説明

特にサイクリング用のシートパッド付スポーツ衣料

【課題】サイクリングパンツのサドル当接部に設けられたパッドに関し、疲労・ストレスを軽減する柔らかいパッドの快適性と満足なパッドとペダリング動作に追従するパッドの提供。
【解決手段】サイクリングスーツであるスポーツ衣料で、股部分2A内にシートパッド1を有し、シートパッド1は前方取付領域3および後方取付領域4内で衣料に取り付けられ、シートパッドの中央部7は衣料への取り付けがなく、衣料の内側股エリア内の緩みのある部分を形成する。取付領域には、取付線5,6またはいくつかの取付点が、縫い付け、糊付け、または他の技術により作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ衣料に関し、特にサイクリング用のスポーツ衣料に関する。本発明は特にサイクリングパンツ(ズボン)のような股エリアにシートパッドが付けられたスポーツ衣料に関し、また上記シートパッドを衣類に固定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のサイクリングパンツは身体の会陰部および/または坐骨部を保護するために柔らかい材料で作られたシートパッドを装備しており、サイクリングパンツは二輪車のサドルと接触していて、集中的に利用する際に不快感や痛みを引き起こす場合がある。従来技術によれば、このようなシートパッドは通常、隆起や疲労ストレスを減じることができる柔らかい素材の複数の層と、肌に触れる織物層とを有する。
【0003】
欧州特許出願第1269873号公報には展信材よりなるベース層と使用者の身体に触れる伸縮性のある生地とを有するインサーションの形のシートパッド付のサイクリスト用パンツが開示されている。
【0004】
欧州特許出願第1430797号公報には、1枚の裏地又はシートパネル裏地よりなる保護用裏地付のスポーツ用パンツ及びショーツが開示されており、ショーツは伸縮性の織物又は編地で製造され、裏地は伸縮性の柔らかい材料よりなり、裏地の縁に沿って配置された選択点において上記ショーツの伸縮性の織物又は編地に取り付けられる。
【0005】
サイクリスト用パンツの製造において、特に集中的利用のために、シートパッドの性能と快適さを改善するための継続的な努力がなされている。特に、身体への適合および身体にぴったりと合うこと、また、使用者の会陰エリアを正しくサポートすることの2つが、サイクリングスーツにおいて最も重要な必要条件である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第1269873号公報
【特許文献2】欧州特許出願第1430797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、スポーツ用またはサイクリング用パンツの柔らかいパッドの快適性と満足なパッドとしての作用を保ちながらペダリング動作に追随する能力とをなお改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それらの目的は、請求項1における肌に密着したスポーツ衣料によって達成され、上記スポーツ衣料は、少なくともパンツとしての役目をする部分および股エリアに位置するシートパッドを有し、上記シートパッドは上記衣料に対する前方取付領域および上記衣料に対する後方取付領域を有し、上記シートパッドの中心部分は上記衣料に対して取り付られることなく上記衣料の内股エリア内に上記シートパッドの緩みのあるブリッジ部を形成する。
【0009】
上記前方取付領域および後方取付領域は上記シートパッドと上記衣料の股エリアの間で唯一取り付けられているものである。よって、上記シートパッドの前方部と後方部とを繋ぐ上記ブリッジ部は身体にぴったりとした上記衣料に関する動き、特に上記パンツと股エリアに関する動きに対して自由である。
【0010】
前方取付領域および後方取付領域のいずれかは少なくとも1本の連続した取付線および/または複数の取付点を有することができ、それはつまり、シートパッドとパンツの間の取付が分散した形または局所的な形のいずれかとなり得る。複数の取付点がある実施例では、取付点は等しい間隔を空けて置かれることが望ましい。一方の取付領域は連続した接合線を持ち、もう一方の取付領域は複数の取付点を持つといった、実施例を混合することも可能である。
【0011】
上記取付線または取付点は、例えば縫い付け、糊付け、または熱溶接など他の技術による形でもよい。本発明の実施の形態によれば、上記取付線または取付点を実現するためにどんないわゆる公知の取付技術も用いることができると考えられる。
【0012】
シートパッドの緩みのあるブリッジ部は、前方取付領域と後方取付領域の端部により区切られ、連続した線または複数の取付点のいずれかで実現される。好ましくは、シートパッドのブリッジ部にゆったりとしたフィット効果を持たせるために前方取付領域の左右どちらかの端部とそれに対応する後方取付領域の左右どちらかの端部の間の距離は少なくとも5cmとする。上記のような距離は、シートパッドを二等分する縦軸に平行な線上にあるシートパッドの突出の上で測定される。
【0013】
複数の取付点を採用した本発明の実施の形態では、すなわち、パンツとシートパッドの前方取付領域の間にある第1の複数の取付点、および、パンツと後方取付領域の間にある第2の複数の取付点では、前述の好ましい最小距離は、前方領域の左または右端部取付点とそれに対応する後方領域の左または右端部取付点との間で計測する。
【0014】
シートパッドの全面部および/または後方部が凹形シェル形状を持っていてもよく、スポーツパンツをより身体構造的そして着用に適する様にすることに適している。
【0015】
