説明

特定のタルクを含むポリカーボネート成形用組成物

【課題】高強靭性、低いガラス転移温度、低熱膨張係数および良好な加工性を有する、ポリカーボネート組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート、少なくとも1種の衝撃変性剤、およびAl2O3含有量1重量%未満である高純度タルクを含有するポリカーボネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強靭性、低温でのガラス転移および熱膨張係数が低く良好な加工性を特徴とする、特別のタルクを入れたポリカーボネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
充填されたおよび/または補強されたPC/ABS成形用組成物は知られている。
【0003】
例えば、欧州特許出願公開第0 391 413号は、特定の幾何学的性質を有する無機充填剤を含むPC/ABS成形用組成物を記載し、この成形用組成物は線膨張率の低さ、衝撃荷重下における高強靭性、および耐熱性の高さによって指定されている。タルクおよび非か焼クレー材料が、この発明の充填剤として記載されている。
【0004】
欧州特許出願公開第0 452 788号は、特につや消し材料表面によって特徴づけられる、タルクを含むPC/ABS成形用組成物を記載する。
【0005】
国際公開番号WO98/51737号は、無機物を充填したPC/AES配合物であって、PC65〜85重量%、ゴム変性熱可塑性物10〜50重量%、無機充填剤1〜15重量%のものを成形用組成物として使用すること、併せて外部車両車体部の分野の用途を記載する。利点は、従来品と比較して、寸法安定性、熱性能、ノッチ付衝撃抵抗性および流量特性が改善されていると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ノッチ付衝撃抵抗性の改善、および低温でのガラス転移である。低温のガラス転移は、特に外部車両車体部で重要である。0℃を下まわる温度での、使用材料の脆性破片化は、アクシデントが起きた場合、重大な事故となり得るからである。
【0007】
今回、下記の特定のタルクを含む衝撃変性ポリカーボネート組成物が所望の性質を有することを見出した。特に、本発明による組成物の性質は、低温下であっても、材料の破片の飛散の保護で必要とされる、用途に優れた表面品質を有する、外部車両車体部の製造の使用に効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、衝撃変性剤、および特定の高純度タルク 組成物総量に対して0.05〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部、特に好ましくは1〜20重量部を含有し、該タルクがタルクに対してAl23含有量1重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、特に好ましくは0.7重量%以下、とりわけ0.5重量%以下を有するものである、ポリカーボネート組成物を提供する。
【0009】
好ましいポリカーボネート組成物は下記を含むものである:
A) 少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート30〜98重量部、好ましくは40〜95重量部、特に好ましくは45〜90重量部、
B) 少なくとも1種のグラフトポリマー0.5〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは1.5〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部、
C) 上の定義によるタルク0.05〜40重量部、特に0.5〜30重量部、特に好ましくは1〜20重量部、最も好ましくは2〜15重量部。
全成分(A〜Cおよび、必要に応じて別の成分要素)の重量部の合計は100である。
【0010】
成分A
本発明の成分Aに適した芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献から公知であるかまたは文献から既知の方法で調製できる(芳香族ポリカーボネートの調製については、例えばシュネル著、「ケミストリー・アンド・フィジックス・オブ・ポリカーボネーツ」インターサイエンス・パブリッシャーズ、1964年、およびドイツ特許出願公開(AS)第1 495 626号、同(OS)第2 232 877号、同(OS)第2 703 376号、同(OS)第2 714 544号、同(OS)第3 000 610号および同(OS)第3 832 396号を参照;芳香族ポリエステルカーボネートの調製については、例えばドイツ特許出願公開(OS)第3 077 934号を参照)。
【0011】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールとカルボン酸ハライド(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)との反応により、場合によって連鎖停止剤(例えばモノフェノール)および必要に応じて3官能以上の枝分かれ剤(例えば、トリフェノールまたはテトラフェノール)を用いた相境界法で調製される。
【0012】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの調製のためのジフェノールは、好ましくは下記の式(I):
【化1】

式中、Aは、単結合、C1-C5アルキレン、C2-C5アルキリデン、C5-C6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO2-、C6-C12アリーレン(これらには、任意にヘテロ原子を含有する他の芳香環が縮合できる)、
