狭隘部用剃刀
【課題】人体の狭隘部にも使用できる剃刀であって、使用に際して特別な技術を習得していなくても気軽に使用できるように安全性を向上させ、特に理美容院において、耳孔の入口付近や内部に生えるうぶ毛を剃りこれを除く機能を有し、安全に使用できる狭隘部用剃刀を提供しようとするものでもある。
【解決手段】柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、前記刃体ホルダ部が、刃体を柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする狭隘部用剃刀。
【解決手段】柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、前記刃体ホルダ部が、刃体を柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする狭隘部用剃刀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するための剃刀に係わるものであり、さらに詳しくは、理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去できる狭隘部用剃刀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耳掻き具は、耳孔に先端部を挿入して効率よく耳垢が除けるように、先端部の形状として様々なものが提案されている。最も一般的な耳掻き具は、先端が湾曲した杓子形状の耳掻き部を備えているが、その他に、柄の全周面に沿ってフランジ状部分を形成した耳掻き部を備えるもの(特開平6−113978号公報)、先端に接着剤層を介して固着された角のある外周面を有する無機質硬質粒子を含む耳掻き部を備えるもの(特開平9−294690号公報)、表面に軸部の軸線方向に平行状の突条部を備えた耳掻き部を有するもの(特開平10−216042号公報)、先端に螺旋状の溝を設け、隣接する溝間で所定の厚み高さの円板状の掻き出し板を形成したもの(特開2000−116564号公報)、或いは繊維塊状部を設けた綿棒であって、少なくとも1箇所に突起部を設けたもの(特開2002−186568号公報)などがある。これらは、それぞれ耳垢の取り残しを防止するため、或いは小さな耳垢をも掻き取るなどの効果を発揮するものであった。
【0003】
しかし、これらの耳掻き具は基本的に耳垢を取り除くことが目的であり、耳孔の入口付近や内部に生えるうぶ毛を剃りこれを除く(以下剃除という)機能は持ち合わせていなかった。勿論、これらの耳掻き具を使用して繰り返し、或いは強くこすりつけるなどすれば前記うぶ毛を除くことも可能ではあり、子供であれば比較的容易にうぶ毛を除くこともできたが、特に年齢を経た人の耳孔に生える毛は太くなっているものが多く、これを除去することは容易ではない。また、一般の理美容院には、ひげ剃りや顔のうぶ毛を剃るための剃刀はあるものの、これを前記耳孔の入口付近や、まして内部に生えるうぶ毛を剃るために使用することは不可能であった。
【0004】
一方、外科手術に使用されるメスなどとしては、人体の狭隘部の腫瘍を切除したり、微小な切開部を形成するために使用されるものがあり、これを本発明の人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するための剃刀の代用品として転用することも考えられなくはない。しかし、従来、この種のメスなどは基本的に高度な医術を習得した者のみが使用することが前提であるため、切ることについては充分に考慮されているものの、これを一般の理美容師が気軽に使用できるほどの安全性が担保されているものではない。
【0005】
例えば、人体などの復雑な起伏(顔面、首、耳、腋窩、陰部など)を安全に又完全に剃毛するために、スプーン型の略楕円形のカーブを設えた、スプーン型カミソリに関する提案(特開2001−259261号公報)がある。この提案は、本発明の目的とする人体の狭隘部にも使用することができそうである。ただし、このスプーン型のカミソリには、耳孔などに使用するには安全性の面で若干考慮する必要があると思われる。
【特許文献1】特開平6−113978号
【特許文献2】特開平9−294690号
【特許文献3】特開平10−216042号
【特許文献4】特開2000−116564号
【特許文献5】特開2002−186568号
【特許文献6】特開2001−259261号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、人体の狭隘部にも使用できる剃刀であって、使用に際して特別な技術を習得していなくても気軽に使用できるように安全性を向上させたものである。さらに、理美容院において、耳孔の入口付近や内部に生えるうぶ毛を剃りこれを除く機能を有し、安全に使用できる狭隘部用剃刀を提供しようとするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、前記刃体ホルダ部が、刃体を、柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の剃刀は、柄の長軸を含む仮想平面に対して、板状の刃先線が形成する仮想平面が2°〜70°の傾斜、好ましくは20°〜60°の傾斜を有している点が特徴である。この傾斜によって剃刀の進行方向に対して、刃先が傾斜角を有しつつ進退させることが容易となる。これにより、刃先が皮膚に対して線として接触することがなく、進行方向において不用意に皮膚などを傷つけることがないのである。逆に目的とするうぶ毛などを剃る場合には、剃刀を先の方向(進行方向)とは逆方向へ引き上げることにより、通常の剃刀として作用するのである。なお、柄を長軸に対して同心的に回すことによっても、簡単に剃り上げることができる。
【0009】
また、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着することにより、刃体形状を安定して保持することが可能となる。そして、刃体ホルダ部が刃体保持側とは反対方向に膨らみを有していることが本発明の特徴の一つである。この膨らみは表面が滑らかとされ半球体状、円錐台形体状、または円環状に凸条を有する形態などを含む凸状体を形成している。この凸状体は、要するに、刃先線が形成する仮想平面からの高さ(該凸状体の頂点から刃先までの水平距離)によって、刃先と皮膚との不用意な直接的接触を回避することが目的である。従って、この凸状体は基本的にはある程度の高さと表面滑らかさとを有していれば、特定の規則的な形状に限定されることはなく、刃体保持側とは反対方向に盛り上がりを形成していることが重要な要素である。
【0010】
ところで、剃刀を皮膚にあてがうときには、刃体ホルダ部が薄いと刃先が直ぐに皮膚と接触して危険である反面、単に肉厚にすると剃り難くなる。切れ味を追求する刃先はただでさえ皮膚との接触圧、接触角度の調整が微妙であり、狭隘部においてはなおさら慎重さが求められるものである。そこで、まず刃体ホルダ部の凸状体を剃りたい皮膚の近傍に接触させ、凸状体を支点として柄を長軸に対して同心的に回動することで剃り易い態勢を整えることができる。そして柄を引き上げる、或いはさらに柄を回動することによって目的とする被剃除物を除去するのである。このような凸状体により、前記の刃先傾斜保持の効果とともに、刃先から皮膚を保護する効果がより高くなる。
【0011】
また(A)刃体が凹面状に形成されているか、(B)刃体保持面が凹状に窪んでいることによって平面状の刃体を固定する際に刃体が凹面状に変形されることとなり、刃体保持面の外形が形成する仮想平面よりも刃先が上方に反るようにして設置することが好ましい。この刃先の反りによって、皮膚との接触が線接触ではなく面接触となり易く、従って安全性がより向上するからである。さらに、この刃先の反りは、皮膚と刃先の剃り角度を小さくして、快適な剃り味を得ることができる。例えば刃体の刃先が、刃体保持面の外形が形成する仮想平面と同一水平面である場合と、刃先が反るように形成されている場合とでは、刃体ホルダ部を同じだけ傾斜させたときの皮膚と刃先との接触角が異なり、前者の方が後者よりも接触角が大となる。剃刀の剃り味は接触角が小さい方が高いので、刃先の反りが重要な要素となるのである。
【0012】
本発明における、前記凸状体の形態としては特定の規則的な形状に限定されるものではないが、凸状体が目的とする皮膚の近傍において支点として作用し易いこと、刃体を凹面状に保持し易いことを考慮すると、刃体ホルダ部の中心部で刃体保持面に対して垂直方向に切断したときの断面形状において、半円状、逆台形状、三日月状および略コ字状から選択される、いずれか一つの形状を有することが好ましい。より好ましくは前記両特性を充分に発揮する三日月状或いは略コ字状である。
