説明

球の表面積の公式学習用数学教材

【課題】球の表面積の公式を、体験に基づく実感的な理解をもとに導く数学教材を実現することを課題とする。
【解決手段】本発明によれば、半球と、前記半球の表面又は内面に沿って密に配置した第1のチューブと、前記半球の半径と等しい半径を有する2つの円の内部に密接して配置した前記第1のチューブと内径が等しく、且つ、長さが等しい第2のチューブと、前記第1のチューブと前記第2のチューブとを接続する第3のチューブと、を有する数学教材が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空間図形の理解を促すための数学教材に関する。特に、体験に基づく実感的な理解をもとに球表面積の公式を理解するための数学教材に関する。
【背景技術】
【0002】
図形に関する教育は、数学教育において重要な領域の1つである。図形領域の学習では、体験に基づく実感的な理解をもとに、身の回りにあるものを図形としてとらえてその性質や関係などを明らかにすることや、図形の性質などを、根拠を明らかにして筋道を立て説明したり、その説明から新たな性質や関係を読み取ったりすることを重視すべきであるとの意見が高まりつつある。
【0003】
二次元である平面図形は、教科書に図示された平面的な図を基に、理解させることは比較的容易であるが、三次元である空間図形においては、その性質や関係などの理解を促すためには、教科書に図示された平面的な図だけでは十分とは言えない。
【0004】
球においては、平面の組合せからなる他の空間図形とは異なり、その性質や関係などを平面的な図のみを基に理解することは容易ではない。球の半径をr、円周率をπと置くとき、球の表面積Sが公式(1)により示されることは、広く知られるところである。

S=4πr ・・・(1)

【0005】
しかし、三次元である球と二次元である球の表面積との関係を表す前記公式(1)を平面的な図だけで理解することは難しく、前記公式(1)を数学的に導くためには、高校数学における微分や積分の学習が待たれる。
【0006】
このため、上記の公式(1)を体験に基づく実感的な理解をもとに導くことができる、極力単純な機構の数学教材が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は球の表面積の公式を、体験に基づく実感的な理解をもとに導く数学教材を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、半球と、前記半球の表面又は内面に沿って密に配置した第1のチューブと、前記半球の半径と等しい半径を有する2つの円の内部に密接して配置した前記第1のチューブと内径及び長さが等しい第2のチューブと、前記第1のチューブと前記第2のチューブとを接続する第3のチューブと、を有する球の表面積の公式学習用数学教材が提供される。
【0009】
前記球の表面積の公式学習用数学教材は、前記第1のチューブ、前記第2のチューブ及び前記第3のチューブが、連続する一本のチューブであってもよい。
【0010】
前記球の表面積の公式学習用数学教材は、前記第1のチューブ及び前記第2のチューブが透明あるいは半透明であってもよい。
【0011】
また、本発明の一実施形態によると、球と、前記球の表面又は内面に沿って密に配置した第1のチューブと、前記球の半径と等しい半径を有する4つの円の内部に密接して配置した前記第1のチューブと内径が等しく、且つ、その長さの合計が前記第1のチューブの長さと等しい第2のチューブ及び第3のチューブと、前記第1のチューブと前記第2のチューブ及び前記第3のチューブとを接続する第4のチューブと、を有する球の表面積の公式学習用数学教材が提供される。
【0012】
前記球の表面積の公式学習用数学教材は、前記第1のチューブ、前記第2のチューブ及び前記第3のチューブが、連続する一本のチューブであってもよい。
【0013】
前記球の表面積の公式学習用数学教材は、前記第1のチューブ及び前記第2のチューブ及び前記第3のチューブが透明あるいは半透明であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、動的な操作により、球の表面積の公式を、視覚的な体験に基づき実感的、且つ容易に理解し、導くことが出来る数学教材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る球の表面積の公式を体験に基づく実感的な理解をもとに導く数学教材について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態において、同様の構成については同じ符号を付し、改めて説明しない場合がある。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1の本発明に係る数学教材本体100の正面図である。数学教材本体100は、半球部110と円面積部120およびフレーム141とを有する。
