説明

球出し装置

【課題】 従来の球出し装置では、球出しされる球の強さが強過ぎたり、球出しされる球の軌跡がバラバラとなって同じような軌跡を取る球出しができない。
【解決手段】 装置フレーム4に回動自在に支持されると共に供給されるテニスボール2を打ち出すテニスラケット3と、そのテニスラケット3の回動軌跡上にテニスボール2を供給する球トス機構5と、テニスラケット3を回動させるスイング機構6と、を備えている。スイング機構6は、球トス機構5と共通の1個の駆動モータユニット12により同期させて回動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスや野球等のボール、或いは卓球の球等の球をプレーヤに自動的に供給する球出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の球出し装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、野球の打撃練習などに用いるピッチングマシンに関するものが記載されている。このピッチングマシンは、「外部から与えられた回転動力により回転する凸部を有する回転体と、自由に回転する状態で一端部が上記回転体と同軸上に位置し上記回転体の凸部によって一方向の回転のみに拘束される第1のアームと、この第1のアームの他端部に基端部が回転可能に設けられ先端部に球が乗せられるハンドを有する第2のアームと、上記第1のアームに投球方向の回転力を与える第1のバネと、上記第1のアームと上記第2のアームとに跨って設けられ第2のアームに投球方向の回転力を与える第2のバネと、上記第2のアームに取り付けられ第2のアームの回転が規制される被回転規制部と、この被回転規制部に当接し上記第2のアームの回転を規制する回転規制部とを備えた」ことを特徴としている。
【0003】
このような構成を有するピッチングマシンによれば、「第2のアームの回転途中、回転規制部と被回転規制部との協働により、第2のアームは投手が球を投げる際の腕の運動を模擬した軌道を描くことができ、打者にとって人間が投げる球を打つタイミングの養成が可能となる」等の効果が期待される。
【0004】
また、従来の他の球出し装置としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、卓球のトレーナーロボットに関するものが記載されている。このトレーナーロボットは、「前腕(アーム)を振らせる軸を傾斜させて、打球点の前後の距離を長くし、左右の送球角度を広げた」ことを特徴としている。
【特許文献1】特開平7−185056号公報
【特許文献2】特開平5−245238号公報
【0005】
しかしながら、上述したような従来の球出し装置においては、特許文献1に記載された直列接続された2つのアームがスイングする機構では、人間が強く投げるときの球が球出しされるため、その球を受けて打ち返そうとするプレーヤに掛かる負荷が大きなものになる。また、特許文献2に記載されたバウンドさせた球を打つ機構では、球のコンディション(状態)によってバウンドに変化が生じ、その球の跳ね返りの高さや角度が変化することになる。そのため、打撃具によって打ち出される球の軌跡が一定せず、同じような軌跡を取る球出しができないという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、従来の球出し装置では、球出しされる球の強さが強過ぎたり、球出しされる球の軌跡がバラバラとなって同じような軌跡を取る球出しができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の球出し装置は、装置本体に回動自在に支持されると共に供給される球を打ち出す打撃具と、その打撃具の回動軌跡上に球を供給する球トス機構と、打撃具を回動させるスイング機構と、を備え、スイング機構は、球トス機構と共通の1個の動力源により同期させて回動可能に構成したことを最も主要な特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2記載の球出し装置は、球トス機構は、少なくとも1個の球をセット位置に保持するガイドレールと、セット位置に保持された球を回動により1個ずつ送り出す球送りレバーと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3記載の球出し装置は、ガイドレールは長手方向に連続したガイド溝を有し、そのガイドレールを傾斜させて設置すると共に、ガイド溝の中途部に球を停止可能な凸部を設けてセット位置を形成したことを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4記載の