説明

環境試験装置

【課題】試験時間を大幅に短縮可能な環境試験装置の提供を目的とした。
【解決手段】試験装置1は、試験室10に対して温度調整された空気を供給するための高温側温調部20と、低温側温調部21とを備えている。試験装置1は、高温側温調部20から高温の空気を試験室10に供給する高温晒しモードによる運転と、低温側温調部21から低温の空気を試験室10に供給する低温晒しモードによる運転とを順次繰り返し実施可能とされている。試験装置1は、運転モードの切替に際して、試験部内の雰囲気温度が所定温度に到達するまでの移行期間において試験室10に対して導入される気体の風速が、所定温度に到達してから高温晒しモードあるいは低温晒しモードが完了するまでの試験期間において試験室に対して導入される気体の風速よりも高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境試験装置に関するものであり、特に温度調整された空気などの気体を試験部に導入して試験を実施可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されている冷熱衝撃試験装置や、冷熱サイクル試験装置のように温度調整された空気などの気体を試験部に導入して試験を実施可能な環境試験装置が提供されている。従来技術の環境試験装置では、高温に調整された気体を試験部に導入して高温雰囲気下に供試体を晒す高温晒しモードによる運転と、低温に調整された気体を試験部に導入して低温雰囲気下に供試体を晒す低温晒しモードによる運転とを順次実施する冷熱サイクル動作を繰り返し実施することで、供試体に対して熱衝撃を与えて試験を行うこととされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−160217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、所定温度に温度調整された気体を試験部に導入することで冷熱衝撃試験を実施する試験装置では、試験部内の雰囲気温度や、試験部内に設置された供試体の温度が所定の試験温度に到達するまでに時間を要していた。通常、冷熱衝撃試験は、上述した冷熱サイクルを数百サイクルあるいはそれ以上繰り返して実施するため、試験部内の雰囲気温度や供試体の温度が試験温度に到達するまでの期間を少しでも短縮することが望まれていた。
【0005】
上記した知見に基づき、本発明者らは、冷熱サイクル動作の実施にあたり、運転モードを高温晒しモードや低温晒しモードに切り替える際に、試験部内の雰囲気温度等をなるべく早く所定の試験温度に到達させるために、試験温度を越えて高温あるいは低温に温度調整された気体を試験部に導入することを検討した。しかし、かかる方策を採用した場合についても、試験部内の雰囲気温度等の温度変化速度の向上に限界があり、冷熱サイクル動作の実施期間を大幅に短縮することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、試験時間を大幅に短縮可能な環境試験装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決すべく提供される本発明の環境試験装置は、供試体が設置される試験部と、当該試験部に対して供給される気体の温度調整を行う温調部と、を有し、当該温調部が、当該試験部に対して導入される気体を所定温度に調整可能な温調手段と、当該温調手段により温度調整された気体を前記試験部に向けて送風可能な送風手段と、を有し、高温に調整された気体を試験部に導入して高温雰囲気下に供試体を晒す高温晒しモード、並びに、低温に調整された気体を試験部に導入して低温雰囲気下に供試体を晒す低温晒しモードを含む複数の運転モードを組み合わせて構成される一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施可能であり、前記送風手段が、試験部に対して導入される気体の風速を調整可能であり、高温晒しモードおよび低温晒しモードへの運転モードの切替に際し、試験部内の雰囲気温度が所定温度に到達するまでの移行期間において試験部に対して導入される気体の風速が、所定温度に到達してから高温晒しモードあるいは低温晒しモードが完了するまでの試験期間において試験部に対して導入される気体の風速よりも高いことを特徴としている(請求項1)。
【0008】
本発明の環境試験装置では、高温晒しモードや低温晒しモードへの運転モードの切替に際して、試験部内の雰囲気温度が所定温度に到達するまでの移行期間に、送風手段により試験部に対して導入される気体の風速が、所定温度に到達してから高温晒しモードや低温晒しモードが完了するまでの試験期間において試験部に対して導入される気体の風速よりも高く設定されている。そのため、本発明の環境試験装置では、運転モードの切替時の移行期間において、次々と所定温度に温度調整された気体が試験部内に導入され、試験部内にある気体と置換されていく。従って、本発明の環境試験装置によれば、試験部内の雰囲気温度や、この内部に設置された供試体の温度を迅速に所定温度に到達させることができ、冷熱衝撃試験の試験期間を大幅に短縮することができる。
【0009】
ここで、上記した環境試験装置は、温調部が温度調整された気体を前記試験部を外れた領域内において循環させて待機する待機状態で動作可能なものとすることができる。かかる構成とした場合、待機状態において気体を必要以上の高速で循環させると、攪拌熱の影響により気体の温度が不安定になったり、気体を所定の温度に調整するために過剰なエネルギーを必要とする可能性がある。
【0010】
かかる知見に基づけば、上述した本発明の環境試験装置を、温調部が、温度調整された気体を試験部に対して供給する気体供給状態と、温度調整された気体を前記試験部を外れた領域内において循環させる待機状態と、で動作可能とした場合は、待機状態である場合における気体の循環速度を、気体供給状態である場合に試験部に供給される気体の風速よりも低速とすることが望ましい(請求項2)。
【0011】
かかる構成とすれば、上述した攪拌熱の影響により気体の温度が不安定になったり、気体の温度調整のために過剰なエネルギーが消費されるのを抑制することができる。
【0012】
ここで、上述した本発明の環境試験装置において、供試体を設置部位によらず均一の温度雰囲気下に晒すためには、試験部に向けて供給される気体が部位によらずほぼ均一の流速で流れることが望ましい。
【0013】
