説明

現金自動取引装置における情報提供技術

【課題】 本発明は、現金自動取引装置において利用者に広告情報を効果的に提供することができる情報提供技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 現金に関する一連の取引処理を行う現金自動取引装置20は、現金自動取引装置20の利用者に対する広告を行うために再生され再生開始から再生終了までの期間である再生長さ8104が設定された広告データ810を記憶する記憶部220と、一連の取引処理における特定の処理が行われる際に、記憶されている広告データ810を再生する広告再生部212と、広告データ810に設定されている再生長さ8104に合わせて、特定の処理の進行を調整する進行調整部214とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動取引装置の利用者に広告情報を提供する情報提供技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関には、金融取引を利用者との間で自動的に処理する現金自動取引装置として、現金自動預払機(Automatic Teller Machine, ATM)や現金自動支払機(Cash Dispenser, CD)などが設置されている。従来、現金自動取引装置の利用者に対して、現金自動取引装置の操作方法に関する情報や金融取引に関する情報に加え、商品やサービス,催し等を利用者に広告するための広告情報を提供する技術があった。下記特許文献1には、従来の情報提供技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−362281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の情報提供技術は、現金自動取引装置を利用した取引を行っている利用者を待たせてしまう際に、現金自動取引装置の利用者に対して広告情報を提供していたが、広告情報を効果的に提供することについては十分な検討が為されていなかった。例えば、利用者の待ち時間に比べ広告情報の情報量が多い場合には、待ち時間の間に広告情報の全てを提供しきれずに、利用者に広告情報を十分に認識させることができない場合があった。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、現金自動取引装置において利用者に広告情報を効果的に提供することができる情報提供技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明の現金自動取引装置は、現金に関する一連の取引処理を行う現金自動取引装置であって、現金自動取引装置において再生され再生開始から再生終了までの期間である再生長さが設定された広告データを記憶しておき、一連の取引処理における特定の処理が行われる際に、記憶されている広告データを再生し、広告データに設定されている再生長さに合わせて、特定の処理の進行を調整することを特徴とする。本発明の現金自動取引装置によれば、広告データに設定されている再生長さに合わせて取引処理の進行が調整されるため、現金自動取引装置の利用者に広告情報を効果的に提供することができる。
【0007】
例えば、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて長い場合には、特定の処理に要する時間が再生長さに応じて長くなるように処理進行が調整されるため、利用者に対して広告情報を十分に提供することができ、また、広告情報の提供のためだけに待たされていると使用者に感じさせることを防止することができる。また、例えば、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて短い場合には、特定の処理に要する時間が再生長さに応じて短くなるように進行処理が調整されるため、利用者に違和感を与えることなく、一連の取引処理において広告情報を提供することができる。
【0008】
上記の本発明の現金自動取引装置は、以下の態様を採ることもできる。例えば、進行調整部は、広告データに設定されている再生長さに合わせて特定の処理の処理速度を変化させることによって、特定の処理の進行を調整しても良い。これによって、処理速度を増減させたとしても特定の処理の実行に支障を来たさない場合に、特定の処理の進行を容易に調整することができる。
【0009】
また、進行調整部は、広告データに設定されている再生長さに合わせて特定の処理の終了を繰り上げることによって、特定の処理の進行を調整しても良い。これによって、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて短く、特定の処理の進行に時間的な余裕がある場合に、特定の処理の進行を容易に調整することができる。