【0017】
図2は、本実施形態1の本発明に係る前記半球部110の拡大図である。前記半球部110は、半球111と前記半球111表面に配置したチューブ113とを有する。前記チューブ113は、前記半球111の内面に配置してもよい。
【0018】
また、前記チューブ113は、前記半球111の開口部先端から渦巻状に、渦巻の中心に向かって巻きつけられる。本実施形態1の本発明に係るチューブ113の配置は、チューブが前記半球111の表面に密に配置され、且つ、チューブに流体を流した時にその流れを遮らない配置であれば、如何なる配置でもよい。
【0019】
前記半球部110の表面積を精度良く表すためには、前記チューブ113は、耐圧性の維持が可能な範囲で、その内径と、外径との差が小さく、且つ、細いチューブであることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態1の本発明に係るチューブ113は、半球状に配置が保たれれば、前記半球111は無くてもよい。
【0021】
一方、前記円面積部120は、チューブ121と前記チューブ121を保持する保持板123とを有する。前記チューブ121は、一方の円の中心部から外側に向かって巻かれ、続いて、もう一方の円の外側から内側へ巻かれた2つの円形状に巻き付けられる。前記2つの円形状に巻き付けられたチューブ121の内径は、前記半球111表面に巻き付けたチューブ113の内径に等しく、且つ、前記2つの円形状に巻き付けられたチューブ121は、前記半球111表面に巻き付けたチューブ113の長さに等しい。また、前記円形に巻き付けたチューブ121の各々の円の半径は、前記半球部110の半径に等しい。
【0022】
図3は、本実施形態1の本発明に係る数学教材本体100の側面図で、図4は本実施形態1の本発明に係る数学教材本体100の背面図である。前記半球部110と前記円面積部120とは、十分な長さのチューブ133により接続されており、前記半球部110はフレーム141から取り外すことができる。
【0023】
前記チューブ113と前記チューブ121とは、チューブ133により接続される。前記チューブ133は、2つの渦巻状に密に巻き付けた前記チューブ121の一方の円の中心部に接続され、もう一方の円の中心部からは廃液チューブ135へ接続される。図3では、チューブ133は背面から見て渦巻状に巻き付けたチューブ121の左側の中心部に接続され、円形に巻き付けたチューブ121の右側で廃液チュ−ブ135は接続されるが、本実施形態1の本発明に係るチューブの接続方法は逆であってもよい。
【0024】
また、本実施形態1の本発明に係るチューブ121の配置は、渦巻状に限定されるものではなく、チューブが密に配置され、且つ、チューブに流体を流した時にその流れを遮らない円形の配置であれば、渦巻状の配置以外の如何なる配置であってもよい。
【0025】
前記円面積部120の円の面積を精度良く表すためには、前記チューブ133と同様に、前記チューブ121は、耐圧性の維持が可能な範囲で、その内径と、外径との差が小さく、且つ、細いチューブであることが好ましい。
【0026】
ここで、本実施形態1の本発明に係るチューブ113及び121は、透明もしくは半透明な素材からなる。
【0027】
本実施形態1の本発明に係る前記チューブ113、前記チューブ133及び前記チューブ121とは、便宜的に3本のチューブとして示したが、一続きの1本のチューブにより形成されてもよい。
【0028】
教材としては、まず、前記半球部110と、前記円面積部のチューブ121がなす円とは半径が等しいことを示す。図5に示すように前記半球部110を前記フレーム141からはずし、前記半球部110の円形状断面を前記円面積部120の渦巻状に密に巻き付けた前記チューブ121の一方若しくはそれぞれに重ね合わせる。前記重ね合わせにより、前記半球部110と、前記円面積部のチューブ121がなす円とは半径が等しいことを視覚的に確認することが出来る。
【0029】
次に、前記半球部110の表面積と、前記円面積部のチューブ121がなす2つの円の面積の合計と、が等しいことを示す。前記チューブ131に色のついた溶液が入った注射器を接続する。そして、前記注射器からチューブ131を通してチューブ113に前記色のついた溶液を導入する。図6は、チューブ113に色のついた溶液を導入した様子を模式的に示した図である。これにより、前記チューブ113に導入された前記色のついた溶液が前記半球部の半球表面を示すことが視覚的に確認できる。
【0030】
次に、注射器をチューブ131から取り外し、注射機内に残った前記色のついた溶液を抜き、注射器を用いて空気をチューブ113導入することにより、前記チューブ133を通して、前記色のついた溶液を前記半球部110から前記円面積部120の円形に巻き付けたチューブ121に導入する。図7は、チューブ121に前記色のついた溶液を導入した様子を模式的に示した図である。これにより、前記半球部110の半球表面積と前記円面積部120の2つの円の面積が等しいことが視覚的に確認できる。
