説明

牽引装置

【課題】牽引装置において、ピンを溶接することなくアーム部に設けることよりピンを容易に交換できるようにする。
【解決手段】牽引装置1は、牽引車とトレーラとの間に設けられるものであって、トレーラに取り付けられるアーム部4と、アーム部4を保持すると共に牽引車に取り付けられるベース部5とを備える。アーム部4は、ベース部5に向けて突出するピン43を有している。ベース部5は、ピン43を挟持することによりアーム部4を旋回自在に連結する連結部53を有している。ピン43は、アーム部4に対して螺設されて着脱自在となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車とトレーラとの間に設けられる牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、牽引車によりトレーラを牽引する際には、被牽引側(例えば、トレーラの後端部分)に設けられたピンを、牽引側(例えば、牽引車の荷役装置)に装着されたカプラによって挟持することにより、トレーラを牽引車に対して旋回自在に連結するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、この種の連結構成を有する牽引装置について図7、図8を参照して説明する。図7に示すように、牽引装置101は、牽引車102とトレーラ103との間に設けられるものであり、トレーラ103に取り付けられるアーム部104と、アーム部104を保持すると共に牽引車102に取り付けられるベース部105とを備え、ベース部105がアーム部104から下方に向けて突出するピン143を挟持する連結部153を有している。
【特許文献1】特開2003−40152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような牽引装置においては、図8に示すように、トレーラを牽引する際に牽引力がピン143に集中的に作用するため、該牽引力によってピン143の破損又ガタツキが生じないように、ピン143がアーム部104に溶接により接合されている。そのため、ピン143を容易に交換することができず、例えば、ピン143の仕様変更に対応する場合や、牽引車102の旋回動作によりピン143が磨耗した場合等に、ピン交換のために多大な休車時間を要していた。
【0005】
また、アーム部104の材質には、SS400等の安価な一般構造用圧延鋼材が用いられ、ピン143の材質には、磨耗対策の観点から、S45C等の耐摩耗性の良い機械構造用炭素鋼が用いられることが多い。このような場合、ピンとアーム部との溶接は異種金属間の溶接となり、作業に手間がかかり生産性の悪化を招来していた。
【0006】
さて近年、工作技術の進歩により、高い生産性を有しながら、上述したようなピンの破損又ガタツキが生じないように、ピンをアーム部に取り付ける種々の方法が提案されている。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ピンを溶接することなくアーム部に取り付けることにより、ピンを容易に交換できる牽引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、牽引車とトレーラとの間に設けられる牽引装置であって、前記トレーラに取り付けられるアーム部と、前記アーム部を保持すると共に前記牽引車に取り付けられるベース部と、を備え、前記アーム部は、前記ベース部に向けて突出するピンを有し、前記ベース部は、前記ピンを挟持することにより前記アーム部を旋回自在に連結する連結部を有し、前記ピンは、アーム部に対して着脱自在に設けられているものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ピンは、前記アーム部に形成された貫通孔に上下挿通され、該貫通孔の内壁とピンとの隙間に補強用のブッシュが設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ピンがアーム部に対して着脱自在に設けられているので、ピンを容易に交換することができ、例えば、ピンの仕様変更に対応する場合や、牽引車の旋回動作によりピンが磨耗した場合等において、ピン交換のための休車時間を短縮することが可能となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、貫通孔の内壁とピンとの隙間に補強用のブッシュが設けられているので、トレーラを牽引する際にピンに大きな牽引力が作用しても、ピンにガタツキが生じることがなくなり、ひいてはピンの破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る牽引装置について図1乃至図6を参照して説明する。図1は本実施形態に係る牽引装置1と、本装置1が取り付けられる牽引車2及びトレーラ3の構成を示す。牽引装置1は、牽引車2によりトレーラ3を牽引又は押進する際に使用されるものであって、牽引車2とトレーラ3との間に設けられる。牽引装置1は、トレーラ3に取り付けられるアーム部4と、アーム部4を下方から保持すると共に牽引車2に取り付けられるベース部5とを備える。
【0013】
まず、牽引車2及びトレーラ3について説明する。以下の説明においては、ベース部5の取り付け側を牽引車2における前側とし、アーム部4の取り付け側をトレーラ3における後側とする。牽引車2は、前後に車輪を有した走行用の車体21と、車体21の前側に設けられた荷役作業用の昇降装置22と、車体21及び昇降装置22に対する各種操作を行うための運転室23とを備える。昇降装置22は、車体21に対して立設されたアウターマスト22aと、アウターマスト22aにより昇降自在に保持されるインナーマスト22bと、インナーマスト22bにより昇降自在に保持されると共にベース部5が着装されるキャリッジ22cと、キャリッジ22cを昇降させる駆動源としてのリフトシリンダ22dとを有している。
