説明

玄関における庇の設計方法および庇

【課題】 建築物の玄関設計に際し、外装材における働き幅の整数倍した高さ方向における接合部位を、庇等の設置位置を決定することで、効率的な設計や施工が可能で、かつ生じる破材を最小度に抑えることができる環境にも優しい玄関における庇の設計方法と、ローコストで構築できる庇を提供する。
【解決手段】 構造躯体を形成する外壁に、基礎2に敷設された土台3から胴差7又は軒桁9の高さ以内でその高さと所要の間口幅で玄関6を設計し、前記玄関6の外側に、前記基礎2の表面と一致させるようにポーチ14を配置し、前記土台3の水切り12から順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材13の働き幅の整数倍した高さ位置を指標として、設置しようとする庇又はパラペット15もしくはバルコニーの下限位置もしくは上限位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイディングと呼ばれる外装材を使用する木造建築における、特に玄関の庇と、その庇の構築方法に関するものである。
より具体的には、建物の荷重が、梁や柱、耐力壁などで分担する木造軸組構法に好適に使用することのできる庇と、その設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱と梁で構造体を構成する木造軸組構法(以下、在来工法とも言う。)においては、一般的には、施主がどのような外観デザイン、間取りの戸建て住宅を建てたいかを、工務店などのハウジングメーカなどがあらかじめ準備した、住宅の模型見本やカタログなどの資料を参照しながら具体的な希望を伝え、建築家やハウジングメーカなどが作成した設計図に基づき、さらなる具体案が検討される。
その際、住宅(建築物)の設計は、建設地の用途地域から建物の高さ、敷地境界からの後退、建ペイ率と容積から、建築物の建築可能な最大空間が求められる。
【0003】
これら建築物の玄関は、通常建物の有効利用の観点から玄関の外側にポーチを設定し、人の出入りの利便性、すなわち雨に濡れないように、玄関の外側のポーチ上部に庇やパラペット、さらにはベランダなどが設定される。
また、玄関の設計に際しては、ポーチ部分を躯体構造内に配置し、ポーチの上部を2階の床面で覆い、庇を兼ねるように設計される場合もある。
【0004】
かかる玄関の設計に際し、ポーチを躯体構造の外側に設けて、その上部を庇で覆う場合は、ドアの高さから設定して、サッシメーカから販売されている金属製の庇が使用されるが、建築物のデザイン性を考えると、バランスよくマッチするとは限らない。
【0005】
また、ポーチ部分を躯体構造内に配置する場合には、外装材の凸部役物が増え、コストアップの要因になるケースもある。
さらに、単独のベランダやパラペットを設ける場合には、一般的に2階の床梁の高さから持ち出して高さを設定するため、必要以上の梁成でコストアップの要因にもなるとともに、玄関のポーチとしてはやや圧迫感がある高さとなっている。
【0006】
以下、一般的な、庇の従来例を説明する。
例えば、特開平05−093447号公報(特許文献1)では、取付作業の容易で、しかも断面形状の異なる庇であっても、異なる設計のユニット外壁を必要としないプレハブ建物用の玄関ポーチ庇が開示されている。
【0007】
この玄関ポーチ庇は、外壁の玄関ドア枠上方に、外壁に表面をほぼ一致させて取り付けられるとともに、その上下両縁部に水切りを有する庇の背面パネルと、背面にバックアップ材が設けられ、このバックアップ材において、前記背面パネルに固定される庇本体とを具えたものであって、前記両水切り先端間の間隔を、前記バックアップ材の高さより大としたものである。
【0008】
また、特開平06−057897号公報(特許文献2)では、屋根材単体で十分な剛性を確保できるようにして、部品構成の単純化,生産性の向上およびコスト低減をはかった玄関ポーチの庇構造が提案されている。
【0009】
この玄関ポーチの庇構造は、玄関ポーチの上方に配置される庇構造を成す屋根材を、ペンタイト材を一枚取りすることにより一体物として形成するとともに、前記屋根材の傾斜屋根面の下面側に、補強用アングル材を溶接により取り付けたものである。
【0010】
また、特開平10−148018号公報(特許文献3)では、高さ調整が可能となって容易に正常な姿勢を得ることができ、かつ、その姿勢を容易に維持できるようになる建物の庇の取り付け構造およびその庇の設置方法が提案されている。
【0011】
この建物の庇の設置方法は、建物のポーチにおける庇を支柱で支持する建物の庇の設置方法であって、前記支柱を、支柱本体と、この支柱本体の下端に取り付けられネジ構造で伸縮可能となった下端部材とを含んで構成し、この支柱を、前記庇とポーチの下部間に設置した後、前記下端部材のネジ構造を調整して前記支柱の高さを確定するとともに、この支柱の前記下端部材を固着材でポーチの下部に固定するものである。
【0012】
