説明

玄関用框の固定構造

【課題】隙間部のタイル貼りの作業を不要にし、框の固定を容易かつ確実に行えるようにした玄関用框の固定構造を提供する。
【解決手段】建物内の玄関の土間1と隣接する壁部(立上がり壁部3,側壁部4)の土間側に固定されると共に、表面側に係合受け部11,12;21が突設される第1,第2のベース部材10,20と、壁部(立上がり壁部,側壁部)の土間側部分を覆う垂直部32,41と該垂直部の下端に延在するスカート部33,42を有すると共に、裏面側に係合受け部と係合可能な係合部35,36;43が設けられる合成樹脂製の框部材30,40とを具備し、壁部(立上がり壁部,側壁部)に固定されたベース部材の係合受け部に、框部材の係合部を係合して框部材を固定すると共に、土間に敷設されるモルタル6内にスカート部の下端を埋入固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玄関用框の固定構造に関するもので、更に詳細には、例えば木造家屋等の建物内の玄関の土間と隣接する壁部に框を固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば木造家屋等の建物の玄関の縁の部分すなわち玄関の土間と隣接する床面の立上がり壁及び土間と隣接する側壁部分には上がり框や付け框等の框が設けられている。
【0003】
通常、框は木材によって形成されるため、框のために大きめの木材が必要となってコストが嵩むという問題がある。また、框が水に濡れることのないように、框の下端と土間との間には隙間を空けている。この場合、框下端と土間の隙間に床タイルを貼って納めている。
【0004】
ところで、近年では木製の框に代わって合成樹脂製の框が使用されている。この種の框として、玄関の立上がり壁を覆う垂直部を有する合成樹脂製の框材本体と、立上がり壁に固定されるとともに框材本体と係合することによって框材を固定させる框固定具本体とを備え、框材本体の裏面側に係合部を備え、框固定具本体には、框材本体の係合部と係合可能な固定体係合部を備えた框材固定構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1記載の構造によれば、接着剤を使用せずに框材本体を固定することができる。また、特許文献1記載の構造のものにおいては、固定を確実にするために、框材本体の水平部における反段差側の端部に、水平方向に連続して凹設させた欠設部を設け、その欠設部に頭部が隠れるような固定釘を用いて框材本体を固定している。
【特許文献1】特許第3142734号公報(特許請求の範囲、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、框材本体の下端の納まりには言及されておらず、框材本体の下端と土間との間には隙間が空けられている。そのため、框材本体と土間の隙間に床タイルを貼って納める必要がある。しかし、隙間の高さ寸法に合わせてタイルを切断してから貼る必要があり、手間のかかる作業となっている。
【0007】
また、特許文献1に記載のものにおいては、框材本体の固定を確実にするために、固定用釘を用いるために、框の固定作業に熟練を要すると共に、手間を要する懸念がある。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、框部材と土間との隙間を塞いでタイル貼りの作業を不要にし、框の固定を容易かつ確実に行えるようにした玄関用框の固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の玄関用框の固定構造は、建物内の玄関の土間と隣接する壁部に框を固定する構造であって、 上記壁部の上記土間側に固定されると共に、表面側に係合受け部が突設されるベース部材と、 上記壁部の上記土間側部分を覆う垂直部と該垂直部の下端に延在するスカート部を有すると共に、裏面側に上記係合受け部と係合可能な係合部が設けられる合成樹脂製の框部材とを具備し、 上記壁部に固定された上記ベース部材の係合受け部に、上記框部材の係合部を係合して框部材を固定すると共に、上記土間に敷設されるモルタル内に上記スカート部の下端を埋入固定する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成することにより、ベース部材の係合受け部に框部材の係合部を係合して框部材を固定すると共に、土間に敷設されるモルタル内にスカート部の下端を埋入固定するので、框部材の固定を、係合受け部と係合部との係合と、スカート部下端のモルタル内への埋入固定とで行うことができる。
