説明

獣害防止用バンド係止具

【課題】本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、鋭い牙を持った獣に対して噛み切られることのない硬度と強度を有し、長期に渡って低コストでその獣害防止効果を維持することのできる獣害防止用バンド係止具を提供する。
【解決手段】ビニールハウス11に被覆シート12を固定するための合成樹脂材からなる緊締バンド13の基端部とビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部15との間を所定の獣害防御間隔を有して連結する金属線材10aと、金属線材10aの一端に設けられ緊締バンド13の基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部10bと、金属線材10aの伸長する他端に設けられ水平支持部15に係止される下部係止部10cと、を有するように獣害防止用バンド係止具10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビニールハウスに合成樹脂フィルムなどの被覆シートを固定するための緊締バンドを兎や狸などに対して防御することのできる獣害防止用バンド係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年施設園芸への動物被害が目立ってきている。例えば、施設園芸の中でも塩化ビニール、PO(ポリオレフィン樹脂)類を被覆材として使用するビニールハウスなどの施設では被覆材を風等から保護するために、ハウスバンド(商品名)とよばれる緊締バンドを施設および地面に固定されたハイプおよび鋼線(バンド止め材)に結び、被覆材の飛散、破損を防ぐ方法がとられている。ところが、このハウスバンドをうさぎ、たぬき等が噛み切ってしまい毎日見回り補修しなければならないような獣害が各地で発生している。
【0003】
従来、このような獣害に対抗するための関連技術として、特許文献1には、熱可塑性樹脂の内層と繊維強化熱硬化性樹脂の中間層と熱可塑性樹脂の被覆層との3層構造の中空パイプからなる獣害防止柵用支柱が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ケーブルが噛み付かれる獣害を防止するために、ケーブル外被の構成材料に辛味成分を含ませるようにした技術のものが記載されている。
【特許文献1】特開2004−121119号公報
【特許文献2】特開2005−37526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の従来の技術のものは以下のような課題があった。
【0006】
特許文献1に記載の獣害防止柵用支柱は、樹脂製の中空パイプを用いることでその軽量化を図ったものであるが、鋭い牙を持った獣に対してはその効果が少なく、耐久性にも欠けるという欠点があった。また、特許文献2に記載のケーブルの外被に辛味成分を含ませるようにしたものでは、樹脂層など形成させるための製造や施工に伴うコストがかさむ上に、辛味成分が揮発、変質して長期に渡ってその効果を維持するのが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、鋭い牙を持った獣に対して噛み切られることのない硬度と強度を有し、長期に渡って低コストでその獣害防止効果を維持することのできる獣害防止用バンド係止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明の獣害防止用バンド係止具は、ビニールハウスに被覆シートを固定するための合成樹脂材からなる緊締バンドの基端部と前記ビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部との間を所定の獣害防御間隔を有して連結する金属線材と、前記金属線材の一端に設けられ前記緊締バンドの基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部と、前記金属線材の伸長する他端に設けられ前記水平支持部に係止される下部係止部と、を有する。
