説明

特定の表面状態を得るためのマイクロ結晶性ポリアミドの使用

【課題】外側表面の全部または一部がマイクロ結晶性ポリアミドから成る特定の表面状態を有する物品を得るためのマイクロ結晶性ポリアミドの使用。
【解決手段】マイクロ結晶性ポリアミドのTgとTmとの間で高温で物品を製造する段階を含み、マイクロ結晶性ポリアミドの透明度が、標準的な加工方法、例えば射出成形およびシート押出/カレンダ加工で得られる厚さ1mmの物品を560ナノメートル波長で測定した時の光透過係数が80%以上である(透明度は標準的な加工法、例えば射出成形やシート押出/カレンダ加工で得た物品で測定)。マイクロ結晶性ポリアミドの結晶化度(ISO11357、40℃/分、DSCの第1回目の加熱)10%以上、30%以下であり、溶融エンタルピー(ISO11357、40℃/分、DSCの第1回目の加熱)が25J/g以上かつ75J/g以下であり、Tgが40〜90℃で、Tmが150〜200℃で、50重量%以上が≧C9モノマーの連鎖で得られるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な表面状態(etat de surface particulier)を得るためのマイクロ結晶性ポリアミドの使用に関するものである。
より正確には、本発明は展延性(malleable)のある固体の透明材料、特に表面状態(細かいレリーフ)を再現でき、成形もでき(大きなレリーフ、深いレリーフ)、互いに接着でき、また、窪み(anfractuosite)のある基材とも接着できる特殊なタイプの透明材料の使用にある。
この使用の目的は視覚および触覚の点で審美性、魅力性、高品質性に優れ、しかも、機械的、化学的、物理的攻撃に対する耐久性に優れた物品を製造することにある。
【0002】
本発明はさらに、上記マイクロ結晶性ポリアミドから成るか、物品の外側層を上記マイクロ結晶性ポリアミドで完全または部分的に被覆した成形品または射出成形品に関するものである。上記外側層は基材を被覆する多層構造物の外側層にすることもできる。厚さが約0.5〜1mm以下の場合、構造体はフィルムまたはシートともよばれ、この構造体はマイクロ結晶性ポリアミドの単層から成るか、外側層(表面層)を有する多層構造物(物品の表面層は任意の方法で物品に固定されている)で構成される。例えば、表面層が金型内壁と接する状態で上記構造体を射出成型用の金型中に配置し、反対側に溶融状態の基材を射出する。金型内に配置する前に構造体を予め熱成形することもできる。冷却後、金型を開くと本発明の構造体で被覆された基材が得られる。
【0003】
本発明のマイクロ結晶性ポリアミドを用いることによって優れた粒状(grain)表面やその逆の優れた平滑表面にすること、すなわち平滑面・光沢面(十分に高温の平滑な金型壁と接触)にしたり、艶消し表面(十分に高温の艶消し・粒状金型壁と接触)にしたり、ブラシ状の外観を有する面にすることができる。これらは本発明の原理を示す単なる例で、型(または他の任意の成形装置)の表面が金属以外の材料でできていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明の大きな利点の一つは上記本発明のマイクロ結晶性材料が布、紙、皮革、木材、植物等の非金属材料の極めて複雑な表面状態を再現できる能力にある。一般にプラスチックは複雑な表面状態に仕上げるには適していないということは知られている。すなわち、プラスチック材料がリジッドな固体材料で、十分なレリーフ(浮き出し模様)を付けることができないか、プラスチック材料が液体状態になって、表面に強く接着し、プラスチックの再凝固後に型(例えば織布)から剥がすことができない。一般的にプラスチックは極めて複雑な表面や魅惑的な美しい表面に仕上すことができないということは周知であり、プラスチックは金属、布、木材、革等の伝統的な材料に比べて並の品質であると考えられている。
【0004】
本発明は「マイクロ結晶性」とよばれる特殊なポリアミドポリマー材料の、審美性、魅力、品質の点で優れた視覚的および触覚的特性を有する装飾品および機能物品の製造での使用にある。さらに、機械的攻撃(衝撃、スクラッチ)、化学的攻撃(溶剤)、物理的攻撃(紫外線)を受けたときにも上記の視覚的/触覚的特性が持続することも望まれる。物品の製造では一般にマイクロ結晶性ポリアミドをTg(ガラス転移温度)とTm(融点)の間の高温に加熱する段階を含み、また、物品使用時(最終製品の使用時)の温度は一般にマイクロ結晶性ポリアミドのTg(ガラス転移温度)以下の温度である。
【背景技術】
【0005】
ポリマー材料の中で非晶質ポリマーは透明であるという利点を有し、その本来の審美的利点の他に下側にある装飾を保護し、引き立たせることができるという利点もある。非晶質ポリマーの中では非晶質PMMA、PCおよびPAが挙げられ、特に非晶質PAは高性能である(特許文献1、2参照)。
【0006】
しかし、非晶質PAは(Tgが100〜200℃と高いため)溶融加工すると、冷却時に急速に固体状態になるという欠点がある。従って、非晶質PAは金型表面やその触覚、より一般的には金型の複雑な模様(texturante)を正確に再転写するには適していない。非晶質PAは一般に極めてリジッドであり、そのTg以下ではほとんど展延性(malleables)がなく、固体状態では成形(例えばエンボス加工)に適さない。
一方、Tgの低い(<60℃)非晶質ポリマーは、Tg以上で液体状態になってしまうため、使用は考えられず、温度がわずかに上昇しても装飾物品を保護できないということは理解できよう。
非晶質ポリマー(炭素数の高いモノマーをベースにした非晶質PA、例えばPA−BMACM.1/12でも同じ)の別の欠点は耐薬品性(耐応力亀裂)および物理抵抗性(耐紫外線)が半結晶ポリマー(特に、炭素数の高いモノマー、例えばPA−11またはPA−12をベースにした半結晶ポリアミド)に比べて低いことにある。
【0007】
ポリマー材料の中で半結晶ポリマーは耐薬品性および物理的抵抗性が良いという利点がある。半結晶ポリマーの中では半結晶ポリアミドを選択するのが有利である。半結晶ポリアミドの中では炭素数が高いモノマーから成るもの、例えばPA−11およびPA−12が好ましい。すなわち、これらの半結晶ポリアミドは物理化学的抵抗性が良く、水の吸収量および寸法(およびその他特性)の経時変化がPA−6やPA−6,6のような標準的な半結晶ポリアミドよりも少ない。
しかし、これらの半結晶ポリアミドは透明性が悪く、(再結晶速度が速く、再結晶率が高いため)冷却時に急速に固体状態になるという欠点がある。従って、金型の表面状態や手触りを正確に再転写するには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第550,308号公報
【特許文献2】欧州特許第725,101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、透明であるが、所定の結晶化度を有する半結晶ポリアミドの「マイクロ結晶性」ポリアミドとよばれる特定のポリマーを使用することによって審美性、魅力および品質の点で視覚特性および触覚特性に優れた装飾品および機能物品を製造するのに特に有利な解決策が提供されるということを見出した。
本発明で用いるポリアミドは半結晶ポリアミドの中のマイクロ結晶性ポリアミドで、このマイクロ結晶性ポリアミドは光を回折せず、従って、優れた光透過性を有する寸法の小さい結晶構造(スフェルライト、spherolite)から成る。本明細書ではこれを「マイクロ結晶性」ポリアミドとよぶことにする。このマイクロ結晶性ポリアミドは厚さ1mmの鏡面加工サンプルで560ナノメートルの波長で測定した時の光透過係数が80%以上、好ましくは88%以上である透明度で特徴付けることもできる(上記鏡面加工サンプルは標準的加工法、例えば射出成形やシート押出/カレンダ加工で得られる)。
【0010】
マイクロ結晶性ポリアミドには多くの利点があり、特に下記欠点がない:
(1)透明度が低い、
(2)過度に急速に凝固する、
(3)Tg以上で液体状態へ移行する、
(4)耐機械衝撃性および耐スクラッチ性が悪い、
(5)耐薬品性および耐応力亀裂性が悪い、
(6)紫外線抵抗性が悪い。
【0011】
すなわち、マイクロ結晶性ポリアミド材料は、そのTgとTmとの間の温度範囲T0で展延可能であることによって固体状態(または一部固体状態)で容易に成形できるという重要な利点がある。この固体状態(または一部固体状態)での成形とは審美面、魅力および品質の面で視覚的特徴および触覚的特性を有する仕上げ面をポリマー材料(およびこのポリマー材料を一つの成分とする物品)に付与するためにのTgとTmとの間の温度での「加熱」または「熱間」での各種熱機械的処理を意味する。
【0012】
固体状態での成形法の例としては下記が挙げられる:
(1)熱成形またはスタンピング(estampage)法を用いて、TgとTmとの間で、例えば600μmの2D(2次元)のポリマー材料のシートから3D(3次元)へ変形する。
(2)圧縮成形または多色成形法をもちいて、一定の時間、TgとTmとの間で、材料を圧力下に金型表面(例えば金属粗面または布面)と接触させて、一つの表面状態から別の表面状態に変える(平滑面から粗面)。
(3)焼結法または溶着法を用いて、一定の時間、TgとTmとの間で、材料を圧力下に小さな寸法(粉末、タイル、小面積シート)から大きな寸法(大型物品、タイル張り面)に変える。(4)被覆法やラミネーション法等を用いて、例えば600μmのシートを湾曲基材(木材、織布)上に複合化、ラミネーションまたは組立てる。
【0013】
(5)加工中に例えば600μmのポリマー材料のシート上に繊維や粉末(着色粉末、無着色粉末)を複合化するか、成形する。この方法では例えばTgとTmとの間の温度Tおよび圧力Pで、時間tの間、繊維(例えば織布)を含む基材とポリマー材料のシートとを接触させて、繊維を基材からポリマー材料へ移し、ポリマー材料中に機械的(さらには化学的)にアンカーさせることで、材料に柔軟な暖かい手触りを付与できる。別の例では、ポリマーのシートを上記と同様なT、P、tの条件下でポリマー粉末(例えばPA−11)のベッドと接触させて、材料に粉末の手触りを付与する。
【0014】
マイクロ結晶性ポリアミドには下記の利点がある:
衝撃、衝突およびスクラッチに対する高い機械的強度は重量ロスやエネルギー値の観点からだけでなく、見た目では分からない弱い衝撃(ほつれ、変色等のない衝撃)時に特に良く発揮される。
