説明

琉球瓦の漆喰塗布方法

【課題】琉球瓦を初心者でも効率的にかつ高品質に葺くことのできる漆喰塗布方法を可能にする。
【解決手段】各丸瓦の上に被せて、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板において、該マスク板の勾配方向の両端内面に漆喰塗布厚を確保する塗布厚設定部を設けてあるため、隣接する丸瓦間に塗布して隣接する丸瓦同士を接着連結するための漆喰を一定量に確保でき、各丸瓦間の漆喰量が多すぎたり、少なすぎたりするような弊害が解消できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、琉球瓦を初心者でも効率的にかつ高品質に葺くことのできる漆喰塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11−193600号公報などに掲載のような琉球瓦を葺く場合は、図1のように、ゆるい凹曲面をなした平瓦1…を勾配方向に部分的に重ねて配列し、隣接する平瓦列の間に半円状の丸瓦2…を被せる。図2は、図1のA−A方向の断面図であり、隣接する平瓦1・1の間に丸瓦2を被せてある。3はコンクリートスラブであるが、木造の場合は野地板である。コンクリートスラブ3上に、瓦の高さ調節のために、団子状の敷きモルタル4を敷いて、その上に平瓦1を葺いていく。そして、隣接する左右の平瓦1・1間に設けた隙間G中で敷きモルタル9を敷いて、その上に丸瓦2…を被せて固定する。次いで、平瓦1とその上の丸瓦2との間から風雨が打ち込まないように、隙間5に下地漆喰12を塗り込んでシールし、その上に図1の側面漆喰6を塗布して仕上げる。
【0003】
図3は、図2のB−B方向の断面図であり、勾配方向の平瓦1…の重なり状態がよく現れている。また、敷きモルタル4を介して、コンクリートスラブ3上に固定してある。さらに、勾配方向の各丸瓦2…間の接続部は、棟側端の段差部7に棟側の丸瓦2の軒側端を重ねた状態でつなぎ漆喰8を塗布して固定してある。なお、各つなぎ部の下側に、予め前記の敷きモルタル9を敷いてある。また、図2の平瓦1とその上の丸瓦2との間の隙間5に下地漆喰12を塗り込んで密封してある領域が、丸瓦2の下端2dと平瓦1…との間の部分である。なお、前記の各モルタル4、9は、石粉80〜85%に対しセメントを20〜15%混ぜてなるが、屋根の軽量化のためには改良が求められている。
【特許文献1】特開平11−193600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記のような下地漆喰12を塗り込んだり、その上に側面漆喰仕上げしたり、各丸瓦2…間につなぎ漆喰8を塗布したりする作業は全て熟練者による手作業に頼っているのが実情である。沖縄の赤瓦と漆喰の白色とのコントラストの美しさを強調するためにも、漆喰を塗布し仕上げる作業は長年の熟練が必要であり、また伝統の技術が要求される。ところが、あらゆる作業が機械化されている省力化社会において、漆喰塗りのような職人作業は若い者から敬遠される傾向にあり、後継者が育ちにくいという背景がある。その結果、沖縄伝来の赤瓦葺きの町並みが消えていっているのが現状である。
【0005】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、長年の熟練と経験を必要としている漆喰塗りの作業を簡便化、効率化、高品質化できる作業方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、各丸瓦の上に被せて、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板であって、該マスク板の勾配方向の両端内面に漆喰塗布厚を確保するための塗布厚設定部を有していることを特徴とする漆喰塗布用のマスク板である。このように、各丸瓦の上に被せて、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板において、該マスク板の勾配方向の両端内面に漆喰塗布厚を確保する塗布厚設定部を設けてあるため、隣接する丸瓦間に塗布して隣接する丸瓦同士を接着連結するための漆喰を一定量に確保でき、各丸瓦間の漆喰量が多すぎたり、少なすぎたりするような弊害が解消できる。
