説明

環境試験装置

【課題】冷熱衝撃試験装置を改良するものであり、複数の研究者が1つの試験室に複数種類の被試験物を混在させて冷熱衝撃試験をする場合の混乱を解消することを目的とする。
【解決手段】試験室2は複数の区画に区切られている。表示装置には、区画のレイアウトを表す図形が表示される。表示装置に中断管理画面を表示して、繰り返し回数を設定することができる。区画内の被試験物に対して設定された繰り返し回数の試験が終了すると、ブサーで報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物を所定の環境にさらすことができる環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の性能を評価する方法の一つとして、環境試験がある。環境試験は、製品を特定の環境下に置き、性能等の変化を観察するものである。
環境試験装置には、高温環境を作るもの、低温環境を作るもの、高湿度や低湿度の環境を作るものがある。また冷熱衝撃試験装置と称される環境試験装置は、高温環境と低温環境を所定のサイクルで繰り返し、商品に冷熱衝撃を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−203555号公報
【特許文献2】特開2000−249643号公報
【特許文献3】特開2006−329701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境試験装置は、冷凍機やヒータを搭載していると共に、厚い断熱材で覆われているから、外形形状が大きく、広い設置場所が必要である。また環境試験装置は、特殊な装置であり、一般に高価である。そのため、一つの研究所や事業所が多数の環境試験装置を保有することは稀である。
一方、環境試験は耐久試験であることが多く、試験の開始から終了までには相当の時間を要する。そのため、研究所や事業所の研究者等は、自己の製品を試験するために、環境試験装置が空くのを順番待ちすることとなる。
【0005】
さらにその一方で、被試験物は、大きいものとは限らず、小さいものである場合も少なくない。
そのため冷熱衝撃試験の様に、被試験物に対する試験条件が大きく変わらない様な環境試験では、一つの試験室に複数種類の被試験物を混在させて試験する場合も少なくない。
【0006】
しかしながら、複数の研究者等が、めいめい、異なる時期に被試験物を試験室に設置し、且つ、被試験物によって必要な熱衝撃のサイクル数が異なるので、試験が終了する時期は各被試験物ごとにばらばらになる。さらに被試験物には似た形状のものが混在することも少なくない。そのため、どの被試験物が自己の担当の被試験物であるのかが判らなくなってしまう。また自己の被試験物の試験が終了しているのかどうかも判らなくなってしまう。
即ち単独の研究者が冷熱衝撃試験を行う場合は、被試験物の投入時刻と、熱サイクルの間隔、及び繰り返す回数によって試験の終了時刻が判る。
しかしながら、複数の研究者が冷熱衝撃試験装置を共同使用すると、他人が被試験物を投入したり、排出する度に試験が中断されるので、実行された繰り返しサイクル数や終了時刻が判らなくなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、試験室に複数種類の被試験物を混在させて試験する場合の混乱を解消することを目的とするものであり、試験の終了時刻や被試験物の置き場所等を誤りなく知ることができる環境試験装置の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、試験条件の環境を作り出す試験室を有し、当該試験室に被試験物を設置して被試験物を試験環境にさらす環境試験装置において、試験室は物理的に又は仮想的に複数の区画に区切られ、試験の進行状況を報知する報知手段を有し、当該報知手段は前記区画ごとに試験の進行状況を報知することが可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0009】
ここで「物理的に複数の区画に区切られる」とは、例えば棚板や仕切り、壁、紐、ロープ、鎖、チェーン、ワイヤー、ポール、障害物、突起、引出し、箱等によって、実質的に区画を区切り、隣接する区画に被試験物が移動しにくい構成にすることをいう。
また「仮想的に複数の区画に区切られる」とは、印、暖簾、光線等によって、領域が容易に判別する様にする構成が含まれる。また領域を示す印等は無いけれども、右端の位置、左端の位置、中央の位置、奥左角の位置という様に、その位置に被試験物を置いたときに、明らかに他の位置と区別することができる位置を想定して分割する場合を含む。