【0013】
刃体ホルダ部の刃体保持面の外形は、保持される刃体の一部だけが突出することがないように、刃体外形とほぼ同一かあるいは刃体外形より0.5〜2mm程度内側に後退した外形とすることが好ましい。刃体外形とほぼ一致させることにより、刃体の進行方向の面を刃体ホルダが覆うこととなり、刃先が接触する前に刃体ホルダ部が皮膚と接触するからである。また、刃先を刃体保持面の外形よりも0.5〜2.0mm程度はみ出して固定する場合でも、後述の保護部材により刃先から皮膚を確実にガードすることもできる。
【0014】
本発明の刃体の外形は、円状、楕円状、矩形状、多角形状またはこれらの複合形状、もしくは前記いずれかの形状の一部に切り欠き部を有する形状から選択される、いずれか一つの形状を有する。刃体の外形は、基本的にはどのような形状であっても、その少なくとも一部に剃刀としての剃る機能が備わっていれば良く、例えば外形が円状であってもその全周に渡って剃刀の刃が形成されている必要はない。また刃体の略中心部に一つ以上の貫通孔が形成されているものや、刃体の一部に切り欠き部を形成したものは、このような部位を、刃体を刃体ホルダ部に保持・固定するために利用することができるので好ましい。さらに刃体は、必ずしも平板状である必要はなく、前記(A)で示す凹面状や刃先部が傾斜面を成す皿状のものであっても良い。
【0015】
また、本発明の剃刀は、柄の他端側(刃体ホルダ部側とは反対の側)に把持部材に対して固定可能な結合手段を有することができる。把持部材は、使用者が手指により把持する部分であり、狭隘部用剃刀を取り外し可能な構造にして把持部材の先にこれを結合する。柄の長さを長く設計することにより把持部を柄に設けることも可能であるが、把持部材を別途形成することで、狭隘部用剃刀を使い捨てタイプにすることができるのである。勿論、前記刃体ホルダ部に対して刃体を脱着可能に形成することで、刃体のみを使い捨ての構成とすることも可能である。本発明の剃刀の刃体は狭隘部用であるため必然的に小さな形状となるので、切れ味が悪くなったら研ぎ直して継続使用するよりも、刃体あるいは剃刀全体を交換可能に設定する方が現実的だからである。
【0016】
そして、前記結合手段として挿着部を形成する場合には、その構造が、挿着部側から刃体方向に向けて、柄の長軸に対して外側方向に反る、反り部を有していることが好ましい。構造については後に詳述するが、把持部材側の構造としてその軸心箇所に、柄の挿着部が挿入できる深さの挿入孔を有し、狭隘部用剃刀を挿脱可能に保持する。柄の挿着部に形成された反り部は、挿入するときは、把持部挿入孔の内壁によって柄の長軸に向かって押圧されて撓み、挿着完了時において、把持部挿入孔の内壁に形成された環状の凸条などと係止して、狭隘部用剃刀が把持部材から脱着することを防止するのである。
【0017】
前記反り部は一つであっても良いが、複数形成されていることが好ましい。その構造としては、複数の反り部の中心軸と柄の長軸とが同軸であることがより好ましいのである。これは、挿着部を把持部材の挿入孔内に挿入した際に、反り部の先端が挿入孔の内壁の凸条などと係止することから、係止位置が挿入孔内で均等に配置され、より確実な挿着力が得られるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る狭隘部用剃刀によれば、人体の複雑な形状(狭隘な部分など)に対しても安全に使用することができる。特に理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去することができる。
【0019】
また、刃体を刃体ホルダ部から脱着可能にして使い捨てとしたり、或いは狭隘部用剃刀を別の把持部材と挿脱可能にして該剃刀を使い捨てにすることもできる。これにより常に切れ味の良い状態を保ち、かつ衛生的に使用することができるのである。さらに、該剃刀を交換可能にすることにより、全体としてコンパクトになるために携帯に便利となる。また、把持部材側にLEDなどの照明装置を採用した場合などに、比較的高価となる把持部材を長期的に使用しつつ、切れ味の低下などの消費財的な該剃刀のみを交換可能にするメリットが高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を併用して、本発明の狭隘部用剃刀について詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の狭隘部用剃刀10の概略を示す。最先端には刃体ホルダ部20が設けられ、その上には円板状の刃体30が固定されている。刃体ホルダ部20は、柄40の先端に形成されており、刃体30を柄の長軸Aを含む仮想平面に対して、約20°の角度(α)をもって傾斜(図2(a)に示す)して保持している。また、刃体30の形状に合わせて、刃体ホルダ部の端面20aは円形を成し、刃体ホルダ部20全体では半球状に形成されている。この刃体ホルダ部20の外側面(凸状体)20bは、剃刀10が狭隘部、例えば耳孔の入口付近や内部のうぶ毛を剃る際に皮膚と最初に接触する部分である。従って、外側面(凸状体)20bの表面は滑らかな面であることが望ましい。
【0022】
この図1では、刃体ホルダ部20と柄部40とは同一材料(例えば金属、樹脂、紙、木、セラミック、ガラスなど)で構成されているが、異種の材料で別々に構成して両者を接着することもでき、例えば柄を金属材料で、刃体ホルダ部を樹脂材料で製造することもできる。好ましくは全体(刃体ホルダ部20と柄40)を樹脂材料で成形することにより、狭隘部用剃刀を使い捨てにすることもできる。なお、柄40は図面では特に凸凹のない平滑面として表されているが、指先にて保持する場合のすべり止めのための凹凸面を形成したり、その凹凸で模様などを形成しておくこともできる。
【0023】
一方、刃体は以下に記載の他の例についてもそうであるが、一般的には金属材料から構成することができ、その他セラミックや硬質樹脂から製造することも可能である。刃体30はその中心に貫通孔30aを有し、刃体ホルダ部端面20aの中心部に形成された突起部21がこの貫通孔30aを嵌通している。突起部21は貫通孔30aを嵌通した後、溶融或いは押圧されて刃体面上に拡がり、刃体30を固定する。刃体30の固定方法としてはこのような貫通孔30aを形成しなくても、接着剤などにより単に接着する方法や、刃体30を熱して樹脂製の刃体ホルダ部とを溶着する、或いは下記(図5)に説明する挟着するなどの方法があり、適当な方法を選択することができるのである。
【0024】
刃体30の刃先のガードとしては、前記刃体ホルダ部によるだけでなく、図2に示す(b)や(c)のような保護部材も考えられる。図2(a)は、図1に示す円板状の刃体30の例であるが、この刃体の上から保護プレート50を装着したのが図2(b)である。この保護プレート50は、中心が円板上の刃体30の直径よりも小さい円板状の部分51と、刃体の刃先より若干延出した複数本の延出部52を有する。また中心には刃体30のそれと同位置に貫通孔50aを有し、刃体ホルダ部の突起部21が嵌通している。万が一、刃先が皮膚に対して線接触により擦られた場合でも、刃体の刃先線より延出した延出部52が、皮膚に切り傷を与えないように保護するための安全ガードの役割を果たす部分である。この保護プレートは金属、樹脂、木など特にどのような材料で構成してもよい。なお、図(a)乃至(c)において上側の図が平面図であり下側の図が側面図である。
【0025】
また、図2(c)には、ワイヤ60を刃体30の貫通孔30aを通して、刃先に巻回させた例が示されている。この方式による安全ガードも、基本的には刃先線に現れるワイヤ60が、刃先が皮膚に対して線接触により擦られた場合に、皮膚に切り傷を与えないようにする作用を有する。このワイヤについては、刃先線に巻回される関係上、基本的には金属製である。
【0026】
図3には、刃体31の形状を角の丸められた四角板状をした例が示されている。この形状の利点は刃先線と皮膚との接触幅を広くすることができるので、先の円板状に比べて一度に剃除できる面積を多くすることができることである。図3(a)は保護プレートを付設していないもの、図3(b)には保護プレート53により刃先による切創等から皮膚の保護効果をより高めた態様の例を示す。なお、刃体ホルダ部の側面図が図3(b)の下側に示した図であり、刃体ホルダ部の端面形状は、刃体の形状に合わせて四角形状を成し、刃体ホルダ部の外側面(凸状体)は角のない四角錐状に隆起した形状、あるいは四角錐状の頂点付近を球面に近づけた形状などを採用することができる。従って、敢えて保護プレートを設けなくても安全上は問題はない。