または式(II)もしくは式(III)
【化2】

の基であり、
Bは、互いに独立して、C1-C12アルキル(好ましくはメチル)、ハロゲン(好ましくは塩素および/または臭素)であり、
xは、それぞれ互いに独立して0、1または2であり、
pは、1または0であり、そして
5およびR6は、各X1に対して独立して選択でき、かつ互いに独立して水素またはC1-C6アルキル、好ましくは水素、メチルおよび/またはエチルを表わし
1は、炭素を表わし、そして
mは、少なくとも1個の原子X1において、R5およびR6が共にアルキルである場合には、4〜7、好ましくは4または5を表わす、である。
【0013】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス-(ヒドロキシフェニル)-C-C-アルカン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)-C-C-シクロアルカン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス-(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホン類およびα,α-ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピルベンゼン類、および環上で臭素化されたおよび/また環上で塩素化されたそれらの誘導体である。
【0014】
特に好ましいジフェノールは、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびそれらの二-および四-臭素化または塩素化誘導体[例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンまたは2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンなどである。
【0015】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0016】
ジフェノールは、個別にまたは所望の混合物として使用できる。
【0017】
ジフェノールは、文献から公知であるか、または文献より既知の方法で得ることができる。
【0018】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に好適な連鎖停止剤の例は、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert.-ブチルフェノールまたは2,4,6-トリブロモフェノール、さらにドイツ特許出願公開(OS)第2842005号に記載の4-(1,3-テトラメチルブチル)-フェノールのような長鎖アルキルフェノール、またはアルキル置換基中に合計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール(例えば、3,5-ジ-tert.-ブチル-フェノール、p-イソオクチルフェノール、p-tert.-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノールおよび2-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノール)である。使用される連鎖停止剤の量は、一般に、それぞれの事例で使用されるジフェノールの合計モルに対し0.5モル%〜10モル%の間である。
【0019】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、重量平均分子量(M、例えば超遠心分離または光散乱測定法によって測定されるもの)10,000〜200,000、好ましくは15,00〜80,000を有している。
【0020】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、特に好ましくは3官能以上の化合物(例えば、フェノール基3個以上を有するもの)を、使用されるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0モル%組み込むことによって枝分かれできる。
【0021】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートはいずれも適している。本発明によれば、成分Aに関するコポリカーボネートを調製するために、ヒドロキシアリーロキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン(用いられるジフェノールの合計量に対して)1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%使用することも可能である。これは、既知であるか(例えば、米国特許第3419634号公報 参照)または文献より公知の方法で調製できる。ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートの調製は、例えば、ドイツ特許出願公開(OS)第3334782号公報に記載されている。
【0022】
ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、好ましいかまたは特に好ましいと記載されている他のジフェノール、特に2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンを、ジフェノールの合計モルに対し15モル%まで有するビスフェノールAのポリカーボネートである。
【0023】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製のための芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸およびナフタレン-2,6-ジカルボン酸の二酸ジクロライドである。