本発明の環境試験装置では、試験室は前記した様に物理的に又は仮想的に複数の区画に区切られている。各研究者等は、一つの区画に自己が担当する被試験物を入れて試験を行う。前記した様に区画は複数あるので、複数種類の被試験物を試験室に混在させることができるが、試験室内が複数の区画に分かれているので、被試験物を取り違えることがない。
また本発明の環境試験装置では、報知手段によって区画ごとに試験の進行状況を報知することができるので、試験の進行状況が判り、試験の終了や試験の終了が近いことを知ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、報知手段は、試験の終了、試験の中断、試験の終了が近づいていること、試験の中断が近づいていること、の少なくともいずれかを報知するものであることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置であることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置である。
【0011】
ここで「試験の終了」と「試験の中断」の差は、必ずしも明確ではなく、いずれも被試験物を出し入れする端緒となる点で共通する。一般に「試験の終了」は、複数並行して実行していた試験の少なくとも一部が終了する場合を言い、「試験の中断」は、複数並行して実行していた試験の最中に一部の被試験物を一旦取り出す様な場合も含む。
本発明の環境試験装置によると、各被試験物ごとの試験の終了や試験の終了が近づいている事実等が判るので、混乱が少ない。
【0012】
請求項3に記載の発明は、所定の表示を行う表示装置を有し、表示装置は前記区画に対応する表示が可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0013】
本発明によると、使用者が区画の位置を忘れても、自己が担当する被試験物を誤り無く取り出すことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、表示装置には、区画のレイアウトを表す図形が表示されることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置である。
【0015】
本発明によると、一目して区画の位置が判るので、使い勝手がよい。
【0016】
請求項5に記載の発明は、表示装置は、報知手段の作動時に、報知の対象となった区画を表示することを特徴とする請求項3又は4に記載の環境試験装置である。
【0017】
本発明では、試験の終了等の知らせと共に、例えば試験が終了した区画を表示するので、使い勝手がよい。
【0018】
請求項6に記載の発明は、試験室内の区画を変更可能であり、表示装置の表示も試験室の区画の変更に応じて変更可能であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0019】
本発明の環境試験装置では、被試験物の大きさや個数に応じて試験室の区画を変更することができる。またこれに応じて表示装置の表示も変更することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、試験終了後に所定のスタンバイ運転を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の環境試験装置である。
【0021】
スタンバイ運転とは、例えば被試験物を取り出すための準備運転である。スタンバイ運転には、例えば次の様な動作がある。
(1)試験室への通風停止。
(2)高温試験を停止する際の被試験物の冷却。
(3)低温試験を停止する際の試験室内の昇温。
(4)低温試験を停止する際の試験室内の除湿。
【0022】
請求項8に記載の発明は、報知手段は、特定の情報端末に試験の進行状況を報知するものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0023】
情報端末には、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯形パーソナルコンピュータ等があげられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験装置では、試験室に複数種類の被試験物を混在させて試験することができ、その際の試験の終了時刻や被試験物の置き場所等を誤りなく知ることができる。そのため本発明の環境試験装置では、試験室に複数種類の被試験物を混在させて試験しても、大きな混乱は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の環境試験装置の外観斜視図である。
