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記シース部材が、側壁、ルーメン、開いた近位端、および遠位端を有し、
前記物質溶出コアが、前記シース部材の前記ルーメン内に配置される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記物質が前記シース部材の少なくとも一部分から溶出することが実質的に防止されるように、前記シース部材の前記少なくとも一部分が、前記物質に対して実質的に不浸透性である材料で形成される、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記シース部材が、ポリイミド、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの材料で形成される、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記物質が前記シース部材の全体から溶出することが実質的に防止されるように、前記シース部材の全体が、前記物質に対して実質的に不浸透性である材料で形成される、
請求項16に記載の装置。
【請求項19】
涙および/または他の液体が前記シース部材に隣接して流れることが可能になるように少なくとも1つのチャネルが存在し、
前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置が、前記シース部材内に前記少なくとも1つのチャネルに隣接して形成された1つまたは複数のアパーチャを含み、したがって、前記物質が、前記物質溶出コアから前記1つまたは複数のアパーチャを通過して、前記少なくとも1つのチャネルに入った涙および/または他の液体内に溶出することとなる、
請求項14、15、16、17または18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記1つまたは複数のアパーチャが、行状に配置された複数のアパーチャを含む、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記アパーチャの行が前記チャネルに隣接して位置づけられるように、前記物質挿入部が、前記物質挿入部-支持キャビティ内での前記物質挿入部の位置決めを容易にするのに使用可能な少なくとも1つのマーカを更に含む、
請求項20に記載の装置。
【請求項22】
各アパーチャが、約0.001mm〜約0.5mmの直径または最大横断寸法を有する、
請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つのチャネルが、前記シース部材内に形成された少なくとも1つの溝または細長い窪みを含む、
請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記物質挿入部-支持キャビティの側壁が、前記少なくとも1つのチャネルが設けられるように構成される、
請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記物質挿入部-支持キャビティの断面が多角形である、
請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記物質挿入部が、
側壁、ルーメン、開いた近位端、および遠位端を備える外部シース部材と、
側壁、ルーメン、開いた近位端、および遠位端を備える内部シース部材と
を備え、
前記物質コアが、前記内部シース部材の前記ルーメンの前記ルーメン内に配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項27】
涙および/または他の液体が流れ込むことのできる少なくとも1つのチャネルが前記内部シース部材の前記側壁と前記外部シース部材の前記側壁との間に存在するように、前記内部シース部材および前記外部シース部材が互いに相対的に構成され、
前記少なくとも1つの更なる涙-溶出位置が、前記シース部材内に前記少なくとも1つのチャネルに隣接して形成された1つまたは複数のアパーチャを含み、したがって、前記物質が、前記物質コアから前記少なくとも1つのアパーチャを通過して、前記少なくとも1つのチャネルに入った涙および/または他の液体内に溶出することが可能になる、
請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つのチャネルが、特定の筋肉動作により撓み、これにより、涙および/または他の液体を前記少なくとも1つのチャネルに入れたり、そこから出したりする、
請求項4、5、6、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つのチャネルの撓みが、眼を閉じること、瞬き、および眼を細めることからなる群から選択される少なくとも1つの筋肉動作により生じる、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プラグ・ボディが、エラストマ、シリコーン、親水性ポリマー、親水性シリコーン、ポリウレタン、アクリル、ポリビニルアルコール、ヒドロゲル、ポリウレタンヒドロゲル、固体ヒドロゲル、シリコーン/ポリウレタン共重合体、シリコーン/ポリ(エチレングリコール共重合体、シリコーン/2ヒドロキシエチルメタクリラート共重合体(HCMA)およびこれらの要素の任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料で形成される、
請求項1または28に記載の装置。
【請求項31】
前記プラグ・ボディのうち前記物質挿入部-支持キャビティに隣接する少なくとも一部分が、前記物質に対して不浸透性であり、これにより、前記プラグ・ボディのその部分を通過して前記物質が溶出することが防止される、
請求項1に記載の装置。
【請求項32】
前記プラグ・ボディの全体が、前記物質に対して実質的に不浸透性である、
請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記プラグ・ボディの前記少なくとも一部分が、前記物質に対して不浸透性であるコーティングにより、前記物質に対して不浸透性になされる、
請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記コーティング材料が、シアノアクリレート、UV硬化性シアノアクリレート、パリレン(ポリキシリレンポリマー)、金属性コーティング、銀ベースのコーティング、ポリイミド、不浸透性シリコーン、サーモプラスチック、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびこれらの要素の任意の組合せからなる群から選択される、
請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記プラグ・ボディの前記少なくとも一部分が、前記物質に対してこの部分を不浸透性にする材料と組み合わせたポリマーで形成される、
請求項31に記載の装置。
【請求項36】
前記治療物質が、眼疾患を処置する効果のある物質を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項37】
前記装置が、眼の前面に局所的に投与された治療的に有効な量の物質が広まることとなる角膜、結膜、強膜、前眼房、小柱網、シュレム管、シュレム管から出るコレクタ経路、または眼の中の他の解剖学的構造に影響を及ぼす眼疾患を処置するために、治療的に有効な量の物質を送達させる、
請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記装置が、緑内障、高眼圧症、角膜障害、ドライアイ、アレルギー、感染症、炎症および疼痛からなる群から選択される疾患を処置するために、治療的に有効な量の物質を送達させる、
請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記装置が、緑内障または高眼圧症に対して治療的に有効な量の物質を送達させ、
前記物質が、βアドレナリン拮抗薬、αアドレナリン拮抗薬、プロスタグラジン類似体、副交感神経作動薬、および炭酸アンヒドラーゼ阻害剤からなる群から選択される、
請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記治療物質が、ラタノプロスト、トラバプロスト、およびビマトプロストからなる群から選択される、
請求項39に記載の装置。
【請求項41】
ヒト対象またはヒト以外の動物対象の眼の疾患を処置する方法であって、
(A)前記疾患を処置する効果のある物質を前記物質コアが溶出する請求項1〜40のうちいずれか1項に記載の物質送達装置を取得するステップと、
(B)前記物質送達装置を前記対象の眼の涙点内にインプラントし、これにより、前記物質コアから前記物質が、治療的に有効な薬量の前記物質を前記眼の角膜に送達させることとなる濃度で、または治療的に有効な薬量の前記物質を前記眼の角膜を介して送達させることとなる濃度で、前記眼の前面に広がる涙および/または他の液体内に溶出するステップと
を含む方法。
【請求項42】
前記疾患が緑内障であり、
前記物質が、緑内障を処置する効果のある物質であり、
ステップBにより、治療的に有効な量の前記物質が、前記眼の前眼房内に角膜浸透的に送達される、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記送達が、少なくとも約90日間維持される、
請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2012−512725(P2012−512725A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542510(P2011−542510)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068848
【国際公開番号】WO2010/071844
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(502254176)キュー エル ティー インク. (13)
【氏名又は名称原語表記】QLT Inc.
【住所又は居所原語表記】887 Great Northern Way, Vancouver,British Columbia, Canada V5T 4T5
【Fターム(参考)】