【0031】
ここで、本実施形態1の本発明に係る前記色のついた溶液は、チューブに対する付着性や染色性、腐食性、毒性のない溶液であれば何れを用いてもよい。また、有色の流体であれば、気体等を用いてもよい。
【0032】
上述の操作を精度良く行うためには、前記チューブ131を用いずに、前記注射器から前記チューブ113に前記色のついた溶液を直接導入することも出来る。
【0033】
また、予め前記チューブ131を前記チューブ113から取り外し、前記注射器に取り付けて前記色のついた溶液を吸い上げ、前記チューブ131に前記色のついた溶液を満たした状態で前記チューブ113に接続して、前記色のついた溶液を導入する。その後、前記チューブ131ごと前記注射器を取り外し、前記注射器及び前記チューブ131内から前記色のついた溶液を除き、空気を吸い上げて、前記チューブ113に接続して空気を前記チューブ113に導入することにより精度良く前記色のついた溶液を前記数学教材本体100内に導入することが出来る。
【0034】
ところで、本実施形態1の本発明に係る数学教材本体100の前記半球部110と、前記円面積部120とにおいては、チューブを巻くことにより半球の表面積及び円の面積を表したが、半球部においては、例えば、大きさの異なる2つの半球を用いて、色のついた溶液を導入するための空間を形成することもできる。また、円面積部には、板の張り合わせ等により、前記半球部の空間と同じ厚さで、且つ、前記半球部の半径と同じ半径の2つの円となるように空間を形成してもよい。
【0035】
上述の本実施形態1の本発明に係る数学教材本体100を用いた説明により、半径がrである半球の表面積は、半径がrである円の面積2つ分に等しく、球の表面積は、半球の表面積の2倍であるから、半径がrである円の面積4つ分に等しいことが導かれる。よって、球の表面積Sは円の面積πrの4倍であるとして公式(1)が体験に基づく実感的な理解をもとに導かれる。
【0036】
以上説明したように、本発明の本実施形態に係る数学教材は、色のついた溶液を半球部から円面積部へ移動させることにより、半径がrである半球の表面積は、半径がrである円の面積2つ分に等しいことを、視覚的な体験に基づき実感的、且つ容易に理解することができるという優れた効果を奏し、球の表面積を求める公式を容易に導くことが出来る。
【0037】
(実施形態2)
図8は、本実施形態2の本発明に係る数学教材本体200の背面図である。実施形態2は、実施形態1における半球部110を球部210に変更した点と、円面積部のチューブ121により形成される2つの円をチューブ221及びチューブ225により形成される4つの円に変更した点で実施形態1と異なる。
【0038】
本実施形態2の本発明に係る数学教材本体200は、球部210と円面積部220およびフレーム241とを有する。
【0039】
球部210は、球211と前記球211表面に配置したチューブ213とを有する。前記チューブ213は、前記球211の内面に配置してもよく、前記チューブ213の配置については、実施形態1と同様に、球211の表面の第1の点から、球211の中心に対して点対称である第2の点に向かって、渦巻状に巻きつけられる。本実施形態2の本発明に係るチューブ213の配置は、チューブが前記球211の表面に密に配置され、且つ、チューブに流体を流した時にその流れを遮らない配置であれば、如何なる配置でもよい。
【0040】
また、本実施形態2の本発明に係るチューブ213は、球状に配置が保たれれば、前記球211は無くてもよい。
【0041】
一方、前記円面積部220は、チューブ221及びチューブ225と、前記チューブ221及びチューブ225を保持する保持板228とを有する。前記チューブ221及びチューブ225は、実施形態1の本発明のチューブ121の配置と同様の配置を2つ並列に並べたものである。よって、前記チューブ221及びチューブ225からなる4つの円形状に巻き付けられたチューブの内径は前記球211表面に巻き付けたチューブ215の内径に等しく、且つ、前記チューブ221及びチューブ225の長さの合計は、前記球211表面に巻き付けたチューブ213の長さに等しい。また、前記円形に巻き付けた前記チューブ221及び前記チューブ225からなるそれぞれ4つの円の半径は、前記球部210の半径に等しい。
【0042】
前記球部210と前記円面積部220とは、十分な長さのチューブ233により接続されており、前記球部210はフレーム241から取り外すことができる。
【0043】