【0027】
また、図4には、刃体32の形状を角の丸められた三角板状をした例が示されている。先の四角板状の場合、柄の長軸に対して刃先線も平行であったので、剃刀を宛てる皮膚側と柄との関係を平行にある場合に適用しやすいものであった。一方、この例では柄の長軸に対して斜めに刃先線を宛てたい場合に、有利な形状なのである。図4(a)は保護プレートを付設していないもの、図4(b)にはワイヤ61により刃先による切創等から皮膚の保護効果をより高めた態様の例を示す。刃体ホルダ部の側面図は図4(b)の下側に示した図であり、刃体ホルダ部の端面形状は、刃体の形状に合わせて三角形状を成し、刃体ホルダ部の外側面(凸状体)は角のない三角錐状に隆起した形状、或いは三角錐の頂点付近を球面に近づけた形状などを採用することができる。この例においても、敢えてワイヤ61を巻回しなくても安全上は問題はない。
【0028】
一方、図5には刃体を挟着するタイプの例が斜視図で示されている。図5に例示する本発明の狭隘部用剃刀について図6を用いて説明する。図6(a)は、図5に示す剃刀について側面より見た図、図6(b)はその断面図、図6(c)は刃体33を取り外す状態を示す断面図である。刃体ホルダ部22は柄42の長軸Bに対して、約60°の角度(β)で傾斜している。そして刃体ホルダ部22の最先端にある傾斜部22aと柄の長軸に平行な受け部22bとが形成する載置面で刃体33を受け取る。刃体33は前記刃体ホルダ部22の載置面に適合する断面くの字状を成し、刃先部33aは傾斜部22aに、刃体後部33bは受け部22bにそれぞれ当接する。刃体33を刃体ホルダ部22に固定(挟着)するには、図6(c)に示す態様とは逆に操作することになる。
【0029】
すなわち、刃体33をまず刃体ホルダ部22に載置する。次に、刃体ホルダ部の後方にて回動自在に軸支される刃体押さえ部材25の先端25bを刃体33に向けて押さえる。このとき、刃体押さえ部材25の後端25cから該刃体押さえ部材の長軸より外側方向に向かって反る反り部25dが撓みつつ、後端25cが柄42に当接する。後端25cの先端には爪25eが形成されており、これが柄42の後方にあって、長軸Bと同軸的に摺動可能な掛止部材43により係止される。この状態が図6(b)で示された状態である。掛止部材43は、内部にバネを有し、前方(刃体方向)へ付勢されている。刃体33の取り換えに際しては、前記掛止部材43を後方に引き戻すことにより、刃体押さえ部材25の爪25eが係止状態を解除される。そして反り部25dの反発力によって、刃体押さえ部材25が軸支点を中心に回動し、先端25bが刃体33より離間する。この状態が図6(c)で示す状態である。こうして、脱着可能となった刃体33を、新しい刃体と交換することができる。
【0030】
刃体33は刃先部33aが実際に剃除作用をする部位であるが、この部位は刃体ホルダ部の傾斜部22aによってガードされているので、この剃刀を長軸方向に進めても耳孔などを不用意に傷つけることがない。
【0031】
図5乃至図6に記載の、各構成部材としては同一材料(例えば金属、樹脂、紙、木、セラミック、ガラスなど)で構成してもよく、部材に応じて適宜最適材料を選択することができる。但し、刃体については一般的には金属製が好ましい。
【0032】
前記各種(円板状、三角形板状、矩形板状など)の刃体を有する狭隘部用剃刀は、一般的に柄の長軸方向に進退させることにより目的とするうぶ毛などを剃ることができる。つまり、柄を指先にて保持しつつ、刃体ホルダ部外側面(凸状体)を人体に接触させるなどして被剃部を越える位置まで前進させる。次いで、同様に柄を保持しながら先の進行方向とは逆方向(手前)に向かって引き上げる。これにより刃体の刃先がうぶ毛などを捉えてこれを剃ることができるのである。なお、このとき長軸と同軸的に柄を回転させることによっても剃除可能である。
【0033】
図7(a)には、刃体ホルダ部の刃体保持面23が凹状に窪んで形成されている例を示している。このような刃体保持面23には、その略中心部に孔部または貫通孔26が設けられている。そして、刃体保持面の凹状に沿うようにして湾曲して形成された凹面状の刃体34が、該刃体保持面に載置される。前記孔部または貫通孔26に対応して、刃体34には貫通孔30aが設けられており、この両者が連通するようにして刃体が刃体ホルダ部に載せられるのである。次いで、鋲55を刃体の上から前記孔に挿通して刃体を固定する。刃体の固定に際しては、鋲を挿通した後、その先端を溶融し、加圧し、加締め、あるいは接着剤を使用するなど従来公知の固定方法によって、刃体ホルダ部に刃体を密着、固定する。この図の例では、刃体も34も凹面状として形成されているが、平板状の刃体を用いて、刃体ホルダ部の刃体保持面に沿わせるようにして変形させ、固定前には平板状であった刃体を、固定状態では凹面状と成すこともできる。また、図では円形状の刃体を使用しているが、楕円形状、多角形状等の刃体を使用することも当然可能である。
【0034】
図7(b)には、前記同様の刃体保持面23が凹状に窪んで形成されている例が示されている。図7(a)との相違は、刃体固定のために、突起部21が形成されている点である。突起部21が刃体34の貫通孔30aを通して刃体を刃体保持面に固定する役割を果たす。すなわち、刃体を貫通した突起部の先端を加熱し、加圧しあるいは加締めること等によって刃体を刃体ホルダ部に固定するのである。この例では、別部品として鋲を使用する必要がない点において前記例よりも構成部品を減少させられるというメリットがある。
【0035】
図7(c)には、刃体ホルダ部20の外側面(凸状体)が、断面台形状である例が示されている。この図でも刃体保持面23が凹状に窪んで形成されているので、断面形状において台形状の下辺(台形の平行線の長い方の辺)が内側方向に弓なりに湾曲している。この例での刃体固定方法は前記図7(a)または(b)のいずれの方法を採用しても良い。
【0036】
図8(a)〜(f)は、刃体の外形として前記例示(円形状、四角形状、三角形状)以外に、種々の具体的な刃体の外形を示したものである。(a)は円形状と四角形状、(b)は三角形状と四角形状、(c)は三角形状と円形状をそれぞれ複合した形状の例であり、(d)は円形状の刃体の一部に切り欠き部38を形成、(e)は前記(a)の複合形状に2箇所の切り欠き部38を形成、(f)は円形状の刃体の貫通孔30aと切り欠き部38とを融合させて形成したものである。切り欠き部が形成された刃体(d)〜(f)は、刃体ホルダ部の刃体保持面に対応する突起部を形成して、刃体をより強固に固定することができる。なお、この例示の他にも様々な形状が選択可能であることは言うまでもない。
【0037】
図9は、柄の他端側に、別部品としての把持部材に対して固定可能な挿着部を有する狭隘部用剃刀の斜視図を示す。この狭隘部用剃刀100は、図1に示すのと同様に刃体ホルダ部20、刃体30、柄40を有し、他端側に挿着部70が形成されている。刃先側の構造については図1と同様であるためここでは説明を省略し、挿着部70の構造について述べる。挿着部70は、図に示すように断面長方形の四角柱を成し、後述の把持部材に対して挿入する部位である。挿着部70には紙面上方向に反る反り部71と、紙面下方向に反る反り部72が形成されている。この反り部は図9には2個示されているが、これがさらに多くても、或いは1個のみであっても良い。また反り部の形成位置は、図に示す以外にも、挿着部70の末端部分寄りに形成されていても良いし、図に示すよりも柄40寄りに形成してあっても良い。またこの挿着部は反り部の掛止により把持部材に挿着する例であるが、挿着部全体が雄ネジまたは雌ねじに形成され、把持部材と螺合することもできる。さらには、嵌合により挿脱可能にする方法や、プッシュオン方式などを採用することも可能である。
【0038】
図9に示す狭隘部用剃刀100を円柱状の把持部材200に対して挿脱する様子を図10(a)〜(d)に示す。図10(a)には、剃刀100の挿着部70が把持部材200の挿入孔210へ挿入される直前の状態を示している。挿入孔210は、挿着部70が挿入できるだけの幅および深さを有し、深部にはバネ240が内設されている。このバネ240は剃刀100を押し出す方向へ作用する。挿入孔210の挿入口220は図10(a)の左端に把持部材の外周形状(円)とともに示されている。ここで、挿入口220には縦長の開口部221を有しており、この開口部221縦の長さは、挿着部70の端面(長方形)の幅にほぼ等しく、開口部221の横の長さは、挿着部70の端面の厚みにほぼ等しい。またこの図から明らかなように反り部71、72の先端71a、72aは挿着部70の幅よりも外側方向に広げられて形成される。従って、この先端(71a、72a)間の長さは、開口部221の縦の長さより長い。