【0007】
請求項2は、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板を各丸瓦の上に被せて塗布した後のつなぎ漆喰の仕上げ用の器具であって、前記つなぎ漆喰の表面を仕上げる凹曲面を有する仕上げ部材の背面に取っ手を有していることを特徴とする漆喰仕上げ器具である。このように、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板を各丸瓦の上に被せて塗布した後のつなぎ漆喰の仕上げ用の器具において、前記つなぎ漆喰の表面を仕上げる凹曲面を有する仕上げ部材の背面に取っ手を有している構造になっているため、取っ手を手に持って、つなぎ漆喰の表面に凹曲面を当てた状態で移動するだけで、経験の少ない初心者でも容易につなぎ漆喰の表面の仕上げ処理が可能となる。
【0008】
請求項3は、隣接する平瓦列の間に丸瓦を配列した状態において、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理をすることを特徴とする漆喰塗布方法である。このように、隣接する平瓦列の間に配列した各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理をする漆喰塗布方法によると、マスク板が被せてあるため、漆喰の塗布領域が容易にかつ常に一定に設定でき、しかもマスク板両端内面に設けた塗布厚設定部の作用により、漆喰塗布厚を常に一定にかつ容易に確保できるため、初心者でも容易に漆喰の塗布作業が可能となる。
【0009】
請求項4は、前記の平瓦列並びに丸瓦の列を敷設する前に、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなる敷きモルタルを敷いて固定することを特徴とする請求項3に記載の漆喰塗布方法である。このように、前記の平瓦列並びに丸瓦の列を敷設する前に、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなる敷きモルタルを敷いて固定するため、発泡スチロール粒を混在させたことによって、敷きモルタル付き屋根の重量を軽減して、建物の屋根荷重を軽量化できる。
【0010】
請求項5は、前記の仕上げ処理に際して、請求項2に記載の仕上げ器具の凹曲面を、隣接する丸瓦間のつなぎ漆喰の表面に当てて移動することでつなぎ漆喰の仕上げ処理をすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の漆喰塗布方法である。このように、つなぎ漆喰の仕上げ処理に際して、請求項2に記載の仕上げ器具の凹曲面をつなぎ漆喰の表面に当てて移動するだけで、初心者でも容易にかつ一定品質につなぎ漆喰を表面仕上げできる。
【0011】
請求項6は、請求項3に記載のマスク板を被せる作業の前に、複数の丸瓦を同時にカバーできる長寸の下地マスク板を被せて、各丸瓦と平瓦との間に下地漆喰を塗り込むことを特徴とする漆喰塗布方法である。このように、仕上げ用のマスク板を被せる作業の前に、複数の丸瓦を同時にカバーできる長寸の下地マスク板を被せて、各丸瓦と平瓦との間に下地漆喰を塗り込むため、雨漏り防止の下地漆喰の塗り込み作業もマスク板を用いて簡便化される。しかも、このマスク板は長寸なため、同時に複数枚の丸瓦をマスクして一斉に下地漆喰を塗布でき、作業能率が向上する。
【0012】
請求項7は、隣接する平瓦列の間に丸瓦を配列した状態において、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理してなることを特徴とする瓦葺き構造である。このように本発明によって漆喰塗布してなる瓦葺き構造は、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理してあるため、マスク板によって仕上げ品質が均一かつ向上し、しかも初心者でも容易に能率的に作業できるので、施工コストの低廉化が実現される。
【0013】