【0014】
インナーマスト22bは、アウターマスト22aに沿って延在しており、ガイド部22eを介してキャリッジ22cを昇降自在に保持している。ガイド部22eは、キャリッジ22cの上下にインナーマスト22b側に向けて突設されている。インナーマスト22bの上端には、キャリッジ昇降用のチェーン22fが掛けられるシーブ22gが設けられている。ここで、チェーン22fの一端は、アウターマスト22aの上端と接続され、他端はキャリッジ22cの上端(上側のガイド部22e)に接続されている。キャリッジ22cには、ベース部5を着装するための支持バー22h、22iが設けられている。リフトシリンダ22dは、シリンダ側22jがブラケット22kを介してアウターマスト22aの下部と固定され、ピストン側22lがブラケット22mを介してインナーマスト22bの上部と固定されている。
【0015】
上記のような構成により、運転室23に搭乗したオペレータがリフトシリンダ22dを伸長させると、インナーマスト22bがアウターマスト22aに対して上昇し、これに伴いシーブ22gが上昇しながら動滑車として機能し、キャリッジ22cがチェーン22fに引っ張られて上昇する。一方、リフトシリンダ22dを収縮させると、上述とは反対にキャリッジ22cが下降する。
【0016】
トレーラ3は、荷物(図示では、コンテナ30)を積載する荷台を有したシャーシフレーム31と、シャーシフレーム31の前側に設けられた複数の車輪32と、シャーシフレーム31の後側に設けられたランディングブロック33とを備える。ランディングブロック33は、トレーラ3を静止させる際に路面に接地されるものである。シャーシフレーム31の後端部分は、アーム部4が着装される着装部となっている。
【0017】
図2はトレーラ3の後側を示す。シャーシフレーム31は、アーム部4の先端側41を受容可能な挿入口34と、挿入口34に受容されたアーム部4を係止させるフック部35とを有している。挿入口34にアーム部4の先端側が挿入されると、アーム部4に設けられた係合部44(図1及び図3参照)とフック部35とが係合するようになっている。
【0018】
次に、牽引装置1のアーム部4及びベース部5について説明する。図3はこれらの構成を示す。アーム部4は、複数の鋼板を用いてクランク状に折曲した形状とされており、トレーラ3の挿入口34(図2参照)に受容される先端側41が、ベース部5に保持される基端側42と平行してその下方に延出している。アーム部4は、基端側42に設けられベース部5に向けて突出するピン43と、先端側41の根本部分に設けられトレーラ3のフック部35(図2参照)と係合する上述の係合部44とを有している。ピン43は、アーム部4に対して螺設されて着脱自在となっている。係合部44は、先端側41の両壁から外方に突出するように設けられている。
【0019】
ベース部5は、キャリッジ22cに支持されるように形成された取付フレーム51と、取付フレーム51に対して略直角に連接された台座52と、台座52上に設けられアーム部4を旋回自在に連結する連結部53とを有している。連結部53は、アーム部4を載置する載置台53aと、載置台53aの背面側に突出するピン43を挟持する開閉自在な一対のジョー53bと、ジョー53bを開閉させるための操作レバー53cと、載置台53aを前後方向に傾動可能に支持する一対のブラケット53dとを有している。
【0020】
載置台53aは、ピン43をジョー53b側に案内するためのV字溝53eを有している。ここで、本装置1を牽引車2及びトレーラ3に取り付けた際、トレーラ3の荷重は載置台53aの上面で受けられる。ジョー53bは、閉状態においてピン43の先端側41に形成された周溝43aを遊嵌できるように、顎状の板部材で構成されている。操作レバー53cには、ジョー53bの開状態及び閉状態を保持するためのロック機構が設けられている。ブラケット53dは、載置台53aの傾動中心となる軸53fを軸支しており、載置台53aを所望の傾きに保持できるよう、軸53fの回動を制止することが可能になっている。軸53fは、載置台53aに突設されたプレート53hに貫通固定されている。
【0021】
図4(a)及び(b)は、アーム部4におけるピン43の取付構造を示す。ピン43は、アーム部4の基端側42に形成された貫通孔42aに上下挿通される。ここで、本実施形態における貫通孔42aは、互いに同軸上に配された複数の円筒部材の中空部分であり、これら部材は、アーム部4の内部下側に設けられた下部部材42bと、アーム部4の上面に設けられた上部部材42cと、下部部材42bと上部部材42cの間に設けられた中間部材42dで構成される。
【0022】
下部部材42bは、リング42eを介してアーム部4の底板42fと接合されており、該部材42bの内壁とピン43との隙間に補強用のブッシュ42gが設けられている。リング42eは、ピン43の挿通箇所周辺の剛性を高めるために、リブ42hを介して天板42iと接合されている。中間部材42dは、下部部材42bと上部部材42cとの芯出しを行うためのものである。上部部材42cは天板42iと接合されており、該部材42cの下端面42jはピン43に形成された面43bと当接する。上記のような構成により、ピン43を上記部材42b、42c、42dに挿通して、ピン43の面43cと下端面42jとを当接させた後、ピン43の上側部分に形成されたねじ部43cにワッシャ42kを介してナット42lを螺合させることで、ピン43がアーム部4に取り付けられる。
【0023】
