説明

玩具用模擬飲料

【課題】 収容部が透明性を有する玩具用容器に収容された場合であっても、太陽光等の曝露による退色や変色が生じ難く、長期的に初期の様相を維持できるため、子供が常に新鮮な外観を呈した模擬飲料を使用して、楽しくままごとや育児のまねごと等の遊戯が可能な玩具用模擬飲料を提供する。
【解決手段】 透明性を有する容器に収容される玩具用模擬飲料であって、少なくとも水と着色剤とフラボノイド配糖体からなる。前記フラボノイド配糖体を溶液全量中0.1〜10重量%の範囲で含んでなる。前記玩具用模擬飲料が透明性を有する液体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玩具用模擬飲料に関する。更には、透明性を有する容器に収容されてなるミルクやジュース等を模した玩具用模擬飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミルクやジュース等を模した模擬飲料が開示されており、玩具用の哺乳瓶や飲料容器に収容し、幼児がままごとに使用したり、人形に飲物を与えるといった育児のまねごとに使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−99822号公報
【0003】
前記模擬飲料には、水性媒体中に染料等の着色剤を溶解・分散してジュースやお茶を模したものと、水性媒体中に油脂を乳化した白濁の液体をミルクに見立てたものがある。このうち着色剤を溶解・分散した模擬飲料は、透明性を有する容器に収容して放置された際、太陽光等の曝露によって退色や変色を生じることがあるため、玩具全体の見栄えが悪くなって商品性を損なうと共に、幼児の興味を低下させることに繋がるものであった。
特に玩具用途での使用頻度が高い食用色素を着色剤として用いた場合、前記退色現象が生じ易いため、商品性能の改良が必要とされている。
また、前記模擬飲料として透明性が高いものを調製する場合、使用する着色剤の添加量が微量になり、溶液全体が光に曝露され易くなるため、着色剤が多量に添加されたものと比べて前記退色現象が生じ易くなるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、収容部が透明性を有する玩具用容器に収容された場合であっても、太陽光等の曝露による退色や変色が生じ難く、長期的に初期の様相を維持できる玩具用模擬飲料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、透明性を有する容器に収容される玩具用模擬飲料であって、少なくとも水と着色剤とフラボノイド配糖体からなることを要件とする。
更に、前記フラボノイド配糖体を溶液全量中0.1〜10重量%の範囲で含んでなること、前記フラボノイド配糖体がミリシトリン又は一般式(1)で示すイソクエルシトリン類であることを要件とする。
【化1】

〔式中のnは1〜8の自然数を表す。〕
更には、前記着色剤が食用色素であること、前記着色剤を溶液全量中0.0001〜1重量%の範囲で含んでなること、透明性を有する液体であることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、収容部が透明性を有する玩具用哺乳瓶や飲料容器等に収容した場合であっても、フラボノイド配糖体の作用によって、太陽光等の曝露による退色や変色が生じ難く、ジュースやお茶等の透明液を模したものであっても初期の様相を長期的に維持できる玩具用模擬飲料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の模擬飲料は、水性媒体中に着色剤とフラボノイド配糖体を必須成分として配合したものである。
前記フラボノイド配糖体は、溶液中で光増感作用により発生する活性酸素種に作用することで、該活性酸素種が着色剤を退色させることを抑制すると推測される。尚、前記活性酸素種とは、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、アルキルラジカル、ヒドロペルオキシドラジカル等を示す。
【0008】
前記フラボノイド配糖体としては、ミリシトリンやイソクエルシトリン、ルチンやイソクエルシトリンにデキストリン等を用いて酵素処理を施した前記一般式(1)のようなイソクエルシトリン類等が適用できる。
前記フラボノイド配糖体は、溶液全量中0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%添加することができる。
0.1重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、10重量%を越えて添加しても退色抑制効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
【0009】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、酸性染料、塩基性染料、直接染料等の各種染料や、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられる。
更に、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料、可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料や、前記可逆熱変色性組成物と共に、染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料等の熱変色性顔料を使用することもできる。
尚、前記染料については、特にキサンテン骨格を有する着色剤(特に染料)が光増感作用によって活性酸素種を生じ易く、該染料自体が退色して初期の色調を維持でき難く、また、他の染料を併用する場合、活性酸素種が他の染料の退色に作用して更なる退色を生じることになる。
【0010】
前記活性酸素種により退色され易いキサンテン骨格を有する着色剤としては、例えば、アシッドレッド87(エオシン)、アシッドレッド92(フロキシン)、アシッドレッド51(エリスロシン)、アシッドレッド94(ローズベンガル)、アシッドレッド388、アクリジンレッド(C.I.45000)、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン6G(C.I.ベーシックレッド1)、ローダミン6Gエキストラ、ローダミン116、ローダミンB(C.I.45170)、テトラメチルローダミン過塩素酸塩、ローダミン3B、ローダミン19、スルホローダミン、ピロニンG(C.I.45005)、ローダミンS(C.I.45050)、ローダミンG(C.I.45150)、エチルローダミンB(C.I.45175)、ローダミン4G(C.I.45166)、ローダミン3GO(C.I.45215)、スルホローダミンG等のキサンテン系染料や、該染料を含む着色樹脂粒子(具体的にはキサンテン系染料を樹脂マトリックス中に固溶体化してなる顔料)や、ローダミンレーキ6G、ローダミンレーキB(C.I.45170:2)、ローダミンレーキY(C.I.45160:1)等の顔料が挙げられる。
【0011】
また、玩具用途での使用頻度が高い食用色素も光の曝露による退色を生じ易いため、本願組成での使用が有用なものとなる。
前記食用色素としては、食用赤色2号(アマランス)、3号(エリスロシン)、102号(ニューコクシン)、104号(フロキシン)、105号(ローズベンガル)、106号(アシドレッド)、食用黄色4号(タートラジン)、5号(サンセットイエローFCF)、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、2号(インジゴカルミン)等の合成色素、及び、パプリカ色素、クチナシ色素、ウコン色素等の天然色素が例示できる。
【0012】
前記各着色剤は、一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、5重量%以下で添加できるが、好ましくはインキ組成中0.0001〜1重量%、より好ましくは0.0001〜0.5重量%の範囲で添加される。
特に、模擬飲料として透明性が高いもの(麦茶等のお茶類、リンゴジュース、アセロラジュース等)を調製する場合、使用する着色剤が微量になり、溶液全体が光に曝露され易くなるため、着色剤が多量に添加されたものと比べて退色し易くなる。そのため、前記範囲での少量添加時に、本願組成での使用がより有用なものとなる。
【0013】
更に、油脂と乳化剤からなる乳化物を添加して濁りのある乳飲料を模すこともできる。
前記油脂としては、動物脂の他、食用紅花油、食用大豆油等の乾性油や、食用とうもろこし油、食用綿実油、食用ゴマ油、食用なたね油等の半乾性油、食用オリーブ油等の不乾性油、食用パーム油、食用ヤシ油等の植物脂を用いることができる。
【0014】
前記乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0015】
また、粘度調整のために水溶性有機溶剤を添加することもでき、グリセリン、プロピレングリコール等が好適に用いられる。
更に、増粘或いは乳化物の分散安定性を向上させるために、アラビアガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム等の水溶性樹脂や多糖類を添加してもよい。
【0016】
その他必要に応じて、消泡剤、防カビ剤、香料を添加したり、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、没食子酸プロピル、クロロゲン酸、クエン酸、クエン酸イソプロピル、クエン酸三カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤を添加することもできる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の玩具用模擬飲料の組成を以下の表に示す。尚、表中の組成の数値は重量部である。
【表1】

