説明

環境測定装置および環境測定方法

【課題】 簡易な構造で、かつ植樹された植物のCO吸収量を容易に測定することが可能な環境測定装置および環境測定方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の環境測定装置は、太陽電池と、前記太陽電池により発電した発電電力量から、日射強度を算出する日射強度演算手段と、植物の種類を含む植物情報を受付ける受付手段と、前記日射強度演算手段により得られる日射強度と、前記受付手段により得られる植物情報とを、日射強度に対する前記植物の二酸化炭素吸収量データに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する手段と、前記変換手段により得られる結果を出力する出力手段とを備える。好ましくは植物情報が、前記植物の種類と、前記植物の数、樹齢、および大きさの少なくとも一つとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境測定装置および環境測定方法に関する。具体的には、二酸化炭素の吸収量、削減量が測定可能な環境測定装置および環境測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置は、太陽電池モジュールを直列接続した複数の太陽電池ストリングで発電した電力を、電力変換装置であるパワーコンディショナに入力し、そして交流機器(負荷)に適切な形態で供給する、あるいは余剰の電力については、電力会社の商用電力系統に逆潮流して売電する場合もある。このように、太陽光発電装置で得られる発電電力量は、利用者にとって関心事であり、表示装置などで表示されている。また、この発電電力量を電気料金に数値換算して表示される場合もある。
【0003】
特に、近年、太陽光発電装置による環境貢献度が注目されており、例えば、発電電力量をCO削減量に換算して表示することが行われている。例えば、特許文献1では、太陽光発電装置により得られる発電電力量を、同じ発電電力量を火力発電所で発電する際に生じるCO排出量に換算し、その値をCO削減量として算出されている。特許文献2では、環境貢献度として把握しやすいように電力以外にガス・水道等の使用量も二酸化炭素排出量として表示させる表示装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−003224号公報
【特許文献2】特開2005−196526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境対策については、太陽光発電装置以外にも、植樹や屋上緑化などによってトータル的に行われている。しかしながら、このような太陽光発電装置以外の環境対策については直接的に把握できる方法はほとんど検討されていない。例えば、植樹した場合、その場所における植物のCO吸収量を実測するのは容易ではなく、どの程度効果があるのか把握するのが困難である。また植物のCO吸収量を測定するには大掛かりな装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、簡易な構造で、かつ植樹された植物のCO吸収量を容易に測定することが可能な環境測定装置および環境測定方法を提供することにある。
【0006】
本発明の環境測定装置は、太陽電池と、前記太陽電池により発電した発電電力量から、日射強度を算出する日射強度演算手段と、植物の種類を含む植物情報を受付ける受付手段と、前記日射強度演算手段により得られる前記日射強度と、前記受付手段により得られる前期植物情報とを、日射強度に対する前記植物の二酸化炭素吸収量データに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する手段と、前記変換手段により得られる結果を出力する出力手段とを備える。
【0007】
ある実施態様においては、前記植物情報が、前記植物の種類と、前記植物の数、樹齢、および大きさの少なくとも一つとを含む。
【0008】
ある実施態様においては、さらに、前記二酸化炭素吸収量を順次記憶し、得られる複数の二酸化炭素吸収量を積算する手段を備える。
【0009】
ある実施態様においては、さらに、前記太陽電池により発電した発電電力量において、同じ電力量を石油火力発電により発電した場合に生じる二酸化炭素量が削減されたと仮定して、二酸化炭素削減量を算出する手段を備える。
【0010】
本発明の環境測定方法は、太陽電池を測定箇所に設置し、発電される発電電力量に基づき、日射強度を算出する工程、測定箇所に設置する植物の種類を含む植物情報を受付ける工程、および前記日射強度と、前記植物情報とを、日射強度に対する前記植物の二酸化炭素吸収量データに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する工程を包含する。