上記のように構成された牽引装置1におけるアーム部4とベース部5との連結及び連結解除手順について図5を用いて説明する。アーム部4とベース部5とを連結する場合は、図5(a)に示すように、連結部53の操作レバー53cをA方向に押し込んでジョー53bを開放しておき、ピン43を載置台53aのV字溝53eに通して、ジョー53b側に移動させる。次に、図5(b)に示すように、操作レバー53cをB方向に押し込んでジョー53bを閉じる。これにより、図5(c)に示すように、ピン43がジョー53bに挟持される。最後に、牽引又は押進時の振動によりジョー53bが開放しないようにロック機構(図示せず)をロックする。以上の操作により、アーム部4とベース部5との連結が完了する。アーム部4とベース部5とを連結解除する場合、上記操作を逆の手順で行う。
【0024】
次に、牽引車2及びトレーラ3に対する牽引装置1の着脱手順について図6を用いて説明する。ここでは、上述の手順に従ってアーム部4とベース部5とが連結されているものとする。本装置1を牽引車2及びトレーラ3に取り付ける場合は、図6(a)に示すように、まず、牽引車2の昇降装置22によりキャリッジ22cを下降させた後、キャリッジ22cにベース部5を取り付ける。次に、図6(b)に示すように、トレーラ3の挿入口34にアーム部4の先端側41を挿入できるように、昇降装置22によりアーム部4の高さ調整を行い、さらに連結部53によりアーム部4の傾き調整を行う。このとき、トレーラ3は、ランディングブロック33が路面に接地して静止状態にある。次に、牽引車2をトレーラ3側に進行させ、図6(c)に示すように、挿入口34にアーム部4の先端側41を挿入し、アーム部4の係合部44とトレーラ3のフック部35とを係合させる。最後に、昇降装置22によりアーム部4を上昇させ、ランディングブロック33を路面から離反させる。以上の操作により、本装置1の取り付けが完了し、これにより牽引車2によりトレーラ3を牽引又は押進することが可能となる。本装置1を牽引車2及びトレーラ3から取り外す場合は、上記操作を逆の手順で行う。
【0025】
以上、本実施形態に係る牽引装置1によれば、ピン43がアーム部4に対して着脱自在に設けられているので、ピン43を容易に交換することができ、例えば、ピン43の仕様変更に対応する場合や、牽引車2の旋回動作によりピン43が磨耗した場合等において、ピン交換のための休車時間を短縮することが可能となる。また、貫通孔42aの内壁とピン43との隙間に補強用のブッシュ43gが設けられているので、トレーラ3を牽引する際にピン43に大きな牽引力が作用しても、ピン43にガタツキが生じることがなくなり、ひいてはピン43の破損を防止できる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ピン43をアーム部4に対して螺設する例をしたが、ピン43を容易に交換可能な構成であればこの例に限られず、例えば、チャッキング装置によりピン43の一端を掴持するようにしてもよい。また、ブッシュ42gは、貫通孔42aの内壁とピン43との隙間を埋めるものあればよく、例えば、下部部材42bの内径をピン43の外径と略等しく設定することにより、下部部材42bがブッシュ42gとして機能するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る牽引装置を牽引車とトレーラに取り付けた状態の側面図。
【図2】上記トレーラの後端の斜視図。
【図3】上記牽引装置におけるアーム部及びベース部の分解斜視図。
【図4】(a)は上記アーム部のピン取付構造を示す分解側面図、(b)は同側面断面図。
【図5】(a)はジョーを開放した状態を連結部背面側から視た図、(b)はピンをジョー側に移動させた状態を同様に視た図、(c)はピンをジョーに挟持させた状態を同様に視た図。
【図6】(a)はベース部をキャリッジに取り付ける状態を示す側面図、(b)はアーム部をトレーラの挿入口に挿入する状態を示す側面図、(c)はアーム部をトレーラに取り付けた後、ランディングブロックを路面から離反させる状態を示す側面図。
【図7】従来の牽引装置を示す側面図。
【図8】上記牽引装置におけるピンの取付構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0028】
1 牽引装置
2 牽引車
3 トレーラ
4 アーム部
43 ピン
42a 貫通孔
42g ブッシュ
5 ベース部
53 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車とトレーラとの間に設けられる牽引装置であって、
前記トレーラに取り付けられるアーム部と、
前記アーム部を保持すると共に前記牽引車に取り付けられるベース部と、を備え、
前記アーム部は、前記ベース部に向けて突出するピンを有し、
前記ベース部は、前記ピンを挟持することにより前記アーム部を旋回自在に連結する連結部を有し、
前記ピンは、アーム部に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする牽引装置。
【請求項2】
前記ピンは、前記アーム部に形成された貫通孔に上下挿通され、該貫通孔の内壁とピンとの隙間に補強用のブッシュが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の牽引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−143294(P2010−143294A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320305(P2008−320305)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)