説明

現像処理装置

【課題】 処理槽の処理液が空気に接触することに起因する劣化を低減して適正な処理を行う現像処理装置を構成する。
【解決手段】 処理槽の処理液の液面位置に、処理液の液面レベルLの変化に追従して浮揚するシール体50を配置することにより、処理液の液面からの水分の蒸発と、この液面が空気と接触して酸化する現象を阻止する。また、このシール体50に印画紙Pの導入を許す導入開口51と、印画紙Pの送り出しを許す排出開口52とを形成することにより、印画紙Pの導入と排出を容易に行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液に浸漬して感光材料の処理を行う複数の処理槽を備え、前記感光材料を処理槽の液面から引き上げて次の処理槽に送り込む現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された現像処理装置として特許文献1に記載されるものが存在する。つまり、処理槽として発色現像槽と漂白定着処理槽と複数の水洗槽とを備え、処理槽の液面から引き上げた感光材料を次の処理槽に搬送するクロスオーバラックを、隣接する処理槽同士の間に配置している。このクロスオーバラックには感光材料を圧着して搬送する搬送ローラを備えており、発色現像処理槽を通過した感光材料を引き上げ、搬送ローラ対での搬送により、次の漂白定着処理槽に送り出している。
【特許文献1】特開2003‐15267号公報 (段落番号〔0011〕〜〔0016〕、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
処理液に浸漬した感光材料を、その処理槽の処理液の液面から引き上げて次の処理槽の処理液に送り込む搬送形態の現像処理装置では、処理槽に貯留された処理液が開放しているため、処理液の液面から水分が蒸発して処理液の濃度が変化することがあり、また、処理液が空気に触れるため、処理液に含まれる成分が酸化することもある。
【0004】
このように処理液の水分が蒸発して処理液の濃度が高まった場合や、処理液に含まれる成分が酸化して成分が変化した場合には、適正な処理が行われないこともある。特に、印画紙の現像処理を行うペーパープロセッサでは、処理液の温度が30℃を越える温度に設定されるため、水分の蒸発が激しく、また、比較的高温であるため空気中の酸素と反応を起こしやすく改善が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、処理槽の処理液の劣化を低減して適正な処理を行う現像処理装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、処理液に浸漬して感光材料の処理を行う複数の処理槽を備え、前記感光材料を処理槽の液面から引き上げて次の処理槽に送り込む現像処理装置において、
前記感光材料の通過が可能な通過部を有するシール体を処理槽の液面に備えている点にある。
【0007】
この構成により、処理液の液面をシール体が覆う形態となるので、このシール体が処理液の蒸発を抑制すると同時に、処理液の成分が空気に接触して酸化する不都合を解消する。また、シール体に通過部を形成しているので、処理槽の処理液に感光材料を送り込むことも、処理槽の処理液から感光材料を送り出すことも容易に行える。その結果、処理槽の処理液の劣化を低減して適正な処理を行う現像処理装置が構成された。
【0008】
本発明は、前記シール体が処理槽の処理液に対して浮力を有する素材を用いて形成され、この素材にスリット又は開口を形成することにより前記通過部を形成しても良い。
【0009】
この構成により、シール体は、その浮力によって常に処理液の液面を覆う位置に存在することになり、シール体と処理液との間に空間を形成することなく、処理液の水分の蒸発と酸化とを良好に抑制できる。
【0010】
本発明は、前記通過部がブレード状に形成されている点にある。
【0011】
この構成により、感光材料が通過部を通過する際にブレードと接触して、その感光材料に付着した処理液を除去できる。
【0012】
本発明は、前記シール体を介して処理槽の処理液に送り込まれる感光材料の感光面をスチームによって洗浄する洗浄機構を備えても良い。
【0013】
この構成により、感光材料をスチームによって洗浄した後にシール体を備えた処理槽に送り込むことになり、処理槽の処理液の劣化を一層良好に抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、暗箱構造の筐体1の内部に露光ブロックAと現像ブロックBとを配置すると共に、筐体1の端部位置に乾燥ブロックCを配置してペーパープロセッサーが構成されている。このペーパープロセッサーは、デジタルミニラボと称せられる現像処理装置の印画紙自動現像部として構成されたものであり、前記露光ブロックAにおいて感光材料としての印画紙Pに対して画像データの露光を行い、前記現像ブロックBにおいて前記露光ブロックAからの印画紙Pの現像処理を行い、前記乾燥ブロックCにおいて前記現像ブロックBからの印画紙Pの乾燥処理を行い、この乾燥処理後の印画紙Pを筐体上部の排出部2から筐体外のコンベア3上に排出する作動を行う。
