説明

玄関収納家具

【課題】 玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成しつつ、玄関ホールを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具を点灯させることのない玄関収納家具を提供することを課題とする。
【解決手段】 玄関収納家具1を、玄関ドアD側の背の低いカウンター付きベースキャビネット13と、玄関ホールH側の背の高いサイドキャビネット14と、これらの上方に配設された左右のウォールキャビネット15,15とで、正面視でコ字状に構成する。そして、人体検知器16aと照明器具16bとが一体化された人体検知器付き照明器具16を、左側のウォールキャビネット15の下面で、かつサイドキャビネット14寄りに取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の玄関に設置される収納家具に関し、家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等に設置される収納家具には、人体を検知して照明器具を点灯させる人体検知器を備えたものがあり、そのような収納家具として例えば特許文献1に開示のものが例示される。
【0003】
すなわち、特許文献1には、下部の調理台と上部の天袋とを有し、天袋の前面上端に人体を検知する人体検知器が、また、天袋の下面に照明器具が備えられた厨房設備が開示されており、前記検知器が人体を検知しているときにのみ前記照明器具が点灯して調理台上を照らすようになっている。これにより、照明器具の点灯や消灯が自動化されると共に、必要時にのみ照明器具を点灯させるため消費電力が節約されるようになる。
【0004】
【特許文献1】実開昭63−133129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、履物や傘等を収納するため、下方のベースキャビネットやサイドキャビネット、上方のウォールキャビネット等を有する収納家具が、玄関の側壁面に沿って土間と玄関ホールとに跨って設置されることがあり、これに人体を検知したときに照明器具を点灯させる人体検知器を備えて、玄関を出入りする人の足元を良好に照らした上で、前述した厨房設備と同様に照明器具の点灯や消灯の自動化と消費電力の節約とを図ることが考えられる。
【0006】
その場合に、この玄関収納家具に前記特許文献1に開示の人体検知器や照明器具の配設構造を適用すると、例えば図7に示すように、側壁面Wに沿って設置された玄関収納家具Aの前記天袋に相当するウォールキャビネットA1の前面上端に人体検知器A2を備えると共に、前記ウォールキャビネットA1の下面に照明器具A3を備えることになる。このような構成によれば、ドットを付して示すように前記人体検知器A2の検知エリアが広くなることから、矢印xで示すように玄関ドアDを開閉して出入りする人を検知して照明器具A3を点灯させて足元や土間Gと玄関ホールHとの段差を照らす等、快適な環境を生成するものの、矢印yで示すように玄関ホールHを通り過ぎるだけの人も検知して照明器具A3を点灯させるため、消費電力のさらなる節約を図る上で問題となる。
【0007】
この問題を解消するには、検知エリアのより狭い人体検知器の使用や、検知方向を玄関ホールH側よりも玄関ドアD側に向けた人体検知器の取り付けが考えられるが、前者では玄関ドアD側に検知することができないエリアが生じるという問題が、後者では余分に取付部品が必要となって作業も面倒であるばかりでなく、デザイン的にもすっきりしたものではなくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成しつつ、玄関ホールを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具を点灯させることのない玄関収納家具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、請求項1に記載の発明は、玄関の側壁面に沿って設置される収納家具であって、下方に空間が形成されるように設けられた上部キャビネットと、該キャビネットを挟んで玄関ドアと反対側に設けられた側部キャビネットとを有すると共に、人体を検知しているときに照明器具を点灯させる人体検知器が備えられており、前記人体検知器は、前記上部キャビネットの下面で、かつ前記側部キャビネット寄りに取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の玄関収納家具において、前記人体検知器は、前記上部キャビネット下面の前記側部キャビネット寄りで、かつ前記側壁面寄りに取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の玄関収納家具において、前記照明器具は、前記上部キャビネットに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の玄関収納家具において、前記照明器具は、ダウンライトタイプであることを特徴とする。
【0014】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4に記載の玄関収納家具において、前記人体検知器と前記照明器具とは、一体に備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、玄関ドア側には人体検知器の検知エリアを効果的に遮るものがないため、玄関ドア近傍や土間に及ぶ十分に広い検知エリアが確保される。したがって、玄関を出入りする人は人体検知器で確実に検知されて、点灯する照明器具によって足元が良好に照らされることになり、玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成することができる。
【0016】
一方、人体検知器は側部キャビネット寄りに取り付けられていることから、玄関ホール側への検知エリアの進入は側部キャビネットの側面で効果的に遮られるため、人体検知器が玄関ホールを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具を点灯させることがなくなり、消費電力のさらなる節約を図ることができる。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明によれば、人体検知器の設置場所が最適化されて、前記請求項1における効果が一層確実に得られる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によれば、人体検知器に加えて照明器具も玄関収納家具に備えられているので、この玄関収納家具の設置のみで施工が完結し、別途工事は不要である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、ダウンライトタイプの照明器具によって例えば必要箇所を集中的に照らしたり、あるいは柔らかいイメージで照らすことができ、単なる蛍光灯照明では得られない高級な雰囲気が醸し出される。
