説明

特許情報解析システム

【課題】特許出願や特許取得等に関する特許群の情報を収拾して、技術テーマに関する動向を把握するための有用な分析情報を与える特許情報解析技術を提供する。
【解決手段】特許情報解析装置10は、入力部20、検索部30、解析部40および出力部50を備えている。入力部20は、検索条件SCの入力を受け付ける。検索部30は、上記のデータベース100から、受け付けた検索条件SCに基づいて所定件数N1の特許技術情報PDを含む検索結果群GRを抽出する。解析部40は、検索結果群GRより、(1)所定件数N1に占める一または複数の名義人ANにかかる特許技術情報PDの件数N2の比率に対応する第一係数(M値)と、(2)抽出された特許技術情報PDの件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数(E値)と、を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許技術情報を検索および解析する特許情報解析システム、特許情報解析装置およびプログラム、特許情報解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関し、特許文献1には、各出願人のコア技術に関する特許を抽出して重要な特許に重み付けを行い、特許マップのデータとしての精度を向上する特許分析システムが開示されている。また、特許文献2には、特許群の経済的評価を行なう装置や方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−209174号公報
【特許文献2】特開2009−3727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、企業戦略の一環として、自社による研究開発分野や競合他社の注力分野などの種々の技術テーマに関する動向を把握することが益々求められている。しかしながら、特許文献1にかかるシステムは、出願人や技術分類ごとの特許マップが作成されるにとどまり、技術テーマの動向を把握するための情報を提供するものではない。また、特許文献2にかかる装置や方法は特許群の経済的価値を評価するにとどまり、やはりこの種の情報を提供するものではない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、特許出願や特許取得等に関する特許群の情報を収拾して、技術テーマに関する動向を把握するための有用な分析情報を与える特許情報解析技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースと、検索条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた前記検索条件に基づいて、所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を前記データベースから抽出する検索手段と、前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出する解析手段と、算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力する出力手段と、を備える特許情報解析システムが提供される。
【0007】
上記発明によれば、検索条件にかかる技術テーマに関する研究開発が、注目企業や件数上位企業などの所定の名義人により占有されているか否かを示す第一係数と、この技術テーマに関する特許技術情報の件数の推移を示す第二係数とが対応づけて出力される。これにより、当該技術テーマに関する研究開発の寡占化傾向と成熟度合いとに基づく動向を把握することが可能である。
【0008】
また、本発明によれば、検索条件の入力を受け付ける入力手段と、名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出する検索手段と、前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出する解析手段と、算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力する出力手段と、を備える特許情報解析装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、特許情報解析装置にデータ処理を実行させるプログラムであって、前記データ処理が、検索条件の入力を受け付けるステップと、名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出するステップと、前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出するステップと、算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力するステップと、を含むことを特徴とするプログラムが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、検索条件の入力を受け付けるステップと、名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出するステップと、前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出するステップと、算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力するステップと、を含む特許情報解析方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特許情報解析技術によれば、検索された技術テーマに関する動向を把握するための有用な分析情報が提供される。これにより、特許戦略の立案や研究開発に対する投資価値の評価などに資する有益な情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる情報解析装置および情報解析システムを示すブロック図である。
【図2】特許情報解析方法の全体フローを示すフローチャートである。
【図3】M値およびE値を算出する解析ステップを示すフローチャートである。
【図4】M値の算出方法の説明図である。
【図5】上位出願人によるE値の算出方法の説明図である。
【図6】特許マップの説明図である。
【図7】特許マップの第一変形例の説明図である。
【図8】特許マップの第二変形例の説明図である。
【図9】趨勢情報の取得ステップを示すフローチャートである。
【図10】趨勢情報の説明図である。