請求項8は、請求項4に記載の平瓦列並びに丸瓦の列を敷設する前に敷く敷きモルタル材であって、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなることを特徴とする敷きモルタル材である。このように、請求項4に記載の平瓦列並びに丸瓦列を敷設する前に敷く敷きモルタル材が、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなるため、発泡スチロール粒を混在させたことによって、屋根重量を軽減して、建物の屋根負荷を軽量化できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1のように、各丸瓦の上に被せて、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板において、該マスク板の勾配方向の両端内面に塗布厚設定部を設けてあるため、隣接する丸瓦間に塗布して隣接する丸瓦同士を接着連結するための漆喰を所望の一定量に確保でき、各丸瓦間の漆喰量が多すぎたり、少なすぎたりするような弊害が解消できる。
【0015】
請求項2のように、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板を各丸瓦の上に被せて塗布した後のつなぎ漆喰の仕上げ用の器具において、前記つなぎ漆喰の表面を仕上げる凹曲面を有する仕上げ部材の背面に取っ手を有している構造になっているため、取っ手を手に持って、つなぎ漆喰の表面に凹曲面を当てた状態で移動するだけで、経験の少ない初心者でも容易につなぎ漆喰の表面の仕上げ処理が可能となる。
【0016】
請求項3のように、隣接する平瓦列の間に配列した各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理をする漆喰塗布方法によると、マスク板が被せてあるため、漆喰の塗布領域が容易にかつ常に一定に設定でき、しかもマスク板両端内面に設けた塗布厚設定部の作用により、漆喰塗布厚を常に所望の一定厚にかつ容易に確保できるため、初心者でも容易に漆喰の塗布作業が可能となる。
【0017】
請求項4のように、前記の平瓦列並びに丸瓦列を敷設する前に、石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなる敷きモルタルを敷いて固定するため、発泡スチロール粒を混在させたことによって、敷きモルタル付き屋根の重量を軽減して、建物の屋根荷重を軽量化できる。
【0018】
請求項5のように、つなぎ漆喰の仕上げ処理に際して、請求項2に記載の仕上げ器具の凹曲面をつなぎ漆喰の表面に当てて移動するだけで、初心者でも容易にかつ一定品質につなぎ漆喰を表面仕上げできる。
【0019】
請求項6のように、仕上げ用のマスク板を被せる作業の前に、複数の丸瓦を同時にカバーできる長寸の下地マスク板を被せて、各丸瓦と平瓦との間に下地漆喰を塗り込むため、雨漏り防止の下地漆喰の塗り込み作業もマスク板を用いて簡便化される。しかも、このマスク板は長寸なため、同時に複数枚の丸瓦をマスクして一斉に下地漆喰を塗布でき、作業能率が向上する。
【0020】
請求項7のように、本発明によって漆喰塗布してなる瓦葺き構造は、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理してあるため、マスク板によって仕上げ品質が均一かつ向上し、しかも初心者でも容易に能率的に作業できるので、施工コストの低廉化が実現される。
【0021】
請求項8のように、請求項4に記載の平瓦列並びに丸瓦列を敷設する前に敷く敷きモルタル材が、石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなるため、発泡スチロール粒を混在させたことによって、屋根重量を軽減して、建物の屋根負荷を軽量化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明による琉球瓦の漆喰塗布方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図4から図7は本発明による漆喰塗布に使用する補助器具の実施形態であり、以下順次詳述する。図4(1)は漆喰塗布作業の最初に使用する下地マスク板10であって、図1〜図3の丸瓦2の上に被さる形状の半円筒状をしており、しかも丸瓦2の2〜4枚分程度の長い寸法をしている。背部には、例えば木製の取っ手11を取付けてある。図4(2)は、この下地マスク板10の使用方法を示す図1A−A方向の断面図であり、図1〜3の勾配方向の2〜4枚の丸瓦2の上に被せると、丸瓦2の円周方向の両端までほぼぴったり重なる。あるいは、丸瓦2の円周方向の両端にα(約5mm以内)だけ、下地マスク板10が被さらないで露出する領域が残る。この状態で、側方(矢印a1方向)から、平瓦1と丸瓦2の円周方向の両端との間の隙間5に下地漆喰12を塗り込むと、隙間5が塞がれて、雨漏りを防げる。