【0024】
イソフタル酸とテレフタル酸の二酸ジクロライドの比1:20〜20:1の混合物が特に好ましい。
【0025】
カルボン酸ハライド、好ましくはホスゲンも、ポリエステルカーボネートの調製において二官能の酸誘導体として使用される。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製に使用できる連鎖停止剤は、前述のモノフェノールに加えて、そのクロロ炭酸塩、および芳香族モノカルボン酸の酸クロライドであり、それらはC-C22-アルキル基で、またはハロゲン原子、並びに脂肪族C-C22-モノカルボン酸クロライドで任意に置換され得る。
【0027】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合はジフェノールのモルに対して、またモノカルボン酸クロライド系連鎖停止剤の場合はジカルボン酸ジクロライドのモルに対して、いずれの場合も0.1〜10モル%である。
【0028】
芳香族ポリエステルカーボネートも組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有し得る。
【0029】
芳香族ポリエステルカーボネートは、既知の方法で直鎖および分岐され得る(これに関しては、ドイツ特許出願公開(OS)第2940024号公報および同(OS)第3007934号公報 参照)。
【0030】
使用され得る枝分かれ剤は、例えばトリメシン酸トリクロライド、シアヌール酸トリクロライド、3,3',4,4'-ベンゾフェノン-テトラカルボン酸テトラクロライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロライドまたはピロメリット酸テトラクロライドのような3官能以上のカルボン酸クロライド(使用されるジカルボン酸ジクロライドに対して)0.01〜1.0モル%、またはフロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプト-2-エン、4,4-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゼン、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]-プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル-イソプロピル)-フェノール、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-プロパン、テトラ-(4-[4-ヒドロキシフェニルイソプロピル]-フェノキシ)-メタンおよび1,4-ビス[4,4'-ジヒドロキシトリフェニル)-メチル]-ベンゼンのような3官能以上のフェノール(使用されるジフェノールに対して)0.01〜1.0モル%である。フェノール系枝分かれ剤は、反応容器にジフェノールと共に最初に導入でき、酸クロライド系枝分かれ剤は、酸ジクロライドと一緒に導入できる。
【0031】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は、所望の通りに変えることができる。カーボネート基の含量は、エステル基とカーボネート基の合計に対して、好ましくは100モル%まで、特に80モル%まで、特に好ましくは50モル%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルおよびカーボネート含量はいずれも、重縮合物中に塊の形態かまたはランダムに分布され得る。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4の範囲、好ましくは1.20〜1.32である(塩化メチレン溶液100 mL中のポリエステル-カーボネート0.5gの溶液について25℃で測定した値)。
【0033】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独でまたは互いの所望の混合物で使用できる。
【0034】
成分B
成分Bは、
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の、
B.2 ガラス転移温度10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満の1種またはそれ以上のグラフトベース95〜5重量%、好ましくは70〜10重量%への、
1種またはそれ以上のグラフトポリマーを含む。
【0035】
グラフトベース B.2は、一般に、平均粒子径(d50値)0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmを有する。
【0036】
モノマーB.1は好ましくは、
B.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンなど)および/またはメタクリル酸(C1-C8)-アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)50〜99重量部と、
B.1.2 シアン化ビニル(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなど)および/または(メタ)アクリル酸(C1−C8)アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert.-ブチルアクリレートなど)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(酸無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN-フェニル-マレイミド)1〜50重量部
