説明

現像処理装置

【目的】 異なるトラックピッチの光ディスク原盤でも適確に回折光比を検出すると共に、原盤の偏芯に基づく回折光のブレによる検出誤差を除去する。
【構成】 情報記録媒体を現像処理するための現像処理装置であって、上記情報記録媒体の情報溝にレーザ光を照射するところのレーザと、上記レーザ光の照射された情報溝からの複数次数の回折光の強度を検出するディテクターと、上記回折光を常に上記ディテクター上に集光させる集光部とを具備する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ディスクの原盤の製作に用いられる現像処理装置に関し、特に、トラックピッチの異なる光ディスク原盤であっても適確に回折光比を検出することができる現像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、光ディスクを製作するために用いられる原盤は、研摩したガラス基板の表面にポジ型のフォトレジスト膜を設け、このフォトレジスト膜を原盤に記録すべき情報に応じて断続的に照射されるレーザ光により前記トラックに対応して不連続的に露光処理し、フォトレジスト膜の感光した部分は現像液によって溶解除去し、その跡にピットと称される凹部の列が同心または螺旋状に形成される。光ディスクは、かかるピットを有する原盤から、連続的な音溝を有する従来のオーディオディスクと同様に、複製成形用の型(スタンパ)を製作し、射出成形等の方法を用いて大量生産される。上記現像工程で形成されるピットの寸法はディスク再生時の性能に密接に関連する寸法である。従って、その現像工程においては、このピット寸法(深さおよび幅)が所定範囲内の寸法となるようにその現像終点を制御しなければならないものであった。
【0003】そこで、図3に示すごとく、原盤2をターンテーブル1によって回転させながらフォトレジスト膜3面上に現像液7をノズル6よりスプレー状に噴出させることにより現像を進行させ、ノズルより遠く離れた位置で現像中のピットの寸法をレーザ光の回折現象等を利用した光学的手法を用いてモニタし、ピット寸法が所定の値になった時現像処理を停止するよう構成されたフォトレジスト現像方法が提案されている。すなわち、図3において、現像途中に光ディスク原盤2の下方よりHe−Neレーザ4よりのレーザ光を照射すると、そのレーザ光は、フォトレジスト3上に形成された情報溝によって回折され0,1,2……次光に分かれる。この0次光、1次光、2次光の回折光強度I0 、I1 、I2 をディテクター5によって検出して求めた回折光比I1/I0 、I2/I1 は、それぞれ近似的に溝深さDおよび溝幅Wと図3右の(1)、(2)、および(3)式の如き関係をもつ。この値により現像中の溝幅・溝深さをモニターすることができる。現像装置ではこの原理を使い回折光をモニターしながら現像して所定の溝幅・溝深さになった所(現像終点)で現像を停止させる様にしている。
【0004】通常、入射角は光ディスク原盤に対し垂直(α=0)で、また光ディスクのトラックピッチは1.6μmであり、光源としてHe−Neレーザ(λ=0.6328μm)を使うので0次回折光の回折角は0°、1次回折光は23.3°、2次回折光は52.3°となり、この位置にディテクターを固定して溝幅・溝深さのモニターを行っていた。上述の如き回折光を使った現像終点決定に関する技術は、特開昭61−8751号公報、特開昭58−162953号公報等に開示されている。
【0005】しかしながら、光ディスクのトラックピッチは従来1.6μmピッチが主流であったが、高密度化に伴い、1.5μm、1.4μmピッチの光ディスクも一般化してきた。また、将来的には、盤内でピッチが変化するバリアブルトラックピッチの光ディスクもあらわれてくる。この様にトラックピッチが変化すると、図4(a)、(b)に示す様に回折角が変化し、従来装置の様にディテクターが固定の回折光検出装置ではディテクターから回折光がはずれてしまうという問題点があった。
【0006】また、現像処理装置では光ディスク原盤2をターンテーブル1に載せて回転させ、現像液を滴下しながら回折光比を検出しなければならない。通常、光ディスク原盤2上のグルーブは、露光時のターンテーブルと原盤の偏芯および現像時の原盤2をターンテーブル1へセットした時の偏芯によって偏芯したまま回転する。この偏芯によって回折光は円周方向に変動(ブレ)する。ここで、光ディスク原盤とディテクターの垂直距離を14cmとした場合のブレ量を図5(a)、(b)、(c)に示す。ブレ量は1次より2次回折光の方が大きく(ディテクターまでの距離に比例する)、偏芯に比例して大きくなる。ブレが大きいとディテクターからはずれてしまうばかりでなく、ディテクターからはずれない場合でもディテクターに当たる位置が変るので検出誤差が発生する欠点があった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、上述した如き従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、異なるトラックピッチの光ディスク原盤でも適確に回折光比を検出することが出来ると共に、原盤の偏芯に基づく回折光のブレによる検出誤差を除去することができる現像処理装置を提供することである。
【0008】
【発明の構成】上記目的を達成するため、本発明の特徴は、情報記録媒体を現像処理するための現像処理装置において、上記情報記録媒体の情報溝にレーザ光を照射するところのレーザ光照射手段と、上記レーザ光の照射された情報溝からの複数次数の回折光の強度を検出する強度検出手段と、上記回折光を常に上記強度検出手段上に集光させる集光手段とを具備したことである。
【0009】上述の如き構成によれば、トラックピッチの変化あるいは偏芯によって回折角が変化しても、常に回折光がディテクター上に集光されるため、異なるトラックピッチの光ディスク原盤でも適確に回折光比を検出することができると共に、原盤の偏芯に基づく回折光のブレによる検出誤差をも除去することができる。