【図2】図1の環境試験装置の内部構造を示す構成図である。
【図3】図1の環境試験装置の前扉を開けた状態の正面図である。
【図4】図1の環境試験装置の試験室の斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)は、試験室の区画のパターンを説明する説明図である。
【図6】表示装置の表示画面の一つであり、基本設定画面の正面図である。
【図7】表示装置の表示画面の一つであり、区画表示を変更する際の画面(区画設定画面)の正面図である。
【図8】表示装置の表示画面の一つであり、区画表示を確認する際の画面(中断管理画面)の正面図である。
【図9】表示装置の表示画面の一つであり、試験条件設定画面の正面図である。
【図10】表示装置の表示画面の一つであり、試験条件設定画面の正面図であって入力時の様子を示す正面図である。
【図11】表示装置の表示画面の一つであり、基本管理画面の正面図である。
【図12】表示装置の表示画面の一つであり、試験中のモニタ画面(試験モニタ画面の正面図である。
【図13】表示装置の表示画面の一つであり、基本管理画面の正面図であって試験が中断した状態を示す。
【図14】表示装置の表示画面の一つであり、試験中のモニタ画面の変形例を示す正面図である。
【図15】試験室の変形例を示す試験室の斜視図である。
【図16】図15の試験室の区画のパターンを説明する斜視図である。
【図17】試験室の他の変形例を示す試験室の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、冷熱衝撃試験装置であり、被試験物が配される試験室2に熱風と冷風を交互に送って試験室2の温度環境を急激に変化させ、被試験物を高温環境と低温環境とに繰り返しさらすものであり、被試験物に熱ストレスを与えることができる装置である。
【0027】
即ち、冷熱衝撃試験装置1は、図2に示すように、電子部品や樹脂素材その他の被試験物が載置される試験室2と、その試験室2の上部に隣接する高温室3と、試験室2の下部に隣接する低温室5とを備えている。
高温室3には、ヒータ6が内蔵されており、高温室3の内部は所定の高温状態に維持されている。即ち高温室3は、高温状態の空気を溜置く部屋である。
一方、低温室5には、冷却器7が内蔵されている。冷却器7は、冷凍機8の一部であり、蒸発器である。
低温室5は、冷却器7によって所定の低温状態に維持されている。即ち低温室5は、低温の空気を溜置く部屋である。
【0028】
試験室2と高温室3とは、熱風導入口10と熱風排出口11を介して連通される。また試験室2と低温室5とは、冷風導入口15と冷風排出口16を介して連通された構成とされている。そして、熱風導入口10と熱風排出口11には、高温槽側ダンパ17,18が設けられ、冷風導入口15と冷風排出口16には、低温槽側ダンパ20,21が設けられ、隣接する槽同士の空気の流通が制限されている。なお、高温槽側ダンパ17,18及び低温槽側ダンパ20,21は、公知のバタフライ式やゲート式などが採用されている。
【0029】
環境試験装置1は、冷熱衝撃試験を行う装置であり、被試験物を試験室2に設置し、低温室5や高温室3から試験室2に低温空気と高温空気を交互に送り込んで、被試験物を急速に冷却又は加熱して熱ストレスを与える(冷熱衝撃試験)。具体的には、冷熱衝撃試験では、試験室2と低温室5とを連通状態にして試験室2を急速に冷却する低温さらし試験と、試験室2と高温室3とを連通状態にして試験室2を急速に加熱する高温さらし試験が、予め設定された時間や目標温度に基づいたサイクルで交互に実行される。そして、その低温さらし試験や高温さらし試験によって被試験物に生じた熱ストレスに基づいて、被試験物の評価が行われる。
【0030】
本実施形態の環境試験装置1では、図1の様に試験室2を開閉する前扉23がある。そして前扉23にコントロール装置25が取り付けられている。コントロール装置25は、タッチパネル式の表示装置30である。またコントロール装置25には小型のスピーカー28が取り付けられている。スピーカー28は、報知手段の一つであり、試験の終了を知らせるブザー音を発するものである。
表示装置30の表示画面については、後記する。
【0031】