さらに、特開2010−13875号公報(特許文献4)では、住宅の外観意匠を格段に高めることができる庇構造として、住宅本体における一階外壁と二階外壁の境界部分から張り出した庇群を同一高さレベルで一体的に連続させてなる連続庇を、前記住宅本体における玄関側の正面全体を含めた少なくとも3方向の面に跨って配置したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平05−093447号公報
【特許文献2】特開平06−057897号公報
【特許文献3】特開平10−148018号公報
【特許文献4】特開2010−13875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
建築物における玄関は、先に述べたように、一般的に出入りの利便性を勘案して、道路側に面する躯体構造の外壁に設けられるものであって、多くの場合、設置位置が決定されると、玄関の広さや明るさ、扉のデザインなどは施主の意向が最優先されるものの、どのようにして躯体構造の外壁に玄関の開口部を設けるかの設計は、ハウジングメーカや建築士に任されることが多い。
【0015】
そのため、ハウジングメーカーや建築士は、建築費用を考慮しながら、可能な限りデザイン性を損なうことなく、経費を抑えることができる方法で玄関を設計し、かつ施主の要望に基づいて、外側のポーチ上に庇やパラペット、ベランダなどを設けることが一般的である。
【0016】
なかでも、躯体構造の外壁は、建築物全体のデザイン性に大きな影響を与えるものであるが、掃き出し窓や腰窓、特に、玄関やベランダなど位置によっては、外壁材を施工する際、外壁材に無駄が生じ易く、かつ施工が複雑化するため、相対的に建築費のコストアップを招来し、生じる破材は環境破壊をも惹起するおそれがある。
【0017】
また、戸建ての住宅は、施主が「終の住処」と考えて構築することが多いため、その設計や施工は、圧倒的に施主の意向が尊重される。
そのため、施工が高コストになるとともに、使用する建築材料には切欠きなどの多くの材料ロスが生じ易く、建築費のコストダウン化を阻害する大きな要因となっていた。
【0018】
さらに、前記の切欠きなどで生じたロス材料は、有効な利用方法がなく、その全てが産業廃棄物として処理されるため、処理に要する費用は施主および/又は工務店が負担せざるを得ないのが現状である。
【0019】
この発明はかかる現状に鑑み、玄関の外側上方に配置される庇、パラペット(parapet)さらにはベランダ(以下、これらを総称して「庇等」という。)などの設置位置を、比較的コストの高い外装材を、最大限に有効利用する観点から設計する方法を鋭意検討の結果した。
【0020】
その結果、敷地の利用範囲を規定する法的要件と合わせて、使用する外装材の働き幅の整数倍した高さ方向における接合部位における境界面を、ポーチの上方に設ける庇等の設置位置の上限もしくは下限の指標とすることによって、効率的な設計と施工を高めるとともに、使用する部材のコストダウンを図ることのできる玄関における庇およびその設計方法を見出したものである。
【0021】
すなわち、この発明は、建築物の玄関設計に際し、比較的高いコストを占めるサイディングと称される外装材における働き幅(実質的な有効幅)の整数倍した、高さ方向における接合部位(境界面)を、庇等の設置位置を決定するための指標とし、効率的な設計や施工が可能で、かつ生じる破材を最小度に抑えることができる環境にも優しい玄関における庇の設計方法と、ローコストで構築できる庇を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
構造躯体を形成する外壁に、基礎に敷設された土台から胴差又は軒桁の高さ以内でその高さと所要の間口幅で玄関が設計されるとともに、
前記玄関の外側に、前記基礎の表面と一致させるようにポーチが配置され、
前記土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置を指標として、設置しようとする庇又はパラペットもしくはバルコニーの下限位置もしくは上限位置を決定すること
を特徴とする玄関における庇の設計方法である。
【0023】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1における玄関における庇の設計方法において、
前記設置せんとする庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その下限位置が前記外装材の働き幅の下縁位置で、上限位置が前記外装材の働き幅の上縁位置であって、かついずれも前記玄関の高さ以上の位置であること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1における玄関における庇の設計方法において、
前記設置せんとする庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その基端側は、いずれも構造躯体を形成する外壁に固定され、先端側は、いずれも前記ポーチの先端側の両端部に配置される支柱の上端部で支持されるものであること
を特徴とするものである。
【0025】