【0015】
図面には示していないが、このペーパープロセッサーは、プリントサイズやプリント枚数等のオーダ情報と画像データとを取得するオペレートユニットに接続している。このオペレートユニットはフィルムスキャナで写真フィルムから取得した画像データ、あるいは、メディアドライブでフラッシュメモリやCD−R等のメディアから取得した画像データに対して必要な補正を行うことや、トリミングを行い、このように補正や加工後の画像データとオーダ情報とをペーパープロセッサーに伝送するように構成されている。
【0016】
前記露光ブロックAは、下部に2つの印画紙マガジンMを配置すると共に、上部位置に露光ヘッドHと、この露光ヘッドHと制御ユニットGとを配置している。前記制御ユニットGは、このペーパープロセッサーでの前記印画紙Pの搬送と、露光ブロックAでの露光の制御を行う。
【0017】
この露光ブロックAでは、印画紙マガジンM、Mの一方に収納したロール状の印画紙Pを圧着型のアドバンスローラ11で引き出し、カッターユニット12でプリントサイズに切断し、このように切断された印画紙Pの裏面側に印字ヘッド13によって必要な情報をプリントし、この後、印画紙Pを挟持搬送するチャックユニット14によって露光経路に送り込む。
【0018】
前記露光経路では、前記チャックユニット14からの印画紙Pを受け取り、複数の露光搬送ローラ15で上方(副走査方向)に搬送しながら露光位置において前記露光ヘッドHからのレーザビームで主走査方向に走査する形態で露光を行う。
【0019】
この露光ヘッドHとして、レーザビームを走査する形態で露光を行うもの以外に、PLZTシャッタ方式、液晶シャッタ方式、蛍光ビーム方式、FOCRT方式、或いは、DMD方式を用いることができる。
【0020】
この露光経路で露光を終えた印画紙Pを前搬送経路の複数の圧着ローラ16で搬送方向を水平方向に変換して送り出し、振り分け部の2つのチャッカー17の何れかでチャックし、2列の振り分け経路に振り分けて送り出し、更に、後搬送経路の複数の圧着ローラ18の搬送によって前記現像ブロックBに送り込む。
【0021】
前記振り分け部では予め設定されたサイズより小さいサイズの印画紙Pを、前述した2列の振り分け経路に振り分ける振り分けモードと、振り分けずに単列で送り出す単列モードとでの搬送を行えるように構成されている。また、前記予め設定されたサイズより大きいサイズの印画紙Pを搬送する際には自動的に単列モードを選択して、前記2つのチャッカー17で印画紙Pの幅方向の両端をチャックして搬送するように制御形態が設定されている。
【0022】
前記乾燥ブロックCは、現像ブロックBから送り出される印画紙Pに対してヒータで加熱された空気を供給するブロワ5と印画紙Pを圧着して搬送する複数の搬送ローラ6を備えている。
【0023】
〔処理槽〕
図1及び図2に示すように、前記現像ブロックBは前記印画紙Pの搬送方向で上流側から下流側に向けて、発色現像処理液(CD)を貯留する1つの発色現像処理槽21、漂白定着処理液(BF)を貯留する1つの漂白定着処理槽22、及び、安定処理液(STB)を貯留する4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dを、この順序で備えている。
【0024】
尚、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dを安定処理槽23と総称し、この安定処理槽23と発色現像処理槽21と漂白定着処理槽22を併せて処理槽と総称する。更に、発色現像処理液(CD)と漂白定着処理液(BF)と安定処理液(STB)とを処理液と総称する。
【0025】
図面には示していないが、発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23D夫々の側部位置には、夫々と処理液が循環するサブタンクを備えており、このサブタンクにおいて処理液の液面の管理、処理液の補給、処理液の温度制御を行うように構成されている。このサブタンクでの液面管理により、これらの処理槽の液面レベルLが略等しいレベルに維持される。
【0026】