【0011】
この発明において、上記ベース部材の係合受け部及び上記框部材の係合部に互いに接触する水平面部を設け、両水平面部間に接着剤を介在する方が好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、ベース部材の係合受け部と框部材の係合部との係合を更に強固にすることができる。
【0013】
また、この発明において、上記壁部の上部に位置する床部材の上面に固定部材によって板部材を固定し、上記ベース部材は、ピース状に形成されると共に、上記板部材の上面端部に載置される水平片を有し、上記框部材は、上記垂直部の上端に水平部を有し、上記水平部の下面と上記板部材の上面及び上記ベース部材の水平片の上面との間に接着剤を介在してもよい(請求項3)。
【0014】
このように構成することにより、ベース部材がピース状部材にて形成されるので、材料の削減が図れる。また、壁部の上部に位置する床部材の上面に固定部材例えば釘やビスをもって固定される板部材の上面にベース部材の水平片を載置し、框部材の水平部の下面と板部材の上面及びベース部材の水平片の上面との間に接着剤を介在して固定することにより、床部材を傷めることなく框部材を交換することができる。
【0015】
また、この発明において、上記框部材の垂直部とスカート部を分割し、上記垂直部の下端部に設けられた係止受け部と、上記スカート部の上端部に設けられた係止部とを係合可能に形成してもよい(請求項4)。
【0016】
このように構成することにより、框部材の垂直部と土間との隙間の寸法に応じたスカート部を垂直部に取り付けて上記隙間を塞ぐことができる。
【0017】
加えて、この発明において、上記框部材のスカート部の下端部を、モルタルとの接触面積を広くすべく凹凸状に形成する方が好ましい(請求項5)。
【0018】
このように構成することにより、モルタル内に埋入されるスカート部の下端部の凹凸状部とモルタルとの密着性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
この発明の玄関用框の固定構造は、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0020】
(1)請求項1記載の発明によれば、框部材の固定を、係合受け部と係合部との係合と、スカート部下端のモルタル内への埋入固定とで行うことができるので、タイル貼りの作業を不要にし、框の固定を容易かつ確実に行うことができる。
【0021】
(2)請求項2記載の発明によれば、ベース部材の係合受け部と框部材の係合部との係合を更に強固にすることができるので、上記(1)に加えて、更に框部材の固定を強固にすることができる。
【0022】
(3)請求項3記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更にベース部材の材料費の削減が図れると共に、土間に隣接する床面に傷をつけることなく、框部材の交換を可能にすることができる。
【0023】
(4)請求項4記載の発明によれば、框部材の垂直部と土間との隙間の寸法に応じたスカート部を垂直部に取り付けて上記隙間を塞ぐことができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に異なる寸法の玄関に対応した框の固定が可能となる。
【0024】
(5)請求項5記載の発明によれば、モルタル内に埋入されるスカート部の下端部の凹凸状部とモルタルとの密着性が向上するので、上記(1)〜(4)に加えて、更に框部材の固定を強固にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、この発明に係る玄関用框の固定構造の一例を示す断面斜視図、図2は、この発明における上がり框の固定構造を示す断面図、図3は、この発明における付け框の固定構造を示す断面図である。
【0027】
この発明における玄関用框は、建物内の玄関の土間1と隣接する床面2の立上がり壁部3に後述する上がり框用ベース部材10(以下に第1のベース部材10という)を介して固定される上がり框部材30(以下に第1の框部材30という)と、土間1と隣接する側壁部4に後述する付け框用ベース部材20(以下に第2のベース部材20という)を介して固定される付け框部材40(以下に第2の框部材40という)とを具備している。
【0028】
この場合、土間1は、床下地5の上面に敷設されるコンクリートからなるモルタル6と、モルタル6の表面に貼付されるタイル7とで構成されている。