さらに、この発明の請求項4に記載の発明は、
構造躯体を形成する外壁に、基礎に敷設された土台から胴差又は軒桁の高さ以内でその高さと所要幅の間口で玄関が形成されるとともに、
前記玄関の外側に、前記基礎の表面と一致させるようにポーチが配置され、
前記玄関の外側上部に配置される庇又はパラペットもしくはバルコニーの下限位置もしくは上限位置が、前記土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置における前記外装材の働き幅の下縁位置もしくは前記外装材の働き幅の上縁位置と一致していること
を特徴とする玄関における庇である。
【0026】
さらにまた、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項4における玄関における庇において、
前記設置される庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その基端側は、いずれも構造躯体を形成する外壁に固定され、先端側は、いずれも前記ポーチの先端側の両端部に配置される支柱の上端部で支持されるものであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明にかかる玄関における庇の設計方法は、玄関の外側に配置されるポーチの上方に、庇等を設置するに際し、設置しようとする庇等の下限位置もしくは上限位置を、土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置を指標として決定するため、庇等の外壁への設置位置をあらかじめ容易に設定することができる。
【0028】
その際、下限位置を玄関の上端部から任意の位置ではなく、使用する外装材の働き幅の整数倍とした高さ位置とすることによって、玄関の上端部に対して庇等を圧迫感のない位置に設定することが可能となるとともに、デザイン性に優れた庇等の取付位置を容易に設定することができる。
【0029】
同時に、使用する外装材を外壁に装着させる場合、庇等の設置位置があらかじめ設計されているため、外装材の施工をきわめて簡単かつ容易に行うことができ、使用する外装材に無駄が生じないので、相対的に建築費を引き下げることが可能になっている。
【0030】
また、使用する外装材に無駄や破材が生じることを最小限に抑えることが可能となるので、産業廃棄物としての破材が減少し、破材による環境破壊も防止することができる。
【0031】
さらに、この発明の玄関の庇は、使用する外装材を外壁に装着させる場合、庇等の設置位置があらかじめ設計されているため、外装材の施工をきわめて簡単かつ容易に行うことができ、使用する外装材に無駄が生じないので、相対的に建築費を引き下げることが可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明にかかる玄関の庇をパラペットとした例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明にかかる庇の設計方法は、在来工法による建築物の構築に好適に利用することが可能なもので、平屋でも2階建て、あるいはそれ以上の高さであってもよい。
【0034】
前記建築物の設計に際しては、建設予定地の用途地域から建物の高さや敷地境界からの後退、建ペイ率と容積から、建物の建築可能な最大空間を求め、建築物の高さを、基礎に敷設された土台に設けられる床面上に配置される内装下地材の高さ寸法から、前記土台から胴差および/または軒桁の高さを設定することが好ましい。
【0035】
なお、この内装下地材による構造躯体の高さ設計においては、前記内装下地材の上端部が、配置される胴差および/または軒桁の下端部とオーバーラップするものである。
また、前記内装下地材の上端部は、前記軒桁の上端部から超えない範囲内にある。
【0036】
また、前記建築物の設計においては、前記玄関の外側に配置されるポーチの上方に配置される庇等の下限位置もしくは上限位置を、前記土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外側に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置を指標として決定するものである。
なお、前記指標は、建築物に設ける腰窓や玄関などの下限位置もしくは上限位置を決定するに際しても、用いることができるものである。
【0037】
前記玄関の外側に形成されるポーチは、その表面が、前記基礎の表面と面一となるように地面上に形成されるもので、その間口や広さについては特段の制限はない。
【0038】
かかるポーチの上方に設けられる庇等は、構造躯体の外壁に基端部を固定する、ポーチに対して水平な、あるいは一定の勾配を有するものであっても、パラペットやベランダの底面部を実質的に庇として利用することによって、建築物の外観のデザイン性を高めることができる。
【0039】
その際、庇等の先端部を、玄関の外側に配置されたポーチ上に、所定の間隔を存して配置された一対の支柱の上端部で支持することによって、庇等を安定した状態で固定することが可能である。