また、本実施形態2の本発明に係る数学教材本体200では、球部210に接続したチューブ233は、三方活栓229を介してチューブ221の導入口222に接続する。また一方で、前記三方活栓229は、チューブ235を介して前記チューブ225の導入口226に接続する。ここで、前述の接続方法とは逆に、前記三方活栓229を前記導入口226に接続し、前記チューブ235を前記導入口222に接続してもよい。
【0044】
前記チューブ221は、排出口227にチューブ237が接続され、前記チューブ225は、排出口223にチューブ235が接続され、それぞれ廃液入れにつながる。
【0045】
ところで、本実施形態2の本発明に係る前記チューブ233と、前記チューブ221及び前記チューブ225との接続方法としては、三方活栓に代えて、2本の内径及び長さの等しいチューブを前記チューブ223に接続し、それぞれのチューブを前記導入口222と前記導入口226とに接続する方法であってもよい。
【0046】
また、前記チューブ221及びチューブ225とは、表裏に密接して配置することにより、前記チューブ233を前記チューブ221の導入口222及び前記チューブ225の導入口226と、に直接接続することも出来る。前記接続方法においては、前記三方活栓229及び前記チューブ235を用いる必要はない。
【0047】
ここで、前記チューブ221及びチューブ225の円形状に配置するための配置方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0048】
前記半球部210の表面積及び前記円面積部220の4つの円の面積を精度良く表すためには、前記チューブ213と前記チューブ221及び前記チューブ225とは、耐圧性の維持が可能な範囲で、その内径と、外径との差が小さく、且つ、細いチューブであることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態2の本発明に係るチューブ213、221及び225は、透明もしくは半透明な素材からなる。
【0050】
教材としては、まず、前記球部210と、前記円面積部のチューブ221もしくはチューブ225がなす円とを重ね合わせることにより、両者の半径が等しいことを示す。前記重ね併せにより、前記半球部210と、前記円面積部220のチューブ221及びチューブ225がなす円とは半径が等しいことを視覚的に確認することが出来る。
【0051】
次に、前記球部210の表面積と、前記円面積部220のチューブ221とチューブ225からなる4つの円の面積の合計と、が等しいことを示す。実施形態1と同様に前記チューブ213に導入された色のついた溶液が、前記球部210の球表面を示すことが視覚的に確認できるため、説明は省略する。
【0052】
次に、注射器をチューブ231から取り外し、注射機内に残った前記色のついた溶液を抜き、注射器を用いて空気をチューブ213導入する。前記三方活栓229を切り替え、前記色のついた溶液を前記円面積部220の前記導入口222から前記チューブ221へ導入する。次に前記三方活栓229を切り替え、前記色のついた溶液を前記導入口226から前記チューブ225へ導入する。これにより、前記球部210の球表面積と前記円面積部220の4つの円の面積の合計とが等しいことが視覚的に確認できる。
【0053】
上述の操作を精度良く行うための、前記チューブ231の差し替え等の操作は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0054】
ここで、本実施形態2の本発明に係る前記色のついた溶液は、チューブに対する付着性や染色性、腐食性、毒性のない溶液であれば何れを用いてもよい。また、有色の流体であれば、気体等を用いてもよい。
【0055】
ところで、本実施形態2の本発明に係る数学教材本体200の前記球部210と、前記円面積部220とにおいては、チューブを巻くことにより球の表面積及び円の面積を表したが、球部においては、例えば、大きさの異なる2つの球を用いて、色のついた溶液を導入するための空間を形成することもできる。また、円面積部には、板の張り合わせ等により、前記球部の空間と同じ厚さで、且つ、前記球部の半径と同じ半径の4つの円となるように空間を形成してもよい。
【0056】
上述の本実施形態2の本発明に係る数学教材本体200を用いた説明により、半径がrである球の表面積は、半径がrである円の面積4つ分に等しいことが導かれる。よって、球の表面積Sは円の面積πrの4倍であるとして公式(1)が体験に基づく実感的な理解をもとに導かれる。
【0057】
以上説明したように、本発明の本実施形態に係る数学教材は、色のついた溶液を球部から円面積部へ移動させることにより、半径がrである球の表面積は、半径がrである円の面積4つ分に等しいことを、視覚的な体験に基づき実感的、且つ容易に理解することができるという優れた効果を奏し、球の表面積を求める公式を容易に導くことが出来る。
【0058】
(実施形態3)