(2)本発明の獣害防止用バンド係止具は、前記(1)において、前記下部係止部が前記金属線材の伸長する他端側に傾斜角度を有して螺旋状に設けられ前記水平支持部に絡着されることにも特徴を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、緊締バンドの基端部とビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部との間を上部及び下部係止部を介して所定の獣害防御間隔で連結する金属線材を有するので、鋭い牙を持った狸や兎などの獣に対して噛み切られることのない硬度と強度を有し、長期に渡って低コストでその獣害防止効果を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態の獣害防止用バンド係止具は、ビニールハウスに被覆シートを固定するための合成樹脂材からなる緊締バンドの基端部と前記ビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部との間を所定の獣害防御間隔を有して連結する金属線材と、前記金属線材の一端に設けられ前記緊締バンドの基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部と、前記金属線材の伸長する他端に設けられ前記水平支持部に係止される下部係止部と、を有して構成される。
【0011】
すなわち、ビニールハウスが構築される地上部からけもの類の届かない位置までを加害不可能な金属線材からなる獣害防止用バンド係止具を取り付け、それに緊締バンドの基端部を固定するようにしたものである。これによって、狸や兎などに噛み切られることのない耐久性を備え、長期に渡ってその獣害防止効果を維持することができる。
【0012】
また、金属線材の上部係止部は、コイル状に形成されているので、紐状や平板状に形成された可撓性素材からなる緊締バンドの基端部をコイル状の部分に巻き付けるだけで、そのコイル線条間の摩擦力で緊締バンドを確実に係止させることができる。
【0013】
ビニールハウスは、促成栽培などに使用され、この環境で育てられた作物は一般に「ハウスもの」といわれる農作物の栽培や育苗を行うものであり、パイナップルやメロンなどの温度管理が重要な作物や、夏菊や秋菊を栽培するときにも用いられる。ビニールハウスの外表面は透光性の合成樹脂フィルムなどからなる被覆シートで被覆される。このビニールハウスの骨格をなすハウス構築材上にフィルム定着用のフィルム止め部材などを介して定着させている。フィルム止め部材は、長尺帯状のスチール板などを屈曲させてフィルムの定着部となるフィルム定着溝を長手方向に沿って設けた杆状体であり、フィルム定着溝の内部にフィルムを弛ませて挿入すると共に、同フィルムの上から所定の振り幅で蛇行したフィルム係止用のスプリングを挿入することにより、スプリングと定着溝の側壁部とでフィルムをクランプするようになっている。フィルム止め部材は屋外に設置されるハウス構築材の骨組みに取り付けられ、合成樹脂フィルムが緊締バンドを介して固定される。
【0014】
緊締バンドは合成樹脂製の紐状体や平板状の可撓性素材であり、例えば、合成樹脂フィルムがすでに挿入されたフィルム止め部材の定着溝内に挿入されて、その上から波形線状のスプリングなどを介して配設して止着される。
【0015】
獣害防止用バンド係止具に適用される金属線材は、バネ鋼線やその他の金属などからなり、その直径が約0.5〜5mm、長さが100〜1000mmの線材である。その両端部には端部側をコイル状に巻き込んで形成させた上部係止部と、パイプ鋼線などの水平支持部に係止される下部係止部とが設けられている。
【0016】
金属線材の長さすなわち獣害防御間隔は、狸や兎が地上から噛み付くことのできる高さの範囲に設定される。例えば兎の場合には100〜500mmの範囲、狸の場合には200〜600mmの範囲とすることが好ましい。
【0017】
上部係止部は、例えばそのコイル状の直径が約5〜50mmとなるように2〜5回程度カーブさせて、線材間をほぼ密着するように形成させた部分であり、緊締バンドの端部をこのコイル状の部分に挿入して巻き込むことで固定するようになっている。こうして、従来どおりの固定も可能であるが、ワンタッチ式に着脱できる固定方法もとれるように設計してあり、その取り付けと着脱が簡単にできる。しかも取り付け後のバンドのゆるみ等については構造がらせん状に巻いてあるためバンドの締め込み圧ではさまれたバンドが加圧されるために、バンドが抜けるのを防ぐ構造になっており風圧等でバンドの固定された上部からの圧が加わりさらにバンドの固定部分を加圧方式にしてある。
【0018】
下部係止部は、金属線材の先端側が螺旋状やフック状に形成されたビニールハウス周囲に設けられた水平支持部に係止される部分である。なお、既存の施設に取り付けられているバンド止め材(水平支持部)の形態は、鋼線(ヨリ線)やパイプ類(サイズは様々)などと多彩であり、下部係止部にはU字状の金具を併用して径の違うパイプにも対応できるようにしている。
【0019】
また、本発明の獣害防止用バンド係止具は、前記下部係止部が前記金属線材の伸長する他端側に傾斜角度を有して螺旋状に設けられ前記水平支持部に絡着されることもできる。これによって、水平支持部が3本鋼より線・針金等からなり既設ハウスに張ってあるものにワンタッチ方式で固定でき、しかも立ち上がり部分と固定部分を傾斜をつけて、上部係止部に緊締バンドを取り付けたときに下部に加圧がかかるようにして取り付け後における横ずれを有効に防止することができる。