また、これら支柱を利用して、前記玄関と相対する部分を外部から遮蔽する壁を設けることによって、住人のプライバシーを確保することもできる。
【0040】
前記サイディングの外壁を構成する外装材は、建築物の外壁として使用される不燃性ないし難燃性のパネル状の部材である。
一般的には、縦×横×厚さが規定されているが、この発明においては素材について特段の制限がないので、いずれの素材であっても使用することができる。
【0041】
かかる外装材は、外壁を構成するため、上下および左右方向において隣接する外装材と一体化させるため、上縁および下縁に連結させるための連結部が形成されている。
この発明においては、外観上の外装材の働き幅(表面に顕出する有効面積)の上縁部と下縁部間の高さを外装材の高さとしている。
【0042】
この発明においては、前記外装材の高さ方向における働き幅の上縁部又は下縁部を指標として、前記ポーチ上部に設ける庇等の設置位置を決めるもので、外装材は高さ方向における整数倍を基準とするものである。
【0043】
換言すると、上下方向に敷設される外装材の整数倍に位置にある外装材の働き幅の、上縁部又は下縁部を指標(基準線)として、前記庇等の設置位置の上限位置又は下限位置を算出するものである。
【0044】
外壁材の切欠きの多くは、間取りや内装の設計に従属して外壁への貫通部を収めるためになされるので、こうした外装材の切りかきを最小限にするために、前記手段を採用して建築物を設計、施工することで、従来の問題点を解決することができる。
【実施例1】
【0045】
以下、この発明にかかる庇の設計を、在来工法による2階建ての建築物1で、パラペットの例に基づいて具体的に説明する。
【0046】
図1において、2は所定の敷地内には設けられた平面ほぼ長方形状の基礎2で、この基礎2上に敷設された土台3には床パネル4が、さらにその上面全面にはフローリング材5が敷設される。
また、図中、6は構造躯体の外壁部に開口された玄関、7は2階の床面を支える胴差、8は2階に設けられた腰窓、9は軒桁、10はこの軒桁9に支持された屋根を示す。
【0047】
概略前記構造を有する建築物1において、構造躯体の外壁部には、前記土台3に付設される水切り12から、外壁部の上方および横方向に向かって、働き幅が455mm×長さ3,030mmからなる計12枚の外装材13a〜13lによって外壁全面を覆うように設計されている。
その際、前記外装材13aの下縁部が水切り12の高さに位置し、外装材13lの上縁部が前記軒天井11の高さ位置となるよう設計されている。
【0048】
かかる建築物1において、前記玄関6の外側にはポーチ14が配置される。
このポーチ14の上面は、前記基礎2の上面と面一となるように形成されるもので、ポーチ14の奥行きや幅は、前記玄関6の開口部の大きさに合わせて設計される。
【0049】
このポーチ14の上方には、通常、玄関6を出入りする人が雨などに濡れることがないように、玄関6の上方の構造躯体にパラペット15を設置するが、通常は、建築物1の胴差7を外側に延出させてパラペットを構築するが、この場合、玄関6の上部と前記胴差7との距離がきわめて短いため、玄関6が圧迫された状態となるとともに、デザイン性も阻害されることになる。
【0050】
そこで、この発明においては、構造躯体の外壁部に上下方向に装着される外装材13を利用して、前記パラペット15の設置位置、この実施例では設置されるパラペット15の上限位置を決定して構築している。
【0051】
具体的には、働き幅が455mmの外装材13の下から9枚目の外装材13iと同10枚目の外装材13jの接合部(455×9=4095mmの高さ)を、設置しようとするパラペット15の上限位置と定めることによって、パラペット15を設計・施工したものである。
なお、この場合のパラペット15の下限位置は、5枚目の外装材13eと6枚目の外装材13fの接合部となっているが、パラペット自体、通常900mm前後の高さであるため、パラペットの場合は、上限位置であっても下限位置であってもさほど大きな相違は生じない。
【0052】
また、図中、16は、パラペット15を構築するための胴差、17は同梁を示し、18は前記梁17の下方に設けられたモエンサイディングと称される装飾用の天井である。
【0053】
この実施例においては、庇をパラペットとすることで説明したが、ベランダであってもよいことは当然である。
ベランダの場合も、その上限位置を、前記外装材13の下から9枚目の外装材13iと同10枚目の外装材13jの接合部(455×9=4095mmの高さ)とすることができる。
なお、この場合、建築物1の胴差7に位置に梁を設けてベランダの底面部を支持させることができるが、玄関6の上端部との間隔が狭くなるので、パラペットの場合と比較すると、若干開放感に差異が生じる。
【0054】
前記のパラペットの設計手法(矩計/カナバカリ)によれば、庇等の取付位置の上限もしくは下限位置を、外装材13の高さ方向における働き幅によって自由に選択して設計し構築することができる。