との混合物である。
【0037】
好ましいモノマーB.1.1は、スチレン、α-メチルスチレンおよびメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1種から選択される;好ましいモノマーB.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートのモノマーの少なくとも1種から選択される。
特に好ましいモノマーは、B.1.1スチレンおよびB.1.2アクリロニトリルである。
【0038】
グラフトポリマーBにおいて適したグラフトベースB.2は、例えば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンベースのもの、および必要に応じてジエン、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムである。EP(D)Mゴムベースの系が耐候性成形用組成物として特に適している。
【0039】
好ましいグラフトベースB.2は、ジエンゴム(例えばブタジエン、イソプレンベースなど)もしくはジエンゴムの混合物もしくはジエンゴムのコポリマーまたは他のコポリマー可能なモノマー(例えばB.1.1およびB.1.2によるもの)との混合物であるが、但し成分B.2のガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-10℃未満以下であることを条件とする。
【0040】
純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。同様に、EP(D)Mゴムも特に好ましい。
【0041】
特に好ましいポリマーBは、例えば、ABSポリマー(エマルジョン、塊状および懸濁ABS)などが、例えばドイツ特許出願第2 035 390号(=米国特許第3 644 574号)またはドイツ特許出願第2 248 242号(=英国特許第1 409 275号)またはUllmann、Enzyklopadie der Technischen Chemie、第19巻(1980), 280頁など に記載されている。グラフトベースB.2のゲル含有量は少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%である(トルエン中で測定)。
【0042】
グラフトコポリマーBは、ラジカル重合、例えばエマルジョン、懸濁、溶液または塊状重合、好ましくはエマルジョンまたは塊状重合によって、特に好ましくは塊状重合によって調製される。
【0043】
特に適したグラフトゴムは、米国特許第4 937 285号による有機ヒドロペルオキシドおよびアスコルビン酸のイニシエーターシステムを用いる、レドックス始動によって調製されるABSポリマーである。
【0044】
既知のことであるが、グラフト反応中でグラフトモノマーはグラフトーベース上に完全にグラフトしている必要はなく、本発明によるグラフトポリマーBは、グラフトベースに存在するグラフトモノマーの(共)重合から得られる、および後処理で形成する製造物とも理解される。
【0045】
ポリマーB用のB.2に適したアクリレートゴムは、好ましくはアクリル酸アルキルエステルのポリマーであって、要すれば他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを、B.2を基準として40重量%まで含む。好ましい重合可能なアクリル酸エステルには、C1−C8アルキルエステル(例えばメチル、エチル、ブチル、n-オクチル、および2-エチルヘキシルエステル);ハロゲンアルキルエステル(好ましくはクロロエチルアクリレートなどハロゲンC1−C8アルキルエステル)、およびこれらのモノマーの混合物が含まれる。
【0046】
1種以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを、架橋を目的として共重合することができる。架橋モノマーの好ましい例は、炭素数3〜8を有する不飽和モノカルボン酸と炭素数3〜12を有する不飽和一価アルコールまたはOH基2〜4および炭素数2〜20を有する飽和ポリオールのエステル(例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレートなど);ポリ不飽和複素環式化合物(例えばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートなど);多官能ビニル化合物(ジ-およびトリビニルベンゼン類など);トリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートもよい。
【0047】
好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3種のエチレン性不飽和基を有する複素環式化合物である。
【0048】
特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリルベンゼン類である。架橋モノマーの量は、好ましくはグラフトベースB.2を基準として0.02〜5重量%、特に0.05〜2重量%である。
【0049】
少なくとも3種のエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーを使用する場合、グラフトベースB.2の1重量%未満の量に制限するのが都合よい。
【0050】