【0010】
また、進行調整部は、広告データに設定されている再生長さに合わせて特定の処理の終了を延期させることによって、特定の処理の進行を調整しても良い。これによって、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて長い場合に、特定の処理の進行を容易に調整することができる。
【0011】
また、進行調整部は、広告データに設定されている再生長さに合わせて特定の処理の開始を遅延させることによって、特定の処理の進行を調整しても良い。これによって、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて長い場合に、特定の処理の進行を容易に調整することができる。
【0012】
また、進行調整部は、広告データに設定されている再生長さに合わせて特定の処理を間欠的に停止させることによって、前記特定の処理の進行を調整しても良い。これによって、広告データの再生長さが、特定の処理に要する標準的な時間に比べて長い場合に、特定の処理の進行を容易に調整することができ、また、広告情報の提供のためだけに待たされていると利用者に感じさせることを容易に防止することができる。
【0013】
また、特定の処理は、現金自動取引装置とネットワークを介して接続され取引処理を管理するホストコンピュータとの通信を行う処理,入出金される現金を勘定する現金勘定機構を駆動させる処理,取引履歴を通帳に記載する通帳印字機構を駆動させる処理の少なくとも一つの処理を含むこととしても良い。これによって、一連の取引処理のうち他の処理に比べてより利用者に待ち時間を課する特定の処理で広告情報の提供を効果的に行うことができる。特に、現金勘定機構や通帳印字機構などのメカ駆動部を動作させる処理は、メカ駆動部の動作音によって動作状態が利用者に認識され易い。そのため、広告データの提供に合わせてメカ駆動部を動作させる処理の進行を調整することによって、広告データの提供だけのために待たされているという印象を利用者に与えてしまうことをより一層防止することができる。
【0014】
また、本発明の現金自動取引装置は、更に、特定の処理の進行が調整されることを、取引処理の状況に応じて禁止する調整禁止部を備えることとしても良い。時間あたりの現金自動取引装置の稼動率が上昇する状況や、並設されている他の現金自動取引装置の故障によって処理件数の増加が予想される状況などに応じて、広告データの再生長さに合わせた取引処理の進行の調整を禁止することができるため、現金自動取引装置の稼働効率を考慮して広告情報を提供することができる。
【0015】
また、本発明の現金自動取引装置は、更に、特定の処理の進行が調整されることを、取引処理が行われる日付,曜日,時刻の少なくとも一つに応じて禁止する調整禁止部を備えることとしても良い。これによって、現金自動取引装置の処理件数の増大が予想される日付,曜日,時刻に応じて、広告データの再生長さに合わせた取引処理の進行の調整を禁止することができるため、現金自動取引装置の稼働効率を予め考慮して広告情報を提供することができる。
【0016】
なお、本発明の態様は、現金自動取引装置に限るものではなく、現金に関する一連の取引処理を行う機能を現金自動取引装置のコンピュータに実現させるためのプログラムや、現金自動取引装置の利用者に対して広告情報を提供する情報提供方法などの種々の態様に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した現金自動取引システム10について説明する。
【0018】
A.現金自動取引システム10の構成:
図1は、現金自動取引システム10の概略構成を示す説明図である。現金自動取引システム10は、利用者と銀行との間の金融取引を処理するために銀行で運用されるシステムである。現金自動取引システム10は、金融取引に関し直接的に利用者に応対する現金自動取引装置20と、現金自動取引装置20を管理するための端末管理装置30と、金融取引を集中的に管理するホストコンピュータ50とを備える。現金自動取引装置20,端末管理装置30,ホストコンピュータ50の各々の間は、LAN(Local Area Network),WAN(Wide Area Network),インターネットなどで構成されたネットワーク70を介して相互にデータのやり取りが可能に接続されている。なお、図1には、現金自動取引装置20および端末管理装置30が各一台のみ示されているが、本実施例では、実際には、複数の現金自動取引装置20が銀行の各支店に設置されており、更に、複数の現金自動取引装置20の運用形態に応じて複数の端末管理装置30が銀行の各支店に設置されている。本実施例では、ホストコンピュータ50は、銀行の各支店を統括する管理センタに設置されている。