【0029】
また、立上がり壁部3は、基礎8の上面に設置される大引9の側面に横設される壁部材9aと、大引9及び壁部材9aの上面に敷設される床部材2aの小口側端面とで形成されている。なお、床部材2aの表面には床面材2bが貼着されている。また、側壁部4は基礎8の上面に設置される大引9の上面に設置されている。なお、大引9の側面に壁部材9aを横設せずに立上がり壁部3や側壁部4を構成する場合もある。
【0030】
第1の框部材30は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)等の合成樹脂製の押出形材にて形成されている。この第1の框部材30は、図1,図2,図4及び図6に示すように、床部材2aの端部表面部分を覆う水平部31と、水平部31の端部から直角に折曲されて立上がり壁部3の土間側部分を覆う垂直部32と、垂直部32の下端から蹴込み部を設けて下方に延在するスカート部33とを有している。また、第1の框部材30の裏面側には、後述する第1のベース部材10に突設された第1及び第2の係合受け部11,12と係合可能な下方に向かって開口する水平底面部34(水平面部)を有する凹溝からなる第1及び第2の係合部35,36が設けられると共に、第1のベース部材10に設けられた当接受け部13に当接可能な当接凸部37が設けられている。
【0031】
なお、第1の係合部35の側面の水平底面部34の近傍位置には底部側に向かってテーパ状の係止段部38が設けられている(図4(b)参照)。また、水平部31における第1の係合部35と隣接する下面には、第1のベース部材10に設けられた屈曲部14の上部平坦面14aに接触する膨隆垂下部39aが設けられている。なお、水平部31の下面には、第1のベース部材10を固定する第1の固定ねじ50aの頭部との干渉を回避するための凹溝39bが設けられている。
【0032】
第1のベース部材10は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成されており、図1,図2,図4及び図7に示すように、床部材2aの端部表面部分に第1の固定ねじ50aによって固定される水平片15と、水平片15の一端から直角に垂下し、第2の固定ねじ50bによって壁部材9aに固定される垂直片16とを有し、垂直片16の上部側には外方に向かって突出する略コ字状の屈曲部14が突設され、この屈曲部の外側上端に起立する上面に水平面部11aを有する断面略逆U字状の第1の係合受け部11が突設されている。また、垂直片16の下部側には、垂直片16から外側に向かって水平に延びる突出片17の先端に起立する上面に水平面部12aを有する断面略逆U字状の第2の係合受け部12が突設されている。また、垂直片16の下端には、外側に向かって水平に延びる下部水平片18の先端から起立する当接受け部13が設けられている。なお、第1の係合受け部11の水平面部11aの一端には、第1の框部材30に設けられた第1の係合部35の係止段部38に係合可能な係止爪部19aが突設されている(図4(b)参照)。
【0033】
上記のように形成される第1の框部材30と第1のベース部材10を用いて第1の框部材30を立上がり壁部3に固定するには、まず、第1のベース部材10を固定ねじ50a,50bによって立上がり壁部3に固定する。この際、第1のベース部材10の第1及び第2の係合受け部11,12の水平面部11a,12aに接着剤60を塗布する(図7参照)。なお、第1のベース部材10を立上がり壁部3に固定する前に予め接着剤60を塗布してもよい。
【0034】
次に、第1の框部材30を第1のベース部材10に被せるようにして、第1の係合部35と第2の係合部36をそれぞれ第1のベース部材10の第1の係合受け部11と第2の係合受け部12に係合(嵌合)すると共に、両水平面部11a,12aと34間、すなわち第1のベース部材10の第1,第2の水平面部11a,12aと第1の框部材30の水平底面部34間に介在される接着剤60によって固定する。立上がり壁部3に固定された第1の框部材30のスカート部33の下端は、その後に土間1に敷設されるモルタル6内に埋入固定される。
【0035】
一方、第2の框部材40は、第1の框部材30と同様に例えばABS樹脂等の合成樹脂製の押出形材にて形成されている。この第2の框部材40は、図1,図3,図5及び図8に示すように、側壁部4の土間側部分を覆う垂直部41と、垂直部41の下端から下方に延在するスカート部42とを有している。また、第2の框部材40の裏面側には、後述する第2のベース部材20に突設された係合受け部21と係合可能な側方に向かって開口する上部水平面部43a(水平面部)を有する横凹溝からなる係合部43が設けられると共に、第2のベース部材20に設けられた垂直片22の表面に当接可能な3つの当接凸部46a,46b,46cが設けられている。