アクリレートとは別に所望によりグラフトベースB.2の調製に使用される、好ましい"他の"重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、例えばアクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC1-C6アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベースB.2として好ましいポリアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含有量を有するエマルジョンポリマーである。
【0051】
他の適したB.2グラフトベースは、ドイツ特許出願公開(OS)第3 704 657号、同(OS)第 3 704 655号、同(OS)第 3 631 540号および同(OS)第3 631539号に記載の、グラフト活性点を有するシリコーンゴムである。
【0052】
グラフトベースB.2のゲル含有量を、適切な溶媒中、25℃で測定する(M. Hoffmann, H. Kromer, R. Kuhn, Polymeranalytik I and II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
【0053】
平均粒子径d50は、それぞれ存在する粒子の50重量%前後の直径である。超遠心分離測定によって測定できる(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. and Z. Polymere 250 (1972), 782-796)。
【0054】
成分C
タルクは、天然型または合成調製されたタルクとして理解される。
【0055】
純粋なタルクは、化学組成 3MgO・4SiO2・H2Oを有し、従ってMgO含有量31.9重量%、SiO2含有量63.4重量%および、化学的に結合した水の含有量4.8重量%を有する。層状構造を有するケイ酸塩である。
【0056】
天然型タルク材料は、上記の一般的な理想的組成を有しない。マグネシウムの他の元素による部分的置換によって、ケイ素の例えばアルミニウムによる部分的置換によって、および/または他の無機物(例えばドロマイト、マグネサイトおよび緑泥石)との合生によって、不純となるからである。
【0057】
発明の範囲内のタルクの特定の型は、非常に純度が高いことで区別され、Al23含有量1重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、特に好ましくは0.7重量以下、とりわけ0.5重量%以下を特徴とする。本発明での好ましいタルクグレードは、高純度(Al23含量)に加えて、MgO含有量28〜35重量%、好ましくは30〜33重量%、特に好ましくは30.5〜32重量%、およびSiO2含有量55〜65重量%, 好ましくは58〜64重量%、特に好ましくは60〜62.5重量%で区別される。
【0058】
この定義に対応する市販のタルクの型は、例えば、Naintsch A3、A7、A10、A30およびNaintsch Prever M30(Naintsch Mineralwerke GmbH (Graz、Austria)より)、およびFinntalcグレードM05SL、M03、MO5およびM20SL(Omya GmbH 販売(Cologne))である。
【0059】
平均最大粒子径d5020μm未満、好ましくは10μm未満、特に好ましくは5μm未満、とりわけ好ましくは2.5μm未満を有する、微細な粉状型の形態の、本発明のタルクの使用が、特に利点がある。
【0060】
発明の範囲内でないタルクの型は、例えば、Naintsch SE-標準、Naintsch SE-スーパー、Naintsch SE-ミクロおよびNaintsch ST 10、15、20、30および60(全てNaintsch Mineralwerke GmbHから販売)、およびOmya販売のWestminタルク、PfizerのMP5O-26、MP-99-10、MP99-54およびM25-38が含まれる。
【0061】
他の添加剤D
本発明の組成物は、別のポリマーを含んでもよい。
ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C1−C8)-アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(酸無水物およびイミド)からなる群の少なくとも1種のモノマーの、適した好ましいビニル(コ)ポリマー(D.2)がある。
適した特に好ましいものとして、
D.2.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換されたビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンなど)、および/またはメタクリル酸(C1−C8)-アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)50〜99重量部、好ましくは60〜90重量部、および
D.2.2 シアン化ビニル(不飽和ニトリル)(アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなど)、および/または(メタ)アクリル酸(C1−C8)-アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert.-ブチルアクリレートなど)、および/または不飽和カルボン酸(マレイン酸など)、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(酸無水物およびイミドなど)(例えば無水マレイン酸およびN-フェニル-マレイミド)1〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、
との(コ)ポリマーがある。
【0062】
(コ)ポリマーD.2は樹脂様であり、熱可塑性であってゴムを含まない。
【0063】
特定の好適物は、D.2.1スチレンおよびD.2.2アクリロニトリルのコポリマーから得られる。