かかる知見に基づけば、試験部と温調部との間に温調ダンパが設けられており、前記試験部に導入された気体が流れる送風経路aと、当該送風経路aに対して交差した送風経路bと、を有し、前記温調ダンパを開くことにより、前記送風経路bを介して試験部と温調部との間における気体の流出入が可能な連通状態になり、前記温調ダンパに、前記連通状態において前記送風経路a,bに面する流路形成面が設けられており、前記連通状態において、当該流路形成面と送風経路aの内周面とが連続した状態になるものであることが望ましい(請求項3)。
【0014】
本発明の環境試験装置では、温調ダンパが開き、連通状態になった際に送風経路a,bの双方に面する流路形成面が送風経路aの内周面と連続した状態になる。そのため、本発明の環境試験装置は、温調部から試験部に向けて気体が大流量で流れたとしても、この気体が流路形成面に案内されてスムーズに送風経路aに流れ込むこととなる。従って、本発明の環境試験装置では、試験部に向けて部位によらずほぼ均一の流速で気体を供給することができ、供試体を設置部位によらず均一の温度雰囲気下に晒すことができる。
【0015】
上述した本発明の環境試験装置は、温調部が、気体を高温に調整する高温側温調部と、気体を低温に調整する低温側温調部と、を有し、試験部と前記高温側温調部との間、並びに、試験部と前記低温側温調部との間に、温調ダンパがそれぞれ独立的に作動可能なように配されており、当該温調ダンパが、当接面と、当該当接面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面と、を有し、前記温調ダンパが閉状態である場合に、前記傾斜面が送風経路aの内周面と連続しており、試験部と前記高温側温調部との間に配された温調ダンパ、並びに、試験部と前記低温側温調部との間に配された温調ダンパのうちの一方が開状態になると、当該開状態になった温調ダンパが閉状態である他方の温調ダンパに対して傾斜した状態で当接し、前記開状態になった一方の温調ダンパの流路形成面と、前記閉状態である温調ダンパに設けられた傾斜面と、が連続した状態になるものであってもよい(請求項4)。
【0016】
かかる構成によれば、開状態になった温調ダンパの流路形成面が、閉状態である温調ダンパに設けられた傾斜面を経て送風経路aの内周面まで連続した状態になる。そのため、上述した構成によれば、温調部から試験部に向けて流れる気体が流路形成面や傾斜面に案内されてスムーズに送風経路aに流れ込むこととなる。従って、本発明の環境試験装置によれば、試験部に向けて部位によらずほぼ均一の流速で気体を供給し、供試体を設置部位によらず均一の温度雰囲気下に晒すことができる。
【0017】
上述した本発明の環境試験装置は、当接面および傾斜面がなす角度が、閉状態にある温調ダンパおよび開状態にある温調ダンパがなす角度と同一であることが好ましい(請求項5)。
【0018】
かかる構成とした場合は、温調ダンパが開くと当接面から傾斜面にかけて一定の角度で連続した状態になるため、気体が局所によどむことなく、温調部から試験部に向けてスムーズに流れる。従って、本発明によれば、供試体を設置部位によらず均一の温度雰囲気下に晒すことができる。
【0019】
上述した本発明の環境試験装置は、試験部と温調部との間に温調ダンパが設けられており、当該温調ダンパを開くことにより温調部から試験部に対して気体を導入可能な連通状態となるものであり、前記温調部内に、気体を循環させることが可能な内部循環流路と、当該内部循環流路を開閉可能な内部ダンパと、が設けられており、当該内部ダンパが、連動機構を介して温調ダンパと連動可能なように連結されており、前記温調ダンパを開くことにより、送風経路a,bが連通状態になり、内部ダンパが前記内部循環流路を閉じた状態になり、前記温調ダンパを閉じることにより、前記送風経路a,bが非連通状態になり、内部ダンパが開いた状態になるものであってもよい(請求項6)。
【0020】
本発明の環境試験装置では、温調ダンパを開くと、これに連動して送風経路bと送風経路aとが連通状態となり、温調部で温度調整された気体が内部循環流路に流れることなく、試験部側に向けて流れる。一方、本発明の環境試験装置では、温調ダンパを閉じると、これに連動して送風経路bと送風経路aとが非連通状態となり、気体が温調部内で循環可能となる。そのため、本発明の環境試験装置では、温調ダンパの開閉により、気体の循環系統として適宜最適なものを選択することができる。
【0021】
上述した本発明の環境試験装置は、温調ダンパの流路形成面に、温調部と試験部との間で流れる気体の流れを整流する整流手段が設けられたものであることが望ましい(請求項7)。
【0022】
かかる構成によれば、温調部と試験部との間を気体がスムーズに流れることになり、試験部に導入される気体の勢いが弱まったり、気体の流れが部位によって不均一になるのを最小限に抑制することができる。
【0023】
上述した本発明の環境試験装置は、試験部が、気体が流出入可能な試験部本体と、前記試験部本体に対して着脱可能な供試体設置部と、を有する構成とすることも可能である(請求項8)。
【0024】
本発明の環境試験装置では、試験部が試験部本体と、これに対して脱着可能な供試体設置部とを備えているため、供試体設置部を試験部本体から取り外して供試体を設置しやすい場所で設置することができる。また、本発明の環境試験装置によれば、供試体設置部を試験部本体から取り外して別の場所に移動させ、異なる試験を行うことも可能である。
【0025】
また、上述した本発明の環境試験装置は、試験部の内側に配された供試体に対して電気的に接続された接続端子を、試験部の外側に取出可能なものであってもよい(請求項9)。
【0026】
本発明の環境試験装置によれば、例えば供試体に対して電気的に接続された接続端子に対して、試験部の外部に設けられた電気的特性を測定するための測定機器を接続することにより供試体の電気的特性を前記測定機器で測定したり、前記接続端子に電源を接続することにより、電力を印加した状態における供試体の冷熱衝撃試験を行う等、冷熱衝撃試験等に伴う供試体の電気的特性についての試験を容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、試験時間を大幅に短縮可能な環境試験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る冷熱衝撃試験装置を示す斜視図であり、(b)は供試体設置容器を示す斜視図である。
【図2】図1に示す冷熱衝撃試験装置の内部構造を示す斜視図であり、(a)は高温晒しモードでの運転中の状態を示す斜視図、(b)は低温晒しモードでの運転中の状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す冷熱衝撃試験装置の高温側温調ダンパおよび低温側温調ダンパが閉状態である場合の状態を示す要部拡大図である。