【0036】
なお、係合部43の下部水平面部43bの底部近傍位置には、底部側に向かってテーパ状の第1の係止段部44aが設けられている(図5(b)参照)。また、垂直部41とスカート部42との境界の裏面段部45には、スカート部42側に向かってテーパ状の第2の係止段部44bが設けられている(図5(b)参照)。
【0037】
第2のベース部材20は、第1のベース部材10と同様に、アルミニウム合金製の押出形材にて形成されており、図1,図3,図5及び図9に示すように、側壁部4の下部表面部分に第3及び第4の固定ねじ50c,50dによって固定される垂直片22を有し、垂直片22の上部側には外方に向かって突出する上端に水平面部21aを有する略コ字状の係合受け部21が突設されている。また、垂直片22の下部側には、垂直片22から外側に向かって水平に延びる水平片23の先端から下方に直角に垂下する垂下片24が設けられている。
【0038】
なお、係合受け部21の下端には、第2の框部材40に設けられた係合部43の第1の係止段部44aに係合可能な第1の係止爪部25aが突設されている(図5(b)参照)。また、垂直片22の下部の水平片23の先端上部には、第2の框部材40に設けられた第2の係止段部44bに係合可能な第2の係止爪部25bが突設されている(図5(b)参照)。
【0039】
上記のように形成される第2の框部材40と第2のベース部材20を用いて第2の框部材40を側壁部4に固定するには、まず、第2のベース部材20を固定ねじ50c,50dによって側壁部4に固定する。この際、第2のベース部材20の係合受け部21の水平面部21aに接着剤60を塗布する(図9参照)。なお、第2のベース部材20を側壁部4に固定する前に予め接着剤60を塗布してもよい。
【0040】
次に、第2の框部材40を第2のベース部材20に被せるようにして、係合部43を第2のベース部材20の係合受け部21に係合(嵌合)すると共に、両水平面部21a,43a間、すなわち第2のベース部材20の水平面部21aと第2の框部材40の上部水平面部43a間に介在される接着剤60によって固定する。側壁部4に固定された第2の框部材40のスカート部42の下端は、その後に土間1に敷設されるモルタル6内に埋入固定される。
【0041】
なお、上記第1及び第2の框部材30,40のスカート部33,42の少なくとも下端部をモルタル6との接触面積を増大させるために凹凸状に形成してもよい。例えば、スカート部33,42の裏面を、図6(b)及び図8(b)に示すように、多数の凹凸部70からなる凹凸状に形成してもよい。このように、スカート部33,42の少なくとも下端部の裏面を凹凸状に形成することにより、モルタル6内に埋入されるスカート部33,42のモルタル6との密着性を向上させることができ、第1及び第2の框部材30,40の固定を更に強固にすることができる。なお、スカート部33,42の下端部の裏面に凹凸部70を形成する代わりに、スカート部33,42の下端部を膨隆させて凹凸部を形成して、モルタル6との接触面積を増大させるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、第1及び第2の框部材30,40のスカート部33,42はいずれも垂直部32,41の下部に一体に形成される場合について説明したが、スカート部33,42を垂直部32,41と分割式にして、垂直部32,41に着脱可能に形成してもよい。
【0043】
この場合、第1の框部材30においては、例えば図10に示すように、垂直部32の下端部裏面側に、一側に外向きの係止凸条80を有する凹溝状の係止受け部81を設け、スカート部33を構成するスカート部材33Aの上端部に、係止凸条80に嵌合可能な係止凹条82を有すると共に、係止受け部81に係合(嵌合)可能な係止部83を設ける。このように、垂直部32の下端部に設けた係止受け部81に、スカート部材33Aの上端部に設けた係止部83を係合(嵌合)させることにより、第1の框部材30の垂直部32とスカート部材33A(スカート部)とを一体化することができる。
【0044】