耐久性があり、Tambient(室温)では非展延性(Tambient<Tg)。
完全透明で、一般に、2mm以下の同じ厚さに対して、ポリカーボネート(PC)のような一般的な非晶質ポリマーの透明性と同等またはそれ以上である。
耐薬品性および耐応力亀裂性は半結晶PA(例えばPA−11)と同等。
紫外線抵抗性に優れている。
昇華法で装飾できる(スクリーン印刷のような従来法に加えて)。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、下記(1)と(2)を特徴とする、外側表面の全部または一部がマイクロ結晶性ポリアミドから成る特定の表面状態を有する物品を得るためのマイクロ結晶性ポリアミドの使用にある:
(1)マイクロ結晶性ポリアミドのTg(ガラス転移温度)とTm(融点)との間で高温で物品を製造する段階を含み、
(2)マイクロ結晶性ポリアミドの透明度が、標準的な加工方法、例えば射出成形およびシート押出/カレンダ加工で得られる厚さ1mmの物品を560ナノメートル波長で測定した時の光透過係数が80%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のマイクロ結晶性ポリアミドと一般的な非晶質ポリマーおよび半結晶ポリマーとの間の本質的な相違を示すためのDMA(動的機械的分析)グラフの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記マイクロ結晶性ポリアミドは、その結晶化度が10%以上かつ30%以下(ISO11357に従った40℃/分でのDSCの第1回目の加熱)で、溶融エンタルピーが25J/g以上かつ75J/g以下(ISO11357に従った40℃/分でのDSCの第1回目の加熱)であるのが有利である。
上記マイクロ結晶性ポリアミドは、そのTg(ガラス転移温度)が40〜90℃で、Tm(融点)が150〜200℃であるのが有利である。
上記マイクロ結晶性ポリアミドは、50重量%以上が≧C9モノマー(すなわち炭素原子の数が9以上)であるモノマーの連鎖で得られるのが有利である。
【0018】
「マイクロ結晶性ポリアミド(polyamide micro-cristallin)」にはコポリアミドと、マイクロ結晶性ポリアミドを主成分にした組成物(マイクロ結晶性ポリアミドがマトリックス)も含まれる。この組成物はアロイ、ブレンド、複合材料にするこきができ、この組成物は可塑剤、安定剤、顔料または染料、無機充填材、他の混和性ポリマー(相溶性があるか、第3成分を介して相溶化される)を含むことができる。
【0019】
本発明の別の対象は、上記マイクロ結晶性ポリアミドから製造される物品と、外側表面の全部または一部が特殊な表面状態を有する上記マイクロ結晶性ポリアミドから成る物品にある。
【0020】
以下、本発明のマイクロ結晶性ポリアミドと、通常の非晶質ポリアミドおよび半結晶性ポリアミドとの基本的な違いを示すために、[図1]に示すDMA(動的機械的分析)のグラフの概念図を参照する。
[図1]に記載の記号は下記を表す:
PA−11: アトフィナ(Atofina)社のPA−11(Rilsan BESNO TL)
非晶質PA アトフィナ(Atofina)社から商品名クリスタルミド(Cristamid、登録商標)MS1700で市販のPA−BMACM.T/BMACM.I/12(BMACMと、T(テレフタル)酸と、I(イソフタル)酸と、12ラクタムとの縮合で得られる)。
μ−結晶性PA 下記重量比率のマイクロ結晶性ポリアミド:1)Mwが45,000〜55,000のナイロン−11(PA−11) 65部、2)イソホロンジアミンとC10(セバシン)酸とラウリルラクタムとの縮合で得られるIPDA.10/12 25部、3)Mnが5000のPA−12ブロックと、MFIが4〜10g/10分(235℃/1kg)で、Mnが650のPTMGブロックとを含むブロックコポリマー 10部。 本明細書ではこの組成物を「PA−11No.6」とよぶ。
【0021】
このDMAグラフのx軸は温度、y軸は剛性(弾性率、モジュール)を表す。材料の弾性率はTg以下、TgとTmとの間、Tm以上の3つの大きな温度範囲を有することがわかる。Tm以上の範囲では全ての材料が液体であり、固体状態で成形ができないため、この範囲には重要性がないということは理解できよう。また、Tg以下で重要なのは、物体を構造的に成形でき、物品を少なくとも機械的応力から保護するのに十分なリジッドな材料のみであるということも理解できよう。従って、重要な範囲はTgとTmとの間の範囲である。この範囲が一般に物品を製造する範囲であり、また、少なくとも製造の一部、特に、物品に所望の視覚的、触覚的特性を付与する最終仕上げ段階を実施する温度範囲である。
【0022】
[図1]から分かるように、Tg以下では3つのポリマーとも完全にリジッドであること(使用中に物品を保護できるが、物品製造中に成形性がないこと)が分かる 非晶質PAはTg以上で液体になる。すなわち、非晶質PAはTg以上では加工および成形ができず、その視覚的な装飾性を維持することができない(また、Tg以下では加工および成形するにはリジッド過ぎ、展延性がない)。
半結晶PAはTg以下で弾性率が低下し、Tmまで固体状態を維持するが、固体状態で簡単に加工および成形するにはまだリジッド過ぎる。
マイクロ結晶性PA(μ−PA)はTgとTmとの間で固体状態で簡単に加工および成形できるだけの十分な可撓性および展延性を有し、しかも、TgとTmとの間で依然として結晶性かつリジッドであり、流動または液化することはない。この材料の実用的な重要性は理解できよう。
半結晶PAの場合、「cs/r」の比が近似的に結晶化度も表す。このcs/r比は極めて大きい。マイクロ結晶性PAの場合、「cμ/r」の比が近似的に結晶化度を表す。このcμ/rは簡単に成形するのに十分な可撓性および展延性を有し、しかも、十分に固体およびリジッドになるようなものであるということは理解できよう。結晶性がさらに低い(結晶化度または溶融エンタルピーがさらに低い)材料ではTgとTmとの間で剛性はさらに下がり、クリープおよび流動の問題が生じ、製品の機械的耐久性がなくなる。実用上の観点からは、この挙動はTgが同じ非晶質PAの挙動に極めて近くなる。
【0023】
gとTmとの間の結晶化度、従って、当業者は各種モノマーまたは成分の比率を変えて弾性率を調整することができる。ポリマー材料の加熱弾性率を上げるには組織破壊種(especes desorganisantes)すなわち主成分の高分子の規則的組織化を妨害してその結晶化を妨げる化学種の比を下げることができる。逆に、弾性率をさらに下げたい場合にはこの比を上げる。従って、結晶性の低い材料は耐薬品性も低い点に注意しながら、目的とする最終用途に応じてTgとTmとの間の展延性のレベルを微調整することができる。
【0024】
gおよびTmには何を選択すべきか?Tg〜Tmの範囲は最終製品製造時のキー段階に対応する温度を選択する。多くの工業プロセスでこの温度は合理的な温度範囲内を維持しなければならない。すなわち、過度に高い温度を維持して物品中の他の成分(例えば、約100℃で液化するABSポリマーの第3成分)を分解させてはならない。従って、90℃以下のTg(しかも、室温より高いか、物品の使用温度より高い温度)を選択するのが好ましい。例えば、Tgが140℃のマイクロ結晶性PAは(最終物品を製造するために)140℃以上の製造プロセスを必要とし、それが必須であろう。
【0025】
マイクロ結晶性ポリアミドの例としては下記(1)〜(5)からなる透明な組成物(合計100重量%)のが挙げられる:
(1)基本的に下記a)〜d)の縮合で得られる非晶質ポリアミド(B) 5〜40%:
a)脂環式ジアミンおよび脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のジアミンと、脂環式二酸および脂肪族二酸の中から選択される少なくとも一種の二酸(これらのジアミンまたは二酸単位の少なくとも一つは脂環式化合物)
b)脂環式のα、ω−アミノカルボン酸、
c)上記2つの可能な組み合せ
d)必要な場合には、α、ω-アミノカルボン酸または対応ラクタム、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一つのモノマーをさらに含むことができる、
【0026】
(2)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリアミド(C) 0〜40%
(3)(A)と(B)の相溶化剤(D) 0〜20%(4)可撓性改質剤(M) 0〜40% (ただし、(C)+(D)+(M)=0〜50%)(5)100%への残部は半結晶ポリアミド(A)。
この組成物はマイクロ結晶性である。これは結晶構造が一般的な半結晶ポリマー(PA−6、PA−12、PP、PE、PBT等)の場合のように光を回折しない程度まで十分に小さい寸法になったためであると考えられるが、この説明に縛られるものではない。しかも、上記組成物が半結晶であり、溶融エンタルピーがナイロン−11(PA−11)に近いかなりの値を有することはDSC(走査示差熱分析)から分る。
【0027】
半結晶ポリアミド(A)の例としては、(i)≧C9脂肪族α、ω−アミノカルボン酸、≧C9ラクタムの縮合で得られる脂肪族ポリアミド、または、脂肪族ジアミンと脂肪族二酸の少なくとも一方が≧C9である脂肪族ジアミンと脂肪族二酸との縮合で得られる脂肪族ポリアミドが挙げられる。
【0028】
脂肪族α、ω−アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。脂肪族二酸の例としては、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸が挙げられる。
【0029】
脂肪族ポリアミドの中ではポリウンデカンアミド(PA−11)、ポリラウリルラクタム(PA−12)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA−6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA6,10)、ポリヘキサメチレンドデカンアミド(PA−6,12)、ポリデカメチレンドデカンアミド(PA−10,12)、ポリデカメチレンセバカンアミド(PA−10,10)およびポリドデカメチレンドデカンアミド(PA−12,12)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