シートパッドの詳細はいくつかのいわゆる公知の技術によって実現することが出来る。シートパッドは柔らかい素材によって実現され、布製ポケットに挿入された例えば1つ以上の柔らかいスポンジ部材を有していてもよい。
【0016】
本発明の長所は、前方および後方取付領域によってシートパッドが衣料にしっかりと取り付けられていることであり、すなわち、身体が最大限にパッド効果を必要とする大事な前方/後方股エリア内においてシートパッドが衣料に付着したままでいることである。一方、緩みのある中央領域が快適さと身体の動きに正確に従う能力を増大する。具体的には、シートパッドの前方および後方領域は、同じシートパッドの一部でありながら実質的に互いに独立している。サイクリングスーツまたはパンツでは、例えば、肌に密着するパンツはより良くフィットすることができ、中にある柔らかいパッドの存在のせいで機能を損なうことなく、ペダリング中の脚部の交互の動きに追随することができる。前方および後方部分だけがパンツに固定されていて中央部分のブリッジ部は実質的に自由なままであることから、シートパッドはペダリング動作の下で自由にねじれることができる。よって、柔らかいパッドは身体により良く適応することができ、特に男性生殖器官のより良いサポートを提供することができる。
【0017】
本発明はシートパッドを連続した取付線または、例えば、縫い目または溶接点であるいくつかの近接した取付点でその全周に沿って接合することなく最高のパフォーマンスを見出すことに基づいている。実質的に自由かつ緩みのあるブリッジ部を前方および後方取付領域の間に残すことが有利な効果を持つことがわかった。
【0018】
本明細書で使われる「スポーツ衣料」という用語は、ショーツまたはロングパンツからなる衣料または例えば一体型といったパンツ部分を有する衣料を含んでもよい。更に詳細には、「サイクリング衣料」という用語は、例えばショーツまたはロングパンツ、オーバーオール、タイツボディスーツ等のようなサイクリング競技での使用に適した着用品を指す。「シートパッド」という用語は、パンツに関連付けられるまたはパンツ自体の中に形成される成形されたパッドであり、使用中は二輪車のサドルに接するものを特定する時に用いられる。
【0019】
本発明の他の態様はサイクリングスーツのようなスポーツ衣料を作製する方法であって、上記衣料は少なくともパンツとしての役目をする部分を有し、上記方法はシートパッドを上記衣料の股エリアに取り付ける工程を有し、上記シートパッドの前方部分は上記スーツに取り付けられ、上記シートパッドの後方部分は上記スーツに取り付けられ、上記前方部分と後方部分の間にある上記シートパッドの中央部分は、上記スーツに取り付けられておらず、よって上記衣料の内股エリア内に上記シートパッドの緩みのあるブリッジ部分を残すことを特徴とする。
【0020】
本発明の上記および更なる利点については下記の指示的かつ例を限定しない詳細な説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態により実現されるサイクリングパンツの図である。
【図2】本発明の一実施形態により実現されるサイクリングパンツの股エリアに取り付けられるシートパッドの上面図である。
【図3】本発明の他の一実施形態により実現されるサイクリングパンツの股エリアに取り付けられるシートパッドの上面図である。
【図4】本発明のシートパッドの好ましい形態を示す図である。
【図5】図2に示す衣料およびシートパッドの二等分線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は身体にぴったりとした衣料の股エリア2に取り付けられたシートパッド1を示す。シートパッド1はサイクリングパンツ2の内部に取り付けられ、図1に点線で表されている。同様な実施の形態(図示せず)において、この発明に関する衣料は異なる形状をとることができ、例えば、パンツとしての役目をする部分を少なくとも有するサイクリングスーツであってもよい。
【0023】
好ましくは、シートパッド1は身体構造的形状をしている。更に好ましくは、シートパッド1の前方部分3ひいては後方部分4は凹形シェル形状に形成される。
【0024】
サイクリングパンツ2は好ましくは伸縮性の織物または編物で作られ、パッド1は好ましくは柔らかい素材で作られ、より好ましくは全方向に伸縮性のある柔らかい素材で作られる。
【0025】
シートパッド1の前方部分3および後方部分4のみがパンツ2に取り付けられる。図2の実施の形態を参照すると、シートパッド1の前方部分3はパンツ2に前方取付線5に沿って取り付けられ、前方取付線5は例えば縫い目線であるが他の技術で作られたものでもよく、本発明のいくつかの実施の形態によれば、例えば熱溶接もしくは糊付けがある。シートパッド1の後方部分4は後方取付線6に沿ってパンツ2に取り付けられており、後方取付線6は好ましくは、この限りではないが、前方取付線5と同じ技術で作られる。線Mはシートパッド1の股部分の二等分線である。好ましくは、シートパッド1は線Mを軸として対称である。
【0026】
シートパッド1とパンツ2を繋ぎ合わせる唯一の手段が前述の前方および後方取付線5,6であることから、シートパッド1の残りの部分が緩みのあるブリッジ部分7を形成する。図5の断面図から一番よくわかるように、ブリッジ部分7が緩みのある部分となってパンツ2の股エリア2の中間の動きに対し実質的に自由となるように、シートパッド1の中央のブリッジ部分7はパンツ2へ取り付けられることなく、パンツ2の表面とシートパッド1自体との間に空間10を残すこととなる。7aの指す表面が内側表面であって、使用中に使用者に触れている部分である。
【0027】