また、第2の框部材40においては、図11に示すように、垂直部41の下端部裏面側に、上部に係止凸条84を有する係止受け部85を突設し、スカート部42を構成するスカート部材42Aの上端部に、係止凸条84に嵌合可能な係止凹条86を有し係止受け部85に係合(嵌合)可能な係止部87を設ける。このように、垂直部41の下端部に設けた係止受け部85に、スカート部材42Aの上端部に設けた係止部87を係合(嵌合)させることにより、第2の框部材40の垂直部41とスカート部材42A(スカート部)とを一体化することができる。
【0045】
なお、上記第1及び第2の框部材30,40の垂直部32,41の係止受け部81,85とスカート部材33A,42Aの係止部83,87との係合(嵌合)形態は上記実施形態に限定されるものではなく、垂直部32,41に取り付けられるスカート部材33A,42Aが離脱しない状態であれば、係合(嵌合)形態は任意であってもよい。
【0046】
上記のように、第1及び第2の框部材30,40の垂直部32,41に、スカート部を構成するスカート部材33A,42Aを係合(嵌合)して一体化することにより、第1及び第2の框部材30,40の垂直部32,41と土間1との隙間の寸法に応じて用意された複数のスカート部材33A,42Aのうちの適当なスカート部材33A,42Aを垂直部32,41に取り付けて隙間を塞ぐことができる。
【0047】
次に、上記第1実施形態の第1及び第2の框部材30,40の固定作業の手順について、図12ないし図15を参照して説明する。
【0048】
図12に示す第1,第2の框部材30,40の取付前の状態において、まず、立上がり壁部3の床面2及び壁部材9aに固定ねじ50a,50bによって第1のベース部材10を固定する(図13参照)。この場合、第1のベース部材10の端部を側壁部4から数cm例えば5cm離して固定する。
【0049】
次に、側壁部4の壁部材9aに固定ねじ50c,50dによって第2のベース部材20を固定する(図13参照)。この場合、第2のベース部材20の端部を立上がり壁部3から数cm例えば5cm離して固定する。
【0050】
上記のようにして、第1及び第2のベース部材10,20を固定した後、図14に示すように、端部に第2のベース部材20との干渉を避けるための切欠き30aを設けた第1の框部材30を第1のベース部材10に係合、すなわち第1の框部材30の第1の係合部35と第2の係合部36をそれぞれ第1のベース部材10の第1の係合受け部11と第2の係合受け部12に係合(嵌合)すると共に、両水平面部11a,12aと34間、すなわち第1のベース部材10の第1,第2の水平面部11a,12aと第1の框部材30の水平底面部34間に介在される接着剤60によって固定する(図14参照)。この状態で、第1の框部材30のスカート部33の下端は床下地5の上面付近に位置している。
【0051】
次に、図14に示すように、端部に第1の框部材30の垂直部32とスカート部33の段差部との干渉を避けるための切欠き40aを設けた第2の框部材40を第2のベース部材20に係合、すなわち第2の框部材40を第2のベース部材20に被せるようにして、係合部43を第2のベース部材20の係合受け部21に係合(嵌合)すると共に、両水平面部21a,43a間、すなわち第2のベース部材20の水平面部21aと第2の框部材40の上部水平面部43a間に介在される接着剤60によって固定する。この状態で、第2の框部材40のスカート部42の下端は床下地5の上面付近に位置している。
【0052】
上記のようにして、第1及び第2の框部材30,40を立上がり壁部3及び側壁部4に固定した後、図15に示すように、床下地5の上面にモルタル6を敷設する。これにより、第1及び第2の框部材30,40のスカート部33,42の裏面側にモルタル6が流れ込んで、スカート部33,42の下端部がモルタル6内に埋入される。したがって、第1及び第2の框部材30,40は、第1及び第2のベース部材20に係合(嵌合)及び接着されて固定されると共に、スカート部33,42がモルタル6によって固定されるので、強固に固定される。
【0053】
床下地5にモルタル6を敷設した後、図1に示すように、モルタル6の表面にタイル7を敷設して玄関の施工を終了する。
【0054】
なお、上記実施形態では、立上がり壁部3に第1の框部材30を固定した後、隣接する一方の側壁部4に第2の框部材40を固定する場合について説明したが、隣接する他方の側壁部(図1の右側)にも同様にして第2の框部材40を固定することができる。
【0055】