【図11】特許マップの第三変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0015】
また、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
また、本発明の構成要素がデータを記憶または格納するとは、本発明の装置が、少なくともデータを保持する機能を有することを意味しており、当該データが現に保持されていることを必ずしも要しない。一方、本発明の構成要素がデータを記憶または格納しているとは、少なくともユーザにより使用されるときに本発明の装置がデータを記憶または格納している状態となることを意味する。
【0016】
また、本発明の特許情報解析方法は、複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。このため、本発明の特許情報解析方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
【0017】
<第一実施形態>
(特許情報解析装置)
図1は、本実施形態にかかる情報解析装置10および情報解析システム200を示すブロック図である。
【0018】
はじめに、本実施形態の情報解析装置10および情報解析システム200の概要について説明する。
特許情報解析システム200は、データベース100と情報解析装置10とを含む。
データベース100には、名義人ANおよび日付DTをそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数N0の特許技術情報PDが格納されている。データベース100と情報解析装置10とは、インターネットまたはLAN(Local Area Network)などのネットワーク110で接続されている。
【0019】
特許情報解析装置10は、入力部20、検索部30、解析部40および出力部50を備えている。
入力部20は、検索条件SCの入力を受け付ける。
検索部30は、上記のデータベース100から、受け付けた検索条件SCに基づいて所定件数N1の特許技術情報PDを含む検索結果群GRを抽出する。
解析部40は、検索結果群GRより、(1)この所定件数N1に占める一または複数の名義人ANにかかる特許技術情報PDの件数N2の比率に対応する第一係数(M値)と、(2)抽出された特許技術情報PDの件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数(E値)と、を算出する。
そして、出力部50は算出された第一係数(M値)と第二係数(E値)とを対応づけて出力する。
【0020】
次に、本実施形態の情報解析装置10および情報解析システム200について詳細に説明する。本実施形態の特許情報解析装置10は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、IF(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等のコンピュータ装置として実施することができる。ここで、コンピュータプログラム(プログラム)に対応した各種動作を特許情報解析装置10に実行させることは、各種デバイスを特許情報解析装置10に動作制御させることを含む。
【0021】
データベース100は、特許庁や民間企業等が提供する特許文献のデータベースである。データベース100に蓄積されている特許技術情報PDの各件は、願書などの書誌データと、明細書などの技術詳細説明データとを含む。書誌データは、特許または実用新案登録の出願人や権利者、発明者(考案者)などの名義人ANと、出願日や公開日、登録日、公報発行日などの日付DTと、を含んでいる。特許技術情報PDは、代表的には公開特許公報、特許公報または登録実用新案公報(以下、特許文献という)である。
【0022】
このうち、本実施形態の特許技術情報PDは公開特許公報である。また、本実施形態における名義人ANは特許出願人であり、日付DTは特許出願日である。分割出願または変更出願にかかる特許技術情報PDの場合は、原出願日を日付DTとするとよい。このほか、特許技術情報PDとしては、特許文献に対応するその他の文書データまたは画像データを用いてもよい。特許技術情報PDとして公開特許公報を用いることにより、技術テーマごとの最新の動向が多く、かつ迅速に取得される。
【0023】
入力部20は、所定数(N)に関する入力を受け付けるインタフェース装置である。情報解析装置10のユーザは、キーボードなどの入力部20を操作して、特許技術情報PDの検索条件SCとして、所定の特許分類やキーワード、類似概念、日付、出願人名(権利者名、発明者名)などを入力する。
【0024】
検索部30は、データベース100にアクセスするとともに、上記の検索条件SCをデータベース100に送信して、検索結果群GRを取得するインタフェース装置および記憶装置である。検索結果群GRに含まれる特許技術情報PDの件数N1は検索条件SCにより異なるが、100〜500件が好ましい。件数が過小の場合は後述する拡大度(E値)の計算揺らぎが大きくなり、また過大の場合は後述する独占度(M値)の計算揺らぎが大きくなる。
【0025】
解析部40は、抽出された検索結果群GRを解析する演算処理装置である。特許マップPMを作成するための条件である出力条件MCを、入力部20から受け付けるか、または記憶部60から取得する。
【0026】
出力部50は、解析部40が算出した特許マップPMを出力する出力装置である。出力方法は特に限定されず、画面表示、紙印刷、音声出力など特に限定されない。代表的にはディスプレイ表示装置を例示することができる。
【0027】
記憶部60は、種々の情報を一時的に、または継続的に保持する半導体メモリーなどの記憶装置である。本実施形態の記憶部60は、具体的には、条件記憶部62、メッセージ記憶部64および相関記憶部66を含んでいる。記憶部60は一つまたは複数の記憶装置により実現される。条件記憶部62、メッセージ記憶部64および相関記憶部66は記憶部60における記憶領域として実現される。
条件記憶部62は、出力する特許マップPMにおける独占度(M値)と拡大度(E値)をそれぞれ複数段階に区分するための閾値TH1、TH2を記憶する手段である。また、条件記憶部62は、後述する名義人ANの上位件数の設定値である所定数(N)を記憶する手段である。
メッセージ記憶部64は、出力される特許マップPMの特徴を表すメッセージ情報MSを記憶する手段である。
相関記憶部66は、複数の名義人ANの提携関係などの結びつきを示す名義人相関情報ARを記憶する手段である。
入力部20、検索部30、解析部40、出力部50および記憶部60はバス90に接続されている。
