説明

現金処理装置

【課題】呼び込み溝8やカード溝11に落下した硬貨20等の異物を容易に除去できるようにし、或いは、さらに、壁面にカード溝11の終端側を密着して設置した場合においても、落下した異物を容易に除去することができようにする。
【解決手段】筐体カバー3に呼び込み溝8とカード溝11とを備え、前記カード溝11に読み取りヘッド9を備え、カード15を垂直に挿入して水平にスライドしてカード15に記録されたデータを読み取るカード読取部5を備えた現金処理装置1であって、前記カード読取部5は、前記呼び込み溝8または前記カード溝11に落下した異物を前記カード15の操作により容易に除去できる異物除去構造を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを上方から挿入し水平方向にスライドするカード読取部を備えた現金処理装置において前記カード読取部の溝に落下した硬貨等の異物を容易に除去できる構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、現金処理装置では、操作者の操作を制限してセキュリティを確保するために、オペレータ、保守員、警送員等(以下、「オペレータ等」という)が操作者の種類を記録したカードを持ち、当該カードの磁気ストライプを読み取って、操作者の種類に応じた操作モードに切り替えて、入金操作、回収操作、メンテナンスなどを行うようになっている。
【0003】
そして、カードを水平方向に挿入するカード読取部を備えた現金処理装置において、カード挿入部にコイン等の異物が入り込むことを防止するために、カード通路の下面に、コインよりも幅広で挿入口に向かって低くなった傾斜面を設け、挿入口に差し込まれたコインを当該傾斜面に落下させて、カード通路の外に滑って自然排出する技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近年、カード操作を容易にするためにカード読取部を水平に置き、カードを上から挿入し水平にスライドするカード読取部が主流となりつつある。このようなカード読取部を備えた従来の現金処理装置は、図6(a)の外観斜視図および図6(b)の上面図に示したように、硬貨20を投入するための硬貨投入口22と、紙幣を投入するための紙幣投入口2と、装置を覆う筐体カバー3と、筐体カバー3に実装した操作部4と、前述のカード読取部5と、投入された硬貨や紙幣等を格納する金庫部6と、鑑別できなかった紙幣を排出する紙幣リジェクト部7と、オペレータ等が投入しようとする硬貨20を置いておく硬貨置場18と、入金記録を印字した用紙を排出するレシート口9と、を備える。
【0005】
そして、従来のカード読取部5は、図7に示したように、筐体カバー3にカード挿入の呼び込み形状を有する呼び込み溝8と、カードを案内するカード溝11と、矢印R方向にスライドされるカードの磁気ストライプに記録されたデータを読み取るための磁気ヘッド9と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−6869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の現金処理装置1、特にカードを上方から挿入するカード読取部5を備えた現金処理装置1では、図7(a)のカード読取部5の上面図、図7(b)のA−A断面図に示したように、硬貨置場18に硬貨20を置くときなどに呼び込み溝8やカード溝11に誤って硬貨20a、20bなどの異物を落下させた場合、容易に取り出せないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、筐体カバーに呼び込み溝とカード溝とを備え、前記カード溝に読み取りヘッドを備え、カードを上方から挿入し水平方向にスライドしてカードに記録されたデータを読み取るカード読取部を備えた現金処理装置であって、前記カード読取部は、前記呼び込み溝または前記カード溝に落下した異物を前記カード操作により除去できる異物除去構造を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の現金処理装置によれば、以上のように構成したので、呼び込み溝やカード溝に誤って落下した硬貨等を通常のカード操作により容易に除去することができ、或いは、さらに、壁面に現金処理装置の右側を密着して設置した場合においても、落下した硬貨等を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【図2】実施例2の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【図3】実施例3の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【図4】実施例4の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【図5】その他の変形例の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【図6】従来の現金処理装置の構成図である。
【図7】従来の現金処理装置のカード読取部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお、以下の説明では、硬貨等の現金を取り扱う現金処理金装置を例として説明するが、コインなどを取り扱うコイン処理装置などであってもよい。また、カードとして磁気ストライプを備えた磁気カードを例として説明するが、所定のデータが記録されたカードであればその他のカードであってもよい。
【実施例1】
【0012】
(構成)
実施例1の現金処理装置1の構成は、カード読取部5の構成のほかは図6を用いて説明した従来の現金処理装置1の構成と同様であるので、同様の構成については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0013】