尚、処理液の液面レベルLを管理する場合、前記発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22については、対応するサブタンクに対して発色現像処理液(CD)、漂白定着処理液(BF)を補充することになるが、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dについては、印画紙Pの搬送方向で最も下流側の安定処理槽23Dに対応するサブタンクにのみ安定処理液(STB)を補充し、オーバフローさせる形態で、このサブタンクから搬送方向での上流側のサブタンクに安定処理液(STB)を順次送り、補充する制御形態となる。
【0027】
前記発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23D夫々には処理液中に印画紙Pを搬送するように複数の搬送ローラ31を有した液中ラック32を備えている。前記露光ブロックAからの印画紙Pを発色現像処理槽21に送り込むフィードラック34を備えている。
【0028】
また、発色現像処理槽21の発色現像処理液(CD)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の漂白定着処理槽22に送り込む部位、漂白定着処理槽22の漂白定着処理液(BF)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Aに送り込む部位、安定処理槽23Aの安定処理液(STB)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Bに送り込む部位、安定処理槽23Bの安定処理液(STB)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Cに送り込む部位、安定処理槽23Cの安定処理液(STB)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Dに送り込む部位にクロスオーバラック35を備えている。
【0029】
更に、印画紙Pの搬送方向での後端に位置する安定処理槽23Dからの印画紙Pを送り出す位置にスクイズラック36を備えている。尚、前記フィードラック34、5つのクロスオーバラック35、及び、スクイズラック36は対応する各処理槽に対して着脱自在に備えられている。
【0030】
この現像ブロックBでは、各処理槽の液中ラック32において搬送される印画紙Pの感光面(乳剤面)が外向き(処理槽の内壁面に向かう側)に設定されているため、前記クロスオーバラック35で搬送される印画紙Pの感光面が下向きとなる。
【0031】
前記フィードラック34には前記印画紙Pを搬送する複数の圧着型の供給ローラ41を備えている。前記複数のクロスオーバラック35は、先の処理槽から印画紙Pを引き上げる圧着型の導入ローラ42と、この導入ローラ42からの印画紙Pの方向転換を行うように上向きに凸となるガイド43と、このガイド43からの印画紙Pを次の処理槽に送り出す圧着型の排出ローラ44とを備えている。前記スクイズラック36には印画紙Pに付着した安定液をスクイズにより除去し、印画紙Pの搬送方向で終端位置の安定処理槽23D戻すためのスクイズローラ45を有している。
【0032】
図面には示していないが、液中ラック32の搬送ローラ31と、前記フィードラック34の供給ローラ41と、クロスオーバラック35の導入ローラ42及び排出ローラ44と、スクイズラック36のスクイズローラ45とは搬送用のモータからの駆動力によって同期駆動される。
【0033】
〔シール体〕
図2及び図3に示すように、本発明の現像ブロックBの各処理槽には処理液の液面を覆うシール体50を備えている。このシール体50は、柔軟で処理液の表面に位置するために充分な浮力を有したシート状の樹脂材料に対して前記印画紙Pを処理液に送り込むための通過部として導入開口51と、処理液から印画紙Pを送り出すための通過部としての排出開口52とを形成している。
【0034】
また、シール体50の外端部が処理槽の内壁面に近接するように、このシール体50の形状が設定され、導入開口51と隣接する位置には、前記液中ラック32のフレーム部32Aが挿通する開口53が形成されている。このような構造であるため、処理槽の液面レベルLが変動した場合でも、シール体50が全体的に液面に追従して浮揚するので、液面との間に隙間を形成することがない。
【0035】
このシール体50の素材としては独立気泡(単独気泡)を有したポリエチレン樹脂やウレタン樹脂のように処理液と比較して充分な浮力を有するものの使用が考えられる。
【0036】
このようにシール体50を各処理槽に備えることにより、処理液の液面レベルLの変動に拘わりなく、シール体50が液面を覆う形態となるので、このシール体50が処理液の蒸発を抑制すると同時に、処理液の成分が空気に接触して酸化する不都合を解消し、処理液の劣化を抑制して適正な処理を実現する。また、シール体50に通過部として導入開口51と排出開口52とを形成しているので、処理槽の処理液に印画紙Pを送り込むことも、処理槽の処理液から印画紙Pを送り出すことも容易に行える。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0038】