【0039】
図10(b)に示すように狭隘部用剃刀100を把持部材200の挿入孔210へ侵入させると、開口部221によって反り部(71、72)は撓められ、同時にバネ240も押縮められる。このような撓み性のため、この反り部は樹脂製であることが望ましい。そして挿入部70を完全に把持部材200の挿入孔210に収容すると、反り部は元の形に戻ろうとする反発力のため、挿入孔内壁212に当接することとなり、同時に内部のバネ240によって押し出される方向に力が作用するので、開口部壁214に反り部の先端(71a、72a)が掛止される。この状態を示すのが図10(c)である。なお、開口部壁214は挿入口220に対して周設され、通常(図10(a)乃至(c)に示す係着時)は開口部221の長手方向に対して垂直方向にあたる部分に凹溝225を有している。
【0040】
狭隘部用剃刀100を把持部材200から抜き出すためには、図10(d)の左端に把持部材の外周形状(円)とともに示されているように、長軸方向に対して把持部材200を回すか、剃刀100を回すことにより、開口部221と凹溝225とを直列にする。これにより実質的に開口部221の幅がより長くなることとなるので、開口部壁214に係着されていた反り部の先端が解放されることとなる。同時に内部のバネ240によって、剃刀全体が押し出されることとなるのである。
【0041】
図11(a)乃至(d)には、図9で示した挿着部と柄との間に、把持部材に挿入される挿入部80を具備する狭隘部用剃刀101の具体例を示す。この挿入部80は把持部材201の第一挿入孔230に収容される。一方、挿着部70は第二挿入孔210に挿入されることになるのである。この例では図9乃至図10に記載の剃刀と、挿入部80およびそのための第一挿入口230を具備する以外は、同様である(図11の第二挿入孔は、図10の挿入孔210と同様)ので、相違点についてのみ説明する。この例における挿入部80は、把持部材201の第一挿入孔230と実質的にぴったりと挿着される。これによって、挿着したときの狭隘部用剃刀の僅かなブレをも抑制することができることとなる。すなわち、剃刀の挿脱方向に対しては挿着部70および第二挿入孔210が制御し、剃刀の長軸に対するブレについては挿入部80と第一挿入孔230により制御することとなるのである。
【0042】
この挿入部80の外観形状は円柱状、三角柱状、四角柱状などの多角形柱状を採用することができ、当然ながらその形状に合わせて第一挿入孔230の内部形状も設計することができる。例えば、挿入部の外観形状が円柱状であれば、挿入孔の内部形状も円筒状となる。しかし、例えば挿入部の外観形状が三角柱状であるときは、挿入孔の内部形状も断面三角形の筒状であることができるが、それ以外にも、断面がダイヤゲームのような星形とすることも可能である。この場合挿入する角度が60°回転した状態でも可能となるのでより挿脱が容易になる。この他、例えば挿入部が楕円柱状であれば、挿入孔が楕円筒状である場合はもちろんのこと、挿入孔断面が楕円軸を中心にいくつかの角度で回転させてできた断面形状とすることもできるのである。
【0043】
図12には、先に説明した図9乃至図10に係る把持部材200を分解した状態を示す。図12(a)に対して図12(b)は全体を長軸に対して90°手前に回転した状態を示している。図に示す把持部材200は概略、挿着部70が挿入される挿入孔を形成するための管体250と、管体内に保持される挿入孔形成部材252と、バネ254と、把持部材本体256とから構成されている。
【0044】
管体250には、ネジ251が螺着可能な構造をし、挿入孔形成部材252の溝253にネジ251の先端がはめ込まれることにより、挿入孔形成部材252を内部に長軸に対して同軸的に回動可能に固定する。また挿入孔形成部材252の内部には挿着された本発明の狭隘部用剃刀100を、押し出すバネ240が内挿されている。これらの各部材により挿入孔210が形成される。
【0045】
また、挿入孔形成部材252と、把持部材本体256との間にはバネ254が介装される。このバネ254は先の剃刀を押し出すためのバネ240とは異なり、挿入孔形成部材252の長軸に対する回動を一方向に付勢するためのバネである。つまり、先の図10(a)の左端の円に示すように、通常開口部221は凹溝225に対して直交する位置に開口する。この状態を保持するのがこのバネ254である。一方、狭隘部用剃刀100を取り外すためには開口部221と凹溝225が直列の状態にしなければならない。このバネ254がないと、挿入孔形成部材が長軸に対して自然に回動することを許容することとなってしまうのである。従って、取り外す際には挿入孔形成部材を回動し、挿着中、使用中にはこの不必要な回動を防止するために、このバネにより常に直交状態を保持することができるのである。
【0046】
上記具体例は、本発明の好適な実施形態を示すに過ぎず、本発明の技術的範囲は、前記具体例そのものに何ら限定されるものではなく、本発明の構成を備える範囲内において適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の狭隘部用剃刀は、人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するために好適に使用することができ、特に理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の狭隘部用剃刀の全体を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分を示す概略図である。
【図3】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分に関する他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分に関する他の例を示す概略図である。
【図5】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5に示す狭隘部用剃刀の刃体の交換態様を示す図である。
【図7】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明の刃体形状の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9に示す狭隘部用剃刀の把持部材に対する挿脱の状態を示す図である。
【図11】本発明の他の狭隘部用剃刀の把持部材に対する挿脱の状態を示す図である。
【図12】図9乃至図10に係る把持部材を分解した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10、100、101 狭隘部用剃刀
20、22 刃体ホルダ部
30、31、32、33 刃体
40、42 柄
50、53 保護プレート
60、61 ワイヤ
70 挿着部
80 挿入部
200、201 把持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するための剃刀に係わるものであり、さらに詳しくは、理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去できる狭隘部用剃刀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耳掻き具は、耳孔に先端部を挿入して効率よく耳垢が除けるように、先端部の形状として様々なものが提案されている。最も一般的な耳掻き具は、先端が湾曲した杓子形状の耳掻き部を備えているが、その他に、柄の全周面に沿ってフランジ状部分を形成した耳掻き部を備えるもの(特開平6−113978号公報)、先端に接着剤層を介して固着された角のある外周面を有する無機質硬質粒子を含む耳掻き部を備えるもの(特開平9−294690号公報)、表面に軸部の軸線方向に平行状の突条部を備えた耳掻き部を有するもの(特開平10−216042号公報)、先端に螺旋状の溝を設け、隣接する溝間で所定の厚み高さの円板状の掻き出し板を形成したもの(特開2000−116564号公報)、或いは繊維塊状部を設けた綿棒であって、少なくとも1箇所に突起部を設けたもの(特開2002−186568号公報)などがある。これらは、それぞれ耳垢の取り残しを防止するため、或いは小さな耳垢をも掻き取るなどの効果を発揮するものであった。