図9は、本実施形態3の本発明に係る数学教材本体300の背面図である。実施形態3は、実施形態2における円面積部の4つの円を形成する2本のチューブの接続方法を並列から直列に変更した点で実施形態2と異なる。
【0059】
本実施形態3の本発明に係る数学教材本体300は、球部210と円面積部320およびフレーム241とを有する。
【0060】
球部210は、実施形態2と同様であるため、説明は省略する。
【0061】
一方、前記円面積部320は、チューブ321及びチューブ325と、前記チューブ321及びチューブ325を保持する保持板329とを有する。前記チューブ321及びチューブ325は、実施形態2の本発明の前記チューブ221と前記チューブ225との配置と同様であるため、説明は省略する。
【0062】
前記球部210と前記円面積部320とは、十分な長さのチューブ331により接続されており、前記球部210はフレーム241から取り外すことができる。
【0063】
実施形態3の本発明に係る数学教材本体300では、球部210に接続したチューブ331は、前記チューブ321の導入口322に接続する。前記チューブ321の排出口323と前記チューブ325の導入口326とは、チューブ333により接続される。前記チューブ325の排出口327には、チューブ335が接続され、廃液入れにつながる。
【0064】
ここで、前述の接続方法とは逆に、前記チューブ331を前記導入口327に接続し、前記チューブ335を前記排出口322に接続してもよい。前記チューブ321及びチューブ325の円形状に配置するための配置方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。また、実施形態3の本発明に係る数学教材本体300の円面積部の円形に巻き付けたチューブを直列に配置する方法は、何らこれらに限定されるものではなく、1本のチューブを用いて4つの円状に配置してもよい。
【0065】
また、実施形態3の本発明に係る数学教材本体300の前記チューブ213、前記チューブ331、前記チューブ321及び前記チューブ325とは、便宜上4本のチューブとして表したが、前記の1本のチューブを用いて4つの円状に配置する場合には、全てのチューブを一続きの1本のチューブで形成してもよい。
【0066】
前記チューブ333は、耐圧性の維持が可能な範囲で、その内径が出来る限り小さいチューブを用いるようにしてもよい。チューブ333に出来る限り内径の小さいチューブを用いることにより、数学教材本体300のチューブ全体の容積に対する前記チューブ333の容積の割合を小さくし、チューブ333による容積増加の影響を小さくすることが出来る。
【0067】
前記半球部210の表面積及び前記円面積部320の4つの円の面積を精度良く表すためには、前記チューブ213と前記チューブ321及び前記チューブ325とは、耐圧性の維持が可能な範囲で、その内径と、外径との差が小さく、且つ、細いチューブであることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態3の本発明に係るチューブ213、321及び325は、透明もしくは半透明な素材からなる。
【0069】
教材としては、前記球部210の半径と、前記円面積部のチューブ321もしくはチューブ325がなす円の半径が等しいことを示す方法は、実施形態2と同様である。また、前記チューブ213に導入された色のついた溶液が、前記球部210の球表面を示すことを視覚的に確認する方法も実施形態2と同様であるため、説明は省略する。
【0070】
注射器をチューブ231から取り外し、注射機内に残った前記色のついた溶液を抜き、注射器を用いて空気をチューブ213導入することにより、前記チューブ331を通して、前記色のついた溶液を前記球部210から前記円面積部320の円形に巻き付けた前記チューブ321及び前記チューブ325に導入する。これにより、前記球部210の球表面積と前記円面積部320の4つの円の面積が等しいことが視覚的に確認できる。
【0071】
上述の操作を精度良く行うための、前記チューブ231の差し替え等の操作は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0072】
ここで、本実施形態3の本発明に係る前記色のついた溶液は、チューブに対する付着性や染色性、腐食性、毒性のない溶液であれば何れを用いてもよい。また、有色の流体であれば、気体等を用いてもよい。
【0073】
実施形態3の本発明に係る数学教材本体300の前記球部210と、前記円面積部320とにおいては、チューブを巻くことにより球の表面積及び円の面積を表したが、球部においては、例えば、大きさの異なる2つの球を用いて、色のついた溶液を導入するための空間を形成することもできる。また、円面積部には、板の張り合わせ等により、前記球部の空間と同じ厚さで、且つ、前記球部の半径と同じ半径の4つの円となるように空間を形成してもよい。