【図4】図1に示す冷熱衝撃試験装置の低温側温調ダンパが開状態である場合の状態を示す要部拡大図である。
【図5】図3のA方向矢視図である。
【図6】(a)は試験室内の雰囲気温度、(b)は高温側温調部が備える送風機の出力、(c)は高温側温調ダンパの開閉、(d)は低温側温調部が備える送風機の出力、(e)は低温側温調ダンパの開閉の推移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、本発明の環境試験装置の一実施形態に係る冷熱衝撃試験装置1(以下、単に試験装置1とも称す)について図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右や奥行き、高さ等の位置関係は、特に断りのない限り図1に示す通常の設置状態を基準として説明する。
【0030】
図1に示すように、冷熱衝撃試験装置1は、筐体2を有する。筐体2は、直方体状の形状を有するものであり、断熱性を有する外壁によって外周が囲まれている。図2に示すように冷熱衝撃試験装置1は、この筐体2の内部に、試験部3と温調部5とを有する。試験部3は、筐体2において高さ方向のほぼ中央部に位置している。試験部3は、試験室10と、入口側空間11と、出口側空間12とを有する。試験室10は、筐体2内に作り付けられたケージ状の枠体13a(試験部本体)と、この枠体13aに対して着脱自在な供試体設置容器13b(供試体設置部)とを有する。
【0031】
供試体設置容器13bは、筐体2の正面をなす正面壁2aに設けられた開口2bを介して試験室10に対して着脱可能とされている。具体的には、供試体設置容器13bは、図1(a)に示すように引き出し状とされており、図1(b)に示すように必要に応じて筐体2側から引き抜くことができる構成とされている。供試体設置容器13bは、試験室10に対して装着した状態において正面壁2aの開口2bを閉塞する閉塞部14と、これに対して一体的に取り付けられた籠状の収容部15とを有する。閉塞部14は、筐体2の正面壁2aと同様に断熱性を有する材質によって構成されている。
【0032】
図1に示すように、閉塞部14には、配線接続部17が設けられている。配線接続部17は、供試体設置容器13bを試験室10に対して設置した状態において、筐体2の外側(正面壁2a側)に露出する部分に設けられた配線用スリット17aを有する。図1(b)に示すように、配線用スリット17aは、試験装置1とは別に設けられた電気的特性を測定するための測定機器などに電気的に接続するための配線17bを試験室10の内側から外側に取り出すために使用できる。
【0033】
収容部15は、試験室10内にほぼ隙間なく納まる大きさとされている。収容部15には、供試体を複数並べて配置可能である。収容部15の内側には、電気・電子基板などの供試体を電気的に接続可能な供試体接続用の端子部(内部端子部)が半田付け等により設けられている。この内部端子部(図示せず)は、上述した配線17bに対して電気的に接続される。そのため、収容部15の内側に設けられた内部端子部(図示せず)に供試体を電気的に接続し、配線用スリット17aを経由して試験室10の外側に取り出された配線17bに対して測定機器を接続すると、供試体の電気的特性を測定することができる。
【0034】
入口側空間11および出口側空間12は、それぞれ試験室10に対して隣接する位置に設けられている。これにより、試験部3には、入口側空間11から試験室10を経て出口側空間12に至る送風経路16(送風経路a)が形成されている。入口側空間11は、後に詳述する温調部5から温度調整された空気が流入する部分である。また、出口側空間12は、試験室10に対して入口側空間11とは逆側に隣接する位置にあり、試験室10を通過してきた空気が流入する部分である。
【0035】
温調部5は、試験部3に対して上方に配された高温側温調部20と、試験部3に対して下方に配された低温側温調部21とを有する。高温側温調部20は、ほぼ水平に配された仕切30を介して、加熱部31と内部循環ダクト32とに分かれている。加熱部31には、加熱器34(温調手段)や、送風機35(送風手段)が設けられている。また、図3や図4に示すように、内部循環ダクト32には、内部ダンパ36が設けられている。さらに、高温側温調部20と試験部3の入口側空間11との間、並びに、高温側温調部20と出口側空間12との間には、高温側温調ダンパ37,37がそれぞれ試験室10を介して対称の位置関係となるように配されている。
【0036】
加熱器34は、加熱部31に流入した空気を加熱することができる。送風機35は、加熱器34に対して隣接する位置にあり、加熱器34で加熱された空気を吸い込み、所定の風速で吹き出すことができる。送風機35は、試験部3の入口側空間11が設けられた部分の上方に位置しており、高温側温調ダンパ37を開くことにより、入口側空間11側(下方側)に向けて送風可能なように送風口を向けて設置されている。そのため、高温側温調ダンパ37,37を開いた状態で送風機35を作動させると、加熱器34で加熱された空気が、送風機35の送風口から高温側温調ダンパ37に至る領域(以下、送出経路38(送風経路b)とも称す)を経て試験部3に向けて送風される。また、試験部3に送風された空気は、試験部3に形成された送風経路16を経て出口側空間12側にある高温側温調ダンパ37を通過し、高温側温調部20に戻る。高温側温調部20に流入した空気は、高温側温調ダンパ37と加熱器34との間に形成された領域(以下、戻り流路39(送風経路b)とも称す)を送風経路16と交差する方向に流れ(本実施形態では、ほぼ直交する方向)、再び加熱器34に戻る。このようにして、加熱器34で加熱された空気は、高温側温調部20と試験部3との間で循環する。一方、高温側温調部20は、高温側温調ダンパ37,37を閉じ、内部ダンパ36を開いた状態で送風機35を作動させることにより、加熱器34により空気を適宜加熱しつつ、加熱部31と内部循環ダクト32との間で空気を循環させることができる。
【0037】
低温側温調部21は、内部空間が上下方向に向けて配された仕切40を介して左右に分かれている。また、低温側温調部21の内部には、仕切40と一連に形成された仕切41により試験部3との間に形成された内部循環ダクト42を有する。低温側温調部21において仕切40の左側に形成された空間(以下、流入側空間43とも称す)には、蒸発器46(温調手段)が設けられている。また、仕切40に対して右側の空間(以下、流出側空間44とも称す)には、温調用加熱器48と、送風機49(送風手段)とが上下に並べて設けられている。内部循環ダクト42内には、内部ダンパ50が設けられている。