球出し装置は、スイング機構は、動力源によって回転駆動される回転板と、その回転板によって回転駆動されるはずみ車と、そのはずみ車と一体に回転される駆動ギアと、その駆動ギアに噛合されると共に打撃具の回転軸に固定される従動ギアと、を有し、はずみ車の回転軸に球送りレバーを固定したことを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5記載の球出し装置は、スイング機構は、駆動ギアを欠歯ギアで形成すると共に、はずみ車に引っ張りバネ力を付与する弾性体を設け、その弾性体のバネ力による死点をはずみ車が越えるときに欠歯ギアの歯部が従動ギアに噛み合うように構成したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項6記載の球出し装置は、打撃具は、装置本体の傾斜面に沿って回動するように支持したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載の球出し装置によれば、打撃具と球トス機構とスイング機構とを備え、1個の動力源でスイング機構と球トス機構を同期させて回動動作させる構成とすることにより、打撃具に掛かる負荷が小さく、一定の強さの球出しを行うことができると共に、1個の動力源のみで動作させることができる構造の簡単な装置を提供することができる。
【0014】
本発明の請求項2記載の球出し装置によれば、球トス機構をガイドレールと球出しレバーとで構成することにより、簡単な構造によって球出し機構を構成することができると共に、玉を1個ずつ確実に取り出して、打撃具の回動軌跡上に柔らかく供給することができる。
【0015】
本発明の請求項3記載の球出し装置によれば、ガイドレールで形成し、その溝の中途部に凸部を設けてセット位置を形成する構成とすることにより、玉を1個ずつ確実にセット位置にセットすることができる。
【0016】
本発明の請求項4記載の球出し装置によれば、スイング機構を回転板とはずみ車と駆動ギアと従動ギアとで構成し、はずみ車の回転軸に球送りレバーを固定することにより、球送りレバーと打撃具とに異なる動きを与えることができ、球送りレバーで送り出した球を打撃具で打って、一定の球出し作業を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項5記載の球出し装置によれば、スイング機構の駆動ギアを欠歯ギアで形成すると共にはずみ車に弾性体のバネ力を作用させ、そのバネ力による死点を越えたときに欠歯ギアの歯部を従動ギアに噛み合わせる構成とすることにより、弾性体のバネ力で打撃具を回動させて球を打撃することができ、スイング機構を極めて簡単に構成できると共に、供給される球を確実に打撃して一定の強さの球出しを行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項6記載の球出し装置によれば、装置本体の傾斜面に打撃具を回動自在に支持することにより、欠歯ギアの歯部と従動ギアとの噛み合いが解除されたときに、自重によって打撃具を元の位置に復帰することができ、動力を用いることなく次の打ち出し作業の準備を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
打撃具に掛かる負荷を小さくし、一定の球出しを確実に行うことができる球出し装置を、簡単な構造によって実現した。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図9は、本発明の球出し装置の実施の形態の例を説明するものである。即ち、図1〜図5は本発明の球出し装置の一実施例の概略構成とその動作を示すそれぞれ説明図、図6及び図7は本発明に係るスイング機構の動作を説明するそれぞれ説明図、図8及び図9は本発明に係る球トス機構の要部を示す平面図及びX−X線断面図である。
【0021】
図1〜図5に示す本実施例に係る球出し装置1は、球の一具体例を示すテニスボール2をプレーヤに向けて連続的に打ち出すことができるようにしたテニスボール球出し装置1である。このテニスボール球出し装置1は、打撃具の一具体例を示すテニスラケット3と、このテニスラケット3を水平方向と適宜な角度をなして回転自在に支持する装置本体の一具体例を示す装置フレーム4と、テニスボール2を1個ずつテニスラケット3の回動軌跡上に供給して球出しする球トス機構5と、テニスラケット3を回動してスイングさせるスイング機構6等を備えて構成されている。
【0022】