半結晶ポリアミド(A)はPA−11およびPA−12であるのが有利である。この(A)が脂肪族ポリアミドのブレンドであっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0031】
脂環式単位(B)を有する非晶質ポリアミドでのジアミンの例は2つの脂環式リングを有する脂環式ジアミンである。このジアミンは下記一般式(I)に対応する:
【化1】

【0032】
(ここで、R1〜R4は水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、Xは単結合または下記の中から選択される二価の基を表す:
(a) 1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族鎖、
(b) 6〜12個の炭素原子を有する脂環式基、
(c) 6〜8個の炭素原子を有する脂環式基で置換されていてもよい1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族鎖、
(d) シクロヘキシルまたはベンジル基を有する直鎖または分岐鎖のジアルキルからなる8〜12個の炭素原子を有する基。
【0033】
脂環式ジアミンはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)およびpara−アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体にすることができる。上記以外の一般的なジアミンはイソフォロンジアミン(IPDA)および2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)にすることができる。脂肪族二酸は上記で既に説明したものである。例としてはイソフォロンジアミンとドデカンジカルボン酸との縮合で得られるPA−IPDA,12を挙げることができる。非晶質ポリアミド(B)は必要に応じて下記の中から選択される少なくとも一種のモノマーをさらに含むことができる:
α、ω−アミノカルボン酸、
脂肪族二酸、
脂肪族ジアミン。
これらは上記で既に説明したものである。(B)の例としてはPA−IPDA,10、coPA−IPDA,10/12およびPA−IPDA,12を挙げることができる。(B)が複数の非晶質ポリアミドのブレンドであっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0034】
可撓性ポリアミド(C)としては先ず第一にポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーが挙げられる。このコポリマーは下記(1)〜(3)のような反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α、ω−ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素添加して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。コポリマー(C)はこのタイプが好ましい。
【0035】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのα、ω−アミノカルボン酸、ラクタムまたはジカルボン酸とジアミンとの縮合で得られる。
ポリアミドブロックの数平均分子量Mnは300〜15,000、好ましくは600〜5000である。ポリエーテルブロックの分子量Mnは100〜6000、好ましくは200〜3000である。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。これらのポリマーはポリエーテルおよびポリアミドブロック先駆体の同時反応で製造できる。
例えば、ポリエーテルジオールと、ラクタム(またはα、ω−アミノ酸)と、連鎖制限剤の二酸とを少量の水の存在下で反応させることができる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られるが、各種成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散したものも含まれる。
【0036】
予め作成したポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを共重合して得られる場合でも1段階の反応で得られる場合でも、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むこれらのポリマーは例えばDショアー硬度が20〜75、好ましくは30〜70で、初期濃度0.8g/100ml、25℃のメタクレゾール中で測定した固有粘度は0.8〜2.5である。MFI値は5〜50(235℃、1kgの荷重下)にすることができる。
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと共重合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。ポリエーテルジオールブロックはポリアミド先駆体および連鎖制限剤と混合してランダムに分散した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーにすることもできる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むこれらのコポリマーは、通常は、PA−11、PA−12またはPA−6ポリアミドブロックおよびPTMG(ポリテトラメチレングリコール)またはPPG(ポリプロピレングリコール)ポリエーテルブロックを含むものである。
【0037】
コポリアミドから成る可撓性ポリアミド(C)は、少なくとも1種のα、ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)と少なくとも1種のジアミンと少なくとも1種のジカルボン酸との縮合、または、少なくとも2種類のα、ω−アミノカルボン酸(または2種類のラクタムまたは1種のラクタムと1種のα、ω−アミノカルボン酸と)の縮合で得られる。これらの成分は上記で既に説明したものである。
コポリアミドの例としてはカプロラクタムとラウリルラクタムとのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとのコポリマー(PA6/6-6)、カプロラクタムとラウリルラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとのコポリマー(PA6/12/6,6)、カプロラクタムとラウリルラクタムと11-アミノウンデカノン酸とアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンとのコポリマー(PA6/6,9/11/12)、カプロラクタムとラウリルラクタムと11-アミノウンデカン酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとのコポリマー(PA6/6,6/11/12)、およびラウリルラクタムとアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンとのコポリマー(PA6,9/12)が挙げられる。好ましいコポリアミドはコポリマー特性が顕著なもの、すなわち各種コモノマーの比率がほぼ等しいコポリアミドで、これによって対応するポリアミドホモポリマーから最も遠い特性が得られる。(C)がポリアミドとポリエーテルブロックとを有する複数のコポリマーのブレンドまたは複数のコポリアミドのブレンドまたはこれらの任意の組合せであっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0038】
(A)と(B)を相溶化するための相溶化剤(D)は(A)と(B)とのブレンドを透明にするのに要する温度を下げる任意の化合物である。これはポリアミドであるのが有利である。例えば、(A)がPA−12の場合、(D)はPA−11である。これは触媒を添加した脂肪族ポリアミドであるのが好ましい。
この触媒を添加したポリアミド(D)は(A)の所で述べたようなポリアミドであるが、無機または有機酸、例えば燐酸のような重縮合触媒を含んでいる。ポリアミド(D)を任意の方法で製造した後に、このポリアミド(D)に触媒を添加することもできる。これはポリアミド(D)の製造で用いた触媒の残りにすることができ、それが容易で且つ好ましい。この「触媒添加ポリアミド」はベース樹脂の合成段階が過ぎたその後の段階の本発明組成物の製造時にも化学反応が続くということを意味する。ポリアミド(A)と(B)と(C)とを混合して本発明組成物を調製する際に実質的な重合および/または解重合反応が起こることになる。本出願人は重合(鎖延長)および分岐(例えば燐酸を介した架橋)が起こり続けていると考えているが、この説明に縛られるものではない。これは重合平衡の再平衡、従って一種の均質化へ向かう傾向とみなすことができる。しかし、全ての解重合を防止するためにポリアミドを完全に乾燥するのが望ましく(且つ含水率を正しく制御するのが有利である)。触媒の量は樹脂(D)に対して5ppm〜15,000ppmの燐酸にすることができる。上記以外の触媒、例えば硼酸では含有率が異なり、ポリアミドの重縮合で一般的な技術に従って選択できる。
【0039】
可撓性改質剤(M)の例としては官能化ポリオレフィン、グラフト化脂肪族ポリエステル、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するコポリマー(必要に応じてグラフト化されていてもよい)、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートおよび/または飽和カルボン酸ビニルエステルとのコポリマーが挙げられる。ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するコポリマーは(C)で挙げたものの中から選択でき、可撓性コポリマー、すなわち曲げ弾性率が200MPa以下のものを選択するのが好ましい。
上記改質剤はポリアミドまたはポリアミドオリゴマーグラフトを有するポリオレフィン鎖にすることもできる。従って、改質剤はポリオレフィンおよびポリアミドと親和性がある。
【0040】
可撓性改質剤は(A)と相溶性にある少なくとも一種のブロックと(B)と相溶性にある少なくとも一種のブロックとを有するブロックコポリマーにすることもできる。