また、立上がり壁部3と側壁部4との交差角度は直角以外の角度であっても、上記と同様にして第1の框部材30の固定後、第2の框部材40を固定することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、第1及び第2のベース部材10,20がアルミニウム合金製押出形材にて形成される長手通しの部材である場合について説明したが、第1,第2のベース部材10,20は必ずしも長手通しの部材にて形成されるものではない。例えば、上記押出形材を適宜長さに切断してピース状のベース部材10,20を所定の間隔をおいて立上がり壁部3や側壁部4に固定するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第1の框部材30は、第1のベース部材10の係合受け部11,12に係合(嵌合)及び接着される場合について説明したが、接着部を別の箇所にしてもよい。例えば、図16及び図17に示すように、立上がり壁部3の上部に位置する床部材2aの上面端部に固定部材例えば釘51をもって合板からなる板部材90を固定しておき、第1のベース部材10Aの水平片15Aを板状部材90の端部上面に載置すると共に、第1の框部材30Aに設けられた水平部31Aの下面31aと、板状部材90の上面及び第1のベース部材10Aの水平片15Aの上面との間に接着剤60を介在して第1の框部材30Aを固定するようにしてもよい。
【0058】
この場合、第1のベース部材10Aは、プレス加工された鋼板に亜鉛メッキを施したピース状部材にて形成されている。この第1のベース部材10Aは、図16〜図18に示すように、矩形状の垂直片16Aと、垂直片16Aの上端から直角に折曲される水平片15Aを有し、垂直片16Aの両側部に上下に渡って表面側に隆起する一対の補強部10aを有し、中央部の上下部には、表面に向かって略L字状に切り起こされた第1の係合受け部11Aと第2の係合受け部12Aと、固定ねじ50eが貫通可能な取付孔10cとを有している。なお、第1の係合受け部11Aと第2の係合受け部12Aの中央角部には補強部10bが隆起状に形成されている。
【0059】
また、第1の框部材30Aは、垂直部32Aの裏面に、上記第1の係合受け部11Aに係合する略逆L字状の第1の係合部35Aと、第2の係合受け部12Aに係合する略逆L字状の第2の係合部36Aが突設されている。また、垂直部32Aの上端に設けられる水平部31Aの下面31aには接着剤60の溜まり部を形成する互いに平行な複数の凹部と凸部とからなる凹凸条31bが設けられている。なお、垂直部32Aの下端には上記スカート部33が延在されている。
【0060】
上記のように形成される第1の框部材30Aと第1のベース部材10Aを用いて第1の框部材30Aを立上がり壁部3に固定するには、まず、第1のベース部材10Aの水平片15Aを床部材2aの上面に固定部材例えば釘51をもって固定された板部材90の上面に載置した状態で、固定ねじ50eによって立上がり壁部3に固定する。この第1のベース部材10Aは適宜間隔をおいて立上がり壁部3に複数固定される。この際、第1のベース部材10Aの水平片15Aの上面及び板部材90の上面に接着剤60を塗布する。
【0061】
次に、第1の框部材30Aを第1のベース部材10Aに被せるようにして、第1の係合受け部35Aと第2の係合受け部36Aをそれぞれ第1のベース部材10Aの第1の係合受け部11Aと第2の係合受け部12Aに係合すると共に、水平部31Aを第1のベース部材10Aの水平片15Aの上面及び板部材90の上面に載置して接着剤60によって固定する。この際、接着剤60は水平部31Aの下面31aに設けられた凹凸条31bによって保持されるので、第1の框部材30Aの固定は強固となる。立上がり壁部3に固定された第1の框部材30Aのスカート部33の下端は、その後に土間1に敷設されるモルタル6内に埋入固定される。
【0062】
上記のようにして立上がり壁部3に固定された第1の框部材30Aを立上がり壁部3から取り外す場合は、接着剤60によって第1の框部材30Aに固定されている板部材90を床部材2aから取り外すことができる。したがって、床部材2aを傷めることなく、第1の框部材30Aを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明に係る玄関用框の固定構造を示す断面斜視図である。
【図2】この発明における上がり框部材の固定構造を示す断面図である。
【図3】この発明における付け框部材の固定構造を示す断面図である。
【図4】上記上がり框部材の固定部を示す断面図(a)及び要部拡大断面図(b)である。
【図5】上記付け框部材の固定部を示す断面図(a)及び要部拡大断面図(b)である。