【0003】
しかし、これらの耳掻き具は基本的に耳垢を取り除くことが目的であり、耳孔の入口付近や内部に生えるうぶ毛を剃りこれを除く(以下剃除という)機能は持ち合わせていなかった。勿論、これらの耳掻き具を使用して繰り返し、或いは強くこすりつけるなどすれば前記うぶ毛を除くことも可能ではあり、子供であれば比較的容易にうぶ毛を除くこともできたが、特に年齢を経た人の耳孔に生える毛は太くなっているものが多く、これを除去することは容易ではない。また、一般の理美容院には、ひげ剃りや顔のうぶ毛を剃るための剃刀はあるものの、これを前記耳孔の入口付近や、まして内部に生えるうぶ毛を剃るために使用することは不可能であった。
【0004】
一方、外科手術に使用されるメスなどとしては、人体の狭隘部の腫瘍を切除したり、微小な切開部を形成するために使用されるものがあり、これを本発明の人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するための剃刀の代用品として転用することも考えられなくはない。しかし、従来、この種のメスなどは基本的に高度な医術を習得した者のみが使用することが前提であるため、切ることについては充分に考慮されているものの、これを一般の理美容師が気軽に使用できるほどの安全性が担保されているものではない。
【0005】
例えば、人体などの復雑な起伏(顔面、首、耳、腋窩、陰部など)を安全に又完全に剃毛するために、スプーン型の略楕円形のカーブを設えた、スプーン型カミソリに関する提案(特開2001−259261号公報)がある。この提案は、本発明の目的とする人体の狭隘部にも使用することができそうである。ただし、このスプーン型のカミソリには、耳孔などに使用するには安全性の面で若干考慮する必要があると思われる。
【特許文献1】特開平6−113978号
【特許文献2】特開平9−294690号
【特許文献3】特開平10−216042号
【特許文献4】特開2000−116564号
【特許文献5】特開2002−186568号
【特許文献6】特開2001−259261号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、人体の狭隘部にも使用できる剃刀であって、使用に際して特別な技術を習得していなくても気軽に使用できるように安全性を向上させたものである。さらに、理美容院において、耳孔の入口付近や内部に生えるうぶ毛を剃りこれを除く機能を有し、安全に使用できる狭隘部用剃刀を提供しようとするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、前記刃体ホルダ部が、刃体を、柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の剃刀は、柄の長軸を含む仮想平面に対して、板状の刃先線が形成する仮想平面が2°〜70°の傾斜、好ましくは20°〜60°の傾斜を有している点が特徴である。この傾斜によって剃刀の進行方向に対して、刃先が傾斜角を有しつつ進退させることが容易となる。これにより、刃先が皮膚に対して線として接触することがなく、進行方向において不用意に皮膚などを傷つけることがないのである。逆に目的とするうぶ毛などを剃る場合には、剃刀を先の方向(進行方向)とは逆方向へ引き上げることにより、通常の剃刀として作用するのである。なお、柄を長軸に対して同心的に回すことによっても、簡単に剃り上げることができる。
【0009】
また、刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着することにより、刃体形状を安定して保持することが可能となる。そして、刃体ホルダ部が刃体保持側とは反対方向に膨らみを有していることが本発明の特徴の一つである。この膨らみは表面が滑らかとされ半球体状、円錐台形体状、または円環状に凸条を有する形態などを含む凸状体を形成している。この凸状体は、要するに、刃先線が形成する仮想平面からの高さ(該凸状体の頂点から刃先までの水平距離)によって、刃先と皮膚との不用意な直接的接触を回避することが目的である。従って、この凸状体は基本的にはある程度の高さと表面滑らかさとを有していれば、特定の規則的な形状に限定されることはなく、刃体保持側とは反対方向に盛り上がりを形成していることが重要な要素である。
【0010】
ところで、剃刀を皮膚にあてがうときには、刃体ホルダ部が薄いと刃先が直ぐに皮膚と接触して危険である反面、単に肉厚にすると剃り難くなる。切れ味を追求する刃先はただでさえ皮膚との接触圧、接触角度の調整が微妙であり、狭隘部においてはなおさら慎重さが求められるものである。そこで、まず刃体ホルダ部の凸状体を剃りたい皮膚の近傍に接触させ、凸状体を支点として柄を長軸に対して同心的に回動することで剃り易い態勢を整えることができる。そして柄を引き上げる、或いはさらに柄を回動することによって目的とする被剃除物を除去するのである。このような凸状体により、前記の刃先傾斜保持の効果とともに、刃先から皮膚を保護する効果がより高くなる。
【0011】
また(A)刃体が凹面状に形成されているか、(B)刃体保持面が凹状に窪んでいることによって平面状の刃体を固定する際に刃体が凹面状に変形されることとなり、刃体保持面の外形が形成する仮想平面よりも刃先が上方に反るようにして設置することが好ましい。この刃先の反りによって、皮膚との接触が線接触ではなく面接触となり易く、従って安全性がより向上するからである。さらに、この刃先の反りは、皮膚と刃先の剃り角度を小さくして、快適な剃り味を得ることができる。例えば刃体の刃先が、刃体保持面の外形が形成する仮想平面と同一水平面である場合と、刃先が反るように形成されている場合とでは、刃体ホルダ部を同じだけ傾斜させたときの皮膚と刃先との接触角が異なり、前者の方が後者よりも接触角が大となる。剃刀の剃り味は接触角が小さい方が高いので、刃先の反りが重要な要素となるのである。
【0012】
本発明における、前記凸状体の形態としては特定の規則的な形状に限定されるものではないが、凸状体が目的とする皮膚の近傍において支点として作用し易いこと、刃体を凹面状に保持し易いことを考慮すると、刃体ホルダ部の中心部で刃体保持面に対して垂直方向に切断したときの断面形状において、半円状、逆台形状、三日月状および略コ字状から選択される、いずれか一つの形状を有することが好ましい。より好ましくは前記両特性を充分に発揮する三日月状或いは略コ字状である。
【0013】
刃体ホルダ部の刃体保持面の外形は、保持される刃体の一部だけが突出することがないように、刃体外形とほぼ同一かあるいは刃体外形より0.5〜2mm程度内側に後退した外形とすることが好ましい。刃体外形とほぼ一致させることにより、刃体の進行方向の面を刃体ホルダが覆うこととなり、刃先が接触する前に刃体ホルダ部が皮膚と接触するからである。また、刃先を刃体保持面の外形よりも0.5〜2.0mm程度はみ出して固定する場合でも、後述の保護部材により刃先から皮膚を確実にガードすることもできる。
【0014】
本発明の刃体の外形は、円状、楕円状、矩形状、多角形状またはこれらの複合形状、もしくは前記いずれかの形状の一部に切り欠き部を有する形状から選択される、いずれか一つの形状を有する。刃体の外形は、基本的にはどのような形状であっても、その少なくとも一部に剃刀としての剃る機能が備わっていれば良く、例えば外形が円状であってもその全周に渡って剃刀の刃が形成されている必要はない。また刃体の略中心部に一つ以上の貫通孔が形成されているものや、刃体の一部に切り欠き部を形成したものは、このような部位を、刃体を刃体ホルダ部に保持・固定するために利用することができるので好ましい。さらに刃体は、必ずしも平板状である必要はなく、前記(A)で示す凹面状や刃先部が傾斜面を成す皿状のものであっても良い。
【0015】
また、本発明の剃刀は、柄の他端側(刃体ホルダ部側とは反対の側)に把持部材に対して固定可能な結合手段を有することができる。把持部材は、使用者が手指により把持する部分であり、狭隘部用剃刀を取り外し可能な構造にして把持部材の先にこれを結合する。柄の長さを長く設計することにより把持部を柄に設けることも可能であるが、把持部材を別途形成することで、狭隘部用剃刀を使い捨てタイプにすることができるのである。勿論、前記刃体ホルダ部に対して刃体を脱着可能に形成することで、刃体のみを使い捨ての構成とすることも可能である。本発明の剃刀の刃体は狭隘部用であるため必然的に小さな形状となるので、切れ味が悪くなったら研ぎ直して継続使用するよりも、刃体あるいは剃刀全体を交換可能に設定する方が現実的だからである。