【0018】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)フロキシン、(株)アイゼン製、商品名:食用赤色104号
(2)タートラジン(株)アイゼン製、商品名:食用黄色4号
(3)エリスロシン、(株)アイゼン製、商品名:食用赤色3号
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:DKエステルF160
(5)日清製油(株)製、商品名:ハイオレイックサフラワー油
(6)一般式(1)で示される化合物のnが1〜8の混合物
(7)第一工業製薬(株)製、商品名:セロゲンF7A
(8)三菱化学フーズ(株)製、商品名:シュガーエステルL−1695
(9)三栄薬品貿易(株)製、商品名:アラビックコールSS
【0019】
模擬飲料溶液の調製
実施例1,2,4及び比較例1,2,4の溶液は、イオン交換水に各成分を添加し、25℃でディスパーにて30分間攪拌溶解することで調製した。
また、実施例3及び比較例3の溶液は、イオン交換水中に樹脂と乳化剤を溶解し、油脂を加えて25℃でディスパーにて10000rpmで10分間攪拌して乳化した後、残りの成分を加えて攪拌溶解することで調製した。
【0020】
前記実施例及び比較例の各溶液4.5gをパイロットインキ社製「まほうのミルクびん」の透明容器内に収容することで模擬飲料玩具を得た。尚、前記商品は乳首部分を下方に向けることによって、透明容器内に収容した溶液が泡を発生させながら減っていくように視覚される玩具用哺乳瓶である。
【0021】
耐光性試験
各模擬飲料玩具をキセノン耐光試験機(スガ試験機、キセノンランプ適用)により照射強度180W/mにて5時間光照射した後、透明容器を透して視認される溶液の色調(飲料に見立てた際の色目)を確認して初期と比較した。
以下の表に試験結果を示す。
【0022】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する容器に収容される玩具用模擬飲料であって、少なくとも水と着色剤とフラボノイド配糖体からなる玩具用模擬飲料。
【請求項2】
前記フラボノイド配糖体を溶液全量中0.1〜10重量%の範囲で含んでなる請求項1記載の玩具用模擬飲料。
【請求項3】
前記フラボノイド配糖体がミリシトリン又は一般式(1)で示すイソクエルシトリン類である請求項1又は2に記載の玩具用模擬飲料。
【化1】

〔式中のnは1〜8の自然数を表す。〕
【請求項4】
前記着色剤が食用色素である請求項1乃至3のいずれかに記載の玩具用模擬飲料。
【請求項5】
前記着色剤を溶液全量中0.0001〜1重量%の範囲で含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の玩具用模擬飲料。
【請求項6】
透明性を有する液体である請求項1乃至5のいずれかに記載の玩具用模擬飲料。

【公開番号】特開2010−119624(P2010−119624A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296305(P2008−296305)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】