【0038】
流入側空間43と流出側空間44とは、仕切40の下方に形成された連通部分を介して互いに連通している。低温側温調部21の流入側空間43側の部分と試験部3の出口側空間12との間、並びに、流出側空間44側の部分と入口側空間11との間には、低温側温調ダンパ47,47が、それぞれ試験室10を介して対称の位置関係となるように配されている。
【0039】
蒸発器46は、図示しない冷凍機から送られてくる冷媒との熱交換により流入側空間43に流入してきた空気を冷却することができる。温調用加熱器48は、流出側空間44内であって、蒸発器46に対して送風機49を作動させた場合における空気の流れ方向下流側の位置に設けられている。温調用加熱器48は、蒸発器46を通過してきた空気が必要以上に低温になっている場合に、これを加熱して適温に調整するためのものであり、必要に応じて適宜作動可能とされている。
【0040】
送風機49は、温調用加熱器48に対して上方に配されており、蒸発器46、温調用加熱器48で低温に温度調整された空気を送風することができる。送風機49は、試験部3において入口側空間11が設けられた部分の下方に位置しており、送風口が入口側空間11側(上方側)を向くように配されている。そのため、低温側温調ダンパ47,47を開いた状態で送風機49を作動させると、蒸発器46で冷却された空気が、送風機49の送風口から低温側温調ダンパ47に至る領域(以下、送出経路51(送風経路b)とも称す)を経て試験部3に向けて送風される。また、試験部3に送風された空気は、試験部3を通過し、出口側空間12側に設けられた低温側温調ダンパ47を経て、低温側温調部21に戻る。低温側温調部21に流入した空気は、低温側温調ダンパ47と蒸発器46との間に形成された領域(以下、戻り経路53(送風経路b)とも称す)を送風経路16と交差する方向に流れ(本実施形態では、ほぼ直交する方向)、再び蒸発器46に戻る。蒸発器46で冷却された空気は、このようにして低温側温調部21と試験部3との間で循環する。また、低温側温調ダンパ47,47を閉じ、内部ダンパ50を開いた状態で送風機49を作動させると、蒸発器46、温調用加熱器48で温度調整された低温の空気を低温側温調部21内で循環させることができる。
【0041】
ここで、本実施形態の試験装置1において、上述した高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47、内部ダンパ36,50は、図3〜図5に示すような特徴的な構成とされている。具体的には、高温側温調ダンパ37は、平板状でダンパ本体60を有する。ダンパ本体60は、試験部3の入口側空間11や出口側空間12と、高温側温調部20との境界に設けられた開口部分を閉塞可能な大きさを有する板体である。ダンパ本体60は、前記した開口部分を閉塞した状態(閉状態)において高温側温調部20の内側を向く流路形成面61と、試験部3側を向く当接面62とを有する。ダンパ本体60は、一端側に設けられた支軸63により軸支されており、これを中心として開閉可能とされている。
【0042】
ダンパ本体60の流路形成面61側には、垂直ガイドベーン65(整流手段)と水平ガイドベーン66(整流手段)とが設けられている。垂直ガイドベーン65は、金属板などによって形成されたほぼ短冊状の板体であり、流路形成面61に対して垂直に、所定の間隔を空けて複数枚(本実施形態では2枚)取り付けられている。また、垂直ガイドベーン65は、流路形成面61において、上記した支軸63が設けられた側から、これとは反対側に向けて面が拡がるように取り付けられている。また、水平ガイドベーン66は、金属板などによって形成された平板であり、垂直ガイドベーン65の端部に、ダンパ本体60の流路形成面61に対して平行もしくは必要に応じて適当な角度をつけて取り付けられている。一方、ダンパ本体60の当接面62側には、傾斜片67が設けられている。傾斜片67は、断面形状がほぼ三角形の形状とされており、当接面62に対して一定の角度aをなす傾斜面68を有する。
【0043】
内部ダンパ36は、高温側温調部20内に形成された内部循環ダクト32に設けられている。内部ダンパ36は、シャッター板70を有し、これが支軸71によって回動自在に支持されている。シャッター板70は、リンク機構72を介して上述した高温側温調ダンパ37のダンパ本体60に接続されている。これにより、内部ダンパ36は、試験部3と高温側温調部20との境界に設けられた開口部分を高温側温調ダンパ37が閉じた状態(閉状態)にある場合に開状態になり、高温側温調ダンパ37が前記開口部分を開いた状態(開状態)にある場合に閉状態になるように高温側温調ダンパ37の動作に関連づけられている。
【0044】
低温側温調ダンパ47や内部ダンパ50は、上述した高温側温調ダンパ37や内部ダンパ36と同一の構造とされている。低温側温調ダンパ47のダンパ本体60は、閉状態において流路形成面61が低温側温調部21の内側を向き、当接面62が試験部3側を向く姿勢となるように取り付けられている。また、低温側温調ダンパ47のダンパ本体60は、高温側温調ダンパ37のダンパ本体60と対向するように配されている。また、低温側温調ダンパ47のダンパ本体60は、傾斜片67が設けられた部位が試験室10側に位置し、支軸63が設けられた部位が試験室10から離れた位置になるように取り付けられている。
【0045】
内部ダンパ50は、低温側温調部21内に形成された内部循環ダクト42に設けられており、リンク機構72を介して低温側温調ダンパ47のダンパ本体60に連結されている。これにより、内部ダンパ50は、低温側温調ダンパ47が開状態になると閉状態になり、低温側温調ダンパ47が閉状態になると開状態になるように動作が関連づけられている。
【0046】