【0016】
そして、前記結合手段として挿着部を形成する場合には、その構造が、挿着部側から刃体方向に向けて、柄の長軸に対して外側方向に反る、反り部を有していることが好ましい。構造については後に詳述するが、把持部材側の構造としてその軸心箇所に、柄の挿着部が挿入できる深さの挿入孔を有し、狭隘部用剃刀を挿脱可能に保持する。柄の挿着部に形成された反り部は、挿入するときは、把持部挿入孔の内壁によって柄の長軸に向かって押圧されて撓み、挿着完了時において、把持部挿入孔の内壁に形成された環状の凸条などと係止して、狭隘部用剃刀が把持部材から脱着することを防止するのである。
【0017】
前記反り部は一つであっても良いが、複数形成されていることが好ましい。その構造としては、複数の反り部の中心軸と柄の長軸とが同軸であることがより好ましいのである。これは、挿着部を把持部材の挿入孔内に挿入した際に、反り部の先端が挿入孔の内壁の凸条などと係止することから、係止位置が挿入孔内で均等に配置され、より確実な挿着力が得られるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る狭隘部用剃刀によれば、人体の複雑な形状(狭隘な部分など)に対しても安全に使用することができる。特に理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去することができる。
【0019】
また、刃体を刃体ホルダ部から脱着可能にして使い捨てとしたり、或いは狭隘部用剃刀を別の把持部材と挿脱可能にして該剃刀を使い捨てにすることもできる。これにより常に切れ味の良い状態を保ち、かつ衛生的に使用することができるのである。さらに、該剃刀を交換可能にすることにより、全体としてコンパクトになるために携帯に便利となる。また、把持部材側にLEDなどの照明装置を採用した場合などに、比較的高価となる把持部材を長期的に使用しつつ、切れ味の低下などの消費財的な該剃刀のみを交換可能にするメリットが高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を併用して、本発明の狭隘部用剃刀について詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の狭隘部用剃刀10の概略を示す。最先端には刃体ホルダ部20が設けられ、その上には円板状の刃体30が固定されている。刃体ホルダ部20は、柄40の先端に形成されており、刃体30を柄の長軸Aを含む仮想平面に対して、約20°の角度(α)をもって傾斜(図2(a)に示す)して保持している。また、刃体30の形状に合わせて、刃体ホルダ部の端面20aは円形を成し、刃体ホルダ部20全体では半球状に形成されている。この刃体ホルダ部20の外側面(凸状体)20bは、剃刀10が狭隘部、例えば耳孔の入口付近や内部のうぶ毛を剃る際に皮膚と最初に接触する部分である。従って、外側面(凸状体)20bの表面は滑らかな面であることが望ましい。
【0022】
この図1では、刃体ホルダ部20と柄部40とは同一材料(例えば金属、樹脂、紙、木、セラミック、ガラスなど)で構成されているが、異種の材料で別々に構成して両者を接着することもでき、例えば柄を金属材料で、刃体ホルダ部を樹脂材料で製造することもできる。好ましくは全体(刃体ホルダ部20と柄40)を樹脂材料で成形することにより、狭隘部用剃刀を使い捨てにすることもできる。なお、柄40は図面では特に凸凹のない平滑面として表されているが、指先にて保持する場合のすべり止めのための凹凸面を形成したり、その凹凸で模様などを形成しておくこともできる。
【0023】
一方、刃体は以下に記載の他の例についてもそうであるが、一般的には金属材料から構成することができ、その他セラミックや硬質樹脂から製造することも可能である。刃体30はその中心に貫通孔30aを有し、刃体ホルダ部端面20aの中心部に形成された突起部21がこの貫通孔30aを嵌通している。突起部21は貫通孔30aを嵌通した後、溶融或いは押圧されて刃体面上に拡がり、刃体30を固定する。刃体30の固定方法としてはこのような貫通孔30aを形成しなくても、接着剤などにより単に接着する方法や、刃体30を熱して樹脂製の刃体ホルダ部とを溶着する、或いは下記(図5)に説明する挟着するなどの方法があり、適当な方法を選択することができるのである。
【0024】
刃体30の刃先のガードとしては、前記刃体ホルダ部によるだけでなく、図2に示す(b)や(c)のような保護部材も考えられる。図2(a)は、図1に示す円板状の刃体30の例であるが、この刃体の上から保護プレート50を装着したのが図2(b)である。この保護プレート50は、中心が円板上の刃体30の直径よりも小さい円板状の部分51と、刃体の刃先より若干延出した複数本の延出部52を有する。また中心には刃体30のそれと同位置に貫通孔50aを有し、刃体ホルダ部の突起部21が嵌通している。万が一、刃先が皮膚に対して線接触により擦られた場合でも、刃体の刃先線より延出した延出部52が、皮膚に切り傷を与えないように保護するための安全ガードの役割を果たす部分である。この保護プレートは金属、樹脂、木など特にどのような材料で構成してもよい。なお、図(a)乃至(c)において上側の図が平面図であり下側の図が側面図である。
【0025】
また、図2(c)には、ワイヤ60を刃体30の貫通孔30aを通して、刃先に巻回させた例が示されている。この方式による安全ガードも、基本的には刃先線に現れるワイヤ60が、刃先が皮膚に対して線接触により擦られた場合に、皮膚に切り傷を与えないようにする作用を有する。このワイヤについては、刃先線に巻回される関係上、基本的には金属製である。
【0026】
図3には、刃体31の形状を角の丸められた四角板状をした例が示されている。この形状の利点は刃先線と皮膚との接触幅を広くすることができるので、先の円板状に比べて一度に剃除できる面積を多くすることができることである。図3(a)は保護プレートを付設していないもの、図3(b)には保護プレート53により刃先による切創等から皮膚の保護効果をより高めた態様の例を示す。なお、刃体ホルダ部の側面図が図3(b)の下側に示した図であり、刃体ホルダ部の端面形状は、刃体の形状に合わせて四角形状を成し、刃体ホルダ部の外側面(凸状体)は角のない四角錐状に隆起した形状、あるいは四角錐状の頂点付近を球面に近づけた形状などを採用することができる。従って、敢えて保護プレートを設けなくても安全上は問題はない。
【0027】
また、図4には、刃体32の形状を角の丸められた三角板状をした例が示されている。先の四角板状の場合、柄の長軸に対して刃先線も平行であったので、剃刀を宛てる皮膚側と柄との関係を平行にある場合に適用しやすいものであった。一方、この例では柄の長軸に対して斜めに刃先線を宛てたい場合に、有利な形状なのである。図4(a)は保護プレートを付設していないもの、図4(b)にはワイヤ61により刃先による切創等から皮膚の保護効果をより高めた態様の例を示す。刃体ホルダ部の側面図は図4(b)の下側に示した図であり、刃体ホルダ部の端面形状は、刃体の形状に合わせて三角形状を成し、刃体ホルダ部の外側面(凸状体)は角のない三角錐状に隆起した形状、或いは三角錐の頂点付近を球面に近づけた形状などを採用することができる。この例においても、敢えてワイヤ61を巻回しなくても安全上は問題はない。
【0028】
一方、図5には刃体を挟着するタイプの例が斜視図で示されている。図5に例示する本発明の狭隘部用剃刀について図6を用いて説明する。図6(a)は、図5に示す剃刀について側面より見た図、図6(b)はその断面図、図6(c)は刃体33を取り外す状態を示す断面図である。刃体ホルダ部22は柄42の長軸Bに対して、約60°の角度(β)で傾斜している。そして刃体ホルダ部22の最先端にある傾斜部22aと柄の長軸に平行な受け部22bとが形成する載置面で刃体33を受け取る。刃体33は前記刃体ホルダ部22の載置面に適合する断面くの字状を成し、刃先部33aは傾斜部22aに、刃体後部33bは受け部22bにそれぞれ当接する。刃体33を刃体ホルダ部22に固定(挟着)するには、図6(c)に示す態様とは逆に操作することになる。
【0029】
