説明

環化法

【課題】ラセミ化合物アゼチジン‐2‐カルボン酸製造のための極めて容積効率のよい方法を提供する。
【解決手段】反応混合物1リットルにつき4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸20g以上が環化される、4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸からアゼチジン‐2‐カルボン酸への環化の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラセミ化合物アゼチジン‐2‐カルボン酸製造のための極めて容積効率のよい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アゼチジン‐2‐カルボン酸はまれなアミノ酸で、その(S)‐エナンチオマーはとりわけ高分子量ポリペプチド、特に周知のアミノ酸プロリンの類似体合成に有用であることが知られている。
【0003】
このアミノ酸は天然からの入手が限られているため、効率がよく、経済的なその製造法の開発が所望される。
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸が塩基性条件下で環化し、アゼチジン‐2‐カルボン酸を形成することは長い間知られてきた。例えば、変換のためにFowden(Biochem.J.(1956)64,323)は水酸化バリウムを使用し、Duplan et al(Bull.Soc.Chem.Chim.France(1968)4079)は水酸化ナトリウムを使用した。
【0004】
当業者はひずみのかかった四員環を形成するための分子内環化の効率を最大にするためには、反応を低濃度で行うべきであると予想するであろう。より高濃度では、臭素元素の分子内置換によりダイマー、オリゴマーまたはポリマーを形成するような競合反応が優勢となるため、著しく効率が低下すると予想するであろう。実際、上記の著者らはハロ‐(この場合ブロモ‐)アミノ酸の低濃度(例えば10〜15g/L)のみを報告している;より高濃度の使用を示唆していない。
【0005】
当業者はまた、大規模工業合成では上記の方法に報告された濃度がほとんど実用性をもたないことを認識するであろう。遭遇する典型的な問題は、適切でない容器利用、より大量の排出物産出および生成物分離の難しさの増大であり、それらすべてが方法の経済的発展を難しくしている。
【発明の開示】
【0006】
驚くべきことに、前述の環化を工業工程において十分に有用な高濃度で手際よく、効率的に行えることを発見した。
本発明に従い、反応混合物1リットルにつき4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸20g以上が環化される、4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸からアゼチジン‐2‐カルボン酸への環化のための方法を提供する(今後“本発明に記載の方法”と呼ぶ)。
【0007】
特に、ヒドロハライド塩として4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸を熱水性塩基(例えば水酸化ナトリウム)に添加することにより非常に容積効率のよい環化を行えることを発見した。
【0008】
好ましいハロアミノ酸はクロロアミノ酸を含む。
本発明に記載された方法では反応混合物1リットルにつき4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸20g以上が環化されるが、反応混合物1リットルにつきより多量の基質を容易に環化できることを発見した。このことおよびより低濃度に関連した前述の問題のゆえに、本発明に記載された方法においては、反応混合物1リットルにつき基質30以上、より好ましくは50以上、とりわけ75以上そして特に100g以上を環化することが好ましい。
【0009】
生成物を当業者に周知の方法に従って単離してもよい。
しかし、ベンゾイルクロリドを使用したアゼチジン‐2‐カルボン酸のin situベンゾイル化(Schotten Baumann反応)とそれに続くN‐ベンゾイル誘導体の抽出が効率のよい生成物分離を提供することを発見した。そのような方法を本発明に記載された方法とともに使用すると、都合のよいことに形成された高濃度のアゼチジン‐2‐カルボン酸がそのN‐ベンゾイル誘導体の形成、および単離を促進し、低濃度において競合する傾向がある安息香酸の過剰な非生産的形成を避けることを発見した。
【0010】
本発明に記載された方法は、例えば高温、例えば80℃以上(例えば100‐105℃)で、塩基(例えば水酸化ナトリウム)溶液に水に溶解した少量のハロアミノ酸ヒドロハライド塩を滴下して加えることにより実行してもよい。そのような方法は一時的な基質濃度を低く保ち、いずれの競合する分子間反応の速度も低下させることを発見した。
【0011】
本発明に記載された方法は総体的な反応容積を、より実行可能な工業行程に役立つ最小レベルに保つという利点を持つ。
〔実施例〕
N‐ベンゾイルアゼチジン‐2‐カルボン酸の製造
水酸化ナトリウム(277g、6.93mol)を水(2.25L)に溶解し、効率的なオーバーヘッド攪拌をしながら溶液を105℃に加熱した。反応温度を100℃以上に維持しながら、4‐アミノ‐2‐クロロ酪酸塩酸塩(366g、2.10mol)水溶液(500ml)を20分かけて加えた。添加完了後、反応を100‐105℃でさらに5分間攪拌し、45℃に冷却した(およそ4時間)。濃塩酸でpHを8.5に調節し、内部温度が4℃になるまで溶液を氷‐水浴で冷却した。反応温度を<8℃、pH8.5(10N NaOHで滴定)に維持しながら、ベンゾイルクロリド(244ml、2.10mol)を30分かけて加えた。ベンゾイルクロリドの添加完了後、反応をさらに15分間攪拌した(全体で4.2molの塩基が取り込まれた)。pHを9.5に調整(c.NaOH)し、効率的に攪拌しながらジクロロメタン(1L)を加えた。有機相を分離し、水相を再びジクロロメタン(1L)で抽出した。水相を濃塩酸でpH1.5に酸性化し、ジクロロメタン(3x1L)で抽出した。これらの合わせた有機溶液をブライン(500ml)で洗浄、乾燥(MgSO4)、ろ過し、減圧留去して薄黄色固体(152g)を得た。1H NMR分析(CDCl3,200MHz)の結果は必要とする化合物、N‐ベンゾイル‐2‐アゼチジンカルボン酸の構造と一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物1リットルにつき4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸20g以上が環化される、4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸からアゼチジン‐2‐カルボン酸への環化の方法。
【請求項2】
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸30g/L以上が環化される、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸50g/L以上が環化される、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸100g/L以上が環化される、請求項3に記載された方法。
【請求項5】
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸が4‐アミノ‐2‐クロロ酪酸である、請求項1〜4のいずれか一つに記載された方法。
【請求項6】
4‐アミノ‐2‐ハロ酪酸をそのヒドロハライド塩として熱水性塩基に加える、請求項1〜5のいずれか一つに記載された方法。
【請求項7】
塩基が水酸化ナトリウムである、請求項6に記載された方法。
【請求項8】
塩基が80℃以上の温度である、請求項6または請求項7に記載された方法。
【請求項9】
水に溶解したハロアミノ酸塩酸塩を滴下して塩基溶液に加える、請求項6〜8のいずれか一つに記載された方法。
【請求項10】
アゼチジン‐2‐カルボン酸を、続いてベンゾイルクロリドを使用してin situでベンゾイル化し、N‐ベンゾイル誘導体を抽出する上記の請求項のいずれか一つに記載された方法。

【公開番号】特開2009−62392(P2009−62392A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290610(P2008−290610)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願2000−560091(P2000−560091)の分割
【原出願日】平成11年7月13日(1999.7.13)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)