図4に示すように、上述した高温側温調ダンパ37および低温側温調ダンパ47は、一方(図示状態では低温側温調ダンパ47)が開状態になると、傾斜片67が他方(図示状態では高温側温調ダンパ37)の当接面62に当接した状態になる。この状態において、高温側温調ダンパ37および低温側温調ダンパ47のうち開状態になったもののダンパ本体60は、他方側に設けられた傾斜片67の傾斜面68とほぼ同一の角度aで傾斜した状態になる。この状態において、試験室10を介して左右対称に配された高温側温調ダンパ37,37や低温側温調ダンパ47,47のうち、入口側空間11側に設けられたものであって、開状態になっているもののダンパ本体60を構成する流路形成面61は、高温側温調部20や低温側温調部21の内側に形成された送出経路38,51(図示状態では送出経路51)、並びに、試験部3に形成された送風経路16の双方に面した状態になる。また、高温側温調ダンパ37,37や低温側温調ダンパ47,47のうち、出口側空間12側に設けられたものであって、開状態になっているもののダンパ本体60を構成する流路形成面61は、高温側温調部20や低温側温調部21の内側に形成された戻り経路39,53、並びに、試験部3に形成された送風経路16の双方に面した状態になる。さらに、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47が開状態になった状態において、開状態になったものの流路形成面61が、他方側に設けられた傾斜面68と一連のスロープを形成した状態になる。
【0047】
続いて、本実施形態の試験装置1の動作について、図面を参照しつつ説明する。試験装置1は、高温側温調部20において加熱された空気を試験部3に導入することにより、試験室10内に設置された供試体を高温の雰囲気下にさらす高温晒しモードと、低温側温調部21において冷却された空気を試験部3に導入することにより、試験室10内に設置された供試体を冷温の雰囲気下にさらす冷温晒しモードとを組み合わせて構成される冷熱サイクル動作を、設定されたサイクル数だけ繰り返し実施することができる。
【0048】
試験装置1が高温晒しモードで動作する場合は、図6(c),(e)に示すように、高温側温調ダンパ37が開状態とされ、低温側温調ダンパ47が閉状態とされる。これに連動して、高温側温調部20に設けられた内部ダンパ36が閉状態となり、低温側温調部21に設けられた内部ダンパ50が開状態になる。高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47、内部ダンパ36,50がこのように開度調整されると、高温側温調部20において加熱器34によって加熱された空気(以下、高温空気とも称す)が送風機35により試験部3の入口側空間11に向けて送風され、高温側温調部20と試験室3との間で循環する。この際、高温空気は、開状態にある高温側温調ダンパ37の流路形成面61に設けられた垂直ガイドベーン65や水平ガイドベーン66によって整流された状態で循環する。
【0049】
ここで、図6(b)に示すように、試験装置1の運転状態が高温晒しモードに切り替わった後、試験室10内の雰囲気温度が所定の設定温度THに達するまでの移行期間の間は、送風機35の送風能力が高い状態に設定され、試験部3側に向けて送風される送風速度が移行期風速Vtに設定される。本実施形態では、送風機35のファン回転用のモータ(図示せず)の電源周波数が70[Hz]に設定され、移行期風速Vtが20[m/sec]に調整される。
【0050】
高温晒しモードによる運転が開始された後、試験室10内の雰囲気温度が設定温度THに到達すると、上記した移行期間よりも送風機35の送風能力が低く設定され、試験部3側に向けて送風される送風速度が移行期風速Vtよりも低速の試験期風速Veに調整される。本実施形態では、送風機35のファン回転用のモータの電源周波数が60[Hz]に設定され、試験期風速Veが15[m/sec]に調整される。
【0051】
一方、高温晒しモードでの動作中は、低温側温調部21は、待機状態になる。低温側温調部21が待機状態にある間においても、蒸発器46により空気の冷却は行われるが、送風機49の送風能力が低い状態に設定される。そのため、高温晒しモードでの動作中は、図6(d)に示すように、低温に冷却された空気が、低温温調部21内において上記した試験期風速Veよりも低速の待機時風速Vwで循環する。
【0052】
上記したようにして高温晒しモードでの運転が開始された後、運転モードを低温晒しモードに切り替えるタイミングになると、高温側温調ダンパ37が閉状態とされ、低温側温調ダンパ47が開状態とされる。また、これに連動して、高温側温調部20内に設けられた内部ダンパ36が内部循環ダクト32を開いた状態になり、低温側温調部21内に設けられた内部ダンパ50が内部循環ダクト42を閉じた状態になる。
【0053】
試験装置1の運転モードが低温晒しモードに切り替わると、高温側温調部20および低温側温調部21の動作状態が高温晒しモードでの動作中の状態と逆転する。具体的には、運転モードが低温晒しモードに切り替わると、試験室10内の雰囲気温度が所定の設定温度TLに到達するまでの移行期間において、低温側温調部21側の送風機49の送風能力が高められ、試験部3側に向けて送風される送風速度が移行期風速Vt(本実施形態では20[m/sec])に調整される。その後、試験室10内の雰囲気温度が設定温度TLに達すると、送風機49の送風能力が前述した移行期間よりも低く設定され、送風速度が試験期風速Ve(Ve<Vt,本実施形態では15[m/sec])に調整される。
【0054】
一方、低温晒しモードでの動作中は、高温側温調部20が待機状態に切り替わる。高温側温調部20が待機状態になると、送風機35の送風能力がさらに低い状態とされる。これにより、加熱器34によって加熱された空気が、待機時風速Vwで高温温調部20内を循環する。
【0055】
上記したようにして低温晒しモードでの運転が開始された後、低温晒しモードを終了するタイミングになると、一連の冷熱サイクル動作が1サイクル分完了する。試験装置1は、冷熱サイクル動作を設定されたサイクル数だけ繰り返す。
【0056】
上記したように、本実施形態の試験装置1では、高温晒しモードや低温晒しモードへの運転モードの切替後、試験部3内の雰囲気温度が設定温度TH,TLに到達するまでの移行期間に、送風機35,49により試験部3に対して導入される空気の風速(移行期風速Vt)が、設定温度TH,TLに到達した後の試験期間における風速(試験期風速Ve)よりも高く設定されている。そのため、試験装置1では、運転モードの切替後、供試体を設定温度TH,TLの雰囲気下に晒すことが可能になるまでの移行期間が極めて短く、冷熱衝撃試験の試験期間を大幅に短縮することができる。
【0057】
上記実施形態の試験装置1は、一連の冷熱サイクル動作において、運転モードが切り替えられてから試験部3内の雰囲気温度が設定温度TH,TL付近に到達するまでの移行期間や、移行期間が経過してから高温晒しモードや低温晒しモードが終了するまでの試験期間において、供試体の種類等によらず一定の移行期風速Vtや試験期風速Veで温度調整された空気を供給する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、供試体の種類等に応じて適宜、移行期風速Vtや試験期風速Veの大きさを調整できる構成としてもよい。また、移行期風速Vtや試験期風速Veが移行期間や試験期間において適宜変動する構成としてもよい。