【0019】
本実施例の現金自動取引装置20は、いわゆる現金自動預払機(ATM)であり、現金に関する一連の取引処理として、銀行口座に入金手続を行う入金処理,銀行口座からの出金手続を行う出金処理,口座残高を照会する残高照会処理,銀行口座への振り込み手続を行う振込処理などの種々の処理を行う。
【0020】
図2は、現金自動取引システム10が備える現金自動取引装置20の構成を機能的に示す説明図である。本実施例の現金自動取引装置20は、現金自動取引装置20の各部を制御する主制御部210と、現金自動取引装置20で取り扱われる種々のデータを記憶するための記憶部220と、画像を表示すると共に利用者からの操作を受け付けることによって利用者との間で情報の入出力を行うユーザインタフェースであるタッチパネル232と、音声を出力するスピーカ234と、預金通帳の認識や預金通帳への取引情報の記入を行う通帳機構部240と、預金通帳の受け渡しを利用者との間で行う通帳口242と、キャッシュカードの認識を行うカード機構部250と、キャッシュカードの受け渡しを利用者との間で行うカード口252と、取引情報が記入された取引明細票を発行する明細票機構部260と、取引明細票を利用者に引き渡す明細票口262と、入出金される紙幣を取り扱う紙幣機構部270と、紙幣の受け渡しを利用者との間で行う紙幣口272と、入出金される硬貨を取り扱う硬貨機構部280と、紙幣の受け渡しを利用者との間で行う硬貨口282と、ネットワーク70を介したデータのやり取りを行うためのネットワークインタフェース290と、現金自動取引装置20の管理者による操作を受け付けるユーザインタフェースである保守操作部295とを備える。
【0021】
現金自動取引装置20の記憶部220は、本実施例では、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、以下、HDDという)である。記憶部220には、現金自動取引装置20の利用者に対する広告を行うために再生される広告データ810が記憶されている。図3は、広告データ810の一例を示す説明図である。本実施例では、広告データ810は、MPEG(Motion Picture Experts Group)フォーマットの動画ファイルであり、広告データ810には、動画ファイルの設定を示す情報として、広告データ810の名前を示すファイル名8102と、広告データ810の再生開始から再生終了までの期間を示す再生長さ8104と、広告データ810の圧縮フォーマットを示す圧縮方式8106とが含まれる。図3に示す例では、ファイル名8102は、「住宅ローン広告」の文字列を示す情報であり、再生長さ8104は、「15秒」の時間を示す情報であり、圧縮方式8106は、「MPEG」フォーマットを示す情報である。
【0022】
図2の説明に戻り、現金自動取引装置20の主制御部210は、一連の取引処理における特定の処理である広告対象処理が行われる際に広告データ810を再生する広告再生部212と、広告データ810が再生される広告対象処理の進行を再生長さ8104に応じて調整する進行調整部214と、広告データ810が再生される広告対象処理の進行が調整されることを禁止する調整禁止部216とを備える。広告データ810を再生する際の広告再生部212は、記憶部220から広告データ810を読み出し、読み出された広告データ810をデコード(復号化)した後、広告データ810からデコードされた画像データをタッチパネル232に転送すると共に、広告データ810からデコードされた音声データをスピーカ234に転送する。これによって、画像および音声による広告情報が利用者に提供される。
【0023】
本実施例の主制御部210は、セントラルプロセッシングユニット(Central Processing Unit、以下、CPUという),リードオンリメモリ(Read Only Memory、以下、ROMという),ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、以下、RAMという)などのハードウェアを備えるコンピュータであり、オペレーティングシステム(Operating System、OS)の他、種々のアプリケーションソフトウェア(Application Software)がインストールされている。本実施例では、主制御部210の広告再生部212,進行調整部214,調整禁止部216の各機能は、ソフトウェアに基づくCPUの演算処理によって実現される。主制御部210の動作についての詳細は後述する。
【0024】