【0074】
上述の本実施形態3の本発明に係る数学教材本体300を用いた説明により、半径がrである球の表面積は、半径がrである円の面積4つ分に等しいことが導かれる。よって、球の表面積Sは円の面積πrの4倍であるとして公式(1)が体験に基づく実感的な理解をもとに導かれる。
【0075】
以上説明したように、本発明の本実施形態に係る数学教材は、色のついた溶液を球部から円面積部へ移動させることにより、半径がrである球の表面積は、半径がrである円の面積4つ分に等しいことを、視覚的な体験に基づき実感的、且つ容易に理解することができるという優れた効果を奏し、球の表面積を求める公式を容易に導くことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半球部110の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100の背面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100を用いた使用例の模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100の半球部110に色のついた溶液を導入した模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る数学教材本体100の円面積部120に色のついた溶液を導入した模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る数学教材本体200の背面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る数学教材本体300の背面図である。
【符号の説明】
【0077】
100 実施形態1の本発明に係る数学教材本体
110 半球部
111 半球
113 チューブ
120 円面積部
121 チューブ
123 保持板
131 チューブ
133 チューブ
135 チューブ
141 フレーム
200 実施形態2の本発明に係る数学教材本体
210 球部
211 球
213 チューブ
220 円面積部
221 チューブ
222 導入口
223 排出口
225 チューブ
226 導入口
227 排出口
228 保持板
229 三方活栓
231 チューブ
233 チューブ
235 チューブ
237 チューブ
241 フレーム
300 実施形態3の本発明に係る数学教材本体
320 円面積部
321 チューブ
322 導入口
323 排出口
325 チューブ
326 導入口
327 排出口
329 保持板
331 チューブ
333 チューブ
335 チューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球と、
前記半球の表面又は内面に沿って密に配置した第1のチューブと、
前記半球の半径と等しい半径を有する2つの円の内部に密接して配置した前記第1のチューブと内径及び長さが等しい第2のチューブと、
前記第1のチューブと前記第2のチューブとを接続する第3のチューブと、
を有する球の表面積の公式学習用数学教材。
【請求項2】
前記第1のチューブ、前記第2のチューブ及び前記第3のチューブは、連続する一本のチューブであることを特徴とする請求項1に記載の球の表面積の公式学習用数学教材。
【請求項3】
前記第1のチューブ及び前記第2のチューブは透明あるいは半透明であることを特徴とする請求項1又は2に記載の球の表面積の公式学習用数学教材。
【請求項4】
球と、
前記球の表面又は内面に沿って密に配置した第1のチューブと、
前記球の半径と等しい半径を有する4つの円の内部に密接して配置した前記第1のチューブと内径が等しく、且つ、その長さの合計が前記第1のチューブの長さと等しい第2のチューブ及び第3のチューブと、
前記第1のチューブと前記第2のチューブ及び前記第3のチューブとを接続する第4のチューブと、
を有する球の表面積の公式学習用数学教材。
【請求項5】
前記第1のチューブ、前記第2のチューブ及び前記第3のチューブは、連続する一本のチューブであることを特徴とする請求項4に記載の球の表面積の公式学習用数学教材。
【請求項6】
前記第1のチューブ及び前記第2のチューブ及び前記第3のチューブは透明あるいは半透明であることを特徴とする請求項4又は5に記載の球の表面積の公式学習用数学教材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−49025(P2010−49025A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213216(P2008−213216)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)