【0058】
また、試験装置1は、運転モードの切替後の移行期間において、設定温度TH,TLを目標温度として移行期風速Vtや試験期風速Veの大きさを調整するものであってもよいが、供試体や試験室10の熱容量の影響等を加味し、移行期間における目標温度を設定温度THよりも高温としたり、設定温度TLよりも低温に設定して送風を行うこととしてもよい。かかる構成によれば、仮に供試体や試験室10の熱容量が大きい等、試験室10の雰囲気温度や供試体自身の温度を迅速に変化させる上での障害となる要因があったとしても、これによる影響を最小限に抑制することができる。
【0059】
本実施形態の試験装置1では、高温晒しモードでの動作中は低温側温調部21が待機状態になり、低温晒しモードでの動作中は高温側温調部20が待機状態になる。この際、待機状態にある低温側温調部21や高温側温調部20では、温度調整された空気が試験部3を外れた領域、すなわち低温側温調部21内や高温側温調部20内を循環するが、この空気の風速(待機時風速Vw)は、試験部3に対して空気を供給している際の風速である移行期風速Vtや試験期風速Veよりも低速とされている。そのため、試験装置1は、高温側温調部20や低温側温調部21が待機状態にある場合であっても、運転モードの切替に備えて内部を循環している空気の温度が攪拌熱の影響によって不安定になったり、空気の温度を調整するために過剰なエネルギーが必要になるといったような不具合が発生しにくい。
【0060】
上記実施形態では、高温側温調部20や低温側温調部21が待機状態になっている際に、これらの内部に形成された内部循環ダクト32,42に空気を流すことで、空気を内部循環させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、高温側温調部20や低温側温調部21が待機状態になっている際に試験部3を外れた領域で空気を循環させることが可能な循環流路を別途設けた構成としてもよい。また、上記実施形態では、高温側温調部20や低温側温調部21を適宜待機状態で作動させ、運転モードの切替に備えて内部で空気を循環させつつ温度調整する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、待機状態において高温側温調部20内や低温側温調部21内で空気を循環させない構成としてもよい。
【0061】
上記したように、試験装置1では、高温側温調部20と試験部3との間に設けられた高温側温調ダンパ37や、低温側温調部21と試験部3との間に設けられた低温側温調ダンパ47を構成するダンパ本体60に流路形成面61がある。また、これらの温調ダンパ37,47のうちの一方が開状態になると、流路形成面61と送風経路をなす試験部3の内周面とが温調ダンパ37,47のうち閉状態にあるものの当接面62側に設けられた傾斜面68を介して連続した状態になる。そのため、試験装置1は、温調部5から試験部3に向けて空気が高速で流れたとしても、空気は局所によどむことなく流路形成面61に案内されてスムーズに試験部3内の送風経路16に流れ込み、試験室10に供給される。従って、本実施形態の試験装置1では、試験部3内の部位によらずほぼ均一の流速で空気を供給することができ、供試体を設置した位置等に関係なくほぼ均一の温度条件下に晒すことができる。
【0062】
上記実施形態では、対向配置された2つの温調ダンパ37,47(高温側温調ダンパ37,低温側温調ダンパ47)のそれぞれに傾斜片67を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述したような空気のよどみが起こらない場合や、空気の流れが多少不均一になっても空気の流速低下や空気流の乱れがさほど起こらないような場合は、いずれか一方または双方を省略した構成としてもよい。かかる構成とした場合は、試験装置1の構成をシンプルなものとすることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、温調ダンパ37,47をそれぞれ試験部3の入口側空間11側および出口側空間12側の双方に配した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、入口側空間11側および出口側空間12側のいずれか一方にだけ設けた構成としてもよい。かかる構成とした場合についても、試験装置1の装置構成をシンプルなものとすることができる。
【0064】
また、温調ダンパ37,47は、傾斜片67を当接面62に設ける代わりに、ダンパ本体60の形状を、開状態になった際に流路形成面61自身が温調ダンパ37,47のうち閉状態にあるものの当接面62や、試験部3の内周面に連続するように当接可能な形状としてもよい。かかる構成とすれば、上述した試験装置1と同様に、温調ダンパ37,47が開状態になった際に空気の流れがよどむ部位が発生するのを最小限に抑制できる。
【0065】
上記実施形態では、流路形成面61および傾斜面68が、その断面形状が直線的に伸びる構成のものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、断面形状が湾曲した形状のものであってもよい。
【0066】
また、上記したように、本実施形態の試験装置1は、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47が、それぞれダンパ本体60の一端(固定端)側を支軸63によって支持した構造とされている。また、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47は、互いに対向するように配置されており、温調ダンパ37,47のうちの一方(図4では低温側温調ダンパ47)が開くと、これが他方(図4では高温側温調ダンパ37)の自由端側の位置に当接した状態になる。そのため、温調ダンパ37,47のうち閉状態になっているもの(図4では高温側温調ダンパ37)は、固定端側が支軸63により支持されるだけでなく、自由端側が温調ダンパ37,47のうち開状態になっているもの(図4では低温側温調ダンパ47)によって支持された状態になり、しっかりと閉まった状態になる。
【0067】