【0020】
そして、請求項5に記載の発明によれば、人体検知器と前記照明器具とを一体化することで、施工性とデザイン性とが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る玄関収納家具について説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、この玄関収納家具1は、側壁面Wに沿って、一対の木脚(手前側のみ図示)11,11と台輪12とを介して、土間Gと玄関ホールHとに跨って設置されており、図例上左側つまり玄関ドアD側の背の低いカウンター付きベースキャビネット13と、図例上右側つまり玄関ホールH側の背の高いサイドキャビネット14と、これらの上方に配設された左右のウォールキャビネット15,15とを有し、正面視でコ字状に構成されている。すなわち、下方のベースキャビネット13と上方左側のウォールキャビネット15との間に、空間Sが形成されている。
【0023】
また、各キャビネット13,14,15,15は前面が観音開き構造とされており、同程度の比較的幅広である。なお、ベースキャビネット13及びサイドキャビネット14は図示しないビスで台輪12に固定されている。さらに、各キャビネット13,14,15,15は隣接するもの同士図示しないビスで連結され、側壁面Wに同じく図示しないビスで固定されている。
【0024】
そして、左側のウォールキャビネット15の下面に、人体検知器16aと照明器具16bとが一体化された人体検知器付き照明器具16が取り付けられている。その場合の人体検知器付き照明器具16の取付位置は、左側のウォールキャビネット15の下面において、該ウォールキャビネット15の奥行き方向の中央で、かつサイドキャビネット14寄りの箇所である。この人体検知器付き照明器具16は、内蔵された人体検知器16aが人体を検知しているときに照明器具16bを点灯させるように構成されている。なお、人体検知器16aには、例えば赤外線センサ型で、検出距離が最大2〜5m程度のものが好ましく使用可能である。一方、照明器具16bはダウンライトタイプのものである。
【0025】
以上のように構成したことにより、図1及び図2に検知エリアをドットを付して示すように、玄関ドアD側には人体検知器16aの検知エリアを効果的に遮るものがないため、玄関ドアD近傍や土間Gに及ぶ十分に広い検知エリアが確保される。一方、人体検知器16aはサイドキャビネット14寄りに取り付けられていることから、玄関ホールH側への検知エリアの進入はサイドキャビネット14の側面で効果的に遮られる。
【0026】
したがって、矢印xや仮想線で示すように玄関を出入りする人は人体検知器16aで確実に検知されて、点灯する照明器具16bによって足元が良好に照らされることになり、玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成することができる。一方、人体検知器16aが矢印yや仮想線で示すように玄関ホールHを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具16bを点灯させることがなくなり、消費電力のさらなる節約を図ることができる。
【0027】
また、人体検知器16aに加えて照明器具16bも玄関収納家具1に備えられているので、この玄関収納家具1の設置のみで施工が完結し、別途工事は不要である。
【0028】
また、ダウンライトタイプの照明器具16bによって例えば必要箇所を集中的に照らしたり、あるいは柔らかいイメージで照らすことができ、単なる蛍光灯照明では得られない高級な雰囲気が醸し出される。
【0029】
そして、人体検知器16aと照明器具16bとが一体化された人体検知器付き照明器具16を使用することで、施工性とデザイン性とが向上する。
【0030】
なお、本発明は、具体的に詳述した前記実施の形態に限定されることはなく、本発明の趣旨に沿うものであればよい。
【0031】
例えば、人体検知器付き照明器具16の取付位置を、前記図2に示した位置から図3に示す位置に変更してもよい。この場合の人体検知器付き照明器具16の新たな取付位置は、左側のウォールキャビネット15の下面において、該ウォールキャビネット15の奥行き方向の奥方つまり側壁面W寄りで、かつさらに隣接する右側のウォールキャビネット15側つまりサイドキャビネット14側に寄せた箇所である。
【0032】
これによれば、人体検知器16aの設置場所が最適化されて、前記実施の形態における効果が一層確実に得られる。すなわち、検知エリアをドットを付して示すように、玄関ドアD近傍や土間Gに及ぶ広い検知エリアを確保しつつ、玄関ホールH側への検知エリアの進入をサイドキャビネット14の側面で一層効果的に遮ることができる。
【0033】
また、前記実施の形態では、人体検知器16aと照明器具16bとが一体化された人体検知器付き照明器具16を使用したが、両者を別体に備えてもよい。この場合、図4に示すように、人体検知器16aの取付箇所は、前記図3における人体検知器付き照明器具16と同様の箇所に設定される一方、照明器具16bの取付箇所は、左側のウォールキャビネット15の下面中央に設定されている。
【0034】
これによれば、人体検知器16aと照明器具16bとを別体としたことから、前記図3で示したと同様の検知エリアを確保した上で、照明器具16bの取付箇所は前記人体検知器16aと同じ箇所に限定されることはなくなって自由度が増すことになり、照明形態の多様化を図ることができるメリットがある。
【0035】
また、前記実施の形態における玄関収納家具1とは別なるキャビネット構成の玄関収納家具に、本発明を適用することができる。なお、特に混乱を招かない限り、前記実施の形態と共通する構成要素には同じ符号を付すことにする。
【0036】