可撓性改質剤の例としては下記が挙げられる:
(1)エチレンと、不飽和エポキシド、必要に応じてさらに不飽和カルボン酸のエステルまたは塩、または、飽和カルボン酸のビニルエステルとのコポリマー、例えば、エチレン/酢酸ビニル/グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーまたはエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー。
(2)エチレンと不飽和無水カルボン酸および/または不飽和カルボン酸とのコポリマー(この官能基の一部を金属(Zn)またはアルカリ金属(Li)で中和することができる)または必要に応じてさらに不飽和カルボン酸のエステルまたは飽和カルボン酸のビニルエステルとのコポリマー。例えば、エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸コポリマーまたはエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーまたはエチレン/ZnまたはLi(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマー。
(3)不飽和無水カルボン酸をグラフトまたは共重合した後にモノアミンポリアミド(またはポリアミドオリゴマー)(下記文献に記載の化合物)と縮合したポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー。
【特許文献3】欧州特許第0,342,066号公報
【0041】
官能化ポリオレフィンは下記の中から選択するのが有利である:
(1)エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマー、
(2)エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸コポリマー、
(3)無水マレイン酸をグラフトした後にカプロラクタムのモノアミンポリアミド6またはモノアミンオリゴマーと縮合させたプロピレンが主成分のエチレンプロピレンコポリマー。
このコポリマーはアルキル(メタ)アクリレートを40重量%以下、無水マレイン酸を最大で10重量%以下含むエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーであるのが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−アクリル酸ブチル、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの中から選択できる。
【0042】
グラフト化脂肪族ポリエステルの例としては無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ビニルエステルまたはスチレンをグラフトしたポリカプロラクトン(下記文献に記載の化合物)が挙げられる。
【特許文献4】欧州特許出願第711,791号公報
【0043】
組成物の透明性を低下させない可撓性改質剤を選択することが望まれる。上記組成物(A)+(B)、(A)+(B)+(C)、(A)+(B)+(C)+(D)の利点は上記改質剤(M)にほぼ近い屈折率が得られる点にある。従って、同じ(またはほぼ同じ)屈折率を有する改質剤(M)を添加することができる。従来技術に記載の透明なポリアミド組成物の場合はそうではなく、一般に屈折率は最も一般的な改質剤(M)の屈折率より高い。
【0044】
一般に、改質剤(M)は透明性、低温製造性および昇華能力等の有利な特性を損なわずに特定特性を与えるのに有用である(従って、改質剤とよばれる)。この改質剤が与える追加の特性としては下記のものが挙げられる:耐衝撃性を向上させる衝撃改質特性、材料の基材への接着性を向上させるための反応性官能基を付与する改質、艶消し外観を付与する改質、絹または平滑な手触りを付与するための改質、材料を吹込成形するために材料の粘性を上げる改質等。
各種改質剤を混合してそれらの効力を組み合わせるのが有利である。
【0045】
下記の[表1]に示す成分比率(合計100重量%)を有する組成物が有利である。
【表1】

【0046】
これらの組成物は各成分を熱可塑性樹脂で標準的な技術(二軸スクリュー、BUSS(登録商標)または単軸押出機)を用いて溶融混合して製造できる。各組成物は次の用途のためにペレット化(再溶融)するか、金型で射出成形するか、押出機または共押出装置でシートまたはフィルムに製造できる。当業者は透明な材料を得るための配合温度を容易に調整できる。一般には配合温度を例えば約280または290℃に上げるだけでよい。
上記組成物は熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤を含むことができる。
【0047】
マイクロ結晶性ポリアミドの例として下記組成(合計100重量%)の透明組成物をさらに挙げることができる:
(1)脂環式でもよい少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種の芳香族二酸と(必要な場合にはさらにα、ω−アミノカルボン酸、脂肪族二酸、脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のモノマーを含む)の縮合で得られる非晶質ポリアミド(B) 5〜40%
(2)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリマー(C) 0〜40%
(3)(A)と(B)の相溶化剤(D) 0〜20%(ただし、(C)+(D)=2〜50%、(B)+(C)+(D)は30%以下ではない)
(4) 100重量%の残部は半結晶ポリアミド(A)である。
【0048】
この組成物は非晶質ポリアミド(B)の種類と成分比率が上記「タイプ1」とは本質的に異なる。この組成物は「タイプ1」と同じ方法で調製され、マイクロ結晶性である。
非晶質ポリアミド(B)の比率は10〜40%、好ましくは20〜40%であるのが有利である。(C)+(D)の比率は5〜40%、好ましくは10〜40%であるのが有利である。
【0049】
上記の別のタイプのマイクロ結晶性ポリアミド組成物中の非晶質ポリアミド(B)は基本的に脂環式でもよい少なくとも一種のジアミンと少なくとも一種の芳香族二酸との縮合で得られる。脂肪族ジアミンの例は上記で既に説明したものである。脂環式ジアミンはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体にすることができる。一般に使用される上記以外のジアミンはイソフォロンジアミン(IPDA)および2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)にすることができる。芳香族二酸の例としてはテレフタル(T)酸およびイソフタル(I)酸が挙げられる。
非晶質ポリアミド(B)は必要に応じてさらに下記の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含むことができる: α、ω−アミノカルボン酸、 脂肪族二酸、 脂肪族ジアミン。
これらの化合物は上記で既に説明したものであり、(B)の例としてはビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、ラウリルラクタム(L12)およびイソフタル酸およびテレフタル酸(IAおよびTA)を用いる溶融重縮合によって合成される半芳香族ポリアミドPA−12/BMACM、TA/BMACM,IAが挙げられる。(B)が複数の非晶質ポリアミドのブレンドであっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0050】
以下、種々の実施例を説明する。
マイクロ結晶性ポリアミドが特に有利であるプロセスはインモールド装飾(IMD)を用いる多色成形である。このマイクロ結晶性ポリアミド材料はIMDプロセスでの使用に特に適している。このプロセスは予め装飾(必要に応じてさらに予め熱成形)したシートまたはフィルムを金型上に配置し、次いで、ポリマーを多色成形(「アンダーモールド(undermoulding)」という用語を用いたほうがより適切であるが、通常は「多色成形(overmoulding)」という用語を用いる)し、物品を成形する。上記シートまたはフィルムが物品の装飾表面となる。マイクロ結晶性ポリアミドは「インモールド」での視覚面での装飾性だけでなく、金型表面のテクスチャ(模様)の転写能力に優れているので触覚面での装飾性にも優れているので、マイクロ結晶性ポリアミドはこの成形方法に特に適している。また、半結晶であるが過度に結晶性ではないマイクロ結晶性ポリアミドはTgとTmとの間(好ましくはTmの近く)での昇華装飾に特に適している。すなわち、昇華顔料はその非晶質相の移動度が高く(かつ非晶質相の比率が高い)ので材料中に簡単に浸透し、材料全体が液化することがなく、従って、物品が許容できないほど変形することがない。
本発明マイクロ結晶性ポリアミドの上記以外の利点の中では、その優れた熱成形性(熱成形は多色成形の前に実施されることが多い)、非晶質ポリマー(例えばポリカーボネートABS)よりもはるかに優れた耐薬品性、機械的攻撃および紫外線に対する優れた抵抗性(ポリカーボネートよりもはるかに優れている)が強調できる。装飾用および多色成形用フィルムを得るための上記プロセスは単なる一例であり、本発明のマイクロ結晶性ポリアミドはその他の製造プロセス、例えば圧縮成形、射出成形、熱成形、材料の延性および展延性が利点となる他の任意のプロセスでも有利であることは言うまでもない。これらのプロセスは少なくとも一部がTgとTmとの間の温度で実施されることは理解できよう(また、その後、物品の使用温度がこのTg以下になる、すなわち、Tgが室温よりかなり上であることも理解できよう)。
【実施例】
【0051】
「固体状態塗料」
マイクロ結晶性ポリアミドおよびIMDプロセスの塗料での利点
上記では本発明材料とその用途の利点を非晶質または一般的な半結晶ポリマーと比較して説明してきたが、ここではポリマーではなく塗料によって装飾および保護された物品と比較する。