【0028】
(特許情報解析方法)
以下、本実施形態の情報解析システム200にて特許技術情報PDを解析するための方法(本方法)について説明する。
図2は、特許情報解析方法の全体フローを示すフローチャートである。図3は、M値およびE値を算出する解析ステップS40を示すフローチャートである。図1から図3を用いて本方法を説明する。
【0029】
はじめに、本方法の概要について説明する。
本方法は、条件入力ステップS20と、抽出ステップS30と、解析ステップS40と、出力ステップS60と、を含む。
条件入力ステップS20は、検索条件SCの入力を受け付けるステップである。
抽出ステップS30は、名義人ANおよび日付DTをそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数N0の特許技術情報PDが格納されているデータベース100から、受け付けた検索条件SCに基づいて所定件数N1の特許技術情報PDを含む検索結果群GRを抽出するステップである。
解析ステップS40は、検索結果群GRより、(1)この所定件数N1に占める一または複数の名義人ANにかかる特許技術情報PDの件数N2の比率に対応する第一係数(M値)と、(2)抽出された特許技術情報PDの件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数(E値)と、を算出するステップである。
出力ステップS60は、算出された第一係数(M値)と第二係数(E値)とを対応づけて出力するステップである。
【0030】
また、本方法を実現するための本実施形態のプログラムは、特許情報解析装置10にデータ処理を実行させるプログラムであって、データ処理が、検索条件SCの入力を受け付けるステップと、名義人ANおよび日付DTをそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数N0の特許技術情報PDが格納されているデータベース100から、受け付けた検索条件SCに基づいて所定件数N1の特許技術情報PDを含む検索結果群GRを抽出するステップと、検索結果群GRより、(1)この所定件数N1に占める一または複数の名義人ANにかかる特許技術情報PDの件数N2の比率に対応する第一係数(M値)と、(2)抽出された特許技術情報PDの件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数(E値)と、を算出するステップと、算出された第一係数(M値)と第二係数(E値)とを対応づけて出力するステップと、を含む。
【0031】
つぎに、本方法を詳細に説明する。
本方法では、ユーザは入力部20を操作してデータベース100にアクセスする(S10)。つづけてユーザは入力部20から検索条件SCを入力し(S20)、検索部30は、検索条件SCに応じて件数N1の特許技術情報PDからなる検索結果群GRを取得する(S30)。
【0032】
図3に示すように、解析ステップS40では、解析部40は検索結果群GRに含まれる全要素数である件数N1を取得して検索部30に記憶しておく(S41)。
つぎに、解析部40は、検索結果群GRを出願人(名義人AN)ごとに分類し、出力条件MCで指定された条件を満たす出願人に関する出願件数N2を取得する(S42)。この件数N2を用いて、具体的にはN2をN1で除することで、解析部40は第一係数として独占度(M値)を算出する。
【0033】
図4は、第一係数(独占度:M値)の算出方法の説明図である。
本方法で算出される第一係数(M値)は、抽出された特許技術情報PDの件数が多い上位の所定数(N)の名義人ANに関する比率に対応する値である。本実施形態では、検索結果群GRの要素数(抽出された特許技術情報PDの件数N1)を207件とする。
【0034】
図4に示すように、出願人(名義人AN)を件数の上位から順に並べ、上位N位までの出願件数を加算して件数N2を算出する。
【0035】
出願人の所定数(N)は入力部20より入力してもよく、または予め記憶部60に記憶しておいてもよい。本実施形態の情報解析装置10は、所定数(N)を記憶する記憶部(条件記憶部62)を備えている。
【0036】
図4に示す例では、所定数(N)=3としている。上位三位までの出願人(AA株式会社、株式会社BB、CC株式会社)の件数合計は30件である(S43)。これにより、解析部40は、第一係数(独占度:M値)を30/207=14.5%と算出することができる(S44)。
【0037】
さらに、本実施形態の情報解析装置10は、出願人(名義人AN)が異なる場合にも、出願人間の提携関係などの結びつきの度合いを考慮しての独占度(M値)の算出が可能である。
具体的には、情報解析装置10は、複数の名義人ANを互いに対応づける名義人相関情報ARを記憶する相関記憶部66を備えている。そして、解析部40は、一の名義人AN1にかかる特許技術情報PDの件数と、相関記憶部66を参照して取得された、一の名義人AN1に対応づけられた他の名義人AN2にかかる特許技術情報PDの件数と、を合計して第一係数(M値)を算出する。
【0038】
これにより、いわゆるテキストマイニングにより名義人ANの名称に基づいて出願人同士の結びつきを推定する方法に比べて、より高い精度で当該技術テーマの寡占状態を判断することができる。
【0039】
図4に示す例では、件数第4位のAAエンジニアリング株式会社と、件数第1位のAA株式会社が資本関係のあるグループ会社であるとの情報が相関記憶部66に記憶されている。相関記憶部66が記憶する名義人相関情報ARは、予め出願人間の協力関係を考慮して、複数の名義人ANを互いに検索可能に関連づけたデータベースである。
解析部40は、検索結果群GRを出願人ごとに分類して特許技術情報PDの件数ごとに仮順位づけしたのち、相関記憶部66を検索して名義人ANの関連づけをおこなう。この結果、同一の協力グループとみなせる複数の出願人による出願を統合して、特許技術情報PDの件数の修正順位を算出する。本実施形態の例では、AA株式会社とAAエンジニアリング株式会社の合計出願件数である18件を第一位とし、CC株式会社とFF株式会社の合計出願件数である14件を第二位とし、株式会社BBの単独出願件数である10件を第三位として、合計42件を上位三位までの件数N2として算出してもよい(S43)。
この場合、第一係数(M値)は42/207=20.3%となる(S44)。
【0040】