装置フレーム4は、例えば多数の形鋼、板材等を溶接等により接合して立体的に構成した構造体からなる。具体的には、装置フレーム4は、4本の底面材を四角形に連結させた底枠体7と、この底枠体7の四隅に立ち上げられた4本の縦枠材8a〜8dと、これら4本の縦枠材8a〜8d間に掛け渡された3本の横枠材9a〜9c及び2本の斜枠材10a,10bとから構成されている。第1及び第2の縦枠材8a,8bは略同じ高さに設定されていて、第3の縦枠材8cは第1の縦枠材8aの略1/2の高さに設定され、第4の縦枠材8dは第3の縦枠材8cよりも十分に低く設定されている。
【0023】
第1の縦枠材8aの頂部と第2の縦枠材8bの頂部との間には、水平方向に延在された第1の横枠材9aが掛け渡されている。第3の縦枠材8cの頂部と第2の縦枠材8bとの間には、同じく水平方向に延在された第2の横枠材9bが掛け渡されている。更に、第4の縦枠材8dの頂部と第1の縦枠材8aとの間には、水平方向に延在された第3の横枠材9cが掛け渡されている。第4の縦枠材8dの頂部と第3の縦枠材8cの頂部との間には、適当な角度に傾斜された第1の斜枠材10aが掛け渡されている。そして、第1の縦枠材8aと第2の縦枠材8bとの間には、第1の斜枠材10aに対応するよう同じ高さ位置において同じ傾斜角度によって第2の斜枠材10bが掛け渡されている。
【0024】
第1の斜枠材10aと第2の斜枠材10bとの間には、装置の基準面となる底枠体7に対して所定角度に傾斜されたベースプレート11が掛け渡されて一体的に固定されている。このベースプレート11にスイング機構6が取り付けられている。スイング機構6は、動力源の一具体例を示す駆動モータユニット12と、この駆動モータユニット12によって回転駆動される回転板の一具体例を示す回転ギア13と、この回転ギア13によって回転駆動されるはずみ車14と、このはずみ車14と一体的に回転駆動される駆動ギアの一具体例を示す欠歯ギア15と、この欠歯ギア15によって回転駆動される従動ギア16等を備えて構成されている。
【0025】
駆動モータユニット12は、図示しない電源スイッチの操作によってオン・オフされる電動モータ20と、この電動モータ20の回転を減速させることによりトルクを増大させて出力する減速機21とから構成されている。この駆動モータユニット12がベースプレート11の上面に固定されていて、減速機21の出力軸21aがベースプレート11を貫通して下方に突出されている。減速機21の出力軸21aには出力ギア22が固定されており、その出力ギア22に回転ギア13が噛合されている。
【0026】
図6及び図7に示すように、回転ギア13は、ボールベアリング等の軸受部材23を介して回転軸24に回転自在に支持されている。回転軸24は、図示しない軸受部材を介してベースプレート11に回転自在に支持されている。回転軸24は、ベースプレート11の支持面である上面に対して略直角をなすよう斜め上方に延在されていると共に、その上下方向の高さを一定とするように保持されている。回転軸24の下端には、円盤状をなすはずみ車14が一体的に固定されている。はずみ車14と回転ギア13とは、回転軸24の軸方向に所定の隙間をあけて同軸上に配置されている。
【0027】
回転ギア13の下面には、はずみ車14側に突出する連れ回しピン25が設けられている。この連れ回しピン25に対応してはずみ車14の上面には、連れ回しピン25と同一円周上に突出する係合突起26が設けられている。この係合突起26が連れ回しピン25で押圧されることにより、はずみ車14が回転ギア13と同方向に回転される。はずみ車14の下面には、下方に突出するバネ受けピン27が設けられている。バネ受けピン27には、はずみ車14に対して引っ張りバネ力を付与する弾性体の一具体例を示すコイルバネ28の一端が掛け止められている。コイルバネ28の他端は、第3の縦枠材8cに設けたバネ受け片29に少々引っ張り力を加えた状態で掛け止められている。
【0028】
また、回転ギア13の上方には、適当な間隔をあけて欠歯ギア15が同軸上に配置されている。欠歯ギア15は回転軸24と一体に構成されており、従って、はずみ車14と一体に回転駆動される。欠歯ギア15は、周方向の略半分程度に歯部15aが設けられ、他の半分が欠歯部15bとされたギアからなる。この欠歯ギア15には、従動ギア16が対向するように設置されている。従動ギア16には回動軸31が貫通されて一体に嵌合固定されていて、この回動軸31が、図示しない軸受部材を介してベースプレート11に回動自在に支持されている。
【0029】
回動軸31の上部には、図示しないラケットホルダを介してテニスラケット3が一体的に固定されている。テニスラケット3は、回動軸31の軸方向と直角をなす方向に長手方向を向けて把持部3aがラケットホルダに固定されている。この場合、回動軸31が地面に対して所定角度傾斜されたベースプレート11上に直角に立設されていて、回動軸31が斜めに立てられている。しかも、テニスラケット3の重心位置が把持部3aよりも先のガット部にあるため、自由状態のテニスラケット3は、自重によって最下部に位置している。この状態から回動軸31を回動すると、テニスラケット3はベースプレート11の上面と略平行に回動され、従って、地面に対しては前上がりの状態でスイングが行われる。