本実施形態の環境試験装置1では、試験室2の中が図3の様に複数の区画27abcdefに仕切られている。試験室2の構造は、図4の様であり、内壁に6個のガイド31abcdefが設けられている。ガイド31abcdefは、いずれも試験室2の開口側から奥側に向かって延びている。
この内、4個のガイド31abdeは、試験室2の側壁に設けられている。即ちガイド31abは、図面左側の側壁に設けられ、ガイド31deは、図面右側の側壁に設けられている。
左右のガイド31aとガイド31e、ガイド31bとガイド31dは、対向する高さにある。
一方、残る2個のガイド31cfは、天井面と底面とに設けられている。天井面と底面の2個のガイド31cfについても対向する位置にある。
【0032】
そして本実施形態の環境試験装置1のガイド31abcdefに棚板32ab及び仕切り板33abcを配することによって、試験室内を6の区画27abcdefに区切っている。棚板32ab及び仕切り板33abcは、通風を確保するために、枠に金網が張られたものである。また側壁29についても金網で作られている。なお金網に代えて通風を確保するために開口を設けてもよい。
なお棚板32abの両面の中央部にも、ガイド31ghijが設けられている。
本実施形態の環境試験装置1では、棚板32ab及び仕切り板33abcを入れ換えたり、形状の違う棚板や仕切り板を使用することにより、区画27abcdefのレイアウトを任意に変更することができる。
即ち図5(a)は、中型の区画35abcを上下中に3個設けた例である。図5(b)は、上段と中段に中型の区画36abを設け、下に小型の区画36cdを2個設けた例である。
また図5(c)は、左下に縦に小型の区画37abを並べ、その横に縦長の中型区画37cを配置し、上部に中型の区画37dを配したものである。
【0033】
要するに、本実施形態では、試験室2を6分割した大きさの小型区画27abcdefが区画の最小単位であり、この最小単位の区画27abcdefを任意に組み合わせて中型の区画や大型の区画を形成することができる。
【0034】
次にコントロール装置25の機能について説明する。コントロール装置25は、タッチパネル式の表示装置30であり、各種の設定や入力を行うことができる。
図6は、表示装置30の表示画面の一つであり、基本設定画面53を表している。
基本設定画面53は、大きく上下に3段に分かれている。
基本設定画面53の上段部分は、常時表示部55である。常時表示部55には、状態表示部38と、ショートカット用のアイコン部41と、時刻表示部42が配置されている。
ここで状態表示部38は、現在の環境試験装置1の動作状態を表示するものであり、「停止中」「試験中」「試験中断中」という様に表示される。
ここで「停止中」とは、試験が開始される前の状態であり、「試験中」とは試験が実行されている最中の表示であり、「試験中断中」とは、何らかの理由で試験が中断されたときの表示である。
【0035】
ショートカット用のアイコン部41は、表示を変える際にタッチする部分であり、当該部分をタッチすると、表示画面が特定の画面に変わる。
ここで最も右のアイコン43に触れると、図11,13の様な基本管理画面60に表示が変わる。
時刻表示部42は、現在の日時を表示する時計である。
本実施形態では、常時表示部55は、略全ての画面で常に表示される。即ち状態表示部38と、ショートカット用のアイコン部41と、時刻表示部42は、全ての画面で常に表示される。
【0036】
基本設定画面53の中央部分の段には、設定選択表示部56が設けられている。設定選択表示部56は、4個の区画に分かれており、「モニタ情報」「パターン選択」「パターン編集」「管理設定」の文字及びイメージ図形が表示される。
これらの区画に触れると、それぞれの設定画面に表示が変わる。
【0037】
ここで右下の「管理設定」の区画に触れると、表示が図7の様な区画設定画面57に切り替わる。
区画設定画面57は、前記した試験室2の区画に合わせて管理区画を変更する画面である。
区画設定画面57では、図7の様な6個の最小単位の区画に区切られた様子が図示される。そして各区画には、「使用」という表示と「未使用」という表示がなされている。区画を使用する場合は、「使用」の文字に触れ、区画を使用しない場合は、「未使用」の文字に触れる。「使用」の文字に触れると、当該区画が管理対象となる。区画設定画面57では、使用であるか未使用であるかを明らかにするために、いずれかの表示が光る。
【0038】
また区画を仕切る棚板線50abcd(横線)と仕切り線51abc(縦線)にそれぞれ四角の枠が表示され、当該四角の枠内に円が表示されている。