図5及び図6に示すように、この場合の玄関収納家具2は、側壁面Wに沿って、一対の木脚(手前側のみ図示)11,11と台輪12とを介して、土間Gと玄関ホールHとに跨って設置されており、背の低いカウンター付きベースキャビネット13と、その左右両側の背の高いサイドキャビネット14A,14Bと、これらの上方に配設された左右のウォールキャビネット15,15とを有し、正面視でロ字状に構成されている。すなわち、下方のベースキャビネット13と左右のサイドキャビネット14A,14Bと上方のウォールキャビネット15,15とに囲まれて、空間Sが形成されている。
【0037】
また、ベースキャビネット13とウォールキャビネット15,15とは前面が観音開き構造とされており、比較的幅広である。一方、サイドキャビネット14A,14Bは片開き構造とされており、前記ベースキャビネット13やウォールキャビネット15,15の半分の比較的幅狭である。
【0038】
そして、右側のウォールキャビネット15の下面に、人体検知器16aと照明器具16bとが一体化された人体検知器付き照明器具16が取り付けられている。その場合の人体検知器付き照明器具16の取付位置は、右側のウォールキャビネット15の下面において、該ウォールキャビネット15の奥行き方向の奥方つまり側壁面W寄りで、かつ右側のサイドキャビネット14B側に寄せた箇所である。なお、この人体検知器付き照明器具16の構成は前述したものと同様であるので、説明を省略する。
【0039】
これによれば、人体検知器16aによる人体の検知エリアを図5及び図6にドットを付して示すように、玄関ドアD側では検知エリアは左側のサイドキャビネット14Aの側面でわずかに遮られるものの実質的には問題となるものではなく、依然として玄関ドアD近傍や土間Gに及ぶ十分に広い検知エリアが確保される。一方、玄関ホールH側への検知エリアの進入は、前記図1に示した構成の玄関収納家具1の場合に比較して幾分拡大するものの実質的には問題となるものではなく、右側のサイドキャビネット14Bの側面で効果的に遮られている。
【0040】
したがって、このようなキャビネット構成の玄関収納家具2においても、矢印xや仮想線で示すように玄関を出入りする人は人体検知器16aで確実に検知されて、点灯する照明器具16bによって足元が良好に照らされることになり、玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成することができる。一方、人体検知器16aが矢印yや仮想線で示すように玄関ホールHを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具16bを点灯させることがなくなり、消費電力のさらなる節約を図ることができる。
【0041】
また、前記実施の形態では、照明器具16bを人体検知器16aとは別体に備える場合、この照明器具16bは玄関収納家具1のウォールキャビネット15の下面に備えられていたが、例えば、ウォールキャビネット15の前面上端、カウンター付きベースキャビネット13の上面、サイドキャビネット14の空間Sに面する側面、あるいは天井面やいずれかの側壁面等に備えてもよく、任意である。
【0042】
そして、前記実施の形態では、玄関収納家具1はカウンター付きベースキャビネット13を有していたが、これを省略してもよく、さらに、玄関収納家具2はカウンター付きベースキャビネット13やサイドキャビネット14Aを有していたが、これらのいずれか一方または両方を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、玄関を出入りする人にとって快適な環境を確実に生成しつつ、玄関ホールを通り過ぎるだけの人を検知していたずらに照明器具を点灯させることのない玄関収納家具が提供される。すなわち、本発明は、住宅等の玄関に設置される収納家具に関し、家具の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る玄関収納家具を玄関に設置した状態を示す正面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】人体検知器付き照明器具の取付位置を変更した場合の図2に対応する平面図である。
【図4】人体検知器と照明器具とを別体に備えた場合の図3に対応する平面図である。
【図5】別なる構成の玄関収納家具を玄関に設置した状態を示す正面図である。
【図6】同じく平面図である。
【図7】従来の玄関収納家具における問題を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,2 玄関収納家具
14,14B サイドキャビネット(側部キャビネット)
15 ウォールキャビネット(上部キャビネット)
16 人体検知器付き照明器具
16a 人体検知器
16b 照明器具
D 玄関ドア
S 空間
W 側壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関の側壁面に沿って設置される収納家具であって、
下方に空間が形成されるように設けられた上部キャビネットと、
該キャビネットを挟んで玄関ドアと反対側に設けられた側部キャビネットとを有すると共に、
人体を検知しているときに照明器具を点灯させる人体検知器が備えられており、
前記人体検知器は、前記上部キャビネットの下面で、かつ前記側部キャビネット寄りに取り付けられていることを特徴とする玄関収納家具。
【請求項2】
請求項1に記載の玄関収納家具において、
前記人体検知器は、前記上部キャビネット下面の前記側部キャビネット寄りで、かつ前記側壁面寄りに取り付けられていることを特徴とする玄関収納家具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の玄関収納家具において、
前記照明器具は、前記上部キャビネットに取り付けられていることを特徴とする玄関収納家具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の玄関収納家具において、
前記照明器具は、ダウンライトタイプであることを特徴とする玄関収納家具。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の玄関収納家具において、
前記人体検知器と前記照明器具とは、一体に備えられていることを特徴とする玄関収納家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−192166(P2006−192166A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8589(P2005−8589)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】