【0030】
従動ギア16は、回転ギア13及び出力ギア22と同様に、全周に歯が設けられた通常のギアであり、欠歯ギア15に対しては、次のようなタイミングによって噛み合わされ、且つその噛合が解除される。即ち、テニスボール球出し装置1の動作の初期においては、欠歯ギア15の欠歯部15bが従動ギア16に対向しており、互いの噛み合わせが解除された状態にある。この状態から、駆動モータユニット12の始動によって回転ギア13が回され、この回転ギア13に連れ回されてはずみ車14がコイルバネ28のバネ力に抗して所定角度を回動すると、バネ受けピン27によってコイルバネ28が引っ張られる。
【0031】
このとき、コイルバネ28が最も長く引っ張られる死点の直前までは欠歯部15bが従動ギア16に対向されていて、従動ギア16にトルクが伝達されることはない。その後、コイルバネ28の引っ張りが最大となる死点の直前において、歯部15aが従動ギア16に噛み合い始め、欠歯ギア15から従動ギア16へのトルク伝達が可能となる。そして、コイルバネ28が死点を越えると、コイルバネ28のバネ力によってバネ受けピン27が引っ張られ、その引張り力が欠歯ギア15の歯部15aから従動ギア16に伝達される。これにより、欠歯ギア15の歯部15aが従動ギア16に噛み合う間だけ回動軸31が回動される。
【0032】
その結果、回動軸31に一体的に固定されたテニスラケット3が、その回動軸31を回動中心としてスイングするように回動される。この場合、テニスラケット3の回動する角度は、180度或いはそれよりも小さい角度となるように、欠歯ギア15の歯部15aの歯数と従動ギア16の歯数を決定する。その後、欠歯ギア15の歯部15aが従動ギア16を通過し、その欠歯部15bが従動ギア16に対向するようになると、噛み合いの解除によって従動ギア16がフリーな状態になる。そのため、テニスラケット3の自重によって従動ギア16が回動され、テニスラケット3が自重で元の位置に戻される。
【0033】
また、図1〜図5に示すように、回動軸24の上端部には、テニスボール2を1個ずつセット位置から送り出す球出しレバー33が取り付けられている。球出しレバー33は、長手方向の一側に貫通穴が設けられた板状片からなり、その貫通穴を回動軸24が貫通されている。回動軸24の上端部にはネジ部が設けられていて、そのネジ部に螺合された2個のナット34,34によって球出しレバー33が挟持されている。2個のナット34,34による固定位置を軸方向へ移動することにより、球出しレバー33の高さ位置を変えて、テニスボール2を押し出す位置を変えることができる。また、球出しレバー33の取付角度(周方向の位置)を変えることにより、はずみ車14等に対する回動のタイミングを変えて、球出しのタイミングを調整することができる。
【0034】
球出しレバー33には、少なくとも1個のテニスボール2をセット位置に保持するガイドレールの一具体例を示す樋部材35が隣接するように設置されている。樋部材35は、断面形状が円弧状をなすガイド溝36が設けられた型材からなり、第3の横枠材9cの上方に配置されている。樋部材35の一端は第1の横枠材9aに支えられていて、その支持側に供給されるテニスボール2が自重により転がって自然に移動し得るように適当な傾斜角度が設定されている。樋部材35の長手方向の中途部は補助枠材37によって支持されている。補助枠材37の下部は、図示しないが第1の縦枠材8aに締付固定可能に支持されており、第1の縦枠材8aに対する取付位置(高さ)を変更することによって樋部材35の傾斜角度を調整することができる。
【0035】
樋部材35の長手方向の中途部には、回動軸24を近接させて設置するための切欠き部38が設けられている。図8及び図9に示すように、樋部材35の切欠き部38の近傍で、ガイド溝36の略中央部には、転がって降りてくるテニスボール2を停止させるための凸部40が設けられている。凸部40の大きさは、これに係止されているテニスボール2が当該凸部40を球出しレバー33の回動動作によって比較的容易に乗り越えることができる高さに設定する。この凸部40のある部分が、テニスボール2を1個ずつ送り出すための球のセット位置を構成している。
【0036】
このセット位置からテニスボール2を1個ずつ送り出すタイミングは、送り出されたテニスボール2が樋部材35のガイド溝36を転がって移動し、テニスラケット3の移動軌跡上に落下したときに、前述したようにして回動されるテニスラケット3のガット部におけるスイートスポットに当たるように設定する。具体的には、ガイド溝36を移動するテニスボール2の転がりに少々時間が掛かるため、はずみ車14が回転を始める比較的早い段階でテニスボール2が転がり始めるようにする。