この丸に触れると、丸が付された線が消える。また再度丸に触れると線が復活する。なお線を消す場合は、丸が黒丸となり、線を残す場合には白丸となる。
この様にして、線を消し又は線を復活させて、実際の試験室2のレイアウトに合わせた表示レイアウトを作ることが出来る。
図7の区画設定画面57の様に、2か所の丸に触れて黒丸状態とし、所定の操作によってレイアウトを決定する。そしてさらに所定の操作によって、図8の様に決定されたレイアウトを表示することができる。なお図8は、前記した図5cに合わせて作られたレイアウトである。図8は、中断管理画面70と称され、所定の操作によって表示させることができる。
また表示されたレイアウトでは、各区画に通し番号が表示される。表示された番号は、図11,13の基本管理画面60の管理表示部61の番号と対応している。
【0039】
また所定の操作を行うことによって、図9の様な試験条件設定画面62を表示することができる。
試験条件設定画面62では、予熱温度と、高温さらし条件と、低温さらし条件と、予冷温度と、サイクル数とを設定することができる。
即ち設定しようとする画面に触れると、図10の様にテンキー画面63が表示され、必要な条件を入力することができる。
ここで予熱温度は、高温室3の温度であり、予冷温度とは低温室5の温度である。
高温さらし条件及び低温さらし条件では、さらす際の温度とさらす時間を設定することができる。
サイクル数は、高温さらしと低温さらしを1サイクルとして繰り返し回数を設定する。この繰り返し回数だけ高温さらしと低温さらしを繰り返すと、冷熱衝撃試験装置1が停止する。
【0040】
また所定の操作を行うことによって、図11の様な基本管理画面60を表示することができる。
基本管理画面60は、大きく上下に4段に分かれている。そして上段には、常時表示部55が表示されている。
基本管理画面60の上から2段目は、中断操作部65である。中断操作部65には、表示画面の名称として「中断予約・カウンタモニタ」と表示されている。そしてその下部に、「試験中断」とあり、その横に「現さらし完了後」「現サイクル完了後」の表示がある。この列の表示は、現に実行されている試験を手動で停止(中断)する場合に操作する部位である。
即ち「現さらし完了後」に触れると、現在行われている高温さらし試験又は低温さらし試験の終了を待って試験を中断する。「現サイクル完了後」に触れると、現在行われているサイクルの終了を待って試験を中断する。例えば、高温さらし試験を先に実行し、続いて低温さらし試験を実行することによって1サイクルが完了する場合であって、高温さらし試験が行われている最中に「現サイクル完了後」に触れると、低温さらし試験の完了を待って試験が中断される。
【0041】
基本管理画面60の中央部には、各区画を管理する管理表示部61がある。管理表示部61は、タイトル部66と区画部67に分かれている。区画部67は、6個の区画に分かれており、区画には、NO.1からNO.6までの通し番号が付されている。この番号は、前記した様に図8の中断管理画面70に表示される区画と対応している。従って基本管理画面60の番号は、実際の試験室2内の区画と対応している。
また管理表示部61のタイトル部66には、各区画のエリアに応じて「名称」「中断」「カウンタ」の表示がある。
前記した通し番号は、「名称」の列に表示されている。また名称の列のエリアには、使用者のIDを書き込み、これを表示することができる。IDを書き込む場合には、名称の列のエリアに触れる。その結果、文字盤が表示され(図示せず)当該文字盤の文字に触れることによって、文字を入力することができる。例えばNO.1の区画には、「Fujita Takashi」と表示され、NO.2の区画には、「Hayata Shin」と表示されている。表示名は任意であり、番号等が混じっていても構わない。
【0042】
また「中断」の列では、数値を入力するエリアと、「予約」と表示された部分がある。数値を入力するエリアは、試験の中断(終了も同じ)を予約設定する部分である。即ち使用者が投入した被試験物に対して実行する必要のある繰り返しサイクル回数を入力する。
入力方法は、前記した通りであり、当該部位に触れることによってテンキー画面63が表示されるので、当該テンキー画面63を使用して数字を入力する。
そして「予約」の文字に触れると設定が完了する。
【0043】
「カウンタ」の列では、数値が表示される欄と、「リセット」の文字が表示された部位がある。数値が表示される欄には、対象となる区画(試験室2の区画)で実際に行われた試験サイクルの回数が積算表示される。
またリセットの部位に触れると、積算された数値が零に戻る。
【0044】