【0011】
ある実施態様においては、前記植物情報が、前記植物の種類と、前記植物の数、樹齢、および大きさの少なくとも一つとを含む。
【0012】
ある実施態様においては、さらに、前記算出された二酸化炭素吸収量を順次記憶し、複数の二酸化炭素吸収量を積算する工程を包含する。
【0013】
ある実施態様においては、さらに、前記太陽電池により発電した発電電力量において、同じ電力量を石油火力発電により発電した場合に生じる二酸化炭素量が削減されたと仮定して、二酸化炭素削減量を算出する工程を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の環境測定装置によれば、太陽電池により植樹された地域の実際の日射強度を測定し、これによって植樹した植物のCO吸収量を算出することが可能であるため、正確なCO吸収量の測定が可能である。さらに、植物の本数・樹齢・大きさ(高さ)などの情報を加えることにより、より詳細なCO吸収量の測定が可能である。また、本発明の環境測定装置は、使用する太陽電池を太陽光発電システムとして併用する場合には、例えば、太陽電池により発電される電力量を、火力発電した場合に排出されるCO量が削減されたと仮定してCO削減量を合わせて測定したり、あるいはこれらのCO吸収量とCO削減量との合計量を算出することも可能である。
【0015】
また、本発明の環境測定装置は、植樹する前に、日射強度からCO吸収に最適な条件となる植物(樹木)の種類をシミュレーションして提示することも可能である。
【0016】
本発明の環境測定装置は、さらにCO吸収量を経時的に記憶させておくことによって、例えば、1日あたり、1月あたり、1年あたりなどの所定期間のCO吸収量を測定することも可能であり、より詳細な測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<実施の形態1>
図1は、本発明の環境測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す環境測定装置は、太陽電池1と、演算手段2と、受付手段3と、二酸化炭素吸収量変換手段4と、出力手段5とを含む。
【0019】
具体的には、太陽電池1と演算手段2との間に、太陽電池1の発電電流を検出する電流検出部6および発電電圧を検出する検出部7が設けられ、発電電流および発電電圧から発電電力量および日射強度が演算手段2により算出される。本明細書において、発電電流(発電電圧)とは、所定時間当たりの発電電流量(発電電圧量)をいい、瞬時の発電電流量(発電電流値)および瞬時の発電電圧量(発電電圧値)も含む。また、日射強度とは、所定時間当たりの日射量をいい、瞬時の日射量も含む。他方、植樹した植物の種類などの植物情報を受付手段3で受付ける。そして、上記日射強度と、上記植物情報とを、二酸化炭素吸収量変換手段4により日射強度に対する植物の二酸化炭素吸収量データに照らしてCO吸収量(光合成量)に変換し、このCO吸収量を出力手段5により表示する。なお、本発明の環境測定装置は、太陽電池1を太陽光発電システムとして併用しているために、太陽光発電システムの構成として、さらにパワーコンディショナ10、交流負荷20、および商用電力系統30、および供給電力検出部40が備えられている。
【0020】
太陽電池1は、太陽光により電力を取り出せるものであればよく、特に制限されない。例えば、種々の太陽電池素子、複数の太陽電池素子を電気的に接続した太陽電池モジュール、複数の太陽電池モジュールを電気的に接続した太陽電池ストリングまたは太陽電池アレイのいずれも使用することが可能である。例えば、図1に示すように、太陽電池ストリングまたは太陽電池アレイを用いる場合は、太陽光発電システムと併用した環境測定装置としてもよいし、太陽電池素子を用いる場合は、携帯型の環境測定装置とすることも可能である。
【0021】
演算手段2は、太陽電池1から得られる発電電流および発電電圧から発電電力および日射強度を算出する目的で設置される。太陽電池1と演算手段2との間には電圧検出部6と電流検出部7とが設けられている。
【0022】
受付手段3は、植物の種類、植物の数、植物の樹齢、植物の大きさ(高さ、径など)などの植物情報を受け付ける。受け付ける植物の情報は、単体のものであってもよいし、複数のものであってもよい。植物の数、植物の樹齢、および植物の大きさは、より精密なCO吸収量を算出する観点から、必要に応じて受け付けられる。この受付手段3には記憶部が備えられており、予め情報として受付けられていてもよい。
【0023】