【0037】
前記回転軸24と球出しレバー33と樋部材35とによって、テニスラケット3の回動軌跡上にテニスボール2を供給する球トス機構5が構成されている。また、前記駆動モータユニット12と出力ギア22と回転ギア13とはずみ車14と欠歯ギア15と従動ギア16とによって、テニスラケット3を回動してスイングさせるスイング機構6が構成されている。
【0038】
図1〜図5に示す符号44は、樋部材35のガイド溝36にテニスボール2を供給する球供給装置である。この球供給装置44を用いてテニスボール2を球トス機構5の樋部材35に自動的に供給するようにしてもよく、また、プレーヤが自分の手でテニスボール2を樋部材35に供給してもよい。
【0039】
このような構成を有するテニスボール球出し装置1は、例えば、次のようにして用いることができる。図1は、テニスボール球出し装置1の始動前の状態を示すものである。この場合、図1では、球トス機構5に予め2個のテニスボール2がセットされているが、球供給装置44を用いる場合には、本装置と連動させて、自動的にテニスボール2をセット位置に供給することができる。球トス機構5の球出しレバー33は、セット位置のテニスボール2に対して、少し後方に下がった位置にある。また、スイング機構6のテニスラケット3は、自重により最も下に下りた位置にあって、フリーな状態となっている。
【0040】
このようなテニスボール球出し装置1に対してプレーヤは、テニスラケット3の回動方向前方に所定距離(例えば、5m、10m等)を隔てて対峙するようにする。その状態で、図示しない電源スイッチを投入し、駆動モータユニット12を始動させて本装置1の作動を開始する。
【0041】
駆動モータユニット12を始動すると、図6に示すように、そのトルクが出力ギア22から回転ギア13に伝達され、回転ギア13が回転を始める。このとき、回転ギア13は軸受部材23を介して回転軸24に回転自在に軸支されているため回転ギア13と一体に回転軸24が回転されることはないが、回転ギア13の連れ回しピン25の回動軌跡上には係合突起26が配置されているため、連れ回しピン25が係合突起26に当接することによってはずみ車14が同じ方向に回転駆動される。この際、はずみ車14のバネ受けピン27にはコイルバネ28の一端が係止されているため、はずみ車14はコイルバネ28を引っ張りながら回動される。
【0042】
また、はずみ車14は回動軸24と一体的に構成されているため、はずみ車14と一体に回動軸24が回動され、この回動軸24の上端に固定されている球トス機構5の球出しレバー33が同じ角度を回動される。これにより、図8及び図9に示すように、球出しレバー33が樋部材35のセット位置に保持されているテニスボール2に側方から当接して押圧し、その転がりを防止している凸部40にテニスボール2を乗り越えさせる。その結果、図2に示すように、テニスボール2が凸部40を乗り越えると、樋部材35には適当な大きさの傾斜角度が設定されているため、その後は重力により回転しながらガイド溝36を転がり落ちる。
【0043】
このとき、回動軸24には、はずみ車14と同じく欠歯ギア15も一体的に構成されているが、その欠歯部15bが従動ギア16に対向して回動変位している。そのため、欠歯ギア15の回転力が従動ギア16に伝達されることがなく、テニスラケット3は当初の位置に保持される。
【0044】
テニスボール2がガイド溝36を転がり落ちる間にはずみ車14が所定角度を回動すると、バネ受けピン27によって引っ張られるコイルバネ28が最も長くなるはずみ車14の死点位置に到達する。この死点位置では、はずみ車14は、右に回ることも左に回ることもできる。このとき、はずみ車14の係合突起26とこれを押圧する連れ回しピン25とは、コイルバネ28の中心線に対して直交する方向に左右対称に位置することになり、係合突起26と連れ回しピン25との係合が解除された状態となる。
【0045】
その後、バネ受けピン27が死点位置を越えると、係合突起26と連れ回しピン25との係合が解除された状態となっているため、コイルバネ28のバネ力によってはずみ車14が引っ張られる。このとき、図7に示すように、欠歯ギア15が所定角度回動してその歯部15aが従動ギア16の歯に噛み合い始める。その結果、欠歯ギア15の回転力が従動ギア16に伝達され、従動ギア16と一体の回動軸31が回動される。この場合に、コイルバネ28のバネ力を十分に大きく設定しておくことにより、適当な回転速度及び回転力を持ってテニスラケット3を回動させることができる。
【0046】