ここで、解析部40は、所定件数の大小に基づいて所定数(N)を増減させてもよい。すなわち、検索結果群GRの全件数N1が100件程度の場合、一般に独占度(M値)を算出する出願人数(N)を3〜10程度とすることで当該技術分野のリーダー企業による占有比率を適切に評価することが可能である。これに対し、検索結果群GRの全件数N1が1000件程度の場合には、出願人数(N)を増大することで、独占度(M値)の数値が過小にならず、当該技術分野のリーダー企業による占有比率を適切に評価することが可能となる。
【0041】
図5は、第二係数(拡大度:E値)の算出方法の説明図である。
本方法で算出される拡大度(E値)は、検索結果群GRとして抽出された技術テーマ自体の経時的な拡大率(縮小率を含む)である。
拡大度は種々の観点で算出することができ、ステップS30およびS41で取得された検索結果群GRの件数N1を母集団として、所定期間ごとの件数の推移を解析してもよく、または検索結果群GRと類似の技術テーマに関する新たな検索条件SCによる検索を別途おこなった上で、当該新たな検索結果群GR2を母集団として所定期間ごとの件数の推移を解析してもよい。
本実施形態では、抽出ステップS30で抽出された検索結果群GRを母集団として、所定の期間ごとに出願日を区分して件数を集計し、その数値の変動に基づいて拡大度(E値)を算出する場合を例に説明する。
【0042】
第二係数(E値)を算出するために用いる、特許技術情報PDの件数に関する経時的な変化率の一つの例として、本実施形態では、抽出された全件数における直近の所定期間の件数の比率を用いることで、当該技術テーマの近時の拡大または縮小傾向を評価対象とする。具体的には、本実施形態の第二係数(拡大度:E値)は、抽出された特許技術情報PDの全件数N1(207件)に対する、日付DTが直近の所定期間(例えば5年)に含まれる特許技術情報PDの件数N3a(本実施形態では118件)の比率に対応する値である。
【0043】
すなわち、本方法において解析部40は、特許技術情報PDの全件数N1の出願日を所定期間で区分し(S45)、直近の区分に属する件数(N3)を取得する(S46)。この件数N3を用いて、具体的にはN3aをN1で除することで、解析部40は第二係数として拡大度(E値)を算出する(S47)。本方法では、第二係数(拡大度:E値)を118/207=57.0%と算出することができる。
【0044】
なお、本方法においては、入力部20がこの所定期間に関する入力を受け付けてもよい。または、所定期間(例えば5年)を示す情報を記憶部60に格納しておいてもよい。
そして、本方法のように所定期間を1〜10年、特に2〜5年に設定することにより、特許技術情報PDの日付DTの揺らぎの影響を抑制しつつ、かつ当該技術テーマの開発動向の推移を高い解像度で把握することができる。
【0045】
本方法では、検索結果群GRとして抽出された特許技術情報PDの全件数N1を対象として、その出願件数の経時的(経年的)な推移をもって拡大度(E値)としたが、本発明はこれに限られない。例えば、検索結果群GRに含まれる直近R1年に含まれる件数に対する、直近R2年(ただしR2<R1)の件数の比率を用いてもよい。または、特定の一または複数の出願人にかかる出願件数の経時的な推移をもって、当該技術テーマ全体の拡大度(E値)としてもよい。この場合、当該一または複数の出願人として、出願件数の上位者を採用してもよく、または自社や競合他社などの特定の注目出願人を採用してもよい。
【0046】
すなわち、解析部40は、受け付けた名義人ANにかかる特許技術情報PDの件数の経時的な変化率に対応する値を第二係数(E値)として算出してもよい。
【0047】
図5には、直近の所定期間(5年)を出願日とする件数N3aのみならず、その直前の所定期間(5年)を出願日とする件数N3b、N3c、N3dを図示している。それぞれ50件、22件、15件である。このように直近よりも古い出願日の出願件数に着目することで、当該技術テーマの開発の趨勢に関するさらなる予測が可能である。この点は後述する。
【0048】
図1に示すように、解析部40はM値およびE値を算出して出力部50にこれを送信する。解析部40および出力部50は、M値とE値とを対応づけ、例えば特許マップPMを作成して(図2:S50)、これを表示出力する(S60)。
図6は、出力部50で出力される特許マップPMの説明図である。
出力部50は、算出された第一係数(独占度:M値)と第二係数(拡大度:E値)とを対応づけて出力する。具体的な出力態様は特に限られない。本実施形態では、図6に示すようにM値とE値を縦・横軸とする二次元座標上にプロットする場合を例示する。
【0049】
すなわち、本実施形態の出力部50は、複数の象限に区分された二次元マトリクスに対して、算出された第一係数(M値:14.5%)および第二係数(E値:57.0%)を対応づけて出力する。
【0050】
そして、ある技術テーマについて作成された特許マップPMにおいて、他の技術テーマとの対照をおこなう場合には、更なる検索をおこなう(図2でS70:YES)。
【0051】
図7は、特許マップPMの第一変形例の説明図である。同図は、4つの技術テーマにかかるM値とE値とが一つの特許マップPM上にプロットされている。言い換えると、図2におけるステップS20〜S60を4回繰り返した場合の出力部50の出力を表している。
【0052】
解析部40は、入力部20が受け付けた異なる検索条件SCに基づいて抽出された検索結果群GR1、GR2、・・・より、複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を算出する。そして、出力部50は、算出された複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を二次元マトリクスに対応づけて出力する。
【0053】
すなわち、本方法では、異なる検索条件SCに基づいて抽出された検索結果群GR1、GR2、・・・より、複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を算出する。そして、予め設定された閾値TH1、TH2により複数の象限I〜IVに区分された二次元マトリクスに対して、算出された複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を対応づけて出力する。
【0054】
第一係数(M値)および第二係数(E値)が属する象限I〜IVは、閾値TH1、TH2によって区分される。本実施形態では閾値TH1およびTH2は一つであり、二次元マトリクスは2×2に区分される。閾値TH1をX個、閾値TH2をY個とした場合には、二次元マトリクスは(X+1)×(Y+1)に区分される。
【0055】