本実施例では、主制御部210の調整禁止部216による禁止を行うべき条件を示す調整禁止情報820が、記憶部220に記憶されている。図4は、調整禁止情報820の一例を示す説明図である。図4に示す例では、調整禁止情報820に示される禁止条件8202は、「毎月25日」,「金曜日」,「12:00〜13:00」の少なくとも一つの条件を満たす場合に、調整禁止部216による禁止を行うべきとする情報である。
【0025】
図1の説明に戻り、現金自動取引システム10の端末管理装置30は、本実施例では、CPU,ROM,RAM,HDDの他、現金自動取引装置20の管理者との情報のやり取りを行うインタフェース,ネットワーク70を介したデータのやり取りを行うインタフェースなどのハードウェアを備えたコンピュータであり、端末管理装置30には、OSの他、種々のアプリケーションがインストールされている。本実施例の端末管理装置30は、現金自動取引装置20を管理するための処理として、現金自動取引装置20の記憶部220に記憶されている広告データ810や調整禁止情報820を、ネットワーク70を介して更新する処理を行う。
【0026】
現金自動取引システム10のホストコンピュータ50は、本実施例では、CPU,ROM,RAM,HDDの他、各種のインタフェース回路などのハードウェアを備えたメインフレームであり、ホストコンピュータ50には、OSの他、種々のアプリケーションがインストールされている。ホストコンピュータ50は、複数の銀行口座が登録されている口座データベースを管理しており、現金自動取引装置20が口座データベースに関連する取引処理を行う際に、ネットワーク70を介して現金自動取引装置20と協働して処理を実現する。
【0027】
B.現金自動取引システム10の動作:
現金自動取引システム10の動作の一つとして、現金自動取引装置20によって実行される一連の取引処理の一例として出金処理について説明する。現金自動取引装置20の一連の取引処理は、現金自動取引装置20の主制御部210が現金自動取引装置20の各部を制御することによって実現される。図5は、現金自動取引装置20によって実行される一連の取引処理の一つである出金処理を示すフローチャートである。図5の出金処理は、現金自動取引装置20の利用者からタッチパネル232に入力された指示に基づいて開始される。
【0028】
現金自動取引装置20は、図5の出金処理を開始すると、利用者によってカード口252に挿入されたキャッシュカードを受け取り、利用者が預金通帳を通帳口242に挿入した場合には、その預金通帳を受け取る(ステップS10)。キャッシュカードが受け取られた後、現金自動取引装置20は、利用者からタッチパネル232を介して暗証番号の入力を受け付ける(ステップS20)。暗証番号の入力が受け付けられた後、現金自動取引装置20は、受け付けられた暗証番号に基づいて利用者の認証を行うための認証処理をホストコンピュータ50と協働して実行する(ステップS30)。
【0029】
利用者の認証結果が正常であれば、現金自動取引装置20は、利用者からタッチパネル232を介して出金額の入力を受け付ける(ステップS40)。出金額の入力が受け付けられた後、現金自動取引装置20は、ホストコンピュータ50に出金額を通知してホストコンピュータ50から出金の可否について通知を受けるためのホスト通信処理を実行する(ステップS50)。ホストコンピュータ50から現金自動取引装置20に出金許可の通知がなされた場合には、現金自動取引装置20は、紙幣機構部270や硬貨機構部280を駆動させることによって、現金自動取引装置20に内蔵されている現金保管庫(図示しない)から、出金額に相当する現金を取り出し、利用者に対する現金の払い出しに備えるための払出準備処理を実行する(ステップS60)。なお、本実施例では、払出準備処理(ステップS60)は、広告対象処理に設定されている。
【0030】
出金額に相当する現金が準備された後、現金自動取引装置20は、キャッシュカードを利用者に引き渡して返却する(ステップS70)。その際に、利用者から預金通帳を受け取っている場合には、現金自動取引装置20は、通帳機構部240を駆動させることによって取引記録を預金通帳に記入し、キャッシュカードと共に預金通帳を利用者に引き渡す。また、利用者から預金通帳を受け取っていない場合には、現金自動取引装置20は、明細票機構部260を駆動させることによって取引記録を明細票に記入し、キャッシュカードと共に明細票を利用者に引き渡す。キャッシュカードなどが利用者に引き渡された後、現金自動取引装置20は、払出準備されている現金を、紙幣口272や硬貨口282から利用者に払い出し(ステップS80)、出金処理を終了する。
【0031】