【0023】
こうして、下地漆喰12を隙間5に塗り込んだ後、下地マスク板10を除去するが、下地マスク板10が有るために、各丸瓦2…は、両端の約5mm以下のαの領域以外に下地漆喰12が付着して、丸瓦2の表面が漆喰で汚れたりすることはない。したがって、下地マスク板10は、マスクとして使用するのは、円周方向の両端付近のみであって、勾配方向の両端はマスクとして作用しない。なお、下地マスク板10の円周方向の両端10eは、その肉厚を次第に薄くして、丸瓦2上における下地漆喰塗布領域の端縁の漆喰厚が厚くならないで、次第に薄くなるように塗布可能にしてある。下地漆喰12は、雨漏り防止と、平瓦1と丸瓦2間の接着の目的もあるため、仕上げ漆喰に比べてセメントの量を多めにすると共に砂も多めにして、結合力を強くしている。
【0024】
このように長寸のマスク板10を用いて平瓦1と丸瓦2間の隙間5に下地漆喰12を塗り込む作業を繰り返して、屋根全体の下地漆喰の塗布を完了し乾燥させる。次に、図5のような仕上げマスク板13を用いて、隣接する丸瓦2・2間のつなぎ漆喰8を塗布すると共に、前記の下地漆喰12の上から側面漆喰6を塗布して仕上げる。図5(1)は仕上げマスク板13の斜視図であり、丸瓦2の1枚分の長さL(図3参照)より多少短い半円筒状をしており、背面には取っ手14を取付けてある。半円筒状の内面の勾配方向の両端には、板状のスポンジ15や発泡スチロールなどを接着して、仕上げマスク板13の両端が丸瓦2の表面から多少浮き上がるようにしてある。図5(2)は、仕上げマスク板13の図2B−B方向の断面図であり、半円筒状の仕上げマスク板13の勾配方向の両端と側面両縁13eとの間の四隅は直角にしないで、13Rのように丸みを付けてある。
【0025】
この仕上げマスク板13を丸瓦2の上に被せた状態における図1A−A方向の断面図が図5(3)であり、丸瓦2の円周方向の両端にβ(約3〜5cm)だけ、仕上げマスク板13が被さらないで露出する領域が残る。この状態において、図4(2)のように隙間5中に前記の下地漆喰12を塗り込んで乾燥させた上から仕上げ漆喰6を塗布する。仕上げマスク板13の円周方向の両端13eは、その肉厚を次第に薄くして、丸瓦2の側面上における仕上げ漆喰塗布領域βの漆喰厚が厚すぎず、薄く塗れるようにしている。この仕上げ漆喰6は、前記の下地漆喰12中に残っている孔を塞いだり、美しく仕上げるための漆喰である。したがって、下地漆喰12と違って、セメントの量を少なめに、漆喰を多めにすると共に、砂もより細かい細砂を用いる。その結果、表面がツルツルで平滑となり、滑らかで美しい仕上がりとなる。
【0026】
仕上げマスク板13の円周方向の両端13eの肉厚を次第に薄くしてあるのに対し、勾配方向の両端内面に板状のスポンジ15を接着してあるため、図6のように図2B−B方向の断面図で見ると、丸瓦2の表面からスポンジ厚分だけマスク面が浮き上がることになる。そのため、図6のように各丸瓦2…の上に仕上げマスク板13を被せた状態で、隣接する仕上げマスク板13・13間に仕上げ漆喰81を塗布すると、厚みの有る多めの漆喰でつなぎ漆喰81を形成できる。すなわち、仕上げマスク板13の板厚と板状のスポンジ15を足した厚みのつなぎ漆喰81を塗布できる。
【0027】
前記のように、仕上げマスク板13の長さ方向のサイズは、丸瓦2のサイズLより小さいため、図6のように各丸瓦2…の上に被せた状態では、各丸瓦2…の両端には、仕上げマスク板13で覆われない領域Eが残る。結局、隣接する仕上げマスク板13・13間の丸瓦2つなぎ目には、2E分の露出面が残るので、その上につなぎ漆喰81を塗布する。このとき、仕上げマスク板13とスポンジ板15が被さっていることにより、仕上げマスク板13とスポンジ板15の厚さ分のつなぎ漆喰量が設定される。また、露出領域2E以外にはつなぎ漆喰は塗布されないので、丸瓦2の表面がつなぎ漆喰で汚れることもない。