すなわち、刃体33をまず刃体ホルダ部22に載置する。次に、刃体ホルダ部の後方にて回動自在に軸支される刃体押さえ部材25の先端25bを刃体33に向けて押さえる。このとき、刃体押さえ部材25の後端25cから該刃体押さえ部材の長軸より外側方向に向かって反る反り部25dが撓みつつ、後端25cが柄42に当接する。後端25cの先端には爪25eが形成されており、これが柄42の後方にあって、長軸Bと同軸的に摺動可能な掛止部材43により係止される。この状態が図6(b)で示された状態である。掛止部材43は、内部にバネを有し、前方(刃体方向)へ付勢されている。刃体33の取り換えに際しては、前記掛止部材43を後方に引き戻すことにより、刃体押さえ部材25の爪25eが係止状態を解除される。そして反り部25dの反発力によって、刃体押さえ部材25が軸支点を中心に回動し、先端25bが刃体33より離間する。この状態が図6(c)で示す状態である。こうして、脱着可能となった刃体33を、新しい刃体と交換することができる。
【0030】
刃体33は刃先部33aが実際に剃除作用をする部位であるが、この部位は刃体ホルダ部の傾斜部22aによってガードされているので、この剃刀を長軸方向に進めても耳孔などを不用意に傷つけることがない。
【0031】
図5乃至図6に記載の、各構成部材としては同一材料(例えば金属、樹脂、紙、木、セラミック、ガラスなど)で構成してもよく、部材に応じて適宜最適材料を選択することができる。但し、刃体については一般的には金属製が好ましい。
【0032】
前記各種(円板状、三角形板状、矩形板状など)の刃体を有する狭隘部用剃刀は、一般的に柄の長軸方向に進退させることにより目的とするうぶ毛などを剃ることができる。つまり、柄を指先にて保持しつつ、刃体ホルダ部外側面(凸状体)を人体に接触させるなどして被剃部を越える位置まで前進させる。次いで、同様に柄を保持しながら先の進行方向とは逆方向(手前)に向かって引き上げる。これにより刃体の刃先がうぶ毛などを捉えてこれを剃ることができるのである。なお、このとき長軸と同軸的に柄を回転させることによっても剃除可能である。
【0033】
図7(a)には、刃体ホルダ部の刃体保持面23が凹状に窪んで形成されている例を示している。このような刃体保持面23には、その略中心部に孔部または貫通孔26が設けられている。そして、刃体保持面の凹状に沿うようにして湾曲して形成された凹面状の刃体34が、該刃体保持面に載置される。前記孔部または貫通孔26に対応して、刃体34には貫通孔30aが設けられており、この両者が連通するようにして刃体が刃体ホルダ部に載せられるのである。次いで、鋲55を刃体の上から前記孔に挿通して刃体を固定する。刃体の固定に際しては、鋲を挿通した後、その先端を溶融し、加圧し、加締め、あるいは接着剤を使用するなど従来公知の固定方法によって、刃体ホルダ部に刃体を密着、固定する。この図の例では、刃体も34も凹面状として形成されているが、平板状の刃体を用いて、刃体ホルダ部の刃体保持面に沿わせるようにして変形させ、固定前には平板状であった刃体を、固定状態では凹面状と成すこともできる。また、図では円形状の刃体を使用しているが、楕円形状、多角形状等の刃体を使用することも当然可能である。
【0034】
図7(b)には、前記同様の刃体保持面23が凹状に窪んで形成されている例が示されている。図7(a)との相違は、刃体固定のために、突起部21が形成されている点である。突起部21が刃体34の貫通孔30aを通して刃体を刃体保持面に固定する役割を果たす。すなわち、刃体を貫通した突起部の先端を加熱し、加圧しあるいは加締めること等によって刃体を刃体ホルダ部に固定するのである。この例では、別部品として鋲を使用する必要がない点において前記例よりも構成部品を減少させられるというメリットがある。
【0035】
図7(c)には、刃体ホルダ部20の外側面(凸状体)が、断面台形状である例が示されている。この図でも刃体保持面23が凹状に窪んで形成されているので、断面形状において台形状の下辺(台形の平行線の長い方の辺)が内側方向に弓なりに湾曲している。この例での刃体固定方法は前記図7(a)または(b)のいずれの方法を採用しても良い。
【0036】
図8(a)〜(f)は、刃体の外形として前記例示(円形状、四角形状、三角形状)以外に、種々の具体的な刃体の外形を示したものである。(a)は円形状と四角形状、(b)は三角形状と四角形状、(c)は三角形状と円形状をそれぞれ複合した形状の例であり、(d)は円形状の刃体の一部に切り欠き部38を形成、(e)は前記(a)の複合形状に2箇所の切り欠き部38を形成、(f)は円形状の刃体の貫通孔30aと切り欠き部38とを融合させて形成したものである。切り欠き部が形成された刃体(d)〜(f)は、刃体ホルダ部の刃体保持面に対応する突起部を形成して、刃体をより強固に固定することができる。なお、この例示の他にも様々な形状が選択可能であることは言うまでもない。
【0037】
図9は、柄の他端側に、別部品としての把持部材に対して固定可能な挿着部を有する狭隘部用剃刀の斜視図を示す。この狭隘部用剃刀100は、図1に示すのと同様に刃体ホルダ部20、刃体30、柄40を有し、他端側に挿着部70が形成されている。刃先側の構造については図1と同様であるためここでは説明を省略し、挿着部70の構造について述べる。挿着部70は、図に示すように断面長方形の四角柱を成し、後述の把持部材に対して挿入する部位である。挿着部70には紙面上方向に反る反り部71と、紙面下方向に反る反り部72が形成されている。この反り部は図9には2個示されているが、これがさらに多くても、或いは1個のみであっても良い。また反り部の形成位置は、図に示す以外にも、挿着部70の末端部分寄りに形成されていても良いし、図に示すよりも柄40寄りに形成してあっても良い。またこの挿着部は反り部の掛止により把持部材に挿着する例であるが、挿着部全体が雄ネジまたは雌ねじに形成され、把持部材と螺合することもできる。さらには、嵌合により挿脱可能にする方法や、プッシュオン方式などを採用することも可能である。
【0038】
図9に示す狭隘部用剃刀100を円柱状の把持部材200に対して挿脱する様子を図10(a)〜(d)に示す。図10(a)には、剃刀100の挿着部70が把持部材200の挿入孔210へ挿入される直前の状態を示している。挿入孔210は、挿着部70が挿入できるだけの幅および深さを有し、深部にはバネ240が内設されている。このバネ240は剃刀100を押し出す方向へ作用する。挿入孔210の挿入口220は図10(a)の左端に把持部材の外周形状(円)とともに示されている。ここで、挿入口220には縦長の開口部221を有しており、この開口部221縦の長さは、挿着部70の端面(長方形)の幅にほぼ等しく、開口部221の横の長さは、挿着部70の端面の厚みにほぼ等しい。またこの図から明らかなように反り部71、72の先端71a、72aは挿着部70の幅よりも外側方向に広げられて形成される。従って、この先端(71a、72a)間の長さは、開口部221の縦の長さより長い。
【0039】
図10(b)に示すように狭隘部用剃刀100を把持部材200の挿入孔210へ侵入させると、開口部221によって反り部(71、72)は撓められ、同時にバネ240も押縮められる。このような撓み性のため、この反り部は樹脂製であることが望ましい。そして挿入部70を完全に把持部材200の挿入孔210に収容すると、反り部は元の形に戻ろうとする反発力のため、挿入孔内壁212に当接することとなり、同時に内部のバネ240によって押し出される方向に力が作用するので、開口部壁214に反り部の先端(71a、72a)が掛止される。この状態を示すのが図10(c)である。なお、開口部壁214は挿入口220に対して周設され、通常(図10(a)乃至(c)に示す係着時)は開口部221の長手方向に対して垂直方向にあたる部分に凹溝225を有している。
【0040】
狭隘部用剃刀100を把持部材200から抜き出すためには、図10(d)の左端に把持部材の外周形状(円)とともに示されているように、長軸方向に対して把持部材200を回すか、剃刀100を回すことにより、開口部221と凹溝225とを直列にする。これにより実質的に開口部221の幅がより長くなることとなるので、開口部壁214に係着されていた反り部の先端が解放されることとなる。同時に内部のバネ240によって、剃刀全体が押し出されることとなるのである。
【0041】
図11(a)乃至(d)には、図9で示した挿着部と柄との間に、把持部材に挿入される挿入部80を具備する狭隘部用剃刀101の具体例を示す。この挿入部80は把持部材201の第一挿入孔230に収容される。一方、挿着部70は第二挿入孔210に挿入されることになるのである。この例では図9乃至図10に記載の剃刀と、挿入部80およびそのための第一挿入口230を具備する以外は、同様である(図11の第二挿入孔は、図10の挿入孔210と同様)ので、相違点についてのみ説明する。この例における挿入部80は、把持部材201の第一挿入孔230と実質的にぴったりと挿着される。これによって、挿着したときの狭隘部用剃刀の僅かなブレをも抑制することができることとなる。すなわち、剃刀の挿脱方向に対しては挿着部70および第二挿入孔210が制御し、剃刀の長軸に対するブレについては挿入部80と第一挿入孔230により制御することとなるのである。