二酸化炭素(CO)吸収量変換手段4は、得られる日射強度および植物情報(植物の種類)から、日射強度に対する植物のCO吸収量(光合成量)に変換するものである。ここで、日射強度に対する植物のCO吸収量Aは、以下の式で表される:
A=B−C(ただし、A≧0である)
式において、Bは、日射強度に対する植物の光合成によるCO固定量であり、Cは、日射強度に対する植物の呼吸によるCO排出量である。上記式において、日射強度が弱い場合、B<Cとなり得る結果、CO吸収量Aは負の値となり得るが、この場合、上記CO吸収量Aは0で表示する。
【0024】
二酸化炭素吸収量変換手段4においては、上記のとおり、日射強度に対する植物のCO吸収量(光合成量)データが情報としてインプットされている。あるいは上記データの代用として、植物毎の日射強度に対する光合成によるCO固定量および呼吸によるCO排出量がそれぞれ情報としてインプットされていてもよい。
【0025】
出力手段5は、変換手段4により得られる結果を表示する。例えば、CO吸収量をそのまま表示してもよいし、このCO吸収量を炭素固定量(炭素重量)に換算して表示してもよい。さらに必要に応じて、太陽電池によりCO削減量などを表示する。表示方法は、当業者が通常用いる表示方法を用いればよく、特に制限されない。
【0026】
次に、本発明の環境測定方法について説明する。図2は、本発明の環境測定装置の一例における環境測定方法のブロック図を示す。
【0027】
まず、ステップ1において、太陽電池1の発電電力量を測定する。発電電力量は、測定された発電電圧値と発電電流値とから算出することによって得られる。この発電電力量の算出は、演算手段2により行ってもよいし、あるいは予め別の演算手段により行ってもよい。
【0028】
ステップ2では、演算手段2により発電電力量に係数を乗じて日射強度を算出する。この日射強度を算出する上で、太陽電池の設置容量、太陽電池の設置条件(設置角度、方位、多面設置などの諸条件)などの条件を考慮することが好ましい。通常、植物は、日射強度が強いほど、光合成を行い、COを吸収する。他方、日射強度が一定値を下回ると、植物の光合成は停止し、呼吸によりCO排出するようになる。
【0029】
ステップ3では、植物の種類などの植物情報を受け付ける。なお、植物情報は予め記憶部に記憶されている。
【0030】
ステップ4では、ステップ2で得られる日射強度と、ステップ3で得られる植物情報とを、日射強度に対する植物のCO吸収量(光合成量)データに照らして、CO吸収量に変換する。このステップにおいては、上記日射強度に対する植物のCO吸収量(光合成量)データ以外に、さらに詳細なデータ(例えば、植物の樹齢によるCO吸収量データなど)に基づいて、CO吸収量に変換され得る。
【0031】
ステップ5では、ステップ4で得られる植物のCO吸収量(光合成量)を記憶するとともに、必要に応じて、ステップ1〜ステップ4を繰り返し、記憶された複数の植物のCO吸収量(光合成量)を積算する。このような積算により、単位時間当たりの植物のCO吸収量をより精密に算出できる。
【0032】
他方、ステップ6は、さらに太陽電池によるCO削減量を算出する目的で行われる。ステップ6では、ステップ1で得られる太陽電池の発電量において、同じ電力量を発電する際に燃やした石油燃料などで生じたCOの量を算出し、この値を二酸化炭素削減量として算出する。なお、ステップ6において、二酸化炭素削減量を記憶するとともに、必要に応じて繰り返し、記憶された複数の二酸化炭素削減量を積算してもよい。
【0033】
ステップ7では、ステップ5で得られる植物のCO吸収量および必要に応じてステップ6で得られる二酸化炭素削減量を出力手段により表示する。これらは個別に表示してもよいし、合計して表示してもよい。さらに、太陽光発電システムを併用している場合は、例えば積算電力量や消費電力量などを合わせて表示してもよい。
【0034】
<実施の形態2>
本発明の環境測定装置はまた、植樹に適した植物の選択に使用することができる。例えば、測定地点の季節毎の日射強度の変動を測定することによって、その日射強度の変動に最適なCO吸収量が得られる植物を、種々の植物情報から選択することができる。例えば、楠と大島桜では年間のCO吸収量や夏期・秋期のCO吸収量はほぼ同じであるが、春期は大島桜のCO吸収量が楠に比べて3倍であり、逆に冬期においては、大島桜はCOを排出するのみでありほとんどCOを吸収しない。このように算出された日射強度の変動と植物情報とを比較することにより、測定地点の環境に応じて、CO吸収に最適な条件となる樹木の種類をシミュレーションすることが可能となる。
【0035】
<実施の形態3>