また、試験装置1では、温調ダンパ37,47によって空気流を案内することにより、試験室10内に部位によらずほぼ均一の流速で流入させることができ、供試体が晒される温度雰囲気をほぼ均一とすることができる。そのため、試験装置1により実施される冷熱衝撃試験は、供試体の設置位置によらず試験精度が高い。さらに、試験装置1により冷熱衝撃試験を行った場合は、供試体が晒される温度雰囲気の均一性が高いため、高温晒しモードや低温晒しモードによる運転時間を過度に長くとる必要がなく、その分だけ試験時間を短縮することができる。
【0068】
上述したように、試験装置1では、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47をなすダンパ本体60,60が、それぞれ内部ダンパ36,50とリンク機構72,72を介して連結されており、温調ダンパ37,47の開閉に連動して動作する構成とされている。また、内部ダンパ36,50は、それぞれ高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47が開状態になると閉状態になるため、高温側温調部20や低温側温調部21から試験部3に向けて空気を供給すべき場合には、温度調整された空気が高温側温調部20や低温側温調部21内に形成された内部循環ダクト32,42側に流入するのを防止することができる。その一方で、内部ダンパ36,50は、それぞれ高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47が閉状態になると、開状態になるように関連づけられているため、高温側温調部20や低温側温調部21が待機状態になると内部循環ダクト32,42を介して空気を内部循環させることが可能になる。従って、上記した構成によれば、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47を開閉するだけで、高温側温調部20や低温側温調部21で温度調整された空気の循環経路を適宜最適なものにすることができる。
【0069】
上記実施形態では、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47と、内部ダンパ36,50とをリンク機構72を介して接続した構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、他の機構を介して高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47と、内部ダンパ36,50とを連結し、両者が連系して動作する構成としてもよい。また、試験装置1は、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47と、内部ダンパ36,50とが、それぞれ独立して動作可能な構成としてもよい。
【0070】
上記したように、高温側温調ダンパ37や低温側温調ダンパ47は、流路形成面61に垂直ガイドベーン65や水平ガイドベーン66を有し、これらにより温調部5と試験部3との間で流れる空気の流れを整流することができる。そのため、試験装置1は、温調部5と試験部3との間を空気が整流されてスムーズに流れ、試験部3に導入される気体の勢いが弱まったり、空気の流れが部位によって不均一になるのを防止し、供試体を設置位置によらずほぼ均一した温度雰囲気下に晒して冷熱衝撃試験を実施することができる。
【0071】
上記実施形態では、空気の流れを整流するための整流手段として垂直ガイドベーン65および水平ガイドベーン66の双方を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば垂直ガイドベーン65および水平ガイドベーン66のいずれか一方または双方を省略した構成とすることも可能である。また、垂直ガイドベーン65や水平ガイドベーン66の取り付け角度などは、温調部5側から供給される空気の供給状態や、試験部3や温調部5の位置関係などを考慮し、適宜調整してもよい。
【0072】
試験装置1は、試験室10が、空気が流出入可能なようにケージ状に形成された枠体13aに対して供試体設置容器13bを着脱可能なように設けられている。そのため、試験装置1では、供試体設置部を枠体13aから取り外して供試体を設置しやすい場所で設置することができ、冷熱衝撃試験を実施する上での利便性に優れている。
【0073】
また、試験装置1は、試験部3に設けられた配線接続部17が、筐体2の外部に露出した配線用スリット17aを有し、試験部3の内部において供試体に対して電気的に接続された配線17bを配線用スリット17aを介して筐体2の外側に取り出すことができる。そのため、試験装置1は、例えば配線17bに対して電気的特性を測定するための測定機器を接続することにより供試体の電気的特性を前記測定機器で測定したり、配線17bに電源を接続することにより、電力を印加した状態における供試体の冷熱衝撃試験を行う等、冷熱衝撃試験に伴う供試体の電気的特性についての試験を容易に実施することができる。また、上述したように試験部3は、供試体設置容器13bを枠体13aから取り外すことができるため、供試体設置容器13bを前記した測定機器や電源が設けられた場所に移動させ、供試体についての冷熱衝撃試験とは別の試験を行うことができる。
【0074】
上記実施形態では、配線用スリット17aを設け、これを介して配線17bを試験部3や筐体2の外側に取り出し可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線用スリット17aを設けない構成としてもよい。また、配線用スリット17aを設ける代わりに、外部機器等を接続するための接続端子を設け、これを介して試験部3内に配された供試体と外部機器等を電気的に接続可能な構成としてもよい。
【0075】
上記した試験装置1は、試験室10を構成する供試体設置容器13bを枠体13aに対して着脱可能な構成であるものを例示したが、本発明はこれに限定されず、供試体設置容器13bが着脱不可能なものであったり、試験室10を従来公知のものと同様に槽状のものとしてもよい。
【0076】
上記実施形態では、試験部3と温調部5との間を空気が循環する構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、他の気体が循環するものであってもよい。
【0077】
上述した試験装置1は、運転モードの切り替え時に供試体が晒される温度条件を急激に変化させる、いわゆる冷熱衝撃試験を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、運転モードの切り替え時の温度変化を冷熱衝撃試験よりも緩やかに行う冷熱サイクル試験を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 冷熱衝撃試験装置(環境試験装置)