独占度(M値)を象限に区分する閾値TH1の具体的な数値は、検索される技術テーマに応じて変更してもよいが、一般的に、独占度(M値)を算出する出願人数Nが3〜6の場合には閾値TH1を20〜50%、出願人数Nが7〜10の場合には閾値TH1を55〜80%とするとよい。これにより、多種の技術テーマに関して寡占状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0056】
閾値TH1、TH2を取得するにあたっては、入力部20が閾値TH1、TH2に関する入力を受け付けてもよく、または本実施形態のように条件記憶部62(図1を参照)にこれらを予め記憶しておいてもよい。すなわち、本実施形態の情報解析装置10は、二次元マトリクスを複数の象限にそれぞれ区分する閾値TH1、TH2を記憶する条件記憶部62を備えていてもよい。
【0057】
図7に示すように、象限I〜IVには、これを表すメッセージ情報MSが付されている。メッセージ情報MSは、閾値TH1、TH2と対応づけられてメッセージ記憶部64に記憶されている。そして、第一係数(M値)および第二係数(E値)が決定されると、第一係数(M値)と閾値TH1、および第二係数(E値)と閾値TH2とが解析部40にて大小比較され、当該技術テーマが属する象限が決定される。
【0058】
本実施形態の情報解析装置10は、複数の象限にそれぞれ対応づけられたメッセージ情報MSを記憶するメッセージ記憶部64を備えている。出力部50は、メッセージ記憶部64を参照して、第一係数(M値)および第二係数(E値)が属する象限に対応するメッセージ情報MSを取得し(図2:S50)、このメッセージ情報MSを出力する。
【0059】
メッセージ情報MSとしては、同図のように象限ごとの名称でもよく、または図8に示すように象限ごとの戦略的なアドバイス情報でもよい。
【0060】
具体的には、第一象限Iは、上位出願人による独占度(M値)が高く、かつ全体の出願件数の拡大度(E値)も高い状態の出願動向を示している。このため、メッセージ情報MSとしては、当該技術テーマの成長が見込めることを示す情報(本実施形態では「フロンティア」)が付されている。当該メッセージ情報MSはメッセージ記憶部64(図1を参照)に格納されている。
第二象限IIは、上位出願人による独占度(M値)が低く、かつ全体の出願件数の拡大度(E値)が高い状態の出願動向を示している。このため、メッセージ情報MSとしては、多数の出願人が乱立している成長状態を示す情報(本実施形態では「群雄割拠」)が付されている。
第三象限IIIは、上位出願人による独占度(M値)が低く、かつ全体の出願件数の拡大度(E値)も低い状態の出願動向を示している。このため、メッセージ情報MSとしては、多数の出願人が参入しているものの情勢が不分明である状態を示す情報(本実施形態では「アヒルレース」)が付されている。
第四象限IVは、上位出願人による独占度(M値)が高く、かつ全体の出願件数の拡大度(E値)が低い状態の出願動向を示している。このため、メッセージ情報MSとしては、少数の出願人による寡占状態を示す情報(本実施形態では「既得権」)が付されている。
【0061】
このように、算出されたM値およびE値の数値のみならず、その属する象限をメッセージ情報MSとともに出力することで、当該技術テーマの動向を明確に把握することができる。メッセージ情報MSは、上記例に限定されるものではなく、各内容を表すものであればよい。例えば、第三象限のメッセージ情報MSとして、将来の情勢に流動性が多い状態を示す言葉、例えば「混沌」等、を付しても差し支えない。同様に、第四象限のメッセージ情報MSとして、変化が少ない状態を示す言葉、例えば「膠着」等、を付してもよい。
【0062】
なお、上では閾値TH1、TH2を予め条件記憶部62に記憶しておく場合を例に説明したが、本発明はこれに限られない。解析部40は、算出された複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)に基づいて、閾値TH1、TH2を決定してもよい。
【0063】
具体的には、算出された複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)が各象限に分散して区分されるように、第一係数(M値)および第二係数(E値)のそれぞれ中間に閾値TH1、TH2を設定することができる。
【0064】
言い換えると、異なる検索条件SCに基づいて抽出された検索結果群GR1、GR2、・・・より複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を算出し、算出された複数の第一係数(M値)の中間に設定された第一の閾値TH1と、算出された複数の第二係数(E値)の中間に設定された第二の閾値TH2とを決定し、決定された第一の閾値TH1および第二の閾値TH2により複数の象限に区分された二次元マトリクスに対して、複数組P1、P2、・・・の第一係数(M値)および第二係数(E値)を対応づけて出力してもよい。
【0065】
これにより、検索された各技術テーマの検索結果群を互いに差別化して評価することができる。
【0066】
図8は、特許マップPMの第二変形例の説明図である。この特許マップPMは、象限I〜IVごとの戦略的なメッセージ情報MSがあわせて出力されている。
【0067】
本変形例では、独占度(M値)が高い象限Iおよび象限IVに関しては、独占度を決定する上位N位までに出願人の中にユーザ(自身)が含まれていない場合:ケース(1)と、含まれている場合:ケース(2)とで、異なる内容の情報を出力する(メッセージ情報MS2)。一方、独占度(M値)が低い象限IIおよび象限IIIに関しては、ユーザ(自社)の順位によらず、共通の情報を出力する(メッセージ情報MS1)。
これは、独占度(M値)が高い象限Iまたは象限IVでは、ユーザ(自社)の順位の高低により開発および特許戦略が大きく変わるためである。
【0068】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、上記実施形態ではデータベース100の検索によって抽出された検索結果群GRのうちの、出願件数が上位の不特定の出願人による件数N2の比率をもって独占度(M値)を算出していたが、本発明はこれに限られない。解析部40は第一係数として、自社や競合他社などの特定の注目出願人による独占度(M値)を算出してもよい。
【0069】
すなわち、入力部20は一または複数の名義人ANに関する入力をさらに受け付け、解析部40は受け付けた名義人ANに関する第一係数(M値)を算出してもよい。これにより、不特定の上位件数の出願人ではなく、特定の注目出願人が当該技術テーマの全体を牽引している動向を把握することができる。
【0070】