【0064】
D.2の(コ)ポリマーは既知であり、ラジカル重合、特にエマルジョン、懸濁、溶液または塊状重合で調製することができる。成分D.1の(コ)ポリマーは、好ましくは、分子量M(重量平均、例えば光散乱測定法または沈殿法によって測定)15,000〜200,000を有する。
【0065】
欧州特許出願公開第841 187号などに記載のポリアルキレンテレフタレート(D.3)も適している。
【0066】
好適物は、テレフタル酸および/またはそれらの反応性誘導体(例えばそれらのジアルキルエステル)およびエチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールから調製されるポリアルキレンテレフタレート、およびそれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物から得られる。
【0067】
本発明による組成は、好ましくは、ビニル(コ)ポリマー、ポリアルキレンテレフタレートまたはそれらの混合物を、組成物総量に対して35重量%まで、特に好ましくは30重量%まで含む。とりわけ好ましくは、本発明の組成物は、ビニル(コ)ポリマー、ポリアルキレンテレフタレートまたはそれらの混合物を、組成物全体に対して5〜30重量%含む。
【0068】
本発明による成形用組成物は、少なくとも1種の他の通常使用される添加剤(例えば、たれ防止剤、滑剤および離型剤、核生成剤、帯電防止剤、安定剤、着色剤、難燃剤および顔料、同様に充填剤および補強剤(タルクを除く))を含んでもよい。
【0069】
上記成分および必要に応じて添加剤を含む、本発明による成形用組成物は、各成分要素を、インターナルミキサー、押出機および2軸スクリューなどの通常使用される装置などで、200℃〜300℃の温度で、既知方法で溶融コンパウンド化または溶融押出で混合することにより調製される。
【0070】
各成分要素は、既知の方法で、連続してでも同時でも、そして約20℃(室温)でも高温でも混合することができる。
【0071】
優れた衝撃抵抗性および他の良好な性質(例えば、ESC作用(応力亀裂抵抗性)、剛性、耐熱性、流動性およびそりのないことなど)により、本発明の熱可塑性成形用組成物は、任意の種類の成形物品の製造、とりわけ低温でのガラス転移点について高められた要求を有するものに適する。
【0072】
本発明の成形用組成物は、成形品、特に薄肉のものの製造に使用できる。成形物品は、例えば射出成形または押出成形によって製造できる。製造できる成形物品の例は:任意の種類のケーシング部品、例えばジューサー、コーヒーメーカー、ミキサーなどの家庭用電気器具;ミニター、(移動式)コンピューター、プリンターおよびコピーなどの事務用機器である。可能な他の用途分野は、建設部門用の電気設備のカバーおよびコンジット、同様に自動推進乗物用(例えば外部または内部車両車体部)である。成形用組成物を、例えばスイッチ、ソケットおよび回路基板など、電気工学分野で使用することもできる。
【0073】
本発明は、組成物の調製方法、成形物品の製造における組成物の使用、および成形物品自体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】平均粒子直径−ノッチ付衝撃抵抗性のプロット。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0075】
成分A
相対溶液粘度1.28(ジクロロメタン中、25℃、濃度0.5g/100mlで測定)を有する、ビスフェノールAベースのポリカーボネート。
【0076】
成分B−1
エマルジョン重合によって調製される、スチレンとアクリロニトリルとの比72:28のコポリマー45重量部の、粒状架橋ポリブタジエンゴム55重量部へのグラフトポリマー(平均粒子径d50=0.3〜0.4μm)
成分B−2
Dow ChemのDow Magnum 3904(塊状ABS)
【0077】
成分C
C1:Westminタルク、Mondo Minerals Oy (Helsinki、Finland)のタルク(Omya GmbH (Cologne)販売)、MgO含有量31重量%、SiO2含有量61重量%およびAl23含有量1.0重量%、d50=2.5μm(比較)を有する。
C2:FinntalcM05SL、Mondo Minerals Oy (Helsinki、Finland)のタルク(Omya GmbH (Cologne)販売)、MgO含有量31重量%、SiO2含有量61重量%およびAl23含有量0.3重量%、d50=2μmを有する。
C3:FinntalcM20SL、Mondo Minerals Oyのタルク、MgO含有量31重量%、SiO2含有量61重量%およびAl23含有量0.3重量%、d50=6μmを有する。
C4:FinntalcM30SL、Mondo Minerals Oyのタルク、MgO含有量31重量%、SiO2含有量61重量%およびAl23含有量0.3重量%、d50=8.5μmを有する。
C5:Naintsch A3、Naintsch Mineralwerke GmbHのタルク、MgO含有量31.5重量%、SiO2含有量62.0重量%およびAl23含有量0.4重量%、d50=1.2μmを有する。
表示の化学組成に関するデータは、製造データに基づいている。分析は、文献既知の方法(例えばX線蛍光分光測定または原子吸着分光法または熱量測定)で行なった。
【0078】
成分D−1
スチレン/アクリロニトリル比72:28、固有粘度0.55dl/g(ジメチルホルムアミド中、20℃で測定)を有するスチレン/アクリロニトリルコポリマー。
成分D−2
ホスファイト安定剤
成分D−3
離型剤として、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール
【0079】