【0010】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明を実施した現像処理装置の概略構成図である。図1に示す如く、本発明は、トラックピッチの異なる光ディスク原盤または偏芯を有する光ディスク原盤でも回折光比を適確に検出できる様にするために、トラックピッチの変化あるいは偏芯によって回折角が変化しても、常に回折光がディテクターからはずれない様に回折光をディテクター上に集光させる手段としての凸レンズ8をフォトレジスト膜3とディテクター5との間に付加した構成となっている。その他の構成は従来と同様となっている。
【0011】すなわち、図1(a)に示す如く、原盤2をターンテーブル1によって回転させながらフォトレジスト膜3面上に現像液7をノズル6よりスプレー状に噴出させることにより現像を進行させながら、原盤2の下方よりHe−Neレーザ4よりのレーザ光を照射し、フォトレジスト膜3を通過して回折した回折光を上記凸レンズ8によってディテクター5上に集光させ、回折光の強度を検出してピット寸法の検出を行う様にしているものである。そして、上記凸レンズ8は、トラックピッチの変化あるいは偏芯によって回折角が変化しても、常にディテクター5上に回折光が入射する様に配置されているものである。
【0012】ここで、凸レンズ8の焦点距離fは、図1の下方に示すように、レンズ8と原盤2上のレーザ光の入射点の距離をa、レンズ8からディテクター5までの距離をbとすると1/(1/a+1/b)となる。また必要なレンズの開口はトラックピッチによる回折角の変化量の最大値をθとするとa/2×tan(θ/2)となる。すなわち、ピッチが1.4〜1.6μmまで変化する時の2次回折光を検出するためにはa=100mm、b=20mmとするとf=16.7mm、レンズ開口10.9mm以上のレンズを用意すれば良いことになる。また、偏芯によるブレ量は5mm以下なので、このレンズによりブレをも除去できるわけである。そして、上記ディテクター5により検出された値に基づいて現像終点の制御が行われるわけである。
【0013】次に、図1(b)を参照して、上記第1実施例の変形例について説明する。上記第1実施例において、回折光をレンズで集光すると集光しない時に比べディテクター上でのスポットが小さくなり、そのため、ディテクターに当たる位置の微小な変動で検出される回折光量が大きく変化する。これを除去するため、図1(b)に示す如くこの変形例では、ディテクター5と凸レンズ8の間におけるディテクター5の前に回折光を散乱透過させる散乱板9を配置している。これにより、スポットの位置による回折光量の変動が小さくなり、検出精度がより向上するものである。他の構成は、上記第1実施例と同様であるので詳しい説明は省略する。
【0014】次に、図2を参照して、本発明に従う現像処理装置の第2実施例について説明する。図2に示す如く、この第2実施例では、集光手段として第1実施例の凸レンズ8のかわりに、光ディスク原盤2上のレーザ照射点F1とディテクター5の中心点F2を焦点とし、常に回折光をディテクター5上に集光させる楕円面反射鏡10を配設した構成が特徴的である。従って、この第2実施例によれば、トラックピッチの変化あるいは偏芯によって回折角が変化しても、常にディテクター5上に回折光が入射するものである。また、この第2実施例によれば、小さな空間で回折光を効率良く反射できるため、回折光量検出系が小型化できるものである。また、この第2実施例においても、図1(b)の変形例に示す如き散乱板9をディテクター5の前に設ければ、さらに検出精度が向上するものである。また、図2中における点線は楕円面反射鏡を構成する楕円を示すものである。
【0015】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明では、常に、回折光をディテクター上に集光させる集光手段を有する構成となっているため、異なるトラックピッチの光ディスク原盤でも適確に回折光比を検出することができると共に、原盤の偏芯に基づく回折光のブレによる検出誤差を除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 及び(b) は本発明を実施した現像処理装置の概略構成図およびその変形例の概略構成図。
【図2】本発明に従う現像処理装置の第2実施例の概略構成図。
【図3】従来の現像処理装置の概略構成図。
【図4】(a) 及び(b) はトラックピッチの変化に対する回折角の変化を説明するための説明図。
【図5】(a) (b) 及び(c) は光ディスク原盤の偏芯に対する回折光の変動を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 ターンテーブル、 2 光ディスク原盤、3 フォトレジスト膜、 4 He−Neレーザ、5 ディテクター、 6 ノズル、7 現像液、 8 凸レンズ、9 散乱板、 10 楕円面反射鏡、

【特許請求の範囲】
【請求項1】 情報記録媒体を現像処理するための現像処理装置であって、上記情報記録媒体の情報溝にレーザ光を照射するためのレーザ光照射手段と、上記レーザ光の照射された情報溝からの複数次数の回折光の強度を検出する強度検出手段と、上記回折光を常に上記強度検出手段上に集光させる集光手段とを具備したことを特徴とする現像処理装置。
【請求項2】 上記集光手段が、凸状レンズからなり、その凸状レンズの焦点距離が、前記情報溝から凸状レンズまでの距離をa、凸状レンズから強度検出手段までの距離をbとすると、1/(1/a+1/b)であることを特徴とする請求項1記載の現像処理装置。
【請求項3】 上記集光手段が、楕円面反射鏡からなり、その楕円面が、前記情報溝と強度検出手段中心の2点を焦点とする楕円面であることを特徴とする請求項1記載の現像処理装置。
【請求項4】 上記現像処理装置が、さらに、前記強度検出手段へ、上記集光手段によって集光された回折光ビームを散乱透過させる手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−28719
【公開日】平成6年(1994)2月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−204519
【出願日】平成4年(1992)7月8日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)