また、出願件数が上位N人の出願人による件数比率をもって独占度(M値)を算出する場合において、この上位者数Nの数値は一定でもよく、または検索結果群GRの要素数である件数N0や、検索結果群GRを構成する出願人数に応じて変化させてもよい。一例として、検索結果群GRを構成する出願人数の総数(例えば100人)に対する一定比率(例えば5%)とするとよい。これにより、検索結果群GRの抽出により出願人数の多寡が大きく変動しても、独占度(M値)を安定した数値として算出することができる。
【0071】
また、独占度(M値)は、上述のように単純なN2/N1の数値に限らず、検索結果群GRにおける特定または不特定の出願人による件数比率と相関のある値であれば、他の指標値を用いてもよい。
【0072】
一方、拡大度(E値)の算出にあたっては、検索された技術テーマの研究開発の拡大または縮小の傾向を把握することができる指標であれば広く用いることができる。具体的には、検索結果群GRを構成する全出願人をあわせた全体の出願件数の増減を示す値を採用してもよく、または特定の出願人による出願件数の増減を示す値を採用してもよい。
【0073】
また、図7や図8に示したメッセージ情報MS、MS1、MS2に代えて、検索された技術テーマの開発トレンドを示す趨勢情報TIを出力してもよい。
図9は、趨勢情報TIの取得ステップS48を示すフローチャートである。図10は、趨勢情報TIの説明図である。
【0074】
図5に示したように、解析部40は、抽出された特許技術情報PDを日付DTに基づいて複数の期間に区分し、区分された期間にそれぞれ含まれる特許技術情報PDの件数N3a、N3b、N3c、N3d・・・の経時的な推移に基づいて趨勢データを算出するとよい。そして、出力部50は、算出された趨勢データに対応づけられた情報(趨勢情報TI)を出力する。
【0075】
趨勢データは、検索された技術テーマの開発トレンドを表すデータであり、具体的には、連続的に区分された期間ごとの出願件数の推移を正規化したデータを例示することができる。
【0076】
すなわち、本方法においては、抽出された検索結果群GRに属する特許技術情報PDを所定の等しい長さの期間に区分し(S44)、直近の区分に属する件数N3aを取得するとともに(S45)、過去の区分に属する件数N3b、N3c、N3d、・・・を取得する(S481)。そして、各件数の一階差分および二階差分を算出する(S482)。
つぎに、この差分値に基づいて特許技術情報PDの件数の停滞、増加または減少の傾向を解析する(S483)。具体的には、件数N3b、N3c、N3d、・・・を正規化してSカーブ(図10を参照)にプロットすることで、現時点PRの位置づけを解析する。より具体的には、件数N3a、N3b、N3c、N3d・・・の一階差分(一階微分)により出願件数の単純な増減を解析し、二階差分(二階微分)により各区分とSカーブの変曲点PIとの位置関係を解析する。
そして、現時点PRの位置づけに対応する趨勢情報TIを作成して(S484)、これを表示出力する(図2:S60)。
【0077】
具体的には、図10に示すように、一般的な技術分野においては、出願件数が低い黎明期(段階1)から、出願件数が上昇する成長期(段階2)、さらに変曲点PIをまたいで出願件数の増加率が減少する成熟期(段階3)、そして出願件数が頭打ちとなる安定期(段階4)へと至ることが知られている。このため、件数N3a、N3b、N3c、N3d、・・・の一階差分および二階差分に基づいて、現時点PRがSカーブにおけるどの位置に該当するかを把握することができる。本方法の場合、図5に示すようにN3d=15件、N3c=22件、N3b=50件、N3a=118件と、直近において出願件数の勾配が急上昇している。したがって、現時点PRは変曲点PIよりも手前側にあたり、成長期(段階2)に属するものと把握される。
【0078】
趨勢情報TIは、技術テーマごとの、着目する時期における研究開発の段階を予測的に示す情報である。本方法では、データベース100を検索した時点(現時点)における当該技術テーマの研究開発の段階を表すSカーブを趨勢情報TIとして例示する。趨勢情報TIは、趨勢データに対応づけられて記憶部60(例えばメッセージ記憶部64)に記憶されている(図1を参照)。
【0079】
より具体的には、本方法で作成される趨勢情報TIとしては、図10に示すように、SカーブCに対して現時点PRの位置づけをプロットしたグラフを例示することができる。このほか、SカーブCにおける現時点PRの位置づけをメッセージ化したテキスト情報を趨勢情報TIとしてもよい。
【0080】
なお、技術開発の推移を示すSカーブCは一般に、成長期(段階2)から成熟期(段階3)にかけて停滞期(段階2−3)を伴うことが知られている(図10にて一点鎖線で図示)。しかしながら、本方法のように検索結果群GRを区分する期間を2〜5年程度に設定することで、停滞期の有無を排除して段階1から段階4に単純化して趨勢情報TIを取得することが可能である。
【0081】
本変形例は以下の技術思想を包含する。
名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースと、検索条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を前記データベースから抽出する検索手段と、抽出された前記特許技術情報を前記日付に基づいて複数の期間に区分し区分された前記期間にそれぞれ含まれる前記特許技術情報の件数の経時的な推移に基づいて趨勢データを算出する解析手段と、算出された趨勢データに対応づけられた趨勢情報を出力する特許情報解析システム。
【0082】
上記実施形態および変形例では、一つの技術テーマに関してM値およびE値を一組のみ算出して出力部50で出力することを例示した(図7を参照)が、本発明はこれに限られない。一つの技術テーマに関して複数組みのM値およびE値を算出してもよい。
【0083】
図11は、特許マップPMの第三変形例の説明図である。この特許マップPMは、一つの技術テーマに対して、過去のある時点におけるM値およびE値と、現時点におけるM値およびE値とを個別に算出して、共通の二次元マトリクス(特許マップPM)に対応づけて表示出力したものである。
【0084】
すなわち、本変形例の解析部40は、抽出された特許技術情報PDを日付DTに基づいて複数の期間に区分し、区分された期間ごとに第一係数(M値)と第二係数(E値)とを算出する。そして、本変形例の出力部50は、算出された第一係数(M値)と第二係数(E値)とを、期間ごとに対応づけて出力する。
【0085】
これにより、ある技術テーマに関する動向の経時的な変化が可視化される。なお、複数の期間を、下記のように重複なく連続して設定してもよく、または互いに一部が重複するように設定してもよい。または、所定の空白期間を隔てた不連続の期間を設定してもよい。