塗料またはスクリーン印刷インクは審美的な視覚効果だけでなく、魅力的な触覚効果も与えることができるという利点を有する。しかし、塗料は大抵冗長な塗布プロセスと、生態学的観点から望ましくない溶剤の存在とを必要とするという欠点を有する。機械的および化学的保護の点で、塗料、例えばポリウレタンをベースにしたものはマイクロ結晶性ポリアミドから成る被覆ほど有効ではない。TgとTmとの間の温度で、マイクロ結晶性ポリアミドは特に可撓性および展延性を有しながら、依然として固体状態を維持する。マイクロ結晶性ポリアミドは固体状態であることによって視覚的な装飾性を保持でき(例えば昇華装飾によって)(これに対して、塗料は塗布時に液体である)、その展延性によって基材に容易に塗布適用でき、魅力的な表面状態および手触りを得ることができる。マイクロ結晶性PAを塗布(塗料のイメージ)し、固化すると装飾物品が効果的に保護される(この温度はTg以下である)。
【0052】
視覚的−触覚的に粒状な構造
マイクロ結晶性PAの平滑・光沢なシートを粒状レリーフ(浮出し模様)の付いた金属表面と接触させ、全体を20バールの圧力下に110℃(すなわちTgとTmとの間)の温度に3分間維持する。例えば、上記のPA−11No.6組成物(Tgが約55℃で、Tmが約188℃である)を用いることができる。マイクロ結晶性PAのシートには表面レリーフの視覚的な外観および手触りを極めて正確に再現できるという利点がある。従って、同じ物品を出発材料としてマイクロ結晶性ポリアミドから作ると、選択の制約が無しに、最終要求機能(例えば、艶消しにしたり、ボトルに柔らかな手触りを付与する等)に合った所望の視覚的、触覚的な効果を付与することができる。
別の利点は、物品製造の最終「仕上げ」段階に視覚的、触覚的な装飾効果を物品の表面の一部にのみ与えることができる点にある。しかも、物品のテクスチャまたは装飾模様はその後の物品の使用時(T<Tg)、経時変化による硬化時およびアニール操作時でも高い抵抗性(例えば、耐スクラッチ性)を示す。
一般的な半結晶PA(例えばPA−11)のレリーフ再現性(転写性)は本発明よりはるかに不十分であり(一般的な半結晶PAはそのTgとTmとの間で十分に変形できない)、表面の機械的抵抗(例えば耐スクラッチ性)も本発明より低い。非晶質PA(例えばPA−BMACM.12)では、T>Tgの場合、PA物品が溶融し、望ましくない。T<Tgの場合、PAはほとんど模様付けができない(このPAはほとんど変形不可能で、著しくリジッドである)。
【0053】
別のプロセスすなわち多色成形のプロセスを用いることもできる。マイクロ結晶性ポリアミド材料/無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンから成る平滑な二層シートを60℃の粒状模様の金型面上に、PA面が粒状模様の金型面側と接する状態で配置する。この金型は射出成型機の金型である。次いで、溶融したPPを210〜230℃で500バールの保持圧力で射出して多色成形する。金型から取り出した時には、上記シート側の表面に金型の粒状レリーフ模様が完全に転写されている。この二層材料の例としては上記PA−11No.6/オレバック(Orevac、登録商標)18729を用いることができる。
【0054】
視覚的−触覚的に修正/鏡面加工した構造
今度はマイクロ結晶性PAの平滑・光沢シートを艶のある高光沢な金属表面と接触させた状態で配置し、全体を上記と同じ条件下(110℃、20バールの圧力下に3〜5分間に置く。マイクロ結晶性PAのシートは、冷却後、元のマイクロ結晶性PAのシートよりも艶および光沢が良くなっており、いくつかの表面欠陥(小さい隆起および/またはレリーフ)が消え、平らになった。従って、このシートの表面外観はいわば容易に「修正可能」である。一般的な半結晶PA(例えばPA−11)または非晶質PA(例えばPA−BMACM.12)の場合はそうではない。従って、本発明の一つの利点は、例えば表面外観に関する特定の注意を全く必要とせずにマイクロ結晶性ポリアミドのシートを製造できる点にある。従って、マイクロ結晶性ポリアミドのシートは高速に高い生産性(押出、流延またはインフレートフィルムプロセス)で製造できる。いずれの場合も、既に述べたように表面外観は一つ(または複数)のその後の仕上げ加工で「修正」できる。
【0055】
別のプロセスすなわち多色成形のプロセスを用いることもできる。マイクロ結晶性ポリアミド材料/無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンから成る平滑二層シートを60℃の金型鏡面上にPA面が金型鏡面側と接した状態で配置する。この金型は射出成型機の金型である。次いで、溶融PPを210〜230℃で500バールの保持圧力を用いて射出して多色成形操作を行う。金型から取り出した時には、シート側表面に金型鏡面の艶が完全に転写されていた。この二層材料の例としては上記PA−11No.6/Orevac(登録商標)18729を用いることができる。
【0056】
下側面が木材の外観を有し、上側面が木材の手触りを有する両面が視覚的−触覚的な構造
ここでは、マイクロ結晶性PAの平滑・光沢シートを十分に高い(が常にTg〜Tmの範囲内の)温度で木材表面と接した状態で配置し、木材とPAとの間を接着する(木材表面の凹みにPAが浸透して機械的アンカーを形成)。同時に(またはその後に)、他方の面上に装飾木材(木材から成るか、金属表面に木材模様を転写したもの)を接着しない低温度(依然としてTg〜Tmの範囲内)で且つ表面テクスチャ模様の転写が可能な温度Tで配置する。この場合には、木材がPA表面(耐薬品性、機械的および紫外線抵抗性を与える)によって保護されるという利点と、PA表面が木材のテクスチャ模様および手触りを有するという利点がある。この操作の一例は下記のように行うことができる:
木材をシートの片側に110℃、20バール以下で5分間接着し、同時に、シートの反対側に木材の「粒状模様」を転写した金属板を配置し、粒状模様をシートに転写させる(110℃、20バール以下で5分間)。
【0057】
視覚的、触覚的に布の構造
マイクロ結晶性PAの平滑・光沢シートを不織布の表面と(例えば110℃、20バール以下で5分間)と接した状態で配置する。上記の場合と同様に不織布の表面状態が正確に再転写され、しかも、Tが十分に高いが、依然としてTg〜Tmの範囲内であるので、不織布のフィブリル(繊維)がマイクロ結晶性PAのシート内に捕捉、維持されて、布のような特に柔らかな手触りが得られる。
布の代わりに粉末のベッドや、粉末、例えばPA−11粉末を含浸した基材を用いることもできる。熱間接触操作をTgとTmとの間、圧力P以下、時間tで行い、「粉末」の手触りを有する材料が得られる。手触り効果に加えて、粉末およびフィブリルを着色または彩色することもでき、これによって追加の視覚効果も得られる。さらに、布の代わりにガラスビードのベッドを用いることもでき、従って、布とは異なる手触りと、より優れた耐スクラッチ性が得られる。
【0058】
視覚的、触覚的に布の構造(含浸なし)
以下では、転写型表面が上記のような「不織布」ではなく、裂き難い織布や紙、繊細なエンボス加工をした皮革表面、または、細かい孔を有する柔らかな皮革表面の場合を考える。この場合には繊細な表面状態を良好かつ正確に再転写すればよく、ポリマー材料中に表面粒子を捕捉する必要はない。本発明材料は表面模様の凹凸が「転写」するのに十分な展延性および可撓性を有し、しかも、型表面に過度に接着しないような十分な固体であり、リジッドである。所望の効果が得られ、型表面または基材へ接着度を制御するためにはマイクロ結晶性ポリアミドの下記パラメータを変えることができる:結晶化度(結晶度が下がると、接着力が上がる)、厚さ(シートが薄いほど、接着力が大きくなる)、加工温度(温度が高いほど、接着力が大きくなる)、加工時間(時間が長いほど、接着力が大きくなる)、加工圧力(圧力が高いほど、接着力が大きくなる)。
本発明材料を塗料タイプの液体とではなく、ポリマーメルトタイプの液体と比較する。型表面と同じ外観および手触りを最終プラスチック製品に付与する目的で、溶融したポリマーを織布または不織布または紙の表面(種々の多孔質表面)と接触させると溶融したポリマーが過度に強く接着し、布の型表面を損傷せずに布から剥がすことができないという問題がある。布の型表面が裂ける、および/または、一部がプラスチックに付着したままになる。いずれの場合も、所望の手触りは得られない。
【0059】
接着力/溶着性
マイクロ結晶性PAの平滑・光沢シートをマイクロ結晶性PAの別のシートに部分的に重なるように配置する。全体をTgとTmとの間の温度(例えば180℃)、30バール以下で3分間プレスする。この材料は2つの利点を有する。すなわち、溶着可能であり、溶着部はシートとほぼ同じ厚さである(これはマイクロ結晶性材料が可撓性で、熱間加工性があるため)。
【0060】
接着性/焼結性マイクロ結晶性ポリアミド粉末の優れた焼結性
焼結とは粉末をそのTm以下の温度で加熱して焼き固める操作である。セラミックは一般に焼結法で作られる。この焼結性は一つ前のパラグラフで述べた溶着性に対応する。一般に、本発明マイクロ結晶性ポリアミドはTgとTmとの間で優れた相互拡散性を有する。すなわち、TgとTmとの間で互いに接触させた2つの物体(例えば粉末粒子とシート)は互いにより良く接着する。TgとTmとの間の温度で、比較材料は初期状態で半結晶材料(Tg以上で液体状態となるTmを持たない非晶質材料)である。
【0061】
展延性/TgとTmの間での加熱成形
一般に、TgとTmとの間では展延性が良い、すなわちTgとTmの間では成形性が良い。例えば、本発明マイクロ結晶性ポリアミドの平らなシートをTgとTmの間でボウル形の金型に入れた場合、この材料をこのボウル形にするのに必要な力はより小さくなる。粒状模様の加工特性(上記パラグラフ参照)の比較では成形性はあまり変わらない。最終的には小縮尺のレリーフの粒状表面(約100ミクロンのサイズの凹凸)と大縮尺のレリーフ(数十cm)であるボウルとの間のスケールの縮尺の単なる変化とみなすことができる。IMD(インモールド装飾)用の装飾シートの例では2つの相反する効果(利点)が望まれる。第1の効果は深い熱成形(3次元性が強く、高レリーフ)ができるように高温時(TgとTmとの間)に展延性がある材料であることであり、第2の効果はIMDで物品を製造した後にスクラッチ、ノッチング、衝撃等の機械的攻撃に耐えるような十分に硬くて強靭な表面が得られる点である。従来法のシートまたはフィルムでは、熱成形性には優れるが機械的攻撃に対する抵抗性が低いもの(または追加の架橋操作や追加の保護ワニスを必要とするもの)や、硬くて抵抗性も高いが、浅い(低レリーフ)熱成形しかできないものなどがある。これに対して、本発明マイクロ結晶性ポリアミドは両方の利点を同時に有する。これは本発明が製造中にそのTgとTmとの間の温度範囲で熱成形性が高く、柔らかく/展延性があり、さらに、製造後もT<Tgでの使用中に十分に硬く、リジッド且つ強靱で、スクラッチ、切断および衝撃等の機械的攻撃に対する抵抗性が極めて優れているためである。この二重の利点は本発明製品がマイクロ結晶性を有し且つ半結晶が低いためで、それによってTg以下の温度範囲と、TgとTmの間の温度範囲とで剛性(可撓性、引張および/または剪断弾性率で測定可能)に大きな差がでる。