【0042】
この挿入部80の外観形状は円柱状、三角柱状、四角柱状などの多角形柱状を採用することができ、当然ながらその形状に合わせて第一挿入孔230の内部形状も設計することができる。例えば、挿入部の外観形状が円柱状であれば、挿入孔の内部形状も円筒状となる。しかし、例えば挿入部の外観形状が三角柱状であるときは、挿入孔の内部形状も断面三角形の筒状であることができるが、それ以外にも、断面がダイヤゲームのような星形とすることも可能である。この場合挿入する角度が60°回転した状態でも可能となるのでより挿脱が容易になる。この他、例えば挿入部が楕円柱状であれば、挿入孔が楕円筒状である場合はもちろんのこと、挿入孔断面が楕円軸を中心にいくつかの角度で回転させてできた断面形状とすることもできるのである。
【0043】
図12には、先に説明した図9乃至図10に係る把持部材200を分解した状態を示す。図12(a)に対して図12(b)は全体を長軸に対して90°手前に回転した状態を示している。図に示す把持部材200は概略、挿着部70が挿入される挿入孔を形成するための管体250と、管体内に保持される挿入孔形成部材252と、バネ254と、把持部材本体256とから構成されている。
【0044】
管体250には、ネジ251が螺着可能な構造をし、挿入孔形成部材252の溝253にネジ251の先端がはめ込まれることにより、挿入孔形成部材252を内部に長軸に対して同軸的に回動可能に固定する。また挿入孔形成部材252の内部には挿着された本発明の狭隘部用剃刀100を、押し出すバネ240が内挿されている。これらの各部材により挿入孔210が形成される。
【0045】
また、挿入孔形成部材252と、把持部材本体256との間にはバネ254が介装される。このバネ254は先の剃刀を押し出すためのバネ240とは異なり、挿入孔形成部材252の長軸に対する回動を一方向に付勢するためのバネである。つまり、先の図10(a)の左端の円に示すように、通常開口部221は凹溝225に対して直交する位置に開口する。この状態を保持するのがこのバネ254である。一方、狭隘部用剃刀100を取り外すためには開口部221と凹溝225が直列の状態にしなければならない。このバネ254がないと、挿入孔形成部材が長軸に対して自然に回動することを許容することとなってしまうのである。従って、取り外す際には挿入孔形成部材を回動し、挿着中、使用中にはこの不必要な回動を防止するために、このバネにより常に直交状態を保持することができるのである。
【0046】
上記具体例は、本発明の好適な実施形態を示すに過ぎず、本発明の技術的範囲は、前記具体例そのものに何ら限定されるものではなく、本発明の構成を備える範囲内において適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の狭隘部用剃刀は、人体の狭隘部分の毛、異物などを剃除するために好適に使用することができ、特に理美容師が耳孔そうじに際して耳孔の入口乃至内部に在るうぶ毛、耳垢などを安全にかつ簡易に除去する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の狭隘部用剃刀の全体を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分を示す概略図である。
【図3】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分に関する他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の狭隘部用剃刀の刃体部分に関する他の例を示す概略図である。
【図5】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5に示す狭隘部用剃刀の刃体の交換態様を示す図である。
【図7】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明の刃体形状の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明の狭隘部用剃刀の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9に示す狭隘部用剃刀の把持部材に対する挿脱の状態を示す図である。
【図11】本発明の他の狭隘部用剃刀の把持部材に対する挿脱の状態を示す図である。
【図12】図9乃至図10に係る把持部材を分解した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10、100、101 狭隘部用剃刀
20、22 刃体ホルダ部
30、31、32、33 刃体
40、42 柄
50、53 保護プレート
60、61 ワイヤ
70 挿着部
80 挿入部
200、201 把持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、
前記刃体ホルダ部が、
刃体を、柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、
刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする狭隘部用剃刀。
【請求項2】
前記刃体保持面が凹状に窪んでいることを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項3】
前記刃体保持面に対して垂直方向の前記凸状体の断面形状が、半円状、逆台形状、三日月状および略コ字状から選択される、いずれか一つの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項4】
前記刃体の外形が円状、楕円状、矩形状、多角形状またはこれらの複合形状、もしくは前記いずれかの形状の一部に切り欠き部を有する形状から選択される、いずれか一つの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項5】
前記狭隘部用剃刀が、
把持部材の先に着脱可能であって、柄の他端に該把持部材に対する結合手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の狭隘部用剃刀。
【請求項1】
柄の最先端に刃体ホルダ部、次いで刃体を有する、狭隘部用剃刀であって、
前記刃体ホルダ部が、
刃体を、柄の長軸を含む仮想平面に対して2°〜70°傾斜して保持し、
刃体ホルダ部の刃体保持面が刃体に密着する一方、刃体側とは反対方向に膨らんだ滑らかな表面を有する凸状体を形成し、該凸状体の頂点から刃先までの水平距離を確保して皮膚をガードするように構成されていることを特徴とする狭隘部用剃刀。
【請求項2】
前記刃体保持面が凹状に窪んでいることを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項3】
前記刃体保持面に対して垂直方向の前記凸状体の断面形状が、半円状、逆台形状、三日月状および略コ字状から選択される、いずれか一つの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項4】
前記刃体の外形が円状、楕円状、矩形状、多角形状またはこれらの複合形状、もしくは前記いずれかの形状の一部に切り欠き部を有する形状から選択される、いずれか一つの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部用剃刀。
【請求項5】
前記狭隘部用剃刀が、
把持部材の先に着脱可能であって、柄の他端に該把持部材に対する結合手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の狭隘部用剃刀。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−165622(P2009−165622A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6767(P2008−6767)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]