【0020】
なお、金属線の伸長方向に対する螺旋状部分の傾斜角度としては15〜45度の範囲とする。この傾斜角度が15度より少ないと、、緊締バンドを取り付けたときの張力が過大となってすっぽ抜けを生じやすくなる。逆に傾斜角度が45度を超えると緊張力を維持することができず、取り付け位置のずれを生じやすくなるので好ましくない。
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る獣害防止用バンド係止具の好適な実施例について説明する。
(実施例1)
図1は実施例1の獣害防止用バンド係止具が適用されるビニールハウスの正面図であり、図2はその一部拡大側面図である。
【0022】
図1及び図2において、10は実施例1の獣害防止用バンド係止具、11は蒲鉾状に形成されたビニールハウス、12はビニールハウス11に被覆される合成樹脂フィルム、13は合成樹脂フィルム12上に張設される緊締バンド、14は緊締バンド13の下端が係止されるヨリ鋼線からなりビニールハウス11の周囲下部に張設された水平支持部、15は水平支持部15を固定するための地上に穿設されたアンカー部材である。
【0023】
ビニールハウス11は複数のハウス構築材16を適宜個所で緊締具により連結して構築されている。これらハウス構築材16を組み合わせて構築した構造物の外側にフィルム止め部材がボルトナットなどの係止具を介して取り付けられる。そして、ハウス形成用の合成樹脂フィルム12がフィルム止め部材のフィルム定着溝に弾性係止部材とともに装着固定されて被覆されるようになっている。
【0024】
ビニールハウス11に被覆される合成樹脂フィルム12は、所謂農業用フィルムであり、塩化ビニル系のフィルム(塩ビ系フィルム)や、ポリオレフィン系のフィルム(PO系フィルム)が好適に用いられる。ここでは塩ビ系フィルムよりも薄くて伸縮しにくく、かつ軽量でフィルム張りが楽であるPO系フィルムを用いている。
【0025】
合成樹脂フィルム12の構造物への被覆は、縦配置したハウス構築材16間に、フィルム止め部材を架設しておき、このフィルム止め部材に形成されたフィルム定着溝に合成樹脂フィルム12の一部を挿入するとともに、弾性係止部材となる波形線状のスプリングを装着して張設するようにしている。そして、張設した合成樹脂フィルム12が風などの力を受けてフィルム止め部材から外れてしまうことがないように、緊締バンド13を合成樹脂フィルム12の上から適宜箇所に張設している。
【0026】
獣害防止用バンド係止具10は、図3〜図5に示すようにビニールハウス11に被覆シートである合成樹脂フィルム12などを固定するための緊締バンド13の基端部とビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部15との間を所定の獣害防御間隔、例えば約100〜600mmの間隔を有して連結するための金属線材10aからなる。そして、金属線材10aのそれぞれ両端側には、緊締バンド13の基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部10bと、金属線材10aの伸長する他端側にその全体が約45度の傾斜角度を有して螺旋状に設けられ水平支持部15に絡着される下部係止部10cとが設けられている。
【0027】
金属線材10aは、狸や兎などによって噛み切られることのない直径が約2mmのバネ鋼線からなり、その上部係止部10bと下部係止部10cとの長さが獣害防御間隔となるように設定されている。上部係止部10bは図示するように端部が直径約10〜30mmで形成されており、そのコイル状の中心方向が伸長する金属線材10aに対してほぼ直角となるようになっている。このコイル状の部分に緊締バンド13の端部を挿入して巻き込むことで固定されるようにしている。
【0028】
下部係止部10cは、ビニールハウス11の周囲下部に水平方向に配置されるヨリ鋼線などの水平支持部15に係止される部分であり、その装着時においては図6(a)に示すように、所定の傾斜角度に沿って、水平支持部15がコイル状の中に挿入される。そして、図6(b)に示すように上部係止部10bをその上方に引き上げるようにして張力を付加することで、弾性的に下部係止部10cが屈曲して、水平支持部15に絡着されて固定されるようになっている。
【0029】
近年、施設園芸の中でも塩化ビニール、PO類を被覆材として使用する施設では被覆材を風等から保護するために、ハウスバンド(商品名)を施設および地面に固定されたハイプおよび鋼線(バンド止め材)に結び、被覆材の飛散、破損を防ぐ方法がとられている。
【0030】