【0062】
m以下の疑似液体状態での射出成形
本発明マイクロ結晶性ポリアミドは液体状態で実施する加工操作、例えば射出成形での表面状態の転写に有利である。射出成形は液体状態で行われるプロセス(従ってTm以上で行われ、TgとTmの間では行われない)のように見えるが、射出成形操作では、射出成形が行われている時間の一部で物品表皮層が固体状態で、コアが液体状態となり、液体状態のコアが金型の表面と接する表皮層に圧力が加わる。従って、実際にはTgとTmの間で厚さのかなりの部分が固体状態であり、この部分がコアから来る圧力を受ける。この状況下でも本発明マイクロ結晶性ポリアミドは一般的な材料(例えば非晶質熱可塑性ポリマー材料または「標準的な」非透明半結晶ポリマー材料)よりも金型表面のテクスチャ模様をより良く再現できる。
【0063】
上記PA−11No.6(Tg〜55℃、および、Tm〜188℃)は約188℃以上で液体であり、下記(1)(2)の材料よりも正確に金型の粒状表面模様を転写できる。(1)半結晶PA−11: リルサン(Rilsan、登録商標)BESNOTL(Tg〜45℃、および、Tm〜188℃)。これは約188℃以上で液体であり、上記PA−11No.6ほどには金型の粒状表面模様を正確に転写できない。(2)PA−BMACM.T/BMACM.1/12: アトフィナ(Atofina)社の非晶質PA:クリスタミド(Cristamid MS1700)。これはTgが約170℃(従って、約170℃以上で液体)で、金型の低温壁(20℃)と接触すると過度に急速に凝固するため、金型の粒状表面模様の転写は不十分である。この状況は金型を100℃に加熱しでも変わらない。
【0064】
基材への接着性
ここでは凹凸(他の材料と一体化合するための接触点が高い凹凸)を有する基材への接着能について説明する。例えば、本発明マイクロ結晶性ポリアミドをTm以下、加圧下に一定時間、木材または布にプレスすると、基材と良く接着する(これに対して、一般的な半結晶ポリマー材料は接着しないか、接着が強力でないか、より長い時間、より高温度またはより高圧力を要する)。「下側面が木材外観および結合を有し、上側面が木材の手触りを有する両面が視覚的、触覚的な構造」と比較し、液体状態での射出成形に関する上記パラグラフから類推して、温度は部分的にTgとTmの間である。換言すれば、本発明材料は低温基材に溶融状態で塗布されるラミネーションプロセスであるが、本発明材料は低温基材側でTgとTmの間で既に部分的に冷却されている。従って、本発明材料の展延性(TgとTmの間)が有利に作用し、基材へ所望の接着力が形成される。
【0065】
ガラス繊維を充填したマイクロ結晶性ポリアミドの表面外観、手触り、色
本発明マイクロ結晶性ポリアミドの有利な使用の別の実施例は、等方性無機材料(例えば炭酸カルシウム)または異方性無機材料、例えば繊維(例えばガラス繊維または炭素繊維)を充填した複合材料およびポリマーである。一例を挙げると、マイクロ結晶性ポリアミドは30重量%の充填剤、例えばガラス繊維を含むことができる。この材料は透明性を失い、不透明になる。これによって組成物の半結晶およびマイクロ結晶性特性と低結晶化度とに関連する2つの利点が妨げられることはない。この組成物を鏡面加工した金型で成形して得られる物品の表面状態は結晶化度が高く、しかも、ガラス繊維が充填された非晶質ポリマーまたは半結晶ポリマーの粗さの欠陥および非審美的特性がない。これらの欠陥の一部は表面に繊維がランダムに存在していることによって生じる。これに対して本発明組成物を用いると、金型の鏡面加工した表面状態がより良く転写され、物品はより平滑、均質な外観を示す。より展延性、移動性があり、ゆっくり凝固する本発明材料は繊維をより良く配置できる。別の利点は彩色性にある。例えば30部のガラス繊維と0.5部の灰色のメタリック顔料とを含む上記PA−11No.6の組成物にてすることができる。本発明材料に本質的な透明な特性を良好な表面外観と組み合わせると、透明ワニスが与えるような色と、メタリックな外観とが極めて良く引き出される。すなわち、30部のガラス繊維と0.5部の灰色メタリック顔料とを充填したマイクロ結晶性PA−11を、30部のガラス繊維と0.5部の顔料とを充填したPA−6や、30部のガラス繊維を充填したPA−6ペイント(これは高価で、環境に配慮していないことが多い)の代わりに用いることができる。このことはその他の無機充填剤にも当てはまる。これらの充填剤は物品製造時に溶融状態にはない(すなわち、融点が本発明マイクロ結晶性ポリアミドの融点よりもかなり高い)。充填剤は例えば植物性繊維または木材にすることができる。一般に、無機または植物の充填剤は通常の配合段階で材料に添加される。これらの充填剤は一般に分散充填剤である。しかし、これによって制限されるものではなく、任意の形状および任意のサイズの複合材料を考えることができる。
【0066】
鉱物粉末を高充填したマイクロ結晶性ポリアミド
(花崗岩、その他タイプの石)の鉱物外観を有する物品を得るためには、PMMAのような非晶質透明ポリマーを用い、これに30〜80%の鉱物粉末または充填剤を充填することができる。次いで、このポリマーに3次元形状、例えば台所のシンクの形状を与えて完成品を製造する。PMMAの代わりにマイクロ結晶性PAを用いることによって成形性(より深い3次元形状)が良くなり、テクスチャー(表面模様)が良くなり(耐スクラッチ性に優れたエンボス加工、水の流れを良くする構造にでき、手触りを良くし、石の模様をより正確に転写できる)、しかも、これらをより簡単に行うことができる。鉱物粉末または顔料を高充填したポリアミドは透明でなくなるが「本質的に透明である」ので、鉱物材料または顔料の色がより顕著かつ魅力的に出せる。
【0067】
耐スクラッチ性、耐摩耗性のテキスチャーを有するマイクロ結晶性ポリアミド
耐スクラッチ性および耐摩耗性を有する物品を得るための条件は材料本来が抵抗性を有することのみではなく、表面のテキスチャー(模様)が十分である必要があることは知られている。マイクロ結晶性PAは(展延性を有し、しかも、TgとTmの間では融解している)織布またはレースを型押し表面模様として用いることができる。これらを本発明材料に転写し、ネガ表面(凹凸、隆起、溝から成る表面)をえることができる。この表面は高い耐摩耗性を有する。紙やエンボス織布でも同様な効果が得られる。特に重要な点は手触りが柔らかい光沢のある隆起と艶消しの谷とが生み出せる点にある。すなわち、良好な耐摩耗性(視覚的)と柔らかい手触りとを組み合わせることができる。
【0068】
高温での修復性
本発明ポリアミドの別の利点は修復可能な能力にある。この場合もその半結晶およびマイクロ結晶性の特性とその低い(が過度に低くはない)結晶化度とによって修復ができる。すなわち、傷またはスクラッチが付いた場合、表面を火炎ブラシで熱作用で処理でき、スクラッチまたは傷を直すか、埋め戻すことができる。これは物品全体が液化または不利になるほど変形することがないためである。無機材料を充填した組成物でこの利点を用いた例としては、50重量部の炭酸カルシウムを充填した床タイルがある。本発明マイクロ結晶性ポリマーの性質を用いることによって、(TgとTmの間でタイルを製造する時に)四角い石の外観と手触りまたはその逆の鏡面大理石の外観と手触りが簡単に得られ、(床タイルとして使用する時に)機械的・化学的攻撃に対する高い抵抗性が得られ、しかも、その後に(物品を長期間使用した後に)トーチの火炎でタイルを加熱することによってスクラッチを全て修復できる、という利点が得られる。
【0069】
加熱二次成形での挙動
一つ前のパラグラフではスクラッチタイプの小さい欠陥の修復特性について説明した。ここでは寸法の大きな欠陥の修正特性について説明する。本発明のマイクロ結晶性PAから成る物品、例えば、昇華装飾で装飾した厚さが600ミクロンの平滑シートからなる物品、丸まる傾向がある物品、タイルの欠陥(凹形)を修正する場合には、成形装置すなわち2枚の平らな鏡面加工した金属板の間にシートを配置し、上側板が十分な加重を加えるだけでよい。次いで、全体をTgとTmの間の温度、例えば80℃に8時間加熱する。冷却後、シートを取り出し、平らになっていることを確認した。従って、シートは修復され、寸法的欠陥はなくなった。この修復法は材料が一般的な半結晶ポリマーの場合には実施ができないか、部分的にしか可能でない。すなわち、成形装置からシートを取り出す時した少なくとも一部が元の凹形外観に戻る。この最初の凹形状態への戻りは時間の経過または温度の上昇とともに続く。非晶質ポリマーではこの状態はさらに不利である。非晶質ポリマーはTg以上で液体であるため、その装飾性の一体性を維持できず、成形装置の2枚の板の縁の間から流れ出る。一方、Tg以下では非晶質ポリマーは過度に剛性であり、凹形状態が維持される。
【0070】
本発明マイクロ結晶性PAの各種利点を示す複雑な装飾物品製造段階1透明シート
マイクロ結晶性ポリアミドを押出し、シート状にカレンダー加工する。厚さは例えば200〜800μmにする。このポリマー材料は容易に押出しできる(標準的な半結晶ポリアミドよりもゆっくりとカレンダーロール上で結晶化および凝固する)という利点と、透明である(例えば標準的なPA−11は半透明でしかない)という利点がある。この材料には上記PA−11No.6を用いることができる。
【0071】
製造段階2昇華装飾
(一枚の紙上に支持した)文字や数字のロゴおよび刻み文字の着色装飾を昇華プロセスでシートに付与する(この装飾シートをマイクロ結晶性ポリアミドのシートと接触させ、加熱して染料を昇華させ、マイクロ結晶性ポリアミド上に移行させる)。この昇華印刷は通常、約170℃で2分間、2バールで行われる。この装飾はシート全体を被覆するものではない。未装飾の部分(従って、無色透明の領域)が存在する。昇華装飾は透明なシートの下側面に配置されるので、昇華装飾は保護され、それを被覆する透明材料の厚さは外観の審美性を高める(ワニス外観)。標準的な半結晶PA−11では材料が上側面から見て装飾を施すには十分に透明ではないため下側面に装飾を配置するのは有利ではない。透明な非晶質PAではTg以下(昇華顔料の浸透が不十分)でもTg以上(シートの液化)でも昇華操作は不可能である。従って、本発明のマイクロ結晶性材料が有利である。