【0086】
図1および図11を参照して本変形例をより詳細に説明する。
解析部40は、データベース100から抽出された検索結果群GRに含まれる特許技術情報PDを、日付DTに基づいて複数の期間に区分する。一例として、本変形例では、所定の検索条件SCに基づいて、ある技術テーマに関する全期間の特許技術情報PD(全件数N1)を抽出し、これを直近20年分について、5年ごとの4期間に区分するものとする。ここでいう全期間は、20年を超える年数であることが好ましい。
【0087】
解析部40は、1〜5年目を出願日とする特許技術情報PDの件数(NN1)を算出する。そして、解析部40は、全期間のうち、直近20年よりも過去の出願日の特許技術情報PDの件数(NN0とする)と、1〜5年目までの特許技術情報PDの件数(NN1)との合計件数(NN0+NN1)を算出する。さらに、解析部40は、NN1を(NN0+NN1)で除することで、直近20年のうちの5年目の時点(以下、第一時点)における第二係数(拡大度:E値)を算出する。第一時点は、現在より15年前の時点にあたる。
また、解析部40は、NN0+NN1件の特許技術情報PDに占める上位出願人の比率を、第一係数(独占度:M値)として算出する。これにより、第一時点における独占度(M値)と拡大度(E値)とが求まる。
【0088】
同様に、解析部40は、6〜10年目を出願日とする特許技術情報PDの件数(NN2)を算出する。そして、解析部40は、NN2を(NN0+NN1+NN2)で除することで、直近20年のうちの10年目の時点(以下、第二時点)における拡大度(E値)を算出する。第二時点は、現在より10年前の時点にあたる。さらに、解析部40は、NN0+NN1+NN2件の特許技術情報PDに占める上位出願人の比率を、独占度(M値)として算出する。これにより、第二時点における独占度(M値)と拡大度(E値)とが求まる。
【0089】
さらに、解析部40は、11〜15年目を出願日とする特許技術情報PDの件数(NN3)を算出してこれを(NN0+NN1+NN2+NN3)で除することで、直近20年のうちの15年目の時点(以下、第三時点)における拡大度(E値)を算出する。第三時点は、現在より5年前の時点にあたる。さらに、解析部40は、NN0+NN1+NN2+NN3件の特許技術情報PDに占める上位出願人の比率を、独占度(M値)として算出する。これにより、第三時点における独占度(M値)と拡大度(E値)とが求まる。
【0090】
そして、解析部40は、16〜20年目を出願日とする特許技術情報PDの件数(NN4)を算出してこれを全件数N1で除することで、現時点における拡大度(E値)を算出する。さらに、解析部40は、全件数の特許技術情報PDに占める上位出願人の比率を、独占度(M値)として算出する。これにより、現時点における独占度(M値)と拡大度(E値)とが求まる。
【0091】
図11に示す本変形例の特許マップPMでは、時間経過に対応して過去から現在に向かう出願動向の経時的な変遷を、矢印など指向情報によって示している。これにより、本変形例の特許マップPMによれば、第一時点(NN1と表記)から現時点(NN4と表記)へと至る、独占度(M値)と拡大度(E値)の履歴を視覚的に把握することができる。
【0092】
さらに、解析部40は、第一時点、第二時点、第三時点および現時点の独占度(M値)と拡大度(E値)の各4つの値の平均値を算出し、出力部50はこれを特許マップPMに表示出力する。かかる平均値を、図11にNNとして図示する。
【0093】
本変形例の情報解析装置10および情報解析システム200によれば、着目した検索結果群GRの経時的な変化を視覚化することが可能となる。例えば本変形例の場合は、この技術テーマが、初期の第一時点(NN1)では独占度(M値)も拡大度(E値)も小さい領域にあったことが分かる。言い換えると、当該技術テーマの当初の開発動向は、始まった多くの出願人がひしめきあっている状態の「III:アヒルレース」で始まったことが分かる。
そして、次の第二時点(NN2)では、出願件数が拡大して「II:群雄割拠」となり、さらに時間が経過した第三時点(NN3)では出願人が絞られてきたために「I:フロンティア」に移行したことが分かる。そして、最後の現時点(NN4)では出願件数が減少してきて「IV:既得権」となっていることが分かる。
【0094】
このように、任意の技術テーマに関する特許技術情報PDを複数の期間に分割して独占度(M値)と拡大度(E値)を経時的に算出することにより、当該技術テーマの将来的な動向を予測することができる。このため、特許戦略の立案や研究開発に対する投資価値の評価などに関する有益な情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
10 情報解析装置
20 入力部
30 検索部
40 解析部
50 出力部
60 記憶部
62 条件記憶部
64 メッセージ記憶部
66 相関記憶部
90 バス
100 データベース
110 ネットワーク
200 情報解析システム
AN 名義人
AR 名義人相関情報
C Sカーブ
DT 日付
GR 検索結果群
MC 出力条件
MS メッセージ情報
PD 特許技術情報
PI 変曲点
PM 特許マップ
PR 現時点
SC 検索条件
TH1、TH2 閾値
TI 趨勢情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースと、
検索条件の入力を受け付ける入力手段と、
受け付けた前記検索条件に基づいて、所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を前記データベースから抽出する検索手段と、
前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出する解析手段と、
算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力する出力手段と、を備える特許情報解析システム。
【請求項2】
前記第二係数が、抽出された前記特許技術情報の全件数に対する、前記日付が直近の所定期間に含まれる前記特許技術情報の件数の比率に対応する値である請求項1に記載の特許情報解析システム。
【請求項3】
前記入力手段が、前記所定期間に関する入力を受け付ける請求項2に記載の特許情報解析システム。
【請求項4】
前記第一係数が、抽出された前記特許技術情報の件数が多い上位の所定数(N)の名義人に関する前記比率に対応する値である請求項1から3のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項5】
