説明

球面構造体

【課題】座屈変形の生ずる箇所を特定することが可能な球面構造体を提供する
【解決手段】球殻構造を有する球面構造体10であって、前記球殻構造の曲率よりも大きな曲率を有する少なくとも1つの凹部12が表面に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球殻構造を有する球面構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
球殻構造を有する構造体(球面構造体)は、例えば、水中や地中、あるいは空中や宇宙空間に設置される容器等に用いられている。球面構造体は、内圧や外圧、あるいは内外温度差などによって変形し、この変形が元となって座屈現象が起きることがある。したがって、球面構造体を設計する際には、座屈が起こらないような構造設計を行なうことが必要である。そして、球殻構造における座屈現象については、従来より例えば非特許文献1に示されるように、理論的な解析が行なわれている。
【非特許文献1】林毅、「軽構造の理論とその応用(上)」、財団法人日本科学技術連盟、1966年9月14日、p.315−340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、非特許文献1に開示されるような球殻座屈の理論解析をもってしても座屈機構の解明は難しく、球面構造体の座屈につながる変形挙動を予測することは困難である。したがって、球面構造体の強度設計にあたって、座屈に対する安全性評価を正確に行なうことができないため、構造体の全体について例えば部材厚さを大きくすることなどにより剛性を確保して座屈を防止せざるを得ず、不経済な設計となってしまう。このような問題を解消するため、球面構造体の座屈につながるような変形挙動を予測できるようにすることが望まれる。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、内圧・外圧や内外温度差等に起因する変形挙動を予測することが可能な球面構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、球殻構造を有する球面構造体であって、前記球殻構造の曲率よりも大きな曲率を有する少なくとも1つの凹部が表面に設けられていることを特徴とする。
【0006】
一般に、殻体構造に内圧や外圧等が作用したときの変形の起こり易さは、その曲率に依存し、曲率が大きいほど変形し易いという性質がある。したがって、本発明のように球殻構造の曲率よりも大きな曲率を有する凹部を表面に設けることで、この凹部において変形が起こり易くなり、球面構造体の変形挙動の予測が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内圧・外圧や内外温度差等に起因する球面構造体の変形挙動を予測することが可能となる。このため、球面構造体の強度設計にあたり、変形し易い凹部について解析を行うことにより、正確な安全性評価を行うことが可能になると共に、凹部以外の部分において過剰な強度設計を行うことがなくなり、経済的な強度設計を行うことができる。すなわち、本発明によれば、球面構造体を構成する構造体の剛性を過度に大きくすることなく、安全性の高い球面構造体を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態である球面構造体10の断面図である。球面構造体10は、典型的には鋼材で構成されるが、これに限らず、ジュラルミン等の各種合金やFRPといった鋼材以外の各種構造材料で構成されていてもよい。この球面構造体10は、例えば、水中、地中、空中、あるいは宇宙空間等に設置されて、液体やガスを貯蔵する容器あるいは人が居住する空間として用いられる。ただし、本発明に係る球面構造体の用途はこれらに限定されない。
【0009】
図1に示す如く、球面構造体10は、半径R1の球殻構造の表面に、R1より小さな曲率半径R2を有する凹部12が形成された構成を有している。凹部12の周囲は曲率半径R3(<R1)の曲面に形成されており、これにより、凹部12は球殻構造の表面から滑らかに凹んでいる。
【0010】
以上説明した球面構造体10の構成によれば、球面構造体10に大きな外圧や内圧が作用した場合、曲率の大きい凹部12に変形が集中し、この部分で球面体構造10全体の変形が吸収される。すなわち、上記したように、一般に殻体構造においては、内圧や外圧等が作用したときの変形の起こり易さは曲率に依存し、曲率が大きいほど変形し易いという性質があるため、球面構造体10において曲率半径が小さい(すなわち曲率が大きい)凹部12に変形が集中するのである。例えば、球面構造体10に外圧が作用した場合、図2に破線で示すように、凹部12が更に凹むように内側に変形することで、球面構造体10全体の変形を吸収する。また、球面構造体10に大きな内圧が作用した場合は、図2に一点鎖線で示すように、凹部12が外側に延びるように変形することで、球面構造体10全体の変形を吸収する。
【0011】
このように、本実施形態の球面構造体10によれば、内圧や外圧等に起因して生ずる変形を凹部12に集中させることができる。このため、球面構造体10の設計にあたり、変形の生じ易い凹部12について重点的に解析を行うことにより、正確な安全性評価を行うことが可能となる。また、凹部12以外の部分について過剰な強度設計を行うことがなくなり、経済的な設計を行うことができる。すなわち、球面構造体10を構成する構造体の剛性を過度に大きくすることなく、安全性の高い球面構造体10を実現することができる。
【0012】
また、凹部12を適切に配置することにより、球面構造体10全体の変形挙動を予測することも可能である。
【0013】
なお、凹部12の個数や位置は球面構造体10に作用する内圧・外圧の大きさや分布に応じて適宜選定すればよい。例えば、全体に均一に内圧又は外圧が作用する場合は、複数の凹部12を対称位置に配置するのが好ましく、また、特定の部分に大きな内圧又は外圧が作用する場合には、その部分に重点的に凹部12を配置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である球面構造体の断面図である。
【図2】本実施形態の球面構造体における凹部周辺での変形挙動を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10 球面構造体
12 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球殻構造を有する球面構造体であって、前記球殻構造の曲率よりも大きな曲率を有する少なくとも1つの凹部が表面に設けられていることを特徴とする球面構造体。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−8166(P2006−8166A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186707(P2004−186707)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】