【0072】
製造段階3熱成形
装飾したマイクロ結晶性ポリアミドのシートを3次元物品(例えば車のエンジンカバー)の形に熱成形する。マイクロ結晶性ポリアミドはTgとTmの間で熱成形操作に特に適している。上記PA−11.No.6の場合はこの操作を約170℃で3分間行う。
【0073】
製造段階4多色成形および仕上げ加工
装飾した熱成形シートを次に射出成形用金型内に、装飾のない面を金型壁と接するように配置する。完成品の表面と対向する側にある金型壁には「ブラシ処理(brosse)」タイプの仕上げ面(一つの方向を向いた筋模様)を有する。この金型壁の中心にはロゴの形をした鏡面加工した光沢領域が存在する。金型を閉じ、銀ねずに着色された標準的な半結晶ポリアミド(例えばPA−12)を射出する。このポリアミド(PA−121)はマイクロ結晶性ポリアミドシートの装飾内側面上に例えば約1〜5mmの厚さで多色成形する。金型から取り出し、完成品の「エンジンカバー」を得る。この完成品は視覚、触覚の両面で装飾されている。下記領域の装飾を実際に確認できる:
(1)ブラシ処理したアルミニウム状外観と手触りを有する銀ねず色の領域(昇華装飾されていない領域に対応)、
(2)上記領域の中央のロゴの形をした鏡面加工された外観と手触りとを有する銀ねず色の領域、
(3)暗く不透明な色で昇華装飾された領域に対応する各種の色の領域、
(4)明るい半透明の色で昇華装飾された領域に対応する各種の色で金属化された領域(従って、射出成形したポリアミド(PA−12)の下側層のメタリック着色層が透けて見える)
(5)昇華装飾された領域に対応するロゴ、文字、数字を有する各領域。
【0074】
これらの視覚的な装飾は全て一定厚さを有する本発明ポリマー材料によって機械的、物理的および化学的に保護されるということは理解できよう。従って、本発明マイクロ結晶性ポリアミド材料は視覚的、触覚的に魅力的で複雑な装飾を得るのに特に有利である。さらに、本発明マイクロ結晶性ポリアミド材料はその他の材料、例えば非晶質ポリマー、半結晶ポリマー、塗料よりも自由度が大きい。塗料は種々タイプの手触りを与える(一度に一つのタイプのみ)という利点があるが、視覚的な装飾性および保護(文字、数字、ロゴ)の点で制限がある。標準的なポリマーは視覚的な装飾の点では有利であるが、手触りの点で制限がある。マイクロ結晶性PAはこれら全ての利点を兼ね備えている。
【0075】
本発明材料にテクスチャと手触りを付与するのに使用可能な各種プロセスの実施例
IMD(インモールド装飾)法については既に説明した。以下では熱可塑性の射出成形プロセスで、優れた手触りと、極めて精巧および/または過去に例のない優れたテキスチャー(模様)を有するプラスチック物品を得るための各種プロセスについて説明する。本発明材料のフィルムまたはシート(予備装飾または着色されていてもよい)を金型上に配置し、その上に溶融ポリマーを射出する射出成形プロセスの場合、本発明材料は溶融ポリマーと金型の熱とによって供給される熱によって加熱され、Tgを超え、全く溶融せずに金型の表面の粒状模様を転写可能な状態まで十分に軟化する。金型内の高圧もこれを助ける。以下、可能性な変形プロセスを示す。
【0076】
第1変形例は、金型と本発明材料のフィルムとの間に紙または布のテキスチャー(模様)シート(または同様のもの)を挿入する。この方法は射出成形用金型表面加工をしなくてよく、従って、金型を交換せずに容易に模様を交換できるという利点がある。
【0077】
第2変形例では、(別の操作で別の時に)予め模様付けした本発明材料のフィルムを用い、このフィルムを本発明材料とは別のフィルムの模様付けのため型押表面として用いる。従って、型押表面として別の固体ポリマー、好ましくは同じポリマーを用いるのが容易である。プラスチック(または、他の任意の固体材料)から成る模様付けインサートを用いた金属金型が考えられる。
【0078】
第3変形例では、射出成形用金型以外の場所、例えば前段階でテキスチャー(模様)を配置する。本発明ポリマー材料のフィルムの製造より前の段階での変形例の場合、本発明のポリマーを押出プロセスで溶融し、冷却ロール上に延ばし(「キャースト」法)するか、2本の冷却ロール間でカレンダー加工する(「カレンダー加工」法)。冷却時に本発明材料は凝固するが、それでも十分に暖かく且つTg以上の状態を維持する。この段階で布または紙のテキスチャー(模様)表面(または同様のもの)を貼り合わせて加圧すると、布または紙のテクスチャ(または同様のもの)が得られる。このテクスチャは本発明フィルムの保護フィルムの役目もする。このの本発明組立体のフィルム/テクスチャ表面に加えられるその後の熱間製造段階、例えば、熱成形操作、被覆操作、圧縮成形操作または多色成形操作(第1変形例で説明)で本発明フィルムのテキスチャー(模様)は消えず、むしろより良くなる。最終の加熱製造段階でテキスチャー(模様)付けをすることは必須ではない。
【0079】
第4変形例では、既に述べた熱可塑性転換プロセス、例えば押出ラミネーション、熱成形、多色成形を用いた射出成形を個々または前後して用いる。
【0080】
第5の変形例では、熱硬化性樹脂の成形技術を用いる。例えば、金型の内側を本発明ポリマー材料のフィルムで覆った後に(含浸したガラス繊維織布を用いて)熱硬化性樹脂を塗布、硬化させる。
【0081】
第6の変形例では、本発明マイクロ結晶性材料の上側(見える)層と第2ポリマーの下側層(必要に応じてこれらの間の結合層をさらに用いる)からなる多層フィルムまたはシートを用いる。第2ポリマーは第3の材料、一般に溶融ポリマー(一般にその後の多色成形段階で導入される)により良く接着できることが重要である。第2ポリマーは第3のポリマーまたはそれと同等でそれに接着する他のポリマーと同じ種類である。これは「マイクロ結晶性PA」/PEBA二層フィルム(PEBA=ポリエチレン−ブロック−アミド、エラストマー、PA=ポリアミド)で表すことができる。このフィルムを靴底の金型上に配置した後、溶融PEBAを射出する。溶融ポリマーとフィルムのPEBA面との間の接着は優れている。変形例では次に溶融PTU(PEBAではない)を射出する。溶融ポリマーとフィルムのPEBA面との間の接着は優れている。これは「マイクロ結晶性PA」/無水物グラフト化ポリプロピレン/ポリプロピレン」3層フィルムで表わされる。次いで、このフィルムをポリプロピレンで多色成形する。これは「マイクロ結晶性PA」/エーテルTPU」2層フィルムで表され、この2層フィルムをエステル−TPUまたはPA6で多色成形する。溶融ポリマーとフィルムのPEBA面との間の接着は優れている。既に述べたように、他のプロセスを用いることもできる。PEBAの周知の利点(靱性、弾性)を有し且つマイクロ結晶性ポリアミドの視覚的、触覚的および耐久性の利点を有するPEBA靴底を得るためには、マイクロ結晶性PA/PEBA多層シートを単に熱成形で用い、多色成形は用いる必要がない。PA厚さのPEBA厚さに対する比は所望特性全体のバランスに応じて調整する。同じ考えで、スポーツ分野で特に有利であることが知られているマイクロ結晶性PAとPEBAエラストマーとの組合せでは、マイクロ結晶性PAとPEBAとのブレンド(加工前のアロイまたはドライブレンド)が特に重要である。
【0082】
第7の変形例では、少量の金属顔料(またはメタリック外観または視覚的に金属化特性を有するもの)を分散したフィルムまたはシートを用いる。シートはかなりの透明状態を維持している。その後の段階で明るい青色に染めたポリマーを多色成形する。最終部品は美しい奥行きのある効果を示すメタリックブルーの外観を有する。金属顔料が少量充填された透明なフィルムは基材の青い色にメタリック外観を与える。さらに、フィルムは基材の射出成形の全ての欠陥、特に、射出成形部品における明るい青色顔料の流れ欠陥と分散欠陥とを被覆する。すなわち、着色剤の良好な分布を得るのは射出成形品では難しいが、押出フィルムでははるかに容易である。別の変形例として着色した不透明なフィルムも使用できる(従って、多色成形された基材の色はその後は見えなくなる)。やや似た形で、マイクロ結晶性ポリアミドシートはそれ自体種々の層(特にこれと同じPAから成る)で構成できる。上側層は金属顔料で軽く着色されているが、それでも透明であり、下側層は十分に不透明になるように着色剤で十分に着色されている。この多層シートは美しいメタリックの外観、良好な奥行を有し、その十分な不透明性によって基材中の全ての欠陥を被覆する。次いで、この基材を多色成形(正確に言えばアンダーモールド)する。ラッカーおよび奥行き効果を強めるために、完全に透明なマイクロ結晶性ポリアミドの追加の上側層を形成することもできる。
【0083】
一般に、テキスチャリング(模様付け)(およびその結果得られる手触り)は、本発明材料(固体)をテキスチャ表面にプレスするのに十分な圧力を加える任意の加熱(Tg〜Tm)プロセスで得ることができる。この条件下で、マイクロ結晶性ポリアミドの液体でなく(そうでなければ過度に接着する)、過度にリジッドでない(そうでなければ型押できない)という性質を用いることによって公知のプラスチックでは得ることができなかった手触りをポリマー材料に付与することができる。従って、完全に異なる性質の材料、例えば布、紙、皮革、木材、植物等の触覚(および視覚)表現をいわば「クローン化」することができる。この利点はその他の利点、例えば視覚的な装飾性および保護特性(耐摩耗性、耐衝撃性、紫外線抵抗性および耐薬品性)と組み合わせることができる。複数の利点をこのように組み合わせることによって最後には(マイクロ結晶性ポリアミドの特性を利用する製造および仕上げ段階後に)、知覚的な品質と実際の品質の両面で高品質な物品を得ることができる。そうした物品は例えば自動車、スポーツ用品、例えば、靴およびスキー、家庭用電気器具、部品、電話部品、コンピュータケース、家具、フローリング等の内装部品または外装部品にすることができる。
【0084】
本発明で使用可能なマイクロ結晶性組成物の実施例
得られるポリマーが十分に透明になる、十分な高い温度で製造されるC9以上のポリアミドモノマーを主成分とするポリマーのブレンドまたはアロイは、最終アロイが融点および25J/g以上の溶融エンタルピーを有するのに十分な量の結晶性ポリマー(例えばポリアミド−11)と、最終アロイが十分な透明性を有するのに十分な量の非晶質ポリマー(例えばポリマーIPDA.12)とを含む:
PA−11+30%PA−BMACM.12
PA−11+30%PA−BMACM.14
PA−11+30%PA−BMACM.14/BMACM.10(80/20wt%)
PA−11+30%PA−BMACM.IA/12
PA−11+30%PA−BMACM.IA/BMACM.TA/12
PA−11+30%PA−PACM.12
PA−11+30%PA−IPDA.12
PA−11+30%PA−IPDA.10/12(80/20wt%)
PA−11+20%PA−IPDA.10/12(80/20wt%)+15%PEBA−12
PA−11+30%PA−10.IA
PA−11+30%PA−10.IA/10.TA
【0085】
最終コポリマーが融点および25J/g以上の溶融エンタルピーを有するのに十分な量の結晶性ポリマー(例えば11モノマー単位)と、最終コポリマーが十分に透明になるのに十分な量の非晶質モノマー(例えばモノマー単位IPD.10)とを含むC9以上のモノマーを主成分とするコポリマー:
90/10重量%coPA−11/IPDA.10
90/10重量%coPA−11/IPDA.10
【0086】
耐薬品性、耐紫外線および耐衝撃性にモッ糸も優れた主としてC9モノマーから成るポリアミド組成物(寸法のばらつきがほとんどない)が好ましい。しかし、得られるポリマーが十分に透明となるのに十分な温度で製造されるC9以下のポリアミドモノマーを主成分とするポリマーのブレンドまたはアロイを用いることもできる。このアロイは最終アロイが融点および25J/g以上の溶融エンタルピーを有するのに十分な量の結晶性ポリマー(例えばポリアミド−6)と、最終アロイが十分な透明性を有するのに十分な量の非晶質ポリマー(例えばポリマーPA−6,IA)とから成る:
PA−6,12+30%PA−IPDA,6/IPDA,10(70/30重量%)
PA−6+30%PA−6−3,TA
PA−6+30%PA−6−IA
PA−6+30%PA−6−IA/6,TA
PA−6+30%PA−IPDA,6
PA−6+30%PA−BMACM,6/6(70/30重量%)
coPA−6/6,6(80/20重量%)+30%PA−6,IA
coPA−6/6,10(80/20重量%)+30%PA−6,IA
coPA−6/12(80/20重量%)+30%PA−6,IA
coPA−6,TA/6,6+30%PA−6,IA
【0087】
最終コポリマーが融点および25J/g以上の溶融エンタルピーを有するのに十分な量の結晶性モノマー(例えば6,6モノマー単位)と、最終コポリマーが十分な透明性を有するのに十分な量の非晶質モノマー(例えばモノマー単位IPD,6)とを含むC9以下のモノマーを主成分とするコポリマー:
coPA−6/IPDA,6
coPA−6,6/6,T/6,I,10
【0088】
(注): *テキストの上部参照。
*PEBA−12:Mnが5000のPA−12ブロックと、Mnが650のPTMGブロックとを含む、MFIが4〜10(235℃/1kgでのg/10分)であるコポリマー。
*パーセンテージは重量%である。
*NB:「結晶性」とは半結晶を意味する(どのポリマーも実際には完全に結晶性ではないが、「結晶性」という用語を用いるのが一般的である)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面の全部または一部がマイクロ結晶性ポリアミドから成る特定の表面状態を有する物品を得るためのマイクロ結晶性ポリアミドの使用であって、
マイクロ結晶性ポリアミドのTg(ガラス転移温度)とTm(融点)との間で高温で物品を製造する段階を含み、マイクロ結晶性ポリアミドの透明度が、標準的な加工方法、例えば射出成形およびシート押出/カレンダ加工で得られる厚さ1mmの物品を560ナノメートル波長で測定した時の光透過係数が80%以上であることを特徴とする使用。
【請求項2】
マイクロ結晶性ポリアミドの透明度が88%以上である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
マイクロ結晶性ポリアミドの結晶化度が10%以上かつ30%以下(ISO11357に従った40℃/分でのDSCの第1回目の加熱)であり、溶融エンタルピーが25J/g以上かつ75J/g以下(ISO11357に従った40℃/分でのDSCの第1回目の加熱)である請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
マイクロ結晶性ポリアミドのTg(ガラス転移温度)が40〜90℃で、Tm(融点)が150〜200℃である請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
マイクロ結晶性ポリアミドが、50重量%以上が≧C9モノマー(すなわち炭素原子の数が9以上)であるモノマーの連鎖で得られる請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
マイクロ結晶性ポリアミドがコポリアミドまたはマイクロ結晶性ポリアミドをマトリックス成分としたマイクロ結晶性ポリアミドを主成分とする組成物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
マイクロ結晶性ポリアミドの組成物がアロイ、ブレンド、複合材料で、この組成物は可塑剤、安定剤、顔料または染料、無機充填材、相溶性があるか、第3成分を介して相溶化される他の混和性ポリマーを含む請求項6に記載の使用。
【請求項8】
マイクロ結晶性ポリアミドが下記組成(合計100重量%)を有する透明な組成物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用:
(1)下記の縮合を基本として得られる非晶質ポリアミド(B) 5〜40%:
a)脂環式ジアミンおよび脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のジアミンと、脂環式二酸および脂肪族二酸の中から選択される少なくとも一種の二酸(これらのジアミンまたは二酸単位の少なくとも一つは脂環式化合物)
b)脂環式のα、ω-アミノカルボン酸、
c)上記2つの可能な組み合せ
d)必要な場合には、α、ω-アミノカルボン酸またはその対応ラクタム、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一つのモノマーをさらに含むことができる、
(2)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリアミド(C) 0〜40%
(3)(A)と(B)の相溶化剤(D) 0〜20%
(4)可撓性改質剤(M) 0〜40%
(ただし、(C)+(D)+(M)=0〜50%)
(5)100重量%への残部は半結晶ポリアミド(A)。
【請求項9】
マイクロ結晶性ポリアミドが下記組成(合計100重量%)を有する透明な組成物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用:
(1)脂環式でもよい少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種の芳香族二酸(必要な場合にはさらにα、ω-アミノカルボン酸、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンの中から選択される少なくとも一種のモノマー)との縮合で得られる非晶質ポリアミド(B) 5〜40%
(2)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーおよびコポリアミドの中から選択される可撓性ポリマー(C) 0〜40%
(3)(A)と(B)の相溶化剤(D) 0〜20%
(ただし、(C)+(D)=2〜50%、(B)+(C)+(D)は30%以下ではなく)
(4)100重量%の残部は半結晶ポリアミド(A)である。
【請求項10】
ポリアミド(A)がPA−11またはPA−12である請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
外側表面の全部または一部が特定の表面状態を有するマイクロ結晶性ポリアミドから製造される請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用で得られる物品。
【請求項12】
マイクロ結晶性ポリアミドが、必要に応じて結合層を介して、第2ポリマーの層と組み合わされる請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
上記第2ポリマーが、第3ポリマーと同じ種類か、好ましくは溶融状態でこの第3ポリマーと接着可能であり、この第3ポリマーは後で(またはさらに)(特に多色成形段階に)第2ポリマーと組み合わされる請求項12に記載の使用。
【請求項14】
第2ポリマーがPEBA、TPU、PE、PP、ABS、PC、610、612、11、12PA、C9PAおよびコポリアミド、PAアロイ、ポリフタルアミド、透明な非晶質PAおよびPMMAの中から選択される請求項13に記載の使用。
【請求項15】
マイクロ結晶性ポリアミドの溶融エンタルピーが25J/g以上(ISO11357に従った40℃/分でのDSCの第1加熱)であり、マイクロ結晶性ポリアミドの透明度が、標準的な加工方法、例えば射出成形およびシート押出/カレンダ加工で得られる厚さ1mmの鏡面加工サンプルで560ナノメートル波長で測定した時の光透過係数が80%以上となる透明度である請求項1に記載の使用。
【請求項16】
透明性が維持されるように少量の顔料、好ましくはメタリック外観の顔料をマイクロ結晶性ポリアミド中に分散する請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1560(P2011−1560A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211420(P2010−211420)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2007−517344(P2007−517344)の分割
【原出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】