基本管理画面60の下部には「ブザー停止」と表示された部位がある。当該部位に触れると、試験の中断を知らせるブサーが停止する。
【0045】
図示しない画面によって、試験の開始を指示すると、設定された条件に従って高温さらし試験と低温さらし試験が繰り返される。
図12は、その時の表示画面(試験モニタ画面71)であり、試験室2の温度と、現在のサイクル回数、現在のさらし試験の残り時間及び試験終了予定時間が表示される。また現在、温度が降下傾向にあるのか上昇傾向にあるのかを表すグラフが表示される。
【0046】
こうして高温さらし試験と低温さらし試験を繰り返し、基本管理画面60で予約設定したいずれかのサイクル数に達すると、報知手段たるスピーカー28からブザー音が雷鳴する。図13は、NO3の区画たるID「Moroboshi Dan」の試験が終了した状態の基本管理画面60を表示している。
即ち図11の様な基本管理画面60では、NO3の区画は、予約が200と設定されている。そのためサイクル数が200回に達し、カウンタが200回になると、図13の様に状態表示部55に「試験中断中」と表示される。そして中断の対象となったNO3の区画は、中断中と表示される。また当該表示の色は他の色と異なるものとなっている。
【0047】
他の区画は、試験が終了していないから、区画内の表示は、「使用中」または「未使用」のままで変わらない。
所定回数のさらし試験を終え、スピーカー28からブザー音が雷鳴しても、試験自体は継続される。ただし前記した基本管理画面60の「カウンタ」は、「予約」した回数に達した区画については積算を停止する。予約回数に達していない区画については、引き続き積算を行う。
【0048】
研究者(使用者)は、ブザーの雷鳴を聞くと、手動で試験を中断する。即ち前記した様に基本管理画面60の中断操作部65の「現さらし完了後」又は「現サイクル完了後」のいずれかに触れ、試験を手動で停止(中断)させる。
試験が中断されると、高温槽側ダンパ17,18及び低温槽側ダンパ20,21が閉じられる。研究者(使用者)は、環境試験装置1の前扉23を開いて自己の被試験物を取り出す。
このとき、研究者(使用者)は、所定の操作によって図8の中断管理画面70を表示することができ、自己の被試験物が配置された区画の位置を確認することができる。
試験が中断すると、全ての区画の「カウンタ」は積算を停止する。ただし今までの積算値は記憶されており、試験が再開されると、引き続き積算を続ける。
【0049】
なお、試験が終了して被試験物を取り出す場合の態様として、取り出した後の区画に何も入れずに試験を再開する場合と、別の被試験物を入れる場合がある。
またさらに被試験物を一定の繰り返し試験の後に取り出して、電気特性その他の特性を試験し、その後に当該被試験物を再度同じ区画又は別の区画に入れて試験を再開する場合がある。
【0050】
以上説明した実施形態では、報知手段の例としてスピーカー28を示したが、特別な照明を点灯させるというような光による報知も可能である。
また各研究者のパーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末に、試験が終了した旨を送信してもよい。
【0051】
上記した実施形態では、ブザーによって予約された繰り返し回数の試験が終了したことを知らせるだけであって、試験そのものは継続されるが、一つの区画を対象とする試験が終了すると、自動的に試験を中断させる構成とすることも可能である。
【0052】
また試験を自動的に中断させる場合には、被試験物の取り出しに備えて、スタンバイ運転を自動的に行われる様にすることが推奨される。スタンバイ運転には、例えば次の様な動作がある。
(1)試験室への通風停止
(2)高温試験を停止する際の被試験物の冷却
(3)低温試験を停止する際の試験室内の昇温
(4)低温試験を停止する際の試験室内の除湿
【0053】
また報知手段は、単に担当する試験の終了や中断を知らせるだけでなく、試験の終了が近いことを知らせることも推奨される。例えば、研究者の携帯電話等に、試験終了が間近であることを知らせるメールを自動送信する。
【0054】
また試験が終了すると、図8に示す様な中断管理画面70を自動表示させたり、これに類する図形を小窓状の画面に表示して、表示装置30に区画のレイアウトを表す図形が表示される構成とすることも推奨される。
【0055】
前記した実施形態では、棚板32abと仕切り板33abcによって区画を形成したが、例えば図15の様な引出し80によって区画を形成してもよい。この場合、引出しの大きさを図16の様な大きな引出し81に変更することによって区画の大きさを変更する。なお図15に示す構成では、通気性を確保するために引出しに網等が張られている。