さらに、受付手段3において、樹木が植樹される場所の方位、周辺の建物の位置と高さなどの植物情報以外の日射量の変動因子に関する情報を受け付けることによって、さらに設置場所の環境に適した植物の種類を提示することができる。例えば、年間を通じてビルの影になる時間帯が多い場所であれば、散乱光でもCOの吸収量が多い柊木犀のような中低木を植樹すると効果的である。また、赤松とモミの木では赤松の方が低日射でのCO吸収量が多く、日射時間が短くてもCO吸収量が多くなるので、算出した日射強度の時間的変化から最適な樹木を提示することもできる。
【0036】
<実施の形態4>
さらにまた、植物のCO吸収量はその樹木の年齢(樹齢)によって変化し、成長過程ではCO吸収量は年々増加し、一定樹齢以降はCOの貯蔵庫としての存在となりCOの吸収は殆んど行われなくなるので、CO吸収量を樹齢に合った数値に補正するとよい。これにより、より正確なCO吸収量を算出できるとともに、COの吸収量を再び増加させるための植え替えの時期を提示することが可能となる。
【0037】
以上述べたように、本発明の環境測定装置は、太陽電池を用いることによって、測定地点に植樹した植物、あるいは植樹する予定の植物のCO吸収量を測定することができる。さらに上記太陽電池を太陽光発電システムとして使用している場合は、このシステムによるCO削減量を測定することも可能であるため、植物および太陽光発電システムのトータル的な環境貢献度を評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の太陽光発電装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の環境測定装置の一例における環境測定方法のブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1:太陽電池
2:演算手段
3:受付手段
4:二酸化炭素吸収量変換手段
5:出力手段
6:電流検出部
7:電圧検出部
10:パワーコンディショナ
20:交流負荷
30:商用電力系統
40:供給電力検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、
前記太陽電池により発電した発電電力量から、日射強度を算出する日射強度演算手段と、
植物の種類を含む植物情報を受付ける受付手段と、
前記日射強度演算手段により得られる前記日射強度と、前記受付手段により得られる前記植物情報とを、日射強度に対する前記植物の二酸化炭素吸収量データに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する手段と、
前記変換手段により得られる結果を出力する出力手段と
を備える、環境測定装置。
【請求項2】
前記植物情報が、前記植物の種類と、前記植物の数、樹齢、および大きさの少なくとも一つとを含む、請求項1に記載の環境測定装置。
【請求項3】
さらに、前記二酸化炭素吸収量を順次記憶し、得られる複数の二酸化炭素吸収量を積算する手段を備える、請求項1または2に記載の環境測定装置。
【請求項4】
さらに、前記太陽電池により発電した発電電力量において、同じ電力量を石油火力発電により発電した場合に生じる二酸化炭素量が削減されたと仮定して、二酸化炭素削減量を算出する手段を備える、請求項1から3のいずれかの項に記載の環境測定装置。
【請求項5】
太陽電池を測定箇所に設置し、発電される発電電力量に基づき、日射強度を算出する工程、
前記測定箇所に設置する植物の種類を含む植物情報を受付ける工程、および
前記日射強度と、前記植物情報とを、日射強度に対する前記植物の二酸化炭素吸収量データに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する工程
を包含する、環境測定方法。
【請求項6】
前記植物情報が、前記植物の種類と、前記植物の数、樹齢、および大きさの少なくとも一つとを含む、請求項5に記載の環境測定方法。
【請求項7】
さらに、前記算出された二酸化炭素吸収量を順次記憶し、複数の二酸化炭素吸収量を積算する工程を包含する、請求項5または6に記載の環境測定方法。
【請求項8】
さらに、前記太陽電池により発電した発電電力量において、同じ電力量を石油火力発電により発電した場合に生じる二酸化炭素量が削減されたと仮定して、二酸化炭素削減量を算出する工程を備える、請求項5から7のいずれかの項に記載の環境測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−107273(P2010−107273A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277712(P2008−277712)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)