図6は、現金自動取引装置20の主制御部210が実行する広告制御処理を示すフローチャートである。図6に示す広告制御処理は、図5の出金処理を始めとする現金自動取引装置20の一連の取引処理のうち、広告対象処理として予め設定されている特定の処理が行われる際に、利用者に対する広告を広告データ810に基づいて実現するために実行される。本実施例では、図6の広告制御処理が実行される広告対象処理として、図5の出金処理における払出準備処理(ステップS60)が設定されている。本実施例では、図6の広告制御処理は、主制御部210が備えるCPUのソフトウェアに基づく動作によって実現される処理である。
【0032】
現金自動取引装置20の主制御部210は、広告対象処理である図5の払出準備処理(ステップS60)の開始に先立って、図6の広告制御処理を開始する。主制御部210は、図6の広告制御処理を開始すると、記憶部220に記憶されている広告データ810を参照して、広告データ810に付加情報として含まれる再生長さ8104を把握する(ステップS110)。その後、主制御部210は、広告データ810から生成される動画像データをタッチパネル232やスピーカ234に順次転送する広告再生処理を開始する(ステップS120)。これによって、広告データ810に基づく広告の提供が、タッチパネル232およびスピーカ234で実現される。
【0033】
広告再生処理が開始された後(ステップS120)、主制御部210は、実行中の取引処理の状況が、調整禁止情報820に含まれる禁止条件8202に該当するか否かを判断する(ステップS130)。例えば、図4の禁止条件8202の場合には、取引処理が実行されている状況が、「毎月25日」,「金曜日」,「12:00〜13:00」の少なくとも一つに該当する場合に、主制御部210は、取引処理の状況が禁止条件8202に該当すると判断する。
【0034】
取引処理の状況が禁止条件8202に該当する場合には(ステップS130)、主制御部210は、予め設定されている標準的な進行で広告対象処理を制御した後(ステップS150)、広告制御処理を終了する。本実施例では、取引処理の状況が禁止条件8202に該当する場合に、広告データ810の再生が完了する前に、広告対象処理が終了する場合には、主制御部210は、広告対象処理の終了に合わせて広告データ810の再生を中止する。
【0035】
一方、取引処理の状況が禁止条件8202に該当しない場合には(ステップS130)、主制御部210は、把握している再生長さ8104に応じて広告対象処理についての進行を調整した後(ステップS140)、広告制御処理を終了する。
【0036】
図7は、広告対象処理の進行に対する間欠的な停止による調整の一例を示す説明図である。図7には、紙面の左側から右側へと時間の経過が表され、上段に、広告データ810が再生される期間を示す「(a).広告提供の進行」が表され、中段に、広告対象処理の進行が調整される期間(図6中のステップS140)を示す「(b).調整された処理進行」が表され、下段に、広告対象処理の進行が標準的に行われる期間(図6中のステップS150)を示す「(c).標準的な処理進行」が表されている。本実施例では、広告対象処理は、図5の出金処理における払出準備処理(ステップS60)であり、広告対象処理の前に行われる先行処理は、図5の出金処理におけるホスト通信処理(ステップS50)であり、広告対象処理の後に行われる後続処理は、図5の出金処理における引渡処理(ステップS70)である。
【0037】
図7に示す例では、広告データ810が再生される期間である再生長さ(タイミングta1〜ta3)は、標準的な処理進行の期間(タイミングta1〜ta2)よりも長い期間である。図7における調整された広告対象処理は、間欠的に停止されることによって、広告データ810の再生が完了するに合わせて終了する(タイミングta3)。図7に示す例では、調整された広告対象処理が間欠的に停止している期間の合計は、再生長さから標準的な広告対象処理に要する期間を差し引いた期間(タイミングta2〜タイミングta3)に相当する。
【0038】
以上説明した本発明の現金自動取引システム10によれば、広告データ810に設定されている再生長さ8104に合わせて払出準備処理(ステップS60)の進行が調整されるため(ステップS140)、現金自動取引装置20の利用者に広告情報を効果的に提供することができる。また、再生長さ8104に合わせた調整(ステップS140)は、払出準備処理(ステップS60)を間欠的に停止させることによって行われるため、広告データ810の再生長さ8104が払出準備処理(ステップS60)に要する標準的な期間に比べて長い場合に、払出準備処理(ステップS60)の進行を容易に調整することができる。
【0039】