本発明の成形用組成物の調製および試験
成分A〜Dを、3リットルインターナルミキサーで混合した。アーブルグ(Arburg)270E型射出成形機で、240℃で成形物品を製造した。
ノッチ付衝撃抵抗性を、室温で、測定値80×10×4mmの試験片を用いて、ISO 180 1A方法で測定した。
ビガー(Vicat)B軟化点を、DIN 53 640に従って測定した。
引張弾性モジュラスを、DIN 53 457/ISO 527に従って測定した。
【0080】
表1:成形用組成物の構成
【表1】

【0081】
表2:結果
【表2】

【0082】
引張弾性モジュラスとビガー温度の比較で、本発明の実施例は、比較例のものよりも、明確に良好な衝撃抵抗性を示すことが、表2から明らかである。
【0083】
平均粒子直径を、ノッチ付衝撃抵抗性(図1)に対してプロットした場合、、予想通り、粒子径の減少によるノッチ付衝撃抵抗性の増加がみられた。しかしながら、驚くべきことに、Al23含量(平方)が高い場合、小さな粒子径を用いても、ノッチ付衝撃抵抗性の明白な低下が起こった。塊状ABS(実施例6)を使用すると、他は同じ充填剤組成物を有するエマルジョンABS(実施例1)のものと比べて、ノッチ付衝撃抵抗性62%増加、ガラス転移点20℃減少とかなり明白な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート、少なくとも1種の衝撃変性剤、および高純度タルクを含有し、該タルクがタルクに対してAl23含有量1重量%未満であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート40〜98重量%、少なくとも1種のグラフトポリマー0.5〜50重量%、およびタルク0.05〜40重量%を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート45〜95重量%、少なくとも1種のグラフトポリマー1〜35重量%、およびタルク0.5〜30重量%を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
タルクに対してそれぞれMgO含有量30〜33重量%、SiO2含有量58〜64重量%およびAl23含有量1.0重量%未満であることを特徴とするタルクを含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
タルクに対してAl23含有量0.9重量%以下であることを特徴とするタルクを含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
タルクに対してAl23含有量0.7重量%以下であることを特徴とするタルクを含有する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
衝撃変性剤として、少なくとも1種のビニルモノマー5〜95重量%の、ガラス転移温度10℃未満の少なくとも1種のグラフトベース95〜5重量%への、1種またはそれ以上のグラフトポリマーを含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ジエン、EP(D)M、アクリレートまたはシリコーンゴムベースのグラフトポリマーを含有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
衝撃変性剤として、エマルジョンもしくは塊状ABSまたはそれらの混合物を含有する、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
ビニル(コ)ポリマー、ポリアルキレンテレフタレートまたはそれらの混合物を含有する、請求項1いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
組成物総量に対して30重量%までのビニルコポリマーを含有する、請求項1〜10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
さらに添加剤を含有する、請求項1〜11いずれかに記載の組成物。
【請求項13】
滑剤および離型剤、核生成剤、帯電防止剤、安定剤、着色剤および顔料、そして充填剤および補強剤(タルクを除く)からなる群の少なくとも1種から選択される添加剤を含有する、請求項1〜12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート50〜90重量%、少なくとも1種の請求項9記載のグラフトポリマー1.5〜25重量%、ビニル(コ)ポリマー0〜20重量%、および請求項4記載のタルク1〜20重量%を含有し、そして成分の合計が100である、ポリカーボネート組成物。
【請求項15】
各成分を混合し、高温でコンパウンドする、請求項1記載のポリカーボネート組成物の調製方法。
【請求項16】
各種の成形物品および成形品の製造における、請求項1〜15いずれかに記載のポリカーボネート組成物の使用。
【請求項17】
請求項1〜16いずれかに記載のポリカーボネート組成物から得られる、成形物品および成形品。
【請求項18】
請求項17記載の外部および内部車両車体部。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−32537(P2013−32537A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220071(P2012−220071)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2001−548615(P2001−548615)の分割
【原出願日】平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】