こうした場合に、獣害防止用バンド係止具10はビニールハウスなどの施設園芸への動物被害を防止するための部品として好適に使用することができ、このハウスバンドをうさぎ、たぬき等が噛み切ってしまい毎日見回り補修しなければならないような獣害の防止を図ることができる。すなわち、ビニールハウス11の地上部から狸などの届かない位置に加害不可能な獣害防止用バンド係止具10を取り付け、それにハウスバンドなどの緊締バンド13を固定することによって獣害を未然に防ぐことができるようになっている。
(実施例2)
図7は実施例2に係る獣害防止用バンド係止具の斜視図である。
【0031】
図7において、20はビニールハウス11に適用される実施例2の獣害防止用バンド係止具、21はビニールハウス11の合成樹脂フィルム12上に張設される緊締バンド13下端が係止されるパイプ鋼管かなる水平支持部、22は水平支持部21にフック状に形成された獣害防止用バンド係止具20の下端を係止固定するためのU字状係止部材である。
【0032】
獣害防止用バンド係止具20は図示するように、緊締バンド13の基端部とビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部21との間を狸などに対応した獣害防御間隔で連結するための金属線材20aと、金属線材20aの上端に配置され緊締バンド13の基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部20bと、金属線材20aの伸長する他端側にフック状に設けられU字状係止部22を介して水平支持部21に係止される下部係止部20cとからなっている。
【0033】
実施例2の獣害防止用バンド係止具20は、その下部係止部20cが単に折り曲げるだけのフック状に形成されているので、実施例1のものに較べてその製造が容易でありコスト面で優れている。また、パイプ状に形成された水平支持部21にU字状係止部材22を介して下部係止部20cを容易に着脱することができる利点を有している。
【0034】
以上説明したように本発明の獣害防止用バンド係止具は、緊締バンドの基端部とビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部との間に所定の獣害防御間隔で連結する金属線材を設けることによって、鋭い牙を持った狸や兎などの獣に対して噛み切られることのないようにしたものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲である。例えば、本実施形態では金属線材としてバネ鋼材を用いたが、この鋼材表面に狸や兎などが忌避する辛味成分などを含有させた合成樹脂で被覆して、その獣害防止効果をさらに高めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の獣害防止用バンド係止具が適用されるビニールハウスの正面図である。
【図2】同ビニールハウスの一部拡大側面図である。
【図3】獣害防止用バンド係止具の斜視図である。
【図4】獣害防止用バンド係止具の斜視図である。
【図5】獣害防止用バンド係止具の斜視図である。
【図6】獣害防止用バンド係止具の使用形態の説明図である。
【図7】実施例2の獣害防止用バンド係止具の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 実施例1の獣害防止用バンド係止具
10a 金属線材
10b 上部係止部
10c 下部係止部
11 ビニールハウス
12 合成樹脂フィルム(被覆シート)
13 緊締バンド
14 水平支持部
15 アンカー部材
16 ハウス構築材
20 実施例2の獣害防止用バンド係止具
20a 金属線材
20b 上部係止部
20c 下部係止部
21 水平支持部
22 U字状係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスに被覆シートを固定するための合成樹脂材からなる緊締バンドの基端部と前記ビニールハウス下部周囲に水平配置される水平支持部との間を所定の獣害防御間隔を有して連結する金属線材と、
前記金属線材の一端に設けられ前記緊締バンドの基端部が結束されるコイル状に形成された上部係止部と、前記金属線材の伸長する他端に設けられ前記水平支持部に係止される下部係止部と、を有することを特徴とする獣害防止用バンド係止具。
【請求項2】
前記下部係止部が前記金属線材の伸長する他端側に傾斜角度を有して螺旋状に設けられ前記水平支持部に絡着されることを特徴とする請求項1記載の獣害防止用バンド係止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−330188(P2007−330188A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167229(P2006−167229)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】