【0028】
こうしてつなぎ漆喰81を塗布した後、仕上げマスク板13を除去すると、仕上げマスク板13とスポンジ板15の厚さ分のつなぎ漆喰81が残るが、図6のように断面形状が角張った状態81で残るので、仕上げ器具で丸みを付ける必要がある。図7は仕上げ器具16の斜視図であり、球面状の凹面17を有する球面状の板材の背面に取っ手18を取付けてある。球面板の材質は特に限定されないので、合成樹脂製も可能であるが、耐久性や滑り性を考慮すると、金属製が良い。この仕上げ器具の凹球面17を、仕上げマスク板13を除去した後に残った図6のつなぎ漆喰81の上に押し当てながら、隣接丸瓦2・2のつなぎ目に添って円周方向にスライドしたり、つなぎ目を中心にして円弧方向に移動させることによって、仕上げ漆喰によるかまぼこ状のつなぎ漆喰8がつなぎ目の円周方向に連続し、美しい仕上げ漆喰模様が形成される。
【0029】
下地マスク板10も仕上げマスク板13も、丸瓦2の上に被せた際に、マスク板自体の弾力に抗して幾分広がって、特に側面側の両端10e、13eが丸瓦2の表面にぴったりと重なり、間に隙間が発生しないようにするために、丸瓦2の外径よりマスク板内径を小さめにするのが望ましい。その結果、隙間から漆喰が入り込んで丸瓦表面が汚れるのを防げる。このようにマスク板の弾力で両端10e、13eが丸瓦2の表面に重なって、隙間が発生しないような使い方が可能であれば、マスク板10、13の材質は、合成樹脂製でも金属板でもよい。なお、合成樹脂製の場合は、塩化ビニール管をカットすることで容易に製造できる。
【0030】
以上のような漆喰塗布作業には、図4のような下地マスク板10は一人1枚有れば十分であって、2〜4枚の丸瓦2…の側面と平瓦1…間の隙間5を埋め込んだら、次の2〜4枚の上に移動して、同様な下地漆喰の塗布を繰り返すだけでよい。こうして下地漆喰12を塗布し乾燥させた後の仕上げマスク板13による仕上げ処理には、仕上げマスク板13が少なくとも2枚は必要である。通常は、3〜4枚程度の仕上げマスク板13を用意しておいて、3〜4枚の丸瓦2…の上に被せて、丸瓦2・2間のつなぎ目を露出させ、つなぎ漆喰81を塗布し、かつ側面の仕上げ漆喰6を塗布すると、仕上げマスク板13…を取り外して、次の3〜4枚の丸瓦2の上に移動して被せる。一方、取り外した後の角張った状態のつなぎ漆喰81を図7の凹球面17で丸く仕上げると共に、側面の仕上げ漆喰6を平コテで仕上げる。以下、同様な作業を繰り返す。
【0031】
前記の平瓦1や丸瓦2は、図4(2)や図6のように葺く前に、高さ調節や支持用の敷きモルタル4、9を敷いて固定する必要がある。従来はこの敷きモルタル4、9として、石粉とセメントを混合したものを用いているため重量が重くなり、大重量の屋根を支えるだけの建物強度が要求された。これに対し、本発明の場合は、石粉とセメントに加えて発泡スチロール粒を混ぜ込んであるため、敷きモルタル4、9の軽量化が実現できる。その結果、敷きモルタル付き屋根の重量を軽減して、建物の屋根荷重を軽量化できるので、木造建築物に有利である。発泡スチロール粒は、予め粒状に形成された既製品を用いてもよいが、梱包材などとして使用した後の廃棄物の発泡スチロールを粉砕して用いてもよい。粒状体のサイズは、直径4〜7mm程度がよいが、特にこのサイズに限定されるものではない。配合割合は、石粉の採取地などに起因する粘性にもよるが、重量比で石粉7〜9に対し、発泡スチロール粒3〜1程度が適している。体積比にすると、発泡スチロール粒の割合がさらに大きくなることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のようにして、敷きモルタルで固定した平瓦1…の列と丸瓦2…の列との間を下地マスク板10を利用して下地漆喰を塗り込んで固定すると共に、各丸瓦2…の上に各仕上げマスク板13を被せた状態で各マスク板13の外側並びに隣接マスク板間につなぎ漆喰81を塗布し、球面状の凹面17を利用して仕上げ処理してから乾燥させるため、初心者でも容易に、熟練を要した漆喰塗りができるため、沖縄伝来の赤瓦葺き屋根の保存継承が可能となる。なお、本発明の技術は、琉球瓦に限らず、ほぼ同様な形状をした瓦であれば全てに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の瓦葺き構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A方向の断面図である。