また、処理進行が調整される払出準備処理(ステップS60)は、紙幣機構部270や硬貨機構部280などのメカ駆動部を駆動させる処理であり、広告データ810が再生されている期間にメカ駆動音が断続的に発生するため、広告データ810の提供だけのために待たされているという印象を利用者に与えてしまうことを防止することができる。
【0040】
また、再生長さ8104に合わせた払出準備処理(ステップS60)の調整は(ステップS140)は、調整禁止情報820に基づいて日付,曜日,時刻に応じて禁止することができるため(ステップS130)、現金自動取引装置20の稼働効率を予め考慮して広告情報を提供することができる。
【0041】
C.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施例では、広告対象処理の進行調整として、広告対象処理を再生長さに合わせて間欠的に停止させることとしたが、種々の態様で広告対象処理の進行調整を実現することができる。
【0042】
例えば、現金自動取引装置20は、広告対象処理を標準的な処理速度よりも低速に制御することによって、広告データ810の生成長さ8104に合わせて広告対象処理を調整することとしても良い。図8は、広告対象処理の進行に対する低速動作による調整の一例を示す説明図である。図8は、「(b).調整された処理進行」における調整の態様が異なる他は、図7と同様である。図8における調整された広告対象処理は、標準的な動作よりも低速に制御されることによって、広告データ810の再生が完了するに合わせて終了する(タイミングta3)。図8に示す例では、低速に調整された広告対象処理の完了に要する期間と、標準的な広告対象処理の完了に要する期間との差は、再生長さから標準的な広告対象処理に要する期間を差し引いた期間(タイミングta2〜タイミングta3)に相当する。図8に示す低速動作による調整によれば、処理速度が低速であっても広告対象処理の実行に支障を来たさない場合に、広告対象処理の進行を容易に調整することができる。なお、図8に示すような低速動作による調整は、主制御部210におけるCPUの動作をハードウェアやソフトウェア的に遅らせることによって実現することができる。
【0043】
また、現金自動取引装置20は、広告対象処理の開始を遅延させることによって、広告データ810の生成長さ8104に合わせて広告対象処理を調整することとしても良い。図9は、広告対象処理の進行に対する開始の遅延による調整の一例を示す説明図である。図9は、「(b).調整された処理進行」における調整の態様が異なる他は、図7と同様である。図9における調整された広告対象処理は、標準的な広告対象処理の開始(タイミングta1)よりも遅れて開始されることによって、広告データ810の再生が完了するに合わせて終了する(タイミングta3)。図9に示す例では、広告対象処理の開始の遅延期間は、再生長さから標準的な広告対象処理の処理期間を差し引いた期間(タイミングta2〜タイミングta3)に相当する。図9に示す開始遅延による調整によれば、広告データ810の再生長さ8104が、広告対象処理に要する標準的な時間に比べて長い場合に、広告対象処理の進行を容易に調整することができる。
【0044】
また、現金自動取引装置20は、広告対象処理の終了を延期させることによって、広告データ810の生成長さ8104に合わせて広告対象処理を調整することとしても良い。図10は、広告対象処理の進行に対する終了の延期による調整の一例を示す説明図である。図10は、「(b).調整された処理進行」における調整の態様が異なる他は、図7と同様である。図10における調整された広告対象処理は、標準的な広告対象処理と同様に開始され(タイミングta1)、標準的な広告対象処理と同様に進行された後に待機期間を経ることによって、広告データ810の再生が完了するに合わせて終了する(タイミングta3)。図10に示す例では、後続処理を開始するまでの広告対象処理における待機期間は、再生長さから標準的な広告対象処理の処理期間を差し引いた期間(タイミングta2〜タイミングta3)に相当する。図10に示す終了延期による調整によれば、広告データ810の再生長さ8104が、広告対象処理に要する標準的な時間に比べて長い場合に、広告対象処理の進行を容易に調整することができる。
【0045】