【図6】上記上がり框部材の要部を示す斜視図(a)及び上がり框のスカート部の裏面を凹凸状にした場合の斜視図(b)である。
【図7】この発明における上がり框用ベース部材の要部を示す斜視図である。
【図8】上記付け框部材の要部を示す斜視図(a)及び付け框のスカート部の裏面を凹凸状にした場合の斜視図(b)である。
【図9】この発明における付け框用ベース部材の要部を示す斜視図である。
【図10】上記上がり框部材のスカート部を分割式にした状態を示す断面図である。
【図11】上記付け框部材のスカート部を分割式にした状態を示す断面図である。
【図12】玄関用框の固定前の状態を示す断面斜視図である。
【図13】上がり框用ベース部材と付け框用ベース部材を固定した状態を示す断面斜視図である。
【図14】上がり框部材と付け框部材を固定した状態を示す断面斜視図である。
【図15】床下地にモルタルを敷設した状態を示す断面斜視図である。
【図16】この発明に係る玄関用框の固定構造の別の実施形態を示す断面図である。
【図17】図16の要部を示す拡大断面図である。
【図18】この発明における上がり框用ベース部材の別の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 土間
2 床面
3 立上がり壁部
4 側壁部
6 モルタル
10,10A 第1のベース部材(上がり框用ベース部材)
11,11A,12,12A 係合受け部
11a,12a 水平面部
15A 水平片
20 第2のベース部材(付け框用ベース部材)
21 係合受け部
21a 水平面部
30,30A 第1の框部材(立上がり壁部用框部材,上がり框部材)
31,31A 水平部
32,32A 垂直部
33 スカート部
33A スカート部材
34 水平底面部
35,35A,36,36A 係合部
40 第2の框部材(側壁部用框部材)
41 垂直部
42 スカート部
42A スカート部材
43 係合部
43a 上部水平面部
51 釘(固定部材)
60 接着剤
70 凹凸部
81,85 係止受け部
83,87 係止部
90 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の玄関の土間と隣接する壁部に框を固定する構造であって、
上記壁部の上記土間側に固定されると共に、表面側に係合受け部が突設されるベース部材と、
上記壁部の上記土間側部分を覆う垂直部と該垂直部の下端に延在するスカート部を有すると共に、裏面側に上記係合受け部と係合可能な係合部が設けられる合成樹脂製の框部材とを具備し、
上記壁部に固定された上記ベース部材の係合受け部に、上記框部材の係合部を係合して框部材を固定すると共に、上記土間に敷設されるモルタル内に上記スカート部の下端を埋入固定する、
ことを特徴とする玄関用框の固定構造。
【請求項2】
請求項1記載の玄関用框の固定構造において、
上記ベース部材の係合受け部及び上記框部材の係合部に互いに接触する水平面部を設け、両水平面部間に接着剤を介在してなる、ことを特徴とする玄関用框の固定構造。
【請求項3】
請求項1記載の玄関用框の固定構造において、
上記壁部の上部に位置する床部材の上面に固定部材によって板部材を固定し、
上記ベース部材は、ピース状に形成されると共に、上記板部材の上面端部に載置される水平片を有し、
上記框部材は、上記垂直部の上端に水平部を有し、上記水平部の下面と上記板部材の上面及び上記ベース部材の水平片の上面との間に接着剤を介在してなる、ことを特徴とする玄関用框の固定構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の玄関用框の固定構造において、
上記框部材の垂直部とスカート部を分割し、上記垂直部の下端部に設けられた係止受け部と、上記スカート部の上端部に設けられた係止部とを係合可能に形成してなる、ことを特徴とする玄関用框の固定構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の玄関用框の固定構造において、
上記框部材のスカート部の下端部を、モルタルとの接触面積を広くすべく凹凸状に形成してなる、ことを特徴とする玄関用框の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−144435(P2010−144435A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323072(P2008−323072)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)