3 試験部
5 温調部
10 試験室
13a 枠体(試験部本体)
13b 供試体設置容器(供試体設置部)
16 送風経路(送風経路a)
17 配線接続部
17a 配線用スリット
20 高温側温調部
21 低温側温調部
34 加熱器(温調手段)
35,49 送風機(送風手段)
36,50 内部ダンパ
37 高温側温調ダンパ
38,51 送出経路(送風経路b)
46 蒸発器(温調手段)
47 低温側温調ダンパ
61 流路形成面
62 当接面
65 垂直ガイドベーン(整流手段)
66 水平ガイドベーン(整流手段)
67 傾斜片
68 傾斜面
a 角度
Vt 移行期風速
Ve 試験期風速
Vw 待機時風速
TH 設定温度
TL 設定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が設置される試験部と、
当該試験部に対して供給される気体の温度調整を行う温調部と、を有し、
当該温調部が、当該試験部に対して導入される気体を所定温度に調整可能な温調手段と、当該温調手段により温度調整された気体を前記試験部に向けて送風可能な送風手段と、を有し、
高温に調整された気体を試験部に導入して高温雰囲気下に供試体を晒す高温晒しモード、並びに、低温に調整された気体を試験部に導入して低温雰囲気下に供試体を晒す低温晒しモードを含む複数の運転モードを組み合わせて構成される一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施可能であり、
前記送風手段が、試験部に対して導入される気体の風速を調整可能であり、
高温晒しモードおよび低温晒しモードへの運転モードの切替に際し、試験部内の雰囲気温度が所定温度に到達するまでの移行期間において試験部に対して導入される気体の風速が、所定温度に到達してから高温晒しモードあるいは低温晒しモードが完了するまでの試験期間において試験部に対して導入される気体の風速よりも高いことを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
温調部が、温度調整された気体を試験部に対して供給する気体供給状態と、温度調整された気体を前記試験部を外れた領域内において循環させる待機状態と、で動作可能であり、
待機状態である場合における気体の循環速度が、気体供給状態である場合に試験部に供給される気体の風速よりも低速であることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
試験部と温調部との間に温調ダンパが設けられており、
前記試験部に導入された気体が流れる送風経路aと、当該送風経路aに対して交差した送風経路bと、を有し、
前記温調ダンパを開くことにより、前記送風経路bを介して試験部と温調部との間における気体の流出入が可能な連通状態になり、
前記温調ダンパに、前記連通状態において前記送風経路a,bに面する流路形成面が設けられており、
前記連通状態において、当該流路形成面と送風経路aの内周面とが連続した状態になることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
温調部が、気体を高温に調整する高温側温調部と、気体を低温に調整する低温側温調部と、を有し、
試験部と前記高温側温調部との間、並びに、試験部と前記低温側温調部との間に、温調ダンパがそれぞれ独立的に作動可能なように配されており、
当該温調ダンパが、当接面と、当該当接面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面と、を有し、
前記温調ダンパが閉状態である場合に、前記傾斜面が送風経路aの内周面と連続しており、
試験部と前記高温側温調部との間に配された温調ダンパ、並びに、試験部と前記低温側温調部との間に配された温調ダンパのうちの一方が開状態になると、当該開状態になった温調ダンパが閉状態である他方の温調ダンパに対して傾斜した状態で当接し、前記開状態になった一方の温調ダンパの流路形成面と、前記閉状態である温調ダンパに設けられた傾斜面と、が連続した状態になることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
当接面および傾斜面がなす角度が、閉状態にある温調ダンパおよび開状態にある温調ダンパがなす角度と同一であることを特徴とする請求項4に記載の環境試験装置。
【請求項6】
試験部と温調部との間に温調ダンパが設けられており、当該温調ダンパを開くことにより温調部から試験部に対して気体を導入可能な連通状態となるものであり、
前記温調部内に、気体を循環させることが可能な内部循環流路と、当該内部循環流路を開閉可能な内部ダンパと、が設けられており、
当該内部ダンパが、連動機構を介して温調ダンパと連動可能なように連結されており、
前記温調ダンパを開くことにより、送風経路a,bが連通状態になり、内部ダンパが前記内部循環流路を閉じた状態になり、
前記温調ダンパを閉じることにより、前記送風経路a,bが非連通状態になり、内部ダンパが開いた状態になることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項7】
温調ダンパの流路形成面に、温調部と試験部との間で流れる気体の流れを整流する整流手段が設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項8】
試験部が、気体が流出入可能な試験部本体と、前記試験部本体に対して着脱可能な供試体設置部と、を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項9】
試験部の内側に配された供試体に対して電気的に接続された接続端子を、試験部の外側に取出可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−209303(P2011−209303A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156805(P2011−156805)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2008−105079(P2008−105079)の分割
【原出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】