また、現金自動取引装置20は、広告対象処理の終了を繰り上げることによって、広告データ810の生成長さ8104に合わせて広告対象処理を調整することとしても良い。図11は、広告対象処理の進行に対する終了の繰上げによる調整の一例を示す説明図である。図11は、広告データ810が再生される期間である再生長さ(タイミングtb1〜tb2)が、標準的な処理進行の期間(タイミングtb1〜tb3)よりも短い期間である点や、「(b).調整された処理進行」における調整の態様が異なる他は、図7と同様である。図11における調整された広告対象処理は、標準的な動作よりも高速に制御されることによって、広告データ810の再生が完了するに合わせて終了する(タイミングtb2)。図11に示す例では、高速に調整された広告対象処理の完了に要する期間と、標準的な広告対象処理の完了に要する期間との差は、標準的な広告対象処理の処理期間から再生長さを差し引いた期間(タイミングtb2〜タイミングtb3)に相当する。図11に示す高速動作による調整によれば、処理速度が高速であっても広告対象処理の実行に支障を来たさない場合に、広告対象処理の進行を容易に調整することができる。なお、図11に示すような高速動作による調整は、主制御部210におけるCPUの動作をハードウェアやソフトウェア的に早くすることによって実現しても良いし、広告対象処理の処理進行に標準的に設定されている待機期間を短縮することによって実現しても良い。
【0046】
また、本実施例では、図5の出金処理における払出準備処理(ステップS60)が、広告対象処理として設定されていることとしたが、出金処理における他の処理、例えば、図5の出金処理におけるホスト通信処理(ステップS50)が広告対象処理として設定されていることとしても良い。また、本実施例では、図5の出金処理における特定の処理が、広告対象処理として設定されていることとしたが、出金処理,残高照会処理,振込処理などの他の取引処理における特定の処理が、広告対象処理として設定されていることとしても良い。また、本実施例では、広告対象処理は、紙幣機構部270や硬貨機構部280を駆動させる処理であるとしたが、通帳機構部240を駆動させる処理や、ホストコンピュータ50との間で通信を行う処理など、現金自動取引装置20が行う一連の取引処理のうちの他の処理であっても良い。
【0047】
また、本実施例では、広告データ810や調整禁止情報820は、端末管理装置30の指示に基づいて記憶部220に格納されることとしたが、デフォルトとして記憶部220に予め記憶されていることとしても良い。また、現金自動取引装置20の管理者は、保守操作部295を操作することによって、記憶部220に記憶されている広告データ810や調整禁止情報820を編集することができることとしても良い。また、本実施例では、調整禁止情報820は、日付,曜日,時間を示す禁止条件8202を示すこととしたが、現金自動取引装置20の稼動率に基づく禁止条件を示す情報であっても良い。
【0048】
また、広告データ810は、動画像データに限るものではなく、音声のみのデータや、静止画像データであっても良い。また、広告データ810が静止画像データである場合には、広告データ810に設定されている再生長さは、静止画像を表示する期間を示す情報であっても良い。また、広告データ810に設定されている再生長さは、広告データ810に付加情報として含まれる情報ではなく、広告データ810とは別体の情報であっても良い。また、告データ810に設定されている再生長さは、広告データ810の再生長さ8104に、再生の繰り返し回数を乗じた情報であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】現金自動取引システム10の概略構成を示す説明図である。
【図2】現金自動取引システム10が備える現金自動取引装置20の構成を機能的に示す説明図である。
【図3】広告データ810の一例を示す説明図である。
【図4】調整禁止情報820の一例を示す説明図である。
【図5】現金自動取引装置20によって実行される一連の取引処理の一つである出金処理を示すフローチャートである。
【図6】現金自動取引装置20の主制御部210が実行する広告制御処理を示すフローチャートである。
【図7】広告対象処理の進行に対する間欠的な停止による調整の一例を示す説明図である。
【図8】広告対象処理の進行に対する低速動作による調整の一例を示す説明図である。
【図9】広告対象処理の進行に対する開始の遅延による調整の一例を示す説明図である。
【図10】広告対象処理の進行に対する終了の延期による調整の一例を示す説明図である。
【図11】広告対象処理の進行に対する終了の繰上げによる調整の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10...現金自動取引システム
20...現金自動取引装置
30...端末管理装置
50...ホストコンピュータ
70...ネットワーク
210...主制御部
212...広告再生部
214...進行調整部
216...調整禁止部
220...記憶部
232...タッチパネル
234...スピーカ
240...通帳機構部