(a)図4に示すように、前記シール体50に比較的薄い素材を用いると共に、その素材に切り開くことにより通過部としての導入用スリット55を形成し、また同様に素材を切り開くことにより通過部として排出用スリット56を形成する。このようにスリットによって通過部を形成することにより、導入用スリット55の部位がブレード状となり、このブレード状の部位が印画紙Pとの接触することで、持ち込まれる処理液を除去でき、排出用スリット56の部位がブレード状になることで、印画紙Pに付着して持ち出される処理液を低減できる。また、スリットを形成することにより、この通過部において処理液と空気とが接触する現象を回避して、水分の蒸発と処理液の劣化とを一層良好に抑制できるものとなる。
【0039】
(b)図4に示すように、クロスオーバラック35に搬送される印画紙Pに対してノズルNからスチーム(加熱水蒸気)を噴出して印画紙Pの感光面側に付着した処理液を洗浄し、噴出した水(処理液を含む水)をノズルNの下方に配置したトレイ47によって回収し、外部に排出するように構成する。尚、前記ノズルNを備えるクロスオーバラック35として、スチームからの熱の作用による異常な発色を招くことがない漂白定着処理槽22と安定処理槽23Aとの中間に配置されるものを想定している。
【0040】
図面には示していないが、前記ノズルNと、このノズルNに対してスチームを供給する供給系とで洗浄機構が構成される。そして、シール体50を備えた処理槽に印画紙Pを供給する以前にスチームを用いて印画紙Pに付着する処理液の洗浄を行うことにより、処理液の劣化が進み難いものとなる。
【0041】
(c)前記別実施形態(b)のように、シール体50に導入用スリット55と、排出用スリット56を備えたものでは、導入用スリット55を形成した部位(ブレード状の部位)が印画紙Pに接触し、スクイズする形態で印画紙Pに付着している処理液を除去することになるので、図5に示すように、この導入用スリット55の近傍に除去した処理液を回収する凹部55Aを形成し、この凹部55Aで回収された処理液を吸引管58から吸引して排出する排出ポンプ59を備える。このように、印画紙Pから除去した処理液を積極的に排出する系を備えることにより、処理液の劣化が一層進み難いものとなる。
【0042】
(d)シール体50として樹脂シートを用い、この樹脂シートの端部を処理槽の内壁に固定する。このように樹脂シートの端部を処理槽の内壁に固定することにより、処理液と空気との接触を一層良好に阻止できるものとなる。
【0043】
(e)感光材料として写真フィルムを用いる現像処理装置に適用する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ペーパープロセッサーの縦断正面図
【図2】シール体を備えた処理槽の断面図
【図3】シール体の斜視図
【図4】別実施形態(a)、(b)のシール体を備えた処理槽の断面図
【図5】別実施形態(c)のシール体を備えた処理槽の断面図
【符号の説明】
【0045】
50 シール体
51、52 通過部
55、56 通過部
P 感光材料:印画紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に浸漬して感光材料の処理を行う複数の処理槽を備え、前記感光材料を処理槽の液面から引き上げて次の処理槽に送り込む現像処理装置であって、
前記感光材料の通過が可能な通過部を有するシール体を処理槽の液面に備えていることを特徴とする現像処理装置。
【請求項2】
前記シール体が処理槽の処理液に対して浮力を有する素材を用いて形成され、この素材にスリット又は開口を形成することにより前記通過部を形成したことを特徴とする請求項1記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記通過部はブレード状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の現像処理装置。
【請求項4】
前記シール体を介して処理槽の処理液に送り込まれる感光材料の感光面をスチームによって洗浄する洗浄機構を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−41051(P2007−41051A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222125(P2005−222125)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】