したがって、高さ方向における外装材において、切欠きを要する外装材は、特定の部位の外装材のみで済ませることができる。
【0055】
前記設計で得られるパラペット15は、その前端部を、前記玄関6の外側に形成されたポーチ14の前縁部に、所要間隔を存して立設された柱19で固定保持される。
なお、前記柱19は、玄関6のポーチ14の前面幅とほぼ等しい1枚の壁部材(図示せず)に代えることも可能である。
さらに、柱19を使用する場合には、柱19間を壁部材で閉塞してもよく、そうすることで玄関6を開放したとき、内部を外界から遮蔽してプライバシーを保護することが可能となる。
【0056】
以上述べたように、この実施例における矩計によれば、玄関6の外側に配置されるポーチ14の上方に設置する庇等の設置位置の上限もしくは下限位置を、簡単かつ容易に設計し、施工することができ、使用する外装材を切り欠くことによって生じる破材を最小限度に抑えることが可能となった。
【0057】
なお、前記の実施例は、前記矩計手法を用いた外装材の高さ方向における接合部位の境界面を指標とした、庇等の配置の説明であって、正面から見た場合は、外装材の幅方向での各部位の収まりの必要性から、外装材の幅方向での切欠きを要することが有り得るものである。
【0058】
しかしながら、所定の働き幅を有する外装材の、上下方向における接合部位の境界面が水平方向に設定されるので、庇等所定の幅を有する部位については、その左右端辺に当接して外装材を左右方向に張り始めることができるため、全体での切りかき作業は大幅に縮減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明にかかる庇等の設計方法および庇等は、構造躯体の外壁を構成する所定の働き幅を有する外装材の整数倍の、上下方向における接合部位の境界面を指標として、その上限もしくは下限位置を定める矩計手法によるため、在来工法による建築物以外の建築物にも応用することができるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 建築物
2 基礎
3 土台
4 床パネル
5 フローリング
6 玄関
7 胴差
8 腰窓
9 軒桁
10 屋根
11 軒天井
12 水切り
13 外装材
14 ポーチ
15 パラペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体を形成する外壁に、基礎に敷設された土台から胴差又は軒桁の高さ以内でその高さと所要の間口幅で玄関が設計されるとともに、
前記玄関の外側に、前記基礎の表面と一致させるようにポーチが配置され、
前記土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置を指標として、設置しようとする庇又はパラペットもしくはバルコニーの下限位置もしくは上限位置を決定すること
を特徴とする玄関における庇の設計方法。
【請求項2】
前記設置せんとする庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その下限位置が前記外装材の働き幅の下縁位置で、上限位置が前記外装材の働き幅の上縁位置であって、かついずれも前記玄関の高さ以上の位置であること
を特徴とする請求項1における玄関における庇の設計方法。
【請求項3】
前記設置せんとする庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その基端側は、いずれも構造躯体を形成する外壁に固定され、先端側は、いずれも前記ポーチの先端側の両端部に配置される支柱の上端部で支持されるものであること
を特徴とする請求項1における玄関における庇の設計方法。
【請求項4】
構造躯体を形成する外壁に、基礎に敷設された土台から胴差又は軒桁の高さ以内でその高さと所要幅の間口で玄関が形成されるとともに、
前記玄関の外側に、前記基礎の表面と一致させるようにポーチが配置され、
前記玄関の外側上部に配置される庇又はパラペットもしくはバルコニーの下限位置もしくは上限位置が、前記土台の水切りから順次上方に向かって、前記構造躯体の外壁に施工される外装材の働き幅の整数倍した高さ位置における前記外装材の働き幅の下縁位置もしくは前記外装材の働き幅の上縁位置と一致していること
を特徴とする玄関における庇。
【請求項5】
前記設置される庇又はパラペットもしくはバルコニーは、
その基端側は、いずれも構造躯体を形成する外壁に固定され、先端側は、いずれも前記ポーチの先端側の両端部に配置される支柱の上端部で支持されるものであること
を特徴とする請求項4における玄関における庇。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1921(P2012−1921A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135969(P2010−135969)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(395021066)すてきナイスグループ 株式会社 (23)