【図3】図2のB−B方向の断面図である。
【図4】図4から図7は本発明による瓦葺き技術における漆喰塗布に使用する補助器具の実施形態であり、図4(1)は下地マスク板の斜視図、(2)は下地マスク板の使用方法を示す図1A−A方向の断面図である。
【図5】(1)は仕上げマスク板の斜視図、(2)は仕上げマスク板の図2B−B方向の断面図、(3)は仕上げマスク板を丸瓦の上に被せた状態における図1A−A方向の断面図である。
【図6】仕上げマスク板を丸瓦の上に被せた状態における図2B−B方向の断面図である。
【図7】つなぎ漆喰の仕上げ器具の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1… 平瓦
2… 丸瓦
3 コンクリートスラブ
4 敷きモルタル
5 丸瓦下端の隙間
G 平瓦間隙間
8 仕上げ後のつなぎ漆喰
81 仕上げマスク板を用いて塗布後のつなぎ漆喰
9 敷きモルタル
10 下地マスク板
10e 円周方向の両端
12 下地漆喰
13 仕上げマスク板
13e 円周方向の両端
15 板状のスポンジ
16 仕上げ器具
17 球面状の凹面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各丸瓦の上に被せて、漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板であって、該マスク板の勾配方向の両端内面に漆喰塗布厚を確保するための塗布厚設定部を有していることを特徴とする漆喰塗布用のマスク板。
【請求項2】
漆喰を塗布しない領域をカバーする半円筒状のマスク板を各丸瓦の上に被せて塗布した後のつなぎ漆喰の仕上げ用の器具であって、前記つなぎ漆喰の表面を仕上げる凹曲面を有する仕上げ部材の背面に取っ手を有していることを特徴とする漆喰仕上げ器具。
【請求項3】
隣接する平瓦列の間に丸瓦を配列した状態において、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理をすることを特徴とする漆喰塗布方法。
【請求項4】
前記の平瓦列並びに丸瓦の列を敷設する前に、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなる敷きモルタルを敷いて固定することを特徴とする請求項3に記載の漆喰塗布方法。
【請求項5】
前記の仕上げ処理に際して、請求項2に記載の仕上げ器具の凹曲面を、隣接する丸瓦間のつなぎ漆喰の表面に当てて移動することでつなぎ漆喰の仕上げ処理をすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の漆喰塗布方法。
【請求項6】
請求項3に記載のマスク板を被せる作業の前に、複数の丸瓦を同時にカバーできる長寸の下地マスク板を被せて、各丸瓦と平瓦間の隙間に下地漆喰を塗り込むことを特徴とする漆喰塗布方法。
【請求項7】
隣接する平瓦列の間に丸瓦を配列した状態において、各丸瓦の上に請求項1に記載のマスク板を被せた状態で各マスク板の外側並びに隣接するマスク板の間に漆喰を塗布してから前記のマスク板を除去し、次いで仕上げ処理してなることを特徴とする瓦葺き構造。
【請求項8】
請求項4に記載の平瓦列並びに丸瓦の列を敷設する前に敷く敷きモルタル材であって、少なくとも石粉と発泡スチロール粒とセメントを混合してなることを特徴とする敷きモルタル材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−70660(P2006−70660A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258575(P2004−258575)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(504338874)有限会社原タイル産業 (1)