図1(a)は実施例1の現金処理装置1のカード読取部5の外観斜視図であり、図1(b)はその上面図、図1(c)はそのA−A断面図である。同図に示したように、実施例1のカード読取部5は、筐体カバー3上面にカード15を挿入するときの呼び込み形状としての呼び込み溝8と、カード15のスライドを案内するカード溝11と、カード15の磁気ストライプを読み取るための読み取りヘッドとしての磁気ヘッド9と、を備える。
【0014】
そして、実施例1のカード読取部5のカード溝11は、異物除去構造として、カード溝11の終端側(図1右端)の筐体カバー3を貫通させた溝形状となっている。
【0015】
(動作)
以上の構成により実施例1の現金処理装置1は、以下のように動作する。最初に、前述の図6の現金処理装置1の構成図を用いて硬貨20を入金する動作を説明する。
【0016】
まず、オペレータ等がそれぞれ所持するカードをカード読取部5に通すと、カードに記録された磁気データをカード読取部5にて読み取り、操作者がオペレータ、保守員、警送員のいずれであるかを判定し、当該判定結果に応じて操作モードを切り替え、紙幣や硬貨の入金操作や、金庫部6から現金の回収操作、メンテナンス操作などを行う。
【0017】
そして、現金処理装置1に硬貨20を入金するときは、一度に硬貨投入口22に入る投入枚数には制限があるため、一旦、硬貨20を硬貨置場18に置く。
【0018】
そして、硬貨置場18に置いた硬貨20を硬貨投入口22が一杯になるまで投入し、投入された硬貨20の鑑別が行われ、鑑別された硬貨20が金庫部6に搬送されると、硬貨置場18に残っている硬貨20を硬貨投入口22が一杯になるまで投入し、この作業を繰り返し行う。
【0019】
このとき、硬貨20を呼び込み溝8やカード溝11に誤って落下させてしまう場合がある。実施例1のカード読取部5ではカード溝11の終端側の筐体カバー3が貫通した溝形状となっているので、カード15を挿入して読取方向である矢印R方向にスライドすると、図1(c)に示したように、硬貨20が、カード溝11をカード15に押されて進み、さらにカード15を矢印R方向にスライドするとカード溝11終端の筐体カバー3の貫通部を通り抜け、筐体カバー3から矢印Bのように装置外へ排出される。
【0020】
(実施例1の効果)
以上のように、実施例1の現金処理装置によれば、カード溝を、カード溝の終端側の筐体カバーを貫通させた溝形状としたので、呼び込み溝やカード溝に誤って落下した硬貨等の異物を通常のカード操作により容易に除去することができる。
【実施例2】
【0021】
(構成)
実施例2の現金処理装置1の構成も、カード読取部5の構成のほかは図6を用いて説明した従来の現金処理装置1の構成と同様であるので、同様の構成については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0022】
図2(a)は実施例2の現金処理装置1のカード読取部5の構成を示す上面図であり、図2(b)はそのA−A断面図である。同図に示したように、実施例2のカード読取部5は、異物除去構造として、カード溝11の終端を傾斜面形状12としている。この傾斜角はカード溝11のスペースをできるだけ小さくかつ異物を確実に押し上げるために60度〜70度程度とするのがよい。その他の構成は、実施例1の現金処理装置のカード読取部5の構成と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0023】
(動作)
以上の構成により実施例2の現金処理装置1は、以下のように動作する。なお硬貨20を入金する動作については実施例1の現金処理装置1の動作と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0024】
呼び込み溝8やカード溝11に誤って落下した硬貨20は、その後、挿入したカード15を読取方向である矢印R方向にスライドさせることによりカード15によって押されてカード溝11を進み、さらにカード15をスライドすると、カード溝11の終端を矢印Cのように傾斜面形状12を上り、筐体カバー3の上面から装置外へ排出される。
【0025】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2の現金処理装置によれば、カード溝の終端を傾斜面形状としたので、カード読取部の筐体強度を維持しながら、実施例1の効果と同様、呼び込み溝やカード溝に誤って落下した硬貨等の異物をカード操作により容易に除去することができ、壁面等にカード溝の終端側を密着して現金処理装置を設置した場合においても、落下した硬貨等の異物を容易に除去することができる。
【実施例3】
【0026】
(構成)
実施例3の現金処理装置1の構成も、カード読取部5の構成のほかは図6を用いて説明した従来の現金処理装置1の構成と同様であるので、同様の構成については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0027】
図3(a)は実施例3の現金処理装置1のカード読取部5の構成を示す外観斜視図であり、図3(b)はその上面図である。同図に示したように、実施例3のカード読取部5は、異物除去構造として、カード溝11の終端側の筐体カバー3を貫通させた溝形状とするとともに、その終端の上部に凹み形状32を設けている。その他の構成は、実施例1の現金処理装置のカード読取部5の構成と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0028】
(動作)
以上の構成により実施例3の現金処理装置1は、以下のように動作する。なお硬貨20を入金する動作については実施例1の現金処理装置1の動作と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0029】
呼び込み溝8やカード溝11に誤って落下した硬貨20は、その後、挿入したカード15を読取方向である矢印R方向にスライドさせることによりカード15によって押されてカード溝11を進み、さらにカード15をスライドすると、カード15はカード溝11終端の凹み形状部32を通り抜け、筐体カバー3から装置外へ排出される。
【0030】
また、現金処理装置1の右側、すなわちカード溝11の終端側を壁面に密着して設置した場合では、カード15に押された硬貨20が壁にぶつかり、図3(a)のようにカード溝11から飛び出した状態で止まるが、凹み形状部32が設けられているので、容易に硬貨20を除去することができる。