【0056】
また試験室2の内部に図17に示す様なラック状の区画部材73が設置されていてもよい。本実施形態で採用する試験室では、区画部材73が試験室2内に挿入されている。区画部材73は図17の様に、外形の骨組み75と、棚板76a,76bだけを有し、仕切り板は無い。
棚板76a,76bは通風を確保するために網張り構造となっている。棚板76a,76bの中心部及び骨組み75の正面側中心部には印80が設けられている。当該印80は区画の境界を表すものであり、棚板76a,76b上は、当該印80を境として仮想的に二つの区画に分割されている。
また棚板76a,76b及び骨組み75の最下部の桟81に、区画の番号が付されている。即ち本実施形態では、棚板76a,76b上に物理的な仕切りは無いが、印80によって仮想的に2分割され、仮想的に区画が形成されている。
【0057】
また前扉23を開く動作と連動して、試験室2,72に通じるダンパ等を閉じ、試験室2,72に熱風や冷風が流れ込むことを阻止することも推奨される。
【0058】
各表示画面のレイアウトは、適宜変更が可能であり、例えば試験モニタ画面を図14の試験モニタ画面72の様に変形してもよい。
【0059】
以上説明した実施形態では、冷熱衝撃試験装置を例にあげて本発明を説明したが、本発明は、冷熱衝撃試験装置に限定されるものではなく、単に高温環境や低温環境にさらすもの、特定の光線下やガス雰囲気にさらすタイプの環境試験装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 環境試験装置
2,72 試験室
23 前扉
25 コントロール装置
27abcdef 区画
28 スピーカー(報知手段)
30 表示装置
35abc 区画
36abcd 区画
37abcd 区画
53 基本設定画面
55 常時表示部
56 設定選択表示部
57 区画設定画面
60 基本管理画面
62 試験条件設定画面
63 テンキー画面
65 中断操作部
66 タイトル部
67 区画部
70 中断管理画面
71,72 試験モニタ画面
73 区画部材
75 骨組み
76a,76b 棚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験条件の環境を作り出す試験室を有し、当該試験室に被試験物を設置して被試験物を試験環境にさらす環境試験装置において、試験室は物理的に又は仮想的に複数の区画に区切られ、試験の進行状況を報知する報知手段を有し、当該報知手段は前記区画ごとに試験の進行状況を報知することが可能であることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
報知手段は、試験の終了、試験の中断、試験の終了が近づいていること、試験の中断が近づいていること、の少なくともいずれかを報知するものであることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
所定の表示を行う表示装置を有し、表示装置は前記区画に対応する表示が可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
表示装置には、区画のレイアウトを表す図形が表示されることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
表示装置は、報知手段の作動時に、報知の対象となった区画を表示することを特徴とする請求項3又は4に記載の環境試験装置。
【請求項6】
試験室内の区画を変更可能であり、表示装置の表示も試験室の区画の変更に応じて変更可能であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項7】
試験終了後に所定のスタンバイ運転を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の環境試験装置。
【請求項8】
報知手段は、特定の情報端末に試験の進行状況を報知するものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−13425(P2012−13425A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147358(P2010−147358)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】