前記所定数(N)を記憶する記憶手段を備える請求項4に記載の特許情報解析システム。
【請求項6】
前記解析手段が、前記所定件数の大小に基づいて前記所定数(N)を増減させることを特徴とする請求項4または5に記載の特許情報解析システム。
【請求項7】
前記出力手段は、複数の象限に区分された二次元マトリクスに対して、算出された前記第一係数および前記第二係数を対応づけて出力することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項8】
複数の前記象限にそれぞれ対応づけられたメッセージ情報を記憶するメッセージ記憶部を備え、
前記出力手段は、前記メッセージ記憶部を参照して、前記第一係数および前記第二係数が属する前記象限に対応する前記メッセージ情報を取得し、当該メッセージ情報を出力することを特徴とする請求項7に記載の特許情報解析システム。
【請求項9】
前記解析手段は、前記入力手段が受け付けた異なる検索条件に基づいて抽出された前記検索結果群より複数組の前記第一係数および前記第二係数を算出し、
前記出力手段は、算出された前記複数組の前記第一係数および前記第二係数を前記二次元マトリクスに対応づけて出力する請求項7または8に記載の特許情報解析システム。
【請求項10】
前記二次元マトリクスを複数の前記象限にそれぞれ区分する閾値を記憶する条件記憶部を備える請求項7から9のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項11】
前記入力手段は、一または複数の名義人に関する入力をさらに受け付け、
前記解析手段は、受け付けた前記名義人に関する前記第一係数を算出する請求項1から10のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項12】
前記解析手段が、受け付けた前記名義人にかかる前記特許技術情報の件数の経時的な変化率に対応する値を前記第二係数として算出する請求項11に記載の特許情報解析システム。
【請求項13】
複数の名義人を互いに対応づける名義人相関情報を記憶する相関記憶部を備え、
前記解析手段は、
一の名義人にかかる前記特許技術情報の件数と、
前記相関記憶部を参照して取得された、前記一の名義人に対応づけられた他の名義人にかかる前記特許技術情報の件数と、を合計して前記第一係数を算出することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項14】
前記解析手段は、抽出された前記特許技術情報を前記日付に基づいて複数の期間に区分し、区分された前記期間にそれぞれ含まれる前記特許技術情報の件数の経時的な推移に基づいて趨勢データを算出し、
前記出力手段は、算出された前記趨勢データに対応づけられた情報をさらに出力する請求項1から13のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項15】
前記解析手段は、抽出された前記特許技術情報を前記日付に基づいて複数の期間に区分し、区分された前記期間ごとに前記第一係数と前記第二係数とを算出し、
前記出力手段は、算出された前記第一係数と前記第二係数とを、前記期間ごとに対応づけて出力する請求項1から14のいずれかに記載の特許情報解析システム。
【請求項16】
検索条件の入力を受け付ける入力手段と、
名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出する検索手段と、
前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出する解析手段と、
算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力する出力手段と、を備える特許情報解析装置。
【請求項17】
特許情報解析装置にデータ処理を実行させるプログラムであって、
前記データ処理が、
検索条件の入力を受け付けるステップと、
名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出するステップと、
前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出するステップと、
算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力するステップと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項18】
検索条件の入力を受け付けるステップと、
名義人および日付をそれぞれ示す情報を少なくとも含む多数の特許技術情報が格納されているデータベースから、受け付けた前記検索条件に基づいて所定件数の前記特許技術情報を含む検索結果群を抽出するステップと、
前記検索結果群より、(1)前記所定件数に占める一または複数の名義人にかかる前記特許技術情報の件数の比率に対応する第一係数と、(2)抽出された前記特許技術情報の件数に関する経時的な変化率に対応する第二係数と、を算出するステップと、
算出された前記第一係数と前記第二係数とを対応づけて出力するステップと、を含む特許情報解析方法。
【請求項19】
前記名義人が特許出願人であり、前記日付が特許出願日である請求項18に記載の特許情報解析方法。
【請求項20】
異なる前記検索条件に基づいて抽出された前記検索結果群より複数組の前記第一係数および前記第二係数を算出し、
予め設定された閾値により複数の象限に区分された二次元マトリクスに対して、算出された前記複数組の前記第一係数および前記第二係数を対応づけて出力することを特徴とする請求項18または19に記載の特許情報解析方法。
【請求項21】
異なる前記検索条件に基づいて抽出された前記検索結果群より複数組の前記第一係数および前記第二係数を算出し、
算出された複数の前記第一係数の中間に設定された第一の閾値と、算出された複数の前記第二係数の中間に設定された第二の閾値とを決定し、
決定された前記第一の閾値および前記第二の閾値により複数の象限に区分された二次元マトリクスに対して、前記複数組の前記第一係数および前記第二係数を対応づけて出力することを特徴とする請求項18または19に記載の特許情報解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−123532(P2012−123532A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272653(P2010−272653)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】