【0031】
(実施例3の効果)
以上のように、実施例3の現金処理装置によれば、カード溝の終端側の筐体カバーを貫通させた溝形状とし、カード溝の終端上部に凹み形状を設けるようにしたので、実施例1の効果と同様、呼び込み溝やカード溝に誤って落下した硬貨等の異物をカード操作により容易に除去でき、また、壁面等にカード溝の終端側を密着させて現金処理装置を設置した場合においても、落下した硬貨等の異物を容易に除去することができる。
【実施例4】
【0032】
(構成)
実施例4の現金処理装置1の構成も、カード読取部5の構成のほかは図6を用いて説明した従来の現金処理装置1の構成と同様であるので、同様の構成については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0033】
図4は実施例4の現金処理装置1のカード読取部5の構成を示す上面図である。同図に示したように、実施例4のカード読取部5では、異物除去構造として、頻繁に硬貨20等が落下する呼び込み溝8の溝幅を指が入れられる程度に広げた構成となっている。その他の構成は、実施例1の現金処理装置のカード読取部5の構成と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0034】
(動作)
以上の構成により実施例4の現金処理装置1は、以下のように動作する。なお硬貨20を入金する動作については実施例1の現金処理装置1の動作と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0035】
実施例4の現金処理装置では、呼び込み溝8の溝幅を指が入れられる程度に広げた構成となっているので、呼び込み溝8に誤って落下した硬貨20を見つけることも容易となり、呼び込み溝8に指を入れて容易に除去することができる。
【0036】
なお、以上の実施例の説明では、実施例1の構成にて呼び込み溝8の溝幅を広げる例を説明したが、実施例2や実施例3の構成にて呼び込み溝8の溝幅を広げるようにしてもよい。このようにすれば、壁面等にカード溝11の終端側を密着して現金処理装置1を設置した場合においても、呼び込み溝8に落下した硬貨等の異物を容易に除去できることはもとより、カード溝11に落下した硬貨20も容易に除去することができる。
【0037】
(実施例4の効果)
以上のように、実施例4の現金処理装置によれば、呼び込み溝の溝幅を指が入れられる程度に広げた構成としたので、実施例1の効果に加え、呼び込み溝やカード溝に落下した硬貨等の異物を容易に見つけやすくなるとともに、容易に除去することができる。
【0038】
《その他の変形例》
なお、以上の実施例の説明では、呼び込み溝8やカード溝11の底部の形状については説明しなかったが、水平としてもよいし、図5に示したように、呼び込み溝8やカード溝11のいずれかまたは両方の底部8a、11aをカード溝11の終端側ほど低くするようにすれば、自然排出の効果をも奏することができる。
【0039】
或いは、逆に、呼び込み溝8やカード溝11のいずれかまたは両方の底部8a、11aをカード溝11の終端側ほど高くし、呼び込み溝8の溝幅を指が入れられる程度に広げた構成とし、底部の傾斜により呼び込み溝8に集まった硬貨20等の異物を指で取り除けるようにしてもよい。なお、この傾斜角はカード15の操作性も考慮すると1度〜3度程度とするのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上述べたように、本発明は、カード操作により本人確認を行い硬貨等の現金を扱う現金処理装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 現金処理装置
3 筐体カバー
4 操作部
5 カード読取部
8 呼び込み溝
9 磁気ヘッド
11 カード溝
12 傾斜面形状
15 カード
15m 磁気ストライプ
18 硬貨置場
20 硬貨
22 硬貨投入口
32 凹み形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体カバーに呼び込み溝とカード溝とを備え、前記カード溝に読取りヘッドを備え、カードを上方から挿入し水平方向にスライドして当該カードに記録されたデータを読み取るカード読取部を備えた現金処理装置であって、
前記カード読取部は、前記呼び込み溝または前記カード溝に落下した異物を前記カード操作により除去できる異物除去構造を備えたことを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記異物除去構造は、前記カード溝の終端側の筐体カバーを貫通させた溝形状としたことを特徴とする請求項1記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記異物除去構造は、前記カード溝の終端に傾斜面形状を設けたことを特徴とする請求項1記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記異物除去構造は、前記カード溝の終端上部に凹み形状を設けたことを特徴とする請求項1記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記異物除去構造は、呼び込み溝の溝幅を指が入れられる程度に広げたことを特徴とする請求項2ないし請求項4いずれか記載の現金処理装置。
【請求項6】
前記呼び込み溝若しくは前記カード溝または両方の底部を前記カード溝の終端側ほど低くするようにしたことを特徴とする請求項2ないし請求項4いずれか記載の現金処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128801(P2012−128801A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282034(P2010−282034)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】