242...通帳口
250...カード機構部
252...カード口
260...明細票機構部
262...明細票口
270...紙幣機構部
272...紙幣口
280...硬貨機構部
282...硬貨口
290...ネットワークインタフェース
295...保守操作部
810...広告データ
8102...ファイル名
8104...再生長さ
8106...圧縮方式
820...調整禁止情報
8202...禁止条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金に関する一連の取引処理を行う現金自動取引装置であって、
前記現金自動取引装置において再生され再生開始から再生終了までの期間である再生長さが設定された広告データを記憶する広告記憶部と、
前記一連の取引処理における特定の処理が行われる際に、前記記憶されている広告データを再生する広告再生部と、
前記広告データに設定されている再生長さに合わせて、前記特定の処理の進行を調整する進行調整部と
を備える現金自動取引装置。
【請求項2】
前記進行調整部は、前記広告データに設定されている再生長さに合わせて前記特定の処理の処理速度を変化させることによって、前記特定の処理の進行を調整する請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項3】
前記進行調整部は、前記広告データに設定されている再生長さに合わせて前記特定の処理の終了を繰り上げることによって、前記特定の処理の進行を調整する請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項4】
前記進行調整部は、前記広告データに設定されている再生長さに合わせて前記特定の処理の終了を延期させることによって、前記特定の処理の進行を調整する請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項5】
前記進行調整部は、前記広告データに設定されている再生長さに合わせて前記特定の処理の開始を遅延させることによって、前記特定の処理の進行を調整する請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項6】
前記進行調整部は、前記広告データに設定されている再生長さに合わせて前記特定の処理を間欠的に停止させることによって、前記特定の処理の進行を調整する請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項7】
前記特定の処理は、前記現金自動取引装置とネットワークを介して接続され前記取引処理を管理するホストコンピュータとの通信を行う処理,入出金される現金を勘定する現金勘定機構を駆動させる処理,取引履歴を通帳に記載する通帳印字機構を駆動させる処理の少なくとも一つの処理を含む請求項1ないし6のいずれか記載の現金自動取引装置。
【請求項8】
更に、前記特定の処理の進行が調整されることを、前記取引処理の状況に応じて禁止する調整禁止部を備える請求項1ないし7のいずれか記載の現金自動取引装置。
【請求項9】
更に、前記特定の処理の進行が調整されることを、前記取引処理が行われる日付,曜日,時刻の少なくとも一つに応じて禁止する調整禁止部を備える請求項1ないし7のいずれか記載の現金自動取引装置。
【請求項10】
現金に関する一連の取引処理を行う機能を現金自動取引装置のコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
前記現金自動取引装置において再生され再生開始から再生終了までの期間である再生長さが設定された広告データを記憶する機能と、
前記一連の取引処理における特定の処理が行われる際に、前記記憶されている広告データを再生する機能と、
前記広告データに設定されている再生長さに合わせて、前記特定の処理の進行を調整する機能と
を実現させるためのプログラム。
【請求項11】
現金に関する一連の取引処理を行う現金自動取引装置において、前記現金自動取引装置の利用者に広告情報を提供する情報提供方法であって、
前記現金自動取引装置において再生され再生開始から再生終了までの期間である再生長さが設定された広告データを前記現金自動取引装置に記憶しておき、
前記一連の取引処理における特定の処理が行われる際に、前記記憶されている広告データを再生し、
前記広告データに設定されている再生長さに合わせて、前記特定の処理の進行を調整する
情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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