図5は織物層13,14の間に挿入された1層の柔らかい素材12をシートパッド1が有している好ましい実施の形態を示している。
【0028】
他の実施の形態が図3に示されており、第1の複数の取付点8がパンツ2とシートパッド1の前方部分3との間にあり、第2の複数の取付点9がパンツ2と第1の複数の取付点8と同じシートパッド1の後方部分4との間にある。また、取付点8,9は縫い付けの点、糊付けまたは溶接の点、または他の適した技術で作られていてもよい。
【0029】
緩みのあるブリッジ部分7はシートパッド1の取付領域の左右の端部で区切られる。図2および図3の実施の形態では、緩みのあるブリッジ部分7は取付線5,6(図2)の端部で区切られるかポイント8,9および8,9のような左右の取付点で区切られる(図3)。
【0030】
更に他の本発明の好ましい実施の形態によれば、取付領域の端部間の距離は少なくとも5cmであり、5〜10cmであることが望ましい。前述の距離は二等分線Mの上もしくはMに平行な線上にてシートパッド1の略曲線を成す縁部11の突出の上で測り、シートパッド1とパンツ2はストレッチされていない(つまり、変形していない)。例えば、図4は図3のような複数点の実施の形態を示し、前方右端部の取付点8とそれに対応する後方右端部の取付点9の間の距離Dを示す。それと同じ好ましい距離が左端部8,9の間で保たれる。上記のことは図2の取付線の実施の形態にも等しく適用でき、距離Dは取付線5,6の端部の間、例えば右側のポイント5,6の間で同様に測定される。
【0031】
シートパッド1とパンツ2の間には取付点はなく、取付点はブリッジ部分7に対応する中央領域に作られており、すなわち、取付線5,6の端部の間または取付点8,9と8,9の間に作られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に密着したスポーツ衣料であって、少なくともパンツとしての役目をする部分および股エリアに位置するシートパッドを有し、前記シートパッドは前記衣料に対する前方取付領域および前記衣料に対する後方取付領域を有し、上記シートパッドの中心部分は前記衣料に対して取り付けられることなく前記衣料の内股エリア内にある前記シートパッドの緩みのあるブリッジ部を形成することを特徴とするスポーツ衣料。
【請求項2】
請求項1に記載の衣料であって、前記シートパッドと前記衣料の間にある前記前方取付領域および/または後方取付領域は連続した取付線を有することを特徴とする衣料。
【請求項3】
請求項1に記載の衣料であって、前記シートパッドと前記衣料との間にある前記前方取付領域および/または後方取付領域は複数の取付点を有することを特徴とする衣料。
【請求項4】
請求項3に記載の衣料であって、前記前方および/または後方取付領域の前記取付点は互いに等間隔で設けられることを特徴とする衣料。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の衣料であって、前記取付線または取付点は、縫い付け、糊付け、または前記シートパッドを前記衣料の内側に熱溶接することで作られることを特徴とする衣料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の衣料であって、前記前方取付領域の左端部または右端部とそれに対応する前記後方取付領域の左端部または右端部との間の距離は少なくとも5cmであり、前記距離は、前記衣料および前記シートパッドが伸張されていない時に、前記シートパッドの長手方向の二等分線に平行な線上における前記シートパッドの外形の突出の上で測定されることを特徴とする衣料。
【請求項7】
請求項5に記載の衣料であって、前記取付領域の左端部および右端部は、前記シートパッドと前記衣料の間において前記連続した取付線の端部または前記複数の前方および後方取付点それぞれの取付点の左端部および右端部であることを特徴とする衣料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の衣料であって、前記シートパッドの前方部分および/または後方部分は、前記衣料がより身体構造的で着用に適するように凹形シェル形状を持つことを特徴とする衣料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の衣料であって、前記衣料はサイクリングスーツまたはサイクリングパンツであることを特徴とする衣料。
【請求項10】
サイクリングスーツのようなスポーツ衣料を製造する方法であって、前記衣料は少なくともパンツとしての役目をする部分を有し、前記方法はシートパッドを前記衣料の股エリアに取り付ける工程を有し、前記シートパッドの前方部分は前記スーツに取り付けられ、前記シートパッドの後方部分は前記スーツに取り付けられ、前記シートパッドの中央部分は、前記前方および後方部分の間で、前記スーツに取り付けられることなく、前記シートパッドの緩みのあるブリッジ部分を前記衣料の内股部分に残すことを特徴とする衣料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−180629(P2012−180629A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40192(P2012−40192)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(507193342)アソス オブ スイッツァーランド エス エー (1)
【氏名又は名称原語表記】ASSOS of Switzerland S.A.
【住所又は居所原語表記】Switzerland,CH−6854 San Pietro di Stabio,Via Bresce 1
【Fターム(参考)】