このテニスラケット3の回動タイミングと、前述したテニスボール2の落下タイミングとを一致させるようにする。これにより、図3及び図4に示すように、テニスボール2をテニスラケット3の回動軌跡上に供給することができると共に、そのテニスボール2をガットのスイートスポットに当てることができる。その結果、図5に示すように、テニスラケット3の予め設定された回動軌跡(打ち出し角度)に沿って、斜め上方へ打ち上げるように柔らかく打ち出すことができる。
【0047】
このように打ち出されたテニスボール2を、これに対峙したプレーヤが打ち返すことによってボール打ちの練習を行うことができる。この場合、テニスボール球出し装置1から球出しされるボールは、斜め上方にトスするように打ち上げられた山なりのものであるため、プレーヤにとっては極めて打ち易い球を供給することができる。また、球トス機構5においては、テニスボール2が樋状のレールを通って落下して地面にバウンドすることなくテニスラケット3の回動軌跡上に供給される。そのため、球の軌跡を一定に保持することができ、テニスラケット3のスイートスポットにテニスボール2を毎回確実に当てることができ、軌跡の安定した球出しを行うことができる。
【0048】
図5に示すように、テニスボール2を打ち出したテニスラケット3は、欠歯ギア15の歯部15aの歯数と従動ギア16の歯数とによって決定される回転比に応じて略180度回動され、上方に移動する。そして、歯部15aと従動ギア16との噛み合いが外れると、従動ギア16がフリーの状態になるため、テニスラケット3は自重によって反対方向に回動され、その軌跡に沿って元の位置に戻される。これにより、次の球出しの準備が完了する。更に続けて駆動モータユニット12を駆動することにより、上述したような工程を経て、セット位置に保持されている次のテニスボール2が球出しされる。
【0049】
かかる場合において、回動軸24に対する球出しレバー33の取付角度を変えることにより、セット位置からテニスボール2を送り出すタイミングを調節することができる。更に、樋部材35の傾斜角度を変えることにより、テニスボール2がガイド溝36を転がり降りる速度を調節して、球出しのタイミングを調整することもできる。また、回動軸31に対するテニスラケット3のガット面の角度を変えることにより、球出しの方向、飛距離等を調整することができる。更に又、回動軸31等を回動自在に支持するベースプレート11の地面に対する角度を変えることによっても、テニスラケット3のスイング角度を調整することができる。
【0050】
本実施例においては、動力源が駆動モータユニット12の1つであるため、電気回路及びその制御を簡単なものにすることができると共に、機械的構成の単純化を図り、簡単な機構によってテニスボール球出し装置1を構成することができる。また、前記実施例では、ガイドレールとして半円形のガイド溝36を有する樋部材35を用いた例について説明したが、ガイド溝はV字形であってもよく、角形その他の形状であってもよいことは勿論である。更に、複数本の棒状部材を平行に配置してガイドレールを構成しても良い。また、はずみ車14を引っ張る弾性体としてコイルバネを用いたが、例えばゴム状の弾性体で引っ張る構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したが、本願発明は前記実施例に限定されるものではなく、前記実施例においては、テニスボール2を打ち出すテニスボール球出し装置1に適用したが、例えば、ピンポン球を打ち出すピンポン球球出し装置、野球(軟式野球、硬式野球を含む)のボールを打ち出す野球球出し装置、ソフトボールを打ち出すソフトボール球出し装置等のように、各種の球をラケット、バット等の打撃具で打って球出しする各種の球出し装置に適用することができるものである。この場合に使用する打撃具は、打ち出される球に対応したもの、例えば、テニスボールの場合にはテニスラケット、ピンポン球の場合には卓球用ラケット、野球の場合にはバットを適用するのが一般的であるが、異なる種類の打撃具、例えば、野球用ボールをテニスラケットで打ち出すようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例においては、回転板の一具体例として回転ギア13を適用し、電動モータ20の出力を減速機21の出力軸21aに固定した出力ギア22から歯車伝動機構によって動力を伝達する構成としたが、これに変えて回転板及び出力ギアをベルト車で構成し、ベルト伝動機構によって動力を伝達する構成とすることもできる。このように、本願発明は、その要旨を変更しない範囲で各種の変更実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の球出し装置の一実施例に係るテニスボール球出し装置の概略構成とその動作を説明するもので、動作を開始した直後の状態を示す説明図である。
【図2】本発明の球出し装置の一実施例に係るテニスボール球出し装置の概略構成とその動作を説明するもので、球トス機構でテニスボールを送り出した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の球出し装置の一実施例に係るテニスボール球出し装置の概略構成とその動作を説明するもので、球トス機構からスイング機構にテニスボールが供給される状態を示す説明図である。
【図4】本発明の球出し装置の一実施例に係るテニスボール球出し装置の概略構成とその動作を説明するもので、スイング機構のテニスラケットがテニスボールを打ち出す状態を示す説明図である。
【図5】本発明の球出し装置の一実施例に係るテニスボール球出し装置の概略構成とその動作を説明するもので、スイング機構のテニスラケットがテニスボールを打ち出した後の状態を示す説明図である。
【図6】本発明のテニスボール球出し装置に係るスイング機構の要部を示すもので、欠歯ギアと従動ギアの噛み合いが解除された状態を示す説明図である。
【図7】本発明のテニスボール球出し装置に係るスイング機構の要部を示すもので、欠歯ギアと従動ギアが噛み合う状態を示す説明図である。
【図8】本発明のテニスボール球出し装置に係る球トス機構の要部を平面から見た説明図である。
【図9】本発明のテニスボール球出し装置に係る球トス機構の要部を示す図8のX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1‥テニスボール球出し装置(球出し装置)、 2‥テニスボール(球)、 3‥テニスラケット(打撃具)、 4‥装置フレーム(装置本体)、 5‥球トス機構、 6‥スイング機構、 11‥ベースプレート、 12‥駆動モータユニット(動力源)、 13‥回転ギア(回転板)、 14‥はずみ車、 15‥欠歯ギア(駆動ギア)、 15a‥歯部、 15b‥欠歯部、 16‥従動ギア、 20‥電動モータ、 22‥出力ギア、 24‥回転軸、 25‥連れ回しピン、 26‥係合突起、 27‥バネ受けピン、 28‥コイルバネ(弾性体)、 31‥回動軸、 33‥球出しレバー、 35‥樋部材(ガイドレール)、 36‥ガイド溝、 40‥凸部、 44‥球供給装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に回動自在に支持されると共に供給される球を打ち出す打撃具と、
前記打撃具の回動軌跡上に前記球を供給する球トス機構と、
前記打撃具を回動させるスイング機構と、を備え、
前記スイング機構は、前記球トス機構と共通の1個の動力源により同期させて回動可能に構成したことを特徴とする球出し装置。
【請求項2】
前記球トス機構は、少なくとも1個の球をセット位置に保持するガイドレールと、前記セット位置に保持された前記球を回動により1個ずつ送り出す球送りレバーと、を有することを特徴とする請求項1記載の球出し装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは長手方向に連続したガイド溝を有し、当該ガイドレールを傾斜させて設置すると共に、前記ガイド溝の中途部に前記球を停止可能な凸部を設けて前記セット位置を形成したことを特徴とする請求項2記載の球出し装置。
【請求項4】
前記スイング機構は、前記動力源によって回転駆動される回転板と、前記回転板によって回転駆動されるはずみ車と、前記はずみ車と一体に回転される駆動ギアと、前記駆動ギアに噛合されると共に前記打撃具の回転軸に固定される従動ギアと、を有し、
前記はずみ車の回転軸に前記球送りレバーを固定したことを特徴とする請求項1記載の球出し装置。
【請求項5】
前記スイング機構は、前記駆動ギアを欠歯ギアで形成すると共に、前記はずみ車に引っ張りバネ力を付与する弾性体を設け、前記弾性体のバネ力による死点を前記はずみ車が越えるときに前記欠歯ギアの歯部が前記従動ギアに噛み合うように構成したことを特徴とする請求項4記載の球出し装置。
【請求項6】
前記打撃具は、前記装置本体の傾斜面に沿って回動するように支持したことを特徴とする請求項5記載の球出し装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−51243(P2006−51243A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236028(P2004−236028)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(899000013)財団法人理工学振興会 (81)